この曲を聴け!
Virtual Empire / CRYSTAL BALL
失恋船長 ★★★ (2024-10-27 21:43:00)
ドラムソロのようなSEから、硬質でしなやかなメロディックメタルで幕が開きます。前作の失敗を取り返すかの如くスピード感とメロディックメタル然とした方式を取り込むことで、懐かしき商業ベースサウンドの復権、前作では影を潜めたキーボードとギターのバトルも見られ、華やかさは倍増した。時代は2002年、それだけに硬質感を強めているのは、致し方ないこと。この手のサウンドはEUROPEのような華麗さが求められるし、デビュー作にはそういう懐かしき、味わいをベースにしていただけに、前作の路線変更には疑問を感じずにはいられませんでしたが、今作は行きすぎた改革から一歩後退して、オーセンティックなサウンドを見つめ直してきた。
それは進化を否定しているようにも感じるでしょう。どの時代のメタルが好きなのかでも評価が分かれます。ギターサウンドにはグランジ/オルタナムーブメントの影響は否めません。それがプラスに働いているとは思えませんが、ポジティブな音楽性、その軽やかな手触りのメロディが強化された事は、このバンドの本文としか思えないので、ここは素直に評価したい。
しかし時代に飲み込まれたバンドだ。もし1st路線を純粋に突き詰めたら今作の出来映えは、もっと凄いモノになっていただろう。メランコリックなメロディを奏でるギターソロ、もっと聴きたいと思わせる腕前だけに無念だ。相変わらず歌い手のヘタウマ感からくるミスマッチ感も相乗効果を生み出していない。シンガーにとって前作の方が良かったのだろうが、バンドサウンドがメロディックメタル路線へと舵を切った事は大歓迎である。オーセンティックなメタルをやるのは難しい、だがベタには敵わない。この絶妙なさじ加減が重要だ。
そして一番の悲劇は、良作を生み出したのに前作の失敗の煽り&時代の流れのせいで国内盤が見送られたこと。もっていないバンドだったなぁ。1st支持者には今作がシックリくるでしょう。2枚目支持者には、古典に戻ったと残念な気分になるでしょうね。
→同意