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鵬翼 / ムック
Usher-to-the-ETHER ★★ (2005-12-02 16:50:00)
今年発売された、通算5枚目となるフルアルバム。
雑誌のインタビューなどで「常温の音楽」への傾倒を口にしていた事や、パイロットシングルの
作風からも分かるように、今までのような絶望感や寂寥感に満ちたディプレッシブさが減り、
その代わりにちょっとした切なさや感情の機微などを歌う、メランコリックさが際立つ作風の
アルバムに仕上がっています。しかしそれでいて達瑯さんの感情過多なヴォーカリゼーションや
音作りにこだわったドラマティックで妥協の無いアレンジなどムックの長所や特性は
しっかりと引き継がれていて、なかなかの名盤といえる作品だと思います。
「是空」の時は前を向こうとし過ぎで視野狭窄に陥っていた印象を受けましたが、
今作の「つばさ」などは本当の意味で前を向いた曲と言えるのではないでしょうか。
ヴォーカル面では作風の変化のせいか達瑯さんが珍しくファルセットを多用してます。
あまり上手いとは言えない(ファルセットになると声量がいきなり下がる)けれど、
使い所がとても上手く、これが作品の情感を更に強める要素の一つになっていますね。
特に「赤線」のラスト手前での僅かに擦れたそれは、歌詞とも相まって泣きそうになってしまうんですよね…
また、抑鬱された世界の中にあってもそれを否定せずに受け入れ、前に進んで行こうとする
力強さが感じられる「輝く世界」や、リストカットにより自殺した人たちへの鎮魂歌とも
とれる「赤線」など、今までのようなディープな主題を取り扱った楽曲もしっかり存在するのが
やはり嬉しい所。特に「赤線」はテーマ的に説教臭くなりがちな所をそうはならず、
ただ絶望を振り撒くだけではなく、温かさも感じさせるという離れ業を簡単にやってのけ
やはり優れたバンドであることを再び証明したように思います。もう信者です(笑)
ただ唯一の欠点は今までの作品と比べて音質が悪い所。
シングル曲のミックスでさえマスターボリュームが低くなってるように感じるんですが…。
ちなみに初回盤はDVD付きとボーナスCD付きの2種類が発売されています。
私は流石に両方は買えませんでしたが(信者失格?)、「遮断」はムックでも有数のカッコイイ
リフを持ったかなりの名曲ですし、「最終列車」のフォークアレンジも原曲のメロディが
素晴らしいだけに物凄くハマってます。個人的には両方買えないならボーナスCD付きがお勧めです。
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