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Rage for Order / QUEENSRYCHE
絶叫者ヨハネ ★★ (2006-03-11 20:29:00)
80年代Queensrycheの最大の遺産。
若き日の彼らの野心的な姿勢が結実したすばらしい作品。
アルバムトータルでは、彼らの最高傑作はやはりOperation〰でしょうが、曲単位の完成度と型にとらわれない面白さという点ではこちらの方が上だと思います。
当時のRycheがいかに鋭いセンスを備えたバンドだったかがわかります。凡百のバンドとは音に対する感覚の差が歴然、ドラムの音からして説得力が違います。今も昔も、テクニック賛美と「メタルかくあるべし」の精神論的形式主義が幅を利かせるHM/HRフィールドにあって、彼らのようにセンス主導で、定型からの逸脱をおそれないバンドは稀有な存在でした。
デジタルな音響や特殊な録音法はもちろんのこと、従来のHMとは明らかに一線を画した楽曲アプローチが最大の特徴。おそらくリアルタイムでこれに接した人は相当面食らったはず(とくにデジタルメタルの④⑩のアレンジは強烈無比)。しかも、これが単なる「実験」の域にとどまらず、アルバムコンセプトに沿った音楽的「手法」として、きわめて的確に用いられているのがすばらしいところ。実験とか前衛的というのが安易な自己目的化しておらず、プログレッシヴな姿勢を取りつつも、根っこの所ではHM以外の何ものでもない音楽になっています。気がついてみたら、HMというジャンルの表現の幅がいつのまにか広がっていた、という本当の意味で「前進的 Progressive」な作風。これには本当に拍手を送りたいです。
一曲を除いて後はすべてミドルorスローテンポ、かつエクスペリメンタルな作風でありながら、全曲どれもシングルに切れそうなほどキャッチーな仕上がり。方向性の違いこそあれ、どれも基本的にメロディアス&ドラマティックでジワジワと盛り上げていきます。冷たく機械的であると同時に、激烈なまでに感情的な部分があるのがこの時期のRycheの最大の特徴。ミドルテンポ主体で、ここまでテンションが高いのは異例。とりわけ⑦⑨⑩のおそるべき緊張感は歌詞とあいまってただ事ではありません。
さらに、曲ごとのイメージがこうも鮮明で、叙景力豊かなアルバムというのは珍しいのではないのでしょうか? どの曲にも特有の「光景」があるため、決してポップでないにも関わらず、少し聴きこんだけで簡単に曲のタイトルと曲調が覚えられてしまいます。歌詞のテーマと音楽がかもしだすイメージが見事にシンクロしているためです。「曲のイメージに合わない和音は、何が何でも鳴らさないぞ」みたいな、響きへのこだわりがうかがえます。これはすでに音で見る映画(もちろん近未来SFサスペンス調)です。ジャンル問わず、音によってイメージや風景を表現したいミュージシャンにとって、これは最高の教材になるのではないのでしょうか。
あらゆる面でQueensrycheらしい魅力にあふれており、彼らのアルバムの中でもとくにお勧めしたい作品です(Operation〰は何もいわなくとも、みんな聴くよね。)
彼らの曲には一度聴いてよくわからなくとも、なぜかしばらくの間聴き続けてみたい、という気を起こさせるような不思議なフックがあるので、「プログレ」「難解」との評判はそんなに気にすることはないかと。Promised Landあたりに比べればはるかに近づきやすいし(ちなみにHM的に一番ストレートでわかりやすいのはOperation〰だったりする。)
余談ですが、この冒険的で今聴いてもわかりやすいとはいえない作品に対して、リアルタイムで97点(!)という評価を与えた、B!誌の大野女史には敬服いたします。
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