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Speed of Sound / ANVIL
火薬バカ一代 ★★★ (2020-10-19 23:53:19)
ドキュメンタリー映画で再ブレイクの切っ掛けを掴んだANVIL。それは単に幸運が転がり込んできたのではなく、メタル冬の時代である90年代にも挫けず、また「お、まだやってんかい」ってな無神経な輩(俺ですが)の言葉にも心を折られることなく、ヨーロッパに活路を見い出して地道にアルバム・リリースとツアーを重ねた時期の踏ん張りがあったればこそ。
本作はミュージシャン稼業だけでは家族を養っていけないので、それこそリップス(Vo、G)が給食のおじさんとしても糊口を凌いでいた時期(’99年)に発表された9thアルバム。ここに託されているのは、ダンプカーが屋台や通行人を蹴散らしながら爆走するアクション映画のカーチェイス・シーンを彷彿とさせるパワー・メタルで、ぶっちゃけ『SPEED OF SOUND』という直球極まりないタイトルと、翼とジェット・エンジンを装着した金床(ANVIL)が空飛んでるという底抜けにゴキゲンなアートワークが全てを物語る通りの、ヒネリも何もないサウンドです。良い意味で。
バラードには目もくれず、終始肩をいからせまくりの楽曲からは、80年代ANVILサウンドの魅力の一端を担っていた「メロディのキャッチーさ」が薄れてしまっていて、そのせいかリップスのVoやG以上に、ロブ・ライナーの猛烈なドラミングの方が目立っていているという。特にブラスト・ビートまで飛び出す⑤(キャプテンの解説によれば元ネタはTERRORIZERらしいのですが)は本編のハイライト的インパクトを放っていますよ。
「夢を諦めない」ド根性とエネルギーが濃厚に渦巻くパワフル極まりない1枚。迂闊に手を出すと胃もたれ必至なので胃腸薬片手にどうぞ。
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