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The Eternal Idol / BLACK SABBATH
いおっみ ★★ (2008-12-11 19:33:00)
デイズリー&マーティンが美味しすぎる1枚。
言うまでもなくアイオミは天才だ。だが、彼が本当に輝くためには「相棒」の存在もまた不可欠なのだ。
この場合の「相棒」とはシンガーのことではない。
サバスはジャムで曲を作るわけだが、その際にアイディアを出し合い、アイオミのリフを発展させ、アレンジを練っていく人間が必要なのだ。
他作ではギーザー・バトラーやコージー・パウエルが担ったその役割を、本作ではボブ・デイズリーが負っている。
そう、オジーのソロアルバムで優れた作曲能力を披露していた彼だ。
本作のベースはすべてデイズリーが弾いたと言われるが、さらに(ノークレジットだが)作曲段階から参加し、歌詞やメロディを書いたのだそうだ。
ギーザーとはまた違った趣のベースライン、芳醇なメロディは本作にしかない最大の美点だろう。
また、1つの楽しみ方としてオジーの「NO REST FOR THE WICKED」と並べて聴くのはいかがだろうか。
アイオミとオジー、同根の男達が袂を分かち、「ボブ・デイズリー」という触媒を通して同時代に作り出した音楽。この醍醐味を味わえるのはファンならではの特権というものだ。
もう1つの美点はトニー・マーティンの歌。
本作のデモブートレッグではレイ・ギランが歌っている。堂に入った歌唱は実に素晴らしいパフォーマンスだったが、アイオミのソロ作として作られた前作「SEVENTH STAR」と同種の物足りなさを覚えもする。
ところがマーティンが歌った本作完成品は情感に溢れ、「サバスなのだ」という説得力すら漂わせている。
デモの段階で完成品と全く同じメロディであり、マーティンはわずか数日でなぞっただけ。極端に言えば「音色としての声」を提供したにすぎない。
それ故、彼の創造性、オリジナリティはここにはない。
つまり、純粋にシンガーとしての素養だけで楽曲の魅力、説得力を引き出しているのだ!
いかに彼がサバスのスタイル、曲にフィットしたシンガーであるかの証左となるだろう。
コージー・パウエルが加入した次作「HEADLESS CROSS」ではマーティンも曲作りに参加、「新たなるサバス世界!」の圧倒的なステイトメントを創り出すことになる。
それに比べたら本作はバンド感に乏しく、曲も未だソロ作のテイストを引きずっている。
実際この当時はバンドではなかったのだから当然だ。
だが、サバスに深入りしたファンであれば「作曲家デイズリーとのコラボレーションを、歌手マーティンが歌う」……この歴史上の妙味を味わえる、またとない1枚となるだろう。
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