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kamiko!さんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 301-400

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WRAITH OF THE ROPES - Ada - Death Bed ★★★ (2020-07-29 20:26:26)

少女監禁サウンドが支配する楽曲群の中でも、特に鬼畜なタイトルが印象的だ。
英語のニュアンスは正確には理解できないが、「この地獄から逃れられない」的な問いかけ調の歌詞が
暴虐的な歪んだデスヴォイスで語られ、高音域のピアノの旋律と、鈍重なノイズで鬼畜な世界が描かれる。
非常に嫌悪感を伴うものの、男性の誰しもが持っている独占欲を刺激するテーマを表現したこのサウンドは
一聴の価値はある。


WRAITH OF THE ROPES - Ada ★★ (2020-07-29 20:06:05)

米国産ホラーメタル2005年作
当時ドゥーム作品を買い漁っていたFiredoomMusicレーベルからリリースのアナウンスがあったワリに、紆余曲折があったのか
TotalRustというイスラエルのレーベルから発売された作品。関わっているレーベルがドゥーム専門だったからか、宣伝文句やレビューでは
フューネラルドゥーム作品として扱われているところが多かったが、演奏している当人らはフューネラルドゥームではなく
ホラーメタルであると言っていた。確かに音楽性は純粋なフューネラルドゥームではなく、スローで陰湿な暗さが支配するサウンド
ではあるものの、ギターは殆ど前面に出ることなく、インダストリアルな音楽性が前面に出た根暗サウンドだ。
ポルノゴア等のエロ路線は基本買わないんだが、この盤はドゥーム志向の強いサウンドでは珍しく、18禁少女監禁モノだ。
廃墟を全裸の少女が彷徨っているモノトーンジャケ、血を感じさせる赤を基調としたバンドロゴのコントラストが鬼畜だ。
ジャケ裏には、ぬいぐるみを持った少女が監禁され横たわっているし、ロープで手首を拘束されている少女などもいる。
CD背表紙あたりにはNever-Ending Painなどと書かれており、非常に嫌悪感を伴う暴虐性が前面に出たコンセプトだ。
当時は結構酷評されていた。というのも、ドゥームメタルとして聴くと物足りない。そもそも彼らはフューネラルドゥームをやっていると
思っていないのだから、そういう視点で評価するとダメだ。ホラーアンビエント作品を聴く耳で堪能すれば、なかなか味わい深い。
こういう異端バンドが活動を続けると、突如スゴイ作品を創ったりするんだが、それ以降デジタル作品を残したほか、音沙汰が無いので
たぶん活動していないんだろうと思う。在籍メンバーは当時Toture Wheelというドゥームバンドでも活動しており、こちらは
ボクは結構な回数聴いたワリと好きな盤だったが、Wraith of the Ropesの方は、悪趣味過ぎて敬遠しがちだったね。


SOUL DISSOLUTION - Stardust ★★★ (2020-07-29 19:09:34)

ベルギー産ブラックメタル2018年作
まるでスマホの待ち受けにありそうな、海と星空の幻想的な景色が印象的なジャケ、Stardustというアルバムタイトルからも
自然崇拝的なポストブラックをやりたいんだろうということがヒシヒシと伝わってくる好盤。
よくある森林崇拝系ブラックと比較すると、低音を全くカットしておらず、空間系エフェクトが若干浅めなところがあり
このサウンドが自然を表現しきれていないという印象は持っている。星屑を高音部のトレモロリフで表現しようとする感じも
とてもよく理解できる。が、録音状態をもう少しローファイな感じにしないと、自然崇拝的な音に感じられない。
ダメ出ししたが、美しい星屑の夜空をポストブラックで表現したい思いが物凄く伝わってきて、ホント惜しいなと思わせるものの
とても好感触で、頑張ってほしいと思うサウンドだ。霧立ち込める森林を表現することに比べて、霧のかかっていない夜景を
表現するのは、なかなか難しいんじゃないかなぁと思うが、100点満点に近づくにはあと一歩、というところだ。
現状では、とてもオーソドックスな、ほんの少しポストブラック寄りのブラックメタルで、ガナリ声、トレモロリフといった
ブラックメタルの演奏様式で聴かせるタイプ。一般の自然崇拝モノよりも霞んでなく、重量感が厚めだ。
今年ボクがイチオシしたい米産ポストブラックAstronoidのサウンドを、夜景バージョンにしたような世界観は、とても魅力的だ。
この路線を更に追求して欲しい。次作で進化することに期待感を感じずにはいられないサウンドだ。ホント頑張ってほしいと思っている。


BATHSHEBA - Servus ★★★ (2020-07-29 18:15:25)

ベルギー産魔女ドゥーム2017年作
Serpencult、Death Penaltyでキュートな魅力を発揮してきたMichelle Noconの女声ヴォーカルによる真性ドゥームだ。
Thee Plague of Gentlemenの鉄板メンバーでやっていたSerpencultはオーソドックスなドゥーム・スラッジが前面に出て
女声ヴォーカルはあくまでおまけといった印象を持っていたが、この盤はMichelle Noconの魔女的存在がより前面に出た印象だ。
目を塞がれたようにも見える淑女が描かれたジャケ、インナーに描かれる人為的に形作られた木片は、魔女的イメージを想起させる。
また、曲目や歌詞からも、魔性を前面に出した印象があり、Michelle Noconの魅力を底上げし存在感が随分と増した感じだ。
生粋のドゥームフリークから言わせれば、演奏はSerpencultの真っ黒でドロドロなズブズブ感には敵わない、と言いたいところだが、
Michelle Noconの魔性を表現したサウンドとしては、ドゥームにとらわれない、アップテンポやアヴァンギャルドな激しさを盛り込んだ
こちらのスタイルの方がベストマッチだと言える。そういう演奏をバックに、Michelle Noconは単にキュートに歌うスタイルではなく
より毒気を盛り込んだ吐き出すような歌唱を始め、以前と比べて随分と本格的な真性さを備えた呪術を思わせるスタイルに深化している。
このバンドの活動を今後も続けるのか不明だが、彼女の最新の作品としてはOf Blood And Mercuryというポストロック的なユニットが
今年アルバムをリリースしている。こちらもテーマは呪術的な印象は持つが、脱メタル志向が強く、再びキュートな魅力に回帰している。
Bathshebaでヴォーカルのポテンシャルをかなり向上させた印象を持ったが、結局のところ、Of Blood And Mercuryで見せる
キュートにクリーンに歌い上げる歌唱の方がボクとしては好きだなぁと感じる。


SERPENTCULT - Weight of Light ★★★ (2020-07-29 17:45:57)

ベルギー産ドゥームメタル2008年作
Michelle Noconのキュートな女声ヴォーカルが特徴のドゥーム・スラッジど真ん中の真っ黒サウンドだ。
女声というわかりやすい個性がクローズアップされがちだが、このバンドの真の魅力は前身バンドThee Plague of Gentlemen
で培われたハイレベルのドゥームサウンドにあり、そんな贅沢な演奏を携えた魔女ドゥームというスタイルが素晴らしい。
次作ではMichelle Noconは脱退し、Death PenaltyやBathshebaに鞍替えしてしまう。女声を失ったこのバンドの方向性は、
より深みあるサウンドを求めてカオティックな音楽性へと志向していくが、オーソドックスなドゥーム・スラッジの安定感という点では次作よりこの盤が上。
一方でMichelle Noconの歌は、この盤時点では「女声」という個性を放つに止まっていると感じるが、Bathshebaでより
表情豊かな魔女的個性を発揮するに至る。


SKYFOREST - A New Dawn - Along the Waves ★★★ (2020-07-28 00:13:23)

シットリとしたアコギパートから、仰々しいシンフォニックなシンセとドラムが入るパートに移行した時に
森が騒めき、木々から鳥が一斉に飛び立つようなシーンが思い浮かぶ。
その後、激しいブラストをバックにガナリ声ヴォーカルが続くが、霧が立ち込める壮大な大自然が感じられるから不思議だ。
もうね、こういう森ファンタジーな曲は大好きなんだよ。


SKYFOREST - A New Dawn ★★★ (2020-07-28 00:01:21)

ロシア産シンフォニックブラック2020年作
森メタルフェチとしてはバンド名に「Forest」の綴りが入っている時点で注目せざるを得ない。
しかもボクのストライクゾーンど真ん中のロシア産だ。前作Unity(2016年作)は、動物ジャケ、特に鳥ジャケフェチのボクとしては絶対にゲットすべき
作品であるにも関わらず、当時は金欠で泣く泣く見送り、未だにゲットしていない。コロナの影響で停滞していたロシアからの空輸が復活した今
そろそろゲットしないといけない。と思っていたが、先に新作が発表されてしまった。というワケで、先週この新譜がやっと我が家に届き、堪能している。
今作のジャケは、森、自然を感じさせる優秀なジャケだ。ジャケ裏には怪魚が描かれている。盤には草が描かれ、盤を取り出すと、木の根や枝が絡みつく
心臓のようなモノが描かれている。最高だ。近年稀に見る、想像力を掻き立てるファンタジックなジャケに、まず心を奪われる。
ギターの音がナマ音に近い浅めのエフェクトのため、大自然で森や鳥が騒めくようなテイストが感じられるのが素晴らしく、一般のブラックメタルより
ギターの攻撃性は控えめだ。しかし、シンセが厚めに導入されており、聴き応えは充分だ。ポストブラック的なエモーショナルさがあり、前向きな音楽性だ。
ブラック特有なガナリ声は、濃密な霧の向こうから聴こえてくる感じ。朗々とクリーンに歌い上げる様は、自然の美しさを表現している感じでステキだ。
普段ツーバスやブラスト満載のバンドはあまり好まないが、このバンドは、そういうパートで盛り上げる箇所がカッコいい。血圧が10くらい上がりそう。
濃いブラックメタル派には向かない音楽性かも知れないが、森メタルに浪漫を感じるリスナーにとっては、かなりツボを突かれる作品だと思う。
木が茂る山の頂きで日の出を見ながら聴くとバッチリとハマりそうだ。ボク的には2020年上半期ベストアルバム候補に一気に浮上した感がある悶絶作品だ。


SERPENTCULT - Raised by Wolves ★★★ (2020-07-27 22:53:26)

ベルギー産ドゥームメタル2011年作
前作のWeight of Light(2008年作)でMichelle Noconの女声ヴォーカルがクローズアップされがちな印象だが、この作品では脱退している。
濃密なドゥームサウンドをバックにキュートな女声ヴォーカル乗る魔女サウンドもいいが、このバンドの最大の魅力はそこではないとボクは思う。
このバンドの前身、Thee Plague of Gentlemenの鈍重で濃密な真性ドゥームサウンドに一時期ハマったことがあるが、そのヘヴィネスを継承した
演奏にこそ魅力がある。海外レヴューを翻訳すると、どうもichelle Noconが脱退したこの盤は過小評価されがちな感じだが、ボクは前作とではなく
Thee Plague of Gentlemen時代のサウンドと比較してしまう。純粋にドゥーム・スラッジ的濃さではThee Plague of Gentlemenに軍配が上がるが
当時のストレートなサウンドから更なる進化を志向している雰囲気が感じられるこの盤は、ボクのツボに結構ハマる。
この人たちの演奏は、ヘヴィでカオティックで、ファズの効いたギターノイズのザラつきや粘っこさ、無駄の無いタイトなドラムなど、
純粋に音響的な魅力が詰まっている。わかりやすい個性である「女声」を失ってしまったが、もっと評価されるべきサウンドだと感じる。
この盤をラストに全く音沙汰が無いのが残念だ。


TOTO - Toto IV - Africa ★★★ (2020-07-27 22:03:00)

最近は喘息気味で暫く歌っていないが、過去にカラオケで一生懸命練習した曲だ。
アフリカというタイトルと、シンセの音、旋律が、何故か動物が大地を駆けているシーンを想起させる。
動物的な曲は、何故かボクはものすごーく心奪われる。
初っ端の単純なシンセのメロディーが、どうしてこんなに魅力的なのか、ホント不思議だ。


TOTO - Old Is New ★★★ (2020-07-27 21:46:14)

米産AOR2020年作
ワリとゲットし続けているTOTOだが、主要メンバーだったボーカロ3兄弟のベーシストも亡くなり、TOTO XIV (2015年)がラストアルバムだと
思っていたが、偶然この作品を先日発見して即ゲットしてみた。完全な新曲は数曲あるが、どうやら未発表曲を現メンバーで再録しているようだ。
Steve Lukatherのギターさえあれば、TOTOの固有の魅力は感じられるのは確かだが、個人的には近作2作品は若干詰め込み過ぎな印象を持っており
ワリと長い期間マイカーに常備していたが、イージーに聴ける佳作といった感じで、猛烈にハマったという感じではなかった。
この作品は真逆で、ストレートでシンプル。過去録音に被せ録りしているためか、録音状態が地味で、むしろコレが初期TOTOの雰囲気に非常に近い。
そういう盤なので、最近よくある還暦バンドの往年の円熟した作品!という雰囲気ではなく、初期TOTOにハマった頃のノスタルジーが宿る好盤だ。
過去の未発表曲がベースになっているからか、既に亡くなったボーカロ兄弟が在籍していた頃の作品に聴こえるような錯覚をしてしまう。
熱心なTOTOファンから批判されるかも知れないが、少なくとも、前2作品よりは、ボクのツボにハマった。
いろいろ調べてみたが、どうやらこの盤はBoxSet「All In」(2018年)に同梱されていたようだ。まあ、高額なBoxSetをゲットする程の熱心なTOTOファン
ではないので、新作として改めてこの盤を発売してくれたのは素直に嬉しい。


SOMNOLENT - Renaissance Unraveling (2020-07-25 00:10:31)

ウクライナ産ポストロック2011年作
前作Monochrome Philosophy(2008年作)はローテクで粗削りながらも凄まじいインパクトを受けた異端作品だった。
確か、当時は2008年のベストアルバムにチョイスした筈だ。ウクライナのダークサウンドの神髄に驚愕したものだ。
3年越しの新譜に当時は狂喜したものだが、中身は全く予想外の音楽性で、ドゥーム路線を脱却し、かなーりヘコんだ作品。
とりあえず処女作のフューネラルドゥームの魅力は全く無い。アヴァンロックに鞍替えし全く別路線の持ち味を追求している。
まあ、前作リリース後に見たライブ映像を見ても、ライブではフューネラルドゥーム的魅力が薄めで、こういう前衛的な路線への
志向性は感じられないでもなかった。今作がダメなのかといえばそうではなく、前作のローテクが嘘のようで、力の入った作品だ。
しかし、前作とは真逆の路線変更に置いてけぼり感が半端ナイ。どうしてこうなってしまったんだろうねぇ。
前作の淡々とした雰囲気は無くなり、アツく吠えるヴォーカルとドラムの存在感が増大したエネルギッシュな作風だ。
ワウを多用しながら結構弾きまくるギターは、鈍重なドゥームとは真逆のリフを刻み、前衛的なアプローチを見せる。
サウンド自体はかなりレベルが高い。この盤からファンになった人はたぶん好盤として受け止めることができるだろう。
前作に感銘を受けたボクとしては、高い音楽性は認めつつも、このアツいエネルギーが煩わしくて仕方がない。


YES - Fragile - Heart of the Sunrise ★★★ (2020-07-21 23:23:44)

Yesは高校時代にCDレンタルでカセットテープに録音して持っていたがそんなには聴かなかった。
本格的に聴いたのは大学入学当時に知り合った友人のススメで聴かされ、結構ハマった。
で、最もツボにハマった曲がコレだ。起伏に富んだドラマチックな楽曲に魅了された。
当時は世に携帯電話が普及し始めた頃で、現在では考えられないが、PFM音源が内蔵された携帯電話があり
着メロを自作することができた。ボクは着メロ作りに没頭した時期があり、ファミコンサウンドや洋楽を
忠実に再現して作ることに生き甲斐を感じていたことがある。しかし、洋楽の再現はギターの質感を再現
することが非常に困難で、結構試行錯誤したが、当時作成した洋楽着メロで最も完成度が高かったのが
この曲だ。初っ端の疾走感あるリフから、変則ブレイクが入る箇所までを着メロで再現。
無機質に刻まれるリフと、シメの変則ブレイクのリフの音の質感は、電子音で再現しやすかった。
道すがら着信があった時に、ふと自分の方を振り返る人がいると、Yesファンだなこの人、ということがわかる。
非常に思い出深い曲だ。


ROTTING CHRIST - Non Serviam ★★★ (2020-07-20 19:06:00)

ギリシャ産ブラックメタル1994年作
作品リリースの度に音楽性を変え、正当進化していくバンドではあるけれども、最も好きな盤はコレだ!
流石に25年以上前の作品なので、最近の作り込まれた作品に比べると、ローファイ感は否めないが、
ギターのアタック部分が際立ち、サステイン部分のハーモニーの味わいを損なわない適度な歪みが好感触な上
スネアワイヤーの響きが殆ど聴こえない乾いた感じのスネアドラム、ツーバスが煩くない適度な音圧など
全ての音がクリアに聴こえる録音バランスが心地よく、シンセやティンパニが入っても仰々しくなくていい。
そういう音像であり、トレモロリフやブラストも無いので、かなり古典的なブラックという音楽性だ。
ヘヴィさや勢いで聴かせるのではなく、気持ち悪い旋律やリフを組み合わせた楽曲で勝負しているスタイルが好きだ。


Forest of Grey - Crypsis ★★★ (2020-07-20 18:45:13)

米国産ブラックメタル2018年作
ボクは森林崇拝サウンドに弱い。特に最近はブラックを蒐集する時には若干ペイガニズムを含むブラックをゲットしがちだ。
とりあえずバンド名に「Forest」という単語が含まれているブラックであれば、ゲットしないワケにはいかない。
よくある悪魔顔のガイコツに葉っぱと根っこが生えているイラストが、白黒のモノトーンで描かれているジャケにワクワクしたが
中身は森林崇拝的サウンドとは若干趣きが異なっていたのは残念。しかし、結構内容の濃いサウンドをやっている。
全2曲で30分と、内容は結構少なめ。アコギ部分が占める割合を考えると、ブラックメタルサウンドは20分くらいか。
不穏なアコギパートから始まり、音像が真っ黒な結構ゴリゴリのブラックメタルに突入、ガッツリと聴き応えがあるが、
このサウンドの大きな特徴は、教科書通りのコード進行と、ディミニッシュコードからの半音進行を多用していることで
非常にわかりやすいすごーく悲しい旋律が全体を占めているところだ。仰々しくはないが、クサめなコード進行である。
たぶん、ここが好みの別れどころだ。そういうサウンドなので、物凄く真っ黒な音像だが、真性さはあまり感じられない。
あまり無機質なブラックではなく、きちんと旋律を奏でるわかりやすい楽曲が好みなブラックメタラー(そんな人いるのか?)
であれば、この盤はオススメできる。


GARGANJUA - Toward Rhe Sun ★★★ (2020-07-19 23:22:27)

英国産ドゥーム寄りプログレッシヴメタル2020年作
スローではあっても超スローではなく、雰囲気と曲構成に魅力を感じさせる楽曲群。あまり真性な濃さは無いが
ブラックメタル的ヴォイス・デスヴォイス・クリーンヴォイス、コーラスを取り入れた演奏様式から、モダンなポストドゥームといった印象。
湿り気たっぷりのアコギ、トレモロリフ、疾走パートも登場し、単にドゥームという枠にとらわれない音楽性がとても独創的だ。
この音からは、内省的な、シューゲイザーとは異なる孤独感が感じられる。ヘヴィさや激しさが薄めだが、音像は黒いイメージ。
一応プログレッシヴとしたが、様々な演奏様式を取り入れた作風は、なかなか耳に馴染むのに時間がかかる。
繰り返し愛聴することで、ジワジワとこの音世界にハマっていく。偏った濃さではなく、クールな作風と言える。
派手さが全くない、どちらかというと地味な作風でありながら、細やかなアレンジ、スパイスがツボにハマる。


LEEVI MADETOJA ★★★ (2020-07-19 22:44:17)

母子家庭に生まれ、子供の頃から掃除のバイトをしながら生活をしていたが、誕生日に母からもらったカンテレを弾きこなす
ようになったのがスタートで、独学で音楽を学び、気付けばシベリウスに師事し、大成していった作曲家だ。
フィンランド作曲家の中でも、特に深い叙情性がある、と思う。悲しい旋律は他作曲家に比べても際立って悲しすぎる。
特に「死の庭園作品41」は、すごーく悲しい。ダークサイドサウンドフェチとしては避けて通れない作品だ。
また、この人のピアノ曲は、ぼんやりと霧がかった、ぬるーい、ぼーっとした作品が多い。ボクはそういうところがツボだ。
田園組曲作品34「伝説」あたりが、そういう感触だ。濃厚な北欧情緒を感じずにはいられない。
この曲集の「カプリス」も、課題曲として学習したことから大好きな曲だ。
マデトヤのピアノ作品を収録した音源は殆ど出回っていないような気がする。我が家にあるのは Mika Rännäli というピアニスト
の作品のみだが、2枚組で、マデトヤの名曲が網羅されているので、超オススメだ。


ERKKI MELARTIN ★★★ (2020-07-19 22:20:54)

フィンランドの作曲家。オーケストラやバレエ、室内楽など多くの作品を残し、音楽以外にも才能を発揮した人だが
とりあえずボクはこの人のピアノ曲以外には全く興味がナイ。この人が創造する音楽はフィンランド産らしく
温度が非常に冷たく、叙情溢れる作品が多く、かなり好きな作曲家だ。
同郷のシベリウスが10歳年上で、漂う雰囲気はとても近いものがある。雪と針葉樹が思い浮かぶ作品が多い。
また、若くして心臓病を患っており虚弱だったこともあり、そういう逸話から繊細なイメージがある。
恐らく「悲しみの園第4番雨」が最も有名だろうと思う。ボクもこの曲が最も好み。美しくとても感情に訴えかけるモノがある。
世間で弾かれている曲の殆どが、この「雨」のようだが、この曲集の第3番「乞食の子の子守歌」も個人的にかなり好きな曲だ。
でも、濃厚な悲しみを帯びた、暗ーい曲なので、弾いていたらすごく悲しい気分になる。こんな子守歌だと寝付けない。
ピアノ曲は300曲くらい残しているらしいが、日本で見かける作品は僅か。あとは輸入楽譜や輸入盤を漁るしかない。
手当たり次第に輸入楽譜をゲットしてみたが、あまり弾いてみたいと思える楽譜も多くなく、「悲しみの園」に匹敵する作品には
出会っていないが、Romance Op.59は美しく親しみやすいのでお気に入りだ。
音源は「悲しみの園」は安定感と力強さがある館野泉氏の作品がいい。総合的には、Maria Lettbergというピアニストが
メラルティン作品を収録したCDを発売しており、ボク的にはこちらが好みで愛聴盤になっている。


LESATH - Sacred Ashes ★★★ (2020-07-18 23:39:12)

ロシア産ブラックメタル2020年作
やっとロシアからの空輸便が届き始め、ポツリポツリとロシア作品が我が家に届きつつある。それでもまだ半分も届いていない・・。
3ヶ月半待たされたが、今年発売のロシアンブラックではかなり上質な作品だと感じ、150枚限定Limited Editionをゲットした。
ブラストするようなタイプのブラックではなく、雰囲気重視のボクの好みストライクゾーンど真ん中の、ムーディーなブラックだ。
Youtubeの再生回数は未だに700回程度だが、神盤レベルのクオリティだ。まあ、再生回数が少ない理由は、無名というのもあるだろうが
そもそもこのバンドは2019年に結成されたんじゃないかと思う(たぶん)。メンバーの経歴なども調べても全く分からなかった。
まずジャケの美しさに惹かれる。湖と石造りの建物と木を背景に、湖には一隻の小舟が漂い僧侶のような装束を着た人物が描かれる。
ジャケ裏にはその情景を別角度で描いたようなシーンが描かれ、雲から光が差し、上空には鳥が描かれている。
この朽ち果てた寂しげで荒涼とした情景をそのまんま音にしたかのような叙情的な音楽性に終始心奪われ、没入感が半端ナイ。
湿度が高めで、霧に霞んだ雰囲気が漂っており、ヴォーカルは霧の向こうで歌っているかのような濃厚なエフェクトがかけられている。
トレモロリフやツーバスで激しさを表現するパートもあるが、基本音数はかなり控えめだ。また、音圧ではなく尖った質感のギターがツボだ。
アコースティックギターを前面に出しており、コードポジションを移動させる時のフィンガリングノイズに異様な生々しさがあり味わい深い。
最近は空輸便が停滞していたからロシア産が手に入らなかったが、やはりダークサイドサウンドは現在はロシアの質が他国に比べかなり高い。
そう思わせる奥の深さ、楽曲やアレンジがこのサウンドにはある。とりあえず雰囲気重視ブラックメタラーが悶絶しそうなマストな作品だ。


YOMI - Genpei - All is Void ★★★ (2020-07-18 20:19:14)

デスメタルサウンドをバックに、般若心経を読経するという絶大なインパクトを誇る曲だ。
やや訛りながらもきちんと読経しているが、読経の後ろで手数の多いドラムが叩きまくっているところに
妙なB級愛を感じてしまう。


YOMI - Genpei ★★ (2020-07-18 20:15:09)

ラトビア産フォークデスメタル2016年作
柔道着にハカマ、三味線と尺八を取り入れた和風デスメタルの2nd。タイトルGenpeiは「源平」だ。
Land of the Rising Sun(2019年作)に比べ、デスメタル度は高いが、それでもポンコツB級以下のデスメタルで
B級愛を持っていないと聴くに堪えがたいレベルの展開下手サウンドではある。ただ、それを打ち消すほどの
日本への愛を感じるサウンドだ。和風デスメタルとしては、オーストラリアのTzun Tzuと共にコレクションしておきたい。
盤には「驕れる者も久しからず」と日本語で書かれている。1曲目の「The First Battle of Uji」からラストの
「Dan No Ura」まで、徹底的に日本の歴史にコダワった作風からは、この人の日本マニアっぷりが垣間見える。
3rdよりも尺八の導入は少なく、デスメタルサウンドをバックに三味線を掻き鳴らすスタイルはインパクトは大きい。
また、このサウンドの特徴としては、英語の歌詞が8割、訛った日本語の歌詞が2割くらいで、この中途半端な日本語が
B級愛を芽生えさせる大きな要素になっている。
次作で若干メタル度が下がりつつも、この路線で進化していってほしい。日本ネタのみでも面白いサウンドだが
そろそろ根本的なメタルサウンドでも聴かせる工夫が欲しい。


SABBATH ASSEMBLY - A Letter of Red ★★★ (2020-07-17 20:01:09)

米産カルトロック2019年作
キリストやエホバ、悪魔もひっくるめて賛美するカルトサウンドで登場したバンドで、処女作はボクのイチオシ女性ヴォーカルの
Jex Thothが在籍していた。Jexはソロ作品に専念するために脱退し、よりドゥーム志向の強い作品を作っていったが、このバンドは
奏法や曲構成にやや前衛的なスパイスを効かせながらも、基本は古典的ロックにワリと忠実な、魔女ロックサウンドの決定版だ。
余計なギターエフェクトを極力排除したナマ音に近い感触は、そういうローファイサウンドを好むリスナーにはとても聴きやすいだろう。
やや深めの残響音のエフェクトと微量のサイケ臭は、魔女ロック特有の妖艶さを際立たせてて素晴らしい。
この雰囲気は、Jex Thothのソロ作品に漂うサイケ臭に非常に似ており、スローで聴きたいならJex、ミドルからアップテンポならコレという感じ。
ヴォーカルのJamie Myersは、雰囲気がJex Thothに似た歌唱をし、とてもキュートで魅力的ながら、魔性を帯びた感じがツボだ。
今作までとても安定した鉄板作品をリリースし続けており、今作も渋いロックサウンドだ。イマイチ知名度が低そうだが、超オススメだ。


THE DEVIL'S BLOOD - III: Tabula Rasa or Death and the Seven Pillars ★★★ (2020-07-13 12:05:13)

オランダ産サイケ・カルトロック2013年作
ブラックやドゥームではないのに濃厚なサタニズムが感じられるサウンド、純粋なハードロックでもなく濃いサイケデリックロックでもない。
かといってKing Diamondのようなホラーエンターテイナー的なコマーシャルなサウンドでもなく、一口では言い表せない音楽性の持ち主だ。
ローファイな録音、ナマ音に近いギターから、70年代のBlack SabbathやBlack Widowあたりが近いが、ヘヴィではなくオルガンも無い。
初っ端20分超の大曲で、魔性を帯びた女声ヴォーカルやコーラスが前面に登場することで、濃いサタニズム体験を味わうことができるが
Guns and Rosesのスラッシュをフェイバリットギタリストに挙げるギターヴォーカルのSelim Lemouchiの味わい深いギターワークが
このサウンドの最大の聴きどころであるのは間違いない。なるほど、トリッキーなギターワークに偏らないスラッシュ的な味わいが感じられないでもない。
また、この作品は未完成作品をCD化したものだ。というのも、非常に残念だがこのギタリストは33歳で自殺し、バンドも解散している。
サタニックな世界観で70年代的なロックサウンドをベースに、やや前衛的なフレーズ、味わい深いギターワーク中心の音楽性というサウンドだ。
厚手のボール紙のようなCDケースには背表紙にも全く文字が書かれておらず、手に取っただけでは一体誰なのかさっぱりわからない。
中身のライナーも魔性を帯びたフォントで書かれた文字で、デザイン的に素晴らしいが、こういう作品は収納や扱いに若干困るのが玉に瑕だ。
濃いサイケデリックではないと冒頭に書いたが、サイケ臭は薄めに漂っている。サタニック路線では一線を画すとても面白いサウンドで
古典的手法に近い演奏様式なので、ブラックやドゥームといった濃いリスナーよりも、70年代を好み、やや前衛寄りを好むリスナーにオススメだ。


GRIM RAVINE - It's a Long Way Down, to Where You Are ★★★ (2020-07-12 20:58:10)

英国産スラッジ・ドゥーム2020年作
訳すとバンド名は「厳しい渓谷」、アルバムタイトルは「あなたのいる場所までの長い道のり」という感じかな。
バンド名の通り、不毛な土地、過去の崩壊、塵と化す大地といったテーマの曲が鈍重なスラッジ・ドゥームで描かれる。
やや楽曲が弱いかなぁ・・と思いつつも繰り返し聴いていると、結構ハマってしまった。このサウンドは曲展開の妙を
期待するのではなく、沈むような遅さ、掻き毟るような閉塞的な質感を持つ歪んだギターで構成される冷たい音世界に
ひたすら没頭することで、人が立ち入ることができない渓谷をイメージしながらその世界に浸るのが良い楽しみ方だ。
引き摺るような重量感あるギターが最大の魅力ではあるが、砂利が飛び散るかのようなノイズ、吐き出すようなヴォーカル
ハウリングを効果的に使用したり、低周波を際立たせるベースのエフェクトが登場したりなど、聴きどころ満載だ。
万人向けではない上級者向けドゥームかも知れないが、鈍重なノイズサウンドが得意な人は是非体験して欲しい。


ACID MAMMOTH - Under Acid Hoof ★★ (2020-07-10 00:17:09)

ギリシャ産サイケデリック・ドゥーム2020年作
とりあえず動物ジャケはボクの購入意欲をそそる大きな要素で、赤地にマンモスが描かれるジャケは相当ポイント高い上
バンドロゴの左右にマンモスの牙がニョキっと生えていてカワイイ。少なくともこのジャケとロゴを見ただけで中身の音が
想像できてしまうんだが、ジャケ側面には、バンド名の前にわざわざご丁寧に「Heavy Psych Sounds」と書いてあるのがウケる。
わざわざそんなこと書かなくても、この盤から漂う煙たいサイケ臭や雰囲気でわかるよ!とツッコミを入れたくなる。
コレは瞬時に石化し得るストーナー要素が濃厚な、かなりヘヴィなサイケデリックドゥームで、真性ヘヴィドーパー向けサウンド決定版だ!
楽曲はオーソドックスな感じで、ドラムとベースがかなりの重量感がある。ゆったりとしたテンポで、徐々に酩酊させ昇天させる。
ヴォーカルに僅かに倍音を際立たせるエフェクトをかけているように聴こえるが、コレが結構心地よい。
Sleepのギターリフに更に重量を加えた感じが素晴らしく、Matt Pikeファンなら必ずやツボにハマる音だろう。
ただ、オーソドックス路線過ぎて、ボクは飽きが来るのもワリと早かったような気がする。
音自体はすごくツボを突くが、曲にもう少し変化が欲しいところだ。


URIAH HEEP - Living the Dream ★★★ (2020-07-09 23:24:03)

英国産プログレッシブロック・オルガンロック2018年作
このバンドのサウンド体験は、メタル誌のプログレッシブロック記事を見て興味を持ち、Look at Yourselfをゲットしたところからスタートしたが
アナログシンセに傾倒していた先輩バンドマンの影響からか、1960年代後半から70年代初頭に英国で火のついたオルガンロックサウンドの
バンド群(Cressida、Egg、AffinityあたりのHR/HMの括りよりはオルガンを前面に出したロック)にハマるきっかけになったバンドだ。
そういう経緯がありながらも、意外にDeep Purpleにはハマらず、先に挙げたバンドと、このUriah Heepにハマった。
オルガンロックバンド群の中でも、ハモンドやメロトロンを無骨に大胆に導入した唯一無二のスタイルに魅せられたので、HR寄りの後期作品より
オルガンが前面に出た初期3作品が特に好みだ。オルガンが若干控えめになり構築的なプログレ要素とコーラスワークで聴かせるスタイルが
定番になり始めた頃の作品もカッコいいのだが、やっぱり初期のアナログシンセが暴れ回る作風のインパクトには敵わないなあ、と思う。
後期作品は、買い物中に発見したらとりあえず仕事のように買う、といった感じでゲットして、ワリと歯抜けにはなっている。この2018年作は
今年になってリリースを知ってゲットしてみた。もう50年も活動しているのか。全く凄いバンドだなぁと思う。
少なくとも、オルガンロック全盛時代から現代まで活動しており、HR寄りにはなったものの当時の英国オルガンロックの香りを宿すサウンドは
このバンドしか思いつかない。ただ、前作Outsiderが(嫌いではなく結構聴いたが)思いのほか期待ハズレ感があったので、この2018年作の購入も
随分と後回しになってしまった。しかし、前作の不振を払拭するどころか、相当なエネルギーを感じさせる力作で、単に完成度の高いオルガン入り
ロックサウンドという感じではなく、初期の暴れ回るグルーヴすら感じさせる快作なので、予想を超えていたクオリティに驚き、感動したよ。
ただ、そのグルーブを最も感じさせるのはオルガンではなく、相変わらずワウをブイブイと効かせるギターだ。そのギターとオルガンが絡むと
凄まじい音の渦に魅了されてしまう。また、楽曲は英国情緒のみならず、トラックによっては米国的な雰囲気のサウンドも登場し、懐の深さを感じさせる。
また、Dreams of Yesteryearの作風は、彼らの50年の歩みの重みを疑似体験させられるような、この盤のラストトラックを飾るに相応しい楽曲だ。
高密度の年齢を感じさせないエネルギーと、熟練の円熟したサウンドが同居している。流石に最もボクが好む初期のアナログシンセ大暴れの作風への回帰は
あり得ないので、現状彼らに求め得るサウンドとしては、100点満点のクオリティなんじゃないかなと思う。


ENNOVEN - Redemption ★★★ (2020-07-08 20:52:10)

ポーランド産ブラックメタル2014年作
霧に霞む針葉樹林ジャケが印象的な、東欧の教科書通りの森林崇拝独りブラックだ。
Spirits、Etherenal Winter、Of the ice、Rebornの4曲を収録、曲タイトルがいかにもな感じでステキだ。
リリースから6年経っているのにYouTubeの再生回数が2800回程度で相当無名なバンドなんだろうがハイクオリティだ。
霧を思わせる高めの湿度で、ややポストブラック的な尖ったギターパートがメインだがアコースティックギターも織り交ぜ、
最高の雰囲気の演奏に、森全体に響き渡るような濃厚なエフェクトがかかったカオティックなヴォーカルが絡むスタイルが美しい。
ブラストが無いのは好みが分かれるところだが、ボクはこの控えめさが気に入っている。トレモロリフを多用する感じの曲もあるが
アトモスフェアな空間に割と単音の旋律が響き渡る作風なので、控えめなドラムの方がムーディで良い。
こういうスタイルの作品は結構数多くあると思うし、抜きんでた個性があるとも言えないが、オーソドックスでもイイものはイイ。
小雨で薄く霧が出ている日に林道をマイカーでドライブしながら車中で聴くと、バッチリとハマりそうなサウンドだ。


MIZMOR - Yodh: Live at Roadburn 2018 ★★★ (2020-07-08 01:43:25)

米産ドローン・ブラック寄りドゥーム2018年作
最近ローランDEATH氏が猛プッシュして書き込みしてるので、是非ゲットしてみようと思いあちこち探したんですが
スタジオ盤は海外から輸入しないと無理っぽく、しかもこのコロナ騒ぎでいつ届くやら・・というワケで
唯一このライブ音源が日本のショップ(しかもアマゾン)で簡単にゲットできた。ここ数日コレを楽しんでいる。
基本ドゥーム作品のライブ盤は好まないのだが、この盤はまるでスタジオで万全の体制で録ったかのような素晴らしいクオリティだ。
まあ、演奏が終わった時の拍手とかが余計なんだけどね。いずれスタジオ盤をゲットしたいところだ。
トレモロリフを織り交ぜながらも鈍重な沈み込むような遅さ、重低音が魅力。ここまでテンポダウンしてくれると激しい音でも聴きやすい。
疾走するパートもあるが、ブラックメタルに慣れた耳であれば、とても心地良い。というか、そもそもジャリジャリ感あるギターと
絶叫するヴォーカル、疾走時の割れ気味なドラムの質感は、むしろブラックメタルリスナー向けのスタイルだ。
歪みやハウリング、スクラッチを効果的に聴かせるドローン的演奏に、激しくも擦れ気味のヴォーカルが響き渡る音空間が絶品だ。
このカオティックな音空間は、ハマれば癖になる。ビニールにカオを押し付けたようなジャケが意味不明だが、コレはYodh(2016年作)の
顔オブジェをビニールに押しつけてみました的なデザインなんでしょうね。


OPHIS - Withered Shades ★★ (2020-07-08 01:05:29)

ドイツ産デスドゥーム2010年作
迫力のあるデスヴォイス、芯のあるヘヴィなドラム、適度なヘヴィさで音質も素晴らしいギター、ドゥーミーな丁度良いテンポ。
そういうデスドゥーム路線ど真ん中作品であり、クオリティも高い。海外のショップでもドゥーム路線のページではワリとよく見かけるので
きっと評価も高いバンドなのだろう。そういうワケで、この作品以降の作品も一応チェックはしているものの、どうもボクのツボにハマらない。
The Dismal Circle(2017年作)が最新だと思うが、この2010年作品よりも更に凄みを増して鬼気迫る作品に仕上がっている。
きっとこの行き届いた録音状態で、凄みがウリのオーソドックスデスドゥームは、多くのドゥーマーを納得させるインパクトがあるのだろう。
そういう音を求めるリスナーにとってはきっと神盤になるだろう。ただ、ボクにはちょっとしんどい。また、楽曲がちょっと弱い気もする。
スローで淡々としたテンポで聴かせているのに、常に凄みをきかせるから疲れるんだろうね。たぶんそれが判っていても質は高いから
将来新譜が発表されても、新味を期待してまた買うんだろうなぁとは思う。彼らの作品群の中では、この2010年作が一番好きな盤ではある。


CIRITH UNGOL - Forever Black - Stormbringer ★★★ (2020-07-06 10:24:54)

導入部分はアコギとクリーンヴォーカルという、このバンドにしては珍しいバラード調の楽曲だが
しっとりと聴かせるのかと思いきや、血管が浮いてきそうなほどの、絶叫に近いヴォーカルが心を込めて歌い上げる。
ラストに近づくと、もはや音程など関係ナシのヤケクソな絶叫で、バラード調の演奏をバックに全身全霊で魂を込める。
ここまでやってくれる潔さに、心地よい倦怠感を覚え、B級愛が芽生えてくるのだ。


CIRITH UNGOL - Forever Black - The Frost Monstreme ★★★ (2020-07-06 10:10:34)

過去にポンコツ感で度肝を抜いた迷曲Frost and Fireと同じ旋律が登場する。
ギターの手癖なのかワザとなのかわからないが、この旋律が登場した途端に懐古の情が湧き、グッと惹きつけられる。
疾走感を排除したヘヴィネスを重視した楽曲で、このバンドの音楽性の魅力が詰まっているね。


CIRITH UNGOL - Forever Black ★★★ (2020-07-06 09:52:27)

米産カルトメタル2020年作
初期のポンコツ感満載の作品はB級愛を持っていないと愛聴できない作品だったが、その大きな原因は奥行きの無い録音状態がチープさを際立たせていたことだ。
ドタバタ感のあるドラム、モコモコと浮き出たようなベース、加えて低音をカットしたかのようなシケたギター、金切り声が奇抜なヴォーカルスタイルなど
強烈な個性と本来改善すべき課題が紙一重な状態で存在していた。もし、個性を掻き消す形で難点を克服する作品を作ったとしたら、凡作になっていただろう。
ポンコツ感が話題になりがちなバンドではあっても、元々楽曲の構成には目を見張るものがあり、総合的に見てB級愛を感じつつもどこか捨て置けない光るものを
常に宿していた作品を作り続けていた。特にメタルサウンドのトレンドとも言える疾走感やヘヴィネスに偏ることのない作風は、とても惹きつけられるモノがある。
今作は過去のそういう個性を消滅させることなく、録音状態を最善の方法で改善している。過去作のシケてペラい音質の難点をクリアし得る必要最小限の厚みを補填。
よりナマ音に近い音質を保ち、浅めのエフェクトで済ませることで、初期から感じるポンコツ感の残り香を最適な状態で残し、唯一無二の個性へと昇華している。
ギターサウンドは薄めの歪みで残響音が少なめな状態でとても乾燥した質感があるものの、かなり粘り気のあるギターワークで聴かせる。
バラード調の曲でほんの一部歌っているのはご愛敬、金切り声が特有のヴォーカルスタイルも初期から変わらず健在だ。騒々しくも豪胆で奇抜な個性を放っている。
ミドルテンポ主体の楽曲で、ブレイクの入れ方やテンポの緩急のつけ方は、もはや職人芸とも言える。元来ある楽曲の良さは、録音状態の課題をクリアしたことで
より深く味わうことができる。とりあえず、初期作品から聴き続けているリスナーは、この頑固にスタイルを堅持しつつ進化したサウンドに凄みを感じると同時に
完成形でありながらも、特有な濃厚な個性、異様な存在感に、B級愛が失われることがナイ、ということに気付かされるだろう。
少なくともボクは、このバンドは、理想的な形で進化したと感じている。もはやこのバンドスタイルは他のバンドには真似のできない深ーい味わいがあるね。


SACRILEGE(UK) - Turn Back Trilobite ★★★ (2020-07-04 16:41:09)

英国産ドゥーム寄りHM1989年作
この作品はよくドゥームメタルとして紹介されているが、サイケ要素は無くあくまで正統派HMにスローリフを取り入れた感じだ。
とはいえ、ミドルテンポでヘヴィに聴かせる正統派HMとは若干肌色が異なるという、なんども説明し難いこの時代としては異質な音楽性だ。
過去にハードコアやスラッシュをやっていた影響も感じられないでもないが、むしろバラード調の泣きのギターが登場したり
ツインリードで聴かせるリフが登場するなど、より正統派路線にシフトしている上、リフやギターワークで聴かせようという意欲が見え隠れする。
まあ、大きな特徴はLynda Thompsonの女声ヴォーカルなんですが、高い音程を取るのが少し苦手なんでしょう。女性ヴォーカルが際立つワリに
音痴(失礼!)なんですよ。そこをキュートな声質がかろうじてカバーしているという感じ。手の込んだ楽曲とこのヴォーカルのアンバランスさに
B級愛を感じずにはいられない。Lynda Thompsonは真面目にメロディアスに歌う歌唱法は向いていない気がするんだが・・・。
また、この年代では宇宙のみを描いたジャケは結構珍しい。Beherit、Nocturnus、Magusあたりが思い浮かぶが、いずれも同時期のバンドとの
差異化にジャケデザイン効果が大きな要素になっていた思うが、この作品においても同じことが言える。ジャケが宇宙というだけで存在感が大きい。


WYTCH HAZEL - II: Sojourn ★★★ (2020-07-04 02:40:10)

英国産ヴィンテージロック2018年作
玄人臭漂わせる古き良き英国ロックを現代に蘇らせたかのようなサウンドに聴き惚れる。ヴィンテージロック路線では神盤だ。
言いたい事は↑で失恋船長さんがほぼ書いている(このバンドに書き込みがあるとは流石)ので参考にされたし。
こういう路線のサウンドでは、Pagan AlterとWitchcraftを含めた3バンドがマイフェイバリットバンドなので
そのうちのひとつでもツボなら、必ずや心に響くサウンドだろう。特にボクにとってはPagan Alterとこのバンドは双璧といった感じ。
10年に満たない活動歴でありながら、かたや80年代から長く活動するPagan Alterと肩を並べる位の深みある味わいを備えるからスゴイ。
民族衣装っぽい装束を着たメンバー写真、ベージュを基調としたジャケ&インナーアート、文字のフォントデザインなども味わい深い。
懐古主義的な魅力が前面に出ていることは間違いないが、なんと言っても全曲ホントカッコいいんだよ。作曲能力がホント高い。
3度のコードを弾いた時の響きに、ヴォーカルとコーラスがハモる感じが、あーWytch Hazelはコレだよ、と思わせる個性で大きな魅力だ。


MORAST - Il nostro silenzio ★★★ (2020-07-04 01:43:31)

ドイツ産ブラック寄りドゥーム2019年作
ブラックメタルとドゥームメタルの丁度中間といった音楽性で、ドゥーミーだが結構ドラムは騒々しい。
ジャリジャリ感のあるギターの質感でドゥーミーなサウンドを聴きたいリスナーにとってはツボにハマるかも知れない。
ドゥーミーとは言っても、テンポはそこまで遅くない。一部超スローな曲調はあるもののミドルテンポ主体の楽曲群だ。
ボクとしては、ツーバスでドコドコするのが余計だなぁ・・と感じるが、そこをガマンすれば充分聴ける素晴らしい音。
重低音かつ録音がいいので、重量感を堪能したいリスナーにも打って付けだろう。
少なくとも、オーソドックスなブラックやドゥーム路線ではなく、双方の質感をうまく融合した音響的にかなり好みの音だ。
ただ、そういう音楽性でありながら、録音が良すぎるからか、アングラ臭があまり感じられないのが残念なところだ。
ドラムの抜けの良さとビートを刻む感じの演奏、メロディに乗せて歌う感じが、真性さを損なう要因になっていると思わせるのが惜しい。
そういう理由で、完成度も高くかなり濃い音楽でありながら、好きな音だけにもう一押しホンモノ感を底上げして欲しいと思わせる。
ダメ出ししたが、コレは完成度の高い作品。ボク的にはドラムの音数を半分にしてツーバスを排除、テンポをもうちょっと落としてくれたら
額に入れて飾りたいほどの神盤になっていただろうと思う。ホント惜しい、もったいない。次作は必ずゲットしたいと思わせる盤だ。


OMEN - Hammer Damage ★★★ (2020-07-03 23:34:28)

米産パワーメタル2016年作
1983年結成から大きく音楽性を変えることなく、長く活動するバンドの渾身の作品だ。
B級愛を感じないと聴けない作品を連発していたバンドだが、再結成作品Eternal Black Dawn(2003年作)発表の時には狂喜したものだ。
当時の自分の書き込みを見るととても懐かしい。あれからもう17年経つのか。その後もOmen作品はゲットしており、この2016年作品も愛聴盤だ。
創始者Kenny Powellの息子が一時ギタリストとして参加したりしてたが、クレジットに名前はない。親子でバンド活動すればいいのにね。
このバンドの音楽性は、ファイティングなウォーメタル路線でありながら、音圧やスピードに偏ることなく、常に古典的手法で聴かせるところが魅力だ。
80年代~90年代あたりでは、同路線バンドに比べてパワー不足、際立った派手さの無い音楽性から、B級愛を持つメタラーご用達バンドだったと思うが
再結成以降もその路線からブレることなく、2016年になっても頑なにその古典的作風を堅持している化石サウンドで、Omenファンとしては嬉しい。
前時代ではB級と片付けられても致し方ないと思うが、現在は、80年代の息吹を伝統的に守る希少価値の高い作品、という付加価値すら感じる。
アメリカのバンドでありながら、NWOBHM的な感触もある。また、流石に37年活動しているだけあって、安定感のある演奏も魅力的である。
無駄にエフェクトを施さないナマ音に近いディストーションギター、B級臭を常に漂わせる作風でありながら作り込まれている楽曲が素晴らしい。
ボクがヴァイキング作品やウォーメタル的なパワーメタルを追いかけるのは、B級メタルにハマった当時、Omenを好んで聴いたことがルーツにあると思っている。


Morito Ergo Sum - Moonchild ★★★ (2020-07-01 19:54:08)

スウェーデン産ドゥームメタル2011年作。
ボクの知る限り、このバンドはレーベルに所属せず、2作品ほどセルフリリースでアルバムを発表しているので、相当無名なバンドだろうと思う。
フルレングスアルバムはA Mournful Foreboding(2016年作)のみで、このMoonchildはEPだ。とはいえ、30分を超える収録時間で聴き応え充分。
芯のあるヘヴィなギター、ギターソロもアリ。安定感のあるゆったりとしたクールなドラム、デスヴォイスではない囁くようなヴォーカルといった
オーソドックスなドゥームメタルど真ん中な音で、真性に人生残念な感じではなく、濃さはライトな感じ。クリアな録音と安定感が魅力的だ。
まあ、そういう標準的な音楽性なので、ボクはフルレングスアルバムまでは敢えて揃えてゲットしようという気持ちにはならず、このEPのみで満足している。
時にチェロのようなシンセで味付けいるところも好感触。アップテンポなパートもあるので、どちらかというとゴシックメタルを聴いている感覚だ。
なんといってもこのアルバムの大きな特徴は、アルバムタイトルにもなっているが、King CrimsonのMoonchildをカヴァーしているところだ。
原曲のクオリティが高い上、昔相当な回数聴いた名曲なので、素直にこのカヴァーは気に入っている。あの名曲をドゥームにしてしまうセンスはツボだ。
オリジナル曲よりも、このMoonchildのカヴァーの方が相当カッコイイ、というところは少々悩ましいところだが・・・。


A SWARM OF THE SUN - The Woods ★★★ (2020-07-01 19:04:50)

スウェーデン産ポストブラック2019年作
12~13分の曲が3曲収録されているトータル40分程度の作品、通勤時のマイカーで聴くと、職場に着く頃に3曲目のサビを迎え
職場の駐車場で1枚聴き終えて、感無量な気分になった後に仕事、っていう感じだ。ここのところコレを聴きながら通勤、結構ハマっている。
音の方は、ギターの質感はブラックで、サビではトレモロリフが登場するが、ドラムは基本4ビート以下のゆったりした感じ、2曲目はスロードゥームテイストだ。
アルバムタイトルが示すように、よくあるブラックメタルの森林的な霧に霞む雰囲気がとてもムーディーで、チリチリしたギターの響き渡る様が美しい。
森林の孤独な寂しさや、悲愴感が前面に出ているサウンドで、究極の人生残念感が無く、ライトに聴けるメランコリックさが梅雨時期の朝の通勤にピッタリ。
奇をてらった曲展開は殆どなく、コード進行もワリとストレートでキャッチーでありながら、徐々に重厚に盛り上げていく奥深いホンモノ感を備えている。
1曲目はシンセで湿っぽい感じを前面に出し、2曲目はオルガンがSkepticismを彷彿させるフューネラルドゥーム寄りの曲から徐々に盛り上げ、
3曲目の後半で幾重にもギターを重ねて、禍々しくも切ないトレモロリフでラストを迎える。
そういうトータルでドラマチックに聴かせる構成が素晴らしい。個人的には2曲目の遅ーいドラミングがツボ、3曲目のギターを重厚に重ねて感動的に盛り上げる様がイイ。
ブラックメタルの音が好きだが、過激なサウンドよりは、ドゥーミーな感じがツボ、というまさにボクのツボにハマった感じで、同じ好みの人は猛烈にハマるだろう。


DRYOM - 2 ★★★ (2020-06-27 01:21:33)

ロシア産フューネラルドゥーム2015年作
バンド名はロシア盤の表記は(たぶんベラルーシ語)Дрёмだ。3作品リリースしており、タイトルは処女作が「1」で
作品発表順にアラビア数字がそのまんまタイトルになっている。わかりやすくてイイ。
ワリと聴き応えのあるフューネラルドゥームだが、描く世界はジャケから察するに、少なくとも現代がテーマ。
翻訳すると1曲目は「死の街」3曲目が「ブリザード」だ。なんとなく世界観が見えてくる。
暗いジャケイメージと、派手さの無い音楽性から、かなーり地味なバンドというイメージを持っているが、クオリティは相当高い。
淡々としたゆるーいテンポ、粉っぽい歪みのギター、一本調子なコモり気味のデスヴォイスがうまく融合している。
ギターの質感からか、埃っぽさを感じるところと、ギター以外のシンセや効果音に独創性を感じる。
一聴しただけではしっくりこない若干前衛的なアプローチが、徐々にツボに入ってくるとその魅力から抜け出せない。
よくある「魔性」「死」を直感的に感じさせるタイプとは一線を画す作風で、相当上級者向けのフューネラルドゥームだ。
ちなみに、次作「3」は全く現代を感じない世界観に変貌しており、前衛色を若干強める。ボクはこの「2」が好みだ。


TROUBLE - The Distortion Field ★★★ (2020-06-27 00:48:11)

アメリカ産ドゥームロック2013年作
Troubleはとりあえず全て必聴盤だ。特に一時バンドを解散するまでの3作品はサイケデリック路線を明確にしたサウンドが魅力だ。
ただ、ボクは初期2作品が聴いた回数も多いので好み。また、復活作のSIMPLE MIND CONDITION (2007年)も素晴らしい。
この作品は、前作で華麗に復活し、6年のブランクを空けてのリリース。リリースから1年後くらいにゲットしたかな、確か。
濃厚に酩酊することのない適度なサイケデリックサウンドかつ奇をてらう事なくオーソドックスに聴かせるオールドスタイルは相変わらず好感触だ。
前作からヴォーカルがチェンジして、声が野太くなっているが、この人は、バンド解散から復活までの数年間在籍していたとされる人だ。
声質は随分と変わってしまったが、このバンドの魅力の原点はそこではないので、若干違和感を覚えるも、慣れれば普通に聴ける。
このバンドもPentagramのような、オーソドックスかつ熟練が売りになってきたなと感じる。そういう定番化石ドゥームロックを期待するならマストだ。


SEPTIC MIND - Истинный Зов ★★★ (2020-06-22 02:12:10)

ロシア産フューネラルドゥーム2011年作
この頃は淡々としたスローなフューネラルドゥームをやっていたが、空間系エフェクトが優秀過ぎて緊張感がハンパないので疲れる。
このバンドがやっていることは凄いなと思うし、この盤に感銘を受けて追いかけている節もあるんだけど、疲労感を伴うので敬遠しがちだ。
なんてカオティックで真っ黒いサウンドだろう。この頃から音作りに関してとても前衛的な側面を見せている。
決してヘヴィさや音圧で圧倒されるようなサウンドではないのに、どうしてこんなに疲れるのか・・それほどの威力を秘めている。
一般的には次作が必聴盤(このジャンルに一般もなにもナイが)だろうが、ボクは淡々とした雰囲気のあるこちらの方が好みだ。
このサウンドは、カオティックなダークアンビエント作品が得意で、ドゥームフリークかつブラックメタル的緊張感を得意とする人向けだな、と思う。


SEPTIC MIND - Rab ★★★ (2020-06-22 01:50:01)

ロシア産フューネラルドゥーム2014年作
一応真っ黒い世界観なのでフューネラルドゥームとしたが、一般に想像するフューネラルドゥームほど速度がそんなに遅くなく、あまり淡々とはしていない。
ロシア語を翻訳する気にならないので歌詞はわからないが、過去作含めたジャケから想像しうる世界観は限りなく絶望的で、人生残念ドゥームだ。
よくある遅ーい垂れ流し系とは一線を画し、ワリと起伏のある曲展開をする。また、ギターは常に何か旋律を奏でており、刻む時はトレモロリフを刻む。
ギターの音作りは結構コダワリを感じ、どちらかというとブラックメタル的質感を持つジャリジャリした硬めの音で、単音で弾くと突き刺さるような感じだ。
曲によっては、ワウを結構多用したり、フランジャー的なギターエフェクト(実際は何のエフェクターかはちょっとわからない)を咬ませたりしている。
大作主義の楽曲だが、長時間淡々と聴かせることで鬱々とした気分にさせるタイプとは若干異なり、楽曲構成力で勝負しており、とても奥深いサウンドだ。
サイケとは異なる独創的なギターエフェクトと職人気質な演奏、複雑に作り込まれた楽曲、張り詰めた緊張を伴うヒリヒリした感触など、完成度は非常に高い。
その分、コレを聴くには集中力が必要で、フルで聴くと相当疲労感を伴う。ボクは疲れている時にはとてもしんどくて聴けない。
疲れることが判っているからCDを手に取ってプレイヤーに入れるまでにスタミナを消費してしまう。そんな音だが、この盤はドゥームフリークは必聴盤だ。
しっかりと体力が温存されている時に、腰を据えて聴きたい、相当聴き応えのあるサウンドだ。


SORCERER - Lamenting of the Innocent ★★★ (2020-06-22 00:54:08)

スウェーデン産エピックメタル2020年作
Solitude AeturnusやForsakenあたりの音楽性を持つエピックメタルを日々探しているんですが、良作はなかなか見つからない。
エピックメタルは結構多くバンドが組まれててテクニックも高いんですが、いかんせんツボにハマりにくいのは、ゆったりヘヴィに聴かせるタイプよりも
疾走感で聴かせるバンドの方が多いなぁ、と感じることが多いからだ。ボクが求めるヘヴィメタル理想像はミドルテンポ以下で、エピックに疾走感は求めない。
SorcererはThe Crowning Of The Fire King(2017年作・未所持)を聴いて、割と求めるエピックメタルに近いモノを感じ、ずっと気になっていましたが
今年新作が出るとのことで、予約購入してみた。冒頭で挙げたバンドのインパクトには及ばないが、とても安定感のあるエピックメタルを聴かせてくれる。
ツインリードで聴かせ、卓越したギターソロのテクニックが光るサウンドだ。ボクとしてはピロピロと弾きまくるギターソロは不要なんだが、まあコレはコレで良し。
そういう若干ギターテク寄りな所は気になるものの、キチンと力の入るミドルテンポのオーソドックスなヘヴィメタルをやっており、好感触なサウンドだ。
いかにもエピックなバンド名とジャケもいいね。


PAGAN ALTAR - The Room of Shadows ★★★ (2020-06-22 00:24:13)

英国産ヴィンテージロック2017年産
若干ローファイ録音で70年代NWOBHM的空気を醸し出す、渋み満点のサウンドだ。
適度に歪んだ、高音をやや強調したエフェクトを施したギターの、やたら玄人っぽい演奏が魅力的だ。
ヴォーカルは、カントリーサウンドによくある、酒をあおって歌っているかのようなオヤジヴォイスで味わい深い。
80年代初頭から長く活躍するバンドだけあって、貫禄がある。昔は友人が「オジー似のヴォーカル」と言ってよく聴いていたが
まあ、オジーほどの魔力こそ無いが、そう言われれば似てなくもない。このヴォーカルの魅力はその声質そのものにある。
Witchcraftは音楽性が非常に近い。Witchcraftがもう少し年齢を重ねると、Pagan Altarにそっくりになると思う。
というか、Witchcraftが混迷してきていると感じている今、ボクとしてはこういう路線ではPagan Altarを推奨したい。


ASTRONOID - Astronoid ★★★ (2020-06-19 01:11:26)

米産ポストブラック的プログレッシブロック2019年作
先月馬券をハメてフィンランドのBlood Musicレーベルの近作大人買いを敢行、コロナウイルスで一時空輸便が激減していたが、どうやら北欧からの空輸は
やっと平常時に戻りつつある。ちなみに、2ヶ月以上前にロシアのショップでガッツリ大人買いした作品群は未だ届かず。ロシアは感染拡大で大変なんだろうな。
散々待たされたBlood Music作品群をここのところ堪能しているんですが、発注した時に最も期待していた作品がコレだ!
前作「Air」は、ポストブラック&清々しい爽快感路線を打ち出した、既存バンドにいそうで意外と誰もやってなかった、独創性を発揮した作品に感銘を受けたが
今作はアルバムタイトルに自身のバンド名を採用した、かなり気合の入った作品だ。まさに、ここで打って出ようという熱意が感じられる盤だ。
前作の荒涼とした土地と空のジャケとは打って変わって、幻想的な山の尾根をバックにポップでモダンなデザインのジャケに変化、音楽性にピッタリだ。
音楽性は前作の延長上のモノだが、なんでしょう、この美しく綺麗でありながら、優しくも激しく、情緒に訴えるようなエモい感じは。
普段、死体を引き摺るような腐った汚いデスメタルや、底辺の残念人生サウンドばかり聴いている自分自身がキッチンハイターを頭からかぶって浄化される感覚だ。
折角の休暇だというのに、思わず今日はコレを聴きながら浴室をピカピカに磨いた上、部屋の大掃除をしてしまった。
ブラストは影を潜めるも、トレモロリフのポストブラック的要素を維持しつつ、より起伏のあるドラマチックな楽曲を展開、非常にカッコいい納得のクオリティだ。
特に16ビートで疾走するパートがとても気持ちいい。トレモロリフとビートがピッタリフィットするんだろうね。前作はココがブラストだった。
海外の書き込みをを翻訳してみると、アメリカとカナダに多くのファンが存在しているようだ。もしかしたらカナダのDevin Townsentファンのツボなのかも。
たぶん日本ではまだ無名な方に含まれるのかな。万人受けしそうな鉄板級の盤なので、超オススメです。たまにはこういうクリーンな音もいいね。


ASTRONOID - Air ★★★ (2020-06-18 23:48:07)

米産ポストブラック2016年作
ブラストビートやトレモロリフを多用するブラックメタル的な演奏様式でありながら全くブラックじゃないサウンドだ。
黒いイメージとは真逆の真っ白でクリーンな、エモーショナルで、力が漲るような、激しさの中に優しさがあるかのような音世界だ。
全く新しいサウンドかと言えば、この雰囲気はどこかで聴いたことがあるな・・と思い、ずっと思い出せずにいたんですが、思い出しました。
広大な空間に深めの残響音が響き渡るこの感じ、メタルなのにメタルじゃないこの感じは、Devin Townsentが描いた世界観に非常に近い。
まさにDevinのサウンドをブラストさせてトレモロリフにした感じだ。この手法が爽快感を底上げし、至福な音空間に包まれるのだ。
優しいソフトな感触のヴォーカルが歌い上げる様も、とても清々しい。また、ギターが奏でる旋律もやたら前向きで明るい。
シューゲイザー的ポストブラックは結構よくあるが、ここまで突き抜けた明るい感じは珍しい。イヤな事があった時のストレス発散に最適だ。


AVANDRA - Descender ★★★ (2020-06-18 14:57:45)

プエルトリコ産プログレッシブロック2019年作
最近よくゲットするBlood Musicレーベルからのリリース。YouTubeの再生回数も1万6千回程度で、恐らく全くの無名バンド。
ところが、そのクオリティの高さから、もし人気に火が点けば、一気に頂点まで駆け上がるほどのポテンシャルを感じさせるサウンドだ。
このサウンドの音楽性を一口で言ってしまえば、「プエルトリコ産Dream Theater」だ。恐らくかなりの影響を受けていると思われる。
ギターやドラムのリフは、Dream Theaterファンなら一発でお気に入りになるだろう。Dream Theater的リズム構成、ギターの刻み方が特徴。
天才ジョンペトルーシと比較するのは少し可哀そうだが、シンセとギターをハモらせながらのハイレベルな超絶ギターソロなども僅かに登場。
とはいえ、曲芸的なギターに偏ることなく、楽曲の中に適度にトリッキーなフレーズを織り込んでいる点は、ボク的にはかなりポイント高い。
空間を埋めるシンセがとても良い仕事をしているせいか、ヴォーカルやコーラスと融合して、湿り気たっぷりの哀愁を漂わせているのもいい。
とりあえず真っ先にDream Theaterフォロワーのようなサウンドに聴こえるのは致し方ないにしても、旋律や曲構成から独創性も感じられる。
時折挿入されるピアノや、コーラスのハモリなどのコードワークから、楽曲構成力は相当高いと感じる。また、ギターは相当のテクニシャン
だと思うが、ギターソロが占める割合は低く、ここぞというところでトリッキーなソロをさりげなく聴かせる。
キャッチーに心に残る判りやすい楽曲は無いが、繰り返し聴くことで味わいを堪能してみたいと思わせる楽曲群だ。
次作あたりで、キラーチューンが登場すれば、爆発的にヒットすると思うんだけどね。
Dream Theater的サウンドを求める人は騙されたと思って聴いてみるといいよ。思わぬ拾い物をした気分になるかもよ。


BELL WITCH - Mirror Reaper ★★★ (2020-06-18 01:15:22)

米国産フューネラルドゥーム2017年作
色彩豊かでありながら冷たいモノトーンに見える幽玄なジャケが非常に素晴らしく、当時ジャケ買いした作品。
あまり知らずジャケ買いしたワリに、クオリティの高い真性なフューネラルドゥームでした。
大きな特徴は、初期OMのようなギターレスのサウンドで、多弦ベースとドラムのデュオ編成というところだ。
一聴した感じギターのように聴こえるサウンドは全てベースで、タッピングを駆使した特殊な奏法で演奏している。
CD2枚組に分かれてはいるが、1曲1時間23分の超大作で、ギターレス超スロー垂れ流し系ドゥームという近年稀に見る苦行なんですが
リフの繰り返しの中に徐々に盛り上がる仕掛けや、ハモンドオルガンによる味付けなどのアレンジが素晴らしく、全く飽きないどころか
その世界に惹き込まれて没入感がハンパない。ちょっと格の違いを見せつけるクオリティの高いサウンドだ。
また、この作品リリース直前にドラマーがチェンジしているようで、その元ドラマーは作品リリース直後に亡くなっている。
海外サイトを翻訳しつつ色々調べてみたが、たぶんアル中が原因のようだ。メンバーの死というエピソードがこの作品の真性さを高めているのは
大御所バンドWorshipに似ている。全くの偶然なんだろうが、こういうダークサイドの音楽だけにインパクトが大きい。
今月末頃にAERIAL RUIN(ダークフォークユニット)とのコラボ作品がリリースされる予定で、ボクは当然のように予約しているが
現時点でかなりの完成度なのだが、そのサウンドにギターが加わる、というワケだ。既にYou Tubeで視聴はできるようだが、ボクは1分程度で聴くのを止めた。
とりあえず一聴した印象だが、Worshipクラスのレジェンド級のフューネラルドゥームサウンドになっているんじゃないかな。
ボクが動画で聴くのを止めたのは、先に動画で聴いてしまうのが勿体ないからだ。ウチにアルバムが届いてからじっくりと味わいながら鑑賞したい。
とりあえず真性フューネラルドゥーマーはこのバンドは必ず押さえておかなければならない。


ABIGAIL WILLIAMS - Walk Beyond the Dark ★★★ (2020-06-17 21:45:04)

米国産ブラックメタル2019年作
最近はブラックメタルは必ず試聴してゲットするんですが、最近初ゲットしたバンドで最もツボにハマったブラックメタルはコレだ!
試聴した時は北欧のバンドかと思ったが、どうやら米国産。確かに濃厚な北欧情緒という感じではないが、米国的でもない。丁度中間くらいのテイスト。
バンド名をどこかで聞いたことがあるなと思っていたが、コレは昔観たウィノナライダー主演の魔女裁判の映画「クルーシブル」の主人公の名前だ。
少女が罪のない人々を魔女として告発して処刑する結構エグい内容の映画だったが、恐らくバンド名の由来は、この魔女裁判なんだろう。
音や歌詞から、真性な悪魔崇拝のテイストはあまり感じられないので、魔女に由来するストーリーや世界をコンセプトに曲を書いているんだと思う。
音圧でノックアウトされるタイプが最近しんどいので、最近は雰囲気重視のブラストしないブラックを蒐集しがちですが、コレはしっかりブラストする。
でも、シャリシャリ感が心地よいボクに丁度良い音圧のギターで、ブラストパートであっても音圧が聞き苦しいということはなくボクはこれくらいがいい。
特徴としては、チェロを導入していることで独特な雰囲気があること、ドラムの高度な演奏力がカッコよくとても良い仕事をしていること、かな。
いろいろ調べてみると、しょっちゅうバンドのメンバーが入れ替わっているようで、中心人物のKen Sorceron(ヴォーカル兼ギター)がやっている。
一応、ベースとドラム、チェロのメンバーもいるようだが、過去作品の参加メンバーを見ても、全くメンバーが固定されていないようだ。
その割には、非常にタイトにまとまっているハイレベルの演奏と、作り込まれてドラマチックな楽曲といい、ワンランク上の相当完成度が高いサウンドだ。
アトモスフェアな雰囲気でありながら激しさもあり、それが過剰ではない丁度良い心地よさだ。曲によってはメジャーコードを掻き鳴らし続けるような
ポストブラック的響きを感じさせるパートも登場するが、決してブラックメタルの世界観から外れることがないのが良い。とりあえず超オススメです。


LUGUBRUM - Wakar Cartel ★★★ (2020-06-16 01:44:32)

ベルギー産アヴァンギャルドブラック2017年作
今回はメンバーが車椅子に乗って横断歩道を渡っているジャケだが、相変わらず描く世界観が意味不明だ。
過去作品のジャケやメンバー写真などのイメージ「魚」「ニンジン」「牛」と今回のジャケがリンクしないからなぁ。
しかし、翻訳した感じでは、たぶん1曲目はニンジンの歌なんだよ。この人たちはニンジンに何を見出しているのだろう。
盤とジャケ裏に描かれる液体のような模様から、今作も過去作以上に湿度が高い。振幅するトレモロっぽいエフェクトのギターや
うねるようなバリトンサックスとトロンボーンによる味付けが、更に湿度を高め、今作も食べ物が腐ったようなニオイが漂う。
全体的にすごーくカビ臭い。今回はヴォーカルは少なめではあるものの、相変わらず食べ物をリバースしそうなガナリ声が魅力的だ。
シトシトと雨の降るこの梅雨時期には丁度ピッタリのサウンドで、聴いた瞬間にウチにある食物の賞味期限が切れてしまう感覚になるよ。
もう熟練の技で、演奏技術は相当高く、もはやブラックの枠にはおさまらないアヴァンロックを展開、ジメジメした質感ながらも
相当カッコいいサウンドだ。


ROTTING CHRIST - The Heretics ★★★ (2020-06-16 01:05:07)

ギリシャ産ブラックメタル2019年作
ジャンルはブラックとしたが、演奏様式は決して純粋なブラックメタルではなく、ブラック+メロデス+インダストリアルといった感じか。
このバンドの作品はKhronos(2000年作)が初体験だったため、丁度音楽性の過渡期あたりの作品だけに当時は一線級のサウンドに感じなかったが
アルバム毎で随分と音楽性を変えており、一般にブラックメタルと言って想像する音楽性でアンダーグラウンド臭がするのは初期4作品。
ちなみに、ここの解説やレヴューを見ると、たぶん初期2作品がカウントされていないんじゃないかな。セルフリリースのカセットが処女作、
続くミニアルバムが2ndアルバムとして存在している。5作目あたりから徐々にアングラ臭が抜けて、メロデス・ゴシック的なテイストに変化していき
より大衆受けする音楽性に発展していく。ボクは普通はそうなるとあまり興味がなくなってしまうんだが、独自の音楽性を堅持しているので
初期作品以降もなかなか捨て置けない魅力を持っていると感じている。
近2作品は未聴だ。最も好きな盤は初期のNon Serviam(1994年作)だが、メロディアスな楽曲を前面に出したA Dead Poem(1997年作)や、
若干ブラックメタル寄りに回帰した快作Theogonia(2007年作)、同郷のダークサイド女声ヴォイスパフォーマーのDiamanda Galasが参加している
Aealo(2010年作)あたりが必聴盤だ。
濃厚なアンチクリスチャン思想を持つバンドだが、Profanaticaのような自己崇拝や悪魔崇拝的な感じはなく、宗教に縛られることに対し批判的な立場だ。
何かを崇拝するような祭儀的・悪魔的な濃さというのとは若干テイストが違い、バンド名やジャケイメージのワリに禁忌・背徳的・卑劣さという感覚は意外にも薄い。
この昨年発表の盤は、重厚なギター、反キリストながら神聖な雰囲気、何かを訴えるかのような語り口調、不穏なメロディではなく、前向きな音楽性が特徴だ。
爆発的なブラストや、トレモロリフを多用するような演奏様式ではなく、旧来の味わいのあるブラック寄りの、仄かにインダストリアルさが加わったサウンドだ。
こういう味わいを武器にする、長く活躍するベテランブラックメタルはボクのツボにすごーくハマる。
ただ、ブラックメタルのレビューを書くと決まり文句になりがちだが、もう一度、初期のアンダーグラウンド臭のする濃いブラックメタルをやってほしいとも思う。


TROLL - Troll ★★★ (2020-06-14 00:51:52)

米国産サイケデリック・ドゥーム2016年作
昨年ジャケ買いしたオールドスクールデスバンドOSSUARIUMの作品に感銘を受け、ドラマーのRyan Kogerがこのバンドに在籍していることから
このバンドを知った。北欧のブラックメタルバンドに同名バンドがいるが、全く無関係。音の方もOSSUARIUMのようなデスメタルではない。
森を歩くトロルらしき毛むくじゃらの巨体が描かれるジャケの素晴らしさにまず惚れた。もうこの時点で音が佳作以上なら満足という気持ちだったが
CDを再生すると、物静かながら浮遊感のあるサイケな雰囲気が漂い始め、いかにも怪物が登場したかのようなコテコテのリフで「やられたー!」
と悶絶してしまった。クリーンに朗々と歌う様と、オーソドックスなサイケデリックドゥームな感じが、ものすごーく雰囲気があってカッコいい。
ホント王道と言ってもいいくらいど真ん中なサイケドゥームロックで、こういう音は飽きるほど聴いている筈なのに、猛烈に今ハマっている。
楽曲が素晴らしいのはもちろんだが、湿っぽいナマ音に近いギターを織り交ぜているから、妙に森の雰囲気が感じられるのかも知れない。
まあ、冒頭で書いたOSSUARIUMというバンドも、やたらツボをわかっている人たちだと感じたので、こちらもそういうメンツが集まっているのだろう。
余談だが、森の中のトロルをテーマにしている作品は、かなり前にも出会ったことがある。もはやウチのコンテナの奥深くに眠っていると思うが・・
Trollmann Av Ildtoppbergという英国ドゥーム・アンビエントバンドでThe Forest Of Doomという隠れた名作をリリースしている。
音の内容は180度全く違うが、描く世界は、森の浪漫と空想のトロルという怪物ということで一致している。ボクはこういう森林に浪漫を感じる作品に弱い。
話は戻って・・ちなみにこのバンド、昨年Legend Masterという作品をリリースしている(未所持)。いずれ手に入れようとは思っているが
音楽がどんなに素晴らしい内容であっても、この処女作のジャケの雰囲気と衝撃には敵わないだろうと思い、未だゲットしていない。
この盤は、想像力を掻き立てるジャケって音楽と同じくらい大事だ、ということを知らしめる作品だ。


WITHOUT GOD - Circus of Freaks ★★★ (2020-06-13 02:24:23)

ロシア産スラッジドゥーム2014年作
注文してウチに盤が届いた時には、ペラペラの1枚モノジャケがホッチキス止めされた簡素な紙袋にCDが入っており、あまりのチープさに
ショックを受けたが、音楽性が相当素晴らしかったので許せた。ストーナー要素を含む超ヘヴィなドープスモーカー向けスラッジだが
とりあえずそういう作品は米産に多いと思うんだが、ロシア産でこの作風は結構珍しいと感じる上、レベルが相当高いサウンドだ。
まあジャケ絵のチープさがなかなか愛らしい。赤と紫を基調とした色彩だが、遊園地の遊具が遠くに見える場所で、宗教的装束を着た
ゴブリン的なバケモノが描かれるジャケで、逆さ十字の旗を掲げているバケモノを1匹コッソリと描いているところが微妙にウケる。
ファズかけまくりの掻き毟るようなギターと、ワウを多用したトリップ感、ミドルテンポで聴かせるスタイル、ヘヴィで味のあるドラムが魅力的だ。
極端な例えかもしれないが、Electric Wizard、Sleepあたりの音楽性のロシアヴァージョンだと思えばいい。


SHALLOW RIVERS - The Leaden Ghost ★★★ (2020-06-13 01:43:09)

ロシア産デスメタル2015年作
一応デスメタルとしたが、ほんの少しドゥーム寄りな音楽性が見え隠れするものの、ツーバスがドコドコ随所に入り、シンフォニック要素もある。
ブラックメタル的質感のギターもアリという、そんなに珍しい音楽性ではないとは思うが、メロデスでもなくオールドスクールでもない、
一定ではない音楽性から若干ジャンル分けが難しい作品だ。そういった様々な要素を効果的に組み合わせたかなりクオリティの高い作品だ。
ジャケは黒地で左右の山の尾根から太陽が覗き、中心にワンピース姿の女性の後ろ姿のようなモノが描かれているが、ジャケの中身を見てみると
2ページに渡りこのジャケの情景が灰色を基調とした写実で描かれている。幻想的な2つの太陽を見つめるかのような女性の姿が印象的だ。
結構ドスの効いたデスヴォイスと迫力のあるツーバス、ギターもブラックメタル的な禍々しいフレーズや不穏な不協和が登場するものの
シンフォニックなシンセが効果的で、描く世界観はむしろ幽玄な情景からイメージされる内省的な「死」や「冷たさ」であり、叙情性豊かな作風だ。
露骨ではないがややポストブラック的な要素もあり、決してエモーショナルではないが、単にブラックメタル的禍々しさのみには留まらない感覚がある。
激しさと静けさが同居する雰囲気で、不協和なワリにメロディアスな旋律も登場、起伏に富んだ曲展開がドラマチックでかなり奥が深い楽曲が魅力だ。
特にラストを飾るタイトル曲は、近年稀に見るドラマチックさを感じさせる壮大な曲でホント素晴らしい。
結構意表を突く曲展開をするので、ハマればクセになる。ロシア作品は特にこういう路線のバンドのレベルが高いとよく感じる。超オススメ。


SERGEY LYAPUNOV ★★★ (2020-06-13 00:45:39)

今最もハマっているロシアのピアノ作曲家だ。ロシア5人組(ボロディン、バラキレフ、キュイ、ムソルグスキー、ラフマニノフ)や
プロコフィエフ、スクリャービンあたりの知名度までは無さそうだが、とてもアグレッシブで斬新なピアノ作品を多く作曲している。
そもそもリャプノフは技巧派のバラキレフの影響が強い上、同様に技巧派のラフマニノフがリャプノフからの影響が強いように思う。
また、ロシアピアノの基礎を築いたヘンゼルトが、手指を広げた技法を広めたことから、その影響が色濃く、リャプノフの鍵盤技巧は
知名度の高いリストあたりの楽曲に比べても、オクターブ以上の、10度の広がりが普通といった感じで、非常に弾きにくく演奏難易度が高い。
その広範囲な打鍵を駆使したフレーズは独創的なハーモニーを生み出し、また、叙情性も相当深いので、ハマれば抜け出せない魅力がある。
代表曲としては、「12の超絶技巧曲集 作品11」あたりが有名で、YouTubeで聴ける演奏は殆どがこの曲集に含まれる曲だ。
特に「子守歌」「レスギンカ」がよく弾かれているようだ。ボクがこの曲集で最も好きなのは、イスラムのダンスリズム要素が色濃い「レスギンカ」だ。
この曲はとてもファイティングで、まるで戦士が戦場を駆け抜けるかのようなドラマチックな曲展開が魅力で、音数も多くゴージャスな曲だ。
また、この曲集にはもう1曲必聴の曲「幽霊のロンド」があり、圧巻の作品だ。非常にスピーディに展開する超絶技巧かつアグレッシブな鬼気迫る作品だ。
この曲集以外の音源や楽譜は日本ではなかなかお目にかかれないので、ここからは輸入盤や輸入楽譜をゲットしないと深く堪能することはできないが
とりあえずいろんな音源を探してみたところ、「タランテラ作品25」は相当聴き応えのある凄い曲だった。
リャプノフはピアノ作品ばかり残している。まだ全作品を探しきれていないが、凄まじい曲想、技巧の曲がまだまだある筈、と思い
ここ1,2年、かなりのヘビーローテーションなのだ。


CHRISTIAN DEATH - Only Theatre of Pain ★★★ (2020-06-12 23:52:21)

米産ゴシックロック1982年作
ポストパンク的サウンドの元祖とも言えるバンドで、リリース年からもボクは随分と後追い世代なんですが、相当好きな作品。
この処女作のリマスター版(米国盤2011年)を所持しており、コンテナ行きにならず手に届く場所に常備している。
創始者のRozz Williamsは結構早くにこのバンドを去り、実験音楽やパフォーマンス路線に鞍替えしている。
そういうアート志向が元々あり、それが音に反映された先進的なスタイルが素晴らしかっただけに、Rozzが脱退した初期以外の作品は全く興味がナイ。
旧来のパンクロックの軽快さと同時に翳りのある作風、斬新なリフ構成、浮遊感のあるノイズやエフェクト、気怠く魅力的なヴォーカルなど
よくあるシューゲイザーとは全く異なるアプローチでそういった要素を盛り込んでいる作風は、1982年作品としてはかなり先進的で独創的だ。
録音自体はややローファイな印象は受けるかも知れないが、コレが味わいとして感じられるからスゴい。今聴いても38年前の作品とは到底思えない神盤だ。
ゴシックロックとか、アートパンクとか、デスロックとか、色々な言い方がされていたようで、その言葉がとてもしっくりくるサウンドだ。
きっとこのバンドのフォロアー的なバンドも多くいるんだろう。そっち方面は掘り下げて追いかけなかったので、あまり詳しくは知らないが
若い頃はDead Kennedysのジェロビアフラあたりの路線を追いかけていた時期もあるので、こういうポストパンク的な音も結構好きだったりする。


WITCHCRAFT - Legend ★★★ (2020-06-12 20:22:34)

スウェーデン産サイケデリックロック2012年作
前作The Alchemist(2007年)がハイクオリティだっただけに、リリース元がRise AboveからNuclear Blastにチェンジして
録音が随分変わるんじゃないかなと心配した作品だが、ワリと期待通りのヴィンテージ臭漂うローファイ録音で一安心。
処女作Witchcraft(2004年作)の70年代アンダーグラウンドの空気まで再現された衝撃作には敵わないにしても
Witchcraftを追い続けたファンなら、納得の作品なんじゃないかな(次作で盛大にコケるんだが・・・)。
過去作に比べて、ハードな曲が際立つ作品。基本こういうサウンドは速いテンポの曲をボクは嫌うんですが、全然聴ける。
まあ、聴きどころはヴィンテージ臭のある雰囲気ではあるんですが、このバンドはヴォーカルの甘い声、高音部で声が裏返るところが
とても味わいがあって聴き惚れる。また、メロディや曲の起伏が判りやすくキャッチーに耳に入ってくるワリに飾った感じがしないのがイイ。
単に古き良きロックの音を再現しているということだけでなく、そういった固有の持ち味があるんだよ。
なんといってもこの盤は、鳥をモチーフにしたジャケが美しい。このデザインだけでワンランクお気に入り度が上がっているのは確か。


AGHAST - Hexerei im Zwielicht der Finsternis ★★★ (2020-06-10 22:39:10)

Hagalaz' Runedanceとして作品をリリースしたり、Cradle Of Filthにも参加するドイツの女性シンガーAndrea Haugenと
Darkthrone、Ulver、Thorns、Satyricon、Burzum、Emperorなどノルウェイジャンブラックのアートワークや写真撮影を手掛ける
ノルウェイのアーティストTania Steneのデュオによるダークアンビエント作品1995年作。
鉄板級のダークアンビエント作品を多く手掛けるCold Meat Industryの作品では、リリースが早いのもあってかなりの回数聴いた盤かもしれない。
基本物静かな作風だが、耳に障るパルス音や、妖艶な女声、祭儀的な音などをコラージュして、濃い音空間を創っている。
雪が降り積もる寒々とした人里離れた山奥で、魔女が密かに呪術を行っているような光景が浮かぶ。
多くのノルウェイジャンブラックバンドから感じられる背徳的で寂しく孤独な雰囲気を、アンビエント作品で楽しめる逸品だ。
ゲットした当初は部屋の電灯を消して就寝の時に聴いていたが、暗い場所で聴くとちょっとコワい。
また、ユニット名のロゴに黒い鳥が描かれているのは、鳥ジャケフェチとしてはちょっとポイント高い。


40 WATT SUN - The Inside Room ★★★ (2020-06-10 00:39:00)

英国産ドゥームメタル2011年作
石のような質感のモノトーンジャケを空に見立てて、隅っこ2羽、ジャケ裏に3羽、盤に2羽、CDを取り出すとそこに2羽
おまけにケースをひっくり返すと2羽の鳥が描かれている。鳥ジャケフェチとしては嬉しいが、あんまり可愛くないのが残念。
一応ジャンル分けすれば音響的にはドゥームメタルだろうとは思うが、普通に想像するようなドゥームとは世界観が全く異なり
メジャーコードを多用していることと、クリーンヴォーカルの甘い声質から、シューゲイザーっぽく聴こえるサウンドだ。
アルバムタイトルが示すように、家に引き籠っているような、内省的な空気が支配する音空間ながら、仄かに希望が湧いてくるような
ジワジワくる優しい感覚が魅力。普通のドゥームではあり得ない詩的なテーマで、問いかけるような歌詞が独創的だ。
音響的にはヘヴィさはなく、録音状態も若干おとなしめだが、そのぶん、ヴォーカルの存在感が際立ってむしろグッドだ。
よーく聴くと、少しずつ微妙にテンポアップしていたり、逆にスローダウンしていたり、意図的だと思うがそういう工夫があり
情緒的に訴えかける仕掛けが施されているところがウマいなぁ、と思う。ドゥームというジャンルの中では一風変わった雰囲気の作品で
真性ドゥーマーにはオススメできないが、よくあるポストブラックにも似た、ポストドゥーム的サウンドに興味があれば一聴してみて欲しい。


CRYPT OF SILENCE - Beyond Shades ★★★ (2020-06-09 22:49:27)

ウクライナ産ドゥームメタル2014年作
ゆったりと聴かせるオーソドックスなドゥームメタル。現時点で2作品リリースしており、次作は録音状態が向上してより深みが増しているが
ボクはこちらの処女作の方が好みだ。手の込んだアレンジで音の厚みの増した次作もカッコよくて素晴らしいが、個人的嗜好としては
ギターエフェクトが薄目で重すぎず、淡々としたこちらの雰囲気の方がツボに入る。
若干スタジオ臭がするのが玉に瑕だが許容範囲、浅めではあるが空間エフェクトも適度で心地よい。
灰色と黒のモノトーンジャケだが、4羽の鳥が描かれ、ジャケ裏にも空を飛ぶ鳥、盤には枝にとまっている鳥が描かれている。
ボクは鳥ジャケフェチなので、非常にポイント高い。次作よりこちらが好きというのも、鳥ジャケのせいだろうと思うので
音響的クオリティを求める人は次作から入ればいいと思う。ボクは断然こっちだけどね。


HEAVY LORD - The Holy Grail ★★★ (2020-06-09 22:09:28)

オランダ産サイケデリックドゥーム2004年作
ウチには2009年にリマスターされたロシア盤があり、オリジナル盤には収録されていないボーナストラックが追加されている。
とてもシンプルかつイーヴルなサイケデリックドゥームで、純粋にギターの歪みを楽しむ類のサウンドだ。
様々な表情を見せるギターの歪み、ピッキング音や細やかな倍音まで意のままに操り、心地よく昇天させるドープスモーカー向け。
知る限り4枚のフルレングスアルバムをリリースされており、どの盤もギターの質感が素晴らしい。2nd以降はスラッジ色がより強くなるが
ボクは無駄のないシンプルなこの作品が最もツボでこの作品のみ所持している。


REENCARNACION - Más Hombres, Menos Estatuas ★★★ (2020-06-09 02:13:30)

コロンビア産ウルトラメタル2006年作
前作のレビューでも書いたが、自称ウルトラメタルというジャンルだ。前作のローファイな録音はそれはそれでインパクトがあったが
録音状態が向上して、この盤はかなり耳に馴染む音になっている。辺境メタルなのでチープなのかと思いきや、このバンドは
かなり高い演奏力を秘めており、ドラムは手数もバリエーションも多く、ギターはいろんなジャンルのギターを弾きこなす。
デス・ブラック的なサウンドから、パンキッシュな軽快なロック、ダンサブルでファンキーな曲、アコースティックな曲など
盛り沢山過ぎて、全く統一感のない上、聴きなれない言語(たぶんコロンビア語)のヴォーカルだから、とても異質なサウンドに聴こえる。
また、14~26トラックは「Poeticas del vacio」というタイトルで無音を挿入しているところから、アート・前衛路線に傾倒していることが窺える。
トリオ編成だが、ジャケ内のメンバー写真を見ると、4人写っている。が、よく見ると愛敬のある犬が、メンバーと同じ存在感で写っている。
そんなユーモアも持ち合わせた、多彩な引出しを持った、何か新しいモノを創造しようとする志向が魅力的なサウンドだ。
辺境メタルである上、実力があるバンドだけに、統一感が無く世界観が見えてこないところが、非常にもったいないなぁ、と思う。


TZUN TZU - Kunoichi - Gaijin ★★★ (2020-06-09 00:13:58)

オールドテイストなサウンドで、かなりカッコいいリフ、ギターソロ、ドゥーミーなサビなど短い曲ながら音響的にも魅力たっぷりだが
「I am not pure」「I am a foreigner」などの歌詞の後、サビでは濃厚なデスヴォイスがハモりながら「ガイジーン!」と連呼するという
特大のインパクトを誇る、シュールな日本観が魅力の迷曲だ!


TZUN TZU - Tzun Tzu - Shi ★★★ (2020-06-09 00:01:18)

この曲のタイトルは「死」だ。
歌詞の全文はこうだ。
「息は吐息になり、最期の心臓の鼓動が乗る(乗る?ちょっと意味不明)」
「血流は止まり、魂は暗闇に散る」
「命は尽き果てたのだ」
コレをきちんと日本語で歌っているが、濃厚な重低音デスヴォイスなのでよーく聴かないとわからない。
また、歌詞はローマ字表記で書かれているが、「暗闇」が「KARAYAMI」と書かれているところがちょっとウケる。


TZUN TZU - Tzun Tzu ★★★ (2020-06-08 23:49:34)

オーストラリア産デスメタル2012年作
燃え盛る寺と武士の甲冑が描かれるジャケ。コレは和風デスメタルだ。B級愛はラトヴィアの辺境和風デスメタルYOMIに譲るが、完成度はこっちが上。
フルレングスアルバムはコレのみ、EPでの作品が多く、この盤以外にウチには、迷曲「Gaijin」が収録されるKunoichi(2008年作)がある。
また、濃いアンダーグラウンドテクニカルデスを多くリリースするチェコのLavadome Productionsから新作(またEPなのが残念)がリリースされ
買おうかどうしようか悩んでいるところだ。というのも、もともとブルータル志向はあったがKunoichiの頃のオールドテイストは薄れ、
どんどんブルータルデスにシフトしてきており、ボクにはしんどい。ただ、和風な曲名を見ると、やっぱり手に入れたくなるんだよ。
さて、この盤は1曲目「Zazen」からラストの「Hara Kiri」まで、「和」にこだわった世界観だ。坐禅なんだから静かなイントロダクション的な
サウンドから始まるのかと思いきや、禍々しくツーバスで走りまくる高密度なデスメタルを展開、もはや心落ち着かせ坐禅など組んでいられない。
また、6曲目には「Without Zen」という、まるで坐禅で解脱したかのような曲名の楽曲が登場、日本文化をナメてるのかと思いきや
この曲がこの盤で最も盛り上がるなかなかのクオリティで、処女作と思われる盤の看板曲にもなっている。
全曲通して聴くと、相当クタクタになるほど重低音な音質で、特に常に叩きまくっているドラムひとつひとつの音が重い。
また、ヴォーカルも一般のデスヴォイスよりもやや低音で、かなり密度の濃い疲労を伴うデスメタルを展開している。
楽曲はブルータルな部分はもはや音程すら判らないほど不可解な不協和音だが、旋律が聴きとれるところは、結構和風な陰旋法を用いている。
Kunoichiには三味線や尺八が入って、和メタル要素が多めだったが、この盤は琴が入ったりもするが、若干少なめになっている。
それでも和へのコダワリが強く感じられる味わい深い盤である。何を歌っているのか歌詞を見ながら鑑賞すると、より和を感じつつ堪能できるぞ。


HAVOHEJ - Kembatinan Premaster ★★★ (2020-06-08 01:17:52)

米産ブラック2009年作
ジャケを開くと逆さ十字を持ったキューピットがカワイらしく描かれ、CD盤面にもそれが描かれている。
この人の思想が歯止めを知らず、狂人と化したと実感させられるのはこの盤からだろうと感じる。
前作はまだ、バンドスタイルを維持してビートを刻んでいたが、この作品は、もはやノイズ、アンビエント的な作品になっており
不浄で卑劣な音空間の根源とも言えるノイズが終始響き渡り、濃厚なカルト臭が漂い、耐え難い狂った音世界が拡がっている。
少なくともこの人はドラマーなので、時折カッコいいドラムのリフが登場したりもするが、この人のドラムの魅力はカッコ良さではない。
何の工夫もない、単調な4ビートや8ビートを延々と繰り返すリフにこそ、気持ち悪さが宿っており、惹きつけられる。
大した演奏力があるワケでもなく、楽曲構成力があるワケでもないのに、異様な存在感がある。
他のブラックでは堪能することができない、カルト風味のみで惹きつける不思議な魔力こそがHavohejの魅力なのだ。


WITCHCRAFT - Nucleus (2020-06-07 23:27:00)

スウェーデン産サイケデリックロック2016年作
ダメな作品は買わず、全作品をコンプリートしているケースは結構少ない。
沢山のCDやLPを所持しているけど、意外と歯抜けで全部は揃ってなくて、そういう意味ではボクはコレクター精神は薄めなんですが
このバンドの盤は、この作品まで全てゲットしており(とは言っても5作品だが)、新作「Black Metal」をゲットするかどうか悩んでいる最中だ。
Witchcraftの新作が出れば買わないワケにはいかない・・筈なのに、買う気持ちに傾かない。
とりあえず、このバンドがちょっとおかしくなったのはこの盤からだ。
そもそも60~70年代の空気を再現したかのようなレトロ感が素晴らしいバンドだったのに、この作品はヘヴィさが強調されてて、
従来のレトロ感たっぷりの魅力を掻き消してしまっている。かなーりヘコんだ、ちょっと残念な作品、ボクとしては困った問題作だ。
まあ、作風が変わるのも判らないでもない。素晴らしかった前作「Legend」のメンバーは、全員脱退してしまい、
Magnus Pelanderが独りになってしまったようで、メンバーが一新してしまった、ということらしい。
同時期にMagnus Pelander個人名義の作品もリリースされているが、そちらはアコギの弾き語りで、趣きが全く違う。
アコギ作品はコレはコレで悪くないが、この人の志向がそっちに向かってるのか、新作「Black Metal」がアコギ作品になってしまっている。
とりあえず、良かった頃のレトロ感を取り戻して欲しい。で、アコギ作品はソロでやって、こっちではバンド形式でやってくれよ、と願っている。


HAVOHEJ - Table of Uncreation ★★★ (2020-06-07 22:34:15)

米国産ブラック2019年作
最近最もよく聴くブラックはProfanaticaのRotting Incarnation Of God(2019年作)だが、そのドラマーPaul LedneyがHavohejだ。
ブラックというと悪魔崇拝のイメージが付き物だが、この人は自分自身を崇拝して、濃厚なアンチクリスチャン思想を持っている。
そもそもHavohejはエホバの綴りを反対から読んだモノだ。というワケで、ソロ名義のこの盤も一般のブラックメタルフリークを寄せ付けない
激しさとは無縁な、祭儀的で、尊大で、狂った内容だ。本気なのかファッションでやってるのかわからないが、全くこの人はもう狂人だよ。
ちなみにソロ名義の盤はDethrone The Son Of God(1993年作)も持っているが、この人のスタイルを知らずに聴いた当時は全く理解できず
ただのポンコツメタルだな、と思って殆ど聴いていない。しかし、Profanaticaのカルト臭の魅力がジワジワと判ってくると聴こえ方が変わってくる。
Havohej名義の作品においても、ジワジワとそのカルト臭の魅力に憑りつかれていく感じだ。まあ、今更初期作品を聴き直そうとまでは思わないが。
とりあえずProfanaticaの昨年作と同じ年にリリースされたこの盤は、セットで持っておきたい濃厚なブラックだ。
しかし、演奏力や激しさといった音響的な完成度を求めるブラックメタラーは、手を出すと「なんじゃコリャ?」という感じに思うかも知れないね。


SOL NEGRO - Dawn of a New Sun ★★★ (2020-06-07 21:39:25)

米産デスメタル2012年作
たぶん無名なバンドで、フルレングスアルバムはこの作品だけだろうと思う。
作風はブラック的でもありドゥーム的でもあるが、オールドスクールデスというのが最も妥当だろうと思う。
血を感じさせる赤と黒で彩られたジャケ、ジャケ裏面の骸骨をモチーフにしたイラストのとおり
ギターにはザックリとした血液の質感が感じられ、走り気味のズトボコ感のあるドラムが非常に魅力的。
演奏テクニックはあるので、走り気味の演奏はむしろ鬼気迫る感じでかなりカッコいい。
また、一聴してバタバタしているので楽曲がポンコツなのかと思いきや、相当作り込まれており、アヤしくもカッコイイのだ。
基本激しい曲調だが、時に祭儀的な雰囲気があり、まるで体を切り刻まれ、肉片があちこちに散らばっていくような感じが素晴らしい作品だ。
また、この作品には、Paradise Lostの名盤Gothic収録の「Dead Emotions」のカヴァー曲が含まれている。
恐らくギターの質感は、ディレイこそかかっていないが、Gothicの無骨さを出そうとしているように感じる。
もう活動していないのかも知れないが、このメチャクチャなバタバタした血塗れ感満載のデスメタルの次作を聴きたい。


ORODRUIN - Ruins of Eternity ★★★ (2020-06-07 18:54:28)

米産ドゥームロック2019年作
ぬるーいオルガンを取り入れた作風がツボにハマった個人的神盤Epicurean Mass(2003年作)からもはや16年。時が経つのは早いな。
この作品がリリースされたのを知った昨年末、どれだけワクワクしたことか。当然、あのぬるーいオルガンに静かなるイーヴルなギターが乗る
独創的なサウンドを期待したのだが・・・なんとオルガンが無くなっていた。購入当初は「えー、なんでなん?」と声を出して嘆いた。
が、しかし、オルガンという甘っちょろい道具に頼らず、真っ向勝負するその音楽性に惚れてしまった。
ドゥームというジャンルにありながら真性なスロードゥームではなく、ロックテイストという個性を出しにくい難しい立ち位置にありながら
過度なサイケデリック路線に走ることなく、ギターの重量に頼ることなく、前衛路線に走ることなく、ドゥームロックど真ん中なのに独創的だからスゴイ。
このバンドのギターリフは短3度のバッキングに大きな特徴があり、そのリフが登場した瞬間、Orodruinの魔性はコレだよ、と思うのである。
岩場の奥に仄かな光が差す建物が描かれたジャケのように、静寂さとイーヴルさが同居する世界観が魅力だ。バンドロゴの美しさもイイ。
「クール」という言葉がとてもシックリくるサウンド。派手さを極限まで排除した、落ち着いた感じのドゥームロックからはもはや貫禄すら感じるね。


VANDENBERG - 2020 ★★★ (2020-06-07 18:13:35)

ギターヒーローモノは友人のギタリスト経由だったり、自分がダークサイドに染まる前、洋楽ビギナーの頃に結構多く聴いたが
ヴァンデンバーグ3作品は近所のCDレンタル屋からゲットした作品をカセットテープに落としてよく聴いていた。
当時のメタル誌でも名前はよく掲載されていたが、決して高評価とは言えない微妙な立ち位置だったのは、同時期の哀愁漂わせる
ギターヒーローに比べると、北欧情緒的な哀愁は一枚落ちるし、WhitesnakeでもどちらかというとSteve Vaiに取って代わられた感が
あるからなのかな、とは思う。そもそもヴァンデンバーグのギターは英国的なイメージが無く、哀愁はあってもどちらかというと
北欧人でありながら米国的なイメージをボクは持っていたと思う。だから濃厚な北欧情緒のギターを期待すると一枚落ちる印象を持ちがち。
ならば米国的なブルースギターかといえば、ブルースのように魂を込める演奏ではあるものの、ブルーノートを辿るソロはあまり弾かず、
かといってクラシカルかと言えば、古典的なギターワークからむしろ脱しようとする奇抜なギター志向がギターソロから感じられるため、それも違う。
この人はそもそも前人のスタイルは最小限に取り入れるにしても、新しい楽曲やギターを創造したいという志向の持ち主だったんじゃないかなと解釈している。
(ボクはギタリストではないので、詳しい人からすれば、それは違うというツッコミはあるかも知れないが・・)
そういうワケで、この作品に期待する作風は、当然Whitesnake時代ではなく、また、それ以降のボク的には微妙なManic Edenでもなく、近年のアコギでもない。
初期作品の2nd路線の音楽性を期待するんだが・・・そういう意味では少し微妙な作品に仕上がった感がする。まあ、当時の作品に占める雰囲気の多くは
ヘタウマヴォーカルの存在感というのもあったと思うので、どうしても今作のヴォーカルの存在感が大きい作品は、ヴァンデンバーグ名義作品としては
どうもシックリこないところがある。また、楽曲は教科書通りとも言える80年代路線でまあ良しとしても、ギターソロは当時の独創的な感じとはチョイと違う。
・・・とまあ、思うところは色々あるとしても、この盤のクオリティは相当高く、80年代ハードロックが現代に蘇る作品としては必聴盤だ。
ただ、ヴァンデンバーグ名義作品として、これこそヴァンデンバーグ!というインパクトは、ちょっと物足りない・・でも66歳?でこのエネルギーはスゴイと思うよ。


MEKONG DELTA - Tales of a Future Past ★★★ (2020-06-07 16:33:14)

ドイツ産テクニカルスラッシュ2020年作
ラルフヒューベルトの作品は集中力が削がれてしんどいからもう買うまいと思ってたが、過去作に比べてジャケが美しいので一応ゲットした。
ギターの質感がややソフトになって、若干聴きやすくなっている上、シンフォニックな要素を入れたことで耳に馴染みやすい。
変則リフの連続で疲れるかと思っていたが、そういうソフトなところがうまく調和して、少なくとも前作よりは聴きやすい印象だ。が、それでも疲れる。
Mekong Delta作品全般に言えることだが、複雑過ぎて印象に残るリフというのが案外ない。今作でもそれは同じだ。
もうここからは好みだが、個人的にDances of Deathが一番好きな盤だったが、それを超えたかどうかというとどっこいどっこい。
少なくともこういう複雑怪奇な音楽は、耳に馴染むのに相当時間がかかるし、疲労感を受け入れて繰り返し聴くかどうかだよね。
ボクも年齢的にしんどい作品をあまり好まなくなってきているが、しばらくはこの作品を繰り返し聴いてみようか、と思っている。


TYRANNY - Aeons in Tectonic Interment ★★★ (2020-06-06 20:38:16)

フィンランド産フューネラルドゥーム2015年作
前作から10年のスパンがあるので、もはや活動していないのかと思っていたが、2作目が発売されていたことを知り2年前にゲット。
フューネラルドゥームバンドの中でも屈指の重さ、曲展開のような茶目っ気など無視した単調さ、全く救いのナイ暗黒空間が特徴で
前作の延長上の音楽性ながら、更に音質が向上してホンモノ感が増した印象だ。フィンランド産はこういうコアな音が結構多い。
延々と禍々しい歪んだギターとハウリングが織りなす暗黒空間が続き、超スローで、巨大なハンマーで叩きつけるようなヘヴィなドラム
旋律というよりは一撃必殺のダウンストロークで圧死させるようなギター、終始ケモノのように唸るデスヴォイス、とにかく救いがナイ音だ。
もはやフューネラルドゥームフリーク以外のリスナーには、コレの何が一体面白いのかと思うかも知れない。
この苦行を堪能するということは、もはや修行だ。相当なマゾ体質でないとコレはなかなか厳しい内容だが、この真性さは素晴らしい。
普段ミディアムボディのライトな安ワインを飲んでても、たまに度数の高いガツンとくるやや高額なフルボディワインが欲しくなるのと同じで
たまーにガッツリとこういう音が欲しくなる、毎日はしんどいので、ホントにたまに聴く。ボクはそういう楽しみ方で聴いている。
とにかくヘヴィで禍々しい音を求めるコアなリスナーには、どストライクかも知れない。


DARK SUNS - Everchild ★★★ (2020-06-04 21:47:35)

ドイツ産プログレッシヴロック2016年作
まるで鳥のようなモノが描かれるジャケに興味を持ち、当時とりあえずジャケ買いした作品。
オルガンやシンセ以外にも、アルトサックスやトランペットなどのメンバーがいるゴージャスなバンドで
ギターの占める比率はやや低めだが、プログレをかじったメタルリスナーのツボにハマるサウンドだろうと思う。
CD2枚組の長編ファンタジー絵巻で、コレを聴くと1本映画を鑑賞したかのような充実感が得られる。
時折流れるピアノの旋律、ギターのコードワークから、作曲能力が相当高いと感じる。
また、終始アトモスフェアな空気が漂っているが、空間系のエフェクトが単調ではなく質が高い。
Kansas、King Crimson、Pink Floydあたりの70年代プログレッシヴロックの息吹をほんのり感じさせるので
そのあたりの音楽性や演奏スタイルが現代に蘇ったようなサウンドをイメージしてもらえばいいと思う。
ストーリー性のある壮大な作品だ。特に終盤の大曲は聴き応えがある。


WOCCON - Solace in Decay ★★★ (2020-06-04 14:47:05)

米産ブラック寄りデスドゥーム2014年作
霧が立ち込める山岳と湖が美しい情景をバックに、バンドロゴマークの鳥が描かれ、バンドロゴの「N」にも鳥が描かれるジャケ。
基本、動物、特に鳥が描かれるジャケにボクは弱い。鳥ジャケ作品は結構多く所持しているが、この作品も当時即ジャケ買いした。
ジャケ買いは結構ハイリスクでハズレを引くこともあるが、コレは結構作り込んでいるクオリティの高い作品だ。
この作品ゲットの後に、処女作あたりもチェックしたが、ルーツはどうやらデスメタル寄りライトドゥームサウンドのようだ。そういうワケで
サビの部分はポストブラック的な演奏が結構多く入るが、全体的な楽曲構成としては、ワリと起承転結ある真面目なデスドゥームサウンド、
むしろゴシックメタル調の作風で、スッと入ってきやすいキャッチーなメロディが多く、ドラマチックに盛り上げる曲が多いのが好感触だ。
バンド名はアメリカ先住民族から取っているんだろう。曲のタイトルからも、先住民族の土地をテーマにしたストーリー性を感じることができる。
予備知識ナシでゲットしたワリには結構当たりを引いた感じだ。次作が出るのか活動しているのかよく判らないが、結構期待しているバンドだ。


WORSHIP - Terranean Wake ★★★ (2020-06-04 13:58:39)

ドイツ産フューネラルドゥーム2012年作
オリジナルメンバーはフランス人のMad Maxとドイツ人の Daniel Pharosでスタート。
しかし、躁鬱病を患っていたMad Maxははカナダ滞在中に橋から投身自殺、その後Last Tape Before Doomsday(1999年)が世に出る。
遺族が音源回収に乗り出す等の話題も耳にしたが、この音源は、いずれLPとCDでも発売され、我が家にはLast CD Before Doomsdayがある。
Mad Maxが残した音源を相方のDaniel Pharosが引き継いでDooom(2007年作)を発表、フルレングスアルバムで聴ける音源はこの2枚と
Daniel Pharosが作り上げたこの盤だけじゃないかなと思う。
そもそもセールスは全く眼中に無かったようだが、たぶんフューネラルドゥームマニアにとっては抜けて格上の存在で知名度は高いはず。
メンバーの死というバンドの遍歴が偶然にも世界観を高めているのは確かだが、そういう話題を抜きにしてもこのサウンドのクオリティは相当高い。
多くのフューネラルドゥームバンドの中でも頭一つ抜けている質の高さは、話題性よりも、単にDaniel Pharosの作曲・表現力の高さにある。
超スローな曲調の中、無機質な世界観である筈なのに、歪んだギターは様々な表情を見せ、狂おしく、時に激しく、時に静寂との対比が美しい。
ボクはこの盤はコンテナ行きにはならず、常に取り出せる位置に常備しているが、意外に聴く頻度は少ない。というのも
あまりに濃い内容で集中力を削がれることが判っているので、CDをプレイヤーにセットするまでにかなりのパワーを失ってしまう。
それだけ濃厚な内容なので、未聴のフューネラルドゥーマーには自信を持ってオススメできるが、相当疲れる作品という覚悟はいるよ。


NAXATRAS - III ★★★ (2020-06-04 01:39:42)

ギリシャ産ストーナー・サイケデリックロック2018年作
全く無駄な音が無いすごーく地味なリズム隊にナチュラルトーンのブルースギターが乗るインストゥルメンタルかと思いきや
僅かな歪みや、ディレイやエコーなど、曲が進むにつれて様々な表情を見せるギターエフェクトが施され、徐々にストーナー要素が
盛り込まれていく。中盤以降に僅かにヴォーカルが入るが、大胆な振幅でピッチの速いスペーシーなエコーヴォイスが登場したり
ストーナー要素をほんのり含ませるギターバッキングが登場したりと、アルバム全体で徐々にライトに石化させていく作風が魅力だ。
どうも海外レビューを見ると低評価気味な気がするが、前半だけ聴いて全然サイケじゃないじゃん!と思ってるんじゃないかな。
最後までキチンと聴いていないんじゃないの?と思うよ。物静かで超シンプルな作風だが、エフェクトの妙を堪能できる
ちょっと上級者向けのストーナーサウンドだ!


THE WIZAR'D - Subterranean Exile ★★ (2020-06-02 23:44:00)

オーストラリア産70年代風ロック2020年作
3ヶ所くらい海外サイトの低得点レビューを翻訳しながら解読し、全曲繰り返し試聴した上で購入に踏み切った。
CDと同じくらいの海外からの輸送代金を払い、その上コロナウイルスの影響で1か月以上待たされ、先日やっと到着した。
とりあえずそこまで苦労してゲットしたが、コレはゲーマーが敢えてクソゲーを買う的なB級作品で、B級愛を持つコアなリスナー向け作品だ。
フルレングスアルバム発表直前のEPがドゥーミーで味わい深い、かつB級臭漂う佳作だったが、その後は佳作を超えられない微妙な作品を連発。
というのも、10年選手でありながらローファイな録音とローテクな演奏、かつヴォーカルがヘタという弱点を抱えている。
金が無くて録音状態が微妙なのかと昔は思っていたが、10年経ってコレということは、(まあ薄々感じていたが)故意に70年代的な
ローファイ作品に仕上げているんだろう。低音をカットし、高音部を際立たせて軽くリバーブをかける音処理をしている。
仮にそういうコンセプトだとしたら、Witchcraftの1st路線だが、少なくともWitchcraftには残念ながら到底及ばない。
ギターの高音部が目立ちすぎて若干耳に障る感じで、70年代的ではあるけども、まだまだ課題を抱えているなぁと感じさせる。
というワケで、70年代を意識したローファイ志向サウンドだが、若干失敗したポンコツ紙一重な味わいを持つ濃厚なB級愛を感じる作品だ。
ヘタなヴォーカルは騒々しいコーラスで誤魔化しつつ、愛情を注ぎたくなるオーラを醸し出している。また、もはや初期の歪んだドゥームとは程遠く
かといってヴィンテージドゥーム的でもなく、正統派HMとも言い難い、「70年代風ロック」というのが最も妥当だろうと思う。
でも、この路線を突き進めば、いつかツボにハマる名盤を作ってくれそうな予感がするんだよ。次作はB級臭の残り香を携えながらの進化を期待している!


THE WIZAR'D - Sebado Negro ★★ (2020-06-02 22:50:16)

オーストラリア産デスドゥーム2007年作
コレはライヴ音源含むEPで、ボク的にはコレがこのバンドの最高傑作だと思っている。
魔法使いのようなジイサンがギターを掻き鳴らしているシュールなジャケがとても印象的だ。
とりあえずこのバンドの作品は、このEP以外のフルレングスアルバムは一応聴いているが、ゲットする気はない(2020年の新作はゲットしたが)。
ココから濃密なドゥーム路線に発展して欲しかったが、若干路線が違い、少なくともこの作品以上のインパクトはボクは得られなかった。
この作品はジャケの素晴らしさが際立っているが、中身も結構魅力的で、ドゥーミーな作風と、初期作品にしかない歪んだギターの質感が素晴らしい。
しかし、このバンドはヴォーカルがイマイチ弱い。後期作品では味わいとして感じられるが、この時点では微妙な感じで、そのせいでB級臭が漂っている。


ROAD WARRIOR - Mach Ⅱ ★★★ (2020-06-02 21:08:54)

オーストラリア産正統派パワーメタル2020年作
コロナウイルスのため、海外からの輸送便が激減、待ちに待ってやっと先日届いて、現在ヘヴィローテ中の作品だが
とりあえず今年上半期ではボク的にはナンバーワンな作品となりそうだ。いやー、カッコいい。
前作のレビューの通り、ミドルテンポ主体で、余計なエフェクトのないナチュラルなギター、速弾き等の過剰に派手な演出のない
純然たる古典ヘヴィメタルサウンドでありながら、優れた楽曲構成と独自の世界観でライト感覚に聴けるロックサウンド決定版だ。
特徴としては、挑発的でファイティングなギターとカリスマ性のあるヴォーカルだ。ジャケの男がレーサーなのかファイターなのか判らないが
戦いに向かう男を賛美するかのような、戦い前の緊張感を表現するかのような雰囲気を、無駄な演出ナシに楽曲とカリスマヴォーカルで表現。
スピードやヘヴィネスで聴かせる感じとは対極にある古典的サウンドなので、80~90年代ロックサウンドを彷彿させながらも、何故か古臭くなく
むしろヒーローを盛り立てるような曲調がユーモラスで先進的なセンスを感じさせる。
いつもボクが書き込んでいるようなコアな根暗サウンドとか前衛的サウンドではありません。また、ギターヒーロー的なトリッキーなサウンドでもない。
こういう味わい深い古典的様式でありながら新しさを感じさせるロックサウンドはボクの大好物で、これからも応援したい。


ROAD WARRIOR - Power ★★★ (2020-06-02 20:28:48)

オーストラリア産正統派パワーメタル2018年産
疾走感の無いミドルテンポ主体の楽曲群、凝ったエフェクトを施さないナチュラルなディストーションギター、シンセ等派手な演出もナシ。
圧倒的なヘヴィさがあるワケでもなく、ものすごーく古典的な純然たるパワーメタル寄りのヘヴィメタルサウンドでありながら
どうしてこんなに魅力的でグイグイ惹き込まれるのか、単にボクの好みにハマっただけなのか判らないが、不思議な魅力を備えたサウンドだ。
ファイティングで挑発的なリフ、クセがあるがカリスマを感じさせるヴォーカル、派手なソロなどは無いのに作り込まれている楽曲が魅力だ。
非常にオーソドックスなHMなのに、結構な愛聴盤で、次作は必ずゲットしようと心に誓ったが、僅か2年のスパンで新作が発表された。
その新作もこの盤の延長上の音楽性だが、素晴らしい作品だ。この盤と合わせてゲットしよう。


DARK FOREST - Oak, Ash & Thorn ★★★ (2020-06-02 01:52:06)

英国産正統派メタル2020年作
世界観がボクのツボどストライクなので数年前からチェックはしていたものの、佳作といった感じで買うまでには至らなかったバンドだが
今年リリースされたこの作品は、これまでのどこか物足りない感じを一蹴して、一気に開花したかのような会心の作品だ!
バンド名とジャケとアルバムタイトルが示すとおり、この作品は「森メタル」で、ペイガニズムの浪漫とNWOBHMの息吹を帯びた作品だ。
メタリックになり過ぎないナマ音に近いギターのリフが、森・自然を感じさせる。ほんの少し(ホントに少し)フォーキーなテイストを織り交ぜ
ペイガンメタルによくあるややクサめなメロディーで、軽快なテンポでファイティングに、派手になり過ぎないツインギターやギターソロを駆使し
もちろんコーラスもいい感じにハモらせて、NWOBHMの古典と思わせる作風で聴かせるところがホント素晴らしい。
ガチでマッチョなヴァイキングメタルではなく、やや華奢な森の住人のファイターなところがイイのだ。
このサウンドを聴くと、皮のヨロイを纏い、田舎の山林に潜み、子分の犬を連れて、何かと戦いたい!という衝動に駆られるのだ。
NWOBHMフリークは必聴盤、ダークサイド派でマニア向け作品を多く書き込んでるボクにしては、ワリと万人にオススメできる元気が出る作品だ!


REINO ERMITANO - Rituales Interiores ★★★ (2020-06-01 03:01:35)

ペルー産サイケデリック・ドゥーム2008年作
このバンドの大きな特徴は、女声ヴォーカルが若干ヘタで、畑仕事しながらオバサンが歌っているような声なんだよ。
演奏も若干ポンコツなので、佳作以下の作品が多いんだが、コレだけは非常に面白く味わい深い好盤だ。
この盤は若干ダークな雰囲気になり楽曲もなかなか良くできてるので、辺境ドゥームマニアはゲットしよう。
ちなみにConjuros de Poder(2014年作)の草木が茂ったようなアートワークのジャケでいよいよ畑仕事ドゥームというジャンルが
確立するかと思ったが、残念ながら中身はイマイチな作風でゲットするには至らなかった。
個性派なので期待して次作を待っているが、今のところこの盤が一番素晴らしい。コレを超える作品を期待している。


REINO ERMITANO - Brujas del mar ★★ (2020-06-01 02:46:27)

ペルー産ドゥームメタル2006年作
購入当時はペルー産かつ女性ヴォーカルというのが珍しく結構聴いていたが、あまり歌が上手じゃない佳作だ。
もう少し頑張ったらサイケ・ヴィンテージ・ドゥーム路線で面白い存在になると思う。
次作で面白い作風のアルバムをリリースするが、その後はなかなか好盤と言える作品が出てこない延長上のサウンドだ。
一応注目はしてる。もう一押し頑張ってほしいバンドだ。


PESTILENCE - Hadeon ★★★ (2020-05-31 22:39:41)

オランダ産オールドスクールデスメタル2018年作
オリジナルメンバーはPatrick Mameliのみで、それ以外は全員ルーマニア人になっている。
とはいえ、この人がヴォーカル兼リードギター、作曲の大半を行っているので、他メンバーが入れ替わってもあまり問題ない。
しかし、あまりにメンバーチェンジが多いので、ワリとこの人が中心のワンマンバンドなんだろうと感じる。
おまけに、最近は髪の毛を辮髪にしているようだ。
Consuming Impulse(1989年)、Testimony of the Ancients(1991年)と神盤を連発して当時のデスメタルでは
コレを超える作品はナイと個人的にナンバーワンだったが、次作Spheres(1993年)で大々的にシンセを取り入れ若干空振るも
新たな音楽性に向かってチャレンジする独特な音楽性にかなり期待したものだ。が、解散してしまった。
2009年に奇跡的に復活するが、良い頃の持ち味を掻き消すかのようなモダンヘヴィ的なサウンドに何も良さを見出せず
その後2作品もコレジャナイ感が満載なボクとしては残念な作品となり、もう追いかけるのは終了、と思っていたところ、
忘れた頃に突如この作品をリリースですよ。全く期待せずに当時はゲットしたんですが、コレは!!素晴らしい。
本当のところは、神盤2作品の路線を再現して欲しかったんですが、コレはSpheresで新要素を予感させた、その次の作品という
イメージに近い内容だ。もはやバンド名(ペスト・疫病)のイメージとは全く異なるサイバーデスメタル的な作品だ。
とはいえ、決してインダストリアルに音処理がされているのではなく、3rdの頃のギターの音で、楽曲構成でサイバーを思わせる内容だ。
当時の神盤を超えたとまでは言えない内容だが、Patrick Mameliの新たな挑戦を感じさせる音楽性で、特にギターソロがスゴイ。
決して速弾きがスゴイというのではなく、このサイバー世界観を感じさせる摩訶不思議な旋律のギターソロがスゴイのだ。
最初ジャケ裏に書いてある曲名の字体で、コレはもうダメかな、と半ば諦め気分が濃厚だったが、良い意味で予想を裏切られた。
良かった頃のギターの感触が帰ってきた上、新たなサイバー感覚が加わるという、ワクワク感が蘇る作品だった。
Pestilenceが、オールドスクールデスのボク的順位格付けにおいて、大きく再浮上した会心の作品だ。


VICTORY - Don't Talk Science ★★ (2020-05-28 23:28:04)

ドイツ産ハードロック2011年作
昔はTemples of Gold(1990年作)にハマり、よくウォークマンで聴いていた。その頃が全盛期だったように思う。
その頃から20年以上は経っていると思うが、当時の雰囲気を楽しみたいと思いゲットしてみた。
オリジナルメンバーで継続しているのかどうかは知らないが、昔はドラムの手数が最小限で多彩さに欠けるものの
心地よいグルーヴ感だったように記憶しているが、今作もドラムのリフは単調に感じられる。
また、年齢を重ねたからなのか、当時のグルーヴ感はあまり再現されていないサウンドだった。
しかし、安定感のある演奏はやはり年季が成せる技だなと思う。そして80年代後半~90年代前半の独特な空気が
なんとなく蘇ってくる好盤だ。ジャケをもうちょっと頑張ってほしかった。


IN THE WOODS - Cease the Day ★★★ (2020-05-28 23:12:25)

ノルウェー産ブラック2018年作
初期作のコンピレーションアルバムA Return to the Isle of Menの雰囲気ある作品にハマった当時は
既にバンドは解散しており、特に他の作品を追いかけることもなく、この盤だけが愛聴盤だったが
再結成していることを知り、最近の作品をゲット。ブラックとは言っても、真性な高密度ブラックメタルではなく
ブラックメタル的な要素を含むメタルサウンドといった内容にシフトしている。また、当時も感じられたヴァイキング的
な雰囲気も感じられ、この鹿ジャケのイメージがバッチリとハマる音楽性だ。
クリーンな声とブラック的ガナリ声を使い分け、落ち着いた雰囲気で味のあるサウンドを聴かせてくれる好盤だ。
こういう情緒のある作風がボク自身のツボということなので、刺激の強いブラック派にはオススメしない。


DRAWERS - All Is One ★★★ (2020-05-28 11:41:21)

フランス産サイケデリック・ドゥームロック2011年作
ストーナー要素を含むかなーり重量のあるギターで聴かせる、結構カッコいいロックサウンドだ。
ドゥームと言っても、ドラムは結構手数が多く、ギターのリフは掻き毟り引き摺るようなスラッジに近いヘヴィさがある。
初期Electric Wizardを想起させるヘヴィさと、石化しそうな感覚があり、そっち方面が得意な人は相当ツボにハマるはず。


KAYO DOT - Blasphemy ★★★ (2020-05-28 01:12:16)

米国産エクスペリメンタル・アヴァンロック2019年作
Maudlin of the WellのToby Driverのプロジェクト。深い霧のジャケのようにアトモスフェアなシンセが印象的なサウンド。
前衛的な手法が当然のように様々に用いられながらも、ごく自然に聴かせるところには、この人の職人気質を感じるところだ。
過去作はもっと禍々しいギターが入っていたと思うが、今作はそうでもない。しかし、聴きどころは卓越したギターセンスだ。
また、独特なリズムを刻むドラムが、霧に霞む自然の雄大さをイメージさせ、とても良い仕事をしている。
ストーリーを感じさせる楽曲からは、神秘、美しさ、時に醜悪さを感じ取ることができ、ラストのタイトル曲で最高潮を迎える。
壮大なファンタジーの世界が非常に素晴らしい作品で、過去作やMaudlin~にハマったことがある人はマストだ。


MAUDLIN OF THE WELL - Part the Second ★★★ (2020-05-27 23:48:01)

米国産アヴァンロック2009年作
Kayo Dotの活動に専念しているのかと思っていたが、フィンランドのBlood Musicレーベルから8年のブランクを開けてアルバムをリリース。
もはやこのバンド名義で活動しているとは思ってもいなかったし、これだけブランクを開けての新作だと全く気付かないよ、ホント。
ボクは数年前にたまたま気付いてゲットしたが、過去3作品のいずれかでもツボに入っている人は、必ずゲットすべき神盤だ。
ポップアートのようなジャケ、ユーモアたっぷりのセンス、次の展開が読めないコード進行、それでいて不自然さのない楽曲。
仕掛け人のToby Driverの卓越したセンスと演奏力は素晴らしく、ライトなポップロック・リラクゼーション的サウンド・不穏でヘヴィなギター
70年代プログレテイストなど、前衛的手法を織り交ぜながらいろいろな音楽を組み合わせて、楽曲を構成している。特にラストの曲のインパクトは絶大だ。
Kayo Dotよりもこちらのバンドでのスタイルの方がボクは好きなので、このまま消滅させずに、こちらのプロジェクトにも力を入れて欲しい。
余談だが、Blood Musicレーベルは、アヴァンロック、シンセサウンド、ブラックメタルなど多彩なアーティストの作品を手掛けているが
総じてレベルが高いと感じるので、ボクはワリと多くこのレーベルの作品をゲットしている。


PROFANATICA - Rotting Incarnation of God ★★★ (2020-05-27 17:38:45)

米産ブラック2019年作
ボクが持ってるCDジャケには、レーベルの宣伝文句と思われる文章が書かれたシールが貼ってあるが、日本語訳をすると
「最も卑劣なブラックメタルは、ベテランの王から射精され、彼らの最も邪悪な作品であることを証明するだろう」といった感じか。
レコメンドアーティストとして、Beherit、Mystifier、Blasphemy、Havohejが挙げられている。
ちなみにHavohejはProfanaticaの唯一のオリジナルメンバーであるPaul Ledneyで、そちらでも尊大で自身を崇拝する狂気のサウンドが聴ける。
相変わらず伝統的なブラックメタルのメイクを施し、ジャケやアルバムタイトルから判る通り、卑劣で冒涜的なテーマで、濃いブラックをやっている。
Incantationの分家と思って、このバンドに楽曲や演奏の妙を期待するのは間違い。そもそもそういう魅力のバンドではない。
卓越した演奏技術やヘヴィネスやブラストの刺激を求めるブラックメタラーの方がきっと多いと思うが、
濃厚なカルト臭を前面に出した、こういうスタイルのバンドは、現代のブラックメタルリスナーに果たしてウケるんだろうか、とは思う。
ボクとしては、いつまでもあまり表に出ず、アンダーグラウンド臭を漂わせていて欲しいと思うけどね。


PROFANATICA - Disgusting Blasphemies Against God ★★★ (2020-05-27 17:03:39)

米産ブラック2010年作
Incantationのオリジナルメンバーが分裂し、ドラマーのPaul Ledneyにより結成されたバンドだが、Incantationが激しいデスメタル路線で
アンダーグラウンドの帝王になっていった反面、Profanaticaは全く異なるアプローチで存在感に幅をきかせている。
元々分裂したキッカケは、演奏様式の違いというよりは、Paul Ledneyの思想を受け入れられなかったことが原因らしい。
そういうワケでProfanaticaのサウンドは、自身を崇拝し、他宗教に冒涜的な世界観が非常に色濃い。また、古くからあるブラックメタルのメイクや
演奏スタイルを伝統的と言えるほど貫いているように見える。特にドラムはブルータル路線に走ることなく、古典のようなスタイルだと感じる。
アンチクリスチャン度が最高潮のジャケデザイン、カルト臭の濃い世界観、古典的スタイルと禍々しいヘヴィさに魅力がある。
Incantationのような演奏力やカッコ良さはナイ。こちらはIncantation以上にタブーに触れるような背徳感と濃厚なカルト臭があり、そこに惹かれるのだ。


INCANTATION - Profane Nexus - Incorporeal Despair ★★★ (2020-05-27 12:51:29)

このバンドにしては珍しく、超スローなドゥーム作品で、濃厚な瘴気・腐臭・絶望感が宿っている。
中間にこの曲があることで、作品全体が引き締まり、他のブルータルな作品がより引き立っていると思う。


INCANTATION - Profane Nexus ★★★ (2020-05-27 12:44:57)

米国産デスメタル2017年作
最初にこのバンドをココに登録した頃は、濃厚なアングラ臭・クオリティの高さ・知名度の低さで、どことなく自身の独占欲と優越感を感じつつ
濃厚な魔性・背徳感を楽しんでいた。それももう17年前ですか。恐らく今は日本でも超有名バンドになっているんだろう。
デスメタルバンドの知名度が上がってくると、録音のクオリティがアップし、ローファイ感が抜けてしまい、真性さが半減しがちだが
Incantationに限っては、音質向上しようが、有名になろうが、全く動じることなく濃厚なアンダーグラウンド臭が漂う真性さを維持しているから凄い。
昔はギターソロのようなメロディアス・コマーシャルなモノを一切許さず、ブルータルさを前面に出す激しさと、濃厚なドス黒いドロドロ感に圧倒されたが
そのテイストは長きに渡って保たれており、今作ではブルータル一辺倒ではなく、ドゥーミーテイストも盛り込み、より深みを増した印象だ。
よくMorbid Angelと比較されるが、濃さではIncantationに軍配。ただ、ボクはブルータルに攻められるサウンドは近年はかなり疲れるので
あまり聴くことが無くなった。世界観に関しては、Incantationから分裂した、ここのサイトではあまり比較されることがなかったProfanaticaが双璧
と思っており、音響的にはIncantationの方が圧倒的にクオリティが高いが、まだまだ知名度が低く、濃い世界観で、不器用なProfanaticaの方へ
気持ちが傾いているのが正直なところだ。ただ、ドゥーミーな要素が徐々に増えつつあるIncantationもまだまだ追いかけようと思っている。


XASTHUR - Nightmares at Dawn ★★★ (2020-05-27 00:18:43)

米産ブラックメタル2012年作
XasthurはボクはThe Funeral Of Being(2003年作)以降を愛聴している。初期作品は禍々しいファストブラックだが
その音楽性は作品ごとにスピードダウンし、独自の不協和音のハーモニーで聴かせるサウンドに変貌していく。
一度Xasthur名義での活動を終了し、フォーク主体のNocturnal Poisoningに鞍替え、その後再びXasthurを名乗るという
経歴を持っているが、フォークサウンドは決してXasthurファンが期待しているサウンドではなく、Nocturnal Poisoning以降は
1枚もゲットせず静観している。最初に活動を終了するまでの中期の作品がこの人の絶頂期だったなぁ、とボクは思っている。
この盤は活動終了前5年間(2004~2009年)の未発表音源、過去3作品の再レコーディング曲などを含めたベスト盤。
過去作品はそれぞれ素晴らしい味わいがあるが、結局ボクはこの寄せ集め作品を一番多く聴いているような気がする。
この人が創造する作品は、ブラックメタルでありながら魔性は全く無くアンチクリスチャン的な宗教テーマもない。
病的な不協和音で不安感を煽り、鬱々と絶望感を芽生えさせ、死をイメージさせるような根暗な残念人生的な世界観だ。
ギターとシンセがレイヤーする時の微妙なズレなどを活用した不穏な響きや、シャリシャリのギターが腐食しているかのような感触が独特。
スピードや音圧よりも、気持ち悪い響き重視の作風であり、また、ヴォーカルが音像の中に霞みがかって消えそうなところも独特な味わいだ。
この作品にはBlack SabbathのA National Acrobat(Sabbath Bloody Sabbathに収録)のカヴァーも収録されているが
Xasthurの死をイメージさせる世界観にバッチリとハマる選曲だ。


DISENTOMB - The Decaying Light ★★ (2020-05-26 01:35:49)

オーストラリア産デスメタル2019年作
大御所The Obsessedの名盤「Lunar Womb」のジャケのように、巨大な魔物がアタマから人を食べているジャケで
バンド名の中に「tomb」という綴りが入っている、という理由により、即ジャケ買いした作品。
中身はThe Obsessedの音楽性とは程遠い、ブラストとツーバスドコドコ満載のデスメタルでした。
ドラムは相当なハイテクの持ち主で、畳みかけるようなドラミングと多彩なリフは一聴の価値アリ。
ツーバスとブラストが多くを占めるサウンドなので、ワリと似た感じの楽曲になりがちなのは否めないところだが
若干オールドテイストの残り香があるので、ボクでも楽しく聴ける。
派手な演出のないクールさが魅力で、演奏の安定感は抜群なので、音楽性がハマる人は結構いると思う。


OSSUARIUM - Living Tomb ★★★ (2020-05-26 00:53:02)

米国産オールドスクールデスメタル2019年作
水に浸かった石造りの墓所のような廃墟のジャケ、裏ジャケは墓地に立つバンドメンバーのモノクロ写真。
「Living Tomb」というアルバムタイトルなどから、オールドスクールデスど真ん中の予感がしてゲットした作品。
適度にドゥーミーなテンポで、ブラスト等スピードや勢いに頼ることなく、湿気と霧を感じさせる雰囲気が素晴らしい。
ギターは血糊を思わせるザックリ感のあるリフを刻み、アヤシげな気持ち悪いギターソロを奏でる。
特にズトボコなドラムがいかにも80~90年代のB級デスメタルテイストで、とても良い仕事をしている。
ジメジメ、ドロドロ感がやたらツボにハマり、オールドファン納得の味わいが楽しめる、オールドスクール王道デスメタルだ!
この時代にこういう音を追求するバンドに出会えることは滅多になく、運よくジャケ買いでゲットできてホントにラッキーだった。
この作品は処女作でありながら、楽曲クオリティが高く、ハイテクではないが、B級デスマニアが喜びそうな非常に味のある演奏をする。
メンバーの経歴を調べてみたが、ギタリストは他に在籍していたバンド情報など見つからず経歴は不明。
ドラムはTrollという、これまた非常に味わい深いバンドに在籍していたようだ。その盤も素晴らしいので、また近々レビューしたい。


WITH THE DEAD - With the Dead ★★★ (2020-05-25 22:35:31)

英国産ドゥームメタル2015年作
リードリアンとElectric Wizardのドラム&ベーシストによるドゥームバンド1st・・・このメンツだと
もう聴く前にどんな音か想像できるが、予想を裏切ることのない、ファズかけまくりの壮絶にヘヴィなサウンドだ。
とにかくElectric Wizardクラスの重量感を求めるなら、コレは必聴盤だ。
リードリアンのプロジェクトTeeth Of Lions Rule The DivineのRampton(2002年作)あたりの重量感がある。
最近はボクはこのテのヘヴィさは年齢を重ねたからか少々疲れるので、あまり聴く盤ではなく、次作も未所持だが、
ヘヴィ・ドゥームファンはコレはバイブルとして携帯しておかなければならない。


IZAH - Sistere ★★★ (2020-05-25 00:12:42)

オランダ産ポストロック2015年作
ジャケに描かれる林、ジャケ裏の密林、空や小路が板の木目のような画風、多分ボクが所持してるのはスウェーデン盤だが
硬めの材質の紙を使用した紙ジャケが、紙ではなく薄い板のように感じられ、異様に木の質感を前面に出したデザインが優秀だ。
歌詞カードがないので曲のタイトルが意図するところは判らないが、少なくとも一般的なドゥームやメタルの世界観とは明らかに異なり
知的で、内向的で、印象的なテーマがあるのだろう、と思わせる。10分超の3曲の後、アルバムタイトル曲が30分超という大作主義だ。
ブラックメタル、ドゥーム、スラッジ、シューゲイザーなどの演奏様式を組み合わせ、時に激しく、時に静寂を感じさせ、時に叙情的に、
いろいろな感覚を呼び起こさせる起伏に富んだ楽曲、細部にまでこだわっているアレンジは、かなりレベルが高い。
チリチリしたブラック的ギターは多くの倍音を含み、深めの残響音がエモーショナルな感覚を引き起こす。また、激しい時には
まるでハードコアサウンドのように激しい。一口では言い表せない様々な表現方法で、ドラマチックに聴かせる一大叙事詩だ。
3曲目まででも結構な大作で、相当テンションが上がるが、それがラストのタイトル曲への伏線となり、30分超のクライマックスに感動する。
就寝の時によくコレを聴きながら眠りに着くんだけど、のめり込んでしまって1時間超眠れずラストまで聴いてしまうことがよくある。
ジャンル分けが難しいから「ポストロック」としたが、ブラックメタル的要素はあるものの、ブラックメタルファンには向かないし
濃厚なドゥーマーにも向かない、ちょっとターゲットが判らない音楽性だが、ボクはかなりのお気に入りだ。


SHATTERED HOPE - Waters of Lethe ★★★ (2020-05-24 22:26:22)

ギリシャ産フューネラルドゥーム2014年作
ジャケは前作よりも更に地味になり、ジャケの文字すら薄すぎて見づらい。茶褐色モノトーンジャケに全く色彩はなく
その色気のナイ地味すぎるジャケを見ると、もはや人生に希望が持てないホドに打ち砕かれたのか、とアーティストたちが心配になる。
一応ケースの裏ジャケは茶褐色ながら山と雲の風景が描かれているが、ホントに地味なバンドだ。単にジャケに金かけてないだけかも知れんが。
音楽性は前作の延長上で、全くコマーシャルなところや、明るさなど一切無い、ど真ん中フューネラルドゥームを展開する。
他バンドに比べて際立った個性は相変わらずナイ。音圧もヘヴィだが、決してスゴイ重量ではない。
ヴォーカルもありがちなデスヴォイス、シンセも適度・・・なのに、その音楽性に没頭してしまうから不思議だ。
ホント、きちんと楽曲を作ってる。終始超スローなのに、全く飽きさせないリフ、アレンジ、ドラマチックさが素晴らしい。


SHATTERED HOPE - Absence ★★★ (2020-05-24 22:14:15)

ギリシャ産フューネラルドゥーム2010年作
バンド名を直訳すると「打ち砕かれた希望」だ。そのまんま、直球の人生残念ドゥーム決定版だ。
ヘヴィなギター、ムードたっぷりのシンセ、もう立ち上がれないほどに遅いテンポ、唸るようなヴォーカル。
その全てが鬱系ドゥームど真ん中の音楽性で、こういうMournful Congregationぽい世界観のドゥームはワリとよくある。
しかし、このバンドは決して際立った個性派ではないのに、集中力が途切れることなく、その音楽性に浸ることができる。
それだけ、しっかりした楽曲構成力があり、ドラマチックで静かなる迫力を秘めているのだ。
ジャケを含め、非常に地味な印象のあるバンドだが、結構奥深く聴き応えがある。