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Kanto 宣戦布告 Kansai / V.A. (VARIOUS ARTISTS) / OMNIBUS
失恋船長 ★★★ (2024-11-17 18:01:22)
関東のバンドと関西のバンドが対峙する構図のオムニバスアルバムだと思っている。ちなみにアナログ盤しか存在しない1985年リリースの企画モノだ。

収録曲とバンドは下記に
1.Slayer - Shoot Down Tokyo
2.Slayer - Hurt Angel
3.麗's - Requiem
4.麗's - Resurrection
5.Storm Bringer - ラブ ファイヤー
Side B
6.Virgin Killer - Midnight Lady
7.Virgin Killer - Break Down
8.Pandora - Kiss and Kiss
9.Pandora - Romance Messenger
10.Storm Bringer - ダークスカイ


関西勢がSlayer (OCTAVE-4,若干17歳新生登場) Storm Bringer(ダークなHEARTに熱い想い) Pandora(KOBE LAST HERO)
関東勢が麗's(AGE16' HARD ROCK ROMANCER debut) Virgin Killer (女学生よ覚悟しな) 
ちなみに()の文章はジャケットに載せられた各バンド紹介文である。

若い本当の新人と、ある程度キャリアのある若手バンドによるオムニバス。全員17歳と思わないし、16才のハードロックロマンサーは誰なんだ言う気になる点が多すぎるのだが、出している音は日本じんらしい叙情派ハードサウンドである。○○風が満載なので、まるで○○みたいだと、天下統一した気分で大口を叩くメディア論者は空気を読んで自ら出禁してくれ。

まずSLAYERであるがツインギター編成の5人組、これぞジャパニーズメタルなShoot Down Tokyoで幕開け、小気味よく刻まれるリズムと甘めの歌声、さざ波ヴィヴラードは気になるが、上手いことやり切ってくれる、歌詞も80年代的だ。何もかもが懐かしい、これを楽しめるオールドスクール大好きマニアならば、なんか嬉しくなるだろう。もうこういうの新譜ではきけんもね。Hurt Angelは日本らしい叙情派ハードポップソング。こういうのは欧米では目に掛らない。

麗's はキーボードを効果的に使いスケールの大きさを見せつけた、構成もちょいクドめだが聴かせてくれるRequiem。そして甘い歌声を活かしたドラマティックなハードナンバー、北欧風味を上手く乗せジャパニーズメタル万歳な叙情派様式美スタイルを確立。若さよりも渋みと完成度に驚きますね。ハードロックロマンサーに偽り無しです。

RAINBOWスタイルのラブファイヤーを披露してくれたのはStorm Bringer。バンド名からも漂う音楽性、ここまで聴いて男性シンガーは皆、似たようなアプローチの歌とメロを披露することに驚く。これが80年代中期のジャパニーズメタル問題なんだなぁと感じる。個性不足は否めないが各バンド、楽曲で色を付けている。このバンドもキーボード入の5人組だ。

⑥⑦を担当するのは関東の女性シンガー大沢恵子を要する正統派メタルバンド。スコーピオンズ風味とジャパニーズメタルを上手く掛け合わせたスタイルは、バンド名に恥じない。NWOBHM風味も取り込みキレのあるリフワークとハードなリズムで安定感を見せつけた。歌い手も一番安定感がある。

神戸のラストヒーローは⑧⑨を担当。参加バンドの中で一番迫力が足りない。歌い手も一番弱い。丁寧に積み上げた楽曲は日本人らしい情緒があるのだが、薄っぺらい音のせいでアマチュア臭が漂ったのはマイナスだ。この手のオムニバスあるあるの、各自の音を寄せ集めたが故の問題だが、もう少し工夫して欲しい。このまま発売した方に責任を感じる。

ラストは再びStorm Bringer。その前2曲が弱かったので、ラストはガツーンと決めて欲しかったが、そういうタイプの曲ではなく甘いメロウな曲であったが、彼らが悪いわけではない。ジャパニーズ様式美メタルとしては上々の出来映え、フルートのような音色がアクセントになっている。


この作品。未CD化だ。レーベルもよく分からない。それだけに再発なんて考えられないし、そもそも当時でも売れたのか?という疑問が強いが、とにかくマニアしか手は出ないだろう。

似たような曲調と歌唱スタイル。個性は薄めだが、それが日本の様式美メタル系ということなのだろう。資料としては実に貴重な一枚である。そして年に1回は通して聴きたくなる一枚だ。

くれぐれも類似性と稚拙な面を攻撃する輩は出入り禁止でお願いしたい。こういう音は好きモノ以外には受け入れられないものがある、その小さい共感性を大切にするマニアと楽しみたい作品だ。でもこれ、オークションサイトでは結構な値段が付いていたんだよね。いるんだよなぁ。好きモノがさぁ。まぁメディアに踊らされないヤツがホンモノですからね。

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