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We Are the Void / DARK TRANQUILLITY
寝坊メタル ★★ (2010-03-11 09:02:00)
3年ぶりの新作。今回で9作目のアルバムになります。
最初に結論を述べれば、今作もこれまでの作品と同様に素晴らしい完成度の作品です。
基本的には前作の延長線上にある作品ですが、ベーシストの交代は思っていたよりも大きな変化だったのではないでしょうか。
前任のマイケル・ニクラソンはこのバンドの骨ではありましたが、決してヘヴィネスを前面に押し出したベーシストではなかったと思います。
それに対して後任のダニエル・アントンソンはSoilworkやDimension Zeroでの活躍が示すとおり、
ヘヴィなベーシストであり、その加入は結果としてこの作品に大きな変化をもたらしています。
つまり前作よりダークでありつつも、ずっしりとした重厚な雰囲気を持った作品となっているのです。
また、それにはベースの変化だけではなく、今までよりもヘヴィで多彩なリズムを叩くようになったドラムと、
より印象的で時としてサイバーさを感じさせるキーボードが大きく作用しているように思われます。
そして、そのダークさは時としてブラックメタル的ですらあるように感じられます。
これまでにも、そのような雰囲気を持った曲はありましたが、今回は特にそうではないでしょうか。
ミカエルのグロウルも心成しかそれに近づいており、より禍々しい印象を受けました。
また、クリーンヴォイスはTiamatやMoonspellを思わせるよりディープな低音になっており、ゴシカルなパートでは非常によく機能しています。
と、ここまで書くと「本当にこれまでのDark Tranquillityを期待してよいのか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ですがご安心ください。あくまで基本はDark Tranquillityそのものであり、メロディアスかつアグレッシヴな音でファンを裏切ることはありません。
事実、これまでの彼ららしいメロディックデスメタルナンバーも多く収録されています。
また、これまでで最もバラエティに富んだ作品でもあり、デス・ブラック色を感じさせる①②、強烈なメロディックデスの③④⑨⑩、
悲しみが溢れる⑤⑦、展開目まぐるしい⑧、これまでにないくらい沈痛な⑪と、様々な楽曲がリスナーを楽しませてくれます。
勿論のこと、バラエティに富んでいながら高い完成度は維持されており、彼らの緻密なソングライティングが功を制した結果ではないでしょうか。
もはや"Punish My Heaven"のようなド派手な名曲は聴けませんが、これまでにないくらいダークでアグレッシヴな①や、ドラマティックな⑤⑦は新たな代表曲と言えそうです。
また、ミカエルが200冊以上の詩集を読んだというだけあって、歌詞はこれまででもっとも詩的な内容になっています。
彼らの本来持っているダークさが強烈に吐き出された至高の一枚。間違いなく最高傑作候補の一枚であることに疑いの余地はありません。

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