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No Cause for Celebration / ROSICRUCIAN
火薬バカ一代 ★★ (2010-06-20 19:21:00)
1stの時点で、既に一風変わったスラッシュ・サウンドを聴かせてくれていた彼らなれど、
この日本デビュー作となった'94年発表の2ndでは、更にそうした要素を拡充。国内盤の帯に付けられた惹句
「華麗なるバロック音楽とアグレッシブなスラッシュ・メタルの融合」はちょいと筆が滑りすぎだが、
ネオクラG、朗々と歌うオペラVo、ヴァイオリン、Key、ピアノ等が強引に捻じ込まれた楽曲の数々は、実際かなり個性的。
と言っても「アバンギャルド」と評するほど突き抜けた作風ではなく、そうした実験的な要素は主に楽曲の
ドラマ性を底上げする方向で活かされているし、何よりアルバム全編を貫くのは、飽くまでスラッシュ・メタル然
とした疾走感(音作りはデス・メタル風味だが)。ゆえにメタル者の耳にも結構取っ付き易い。
前作に比べると、'94年という時節柄へヴィネスが強調されている印象が無きにしも非ずだが、ドスの効いたVoに
タイトなDsという、実力派新メンバーの加入効果もあって、静と動の落差、ダイナミックな緩急が盛り込まれた
曲展開が生み出すカタルシスはこれまで以上。バンドとしてのレベルは確実に上がっている。
如何にも北欧のバンドらしい(STONEなんかに通じる)寒々とした荒涼感を撒き散らしながら疾走する
OPナンバー①や、ヴァイオリンとネオ・クラシカルGがスリリング且つ劇的に絡み合う④、北欧民謡風のメロディを
爪弾くアコギがミステリアスな雰囲気を盛り上げる⑦、ラストを激烈に締め括る高速スラッシュ・ソングながら
中間部において唐突にオペラVoが炸裂する⑨といった楽曲は、スラッシーな攻撃性と、このバンドならではの
実験精神が上手いこと同居した魅力溢れる名曲だ。
せっかく本作をもって個性的なサウンドを確立したのに、これを最後に解散してしまったのは残念至極。

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