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Virgin Steele / VIRGIN STEELE
ゴリャートキン ★★ (2008-08-23 07:37:00)
1981年末制作の1stアルバム。元々はバンド結成のわずか3週間後にデモとして制作されたものなので、演奏・サウンド・楽曲の練りはまだまだ発展途上。
「80年代のマイナーメタルにしか興味がない!」あるいは「ギターのジャック・スターのファンです。ジャックが参加してるアルバムを探してここに辿り着きました」
という経緯でないならば、素直に他のアルバムから入門するのをオススメする。
アルバムは、デヴィッド・ディフェイのキーボードによるバッハの「メヌエット ト短調」(本当の作者はバッハではないらしいが)で幕を開ける。
(デヴィッドの姓の表記はデフェイス、ディフェイズなどともされるが、2nd収録の音声インタビューで「ディフェイ」と発音されていたので、これに統一する)
しかし、アルバム全体を聴けば劇的な場面はむしろ少ない。
基本的にはワイルドなギターリフが反復される、ドライヴィングなハードロックで、時にレイドバックしたムードやZEP的なリフ回しも現れている。
隙を見つけてはクレイジーなギターフィルを入れてくるジャック・スターの仕事っぷりが個性となっている。
ただ、それでもアルバムのハイライトとなっているのは、数少ない、劇的な方の曲だろう。
7曲目のChildren of the Stormは曲の骨格は前述のロックスタイルだが、メロディや細かなアレンジの部分がドラマティックで、他とは一線を画した名曲となっている。
泣けるメロディの、バラード的な 6.Still in Love with You は佳曲。ジャックの破壊的なギターソロだけを収録した 9.Pulverizer も耳に残る。
1曲目のDanger Zoneはロック系の曲だがメロディも分かりやすく突進力があるので、これも好印象だ。
バンド名を冠した 11.Virgin Steele はダークでエピカルなギターリフを配したメタル曲だが、メロディの愛想のなさも相まって、ちょっとオススメしにくい。
その他の曲に関しては、メタルとして聴いたら評価は厳しくなりそうだが、70年代ハードロックの延長と見なせば、なかなかおもしろく聴ける。
デヴィッドの歌はまだ未成熟だが(カンフーシャウトよりも中音域の力の無さやビブラートの多用の方が気になる)、
ギターの暴れっぷりは見事で、カルトなメタラーから注目される要素は確かにある。だが彼らのトレードマークとなるキーボードは本作ではほとんど活躍していない。
CD化に際し、ミックス違いを4曲、当時のデモを3曲(うち2曲は2ndの曲、1曲はキーボード大活躍の未発表曲)、即興的なピアノのソロ曲(当時のアウトテイク)を追加。
9歳までフランスで過ごし、その後ニューヨークで育ったジャック・スターは、フランスでTRUSTの始動にも関わったという。
その彼がNYに戻ってきてバンド結成に奔走する。
一方デヴィッドは2年制の音楽大学を卒業したばかりで、ヴォーカル募集広告の「当方、ツアーの予定あり」というウソに騙されてジャックに連絡。
そこで両者は会うことになり、デヴィッドは実家の地下室にジャックらを招くと、
キーボードの弾き語りで「Child in Time」「No Quarter」「Catch the Rainbow」を熱唱。そして別の機会に今度はジャックらの演奏をチェックする。
デヴィッドはベースのケニー・ニコルズを気に入らず(ケニーは後に精進してLAガンズに加入とのこと)、代わりにデヴィッドの大学の同期のジョー・オライリーが加入。
よくジャックをバンドの創始者とする見方があるが、実際はどうなのだろう?
ジャックが連れて来ていたドラマーのジョーイ・アイヴェイジアンは18歳であり、デヴィッドはオーディション前にジャックらの演奏は一度も聴いたことがなかった。
VIRGIN STEELEというバンド名がどの時点で付けられたかは不明。
ギタリストでコンポーザーのジャックがバンドの中心人物であったのは事実だが、「VSは元々はジャックのバンドだった」とする見方は正確ではないだろう。。
1981年10月にバンドが完成し、その3週間後にデモを作成(レコーディング1週間、費用は1000ドル)すると、それを聴いたシュラプネルのマイク・ヴァーニーの手引きで
コンピレーション「US METAL-II」に「Children~」を提供、METALLICAやQUEENSRYCHEのメンバーからもファンレターを貰うほどの反響で、
デモとして制作されたものが結局1stアルバムとして発売されることになった。
自主制作コピーですでに1万枚以上売り上げていたというが、MUSIC FOR NATIONS第一弾アーティストとして1982年12月に正式にアルバムデビューするのであった。
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