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Void / CRAFT
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2011-09-09 23:06:29)
2011年発表の4th。

以前参考にしていたブログで、「リフの歪め方が上手いバンド」と評価されてて、作品を手にとって以来「このバンドは、ブラックの真髄を聴かせてくれるバンドかもしれない…」というくらい、その作風に感心してしまったんですが…。当然、そんなバンドが新作を出すとなったら当然チェックしますよね。
…で、そんな期待値が高いにも程がある状態で聴いたのに、これが全く期待を裏切らない、いやそれ以上のものを聴かせてくれる作品だったんですよね…。

以前からブラックである事に拘った音作りには定評があるバンドですが、今作はその凝り具合、拘り具合が更にパワーアップした印象。リフの性質やその音作りの組み合わせによる演出力が尋常じゃないです。
まず作品最初のリフからして、オールドスクールなダーティなリフにトレモロを混ぜ、ピリッとした質感を出しているし、ミドルテンポに図太いリフを脈動させ、その上に陰鬱極まりないトレモロを乗せたパートでは、鬱ブラックに有機的な気持ち悪さを加えたような、グロい雰囲気が演出されてる。

他にも、ザカザカしたリフの刻みが、ドラムのフィルインから重みを増して迫るパートでは目の醒めるような迫力があるし、非メロディックなトレモロで聴き手の正気を削りつつ、ベースがドワーンと歪んだ低音を垂れ流すパートは、スラッジに通じるような重々しさがあると思う。しかもその上、シャーシャーしたリフとメロウなトレモロで疾走する、プリブラの王道的な展開を演らせても、明らかにトップクラスなのが素晴らしい。

特にこういう、プリミティブ系・オールドスクール系など、安易な実験性やハイクオリティな音作りに頼れない作風のバンドが好きな人ほど、そのアイデアの豊富さに驚くと思う。だってこれだけ色々やりながら、変に実験的にもドラマティックにもならずに、ひたすら「硬派」なブラックなんですよ!?これって本当に凄い事だと思う。ただ今回はこれまで以上にオールドスクールで、ダーティな太いリフ多めでギターソロも入れてくる辺り、昔のDARKTHRONE直系とは言えなくなってる感じですが。

今まで主にリフ絡みを褒めてきましたが、何気にドラムの適度な生々しさといい、ヴォーカルの音が割れる寸前のような、耳元で叫ばれるようなミックスといい、他の部分の音作りも非常に上手いんですよね。
ほんと、この作品に関しては褒める所しか見つからないです。このバンドの音って、ブラックメタルフリークが、数あるバンドの作品を聴き漁って、膨大な取捨選択の末、遂に辿り着いたスタイル…みたいな凄みがあるんですよね。本当に、ブラックメタルのエッセンス(本質)を凝縮したって感じで。当然、今年のベストアルバム候補です。個人的にはこの音作りの上手さ・凄みはブラック好きならず、ドゥーム好きにも推薦したいところ。

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