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Panther / PAIN OF SALVATION
うにぶ ★★★ (2021-01-03 00:42:43)
'20年発表の10thフル・アルバムです(『FALLING HOME』も数えるなら11作目)。
ひねくれた彼らのこと、もちろん今作も、前作からだいぶ趣が変わっています。うーん、恐らく『SCARSICK』が楽しめた人なら比較的受け入れられそうな作風です。リズミカルで風刺的でありつつ内省的で、またメタルじゃなくなってきています。よく聴くと凄まじく凝っていて興味深いけれども、わかりにくい。
相変わらず続いているリズム実験は面白いです。ただ、前作で顕著だったコーラス(ヴォーカル・ハーモニー/リズム)方面での冒険ももうちょっと推し進めてくれていたら更に嬉しかったなー。
ついでに文句を言うなら、こんな豹頭人ジャケ(アートワーク)なら、もうちょっと躍動感のある曲を増やしてほしい。(とはいえ犬の世界に閉じ込められた豹というようなモチーフが社会からの孤絶等を示しているのであれば、鬱々とした音楽でも仕方がないか)
あと、ダブステップ(とかブレイクビーツ/ドラムンベース)以降の音楽を再解釈してメタルに取り込むような手法も、レーベル・メイトのLEPROUSが実にメロディアスに自然に融合させていたり、FROST*がハチャメチャに導入したりしているので、もっとガンガンやっちゃって良かったんじゃないかなー。ただ、2枚組輸入盤に入ったおまけ曲「Fifi Gruffi」はふざけまくってめっちゃ前衛的だけど、さすがにバランス悪すぎて本編には入れられないもんなー(でももっとこういうの聴きたい)。
たぶんこういう音楽性が好きな人はRADIOHEADやBJöRKやBON IVERなんかも好物だと思いますが、それらのアーティストの方がジャンル自体を創作してしまうような革新性が高かったと思います。J-POPやジャズ界隈でもこういうリズム(変則的シンコペーション?)での実験はここ10年くらい盛んに行われてきた印象。できれば15年前くらいにこういう音楽を叩きつけてほしかったなー。
と、なんかネガティヴなことばっかり言っちゃってますが、それは愛情の裏返しで、なんだかんだで楽しみまくっているアルバムです。
POSがやるとやっぱり彼らの個性がしっかり刻印されて、唯一無二の変な音楽になっちゃうから不思議。過剰でこってり濃厚で重苦しく受け入れ難くともなぜか癖になって繰り返し聴いてしまうのでした。
万人に勧められる音楽性ではなく、売れる要素も少ない(国内盤出ない・・・)アルバムですが、PVもある(1)「Accelerator」・(3)「Restless Boy」・(7)「Panther」を聴いて拒否反応が出なかった人にはお試しいただきたい。地味なようで過激ですよ、これ。
最後は「TO BE CONTINUED...」ということで続きますが、犬の世界では感覚が違いすぎて「落ち着きのない少年」であったパンサー君は、アートワークからすると次回、獅子の世界にでも行くのでしょうか? 今回も歌詞が抽象的でメタファーが理解しづらい。やはり解説・訳詞つきの日本盤がほしいなぁ。

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