この曲を聴け! 

Jane Doe / CONVERGE
絶叫者ヨハネ ★★ (2006-02-24 21:24:00)
近年一部で話題のカオティックハードコア、その代表的バンドということで、元来この方面には疎い私も手を出してみましたが……これが何とKing Crimsonです。正しくは70年代中期のへヴィ&ドライなKing Crimsonがハードコアをやっているような音です。

リズムこそ全然違いますが、たぶんギターの感触があまりにもロバート・フリップ教授そっくりなのでCrimsonのように聴こえるのでしょう。音色といいフレーズといい、私には「どこかで聴いたことのあるパターン」(悪くいうとパクリ)が盛りだくさん、ひょっとしてこのバンドのギタリストは教授主催のギター学校の卒業生では?、とまで想像したくなります。ギターだけならAnekdotenなどよりはるかにクリムゾン度高しです。(余談ですが、同じくカオティック系でかの奇才マイク・パットン氏でおなじみのDellinger Escape Planなどは、ギターどころか、曲調までまんま Crimsonというか「Fracture」をやっていてさらに驚きました。この界隈では、クリムゾンブームなのでしょうか?)

では曲もまた素晴らしいかというと…………これが微妙です。つまらなくはないのですが、さりとてそう面白くもないという、どうにも煮え切らない感じです。激音界に生息するバンドですから、当然「曲のよさ」よりは、「激しさ」や「ヘヴィネス」を売り物にしているはずのですが、私はどうにもパワー不足に聞こえます。音が妙に軽くてヤワなのです。

理由の一つは、なぜか低音が弱いこと。HC系にしてはベースの音が目立たないのもありますが、音全体の響きに「打ちこみ感」(布団たたきで思い切り布団を叩いたり、畳の上で勢いよくジャンプして着地したときに感じる「バシリッ」「ズシンッ」という感じで身体に響くあの音)に欠けているので、低音部に重さと残響が加わりません。だから音色の粗さや激しさのわりには重さを感じさせない、カラッとした軽い音になってしまっています。これは狙ってやったのでしょうか?

そしてもう一つ、メタルの様式感に汚染された耳でハードコアを聴くな、とのお叱りを受けそうですが、やはり伝統的HMのミルクを飲んですくすくと育った人間には、どうも曲展開にメリハリがないような気がします。小休止的なパートを挟むとはいえ、一曲を通じてほとんど似たようなノリと勢いでひたすら突進していくため、激しさにアクセントが生れません。曲中でのアグレッションの度合いにあまり起伏がなく、激しさが「平坦に均(なら)されている」ように聞こえるのです。これをグラフで示すと、「激しさの度合い」を示す縦軸のかなり高い位置で水平線が走る、いわゆる「台地状態」になっているようなものです。
なので、最初の方こそアグレッシヴに聴こえても、次第に耳が慣れてしまい、結局あまり激しく聴こえません(余談ですがこういうことを避けるために激しさ志向のメタルやプログレロック、また一部のグラインドコアでは、静寂パートを入れるなり、リズムを工夫するなりして、横線がデコボコ、それもなるべく角度が急になるよう、あれこれ工夫しているようです。中には「頭なぞ使ってられっか」とばかりに馬鹿力のヘヴィネス&激テクで押し切ろうとする熱き肉体派もいらっしゃるようですが)。
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