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Marquee Moon / TELEVISION
はっちゃん ★★★ (2014-08-13 22:20:18)
《ロック裏名盤》筆頭の1枚。

「アメリカン・ロック」と言う固有名詞から何をイメージするか。偏見で言わせてもらうなら、おそらく
一般の大多数はカリフォルニアの青い空、南部のほこりっぽさ、豪放磊落で底抜けの明るさ、大陸的な
開放感などなど、そのイメージはきわめて健全な部分へと着地する。NIRVANAが登場するまでは。

NYパンクはムーヴメントとは無縁のところでひっそりと咲いたロックの徒花だ。
NYパンクというカテゴリーに括られているバンドたちは各々がムーヴメントを起こそうなんて考えは
その音楽性、精神性を考えれば毛頭無かったと容易に想像がつく。

TELEVISIONも自分たちの表現したいことを追求していただけで、その結果評価は高いものになるが
ポピュラリティということで考えると現在に至るまで不当と思えるほど低い。しかし、この1stは
意外なほどポップだ。同時にTELEVISIONならではのアート・フォームがこの時点で完成、確立されて
いる。ポップだと書いたが万人を受け入れるほど彼らの音楽はぬるくはない。むしろ入り口のドアには
ガッチリと施錠されている印象さえある。が、その鍵穴から中を覗くと言葉では表現し難い摩訶不思議な
世界が展開されている。

神経質でありながら妙な浮遊感。淡く儚げに見えてその奥で渦巻く情念。
音楽は芸術だというけど、もはや本作は立派なアートだと思う。品格の話ではないし、もちろん高尚だと
いうつもりも無い。ロックは芸術たり得るという事をこの1枚で証明してみせたTELEVISIONの功績は
もっと評価されていい。

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