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The Music of Erich Zann / MEKONG DELTA
火薬バカ一代 ★★★ (2017-09-28 23:28:26)
80年代に「テクノ・スピード・メタルの巨匠」なる称号を得たドイツのテクニカル・スラッシャー、MEKONG DELTA、’88年発表の2ndアルバム。
悪魔を異次元に封じるため演奏を続ける老音楽家の運命を描いた、H.P.ラヴクラフトの短編小説『エーリッヒ・ツァンの音楽』題材のコンセプト・アルバムでもある今作は、バンドがテーマに掲げる「クラシックとスラッシュ・メタルの融合」が更に強力に推進された印象(ジャケ絵のオッサンはベートーヴェンではない)。クラシック曲のカヴァーはもとより、別に巧かないがメロディをなぞって歌う場面が増えたVoといい、バラードリーなパートやオーケストレーションの導入といい、アレンジや曲展開の複雑さがこれまで以上に高まった収録曲は、彼らが個性確立に向けて大きく前進した証左。中でもヴァイオリンを交えつつ激烈に突っ走る⑨から、一転して静謐に本編の幕を引く⑩への流れは本編の白眉かと。
尤も、相変わらず曲構成にキャッチネスはほぼ皆無。何よりLIVING DEATHのGコンビが刻み倒す鋭利なGリフと、タイト極まりない名手ヨルグ・マイケルの爆走ドラム、そこに絡むラルフ・ヒューベルトの音数多めのBとに支えられた、独産スラッシャーらしい「突進上等」精神はここでも健在。正直に言えばヒネった楽曲よりも、ツインGハーモニーが切迫感を煽るOPナンバー①や、サビが「それはねえ、それはねぇだろ!」に聴こえて仕方ない④、ツインGとDsの殺傷力が十二分に発揮された⑥といった、ストレートに走り抜けるタイプの楽曲の方が、より好みなのですが。
スラッシャー向けMEKONG DELTA入門盤には本作辺りをお薦めしたい次第。

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