この曲を聴け!
kamiko!さんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 101-200
TNT

MyPage

kamiko!さんの発言一覧(評価・コメント) - ABC順
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5
モバイル向きページ 
kamiko!さんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 101-200

0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5


PURE WRATH - Sempiternal Wisdom - Departure ★★★ (2021-08-16 02:06:09)

10分超えの大作。シンセとピアノを取り入れ、この楽曲にはクサめなキャッチーなピアノ旋律が登場する。
とてもドラマチックでアルバムのラストを飾るに相応しい、彼のサウンドの真骨頂と思わせる素晴らしさがある。
が、この曲の後にSAORのカヴァーを収録してしまった。そちらは反則級の土着感の濃いコテコテのコード進行と心に残る旋律である。
そのせいでこの曲が若干霞んでしまう。もったいないな、と感じている。


PURE WRATH - Sempiternal Wisdom ★★★ (2021-08-16 01:46:51)

インドネシア産ブラックメタル2018年作
メタル辺境国からの作品で最近最もツボだったのがコレだ。ジャワ島西部にある西ジャワ州出身のJanuaryo Hardyという人の独りプロジェクトだ。
土着ブラックの教科書バンドSAORのカヴァーを含む7曲で構成されるアルバム、1曲目「Homeland」というタイトルからも、SAORからの影響を色濃く感じさせる。
のどかな自然に囲まれた村に農民っぽい村人が描かれるジャケからも土着ブラックど真ん中である。CDケースを開けると、知的な面持ちの男性の写真が。
恐らくこの人がJanuaryo Hardyなんだろう。メタル畑にいそうな人物像とはかけ離れたインテリジェンスな風貌がとても印象的だ。
演奏様式はレジェンドSAOR御大に酷似しているが、クサめな旋律はあまり登場しない。また、ドラムの手数やバリエーションもこちらの方が多彩な印象。
そういうアレンジから、SAORを手本としながらも独創性を追求しようとする意欲が感じられる。なかなか刺激的で土着的浪漫溢れる好盤に仕上がっている。
まあ、ラストでSAORのFarewellのカヴァーが聴けるんだが、結局最も脳裏に焼き付く楽曲がコレなんですよねぇ。というワケで、SAOR御大を越えたかというと
もう少し足りないという印象を持ってしまう。ただ、この路線で真面目に取り組むバンド且つ辺境メタルというのは希少である。
SAORの魅力のひとつがクサいメロディを大胆に取り入れている点である。結局、「クサメロの無いSAOR」に聴こえてしまう点がマイナスになっている。
思い切ってクサメロまで取り入れるか、新たな独創性を盛り込むかしないと、なかなかSAOR御大に肩を並べるところまでは到達できないんじゃないかな。
ちょっとダメ出ししたが、このサウンドは結構ボクの心に響いている。次作も相当期待しているバンド、全力で応援したい。
彼のホームぺージでこのアルバムジャケの旗が販売されている。山に村人が描かれる非メタルジャケを旗にするセンスが好きだ。ちょっとコレ欲しいんだよな。


SAOR - Forgotten Paths ★★★ (2021-08-14 03:05:21)

英国産ブラックメタル2019年作
ペイガニズムに寄ったメタルサウンドに浪漫を感じるボクのツボを突くバンドの作品。ペイガンメタルはロシア、特にスラブ地域の作品を多く愛聴しているが
珍しく英国産で、このバンドはカレドニアメタルと言われているようだ。深く調べると、英国の土地、自然、詩をテーマにしているようだ。
Andy Marshallという人のソロプロジェクトだが、恐らくゲストミュージシャンと共に演奏されている。この人は、自然をメタルに融合することをテーマとして
作品を創っているようだ。そういう志向性があるので、ボクのような森林崇拝系ブラックを愛する者としては、どストライクゾーンなサウンドだ。
但し、多くの森林崇拝ブラックのように、濃い空間エフェクトで霧を表現する類いのサウンドではない。適度な残響音でブラックメタル様式の演奏で突っ走るが
音圧は控えめ、落ち着いた感じである。若干クサめな旋律に土着的な浪漫が宿っている。また、楽曲構成自体に才があるな、と感じさせる。
最近は、土着的なブラックの教科書はコレだ、と感じている。なかなかコレを超える同系ジャンルのバンドには出会えないんだよねぇ。オススメ。


GOREAPHOBIA - Mortal Repulsion ★★★ (2021-07-17 02:45:53)

米国産デスメタル2011年作
ゴアリーな要素を含ませ、手数多めの華麗なドラミングとザクザク感あるギターリフ、気持ち悪いギターソロがツボを突く古学校死スタイルど真ん中サウンドだ。
しかし、Cannibal Corpseあたりの同路線と比較すると殺傷能力はそんなに高くなく、しかもダサさが同居しており、B級愛を以って愛聴すれば、その魅力の虜になるだろう。
ゴア路線はいかに激しく聴かせるかというところがポイントだと思うが、このバンドの面白いところは、激しさではない固有の味わいで血塗れ感を表現しているところだ。
1990年代以前から活動していた上、最近はギタリストのAlex BouksはINCANTATIONやIMMOLATIONのような大御所に在籍した実績を持つワリに全くの無名。
というか、そんな大御所バンドに在籍するだけの実力や独創性を持つが、この人の世界観があまりにB級路線過ぎて、ミーハーなデスメタルファンにはダメだったんだろう。
フルレングスアルバムも僅かで、ボクはこの盤のみゲットしている。90年代頃のEPやCDR作品は、決してポンコツではないが、醜悪な作品で、結構な値がついている。
まあ、この盤をゲットしたキッカケとなった、ダサいPVランキングの最上位に位置するショッキングな時代錯誤PVは、この人の世界観とダサさが凝縮されている。
B級愛を持つデスメタラーは、このPVは是非体験して欲しい。その上でこの盤を聴くと、この人固有のユーモア、この盤の独創性をより理解できるだろう。


IMMOLATION - Atonement ★★★ (2021-07-17 00:49:49)

米国産デスメタル2017年作
デスメタル全盛期頃にサタニックデス路線を追いかけていると必ず出会うバンド、特にINCANTATIONにハマったボクとしては、そのホンモノ感には一歩足らないが
閉塞的な質感のギターサウンド自体はINCANTATIONに劣らずといった感じで、無機質なこのギターの音像はこの時代では双璧といった印象を持っている。
とはいえ、そもそも米国産はあまりゲットしないので、初期作品以外は所持していない。また、何故か評判のいいKINGDOM OF CONSPIRACY (2013年)は
ボクには全くフィットしない。初期の閉塞感が薄れて、煌びやかになり過ぎな印象で、米国産デスメタルのボク的ランキングはかなり下がってしまった。
が、この作品は、煌びやかな感じが残されているところは仕方ないにしても、初期に感じた魔性・無機質なスタイルが蘇った好盤である。
このバンドはギタリストのRobert Vigna色が強いので、もう一人のギタリストがチェンジしているところがどれほどの影響があるのかわかりづらいが
少なくとも米産デスメタルに疎いボクがこの盤リリース当時に注目せざるを得なかった点は、ギタリストにAlex Bouksが名を連ねているところである。
この人は一時期INCANTATIONを支えたギタリストでもあるが、その固有の魅力が大御所バンドで際立っていたかというと微妙ではある。
このギタリストはGOREAPHOBIAというバンドの創始者であり、ダサさとホンモノ感が紙一重にあったそのB級スタイルにデスメタル愛を注いだ過去がある。
GOREAPHOBIAの底辺の世界観を色濃く感じるTOMBを経て、更にRUINOUS(隠れたオススメ盤)といった古学校愛を強く感じさせるバンドを経て、このIMMOLATIONに
参加しているところは、B級デスメタルフリークとしては、一体どんな音楽性になっているんだろうと興味津々、とてもワクワクするのだ。
アツく語ってみたが、このギタリスト加入で音楽性がAlex Bouks色に変化したかというと、メインのRobert Vignaのアクが強すぎて何とも言えない感じではある。
INCANTATION時代同様に、影の支え役のポジションなのかも知れないが、前作に比べマイナーチェンジ&過去作に若干回帰したスタイルの一旦を担っていると
感じるところがある。このサウンドは初期作品に真性さが加わったと思わせる感触があり、初期IMMOLATIONというよりは初期INCANTATIONのスタイルがツボだった
人のストライクゾーンじゃないかなと思う。


TAAKE - Kong Vinter ★★★ (2021-07-09 22:41:11)

ノルウェー産ブラックメタル2017年作
Ulvhedin Hoestという人のバンドだが、このバンドを知った当初はアルファベットの「A」を連ねる人名が北欧でよくあるので
バンド名であるTAAKEはこの人の名前だと勝手に思い込んでいた。TAAKEは「霧」を意味する言葉らしい。フェイバリットバンドにCeltic Frostを
挙げているところや、ライヴ映像でCeltic Frostを思わせる「ウッ」という吐き捨てヴォイスを披露しているあたり、初期はかなり影響を受けていたのだろう。
過去のPVやジャケはやたらと本人の姿をクローズアップした感じから、ナルシズムや尊大なイメージはあるものの、実際の音からは独善的な狂気は感じられない。
BATHORYのUNDER THE SIGN OF THE BLACK MARK (1987年)を影響を受けた盤と公言しているあたり、自身を崇め奉るカラーはここからの影響かなと想像する。
濃いプリミティヴブラックスタイルではあるものの、先に挙げた2大バンドのような魔性や尊大さは、この人の作品群からはボクの感性ではあまり感じられない。
俗に言う初期3部作を一応所持しており、ハマってよく聴いたのは1作目だが、ノルウェイジャンプリミティブブラックのど真ん中の粗雑さが魅力的な音響で
直線的に攻撃性を前面に出した作風に加え、魔性や尊大さではなく、土着的なヴァイキングな感じ、寒冷地の叙情を思わせる作風が結構ツボだった。
また、理に叶った進行をする楽曲と、濃い音響でありながらも印象に残りやすいパッセージを織り交ぜてあるのがこのバンドの固有の魅力だ。
この2017年作品はごく最近発見してゲットしたが、過去のそういう音楽性の集大成的な感じではあるが、プリミティヴな感触を残しつつ激しさは若干大人しめになった。
佳作揃いというのが一聴した印象だったが、この人の曲は印象に残るパッセージが散りばめられているからか、ふとメロディラインが脳裏に浮かび、聴きたくなる。
曲を覚えてくると、ジワジワとそのカッコ良さに惹き込まれていく。突出した濃さや個性で勝負する感じではなく、オーソドックスで完成度が高い。
コマーシャルではないのにキャッチーでライトに楽しめる。寒冷地の土着的スパイスを含ませた、硬派でクールな感じがいいね。


BATHORY - Under the Sign of the Black Mark ★★★ (2021-06-22 02:45:04)

スウェーデン産ブラックメタル1987年作
この盤以前の作品はいずれも後追いで蒐集、特にこの盤はこのサイトに書き込みし始めた頃に、ここの書き込みを見てゲットした記憶がある。
購入当時はまだイヌスケ氏の書き込みまでしか存在してなかったと思うが、好みが近いローランDEATH氏とイヌスケ氏の書き込みが購入の決め手となった。
後追いなので、タイムリーに体験したHammerheart以降の作品群に比べて愛着度は低いかも知れないが、この盤からは初期ブラックメタルスタイルの
完成形を感じる。この時期はクォーソン氏の音痴に歌い上げるスタイルは確立されておらず、ブラックメタルスタイルの歌唱法に生真面目さを感じる。
Celtic Frost等同時期のレジェンド級ブラックバンドと肩を並べることのできる作品。更に尊大な密教的な固有の世界観に大きな魅力を感じる。
BATHORYの盤のうち最も書き込み数が多いのも納得といった感じ。後続のブラックメタルバンドがこの盤をフェイバリットと挙げる例が多いのも頷ける。


COMATOSE VIGIL A.K. - Evangelium Nihil - Deus Sterilis ★★★ (2021-06-22 02:12:50)

これでもかという程にテンポダウンした鈍重さを持ち、初っ端の狂気に満ちたギターハーモニクスを伴うリフが唸りを挙げた瞬間、秒殺される。
真っ黒でズブズブドロドロのギターの迫力が半端ナイ。この盤に収録される楽曲の中で最も濃いフューネラル感が漂う。
シンセとギターを垂れ流し、デスヴォイスが唸っているこのバンドお得意のスタイルだ。終始淡々とした楽曲であるにも関わらず
その重厚に積み上げられたコードが織りなす不協和は異様な緊張感を放ち、徐々に泥沼の暗黒地獄に飲み込まれていくのだ。


COMATOSE VIGIL A.K. - Evangelium Nihil - Comatose Vigil ★★★ (2021-06-22 01:55:50)

前作Fuimus, Non Sumus..(2011年)のクオリティが高すぎて、なかなか新作に馴染めなかった感じだが、やっと魅力に気付き始めた。
バンド名を曲名としたこの楽曲はかなり気合の入った真性フューネラルドゥームだ。前作の音響に比べ、ギターノイズの密度が高くなり
シンセのハーモニーもより作り込まれている。聴いた当初は作り込み過ぎな印象を持ったが、今はそうは思っていない。
激遅垂れ流し系フューネラルドゥームバンドでは、コマーシャルな凄みを排除した真性さがあり、トップクラスのクオリティにある。


BEHERIT - Bardo Exist ★★★ (2021-06-22 01:27:50)

フィンランド産ダークアンビエント2020年作
先月発見して驚いたが、どうやら昨年冬にリリースされていたらしい。一応ブラックメタルのジャンルにカテゴライズされてきたバンドだが
純粋にブラックメタル様式の演奏を聴かせるバンドではない。決して卓越した演奏技術で聴かせるバンドではなく、真性なカルト色が魅力だ。
最も愛聴したのはDRAWING DOWN THE MOON (1993年)で、フィンランドカルトの凄まじさを思い知らされたが、その後はそのカルト風味に特化していき
インダストリアル要素を含む作品に進化していった。純粋なブラックメタル的音響とはかけ離れた音楽性だったが、その内容の濃さはレジェンド級だ。
前作ENGRAM (2009年)で初期ブラックメタルスタイルに回帰したが、今作は一転、完全にアンビエント化している。そのスタイルの変化が評価の分かれ目。
DRAWING DOWN THE MOONやENGRAM時代のスタイルに愛着があるのは確かだが、アンビエント化は歓迎している。というのも、その真性なカルト臭を
表現するには、むしろアンビエントの方が向いている。また、中期のインダストリアル化の方向性からも、その着地点としてとてもシックリくる。
CD2枚組の大作で、タイトル曲Bardo Existsは23分という尺の長さである。ボリューム感でお腹一杯になりそうだが、没入感は高く、長い尺でも飽きさせない。
元来持っている狂信的で尊大なカルト臭に加え、張り詰めた緊張感が加わったことは、旧スタイルを代償としてアンビエント化したことで得た新たな魅力だ。
ノルウェーではアンチBEHERITがいたらしい。思想的なところか、粗暴な音楽性が理由なのかはよくわからないが、少なくともDRAWING DOWN THE MOON時代
以前は忌み嫌われる程の特殊な音楽性だったと感じる。それだけインパクトを放っていた音楽だったと思うが、その醜悪さは今なお健在と言える。
こういうブラックメタルの演奏技術的な醍醐味とは対極にあるカルト風味特化型のスタイルでクオリティの高いサウンドはワリと希少だと感じている。
米PROFANATICAのHAVOHEJの作品群で体験できるカルト臭が志向性として近いが、総合的濃さではBEHERITに軍配、独善的尊大さでHAVOHEJに軍配といった感じだ。


UNTIL DEATH OVERTAKES ME - Days Without Hope - Cruel ★★★ (2021-06-17 01:04:07)

恐らくこの盤を最も多く愛聴しただろうと思う。コレ以前の作品はよほど彼の音楽性を理解しないと、あまりのポンコツさで聴くに堪えないだろう。
底辺の根暗サウンドを創り続ける彼の真骨頂、大きく進化したと思わせたこの盤で、最も素晴らしいと感じた楽曲は、この1曲目のシンセサウンドだ。
本来は2曲目以降のギターが登場するところから盛り上がるんだろうが、シンセ、ギター、唸り声の掛け合いというスタイルはこの盤時点では未完成だ。
しかし、冒頭の導引部分のこのシンセサウンドのクオリティは非常に高い。これを聴いた当時は、この単純なコード進行のシンセサウンドに
根暗サウンドの神髄を垣間見た気がした。山と太陽とトゲトゲの気持ち悪いジャケにベストマッチである。
時代のトレンドに逆行する極端に偏った音楽性と世界観を持ち、ひたすら根暗サウンドを創り続けるこの姿勢、こういう人が天才なんだろうなと思うのだ。


UNTIL DEATH OVERTAKES ME - Symphony II: Absence of Life ★★★ (2021-06-17 00:35:20)

ベルギー産フューネラルドゥーム2002年作
このバンドの作品をレビューするのはなかなか大変だ。どの盤も似たような音楽性で、よほど愛聴しないとその違いが判らない。
リリース数も多いので、未だに一聴しただけでどの盤に収録されている楽曲か少し考えないと迷うこともある。イントロクイズにしてしまえばいいのに。
この盤はチープな過剰に歪ませたノイズが大きな特徴だ。彼の作品を蒐集し始めた当時は、試聴してゲットするのを避けた盤だったが
ワリと最近ゲットしている。これ以上歪まないだろうと思える程バリバリのノイズなので、果たしてコレがギターなのかシンセなのかわからない。
そういうノイズとシンセ、唸り声の掛け合いが延々続く音楽性だ。シンセはパイプオルガンの音響に近いので、何やら神聖な雰囲気が漂う。
ノイズのチープさに慣れれば、コレが不思議と味わいに変化してくる。シンセの効果から、物寂しい朽ちた教会、暗闇といった情景が思い浮かび、
轟音のようなノイズは、稲妻を思わせる。悪天候の日に教会の中で悲愴感に浸っているかのような気分になれる。
まあ、この人のサウンドに耐性が無ければ、ただのポンコツノイズだと感じるだろう。そのハードルを越えれば、このサウンドがとても面白くなるのだ。


CORONER - No More Color Tour '90 (Live in East Berlin) ★★★ (2021-06-15 02:26:32)

スイス産テクニカルスラッシュ1990年作(VHS)
ボクはライブ映像にあまり興味を持たないんですが、コレは別格。当時の衝撃は忘れられない。
確かメタル誌にレビューも載っていたが、B誌ではない。確かMETAL GEARという雑誌だ。楽曲・演奏・アレンジの3つのカテゴリーだったと思うが
A~Eの5段階で評価するレビューだったと記憶している。3つともC評価だったような・・覚えがある。記憶違いかも知れないが。
この映像には華やかな感じは確かに無く、テクニカルな演奏に執心するあまり、動きもあまりない。そこがC評価という原因なのかも知れないが
少なくともボクを含めCORONERファンは、この再現度の非常に高い圧倒的な演奏で度肝を抜かれたんじゃないかと思う。トリオ編成という最小限ユニット
でありながら、アルバムの楽曲を忠実に再現できているところが凄まじい。ベースヴォーカルのRon Royceは現在は結構ふくよかな体形になっているが
この頃はシュッと痩せてて、時の流れを感じる。No More Colorはホントに凄まじい作品だった。それをライブ映像で見れるというお宝ビデオである。
Punishment For Decadence(1988年)の看板曲やPurple Hazeのカヴァーもアツい。
もはやウチにはVHSを再生できる機材が無く、このビデオテープも役目を終えてひっそりと棚の奥に収納され、青春時代の思い出の品と化している。
You Tubeで見れるので、興味があれば観てみるといいよ。余談だが、再結成して新作発表をほのめかしているのに、未だ音沙汰がナイな。


Arcane Voidsplitter - Cosmic Mind ★★★ (2021-06-08 01:57:12)

ベルギー産フューネラルドゥーム2020年作
UNTIL DEATH OVERTAKES MEをメインプロジェクトとするStijn van Cauterによるサイドプロジェクトだ。
フォトショップで頑張って作ったかのような脳ミソと光が描かれたジャケは、相変わらずチープさが漂っており独特の趣きがあってグッドだ。
彼が最も得意とする張り詰めた緊張と静寂を伴う音空間に、歪みまくった極太ノイズに深いリバーブをかけたギターを垂れ流すという定番スタイルだ。
起伏のある曲展開は全く期待できない超スロードローンアンビエント地獄が70分続くという、まるで修行のような苦行サウンド決定版だ。
UNTIL DEATH OVERTAKES MEで聴ける楽曲スタイルでさえ、超スロードゥームなのに、こちらは更に輪をかけて超スローである。
冷ややかさと静けさが素晴らしい絶品のシンセと、彼の持ち味であるギターエフェクトの掛け合いを楽しむ作品。決して過去作のようなチープな音響ではない。
彼が乱発する多くの作品の演奏スタイルは大体似たようなモノなんだが、この盤はリズミカルな要素を全くと言っていいほど排除し、純粋に
シンセとギターが織りなすハーモニーの魅力に特化した感じである。近年の作品はもはや音響に限ってはチープさが薄れ、ホンモノ感に溢れている。
通勤中のマイカーで聴くと、仕事の始業時間までに半分、帰路に着くまでに半分で、この盤をフルで楽しむことができる。
雨天時に聴くと雰囲気があっていいんだが、いつもの通勤経路を少し迂回して海岸沿いルートを通ると尚雰囲気があっていい。そういう楽しみ方をしている。
決して万人にオススメできるシロモノではなく、ドローン地獄に耐性があるリスナー向けだ。このスタイルがダメな人にとってはただのポンコツサウンドだが
音響はもはや完成の域に達しそうな感じなので、このジャンルがイケる人は是非試してみて欲しい。


BEYOND BLACK VOID - Desolate ★★★ (2021-06-07 02:04:28)

ベルギー産フューネラルドゥーム2003年作
人に貸したままになって15年以上経つが、少なくともコレを借りたいと言ってきた友人はある意味天才だ。このチープさに潜む魅力を理解するには
彼の作品をゲットし続けないと全く意味がわからないだろう。コレをゲットした当時は、再生した瞬間に聴こえてくるチープなノイズにショックを受け
窓から円盤のように投げようかと思ったものだ。こんなシロモノに散財した自分が情けなくなり、こんな作品に対して少しでも興味を持った自分はバカだと
自己嫌悪したものだ。いろんな作品を蒐集していると、驚くようなポンコツ作品に出会ってしまうことがある。この作品はそんなポンコツ作品群の中でも
特に際立ったポンコツ感があった。しかし、何故だろう。Stijn van Cauterの作品をゲットし続けてもはや十数年、購入当時に全く理解できなかったが
この作品は彼の作品の中でも特に素晴らしいと気付かされる。果たして需要があるのかどうかわからないが、最近はStijn van Cauterの作品のリマスター盤が
次々と発表されている。この盤のリマスター盤が出れば即買いである。
彼の作品では珍しく、霧が立ち込める大海原に船の帆のようなオブジェが描かれる惹き込まれるジャケである。耳に障る甲高く尖ったノイズは、聴き易く加工されず
チープさを醸し出しながら響き渡る。しかしその音は、喧しさとは裏腹に、まるで凪を感じさせる静けさを伴う。そこに鈍重なフューネラル感を纏ったギターが
絡んでくる。ジャケイメージに見事に合致した音楽性と、大胆な音響に絶大な魅力がある。
まあ、さっき新作の記事でも書いたが、万人にオススメできるシロモノではなく、ポンコツ感とレジェンド級が紙一重で折り合った衝撃作品である。


BEYOND BLACK VOID - Wraith Crag ★★★ (2021-06-07 01:31:51)

ベルギー産フューネラルドゥーム2021年作
UNTIL DEATH OVERTAKES MEをメインプロジェクトとする一方で、多くのソロプロジェクトを抱えるStijn van Cauterによるドローンドゥーム。
新型コロナウイルスのせいで、昨年は空輸できない期間があったが、やっと彼の運営するレーベルショップからの空輸が解禁となりゲットすることができた。
受注したらその都度CDrを焼くのだろう。届いた盤からは印刷したてのインクのニオイが漂い、盤の印刷も光沢がある。いかにもPCで個人で加工した感のある
ジャケとバンドロゴは、長年彼のポンコツ作品にひたすら散財した者としては、残念感など皆無、逆に妙な高揚感がこみ上げてくる。
普段あまりCDr作品は買わないのだがStijn van Cauterの作品はデジタル作品かCDrしか見かけないから仕方がない。チープなジャケとインクのニオイから
伝わってくる手作り感がたまらなく素敵だ。サウンドは購入前に大体想像がつく。また単調な垂れ流しなんだろう。それでも彼の作品の魅力は絶大だ。
サウンドはUNTIL DEATH OVERTAKES MEの、ギターストロークに合わせてドラムを叩くお家芸スタイルとはまた異なる演奏である。それでもやっぱり垂れ流しだ。
歪んだギターを超長めに垂れ流し、アトモスフェアなシンセが絡むサウンドだ。収録される3曲はそれぞれ19分、17分、19分という大作主義の苦行だ。
これじゃいつもの作品と同じじゃん!と思いつつ、変わらないこの底辺アンビエントドローンスタイルに安堵し、没頭してしまう。素晴らしいの一言。
とりあえず万人にオススメできるシロモノではない。聴く人によってはポンコツサウンドだ。このポンコツ感とレジェンド級が紙一重で折り合っているんだよ。


SATANIC WAVES - They Burn ★★★ (2021-06-04 01:03:26)

チリ産ストーナーロック2021年作
先月末にリリースされたメタル辺境国チリから突如現れた、恐らく無名なバンド。しかし、そのレジェンド級の音響から、相当な経験値の高さが感じられる。
もう南米チリは、ボクの中で過去の辺境イメージが先行しているだけで、メタル辺境国とは言えないかも知れない。最近は率先してチリ産に注目しがちだ。
CDでのリリースは無いようでMP3ファイルでゲットしている。PCを開いている時にしか聴いてない上、リリースから数日しか経っていないにも関わらず
今年最も衝撃を受けた上半期ベスト盤と言える。一聴しただけで、その素晴らしさが伝わってくる。もはやストーナー路線はあまり漁っていなかったから
偶然にもこのサウンドに巡り合ったのはホントにラッキーとしか言いようがない。
バンド名からイメージする悪魔的なテイストは無いわけではない。イーヴルで適度な浮遊感はあるが、真性な背徳感や濃厚な酩酊感は無い。
そういう要素を適度に含ませた、粘り気の強いギター、オーソドックスな演奏形態のカッコいいロックサウンド、力強いダーティなヴォーカルスタイルだ。
決して懐古主義的なヴィンテージ寄りサウンドでもない。勢いがありエネルギッシュさが宿っている。
普段は寒々としたサウンドを好むボクだが、このサウンドはどちらかというと真逆で、翳りがありながらもデザートロックのテイストがある。
そういう音楽性なので、デザートロック&ストーナーでまず思い浮かぶKYUSSファンにはストライクゾーンど真ん中だろう。
独特なタイム感は時に凄まじいグルーヴを生み、計算され尽くしたかのようなノイズが仄かな酩酊感を醸し出す。シューゲイザー的な翳りは時として切ない。
ただ、全体的な尺が33分というのは少し物足りなさがある。もっとこのサウンドに浸っていたいと思わせる。
非常に中身の濃いサウンドだが、敷居は高くなく、初心者から玄人までフォローする内容だと思うので、騙されたと思ってYouTubeで視聴してみて欲しい。超オススメ!


SABAZIUS - The Descent of Man ★★ (2021-05-13 19:49:38)

英国産ドローン・フューネラルドゥーム2013年作
歴代ドゥーム作品中最も素晴らしいと感じているアヴァンドゥームバンドHesper Payneが殆ど知られず世に登場した頃、カップリング作品に名を連ねたバンドがコレ。
そこから興味を持ち辿ってこの2013年作品をゲットしたが、今まで2回しか聴いたことが無い。ちなみに2回目はこのコメントを書きながら正に今聴いている。
しかもこの曲のラストまで聴いたことは無く、途中で断念している。というのも、ドローンノイズが響き渡る楽曲で、尺が11時間16分54秒という苦行なのだ。
当然CDに収録することはできず、当時はメモリースティックで販売されていたが、ボクはタダでダウンロードできるサイトからゲットしている。
既に故障し再起不能になった昔のPCに、もはやバンド名は忘れたが1曲の尺が24時間という苦行バンドの作品があったが、こちらの作品は尺の長さで歴代2位の記録。
ドローンが相当得意でないと厳しい内容だが、その音像は結構素晴らしい。ただ、11時間超のドローントライアスロンを好んで愛聴できる人は、ある意味天才だ。
途中で断念したボクは凡人なんだろう。興味を持った人がいるかどうかわからないが、まず言っておく。時間がもったいないので、健全な余暇活動を楽しもう。
この作品は、浮世離れした何の予定も無く、鬱々とした音空間に延々浸っていたい、今からどうやって自殺しようか、と考えている人向けのサウンドだ。
ゲットした当時、仕事休みの日曜日にこの苦行にチャレンジしたが、競馬中継を消音にして延々とこのサウンドを流していたが、夕方笑点が始まる時刻に断念。
残念ながら日曜日の笑点は欠かせなかった。こんな鬱々とドツボにハマるサウンドよりお笑いを楽しんだ方がきっと人生は有意義である。
音響は素晴らしい。また、この尺の作品を作った、というレアさが光る。ただ、多彩なノイズが劇的に展開するワケでもなく、別に1時間でいいんじゃない、と思う。


MANILLA ROAD - To Kill a King ★★★ (2021-05-13 02:22:20)

米国産エピックメタル2017年作
そもそも米よりも欧州・辺境国のメタルを優先してゲットするので、このバンドの盤はあまり揃っていないが、完成度やエピックワールドの雰囲気
演奏力や貫禄といった点で、もはやレジェンドの域に達しそうなバンドである。決して突拍子の無い奇をてらった楽曲は無く、理に叶った曲展開で
オーソドックスに聴かせるワリに、同系バンドの追随を許さない渋味や味わい深さを備える。このジャンルでは優等生というイメージが強いバンドだ。
非常に心地よいイーヴルなギターの歪みだが、中音域より上がほんの少しメタリック寄りで、音像に紛れることなくキャッチーな旋律が伝わってくるので聴き易い。
そういう音作りから職人気質が伝わってくる。また、無駄に力まない達観した感じのヴォーカルスタイルも然りだ。手数とバリエーション豊かなドラミングもイイ。
ボクが普段愛聴するドゥームに比べると当然音数は多く、テンポや展開も起伏に富んでいる。ギターソロは結構トリッキーで細やかな小技をビシバシ決める。
そういうサウンドはボクにとって結構苦手な部類に入りそうなモノだが、何故か全体的に地味目に聴こえてものすごーく自然体で聴けるからイイ。
昔はややB級ロックサウンドのイメージを持っていたが、流石に活動期間も長く、今となっては全くB級感が無い優等生だ。ワリと万人にオススメできる盤だね。


WITCHFYNDE - Lords of Sin / Anthems ★★★ (2021-05-13 01:38:19)

英国産NWOBHM1984年作
ボク世代(40歳代)はMETALLICAのラーズウルリッヒがバンドをチョイスしたNWOBHM2枚組オムニバス盤をキッカケに
NWOBHMブームを体験したメタラーは結構多いんじゃないかと思う。その盤に収録されるバンド群はもちろん、
いろいろ辿って蒐集に勤しんだ時期に、WITCHFYNDEはかなり入手困難で、結局高校時代は入手を諦めてしまったが、
大学時代にこの盤のリマスター盤が発売され、狂喜した思い出があるね。懐かしい。
ただ、購入当時はイメージに反してライトなサウンドで熱狂的に集中して愛聴したということも無かった。
しかし、そのワリにWITCHFYNDEの盤は結構揃ってて、満遍なく愛聴してきた。
バンド名から想像するサタニックな雰囲気はジャケデザインとイントロ部分のみで、かなりキャッチーな旋律で聴かせる。
このバンドのいいところは、この時代特有のラフで華やかな演出のロックサウンドに適度な翳りが加わっている点だ。
結局こういうサウンドは、タイムリーに体験したリスナーか、年齢を重ねて余計な演出の無い原点回帰サウンドがツボにハマる人向けなんだろう。
NWOBHMバンド群の中でも、特に当時のシーンの空気感が伝わってくる。特にボクが所持するリマスター盤にはライブ音源も収録されているから尚更だ。
大きくないライブハウス、照明に反射する塵、独特のやや黴臭さを伴うあのニオイ、そういった感触が蘇るかのよう。
いいね。


AVANDRA - Skylighting ★★★ (2021-05-11 00:56:05)

プエルトリコ産プログレッシヴメタル2020年作
初期Dream Theaterの雰囲気を纏う処女作から約1年足らずで登場した2作目。ボク的にかなり期待しているバンドだが、短いスパンでの新作発表にチョイ驚きだ。
前作はなかなか難解な作品でもあり、まだ完全に消化しきれていないのに、昨年11月に新作をゲットし、難解さを乗り越えるためにワリと高い頻度で愛聴している。
前作に比べて大きな進化を遂げたとは言い難いが、かなりの力作である。楽曲の作り込み度合いが高く、なかなかスッと耳に馴染まないが高い完成度だ。
本家Dream Theaterと比較するとまだカワイソウなクオリティかも知れないが、やはり初期Dream Theaterの再来を感じさせるこの空気はたまらなくイイ。
終始霧に覆われているようなシンセと、ハーモニーを重視したウィスパーヴォイスに近いヴォーカルとコーラスにより、繊細で湿度高めな雰囲気である。
そんなスタイルだからか、ヴォーカルに力強く声を張ってほしい、ギターやドラムがトリッキーな演奏をしているのに霧の中に霞んでいるように聴こえる等
若干の不満点はある。次作で改善して欲しいと思うところだが、そんなマイナス要素を払拭するだけの演奏力と楽曲、初期Dream Theater的ギターワークといった
大きな魅力が詰まっている。前作はイチオシのキラーチューンが残念ながら無く、佳作揃いといった印象はあった。複雑な曲展開で個性を出そうとするあまり
不自然な旋律というモノが結構目立ち、キャッチーさに欠ける印象を持っていた。今作はそういう不自然さが若干改善されたと、まず感じている。
それでもなかなか耳に馴染むのに時間がかかる。旋律がスッと入ってこない間は、実は絶妙な旋律を奏でていたとしても、霧の中に紛れて伝わってこない。
曲を覚えてくると、霧の中で何かやってるだけに聴こえていたモロモロの演奏が、徐々に伝わってくる。そうなると、このサウンドの魅力から抜け出せなくなる。
今作は印象的なギターのリフ、トリッキーなリズムと淡々とした雰囲気のバランス感覚、ギターとシンセの掛け合いなど多くの魅力が詰まっててグッドだ。
ジメジメした季節を好むボクとしては、梅雨時期になるとコレばっかり聴いているかも知れないな。


EARTHSHINE - My Bones Shall Rest Upon the Mountain ★★★ (2021-05-04 22:45:47)

オーストラリア産ドゥーム2021年作
一応ドゥームとしたが、ツーバスもあるし一口でドゥームと言い難いところもある。ペイガンメタルのようでヴァイキング的でもある。
基本鈍重なリフで進行し、ゴリゴリに歪んだギターを豪胆に掻き鳴らす。今は無きBathoryを彷彿させ、若干ポストブラック寄りにシフトさせたような
音楽性に大きな魅力がある。しかし、コモリ気味の録音状態は、評価を真っ二つに分けそうだ。この粗雑な録音が味わいになっているとは言い難く
コレを楽しむには少々慣れが必要だ。ボクはあまり気にならなくなった。そのハードルを越えれば、このサウンド特有の浪漫主義的な雰囲気にハマる。
なんといってもジャケが美しい。鷹が飛ぶ夕焼けをバックに、獣の頭骨が描かれる荒野、石碑の前で白馬に跨る槍を持った騎士が佇む。
戦いに疲れ、故郷に帰ってきた的な雰囲気と、大地を感じさせる壮大さ、嘆きのような歌い回し、重厚で禍々しい金属音など、ジャケの世界観と音が見事に一致。
インナーには実写の山岳と湖、かなりポイント高いジャケにワクワクするんですが、ひとつだけおかしな点が。何故か鳥居の写真が・・??
西洋を思わせる完成度の高いジャケでありながら、この鳥居で一体どこの国をテーマにしたサウンドなのか、さっぱりわからなくなった。
CDを取り出すと、アーティストと飼い犬らしき写真が。・・・せっかくの世界観が若干台無しなところは、まあご愛敬ということで。
粗雑な録音で豪快な感じは、学生時代にBathoryのHammerheartを初体験した時の感覚に非常に近く、この路線がツボの人に超オススメ盤である。
次作はアングラ臭を漂わせたまま録音状態を向上させて欲しい。一聴してポンコツ感に騙されないように。とても雰囲気のある素晴らしい作品だ。


KONQUEST - The Night Goes On ★★★ (2021-05-01 01:22:52)

イタリア産NWOTHM2021年作
2019年デビューのホットなバンドなワリに、年配向けトラディショナルモノ路線ど真ん中の化石ロックサウンドが楽しめる好盤。
最近はドゥーム路線よりもこの路線を多くゲットしているが、今年蒐集した盤のうち、最もレトロ感を堪能できたのがコレだ!
必要最小限に抑え気味のエフェクト、どこかで聴いたことのあるようなベタな展開、キャッチーなリフ、派手な演出は無く適度なテンション。
しかし何故かコレが相当ツボにハマる。奇をてらった派手な演出が無くとも、ハードロックの基本をガッツリ押さえていればカッコいいという事を
知らしめる作品だ。というワケで、この作品はロックを聴き倒してきた年配者向けである。ここのところ一番多く愛聴している盤だ。
リフや展開、どこかで聴いたことあるあるを存分に楽しめる。そういう曲を決め打ちして作っているんだろう。
この盤を愛聴できる人は、とりあえず高齢者の仲間入りをしているので、血圧や血糖値に気を付けよう。残念ながらアナタはもう若くはないぞ、と言いたい。
この地味なジャケもツボにハマる。どこかで見たようなジャケなんだが、思い出せないな。


RIPPIKOULU - Musta Seremonia ★★★ (2021-04-14 23:35:39)

フィンランド産ドゥームメタル1993年作
この作品をタイムリーに体験していれば、かなりショックを受けただろうと思う。残念ながらコレをゲットしたのは2010年にリマスター盤が出て数年後だ。
1993年年頃のフィンランド産ドゥームといえば、まず思い浮かぶのはTHERGOTHONだ。当時はデスメタル全盛、むしろ更にスピード化が加速していた時代に
鈍重で、超スローテンポなメタル、表舞台で活躍するサウンドに比べ逆行するスタイルに某メタル雑誌では低得点を食らい酷評され、ボクのような低得点マニア
は狂喜した。酷評ではあってもレジェンド級のクオリティだった。THERGOTHONはメディアで紹介されたぶん、ドゥームファンには一定の知名度はあったと思う。
しかし、活動時期がほぼ同じ時代であって、同等のレジェンド級クオリティを秘めるRIPPIKOULUは、更に知名度が低く、恐らく当時は地元フィンランドの
一部のドゥームマニアしか知る由が無かったのだろう、と想像する。
2騎の馬上の戦士が描かれるジャケクオリティが相当高いんだが、残念ながらリマスター盤はモノクロジャケである。カラージャケはいくら探してもCDでは
発見できず、購入当時はモノクロリマスターCDでさえ70ドルくらいだった。今は恐らく探せばカラーLPが100ドルくらいで手に入るだろう。
サウンドは、一聴した瞬間、ダウンチューニングが施されたギターの質感に驚愕するだろう。この時代にここまで真性で硬派なギターを奏でるドゥームメタルは
存在していなかった、と思う。また、今でこそ鈍重なドゥームは山ほどいるが、当時はこういう音像で真性なドゥームをやってるバンドは唯一無二の存在だ。
また、このバンドはドゥームメタルスタイルでありながら、ブラストビートを取り入れているところが凄い。普通はドゥームがブラストすると残念感しか無いのに
このバンドはとても理に叶っていると思わせる。
この作品を発表後、中心人物であるギタリストMarko Henrikssonは亡くなり、長く活動を休止していたが、2014年にEPをリリースしている。
ギタリストの存在が大きかったようにも思わせるところがあるが、再び衝撃的な作品を世に出して欲しい。


RIPPIKOULU - Ulvaja ★★ (2021-04-14 22:56:54)

フィンランド産フューネラルドゥーム2014年作
3曲入りEP、量的にやや物足りなさはあるものの、中心人物だったと思われるギタリスト死亡後、21年のブランクを経て作品を世に出したことに興味惹かれる。
ダウンチューニングを施された重低音、絞り出すような低音デスヴォイス、ノイジーなギターには仰々しいシンセが絡む。いかにもフィンランド産の真性さがある。
唯一のフルレングスアルバムMusta Seremonia(1993年)のレジェンド級の凄まじさを継承しているとは言い難いところはある。それだけギタリストの存在が
大きかったんだろうと、まず感じてしまう。リフで構成する感じとブラストが無くなり、前作のデスメタル的楽曲からアンビエント寄りになっている。
真性さはある程度維持しつつ、スタイルが様変わりしているところは、評価が大きく割れるところだろうと思う。ボクとしては前作のスタイルを維持して欲しかった。
現在活動しているのかどうかわからない。EPをリリースしたということは、まだフルレングスアルバムを世に出す見込みはある、と期待しているところだ。
(といってもリリース後7年経過しているが・・)


IRON VOID - Excalibur ★★★ (2021-04-05 01:43:54)

英国産ドゥームメタル2018年作
前作Dooms Day(2015年)は、ヴィンテージドゥーム寄りのオーソドックスかつイーヴルな良作だったが、今作はヴィンテージ度がやや下がり
エピックドゥーム色をより強めた世界観が付加された。音響的には前作の方がドゥーム度は高いのかも知れないが、ボクはこちらの盤の方が好み。
エクスカリバーが描かれるシンプルジャケと、ドゥーミーな音像でありながら無駄を削ぎ落した飾りっ気のない楽曲のバランス感覚が素晴らしい。
速弾きなどのトリッキーなモノが極力排除された、聴きようによっては単調とも言えるリフで構成されるサウンドに何故か惹き込まれ
前作では殆ど感じられなかったエピックワールドが眼前に広がるかのような錯覚に陥る。濃厚になり過ぎないドゥーミーさがむしろ良い。
最近は作り込まれて凝った作品よりも、こういう超シンプルな作品の方がボクのツボにハマる。ミドルテンポ以下のゆったりした演奏で
落ち着いた雰囲気、過剰演出のない適度なイーヴルさを備え、魅力的な世界観を持つこういう感じのバンドは、意外に少なく希少価値を感じる。


FROZENWOODS - Cold of Early Spring ★★★ (2021-03-18 00:37:41)

ロシア産アトモスフェアブラック2020年作
作品自体は2019年にカセットでリリースされ、CD化されたのが2020年のようだ。
前作から7年・・とはいっても、相当無名なバンドで、処女作である前作Echoes Of The Winterforest(2012年)のクオリティも決して高くはない。
少なくとも、当時は、ロシア産で極寒の自然を思わせるバンド名とアルバムタイトルが印象に残り、作品の雰囲気が好きだったが、ゲットには至らなかった。
しかし、今作のクオリティは非常に高いと感じる。聴けば聴くほど独創性の虜になってしまう。
EORONT、GLOOSHが最近ボクのお気に入りブラックだが、その2バンドのギタリストFoltath Eternumによるサイドプロジェクトと思われる。
ここに挙げたバンドはそれぞれに異なった趣きを持つ作品で甲乙つけ難いが、最も多く愛聴しているのは、このFROZENWOODSだ。
乾いた感じのスクリームとまでいかない高音域のガナリ声ヴォーカル、若干低音域が薄めの音作りといい、軽めの録音に、聴き始めた頃はライトに楽しんでいたが
不思議と中毒性がありハマってしまった。バンド名から高い湿度を思い浮かび、深いリバーブ処理を施していそうなものだが、湿度はあまり高くなく
一般的な自然崇拝ブラックよりもややエフェクト処理による残響音は浅めだ。しかし、砂塵のような粉っぽいギターバッキングが幾重にも重なり、空間の拡がりを創っている。
その音の束が癖になり、低音が薄めであることがむしろ心地よい。周期性のあるフランジャーっぽいノイズや適度な湿り気を帯びたアコギなどの工夫が加わり
あまり霧の濃くない自然を感じさせる音空間に仕上がっている。アルバムタイトルから想起される、冬から春にかけての気候の質感が見事に表現されている。
前半の楽曲では、一本調子な直線的なブラストとトレモロリフが占める淡白な楽曲だが、印象に残りやすいコード進行も手伝って、没入感強めで惹きつけられる。
終盤のテンポを落とした楽曲では、オクターブの音程を多用し、ジャストではないその微妙な音程のズレがレイヤー的効果を生む。ストーナーと言うと語弊があるが、
それに近い効果を持つ音響が癖になる。カスカスのギターノイズは、石が風化し気化していくような、退廃的なイメージを思い起こさせる。
バンド名から想像する凍てついた森というよりは、もう少し季節が春寄りで、まるで花粉や胞子が飛び交うようなザラついた粒子多めのノイズである。
そんな独創的な音世界がとても魅力的だ。ヘヴィでアグレッシブなブラックフリークにはきっと向かない。ギターノイズのコダワリを堪能できるリスナー向けだ。
Foltath Eternumというギタリスト、恐るべし。彼のバンドはいずれもセンスがイイ。特にこの盤は相当ツボにハマってしまった。


PATH(Путь) - Под крылом смерти ★★★ (2021-03-16 01:17:34)

ロシア産ブラックメタル2016年作
恐らく処女作品、このバンドが持つ大きな魅力であるアコーディオン導入は、この盤時点では無い上、インストである。
若干ドラムが前面に出過ぎている感は否めないが、絶妙な歪みを持つギターはこの盤でも体験することができる。
次作以降の素晴らしい盤を世に出す下地は、ギターエフェクトと荒廃的な音響という点で、ある程度この盤から感じられる。
ヴォーカルとアコーディオン入りの次作以降に慣れているため、若干未完成な印象はあるものの、ギタリストの音作りへのコダワリが感じられる好盤だ。


REVERSED - Widow Recluse - Widow Recluse ★★★ (2021-03-16 00:45:26)

アルバムタイトル曲。蜘蛛のバケモノが登場するかのような大胆なリフから始まり、ハイボルテージな走り気味の楽曲に圧倒される。
高速で刻むギターとシンバル多めの禍々しさ満点の演奏、全力で絞り出すようなデスヴォイスに悲鳴にも似た叫び声。
もはや何をやっているのかカオス状態の音空間にアドレナリンが分泌されまくりだ。また、中盤でテンポダウンし響き渡るギターが
やたらイーヴルで鬼気迫る感じだ。まるで蜘蛛の糸に囚われて体が蝕まれていくような疑似体験ができる。
アングラ臭と爆発力、アクの強い危険な香りが大きな魅力だ。デモテープ再録というローファイ感が絶妙な音空間を創り出しているね。
こういう固有の世界観と演奏スタイルを持つデスメタルは全力で応援したい。


SADISTIC DRIVE - Anthropophagy - Internal Putrefaction ★★★ (2021-03-14 20:37:46)

序盤と終盤の軽快なビートを刻む独特なリフ、爆発的なブラストが、TERRORIZERのWORLD DOWNFALL (1989年)を彷彿させる。
中盤はドゥーミーにネットリした演奏を聴かせ、カニバリズムのテイストを織り交ぜているという、美味しい所を凝縮したようなサウンドだ。
ブラストするデスメタルは多いが、こういうタイム感のバンドはきっと、オールドファンの心を掴む筈。カッコいいね。


SADISTIC DRIVE - Anthropophagy ★★★ (2021-03-10 00:03:59)

フィンランド産デスメタル2020年作
CoffincraftのNiklas Heiskanen、BloodscapeのJusa Janhonenという地元フィンランドでの知名度すらアヤシそうなマイナーバンド出身の2人を中心として
結成されたデスメタルバンドのフルレングスアルバムなんですが、相当クオリティの高い、一線級王道デスメタルスタイルが魅力のデスメタルファン必聴盤だ。
一般人から見れば、エグい血みどろローセンスな落書きジャケと悪趣味な緑色のバンドロゴに嫌悪感を抱くだろうが、この底辺のジャケを見るとボクは血が沸き立つ。
一見チープなジャケからデモテープレベルのポンコツサウンドを想像してしまいがちだが、騙されてはいけない。最適な録音でデスメタルの醍醐味が詰め込まれた盤だ。
ハードコアルーツの激しさを持ちつつも、スウェディッシュデスっぽくはなく、むしろMorbid Angel初期作品がTerrorizer寄りにシフトした感じが仄かにある。
ミドルの気持ち悪いリフと突発的なブラストをうまく織り交ぜた楽曲に、食あたりになりそうな気持ち悪い滅茶苦茶なギターソロが絡む。
フィンランド産は濃いサウンドが多いが、確かに濃さは最高潮に達しているものの、北欧的なサウンドというよりは、80~90年代の米国デスメタル風味が漂う。
先に引用したレジェンド級の2バンドの演奏様式に非常に近いが、表現しているのは魔性やテロリズムではなく、ゴアリーなカニバリズムであるところが面白い。
Morbid Angelの魔性を帯びたリフ・エフェクトに似ているが、そこにハードコアテイストの爆発的な緩急と、ハイボルテージに弾きまくるギターが加わった途端
不思議とゴアリーな感触が生まれるからスゴイ。決して初期Carcass的なグシャっとした液状化したサウンドではない。Autopsy的な低音ゴリゴリ感でもないから面白い。
ヴォーカルスタイルも多彩で、唸るようなデスヴォイスに留まらず、絶叫したりゲロリバースに近いゲロヴォイスを披露するなど、カニバリズムにピッタリな感じだ。
悪い細菌を撒き散らし、狂犬病になりそうな感覚を、オールドスタイル且つその時代の一線級バンドスタイルで聴かせる。ちょっと格の違いを感じる作品だ。
ちなみに、ゴアテイストは、前作のカセットテープリリースの作品の方が濃い。この盤でややゴアが薄まったものの飛躍的に完成度が上がっている。
2~3分の楽曲が多く、収録曲は10曲で、トータルの時間は結構短いが、短い尺の中にデスメタルの醍醐味が詰まっている。勢いのみの短絡的で短い曲を詰め込んだ
ハードコア作品あるあるのような、安易さは全く無い。デスメタルフリークは騙されたと思って試聴してみたらいいよ。相当ハイレベルだからね。超オススメ!


TROLLMANN AV ILDTOPPBERG - The Forest of Doom ★★★ (2021-03-04 23:19:18)

英国産ドローンドゥーム2001年作
カセットテープ作品は基本買わないので、カセットテープによるリリースを基本とする彼らの作品の多くはゲットできていない。
基本CDr作品も買わないんだが、ボクはこのバンドの作品に対してレジェンド級の評価をしているので、今作を含めCDrの作品を2作品ゲットしている。
近作As The Fog Clears But For A Moment, Weary Travellers Behold The Majesty Of The Snow​-Clad Mountains Of Crom, Bathed In Ancient Starlight(2015年)
でさえ、Dungeon Tapesからカセットテープでのリリースである。デジタル時代にカセットテープにこだわる姿勢に最近は興味が沸きつつあり、むしろ
カセットテープでコレクションしておくべき作品ではないか、と思い始めている。カセットを再生できる機材が無いので、近々ゲットしようかと考えているところだ。
音響的にはパルス的ノイズで孤独感を描いたArcane Runes Adorn The Ice-Wrought Monoliths Of The Ancient Cavern Of Stars(2003年)の方が素晴らしいが
作品の存在感はこちらの作品の方がインパクトが大きい。極太のベースとシンセのみ、しかもFM音源レベルのチープなシンセだ。
ギターレスといえば知名度からもOMの登場が思い浮かぶが、それよりも前に、このバンドが最小限ユニットで濃いドゥーム作品を残しているところがスゴイ。
CDケース裏にインスピレーションを受けたアーティストとして多くの名前が挙げられている。そのまま抜粋すると・・・
「Steve Jackson & Ian Livingston、Burzum、Lovecraft、Thergothon、SunnO)))、Mortiis、Earth、Skepticism、Evoken、Saint Vitus、Graveland、Empyrium、Ulver」
面白いのは、アドベンチャーゲームブック著者のSteve Jackson & Ian Livingstonを挙げているところで、恐らくこの盤は、その著作である「The Forest of Doom」から
着想を得ていると思われ、長いバンド名もきっと彼らの著書に由来している。Lovecraftは怪奇小説やクトゥルー神話を描いた米国小説家Howard Phillips Lovecraftだ。
ボクも幼少の頃、選択肢を選んで指定のページにとぶRPGのような小説を読んだことがあるが、このバンドはこのテの小説から多くの影響を受けているようだ。
チープなシンセの味わいは、まさにBurzumの影響を感じるし、ミニマル&ドローン系だけでなく、Thergothon、Skepticismのようなフューネラルドゥームバンドに加え
森林崇拝系Ulverをチョイスしているところが素晴らしい。単調でチープな音源でありながら、まさにここに挙げられたバンドが持つ趣きが感じられる作品に驚愕する。
極太のベースの音圧や振幅、微妙なノイズ、目立たないチープなシンセが絶妙に絡み、情緒的な不安定さを醸し出し、独特な孤独感を描いている。
アンビエント作品の中でも近年一般的になってきたDungeon Synthというジャンルが表現しようとする音響・雰囲気・スタイルが感じられ、時代を先取りしていると感じる。
頻繁に聴きたくなるサウンドではなく、次作の方がクオリティは高いが、この時代に、最小限ユニットで、孤独を掻き立てる森をテーマにした世界観でこの作品を
世に出したこと自体がスゴイ。コレは万人にはオススメできないシロモノだが、ドゥーム上級者は資料として保存しておきたい神盤だ。


HESPER PAYNE - The Cruel Teeth of Winter ★★★ (2021-03-02 23:08:07)

英国産デスドゥーム2020年作
アヴァンギャルドなデスドゥーム路線ではボク的にナンバーワンバンドの昨年末にリリースされたデジタル作品。
タイトルを直訳すると「冬の残酷な歯」だろうか。過去作から植物が変異したモンスター的なテーマが感じられる異質な世界観があるが
この作品においても同様、魔物と化した森の木々が描かれる気持ち悪いモノクロジャケのイメージ通りの気持ち悪ーい音楽が楽しめる。
植物が纏わりつくようなウネリが特徴的なギター、軽快なビート感のようなコマーシャルなモノは皆無の鈍重なドラム、呟くようなヴォイス
鬱蒼とした森に漂う霊的な空気感を醸し出すシンセ、常に不協和なコードで構成される全く爽快感の無い毒々しいカビがわきそうな楽曲。
相変わらず健康を害しそうな日陰の音楽を全力でやっている。デスドゥーム路線ではオンリーワンな個性派で非常にクオリティが高い。
こういうサウンドは雨天でジメジメした日に楽しむと、より不健康で良い。ナマモノが瞬間腐りそうな腐臭・悪い病気に侵されそうな瘴気を
感じながら、まるで自分自身が森の異形に侵食されていく様をイメージしながら鑑賞するのが良い楽しみ方だ。
しかしまたデジタル作品というのがイタイ。フルレングスアルバムを作ってCD化して欲しい。


CóNDOR - El Valle Del Cóndor ★★ (2021-02-28 21:31:34)

コロンビア産ヴァイキングメタル2018年作
辺境メタルを漁っているとコロンビア産は少ない分、目立つ。このバンドの作品も何度か見かけたが、あまりに粗悪な録音のため今までゲットしなかったが
恐らく通算4枚目だし、そろそろイイ感じになっただろうと思いゲットしたが、相変わらずデモ音源レベルの粗雑な録音状態に驚く。
音量を3メモリくらい大きくしないといけないくらい、全体的な音量が小さい上、ヴォーカルが目立ちすぎ、ギターが聴こえにくくバランスが悪い。
ローファイ感がアングラ臭を漂わせて味わいになっている類の録音ではない。意図的にそういているワケでもなく、単に録音技術が悪いんだろう。
少なくとも、デモテープ音源レベルの音響に一喜一憂できるマニアでなければ、絶対ゲットしてはいけない盤であることは間違いない。
そんな粗悪なポンコツ録音だが、描いている世界観と演奏スタイルはカッコいい。バンド名は野鳥の「コンドル」だろう。少なくとも鳥フェチなボクは
このバンド名で注目せざるを得ない。ラストの曲は直訳すれば「コンドルの谷」だろう。アンデス山脈の切り立った山岳に生息するコンドルをイメージ
させるこの世界観がツボにハマる。
ジャンルは一応雰囲気からヴァイキングメタルとしたが、ペイガンメタルに近い感触がある。大胆なリフ、鈍重なドラム、粘り気あるギターが織りなす
山岳を思わせるサウンド、癖のあるヴォーカル等々、味わい深いサウンドだ。
ポンコツ録音さえ良くなれば、かなり面白い存在になると思うんだけどねぇ。


TNT (2021-02-28 16:43:43)

動画のラストに書いてたよ。TNTに何度も加入したり脱退してるTony HarnellのバンドSTARBREAKERの曲。
Die For YouはStarbreaker(2005年)の1曲目だね。
ちなみにボクは持っていない。Dysphoria(2019年)を買おうかどうしようか悩んで結局買わなかった。


MESSIAH - Fracmont ★★★ (2021-02-26 11:49:49)

スイス産スラッシュメタル2020年作
昨年末に発見し、再結成モノで最も衝撃的だった作品。随分前に解散した筈だったが、前作のメンバーが結集して新作を出すとは思っていなかった。
ライヴ盤やEPを除けば、実にUNDERGROUND (1994年)以来、26年ぶりのフルレングスアルバムじゃないかな。
地元スイスで絶大な人気があったようだが、ここでも書き込みを見ても、MESSIAHはマニアご用達で日本ではあまりに無名な様子。
知名度が低くコレクターアイテムとしてただ持っておきたいという類いのバンドではなく、魅力のある特有の味わいが楽しめることをもっと広めたいところだ。
この盤発表直前に3曲入りEP「Fatal Grotesque Symbols ⸗ Darken Universe」が発表されており、新曲1曲以外は、看板曲かつ迷曲Space Invadersと
ホッキョクグマサウンドExtreme Cold Weatherが最新の音響で録り直しされており、後期作品からのチョイスは無い。このEPからは、後期作品の硬派な魅力よりも
Extreme Cold Weather時代の独自性を志向しているのかと思わせる。今回の新作は、後期作品の硬派なギターの音質から繰り出されるリフといった魅力が影を潜めて
中音域から高音域を際立たせ、深めの残響音を効かせる初期作品の音響に回帰したと思わせる。オーソドックスで真面目な後期作品の音響的魅力を代償とし
レアで独創性豊かな音響を選択したことは好みが分かれる点で、とてもリスキーな選択だろうと思う。当然当時の録音状態から飛躍的にクオリティがアップしている。
初期と後期は別の味わいがあり、どちらも捨てがたいところだが、ボクとしてはオンリーワンな個性である初期のエクストリームな感触が蘇ったことに拍手を贈りたい。
後期作品に一貫していたMESSIAH(救世主)に相応しいテーマの楽曲群であることが素晴らしい。曲中には神聖さを醸し出すシンセサウンドが挿入されており
爆発的な演奏との対比は、このサウンドの救世主的世界観を想像させる。テンション高めなリフ、突発的にスピードアップし滅茶苦茶に掻き毟る感じは
元来MESSIAHが持っていた固有の魅力であり、その魅力は全く失われることなく、むしろ最大限に発揮されている。
今回のジャケ、ローブを纏った血塗れの男が描かれている。当初このブラッディなジャケに違和感を感じていたが、ここ3ヶ月くらいこの作品を堪能して改めて見ると
背景の山岳には鷹が飛び交い、救世主であるローブの男が何故か水たまりで腰まで水に浸かっているシチュエーションがむしろ面白く、趣きを感じさせる。
CDケースサイズ×9の大きさのポスターが同梱されているが、壁に貼るかどうか悩ましいところだ。血塗れじゃなければ玄関先に飾ってもいいんだけどな。


MESSIAH - Powertrash - Space Invaders ★★★ (2021-02-24 01:45:43)

このバンドの魅力は初期のデモテープ時代に凝縮されているが、特に異質さを感じさせるのは、このスペースインベーダーだ。
特に優れた楽曲というワケではないが、The Doomから始まりAntichristで終わるこのアルバム内で、とてつもない存在感がある。
単なるブラックメタルやドゥーム、スラッシュメタルとは一線を画す独創性を志向していることが、この楽曲から伝わってくる。
このセンスがMESSIAHの大きな魅力だ。


MESSIAH - Rotten Perish ★★★ (2021-02-24 01:36:42)

スイス産スラッシュメタル1992年作
前作「CHOIR OF HORRORS (1991年)」から飛躍的にクオリティアップした、MESSIAHの音楽性の完成形を思わせた作品。
ジャケがより世界観に忠実なデザインになり、額に入れて飾りたくなるほど味わい深いアートワークに変化。
なんといってもこの盤の魅力は、硬派な最適な歪みを持つギターの音像にある。派手過ぎず、過去作のような特殊なギターサウンドではなく
HM路線のオーソドックスな音像となり、そのギターが奏でる構築的な個性的なリフがより引き立つ。本来このジャンルに求められる魅力が
大幅にアップした印象だ。前作までのB級感が払拭されて、このジャンルのサウンドではトップクラスの味わいがある。
しかし、過去作までにあった、狂気をも思わせる突発的にエンジンがかかるような破天荒な勢い、特有のグルーヴ感がほんの少し影を潜めた感はある。
初期のアンダーグラウンド臭や滅茶苦茶に掻き毟る毒気は、クオリティの上がった録音状態により失われた。ただ、それを代償としたとしても
MESSIAHの魅力や持ち味は決して失われておらず、破天荒さの喪失・粗雑だからこその魅力が喪失したものの、音響と楽曲クオリティが
それを補って余りあると感じさせる。
前作同様に描く世界観が「救世主」ぽいところが良い。また、このバンドは面白い独創的なテーマの曲を多く残すが、この盤もしかり。
Living With a Confidence(自信を持って生きる),Alzheimer's Disease(アルツハイマー病)あたりの楽曲が、このバンドらしい味わい深さがある。


MESSIAH - Choir of Horrors ★★★ (2021-02-23 00:17:52)

スイス産スラッシュメタル1991年作
「Extreme Cold Weather(1987年)」と比べると、演奏が整然とし、中音域以上を強調したギターから、より聴き易い音質に変化している。
この変化は悪くない。が、MESSIAH特有の個性が若干薄まった感がある。とはいえ、独特なリフ構成や突発的なテンポチェンジといった
固有のサウンドは失われていない。むしろ、録音状態が向上し、過去作で感じられる粗雑・未完成感が払拭されたと感じさせる。
しかし、個人的には、MESSIAHの盤ではお気に入り度は低い。磨かれていないダイヤ原石的な「Extreme Cold Weather(1987年)」が持つ
未完成ながらも特殊な音質で構築される音楽性からの喪失感の方が大きい。また、クオリティ的に完成形を見たと感じさせるRotten Perish(1992年)への
過渡期を思わせる作品であり、前作と次作のクオリティの高さの狭間にある感じだ。それでも、完成度は高い。
ホッキョクグマイメージが消えたこの盤から、本来バンド名から想起される世界観(Messiah=救世主)がより強く感じられる。
Choir of Horrorsの教会イメージ、Lycantropus Erectus(恐らく狼男)、Münchhausen Syndrom(自傷行為を伴う精神疾患)などの曲想が
魅力的で、まさに救世主メサイアがその独創的な世界に導いてくれるのだ。


MESSIAH - Extreme Cold Weather ★★★ (2021-02-22 23:40:13)

スイス産スラッシュメタル1987年作
MESSIAHを初めて体験したのは高校時代友人が持っていたこの盤を聴かされた時だったが、当時は魅力がさっぱり理解できなかった。
スイスといえば、Hellhammer~Celtic Frost、Coronerというレジェンド級バンドがいるが、当時はメタル未開拓な辺境のイメージは持っていた。
国籍による情緒の違いを意識し始めた頃で、スイスメタルに興味を持った頃に初体験をしたワケだが、少なくとも音楽性よりもアンバランスなジャケの
インパクトがとにかく印象に残ったバンドだった。高校時代から随分経ってからこの盤をゲットしたが(たぶんリマスター盤で2002年ロシア盤)
ジャケが可愛いといって当時の女友達に持ち帰られすぐに紛失。昨年再び購入に至ったワケだが、とりあえず同じ作品を何度か体験してわかったのは、
原盤、2002年露リマスター盤、今回ゲットしている2018年独リマスター盤では、中盤以降の収録曲が異なっている。リマスター盤はそれぞれお得感があるが、
2018年独リマスター盤には迷曲Space Invadersが収録されているのが嬉しい。ちなみにロシア盤にはデモ時代の音源が数曲収録されていた。
もしゲットしたいと考えているなら、どのリマスター盤にするかをよく調べてからゲットして欲しい。
凍てついた氷の大地にホッキョクグマがいる実写のジャケに、トゲトゲしいバンドロゴが大胆に描かれる、メタルジャケとしては珍しいデザインである。
そのジャケのインパクトは絶大で、初体験時には全く理解不能だった世界観も、今となっては辺境メタル特有の味わいが感じられて素晴らしい。
ジャケのインパクトが強いため、そちらの話題性が先行しがちだが、MESSIAHの音楽は唯一無二の個性、激しさ、豪胆さがあり、ハマれば抜け出せない。
この盤のサウンドの特徴としては、低音をカットし中音域以上を強調したかのようなエクストリームなギターの音にディレイをかけた感じが他には無い個性を放つ。
また、デモテープ時代「Powertrash(1985年)」には、まるでHellhammerのような、ポンコツ紙一重でありながら魔性・暴虐さが前面に出た強烈な独創性があったが
そこで培われた豪胆さ、突発的な、爆発的な勢いがこの盤には宿っている。ジャケイメージが手伝って、ホッキョクグマの獰猛さを描いているように感じられて
とても深い味わいがある。また、一応ジャンルはスラッシュメタルとしたが、デモテープ時代にはアンチクリスチャン的な楽曲もあり、ブラックメタル要素もある。
ヴォーカルはどちらかというとブラックメタルスタイルだ。また、ドゥーミーな要素もあり、結構多彩な楽曲である。ギターソロは滅茶苦茶に掻き毟るような
勢い任せの激しさがある。同郷Hellhammer全盛期頃に世にデモテープが出ていることもあって、Hellhammerの影響を強く感じさせる音楽性である。
このバンドはマニア向けだとは思うが、地元スイスでは絶大な人気があるようで、その魅力はもっと広く知られて然りだ、と思う。


BLOODBATH - Grand Morbid Funeral ★★★ (2021-02-22 22:23:11)

スウェーデン産デスメタル2014年作
BLOODBATHは我が家にはこの1枚のみある。20年選手の鉄板スウェディッシュデスメタルだ。一昔前なら堪能できたが、最近はこのテの激しさは苦手。
次作「The Arrow Of Satan Is Drawn(2018年)」では、激しさがほんの少し控えめになり、新たなアプローチを見せているが、ゲットしていない。
一般のデスメタルに比べて、禍々しさや激しさが上乗せされるスウェディッシュデス特有の個性が凝縮したようなサウンドが素晴らしい。
アンチクリスチャンな冒涜的な背徳感が濃厚に漂っており、その世界観が大きな魅力となっている。また、ザックリ感あるギターの禍々しさに血の感触がある。
ディレイを深めにかけたギターワークの気持ち悪さも聴きどころだ。血みどろでハイテンションなグルーヴ感が全体を支配し、もはやクタクタになるが
スウェディッシュデス路線ではかなりハイクオリティだと感じさせる音楽性だ。


PATH(Путь) - Юдоль скорби - Юдоль скорби ★★★ (2021-02-19 23:08:24)

アルバムラストを飾る楽曲。イントロ部分で荒廃した大地を思わせるも、激情にも似た激しい展開を見せる。
絶妙なギターの歪みが不穏な空気を醸し出し、アコーディオンの調べによって不幸のどん底に突き落とされる。
終盤に登場するドロドロした印象的なギターリフが優秀だ。


PATH(Путь) - Юдоль скорби - Холодная весна ★★★ (2021-02-19 22:58:29)

Cold Springと訳されるタイトルの曲。このEPの直前に宅録と思われるヴァージョンが発表されており、その曲の再録だ。
この宅録ヴァージョンのローファイ感はむしろ素晴らしかったが、この再録版も捨てがたい。
女声の語りが入り、ドゥーミーなリフとアコーディオン、嘆きのようなヴォーカルが歌い上げる。


PATH(Путь) - Юдоль скорби - Семигласие смерти ★★★ (2021-02-19 22:46:04)

トレモロリフによるシンフォニックブラックでありながら、濃厚にドゥーミーなリフ、アコーディオンがアヤしく絡む様が素晴らしい。
カラスが飛び交うジャケ絵の世界観そのままに、瘴気に満ちた死臭が漂うサウンドに圧倒される。
8分超えの大作で、アルバム中この曲が特に素晴らしい。負のオーラがありながら叙情性に富み、とてもドラマチックだ。


PATH(Путь) - Юдоль скорби ★★★ (2021-02-19 15:57:41)

ロシア産シンフォニックブラック2020年作
5曲入りEP、フルレングスアルバムではないから少々物足りなさはあるが、素晴らしい作品だ。
前作Песни смерти (2018年)は、オーソドックスなシンフォニックブラックスタイルが基本でありながら、アコーディオンが登場した途端に
独自の世界に一変する作風がかなりツボにハマった。楽曲が若干弱いかなと感じつつも、唯一無二の独創性と寒冷地の叙情と危険臭に魅入られた。
今作は荒涼とした草原と馬車、遠くの夕焼け、上空の闇夜にカラスが飛び交うジャケが素晴らしく、荒廃的で死臭が漂う感じがこの音楽性にジャストフィットだ。
前作同様にアコーディオンが大胆に導入されている。絶妙な歪みのギターとアコーディオンのハーモニーが、荒涼とした大地と田舎臭さを醸し出し
更に、ブラックスタイルにとどまらないアコースティックギターが絡むと、非情に濃いカルト臭・死臭が漂ってくる。
前作で若干感じた楽曲の弱さは無く、完成度が高い。不穏な響きを奏でるコードワーク、練られたリフ、語り口調のヴォイスの導入など、随所に工夫が見られる。
単に森林を思わせるブラックは多いが、それにとどまらず、攻撃性が強めでありながら、叙情と死臭が感じられる作風はこのバンド特有の世界観だ。
激しさがあるものの、サタニックブラックで良く感じられる誇張された魔性やわざとらしさ、コマーシャルな感じの凄みが感じられず、自然体なところが良い。
コレは今後のフルレングスアルバムに相当期待してしまう。前作と併せて猛烈にオススメしたい盤だ。


CADAVER - Edder & Bile ★★★ (2021-02-19 00:05:17)

ノルウェー産デスメタル2020年作
実に16年ぶり・・とはいえ、「...IN PAINS」(1992年)購入当時以来、存在自体忘れていたバンド。16年前の作品も全く知らない。
「...IN PAINS」時代は、ウッドベースを取り入れた異色ユニットに興味を持ち愛聴していた。Carcassのビルスティアーに一目置かれたバンドでもあり
ゴアテイストなコンセプトを感じさせる世界観だったが、そのワリに攻撃力が無く当時のデスメタル群と比較してもB級以下の扱いで止むを得ない感はあった。
ゴアリーなデスメタルかつB級というと、同時期のバンドではCancerあたりを思い浮かぶが、そこまでのゴアテイストすら感じられなかった中途半端な作風。
とはいえ、地味な音響とは裏腹に、その編成と楽曲からは何か新しいサウンドを期待させるモノがあったと記憶している。
我が家のコンテナのどこかに収納されていると思うが、もはや20年以上聴いていない。その後バンド名を変えて活動していたことは、この記事を書く前に
ネット情報で調べて知ったが、今現在まで活動して作品を出していることにとても興味を持ち、試聴した内容が想像以上のクオリティでゲットしてみた。
どうやらオリジナルメンバーは1人で、メンバーは一新されているようだ。ジャケのチープなガイコツオブジェのB級テイストで、中身が大丈夫なのか心配になるが
基本オールドスタイルのゴアリーなデスメタル路線に、更に攻撃力を増すブラストを織り交ぜた、極上のデスメタルだ。
録音状態が非常に素晴らしいと感じる。硬めの音質のドラムが心地よく、抉るようなギターが突き刺さる。「...IN PAINS」時代に新しい作品を作ってくれると
期待させた空気は、この作品で聴かれる独創的な楽曲やアレンジに発揮され、現実のものとなったなぁ、と感じている。
当時感じた物足りなさは一切無い。円熟したとても聴き応えのある作品に拍手を贈りたくなる。古学校死フリークは必聴盤だ。


TRIPTYKON - Requiem (Live at Roadburn 2019) ★★ (2021-02-11 23:22:38)

スイス産ダークアンビエント2020年作
ロードバーンフェスティバルのライブを収録した作品で、Celtic Frost時代のRequiem2曲と新曲1曲を、リアルオーケストラを携えて演奏している。
少なくともTom Warriorの癖のある歌唱とズブズブ感を伴うエクストリームメタル要素は殆ど無く、ヘヴンリーヴォイスの女声ヴォーカルによる
ゴシック路線、ダークアンビエント路線という新境地に挑戦した作品だ。メタルサウンドを期待していると肩透かしを食らうだろう。
邪悪で醜悪な個性は秀でているかなと感じないでもないが、メタル色がここまで薄まり、クラシカル要素が前面にでてしまうと、比較対象は
宗教音楽・教会音楽ルーツのダークウェイブ路線になってしまうが、そちらを専門とするアーティストの足元にも及ばないと言わざるを得ない。
やりたい音楽がそうだったんだから仕方ないだろうが、本来持っている唯一無二のヴォイスパフォーマンスとエクストリームサウンドに代わる魅力があるかというと
残念ながら新たな魅力よりも、喪失感の方が大きい。新曲はなかなかの大作で、聴き応えがない訳ではないが、耽美が前面に出て魔性は感じられない。
ボクが魅力を感じるところは、CELTIC FROSTのINTO THE PANDEMONIUM (1987年)のRex Irae (Requiem)を再現しているところだ。当時この盤は賛否両論の問題作
だったと思うが、従来のエクストリームメタル度が低下しゴシックダークウェイヴテイストをデジロック風に織り込んだ作品は、ボクは結構ツボにハマった。
そのサウンドをリアルオーケストラで再現した作品(1曲目)に、懐古の情とクオリティの高さを感じる。それ故に、後続の新曲はイマイチ嵌りきれない。
ラストはMONOTHEIST (2006年)のTriptych: III. Winter (Requiem, Chapter Three: Finale)をリアルオケで再現しているが、そもそもこの曲を再現することに
あまり意義を感じない。この盤はファンディスクとしてゲットしなくてはいけない盤だったが、たぶんあまり聴かなくなるだろうな、と思っている。


FREEWAYS - True Bearings ★★★ (2021-02-07 02:52:46)

カナダ産NWOTHM2020年作
今年に入ってゲットした作品ですが、2020年作品中ベストアルバム候補に推奨したい素晴らしい作品だ。昨年ゲットしたPOSSESSED STEELの作品に感銘を受け
リリース元のカナダのTemple Of Mystery Records作品を漁っていた時に発見した作品。雪景色にキャンピングカーのような車輛が描かれるジャケに
購入当初はあまり興味をそそられず数日放置していたが、味わい深いロックサウンドにモーレツにハマってしまった。今ではそのジャケが何故か美しく見える。
同レーベルから作品をリリースしているPAGAN ALTERや、ヴォーカルの声質からWITCHCRAFT処女作(2004年)の音楽性が非常に近いが、もう少しヘヴィさがあり、
JUDAS PRIEST「Sad Wings of Destiny」(1976年)や、BLUE OYSTER CULT「Secret Treaties」(1974年)あたりのハードさ・空気感を併せ持つサウンドだ。
Witchcraft処女作的な湿り気と翳りをベースにしたサウンドと、70年代クラシックロックで特にヘヴィさが際立ったJUDAS PRIESTやBOCのようなハードさが
見事に融合されている。恐らく全く無名なバンドと思うが、このサウンドは耳の肥えた年配ハードロッカーに是非聴いてもらいたいと感じさせる作品だ。
頑固なオヤジロッカーは、この例えに「全然違うじゃん!」と言うかも知れない。70年代を知り尽くしているオヤジロッカーなら、JudasやBOC以外の適切な例えが
きっとできるだろうが、70年代は後追いのボクにとっては、この例えが精一杯。ただ、同時期のヘヴィさを際立たせたサウンドが蘇った感触というのは確かだ。
浅めの歪みで奏でられるギターのリフと、コードをジャーンとストロークした時の重厚な歪みのバランス感覚が素晴らしく、職人の域に達している。
印象に残りやすいキャッチーな旋律と、作り込まれた楽曲、シットリ感あるヴォーカル、味わい深いコーラスワーク、もう完璧っす。
ただ、フルレングスアルバムにしては、30分チョイの収録時間は短い。そこは物足りない。
レーベルのショップにこのジャケのTシャツが売ってるんだが、かなり欲しい。それくらいこの作品を気に入ってしまった。


POSSESSED STEEL - Aedris - Nobunaga ★★★ (2021-02-01 20:42:01)

タイトルの通り、織田信長をテーマにしたサウンドだ。とりあえず歌詞冒頭をボクなりに訳してみると・・
「悪魔と共謀して、すべての土地を征服する。彼の心は悪に満ち溢れ、彼の意志は日本を再創生する」という感じか。
オーストラリアのTZUN TZU (2012年)が、本能寺の変を思わせるジャケで和を感じさせる作品を残しているが
こちらはストレートに織田信長を題材に、しかも相当悪魔的にデフォルメされた信長がNWOTHM的サウンドで描かれる。
織田信長は戦国武将であり、決して悪魔に心を売ったワケではないと思うんだが、戦国無双のようなゲームや時代劇アニメが
カナダ人に独特の織田信長観を植え付けてるんだろうなと思った。
入魂の作り込まれたカッコいい楽曲で、この人たちのダークヒーロー信長愛が強く感じられるな。


POSSESSED STEEL - Aedris ★★★ (2021-02-01 20:11:23)

カナダ産エピックメタル2020年作
最近はいろいろ試聴していると、PCが勝手にオススメ盤を教えてくれる。AIというヤツなのかね。コレが結構ストライクゾーンを突いてるからスゴイ。
昨年末、この作品がオススメとしてPCにメッセージが届いた。きっと森メタル系の試聴を多くしていたから、コレがヒットしたんだろう。
翻訳はしていないが、歌詞を見た感じでは、森の守護者が死の森を抜け、ラスボスのいる領土にてスケルトンキングを打倒する、といったストーリーか。
そんな壮大など真ん中エピックファンタジーをコンセプトとした9曲と、ボーナストラックかつ迷曲である「Nobunaga」が収録される作品だ。
起承転結が判りやすい作り込まれた楽曲、ツインリードで聴かせるギター、多彩なリフを繰り出すドラムなど、曲構成とアレンジが素晴らしい。
コレがエクストリームなパキパキのザックリ感あるエフェクト処理が施されていたら、ファイティングスピリット満点の激アツエピックメタルなんだが
クラシックロックとも言える程に、必要最小限な音加工、歪みに関してはもはやノーエフェクトに近い音像で、これが森メタルな味わいとなっている。
この音響に味わいを感じることができるか、ヘヴィさが足りないと思うかで、評価が分かれそうな作品だ。ボクはこの味わいがツボにハマった。
スピーディーに刻むリフも多くあるが、ギターが歪んでいないせいか、突っ走る感じにまで聴こえず、落ち着いた雰囲気に聴こえるところがイイ。
好みが分かれそうな盤だが、昨年ゲットした盤ではかなり上位にランキングするクオリティだ。森フェチなメタラーは是非ゲットしてみて欲しい。、


BATHORY - Requiem ★★★ (2021-01-28 00:19:35)

スウェーデン産スラッシュメタル1994年作
そもそも大作主義のヴァイキング作品にこそBATHORYの魅力を感じるので、コレが発売された当時(大学生頃?)は喜び勇んでタワレコでゲットし
予想外の作風にかなーりヘコんだ思い出がある作品。そういうこともあり、レビューすらしていなかったが、この作品は独創性という点で魅力的な作品。
破天荒・豪胆がウリのクォーソン大先生が、スラッシーな作品を作れば、それはそれで、他のバンドの追随を許さない個性派作品になってしまう。
ただ、当時はまだまだ希少だった唯一無二のヴァイキング作品から一転、ハードコアパンクルーツのスウェディッシュデスメタル的スタイルに
近づいた点は、とてもガッカリ感があったと同時に、この作品自体にはデスメタル的激しさが無いにも関わらず、他のスウェディッシュデス以上の
インパクトを備えていたところに凄さを感じたものだ。


REVERSED - Widow Recluse ★★★ (2021-01-27 23:47:35)

カナダ産デスメタル2018年作
コレは2018年にカセットテープでリリースされた作品で、翌年その音源がCD化された。メンバーを調べてもその活動経歴はさっぱりわからず
もしかしたら、新人バンドなのかも知れない。近年のブルデス路線はボクにはしんどいし、デスメタル自体オールドスタイル派なんですが
この作品は決してオールドスタイルではなく、ブルデスとも言えない。カナダ産でありながら、ハードコアルーツのニオイがするスウェディッシュデス的激しさと
フィンランドっぽい濃さが融合されたかのような、破天荒で邪悪度MAXな感じ、更にテープ音源のローファイ感が真性さを上乗せした感じが優秀な濃いデスメタルだ。
女性のカオをした蜘蛛や謎のイキモノが気持ち悪く描かれるジャケ、このデモテープ時代によくあるローセンス感とチープさがたまらなくイイ。
バンド名の由来はわからないが、まるでゲロをリバースしたかのように思ってしまうバンド名と、この気色悪いジャケのインパクトは大きい。
サウンドの方は、全く整然としていない爆裂ズトボコ感・バタバタ感のある手数の多いドラムと、ガムシャラに激しく掻き鳴らされるギターが魅力。
シンバルがビシバシ鳴る感じや、音が割れてそうで割れていないギリギリな感じ、ゴリ押しに突っ走って無茶苦茶に掻き毟るようなギターソロを奏でる感じなど
醜悪さと真性な魔性・背徳感を前面に出し、キレ気味のやり過ぎ感満載のグルーヴが全体を支配するサウンドだ。
ボクは近年の精密機械のように音数を詰め込んだブルデスに魅力を見出せないが、こういう独特なタイム感・グルーヴを持つサウンドにはとても惹きつけられる。
ENTOMBED「LEFT HAND PATH (1990年)」、BATHORY「REQUIEM (1994年)」あたりのスウェディッシュ風味を持つ、当時としては他国デス路線とは一線を画した
破天荒さを備えたデスメタルを聴いた時の感覚が、更に邪悪度を増して現代に蘇った、という感じで、かなりツボに入ってしまった。
決してオールドスタイルではないが、デスメタル黎明期頃にスウェディッシュデス路線にハマった人は是非聴いてみて欲しい。相当ツボにハマる筈だ。


EORONT - Gods Have No Home ★★★ (2021-01-22 00:50:38)

ロシア産ブラックメタル2020年作
処女作Neverending Journey(2013年作・未所持)は当時購入を悩んで何度か試聴した程度の知識しかないが、真面目でストレートなシンフォニックブラックだ。
通算4作目にあたる今作を発見し、処女作からどれだけ変化したか試聴してみたところ、想像以上のクオリティの高さから、ゲットしてみた。
また、購入検討中に、前作Another Realm(2017年作・未所持)とも比較してみたが、前作の自然崇拝的テーマと雰囲気が、更に円熟したような完成度を感じるところだ。
適度なザラザラ感のあるギター、トレモロリフで疾走するパートとミドルテンポを織り交ぜたオーソドックスなシンフォニックブラックだが、妙に惹きつけられるモノがある。
このバンドはFoltath Eternumという人物を中心としたバンドで、ギター・ヴォーカル・シンセ・プログラミングを担当している。しかし、今作クオリティの底上げを
している大きな要因は、ボクが一目置くバンドAlleyのギタリストEgor Moskvichevがアコースティックギターとサウンドアレンジで参加しているところじゃないかと思う。
また、このサウンドのコンセプトとして、ウクライナ出身の詩人Maximilian Voloshinの詩を歌詞に採用しているようだ。まあ、その詩を翻訳する気にはならないが
ロシアの史実をテーマにしたヒューマニズムに寄った詩人ということと、土着的・神話的な楽曲タイトルから、その世界観を想像しながら聴くのが良い鑑賞方法だ。
このサウンドは自然崇拝ブラック寄りではあっても、霧や森林を感じさせるサウンドとまではいかず、そういう雰囲気を仄かに漂わせたオーソドックスな音響で
霧の雰囲気を残響音で誇張させる感じは無く、低音部分もしっかり聴こえるところはむしろ好感触。純粋に刺激的なブラックメタル様式の演奏と音作りが魅力だ。
更に、Egor Moskvichevのアコギの存在感が程よいスパイスとなっている上、彼の持ち味である非メタル的なシットリした雰囲気が見事に融合されている。
ちなみにFoltath Eternumのサイドプロジェクトと思われるFrozenwoodsというバンド作品の方が自然崇拝度は高い。が、こちらはまた一口で語り尽くせない音楽性で
一般的な自然崇拝ブラックとはまた一線を画す作風だ。たぶん、無名なんでしょうが、ここのところ、彼の作品、関連あるアーティストの作品に注目しているところだ。


ALLEY - Amphibious ★★★ (2021-01-21 23:12:12)

ロシア産プログレッシヴデスメタル2013年作
購入から7年が経つが、頻繁に聴こうと思う盤ではない反面、その存在感の大きさから長年コンテナお蔵入りにならず、手に届く棚には常にあるという盤。
オーソドックス路線からは外れた、プログレデスにゴスロック要素を加えたような、なかなか掴みづらい、敷居の高さと気難しさを伴う音楽性だ。
普段贔屓にしている(というよりほぼ全買いしている)ロシアンアヴァンメタル方面で異端作品が多いBadMoodMan Musicレーベルの作品だけあって強力な盤だが
決して音圧で押すタイプでなく、突拍子のない作風ではないのに、なかなかスッと受け入れ難い独創性が、ボクには何故か結構な疲労感となる。
そういうワケで敬遠しがちだが、ロシア産ではずば抜けたホンモノ感、存在感のある作品だ。コレきっとアゴ氏あたりの好みにどストライク路線だろうと思う。
処女作であるThe Weed(2007年作)のプログレデスの作風の延長上にある。前作の方がシンプルで判りやすかった半面、今作は濃さが倍増したかのような感じだ。
なかなか説明しづらい音楽性だが、その世界観はストレートにジャケに表現されていると感じさせる。大地・天体を背景に瞑想する初老男性の顔面が油絵調で描かれる。
基本は起伏ある展開をするデスメタルだが、その楽曲は大作主義で、特有の浮遊感があり、デスヴォイスとクリーンヴォイスの使い分けにエモさが存在する。
1995年から2000年頃によく聴かれた脱メロデス・脱ゴシック路線バンドの要素、ゴスメタル的なスパイスが結構感じられる。また、デスメタルとはかけ離れた
ジャジーなアコギの旋律、多彩なドラミングが、大胆に融合されている。その部分は米MAUDLIN OF THE WELLのアヴァンギャルドに非常に近い。
知的さに溢れるその音楽性&世界観に浸ることができるか、敷居の高さに突き放されるか、で評価がきっと分かれるだろうと思う。
ボクは結構疲れるのであまり聴かない。ただ、この先、その捨て置けない魅力から、コンテナお蔵入りになることはなく、ずっと棚に常備はされていくんだろうと思う。
無名バンドだろうが、その底の知れない独創性、高いポテンシャルに、ハマる人には神盤になるんじゃないかな。


PATH(Путь) - Песни смерти - Культ 1: Огни далёких холмов ★★★ (2021-01-13 12:05:55)

ギターピッキングのアタック音を故意に際立たせた感のあるアコギと、音割れ寸前まで際立たせたアコーディオンから始まるナンバー。
その禍々しさを保ちながら、疾走感溢れるブラックメタルに突入する感じが素晴らしい。非常に完成度の高い楽曲だ。
耳に障るキツめの中・高音部が禁忌に触れた感覚を呼び起こす。恐らくこの曲と次の曲は、ナンバリングされている曲名から、組曲として解釈して良さそうだ。
次の曲への伏線というよりは、この楽曲自体の完成度が高いと思う。


PATH(Путь) - Песни смерти ★★★ (2021-01-13 11:32:59)

ロシア産ブラック2018年作
アルバムタイトルの英訳はたぶんSongs Of Death、日本語訳は「死の歌」だろう。
この作品を知ってから約1年くらい経ったと思うが、価格が下がるのを待ち続けるも、新作EPがリリースされてしまったので、手に入らなくなる前に高額でもゲット。
送料込みで88ユーロ、CD1枚に1万円以上散財したのは久しぶりだ。デジタル作品だと安価なんだけどやっぱり味気ないので、CDで手元に置いておきたい。
ネット情報でいろいろ調べると、世間評は抜群にいいという程ではなさそうだが、結構な高評価。サウンドクオリティもさることながら、ジャケデザインの素晴らしさ
が10年に1枚レベルのハイクオリティだ。針葉樹に雪が降り積もる雪山、1軒の簡素な家、木柵に頭蓋骨が2個、ローブを纏った骸骨がアコーディオンを奏でている。
そんな寒々とした雰囲気漂う地で、アルバムタイトルでもある「死の歌」を骸骨が奏でている光景が、油絵調のタッチで描かれている。
沢山の針葉樹が生えているように見えるバンドロゴといい、描く世界観がどストライクですよ。ちなみにこのバンドロゴのシールがオマケでついてきてちょっと嬉しい。
PCで鑑賞していた頃は、音響的な素晴らしさが伝わってこなかったが、実際にプレイヤーで鑑賞すると、万全な音響で、ブラックメタルでは薄くなりがちな低音部が
音割れもなく図太い重低音で聴ける。サウンドスタイルはギターとヴォイスがオーソドックスなブラックメタルスタイルだが、ややヘヴィメタル寄りな曲構成である。
強力な独創性として挙げられるのは、ジャケデザインにもあるアコーディオンの存在だ。アコーディオン導入部分は多くはないが、このパートが登場した途端に独特な
空気に包まれる。極寒を思わせるシンセ、アタック部分を意図的に強調した生々しいアコギなど、寒冷地の叙情を盛り立てる要素を絶妙に導入しているところも素晴らしく
総合的にクオリティの高い濃いブラックメタルを展開する。ギターは残響音が浅めで標準的な歪みだが、ベースの重低音が際立っているので音の輪郭が判りやすくて良い。
演奏は若干走り気味なタイム感がむしろ豪胆に感じられて、粗削りさがむしろアングラ臭と勢いを感じさせ、独特なグルーヴを生んでいると感じる。
世界観と音がバッチリ一致してて、サウンドクオリティが高い盤だ。全ての楽曲が素晴らしいとまで言い切れないところが玉に瑕ではあるが、そんなのは些細な事。
漂う雰囲気・寒冷地の叙情とイーヴルで豪胆な感触が弱点を全て打ち消している。ちょっとコレはボクにとってお宝作品になりそうである。


SHATTERED HOPE - Vespers ★★★ (2021-01-13 03:15:20)

ギリシャ産フューネラルドゥーム2020年作
6年ぶりの新作、処女作Absence(2010年)をゲットした頃は、そのオーソドックスで無個性な感じから、優秀だけどフェイバリットバンドとまではいかなかった。
前作(2nd・Waters Of Lethe・2014年)は、処女作の延長上にある音楽性ではあったが、フューネラル度がアップし、ホンモノ感が増した好盤だった。
とはいえ、他バンドとの差異化という点では、百凡の同系バンドに埋もれそうな無個性に、危機感を感じるサウンドだった。そうは言っても前作は結構な愛聴盤になった。
オーソドックスな路線を貫き、音響的クオリティをアップさせた感触が結構ツボにハマったからだ。新作には、更なる進化というよりは、新要素を加えない深化を望むところ。
リリース元のSolitude Productionのショップでゲットしたんですが、結構大々的に宣伝してるあたり、猛プッシュしたいバンドなんだろうなと思う。
ただ、ボクとしては一応★★★としたが、ギリギリラインといった感じ。音響的な雰囲気はイイ感じに高止まりな印象、ただ作品全体としては、ボクは前作の方を推したい。
多くのフューネラルドゥームバンドが失敗するパターンとして、力作を創り上げようとするあまり、音を詰め込み過ぎたり、より凄みをきかせようとしたりすることで
本来このジャンルに求められる淡白さや静けさが失われてしまう、という失敗をしていることがある。今回この作品については、ちょっと音数が増えた印象を持ったことと
ギターを垂れ流した方が雰囲気が良いのに、刻んでしまったなー、と思わせるリフが散見する。そもそも、処女作がそういう作風で、2ndでその問題が解消した感があるので
処女作にあった不満点を再び抱えてしまった、と思っている。バンド名の直訳が「打ちひしがれた希望」なんだから、刻んで躍動感を出してはダメだよ。
グダグダにドロリーンと垂れ流して無気力な人生残念感を出して欲しかった。ただ、この作品と前作を何度も聴き比べたことで、前作のクオリティが相当高かったことを
再確認できたな、と思っている。ポテンシャルは高いバンドだ。次作に期待しつつ、今作ももう少し聴いてみようと思う。ダメ出ししたけど、良い作品だよ。


DOOMED - 6 Anti-Odes to Life ★★★ (2021-01-07 00:37:06)

ドイツ産ドゥームメタル2018年作
このバンドの作品は、どの盤も高い完成度で聴き応えがある。半面、そのスタイルはワリとどの盤も同路線を貫いている。
緑を基調としたジャケデザインは、初期から今作まで貫かれており、スタイリッシュさ、カッコよさがある。
このバンドのサウンドは、適度な歪みのギター、重低音のベース、芯のある適度な圧のドラムが、最適な音響で聴ける。音作りの巧みさが光る。
非常にヘヴィであっても、音が音像に紛れてしまうことが無く、旋律がくっきりと聴きとれる。適度な残響音も万全だ。
そういう完璧な音響はあくまで前提であって、アヴァンギャルドな曲構成が最大の魅力だろうと思う。しかし、このアヴァンギャルド加減が説明しづらい。
決して、既存のドゥームメタルスタイルに新しい演奏様式を盛り込んでいるというワケではない。曲の構成・アレンジが独創的なのだ。
ドゥームメタルスタイルではあるものの、ブラック的トレモロリフ、ツーバス、鈍重過ぎない多彩なリズム、単調ではないコード進行など
作曲に学があるのかと思わせる高い楽曲クオリティがある。万全な音響と書いたが、元来ドゥームが持つ音響の微妙な変化云々の魅力以上に、楽曲アレンジが
素晴らしい。また、旋律が音像に紛れることがないので、その旋律が印象に残りやすい。アヴァンギャルドであっても、このサウンドはドゥーム上級者向けではなく
ダークサイドの音楽がOKなメタラーであれば、誰にでも受け入れられそうな旋律のキャッチーさがある。濃いサウンドなのに、その間口は結構広いだろうと思う。
万全な音響と楽曲で、陰鬱になり過ぎない力強さで、イーヴルな世界を描いている。ずっとこの路線なので新要素を期待しないでもないが、このカッコよさを
これからも追求していって欲しいと思う。


OZZY OSBOURNE - Ordinary Man ★★ (2021-01-06 22:50:13)

UK産ポップロック2020年作
ミスマッチなメンバーから、購入意欲が沸かず、購入を後回しにしてたら発売から1年が経ってしまった。ただ、殆ど期待していなかったワリに
予想を超える完成度で、Ozzyという人は何をやってもスゴイ人だなぁと感じてしまう。新ギタリストのAndrew Wattがナニモノなのかさっぱりわからないが
少なくともDuff McKaganが参加し、ゲストにSlashも名を連ねているのだから、Black Sabbathのような英国情緒やホラー風味は全く無い。
妙にアメリカナイズされたサウンド、LAメタルを思わせる作風も登場し、コレは違うだろ・・と思わないでもない。しかしながら、HR/HMにハマり始めた初心者時代
若く感受性が多感な時代に出会ったビッグネームのコラボは◎。ワリと教科書通りな産業音楽的な曲構成、演奏が放つ華やかさに、80年代のノスタルジーが感じられる。
Ozzyも70歳代、上の書き込みで引退宣言を知ったが、丁度この盤が発表された頃にパーキンソン病闘病中を公表したあたり、引退宣言はとても信憑性がある。
しかし、この年齢で、昔と変わらない力強い声量・歌唱力を維持しているところがスゴイ。Ozzyのロック人生晩年はサバス路線あるいは英国情緒のロックで締めて欲しいが
まあ、そうならなかったのなら仕方がない。HR/HMの一時代を担ったOzzyをリーダーとする、ロック集大成サウンドとして聴けば、結構楽しめる作品だ。


SLAMMER - Nightmare Scenario ★★★ (2021-01-04 19:31:52)

英国産ヘヴィメタル1991年作
我が家のコンテナ奥深くのどこかに眠っているが、お払い箱になるようなサウンドではなく、割と完成されたカッコ良さのあるサウンドだ。
ジャンル分けはどちらかというとスラッシュメタルとして浸透していたと思う。この盤はスラッシーに疾走するパート8割とミドルテンポでリフを刻むパート2割で
構成される楽曲群で、純粋なスラッシュメタルの楽曲もあれば、ドゥーミーなテイストが仄かにあるミドルパートをメインとした曲もあるといった感じの音楽性。
一口で言えば純度の高いヘヴィメタルだ。楽曲構成力が高く、複雑怪奇に展開するスラッシュが好みというリスナーのツボにもハマるんじゃないかと思う。
購入は大学入学頃だったと思うが、高校時代にMetallicaのコピーバンドをやっていたこともあり、ヴォーカルスタイルと楽曲の組み立て方、ミドルで奏でるドゥーミーリフが
Master of Puppetsの頃のMetallicaに通じるものがあると感じ、愛聴した思い出がある。
また、ベースを前面に出す感じとディミニッシュコードで構成するリフ部分は、Anacrusisを彷彿させる瞬間があり味わい深い。


ASSASSIN - Bestia Immundis ★★★ (2021-01-04 00:29:17)

ドイツ産スラッシュメタル2020年作
デスメタルが幅をきかせて随分前に全盛期を過ぎた感のあるスラッシュメタルはボクもあまりゲットしなくなったが2020年はジャーマンスラッシュがアツかった。
スラッシュ全盛期当時にB級路線に位置していたバンドは結構現在も活躍してて、円熟したスラッシュメタルをやっている。そういうバンドは懐古の情も手伝って
安価で売ってる時にチョイチョイ購入しライトに楽しんでいる。が、このアルバムは予想以上にツボにハマり、ボーナス支給時に2000円以上支払ってゲットしてしまった。
スラッシュ全盛期頃のボクは、米Massacreと独Living Deathを、突進型B級スラッシュ御三家と認識して楽しんでいたが、MassacreもLiving Deathもいなくなった現在の
比較対象はやはりSodomだろう。また、全盛期にはまだまだ肩を並べられる存在に無かったAccuserも活躍しており、突進型ジャーマンスラッシュシーンは結構面白い。
2020年はこの3バンドが新作をリリースしており、結構な胸アツな感じである。この3作品はいずれも納得のクオリティにある。が、一つ選ぶとしたらAssassinに軍配。
ボクは、全盛期頃に既に安定のクオリティにあったと感じるSodomに対し、不器用で爆発的な勢い任せのサウンドがウリのAssassinの方にB級愛を注いでいる。
また、迷曲「Baka」のイメージもあり、ただ若くバカっぽく突進するサウンドにやたらB級愛を感じさせたバンドである。復活作THE CLUB (2005年)ではその破天荒さが
若干失われたことで、一気にB級愛が冷めてしまって、早々に見限り、以降スルーしていたが、この新作は、経年で若さこそ感じないにしても、その突進力は半端ナイ。
突進力という点ではSodomの新作も甲乙つけがたいが、やや古典的スタイルを逸した感のあるSodomに対して、不器用な突進型スタイルを堅持している点がボク好みである。
また、Accuserのクオリティも高かったが、やたらカッコいいツインリードのようなコマーシャルなモノをふんだんに盛り込んでいる。それはそれで良いんだけど
そういう煌びやかな演奏ではなく、突進力を前面に出し、ギターソロはガムシャラに疾走感を盛り立てているAssassinの方がボクはツボにハマるんだよね。
世間評はきっとSodom>Accuser>Assassinなんじゃないかな。ボクの順序はその逆だ。一時期見限ったバンドだが、アツいサウンドに愛情がまたジワジワと湧きつつある。


CELESTIIAL - Where Life Springs Eternal ★★★ (2021-01-03 02:16:14)

米国産フューネラルドゥーム2010年作
発表から10年経ったが、たまーにこの音が欲しくなって聴いている。かなりドローン寄りのドゥームだ。
崖に水が滴り落ちる滝のジャケ、ケースを開くと、植物の実写。ジャケデザインからは明るめの大自然をイメージさせるが
サウンドの方がかなり濃い鈍重垂れ流しドゥームだ。ヴォーカルはカオティックに絶叫しているが深めのエフェクトで他の音と一体化している。
コードのテンション部分の倍音を強調させ、ロングトーンノイズにゆるやかな揺らぎをもたせることで独特の浮遊感を創っているが
かなり深めのリバーブを使用し、水を感じさせるサウンドスケープを織り交ぜることで、まるで水琴窟にいるかのような感覚になるという
一風変わったオンリーワンなサウンドだ。万人にはオススメできない上級者向けだが、ハマれば没入感は高め。
次作を期待しつつも、10年経ってしまったので、もう活動していないのかも知れないね。


MONASTERIUM - Church of Bones ★★★ (2021-01-01 12:09:52)

ポーランド産ドゥームメタル2019年作
バンド名は日本語訳で「修道院」、石造建築の中央に骸骨が描かれ、アルバムタイトルが示す通り、骸骨の教会といった判りやすい世界観。
CandlemassやSolitude Aeturnus路線のエピックドゥームに非常に近い音楽性で、特にヴォーカルはCandlemassのMessiah Marcolinを彷彿させる。
音程がズレがちで、カリスマ性を備えたMessiah Marcolinに比べると二番煎じと思われても仕方ないかもしれないが、ボクはこの歌唱は嫌いじゃない。
じっくりミドルテンポで聴かせるドゥーム寄りヘヴィメタルだ。ギターの質感がメタリックではなく適度に歪んだドゥームロック寄りな感触が良い。
この路線にありがちな派手なツインリードやピロピロ弾きまくるギターソロが無いのが良い。ギターが地味すぎず目立ちすぎずなのはポイント高い。
探せばこういう路線のメタルは結構あると思うが、派手なギターパフォーマンスや無駄に疾走してしまって雰囲気を壊していると思うバンドが多い中
このバンドの演奏様式には、そういうボクがマイナス要素だと感じるような欠点が全く無い。雰囲気と楽曲重視のサウンドが素晴らしいのだ。
ゲットしたのは昨秋だが、昨年手に入れたSolitude Arturnus路線ではナンバーワンのクオリティだと感じている。超オススメ!


BENEDICTION - Scriptures ★★★ (2020-12-31 00:17:13)

UK産オールドスクールデスメタル2020年作
90年代初頭のNuclear Blastのロークオリティ録音が放つポンコツB級デスメタルは、当時の一線級デスメタルとは到底肩を並べられるシロモノではない代わりに
その特有のローファイ感と底辺のデスメタルが持つ世界観が絶妙にマッチして唯一無二の独創性を放っていた。未だにBenedictionはゲットし続けているが
やはり初期3作品のインパクトには到底敵わない。流石に30年も経つと、録音状態も演奏技術も相当高くなり、未完成だからこそある不安定で無骨な味わいは損なわれた。
化石のようなB級デス路線を逸して、ラウドロック的な新境地が見え隠れした時期があり、その古典的魅力が危ぶまれたこともあるが、再びあるべき形に回帰した。
少なくとも、この12年ぶりの突然の新作は、昔ながらのバンドロゴと、ローブを纏った人物、十字架を持った人物や獣、骸骨、稲妻、背景の朽ちた建造物など
オールドスクールデスの鑑とも言えるレトロ感がふんだんに詰まったジャケが非常に美しい。長いブランクを挟み、この路線で新作を出してくれたことが嬉しい。
もはやこのバンドに過去のローファイ感やポンコツ感といったノスタルジーに浸れる作風を求めるのはナンセンス。不器用なB級デスメタル路線であればボクとしてはOKだ。
そういう視点で評価すると、この作品は100点満点だ。B級路線を脱出しようとする新境地を模索するようなサウンドであれば、このバンドは全く面白くない。
超絶なハイテクではない、適度なズトボコビートが突っ走る感じ、いかにもB級デスっぽい凄みを効かせるヴォーカル、トリッキーになり過ぎないギターワークなど
B級デスメタルが備えるべきクラシックスタイルのど真ん中の音楽性を堅持しているところが素晴らしい。こういうデスメタルは今の時代、なかなかお目にかかれない。
劇的に展開するようなことはなく、一本調子に同一コードで突っ走る感じが、このバンド特有の個性で、相変わらず展開下手スキルが発動しているなぁと嬉しくなる。
デスメタル黎明期を支えたB級路線のサウンドが、時間をかけて熟成され円熟した感のある作品。古学校死サウンドの教科書と言っても過言ではナイ。
デスメタルが多種多様に変化したからこそ、こういう頑固なクラシックデスメタルの存在感が際立つ。こういうアツい古学校死愛の濃いサウンドはひたすら追いかけたいね。


ONI - Ironshore ★★★ (2020-12-30 00:12:42)

カナダ産プログレッシヴ・パワーメタル2016年作
丁寧に加工し尽された感のあるMetalBlade作品はオリジナリティを削いでいると感じることが多く、近年敬遠しがちだが、和メタルネタバンドは
買わないワケにはいかないのでゲット。が、鬼の像が海岸に座するジャケから、和を感じさせるメタルをイメージしてしまうワリに、サウンドに殆ど和要素は無い。
また、鬼というバンド名らしいパワーは感じるが、日本人の「鬼」に対するイメージとは対極にある、どちらかというと近代的でスタイリッシュなサウンドだ。
日本で有名なのかわからないが、海外サイトを見る限り結構微妙な評価なようだ。しかし楽曲の作り込みと相当高い演奏技術はもっと評価されていい、と思う。
安定感が心地よいリズム隊、超絶技巧をひけらかすベース、複雑怪奇なリズムを刻むギター&シンセ、ハイヴォルテージなヴォーカルが目がぐるしく展開する。
そんな音楽性だから結構疲れるかと思いきや、ジャスト感抜群のリズム隊のおかげで結構聴き易い。ただ、複雑な楽曲が耳に馴染むのに相当時間がかかる。
そういうサウンドだが、このバンドの大きな特徴はシンセが一般の鍵盤ではなく、シロフォンシンセを使用しているところだ。ただ、サウンドを聴いただけ
では、その凄まじさはわからない。動画を検索してみて欲しい。メタルでシロフォンシンセを使うバンドは初めて見るが、複数のマレット(打鍵する棒ね)を
駆使して演奏する姿は、視覚的なインパクト大だ。
ドリームシアターのようなギターとシンセの絡み合う感じがツボ、かつ、複雑に展開するスピード寄りパワーメタルがツボ、というリスナーはハマるんじゃないかな。


GLOOSH - Timewheel ★★★ (2020-12-29 12:43:30)

ロシア産独りブラック2020年作
まずジャケが優秀だ。植物と同化している老人や鳥、鬱蒼とした森と山岳をイメージさせる上、細やかな線を活かした独創的な画風が良い。
ジャケを開いた中身も、盤上にも同様のイラストが描かれ、CDをプレイヤーに入れる前段階でどんな森ブラックなのかワクワクする。
アトモスフェアブラックと言える作風だが、残響音は他の森林崇拝ブラックに比べて若干浅めだ。そのためギターの歪みがワリと鮮明で
広大な空間にポツンと佇むような感覚というよりも、より間近な場所に植物の蔦が纏わりついているかのような感覚になるのが特徴だ。
ブラック様式のヴォイス、ブラスト、トレモロリフ、ザラザラ感と攻撃性のバランスが優秀なギターによる、比較的オーソドックスなブラックだが
適度な音圧でありながら密度の高い音数が刺激的で、結構なお気に入り作品になっている。強烈な独創性までは期待できないものの
森林崇拝ブラックに求めるクオリティのハードルは全てクリアしている感のある、素晴らしい作品。今年上半期にEPがリリースされて
秋頃に先にこの盤がウチに届いたが、試聴した限り、この盤よりも粗削りなEPもなかなかのクオリティ。コロナのせいでなかなか届かないが・・。


INTAGLIO - Intaglio 15th Anniversary Remix ★★★ (2020-12-29 01:45:46)

ロシア産フューネラルドゥーム2020年作
2005年発表の「Intaglio」の再録。原盤は15年前の作品でありながら、フューネラルドゥーム作品中、ボクの順位付けはかなり上位に位置する。
メランコリーを前面に出し、ギタートーンの減衰部分は、ギターの存在感と共にむしろ無音の存在感を感じさせる独創的な作風だ。
スローかつ音を詰め込み過ぎない楽曲のバランスが素晴らしい。また、単調にならない独特なコードワークも魅力、このハーモニーにハマる。
そんな作品の焼き直しだが、ギターの歪み、ドラムのリフなど、若干粗削りだった部分が改善され、間奏部分の尺が変化していたりと
より聴き易くなっている。が、原盤から大きな変化は殆ど無く、15年間聴き続けてきたボクでさえ、よく聴かないと気付かない微妙な変化もある。
何故今更この盤の焼き直しなのかは不明だが、Solitude Productionがこのバンドに力を入れていることは伝わってくる。ちなみに今年は
レーベルの通販サイトで買い物をすると、もれなくこの原盤がオマケでついてくるキャンペーン中で、買い物の度にオマケがついてきて、
ウチには3枚目が届き、15年前にゲットしたものを含め同じ盤が4枚ある。売れ残ってばら撒いているというよりは、タダで配布してでも
聴いてもらいたいという心意気がヒシヒシと伝わってくる。
聴き易く加工したリミックス盤はとても魅力的に聴こえる。しかし、若干無骨さのある原盤もまた魅力的であり、両方ともオススメだ。
ただ、今年は新作を発表するというアナウンスがあったワリに、先行シングル発表後はこのリミックス盤のみで音沙汰が無いのは拍子抜けだ。
ポテンシャルの高いバンドで、ボクのツボど真ん中だけに、リミックスとかは求めてないから、フルレングスの新作を発表して欲しい。


MOURNING SUN - Último Exhalario ★★★ (2020-12-21 02:10:32)

チリ産ゴシックドゥーム2016年作
この寒い時期、今年ゲットした極寒サウンドのうち、最も気に入って愛聴しているのがコレ。
南米チリ産という辺境メタル作品とは思えないほど冷たく、凍てついた大地にある浪漫を表現した作品としてレベルが高い。
雪が積もる山々と鹿が暗めのトーンで描かれるジャケ、裏面は大地に1頭の鹿のシルエットが。まずジャケが満点だ。
このジャケが描く世界観・寒冷地の情緒、そこに生きる動物との共生を感じることができる独創的で美しいサウンドに魅了される。
作り込まれたアトモスフェアなシンセと繊細なフォーク調のギター、深めの残響音が、大自然と氷点下の空気を醸し出している。
演奏スタイルは歪んだギターによるバッキングが心地よいドゥームだが、ゴシック風にも聴こえるのは、女声ヴォーカルの耽美な声のためだろう。
一番の魅力はその女声ヴォーカルによるヘヴンリーヴォイスと、森林に潜む獣たちと呼応しているかのような独特な歌い回しだ。
とりあえずこのサウンドは非のうちどころがないボクのツボど真ん中だが、40分にも満たない内容に若干物足りなさを感じるところが残念。
もっとこの世界に長く浸っていたいと思わせる。他にCDR作品などもあるようだが、フルレングスアルバムは恐らくコレ1枚きり。
自然崇拝メタラーかつ辺境メタルマニアは必ずゲットすべき神盤作品だ。雪の降る日にマイカーで暖房をつけずに聴きたい作品だが、一応暖房はつけているよ。


ALTARS OF GRIEF - Iris ★★★ (2020-12-20 22:05:06)

カナダ産ドゥームメタル2018年作
基本ミドル~スローテンポのライト感覚に聴けるドゥームメタルだが、ツーバスで激しくブラストする曲も結構ある。
特にキラーチューンと言えるような楽曲が無く佳作揃いの印象な上、ブラック的ヴォイスとクリーンヴォイスがハモり
朗々と歌い上げる感じを、個性と捉えるか、真性さが足りないと捉えるかで、評価が分かれそうな作風だ。
楽曲が微妙だなぁと思いつつもここ1ヶ月結構な頻度でこのサウンドが聴きたくなり愛聴しているのは、録音・音響の素晴らしさに惹かれるからだ。
凍てつくような空気を醸し出すシンセ、氷のようなギターのザックリ感、ベースの重低音は、かなり完成度が高く、師走に近づく今時期にバッチリとハマる。
地味な楽曲群も最近は耳に馴染み始めて、今ではこの地味な感じがツボになりつつある。氷点下を感じさせるにはアツく展開する楽曲は不要だ。
そういう作品なので、楽曲に退屈さを感じず、この演奏スタイルを受け入れることができれば、迫力ある音響に圧倒され、極寒の世界に浸れる筈だ。


Opus Eclypse - The Forest ★★★ (2020-11-15 12:38:32)

スペイン産フォークメタル2018年作
針葉樹林をバックに鹿と頭蓋骨を供えた祭壇が描かれるジャケ、ストレートなアルバムタイトルから、北欧の森林崇拝愛が濃厚に感じられる。
内容は5曲入りでトータル20分にも満たない作品。2000円超支払ったので内容量に物足りなさを感じないでもないが、森フェチの魅力が詰まっているので妥当な対価か。
メタルとは畑違いのゴシック系トラッドバンドTrobar de Morteはスペインの森林崇拝フェチご用達サウンドだが、そのメンバーによるサイドプロジェクトがコレだ。
メンバーのDaimonielがギター&ベースを全て担当しており、クラシックフォークギターとメタリックなギターを融合した、本家路線とは異なるメタル寄りな音楽性だ。
ブラックやドゥーム的様式とは異なるフォークメタル。結構粗削りな演奏だが、イマイチピリッとしない演奏力を雰囲気で充分ガバーしている。、
歪んだバッキングと冷たく繊細なフォークギターのコントラストが美しい。ギターの音量のアンバランスさが若干露呈しつつもシンセの残響でカバーできている。
ヴォーカルはLady Morteで女声だ。本家ではマルチに楽器を使いこなし、学がある人だなと感じさせるが、ゴシック系のヘヴンリーヴォイスに魅力がある。
メタルではなかなかお目にかかれないタイプのヴォーカルで、その独特な歌唱法が森林で呪術を施しているような妖艶さを感じさせる。
サイドプロジェクトなので本腰で活動し続けるかどうかは不明だが、20分程度とはいわず、バッチリと尺のあるフルレングスアルバムを熱望するところだ。


EYELESS IN GAZA - Act I: The Protagonist ★★ (2020-11-14 00:54:36)

アルメニア産フューネラルドゥーム2020年作
Eyeless In Gazaといえば40年選手の英国ポストパンクバンドが思い浮かぶ。少なからず影響があるのかと思ったが真逆の音楽性であり
恐らくEyeless In Gazaの小説からバンド名を引用しているのだろう。この小説を読む気にはならないが、戦争・友人の自殺・神秘主義がテーマにあり
主人公の生涯を4つの期間に分けて語られるストーリーのようだ。「Act Ⅰ」というアルバムタイトルからも、この章立てた小説の序章という感じなのかも。
1曲目のタイトルを直訳すれば「主人公」だ。ラスト曲のタイトルは恐らくヨーロッパの詩を意味するのだろう。次作は「Act Ⅱ」を作ろうと思ってるのかも知れない。
モノクロ顔写真ジャケは、この小説の主人公なのだろう。大作主義の楽曲や、続編を予感させる雰囲気からも、大長編な壮大なコンセプトが感じられる。
そういう世界観を思い描きながら聴くとバッチリとフィットする音楽性である。神秘主義を象徴するようなアトモスフェアなシンセが支配する音空間に
クラシックギターの質感に近いアコギ、歪んだギター、ブラック寄りヴォーカルが絡み合うサウンドだ。楽曲はなかなか作り込まれておりグッドだ。
各々の楽器の音素材・エフェクトは良いが、録音時点でクリアな音質が損なわれているところが正直残念なところだ。アトモスフェアな響きを楽しむ作品だけに
ここで失敗しているところが若干頂けない。音質の劣化を感じさせる録音は大きな課題だ。また、同系メランコリックドゥーム群と比較して思うのは
鬱々とした雰囲気ではあるものの、その旋律から感じられる感情は「不憫」「憐み」といった、悲しすぎる感覚だ。まあ、人生残念サウンドなんだからいいんだけど
どうも悲愴感が濃すぎて、コレを何度も繰り返し愛聴しよう、というところには行き着かなかった。小説のコンセプトに沿ったサウンドという点ではアリなんだろうが。
ダメ出ししたが、大作主義の楽曲自体は相当な聴き応えがある上、3曲目あたりはかなりアヴァンギャルドな曲構成である。やろうとしていることが壮大で挑戦的だ。
次作で録音状態の問題を解消して欲しい。辺境バンドによる一大コンセプト作品なので、次作以降もチェックしようと思っているし、是非とも応援したい。


AMBERS TEARS - When No Trails - Sing the Wind Sign the Raven ★★★ (2020-11-08 03:54:08)

タイトルのロシア表記はСпой Ветер, Спой Воронだ。
正しい翻訳はボクには無理だが、タイトルが意味するところは、カラスの羽ばたきによる風の歌、だろうか。
森メタルフェチのツボど真ん中の世界観にどっぷりと浸ることのできるドゥーミーな森林崇拝ペイガンメタルナンバーだ。
木々の騒めきにも似たザラザラ感のあるギター、高音で切なく奏でる単音の旋律が濃厚な哀愁を感じさせる。
なかなか説明しづらいが、前作にもあった、このバンド特有の装飾音を加えたようなギターソロがこの曲で聴ける。
よく聴かないと判らないかもしれないが、この独特なリズムの旋律が特有のペイガニズムを醸し出してて素晴らしい。


FALL OF EMPYREAN - A Life Spent Dying ★★ (2020-11-08 03:16:32)

米国産ドゥームメタル2010年作
十数年前に前作A Darkness Remembered(2004年)のレビューをしているみたいだが、その内容は概ね間違ってはいないが
少なくともMournful Congregationには似てもにつかない。当時はドゥーム経験値がまだまだで、なんでもMournful~に聴こえたのだろう。
前作はコンポジションに光るモノを感じさせるも、A級にはなりきれない楽曲構成と若干奥行きに欠ける録音状態で、佳作といった感じだったが
ギターの音自体はかなりツボを突く音質で、結構次作の登場を期待したものだ。結局音沙汰が無かったのでそのまんま忘れ去られたバンドだったが
先日この作品が400円くらいで叩き売りしていたのを発見し、ゲットしてみた。ここ2、3日くらいマイカーではコレを聴いている。
とりあえず、前作よりも録音状態は若干向上しているが、やはり奥行きに欠ける。ギターの音は前作同様にいい歪み方をしておりツボだ。
とても尖っており、突き刺さるような硬質な歪みのワリに、コードを重ねた時に適度なザラザラ感を感じる素晴らしいギターの音像が聴きどころだ。
作風も前作の延長上で、大きく進化したとは言えないサウンドではある。が、結構好きな音で興味深く聴くことができる及第点の作品だ。
ドゥームとは言っても、ドラムは結構叩くし、どちらかというと構築的な起伏に富んだ音楽をやっている。ヴォーカルはオーソドックスなデスヴォ。
この盤以降は作品が無いようなので、活動しているのかどうかわからないが、録音状態が向上し、優秀なギターの音が最適な音響で聴けるとしたら
とてもカッコいいサウンドに進化すると思う。


GORGUTS - Obscura (2020-11-08 02:40:46)

カナダ産テクニカルデス1998年作
リーダー以外のメンバーを一新して、アヴァンギャルドな志向性を濃くした問題作。少なくとも前作までのオールドテイストは薄れて
テクニカルに攻める音楽性に変化した。当時は、新しモノを好みコレを良しとするリスナーには受け入れられたとは思うが、ボクのツボではない。
そういうこともありレビューもしていなかったが、まあ、初期作品を好むボクとしては、ガッカリした作品ではあった。
Shostakovichの影響を公言していることはココの書き込みで知ったが、無調性音楽を志向しているとしたら、結構影響されているなと感じるところはある。
ただ、やりたい事はわかるにしても、とりあえず難解なテクニックに演奏技術がついていってないな、と思わせるところが結構あり心地よくない。
クラシックに影響を受けたテクニカルデス第一人者のMekong Deltaと比較するとカワイソウだが、こちらはアタックのタイミングにジャスト感があって心地よい。
しかしながら、この盤以降の作品はボクのツボに入る上、Obscuraの音楽性と初期の古学校テイストが融合して洗練されたと感じるところがあるので
決してこの盤の志向性は間違っていなかったとは思う。コレクションとして持っておくのはアリだが、ボクはこの盤は十数年コンテナ奥に眠ったままだ。


SABBATH ASSEMBLY - A Letter of Red - The Serpent Uncoils ★★★ (2020-11-03 22:58:41)

スロードゥームロック路線に走ったJex Thothとは対照的に、こういう疾走する曲があるのがこのバンドの魅力のひとつ。
アルバム全体の速度はミドルテンポ主体なので、このアップテンポの楽曲がとても際立って聴こえる。
刻みながら疾走するイーヴルなバッキングに、深めの残響音の分散アルペジオが絡むリフがとてもカッコいい。


THE HOWLING VOID - Bleak and Everlasting - Bleak and Everlasting ★★★ (2020-11-03 01:35:14)

昔から変わらず判りやすい短調の旋律を淡々と超スローに垂れ流してはいる。しかし、シンセとギターの音のクオリティが格段に上がった。
真性なフューネラルドゥームへと進化しつつあると感じさせる奥行きのある音響は、百凡のドゥームバンドを一蹴するだけのインパクトがある。
過去作の難点は楽曲だった。このままハ短調の単調な旋律のまま終われば、雰囲気だけのサウンドで過去作と同様に面白くもなんともない。
しかし8分を過ぎたあたりから徐々に調性が変化し、途端にグッと惹きつけられるサウンドに展開していく。この曲を体験した時に
ついにこのバンドもホンモノになりつつある、と感じた。このバンドには結構散財したが、この作品をゲットして充分元は取れたなー、と思っている。


SANCTUARY - The Year the Sun Died - The Year the Sun Died ★★★ (2020-11-02 22:53:14)

アルバム中最も完成度の高い曲かなと思う。Into The Mirror Blackで聴けた冷たさがここに蘇ったか、と思った。
それでもまだ温度が高めだ。作り込んでいるのはよくわかるが、ドラムのバスドラ踏みすぎ。もっとシンプルでいいのにと思う。
また、素っ頓狂なハイトーンヴォーカルが無いのがやっぱり物足りない。
ダメ出ししても★3つなのは、それを差し引いてもカッコいいからだ!


SANCTUARY - Into the Mirror Black - Future Tense ★★★ (2020-11-02 22:31:46)

アルバム1曲目、この盤で最も完成度の高い楽曲。
ディストーションを厚めに歪ませながらもベースの重低音をうまく融合させて、激しくも物静かな冷たい雰囲気を作り出している。
伸びやかなハイトーンヴォーカルにサイドヴォーカルが絡み、淡々と展開していく様が素晴らしい。
ギターソロの後に登場するリズム隊主体のリフは、これぞヘヴィメタルといわんばかりの醍醐味を感じさせる鈍重なリフでカッコいい。
また、ラストはテンポアップして疾走して終わる。起承転結がハッキリわかりやすいドラマチックなこの1曲にSanctuaryの魅力が凝縮している。


SANCTUARY - Refuge Denied ★★★ (2020-11-01 21:19:15)

米国産パワーメタル1987年作
雰囲気や完成度ではInto The Mirroe Black(1989年)が断然素晴らしく、ボクはそっちが好きだが、処女作のコレも素晴らしい。
Queensrycheと比較されるのは、曲中にマイナーコードからディミニッシュコードへ移行する印象的なコードワークが酷似している上に
ハイトーンヴォーカルという共通点があるのが理由だろうが、音楽性は美しいQueensrycheとはかけ離れており、醜悪な雰囲気が魅力だ。
また、パワーメタル寄りの音楽性でありながら、彼らがスラッシュメタルとしてメディアで紹介されていたのは、当時のスラッシュメタルで
よく聴かれたリフ構成を結構多用しているからだろう。この作品は押せ押せのスラッシュではなく、ど真ん中のパワーメタルだろうと思う。
重めのスネア、キツめの歪みのギターでザクザク刻む破天荒な迫力、ドゥーミーにネットリと聴かせるミドルパートを融合した演奏に
狂気じみた素っ頓狂なハイトーンヴォーカルが乗ると、濃厚なカルト風味や呪術的な気持ち悪さが漂ってくる。
歌に学のあるWarrel Daneの魅力が発揮されているのは、このバンドの初期2作品だと思う。ただ、ボクは次作の完成度に圧倒されて
この作品はそんなに聴かなかった。しかし、無骨な破天荒さや醜悪な雰囲気はこの作品の大きな魅力で、次作では薄れている。


GRIMIRG - From the Barren Womb of Night ★★★ (2020-10-31 19:45:35)

フィンランド産フューネラルドゥーム2020年作
この作品がこのバンド初体験。今年は良作フューネラルドゥームが結構多いが、そんな中でも特にイチオシしたい作品だ。
余計なオカズは一切無し、淡々とスローに4ビートを刻む飾りっ気の無いドラムと、ロングトーンを垂れ流すのが基本のギターによる
真性度の高い真っ黒カルトドゥームだ。スピードによる緩急のような茶目っ気や、無駄に凄みを効かせるコマーシャルな一面も皆無。
また、厚めの音像でヘヴィに圧死させるタイプでもなく、重量感はそんなに無い。劇的に展開する楽曲でもなく、地味な展開を見せる楽曲。
そんな楽曲群が4曲、ボーナストラック3曲で構成される作品。そんな苦行のような音楽性でありながら、惹き込まれると抜け出せない。
森で黒装束を着た人物が松明を持っているジャケだが、暗闇の中で粛々とアヤシゲな儀式を行っているかのようなサウンドが魅力だ。
このサウンドの最も素晴らしいところは、ギターの適度な歪みと絶妙な空間系エフェクトに職人気質を感じるところだ。相当レベルが高い。
そんな音作りの妙に中毒性があるが故に、余計な音数の無い、サステイン部分をしっかりと聴かせるスローな楽曲が、むしろ素晴らしいのだ。
過去作品を調べると、MMXV-I(2015年作)あたりでは、よりアンビエント色が強く、シンセと女声を絶妙に導入した、この作品とはまた趣きの
異なる素晴らしい作品だった。そういう作品を経ているだけあって、ギターエフェクトや空間系エフェクトには相当コダワリがあるのだろう。
重量感や激しさで聴かせるタイプではなく、むしろ静かで、カルト色が強く、呪術的なアヤシゲな雰囲気を絶妙な歪み・音響で楽しむ作品だ。
就寝前に明かりを消してじっくりと聴くと、とてもムードがあってイイ。手に入らなくなる前に過去作もちょっとずつ蒐集したい。


WARRIOR SOUL - Last Decade Dead Century ★★★ (2020-10-30 14:27:39)

米国産ハードロック1990年作
甘く青臭い若さ溢れ、かつエネルギッシュなヴォーカル、時にサイドヴォーカルとのハモリが素晴らしい。
英語だから何を言ってるかわからないが、ややパンク寄りのメッセージ性の強い歌い方をするスタイル。
音圧を抑え絶妙な残響音で聴かせ、ストリートを感じさせる雰囲気が漂う。この時代の主流から外れた音楽性に魅力がある。
ボクは次作Drugs, God and the New Republic(1991年)がWarrior Soul初体験で、この次作こそがこのバンドの
最高傑作だったと未だに感じている上、30年経った今でも手の届く範囲内の棚に常備しているくらいお気に入りだ。
処女作であるコレは、次作でロック史に残る(とボクは思っているが・・)神盤を世に出す下地・予兆が感じられる名盤だ。
このバンドが何故日本でそんなにヒットしなかったのかは不可解だが、現在も活動している老舗バンドだけあって
大きな魅力を備えているのは確かだ。一応毎回チェックはしているが、初期3作品を超えるインパクトを感じる盤は無い。
ちなみにSalutations From The Ghetto Nation(1992年)は、2ndの勢いやストリートを感じさせる要素が薄れているが
一本調子な感じから、中身で聴かせようとする作風にチェンジ、2ndの魅力を代償に新たな路線にシフト。この良さが判るのにボクは時間を要した。
4th以降はこの初期3作品各々にある魅力をミックスした作品を作り続けるが、ボクの感性は、初期にあった突出した魅力がやや薄れたと感じさせる。
Destroy The War Machine(2008年)で、初期のエネルギッシュな感じが蘇ったかとも思ったが、やはり初期作品には敵わない。
近作は楽曲は円熟し、音も年季を感じさせ、それなりの魅力はあるものの、初期に凄すぎる作品を世に出してしまったが故に後期作品にハマれない。
現在のクリーントーンが少な目になったヴォーカルスタイルはエネルギッシュではあるものの、初期作品のヴォーカルスタイルこそが最大の魅力だった。
30年以上活動するバンドに、パンク寄りの音楽性を求めるのもナンセンスなので、このままのスタイルでいいと思うが、なんとか初期作品を超える
作品を作ってほしいと思う。それだけのポテンシャルはある筈だ。


RAVEN THRONE - I Miortvym Snicca Zolak ★★★ (2020-10-26 20:56:29)

ベラルーシ産ペイガンブラック2018年作
霧で霞む針葉樹林のジャケ、ジャケを開くと枝に雪が積もった針葉樹アップ、盤にはカラスの実写。森林崇拝ジャケとしては満点。
10年以上活躍しているバンドなので、楽曲は安定のクオリティだが、若干残響音が浅め。でも最近は慣れてむしろシックリきている。
森林のざわめきを思わせるギターの歪み、トレモロリフ、やや音数控えめなドラム、ブラック特有のガナリ声、適度なメランコリックさ、
仄かなペイガニズム要素、過度な激しさが無い落ち着きなど、ボクはこのオーソドックス路線がとても気に入っており、度々手に取る盤だ。
もう少し奥行きのあるリバーブが欲しいが、足りない残響音は、雨の日にマイカーで聴くと雰囲気を底上げでき、丁度良い音響になる。
同類バンドとの差異化は課題かも知れないが、このテの音が好きなリスナーには納得のクオリティだろうと思う。
この秋に新作が出ており、一聴した感じ、とてもイイ感じな仕上がりである。コレは是非ゲットしたいと思っている。


STRYPER - Even the Devil Believes ★★ (2020-10-25 23:03:51)

米国産クリスチャンHM2020年作
再結成後はずっとスルーしてたが、ちょっとゲットしてみた。一時期トレードマークの工事現場カラーが緑になりスイカになったこともあるが
結成時から黄色と黒のストライプをトレードマークとしているビジュアルは唯一無二の個性。目が痛くダサいが、神々しさを上乗せしてカッコいい。
STRYPERのサウンドは毒気が少なく前向きな感じがイイ。ジャケの中を見るとメンバー写真では黄色と黒のシマシマカラーのマスクを着用しているが
新型コロナウイルス対策をきちんとしようというメッセージなのかね。また、若くして事故で亡くなった女性の写真とメッセージを載せている。
直訳すると「あなたは地球上の天使だった。そして今、その天使は天国へ逝った。我らはあなたを忘れない、また会おう」という感じか。
クリスチャンバンド作品はウチには僅かにあり、どれも大抵、そういう全人類愛的な思想が仄かに感じられる。このバンドも然りだ。
普段は逆さ十字気味な音楽ばかり聴いているが、無宗教なボクは宗教は音楽のエッセンスとして受け止めており、このバンドの優しい感じはイイね。
サウンドの方は、すごーくオーソドックスで、80年代定番メタルそのまんまの楽曲を円熟させた感じだ。奇をてらった展開は皆無でノスタルジーすら感じる。
目新しい要素は無いが、エッジの効いたギターの音が年季を感じさせる。このバンドの売りであるコーラスワークもしっかり聴かせてくれる。
ただ、そのコーラスワークをもっと大々的に披露して欲しかったと思う。昔の聖歌を思わせる美しい響きは、若干影を潜めていると感じる。
まあ、老舗バンドの好盤だ。あまり深く考えずにBGMとしてライトに楽しみたい。


DERKETA - In Death We Meet - Goddess of Death ★★★ (2020-10-24 00:48:19)

オールドスクールデス愛がヒシヒシと伝わってくる、アルバム最初を飾る作品。
10分の大作でありながら殆ど曲展開することなく延々とザックリ感あるリフをズルズルと引き摺り続ける。
スピードや曲展開に頼らないB級デスメタル路線は、デスメタル黎明期においても殆ど表舞台で活躍することなくマニア向けだったが
そういう演奏形態のデスメタルを円熟させ、現代に蘇らせた彼女たちのサウンドはとても貴重だ。
最近はベーシストは初期DEATHフォロアーバンドのGRUESOMEで活躍しており、尚更古学校死愛をすごーく感じるところだが
そろそろDERKETAの新作を作ってほしいと思う今日この頃だ。


PAGAN REIGN - Art of the Time ★★★ (2020-10-19 20:52:13)

ロシア産ペイガンメタル2019年作
前作から1年足らずで発表された新作でありながら、とても作り込まれたハイクオリティな作品。
もはやこのバンドの右に出るペイガンメタルは、当分の間巡り合えないだろうと覚悟したくらい、とてもボクのツボにストライクなペイガンメタルだ。
前作同様に非メタル的なアカデミックなジャケだが、中身は相当濃いメタルサウンドだ。前作の延長線上にある音楽性ではあるが、前作の落ち着いた作風に加え
再び激しさが増した印象、また、ロシア民族楽器のメタルサウンドへの融合度合いが相当高くなり、ギターと同じくらいの存在感がある。この民族楽器とギターの
コラボレーションに全く違和感が無く、ハイボルテージな緊張を作り出しているところがスゴイ。ギターのトレモロリフと同等の存在感で、アタックの強い高音域の
民族楽器のトレモロリフが登場する。民族情緒にとどまっているバンドが多い中、民族楽器の導入によってサウンド効果を存分に発揮しているバンドとしては
Pagan Reignに敵うバンドは今のところ存在しないと言える。同路線フォークロアメタルの勢いが萎えてきていると感じる昨今、このバンドの存在は貴重だ。
初期からあまり変わり映えのない、ストレートでクサめな旋律を多用する楽曲でありながら、何故か毎回期待以上の作品に仕上がっているところは素晴らしい。
このバンドはクサいメロディを恥ずかしげもなく盛り沢山取り入れ、たっぷりの自信で豪胆に、最大のエネルギーで奏でるから、有無を言わさず納得してしまう。
また、ブラックメタルスタイルと、低音で朗々と歌い上げるスタイルを併せ持つヴォーカルが相当ウマい。絶叫しているのに煩わしさを微塵も感じさせず
欲求不満を瞬間解消してくれるかのような潔さと勢いがある。
ギターの質感がドゥーム的音像やブラックメタル的シャリシャリな音像のペイガンメタルをボクは好む。しかしこのバンドは例外で、非常にエクストリームな
ヘヴィメタル的音像でありながら、何故かボクのツボを突きまくる。尖ったエクストリームなギターをハイボルテージで刻んでしまうと、煩くて仕方ない筈なのに
このバンドの音はそんな音響でありながら、全く煩わしくなく、カッコいいと感じさせるから不思議だ。


GRUESOME - Savage Land ★★★ (2020-10-19 19:59:14)

米国産オールドスクールデスメタル2015年作
初期DEATHが好きすぎて、そのまんまの演奏様式を貫くバンドの処女作。次作の方が本家のサウンドに酷似しているが、コレも当然似ている。
処女作の方がデスメタル度は高く、カニバリズムが大きなテーマになっており、ブラッディな感触が濃厚だ。ゴアリーなデスメタルを展開している。
やたら古学校デスのツボを突くサウンドなのでメンバーを調べてみたら、EXHUMED、MALEVOLENT CREATION、POSSESSED、DERKETAのメンバーが結成している!
ナルホド、どうりでクオリティの高い玄人向けデスメタルなワケである。
蛮族が捕らえた人間の内臓を食い散らかすPVは、とても食欲を減退させるが、サウンド自体のクオリティは古学校デスフリークを納得させるモノがある。
聴き応えはこちらの処女作の方が上かも知れないが、DEATHフォロアーとしての独創性は次作の方が上。ボクはどちらも捨てがたいが、次作に軍配。


GRUESOME - Twisted Prayers ★★★ (2020-10-19 19:51:06)

米国産オールドスクールデスメタル2018年作
一聴してChuck Schuldinerだ!と思わせるこの感じ。初期DEATHのLeprosy(1988年作)やSpiritual Healing(1990年作)のスタイルを
そのまま現代に蘇らせたかのようなサウンドに拍手を贈りたくなる。確かめたワケではないが、この人たちは恐らく心の底からDeathが大好きなんだろう。
Chuck Schuldinerのモノマネとも言えるヴォーカルスタイル、ズトボコなドラム、ギターのリフの刻み方・抉るようなギターソロ、曲の展開の仕方などなど
その全てが初期Deathそのもの。もう、このバンド独自の新要素など無い。概ね100%Deathの音世界を蘇らせたこと自体がこのバンドの独創性だ。
逆さ十字を組み込んだバンドロゴと、ジャケの雰囲気からも、DEATHを随分と意識していると感じさせる。デスメタル黎明期の空気が濃厚に漂っている。
このサウンドのターゲット層は当然40歳代より上なんだろうが、デスメタル黎明期をタイムリーに体験したデスメタラーのハートをガッツリと掴む筈だ。
初期DEATHにハマった人は是非聴いてみて欲しい。笑えるほど本家ソックリなサウンド体験ができる。こういうデスメタル愛が濃厚なバンドは全力で応援したいね。


CAULDRON BLACK RAM - Slubberdegullion - Black Market Trade of Whore and Blade ★★★ (2020-10-19 18:56:33)

砂利が擦れるような金属音のエフェクトから、塩気と水分多めドロドロズルズルの重低音ギターリフがフェードインする。
その途端、海賊をテーマにしたデスメタルというレアな世界観にどっぷりとハマれる。
単に変拍子で展開するのではなく、ワンテンポではない緩急のあるタメを利かせたリズムを刻む楽曲は、このバンドオンリーワンな個性。
そんなアヴァンギャルドなタイム感のある、オールドスクールデステイストを含むリフが複雑怪奇に展開するこの感じが最高だ。
こういう個性派に巡り合う機会はなかなか無い。特にこの曲は海賊テイストズルズル古学校デスサウンドの魅力がふんだんに詰まっている。


PAGAN REIGN - Once Again ★★★ (2020-10-13 21:21:16)

ロシア産ペイガンメタル2018年作
ボクにとってペイガンメタルレジェンドな存在のこのバンドのまさかの12年ぶり作品。気付いてゲットしたのは1年後くらいだったが狂喜した。
民族楽器の弦部分のアップに、木の削り屑という、アカデミックな民族楽器作品のようなジャケの雰囲気。過去作品から雰囲気がガラリと変化。
前作Твердь(2006年)が、凄まじいグルーヴと突き抜けた激しさが特徴的な、常に戦闘態勢にある豪胆且つ攻撃的な作品だったが
この作品は、激しさはそのままに、安定感抜群の、落ち着いた、品格を感じさせる作風になり、非常に完成度の高いサウンドとなっている。
相変わらずクサめな旋律を大胆に使用し、全く違和感なく民族楽器の響きをメタルサウンドに融合させているところが素晴らしい。
その上、起伏に富んだ楽曲のクオリティも非常に高い。もうこのジャンルでは右にでるバンドはいないと思わせる程の鉄板作品だ。
既にペイガンメタルの頂点に君臨したと感じさせる唯一無二の作品、これ以上どう進化するのか、思わせておいて、間髪入れず1年後に新作が出ている。
それがまたこの作品を凌ぐ程のクオリティなんだから、このバンドの懐の深さに唖然としてしまう。ペイガンメタルファンはマストな作品だ。


LYKANTROPI - Spirituosa - Vestigia ★★★ (2020-10-10 14:48:23)

アルバム2曲目、この曲は女声ヴォーカルが担っている。
サイケ臭はあるが、シューゲイザー臭も仄かに漂っている雰囲気が抜群にイイ。
このギターのリフ、ドラムの刻み方、女声ヴォーカルという組み合わせから
Sonic Youthの「Goo」(1990年作)あたりの独特な空気に似ている。
この曲でまず、グッと惹きつけられた。


LYKANTROPI - Spirituosa ★★★ (2020-10-10 14:38:59)

スウェーデン産サイケデリックロック2020年作
人間が夜、オオカミに変身してしまう現象(リカントロピー)をバンド名とし、月の満ち欠けをジャケのデザインにしているセンスにまず惹かれる。
デジタル作品をリリースなどもしているが、CD化されたものは2作品あり、コレはそのうちの2作目だ。こういうバンドは蒐集しづらくて困る。
同郷のWitchcraftを意識しているのかどうかは知らないが、ほぼ同路線だ。70年代サイケデリックロックが現代に蘇るかのような雰囲気がツボ。
女性メンバーが2人おり、ヴォーカルとして登場することがある。また、そのうち一人はフルート奏者で、大々的に取り入れているところが独創的だ。
また、コーラスワークも素晴らしい。そういったモロモロの要素を取り入れながら、ギター中心の渋いサイケデリックサウンドを聴かせてくれる。
予備知識なくAmazonでおまけ的にゲットしたワリに、とりあえず非の打ち所が無い完成されたサウンドだ。楽曲も多彩で素晴らしい。
長くWitchcraftのファンで追っていたが、最近どうもオカシイので、こちらに乗り換えようかな、とちょっと思ってしまった。超オススメ。


FEDERICO MOMPOU ★★★ (2020-10-09 13:29:47)

スペイン出身の作曲家、ピアノ作品が多く、また、30年間パリで過ごしたことから、印象派のドビュッシーや、エリックサティに通じるような
明確な旋律よりも、長めのサステインとハーモニーによる独特な響きが美しい、スローテンポなピアノ曲が多い。
ゆっくりの曲が多く、モンポウの作品をピアノで弾くことに今まではあまり醍醐味を感じず、避けてきた感があるが
先日ふとモンポウの代表曲が収録される4枚組CDをゲットし、昔買い漁った輸入楽譜を眺めている。モンポウにハマったのは大学卒業頃だが
ここ最近、またモンポウの作品に向き合っている。記譜形式が小節で区切られていないような作品も多くあり、なかなか馴染みにくいものの
低めの難易度ながら高い音響効果を秘めている作品群に大きな魅力がある。
ボク世代は必ずといっていいほど聴いている太田胃散のCM、バックに流れているのはショパンの前奏曲第7番だが、この曲を引用した
「ショパンの主題による変奏曲」がワリと有名かもしれない。「内なる印象」 「ひそやかな音楽」あたりもワリと有名で、内省的で響き重視の曲が素晴らしい。
ちなみに、若い頃はNaxosからリリースされている盤を愛聴していた。先日手に入れた盤はMompou: Complete Piano Worksという4枚組で、
ボリュームある内容のワリにアマゾンで2000円代でゲットすることができた。エリックサティのようなモダンさがツボな人には、是非オススメしたい。


SKYFOREST - Unity ★★★ (2020-10-09 12:45:55)

ロシア産シンフォニックブラック2016年作
随分前から欲しい欲しいと思いつつも、あまり高評価ではない世間評と金欠から購入を躊躇していたが、先にゲットした「A New Dawn」(2020年)の
素晴らしさに惚れてしまい、ついにこの作品もゲットしてしまった。相変わらずロシアからの空輸は時間がかかる、随分待たされたが、待った甲斐があった。
森&鳥ジャケフェチにとってどストライクな、水彩画調の、夕焼けに染まる山々、湖から飛び立とうとしている巨大鶴の美しいジャケから
どんな森ファンタジーなサウンドを聴かせてくれるんだろうというワクワク感と興奮が芽生える。盤には夜空が描かれ、鳥の星座があしらわれている。
プレイヤーにCDを入れる前から、そのファンタジックな世界観に高揚感を覚える。サウンドが流れた途端、美しく森ファンタジーな世界に魅せられる。
ギターのシャリシャリ感と湿度が森度合いを決定づける一般的な森林崇拝ブラックに比べると、ギターの質感が前面に出ているサウンドとは言い難く
森に木霊する残響音は、むしろ大々的に取り入れているシンセサウンドが担っている。この点はコアなブラックメタラーには向かないかも知れない。
しかし、その手法は、多くの森林崇拝ブラックが夜・曇り空・雨天を想像させるのに対して、このサウンドは雨上がり・朝焼け・夕焼け・木漏れ日を思わせる。
後ろ向きな陰鬱な空気ではなく、清々しい爽快感・大自然の生命力・躍動感といった前向きな感覚がこの音楽性には詰まっている。
根暗サウンド満載のロシア産にしては珍しい作風、また、今の季節(10月)の夕暮れ時の景色が、何故かとてもマッチする。最近の帰宅途中のサウンドはコレだ。


UMBRA NIHIL - The Borderland Rituals - Welcome to the Borderland ★★★ (2020-10-09 04:29:41)

アヴァンギャルドドゥーム路線では、Markus Marjomaaというギタリスト率いるユニットの、Umbra NihilとAarniが最もボクのツボを突く。
意外と海外では評価されず無名なのかも知れないが、このギタリストの奏でる旋律、ギターの歪み、病的な不協和音、適度なサイケさなど
どれをとってみても強烈で、この人にしか作れない独創的な、癖のある、毒気を含んだ音楽に圧倒される。
Aarniが世に出たデモ音源ですら、そのギターの音が鳴った瞬間に、この人はホンモノだ、と思わせるインパクトと固有の毒気がある。
作品的には前作のファンタジック・メランコリックドゥーム「Gnoia](2004年作)が好みだが、純粋にMarkus Marjomaaが奏でるギターワークの
魅力を楽しむとしたら、こちらの盤だ。この曲はアルバム最初を飾る曲だが、ぶっ壊れた、イーヴルな、シュールな、気持ち悪いリフ満載な
Markus Marjomaa固有の魅力が詰まっている。この人が奏でる音は、Aarniの一連の作品にある森のジャケイメージも手伝ってか
濃厚な毒・瘴気と共に、音に植物の蔦が絡み合うかのような気持ち悪さがある。誰にも真似できないオンリーワンな個性を放っている。
この盤に限っては、そういった濃厚な毒がジャケイメージと作品の世界観によって、イーヴルかつ背徳的な感じに昇華されている。
ずっと新たな作品を待ち続けるが、最近は全く音沙汰が無く、活動しているのかどうかも不明。再び危険な異端ドゥーム作品を作ってくれることを願う!


MESMUR - Terrene ★★★ (2020-10-05 02:33:35)

ロシア産フューネラルドゥーム2019年作
鈍重でゴリゴリの引き摺るようなギターノイズが絶品な濃い葬式要素を多分に含みながらも、音の塊で圧死させる類いのサウンドではなく
アトモスフェアな静けさを伴うサウンドだ。そんな音をバックに、割と歪み少なめの不協和ギターコードを乗せた時の不穏な雰囲気がツボ。
ギターによる明確なメロディはあまり登場せず、不協和を連続させることで荒廃した世界を描いたアバンギャルドな作風で、きっと聴き手を選ぶ。
風のようなシンセ、抜けの良いドラム、ケモノのようなデスヴォイス、重低音のベースなどグッド。そういう音の束が全てクリアに聴こえ
最適な残響音で聴かせるところがウマい。全体的に各パートの音のバランスが適切で、そのハーモニーをじっくりと楽しむといった感じだ。
ロシア的な暗さ、醜悪で気持ち悪いリフなど、真性フューネラルドゥームでありながら、疲れを伴う音圧が無いところが素晴らしい。
また、よくある白玉垂れ流し超スロードゥームではなく、割と起伏に富んだ展開をする。しかし決してフューネラルドゥームの範疇から
外れることはない。他のフューネラルドゥームバンドには無い独創的な異端ドゥームだ。ダークサイドなリスナーには猛烈にオススメ、マストバイだ!


STRAPPADO - Exigit Sincerae Devotionis Affectus - Dislocated by the Rope ★★★ (2020-09-29 03:38:58)

このタイトルを日本語訳すると、「ロープで脱臼」だろう。このタイトルがウケる。
終始ブルータルに突っ走っている曲なので、一体どのあたりで脱臼したのか気になるところだが
強いて言えば、2分30秒あたりで脱臼したのかな?


STRAPPADO - Exigit Sincerae Devotionis Affectus - Death by Sawing ★★★ (2020-09-29 03:24:55)

ノコギリを引く音、男の悲鳴で始まる。ジャケで吊るし責めにされるカワイソウな男がテーマのサウンドだろう。
ゴリゴリのギターと下水道に近いヴォイス、スパパパパンと軽快に連打するスネアが刺激的だ。


STRAPPADO - Exigit Sincerae Devotionis Affectus ★★★ (2020-09-29 03:18:21)

米国産ブルータルデスメタル2019年作
激しすぎるサウンドが最近苦手でブルデスはあまり買わないんだけど、この残酷かつ笑えるジャケでゲットせずにはいられなかった。
ジャケを見て目がいってしまうのは、素っ裸で逆さ吊りにされている男の股を覆面の男たちがノコギリで切ろうとしているイラストだ。
バンド名を訳すと「吊るし責め」だろう。少なくとも、この拷問をされている裸の男は今作の大きなテーマになっているんだろう。
アイアンメイデンの傍でハリツケにされるオバサンや、万力で体を引っ張られる老人など、鬼畜で残虐なワリに笑えるジャケに趣きがある。
さぞエグイ内容のゴアリーなサウンドなんだろうと期待したが、内容は案外音圧が適度で、聴き易いブルデス、ボクでも充分楽しめる内容だ。
大きな特徴はスネアドラムのチューニングを高めにして、その連打を前面に出しているところだ。これが拷問をテーマにしたサウンドにマッチしている。
低めのデスヴォイス、ザックリ感あるギター、悲鳴を織り交ぜるサウンドから、仄かなゴア要素が感じられ、なかなか聴き応えがある。
もう少しゴアリーに責めて欲しかったところはあるが、ライトに楽しめるブルデスで、処女作としては充分なクオリティだ。次作のジャケが楽しみだ。


Georges Migot ★★ (2020-09-26 03:05:35)

ボクはメタル作品以上に、クラシックピアノソロ作品収集にワリと生き甲斐を感じている。
我が家にあるピアノ作品で、最も、無名で珍しい作品は何?と言われると、たぶんミゴーの作品じゃないかと思う。
フランスの作曲家で、声楽や交響曲、様々なユニットの室内楽など多くの作品を残し、そちらの方では無名とは言えないかも知れない。
しかし、僅かにピアノソロ作品を創作しており、あまり知られていないんじゃないかと思う。
Le Zodiac(邦題では、12の練習曲集「獣帯(黄道十二宮)」)という作品だ。
この聖闘士星矢を想起させるタイトルの12曲からなる組曲は、そのイメージから神秘的でカッコいい曲なのだろうと思ってしまうが
なんとも取り留めのない明確な旋律があまり登場しない、ぬるーい、アンビエント調のピアノ曲で、一聴した感じではあまり心に残らない。
なかなか曲想が掴み切れない楽曲群な上、左右の手の交差が頻繁にあったり変わったコードなどで、難易度はそう高くないが弾きにくい。
繰り返し愛聴していくと、その独特な響きが神秘的な星座をなんとなーく思わせる、ちょっとマニアックな内容だ。
なんとか楽譜をゲットしようと探しに探して、海外のショップでやっと見つけたが、当時(大学生)の価格は確か17,000円超で、どこの出版社かもわからない
古文書のようなボロボロの楽譜が我が家に届いた。1冊の楽譜に出費した金額としては、過去最高額だったように思う。今はもっと安価で簡単に見つかるだろう。
CDはStephane Lemelinというピアニストが弾いている盤がオススメだ。というより、この盤以外に見つからない。
さっき試しに探してみたが、LPで77,000円という破格の値段で売っていた。いやいや、そんなに金額を出すほどの内容ではないよ。


PAGAN REIGN - Ancient Fortress ★★★ (2020-09-26 02:06:09)

ロシア産ペイガンメタル2006年作
ロシア語表記の盤と、英語表記の盤の2種類があり、我が家にあるのは後者。ホントはロシア語表記の盤が欲しかったが・・・。
ちなみにロシア語のタイトルはТвердьだ。単語数からして違うので、意訳しているのだろうと思う。
とりあえず彼らはボクにとってペイガンメタルゴッド的存在。全作品必聴盤だ。彼らほどアツいペイガンメタルはなかなか聴けない。
Уделы Былой Веры(2004年)はクサめの旋律と激しさに、土着的な民族情緒をスパイスした作風に相当ハマったが、この作品は
前作の路線延長上ではあるが、Pagan Reignの数ある作品中、最も豪胆で突き抜けた激しさがある。もはやヤケクソに近い激しさに圧倒される。
フルートやマンドリン、ロシア民族楽器SopilikaやDomraを前作以上に大々的に取り入れているところが大きな特徴。
突っ走る時は疾風のように爆走し、ブラックメタル的ガナリ声のヴォーカルは絶叫する。民族楽器の演奏がペイガニズムの浪漫を掻き立て
非常にファイティングスピリットの高いサウンドを聴かせてくれる。アドレナリンが分泌され異様な高揚感を体験できる。
前作は激しくも落ち着きのある作風だったが、今作は全く落ち着きがナイ。走り気味の凄まじいグルーヴ感が激アツなのだ。
民族楽器の弦を高音で奏でると、こんなにも張り詰めた緊張感が出るんだな。単に民族情緒を思わせるスパイスにとどまらない演奏効果があるね。