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MOURNFUL CONGREGATION - The Incubus of Karma ★★★ (2020-05-15 21:24:53)

オーストラリア産フューネラルドゥーム2018年作
路線は大きく変わらず、アコギをバックにメランコリックな旋律を奏でつつ、重厚なギターノイズで淡々と聴かせる。
音は洗練されつつも、真性さよりもメランコリーが前面に出ている印象。最近はこのバンド似のフューネラルドゥーマーが
爆発的に増えていることもあり、高い完成度を認めつつも、目新しさをあまり感じず、愛聴盤と言えるほど回数聴いていないのが正直なところだ。
昔は自分にとってフェイバリットナンバーワンだっただけに辛口だが、クオリティは高いので聴いてみて欲しい。


MOURNING SUN - Último Exhalario ★★★ (2020-12-21 02:10:32)

チリ産ゴシックドゥーム2016年作
この寒い時期、今年ゲットした極寒サウンドのうち、最も気に入って愛聴しているのがコレ。
南米チリ産という辺境メタル作品とは思えないほど冷たく、凍てついた大地にある浪漫を表現した作品としてレベルが高い。
雪が積もる山々と鹿が暗めのトーンで描かれるジャケ、裏面は大地に1頭の鹿のシルエットが。まずジャケが満点だ。
このジャケが描く世界観・寒冷地の情緒、そこに生きる動物との共生を感じることができる独創的で美しいサウンドに魅了される。
作り込まれたアトモスフェアなシンセと繊細なフォーク調のギター、深めの残響音が、大自然と氷点下の空気を醸し出している。
演奏スタイルは歪んだギターによるバッキングが心地よいドゥームだが、ゴシック風にも聴こえるのは、女声ヴォーカルの耽美な声のためだろう。
一番の魅力はその女声ヴォーカルによるヘヴンリーヴォイスと、森林に潜む獣たちと呼応しているかのような独特な歌い回しだ。
とりあえずこのサウンドは非のうちどころがないボクのツボど真ん中だが、40分にも満たない内容に若干物足りなさを感じるところが残念。
もっとこの世界に長く浸っていたいと思わせる。他にCDR作品などもあるようだが、フルレングスアルバムは恐らくコレ1枚きり。
自然崇拝メタラーかつ辺境メタルマニアは必ずゲットすべき神盤作品だ。雪の降る日にマイカーで暖房をつけずに聴きたい作品だが、一応暖房はつけているよ。


MURKRAT - Drudging the Mire ★★★ (2023-10-31 20:13:07)

オーストラリア産ドゥームメタル2011年作
一応ドゥームメタルとしたが、メタル要素が控えめになり、オルガンドゥーム色を前面に出した作品だ。
前作ほどイタいジャケではないが、まあ、子どものような物体が描かれるジャケからは不穏な空気が。
メタルサウンドとしてはオススメできないが、底辺のドゥームを求める人には、まあオススメできる。
世界への絶望と、鬱々とした内省的なコンセプト、そこに子どもの誕生が絡んでくる世界観は相当イタイ。
フェミニズムと人類への憎悪を感じるこの生理的気持ち悪さが、この作品の唯一性でして
ドゥームというジャンルの作品の中では、群を抜いてドゥーム度が高い真性さを帯びた作品なのだ。
この世界観に没頭できる人にとっては、この盤は神盤になるだろうし、生理的に拒絶感を感じる人は
ゴミ以下の、音楽自体を冒涜していると感じてもおかしくない最低の盤、という評価になりそうだ。
ボクは結構この盤は購入当時は聴いたが、好きかと言われると結構微妙。
オルガンを前面に出し、終始スローな展開。ワリと苦行ドゥームフリーク向け。
ただ、急展開する箇所が僅かにあり、そこが聴きどころでして、静から豹変するような女声ヴォーカルに狂気が感じられる。
思想的に良い悪いは別にして、世界観の唯一性というレア度の高さと、このテの思想家が何を思っているのかの資料
としての興味、という点で一応★3という評価にしてみた。


MURKRAT - Murkrat ★★★ (2023-10-20 11:21:49)

オーストラリア産ドゥームメタル2008年作
Mandy Andersen含む2人の女性メンバーによるドゥーム作品だが・・・保有するドゥームの中でもかなり濃い強烈な作品。
3曲のドゥーム曲に加え、Murky Ratmass(2007年)のデモ5曲が収録されている。
モノクロジャケではお手伝いさんのような女性が剃刀を振り上げ、ベッドに押さえつけている赤ちゃんの耳から出血している。
床にはネズミが6匹ほど描かれている。かなーりイタイ醜悪な世界観をお持ちである。赤ちゃんにオイタをするジャケだけならまだしも
(いや・・充分ヒドいが)インナーのイラストは更に醜悪で完全にイってしまわれている。
この人自身がフェミニストであると公言している記事を随分昔に読んだことがあるが、現在でも閲覧できる動画からはむしろ
ミサンドリーあるいは極度なミサントロープと言われても仕方がない程の、強い負の感情が伝わってくる。
同郷ドゥームバンドThe Slow Deathにも参加している。こちらもワリと底辺な世界観のバンドだが、Murkratの方が輪をかけて底辺。
また、詳細は書かないが、独特な政治信条をどうやらお持ちのようなので、それが色濃く作品に反映されているなぁと感じる。
その上、アンチクライスト・既存宗教へ冒涜的なオーラも漂うので、ものすごーく背徳的な危険臭がする作品だ。
メインヴォーカル、ギター、鍵盤もイケるマルチプレイヤーで、特に歌はドゥームでは珍しくかなりウマい女声ヴォーカルである。
しかし、何故か、よくある魔女ドゥームの雰囲気は微塵も感じられず、内省的で、絶望的で、とても後ろ向きなオーラが漂っている。
ギターの音に中毒性があり、演奏はウマいので、音響的なところではドゥームファンから一定の支持を集めていたと思うが
一般的には結構な酷評を受けていた印象。まあ、毒の強い世界観が原因で、気軽に楽しめる雰囲気が全く無いからだろうね。
この世界観はDiamandaGalasの描くダークサイドなパフォーマンスがとても近い位置にあると、ボク的には感じるところが多々ある。
とにかく真性で底辺を感じたい人にはお勧めですが、ちょっと毒の強い上級者向けです。ただ、この人の描く世界観を無視
できるリスナーであれば、普通に渋いドゥームメタルとして楽しめるかも知れない。
バンド活動始動が高校時代らしいので、計算するとたぶんこの作品が発表された時にはMandyは20代後半じゃないかと思う。
もっと明るく健全な20代を過ごせばいいのに・・と思う。
また、中東が混乱してきてる今の社会情勢にバッチリとハマるBGMがコレで、そのテの報道を観るとこのバンドが頭をよぎります。


Morito Ergo Sum - Moonchild ★★★ (2020-07-01 19:54:08)

スウェーデン産ドゥームメタル2011年作。
ボクの知る限り、このバンドはレーベルに所属せず、2作品ほどセルフリリースでアルバムを発表しているので、相当無名なバンドだろうと思う。
フルレングスアルバムはA Mournful Foreboding(2016年作)のみで、このMoonchildはEPだ。とはいえ、30分を超える収録時間で聴き応え充分。
芯のあるヘヴィなギター、ギターソロもアリ。安定感のあるゆったりとしたクールなドラム、デスヴォイスではない囁くようなヴォーカルといった
オーソドックスなドゥームメタルど真ん中な音で、真性に人生残念な感じではなく、濃さはライトな感じ。クリアな録音と安定感が魅力的だ。
まあ、そういう標準的な音楽性なので、ボクはフルレングスアルバムまでは敢えて揃えてゲットしようという気持ちにはならず、このEPのみで満足している。
時にチェロのようなシンセで味付けいるところも好感触。アップテンポなパートもあるので、どちらかというとゴシックメタルを聴いている感覚だ。
なんといってもこのアルバムの大きな特徴は、アルバムタイトルにもなっているが、King CrimsonのMoonchildをカヴァーしているところだ。
原曲のクオリティが高い上、昔相当な回数聴いた名曲なので、素直にこのカヴァーは気に入っている。あの名曲をドゥームにしてしまうセンスはツボだ。
オリジナル曲よりも、このMoonchildのカヴァーの方が相当カッコイイ、というところは少々悩ましいところだが・・・。


NAXATRAS - III ★★★ (2020-06-04 01:39:42)

ギリシャ産ストーナー・サイケデリックロック2018年作
全く無駄な音が無いすごーく地味なリズム隊にナチュラルトーンのブルースギターが乗るインストゥルメンタルかと思いきや
僅かな歪みや、ディレイやエコーなど、曲が進むにつれて様々な表情を見せるギターエフェクトが施され、徐々にストーナー要素が
盛り込まれていく。中盤以降に僅かにヴォーカルが入るが、大胆な振幅でピッチの速いスペーシーなエコーヴォイスが登場したり
ストーナー要素をほんのり含ませるギターバッキングが登場したりと、アルバム全体で徐々にライトに石化させていく作風が魅力だ。
どうも海外レビューを見ると低評価気味な気がするが、前半だけ聴いて全然サイケじゃないじゃん!と思ってるんじゃないかな。
最後までキチンと聴いていないんじゃないの?と思うよ。物静かで超シンプルな作風だが、エフェクトの妙を堪能できる
ちょっと上級者向けのストーナーサウンドだ!


NIKOLAI KAPUSTIN ★★★ (2020-04-27 04:18:10)

純粋にクラシックピアノを学んだ人にとって、ジャズを弾きたいというときに壁になるのは、適当な楽譜がナイ、ということだ。
そもそも即興性や変則的リズムなど演奏者の感覚に拠るところが多いので、それがキッチリ記譜されたスコアはかなりレアな上、市販のジャズスコアは重厚さのないイージースコアで溢れている。
というワケで、ジャズをクラシック様式に昇華させ、誰でも読譜できるように記譜されているカプースチン作品の登場は、ジャズピアノを弾きたいピアノ弾きを狂喜させた。
カプースチンの楽曲の特徴は、端的に言えばテンションノートを多用するジャズピアノだが、和声的なピアノ曲との違いは、スイング、バウンス的リズム感が求められることや
オフビート(ウラ拍にアクセントをつける)演奏法だったり、更に技術的なことを言えば、親指の打鍵が特殊だったりする。演奏難度はなかなか高い。
多くの作品があるが、最も有名と思われるのは「8つの演奏会用エチュード」「10のバガデル」あたりだろう。が、より多くの作品を是非聴いてもらいたい。
伝統的なジャズに留まらず、ロック、ラテン、現代音楽の様々な要素が楽曲中にアレンジされており、どの作品も相当な聴きごたえがある。
個人的に好きなのは8つの演奏会用エチュードの「プレリュード」「夢」「フィナーレ」や、一時期ケータイ着メロにしてた「「アリーバロッソのブラジルの水彩画によるパラフレース」だ。
演奏家は、当然本人が弾いている作品がイチオシだ。一時期「カプースチンラストレコーディング」というCDが出て、あーこれで最後なのか・・と残念な気分になったものだが
間髪入れず「カプースチンリターンズ」というCDが発売されて、「はえーよ!」とツッコミ入れてズッコケた。
本人以外では、川上昌裕のCDが早くから出回っているほか、最近は辻井伸行の演奏が素晴らしい。
とりあえず骨太なジャズピアノのソロ作品を聴きたいなら、カプースチンの右に出る者はいない。超オススメである。


NOKTURNAL MORTUM - Lunar Poetry ★★★ (2020-05-22 22:15:52)

ウクライナ産シンフォニックブラック1996年作
ペイガンメタルにハマり始めた頃に知り、2000年以降にゲットした作品。アルバムタイトルから感じられる浪漫と
針葉樹林が美しいジャケがボクのツボを突き、結構当時は繰り返し聴いた愛着のある作品。
ここで語っている人たちが言うとおり、録音状態は万全ではないが、そのローファイな感じがむしろ雰囲気アップに繋がっている。
ブラック様式でありながらメロディアスなこの感じは、当時いくつかゲットしたペイガン系サウンドがワリとメロディを前面に出している
ところが共通しており、ワリとそういうサウンドがトレンドだったのかも知れない。
(たまたま自分がそういう作品をゲットしていただけかも知れないので信憑性は全くないのであしからず。)


NOKTURNAL MORTUM - Нехристь ★★★ (2020-05-22 22:05:00)

ウクライナ産シンフォニックブラック1999年作
これより前の作品はどこかひとつ物足らない、惜しいなぁと感じることが多く、好盤Lunar Poetry以外は所持していない。
この盤はこれまでの作品の素晴らしいところを寄せ集めた、このバンドの最高傑作だろうと感じている。
ボクがコレをゲットしたのは、2000年以降で、決してタイムリーに聴いたワケではないが、ペイガンメタルにハマり始めた頃で
ペイガニズムの浪漫が感じられるスラブ民族要素を絡めた攻撃的なブラックスタイルと、ネオナチ疑惑などの国家社会主義的な思想、
当時としてはウクライナ産という珍しい国柄(最初はロシアのバンドだと思い込んでいたが)というミステリアスさなどのスパイスが
バランスよく融合して、とても魅力的なサウンドに聴こえたものだ。今でこそウクライナ産バンドにはもっと濃いバンドは多いと思うが
この作品の存在感はとても大きい。


NOKTURNAL MORTUM - Істина ★★★ (2020-05-22 21:47:55)

ウクライナ産シンフォニックブラック2017年作
このバンドはワリと初期から聴いており、先日ゲットしたこの作品を含め4作品が愛聴盤だ。
初期のペイガニズム溢れる作風、中期の攻撃性に加え、メンバーのネオナチ思想疑惑の真性さやミステリアスさが手伝い
Нехристьの作品をゲットした頃が最も魅力的だったと思う。その後1作品ゲットして数年たち、先日この作品をゲットしたが
一聴して、当時の攻撃性が軟化し、民族的情緒がより強くなった印象を受けた。恐らく現在はウクライナで最も有名なブラック
だろうし、アンダーグラウンド臭が完全に抜け切って、より大衆的になったなぁ、というのが最初の感想だ。
メンバーの思想こそ変わっていないんだろうが、少なくともこの音からは国家社会主義的なナショナリズムは感じなくなった。
録音状態が向上し全体的に迫力が増した半面、ギターは若干攻撃性が損なわれシンフォニックな音空間に埋もれがちな面は否めない。
しかし、非常に聴きやすくなり、ブラックメタル様式を残しつつ、スラブ民族要素を散りばめた良質なメタルサウンドになったと思う。
完成度が高いので、暫くマイカーではコレを聴くだろうなぁと思う。ただ、心のどこかではНехристьの頃の真性さや緊張感をもう一度
体験したいという気持ちはあるね。


NORILSK - Weepers of the Land ★★★ (2020-08-11 23:03:57)

カナダ産ドゥームメタル2018年作
雪山ジャケとバンド名がロシアの都市名というところに惹かれ、ロシア産ドゥームかと思ってゲットしたが、カナダの2人組バンドだった。
ロシアの都市名をバンド名にするのが流行ってるのか、ボクの知る限り、フィンランド産ドゥームKYPCKとカナダ産スラッジのAstrakhanが
バンド名にロシアの都市名を採用している。寒々としたドゥームのイメージがきっとフィットしたんだろうね。
Norilskという都市がどんな所なのか、このバンドがこの都市についてテーマにしているのかは不明だが、少なくともこの土地をイメージ
しているのは過去2作品と今作のジャケからなんとなくわかる。歌詞を訳してどんなテーマなのか調べてみようと思ったところ
一部フランス語で歌われている曲があることがわかった。歌詞からNorilskの地について歌っているんだろうなということはわかったが
カナダ人がロシアの地をフランス語で歌うことの意味はさっぱり理解できないままだ。まあ、それはそれで良し。
そもそもこのサウンドは試聴した瞬間にゲットしただけあって、ボクのツボにはドストライクだ。雪山を感じさせる、仄かにヴィンテージ臭
のするサウンド、かつ、ヴォーカルはドロドロと低音で歌ったりブラックメタル的なガナリ声で歌ったりする。
楽曲はスローからミドルテンポ主体で、一聴すると非常に地味で淡々としたサウンドに聴こえるが、コレが慣れてくると深い味わいにハマってしまう。
寒さを感じさせる哀愁がほんのり漂う旋律、氷のザクザク感がステキなギターのキザミ、叩き過ぎないクールなドラム、なかなか良い仕事をしてるベース
ナマ音に近いアコースティックなパートを織り交ぜるなど、一口では語れないとても奥深い味わいがある。きっと万人受けはしない、上級者向けドゥームだ。


NORILSK - Weepers of the Land - Toute La Noirceur Du Monde ★★★ (2020-08-11 23:20:36)

5曲収録されている中、この曲だけフランス語のタイトルと歌詞だ。「黒い世界」と訳されるようだ。
音響的にフランス語の歌詞が独特な異国情緒を感じさせるかというと、デスヴォイスやガナリ声なので他の曲との差は感じない。
ワリとアップテンポで耳に馴染みやすいリズムのリフ、低音の鐘の音のエフェクト、凍てつく氷を思わせる寒々としたエコー・リバーブなどの効果が
とてもカッコ良くてシブい。


NORTT - Galgenfrist ★★★ (2020-05-15 01:54:17)

デンマーク産アトモスフェア・フューネラルドゥーム2008年作
濃厚に深い残響音にブラックの質感を持つ分厚いノイジーなギターが響き渡る作風の独りフューネラルドゥーム。
ジャケの真っ黒で液体が流れるようなバンドロゴから思い浮かぶそのままの、かなーり暗い、寂しく、怖くなるサウンドだ。
ここまでイってしまわれている人生残念サウンドだと、独りでこのサウンドを作っているアーティストの安否を気遣いたくなる。
ギター等の魅力よりも、空間を支配するヒリヒリとした緊張や、ノイズの倍音が響き渡る様を楽しむといったダークアンビエント色が強く
判りやすい世界観ながら、聴き手を選ぶ上級者向けで、アンビエントサウンドが得意でないと厳しいかもしれない。


Nespithe ★★★ (2020-05-15 23:49:46)

フィンランド産オールドスクール・テクニカルデスメタル1993年作
発売から5年後くらいだと思うが、購入当時に少しハマって、友人に貸したまま戻ってこなかったCDだが、もはやオリジナル盤は入手困難。
結局ボクは20th Adversary of Emptinessという全音源収録盤を所持している。
このバンドのフルレングスアルバムはコレのみで、デスメタル全盛期のリリースでありながら殆どメディアに露出することなく全くの無名。
ところが、当時の有名デスメタルバンドと比較しても引けを取らないどころか、かなりの個性派で偉才を放つサウンドだ。
大きな特徴は、その時代のデスヴォイスの中でも極端に低音な下水道ヴォイス、ブラストもアリでMorbid Angelを更にヴァンギャルドにしたような楽曲構成だ。
そして、やたら長い曲名が多いのも特徴。変拍子を多用し、意表を突く気持ち悪くもカッコいいギターソロなど、粗削りな演奏だが非常に多くの魅力を秘めている。
初期Meshuggah、Watchtower、Anacrusisあたりの複雑な構成のデスメタルがツボ、かつ初期Morbid Angelや初期Incantationあたりの魔性がツボなら相当ハマる。
フィンランドのカルトサウンド恐るべし。デスメタルマニアは必聴盤だ!


OBITUARY - Dying of Everything ★★ (2023-08-12 01:08:17)

米国産デスメタル2023年作
初期の3作Slowly We Rot(1989年)、Cause of Death(1990年)、The End Complete(1992年)のクオリティが高すぎて
その後のアルバムは受け入れられず、ずっとスルーしてきたが、ほんのりと初期のテイストが戻ってきた今作を過剰な期待をせずにゲット。
感受性豊かな若い頃に衝撃を受けたバンドだけあって、なかなか新作というモノが耳に馴染まないということはありますが
初期の衝撃再び、というワケにはいかない及第点なサウンドだな、というのが正直な感想だ。しかし、悪くない。
初期作品にあって、現在薄れつつある固有のモノ、というのがハッキリある。初期作品は倍音が少な目の控えめな音像ながら芯のある音だった。
決してギターは目立ち過ぎず、他のフロリダデスと比べても静かなるデスメタルといった感じが魅力だった。
そんな音作りで、高密度に刻み、電源をブチッと落としたかのようなブレイクが入る。
そんなスタイルのギターが、粘り気のあるドラムのリフ回しに絡み合うコラボレーションが絶妙だった。
確かにその音像は現在も引き継がれてはいるものの、初期の音の方が個性が際立っているんだよ。
まあ、古参のギタリストのスタイルは変わらないんでしょうが、後期から参加するギターの色が若干そのスタイルを変えてるのかも。
古参の古学校死サウンド自体が貴重ですから、このサウンドがハマらないワケではないんですがね。若干コマーシャルな印象を受けてしまうのが難点。
ダメ出ししたけど、冒頭で言ったように、決して悪くはない。少なくとも近作よりは良いサウンドに進化(戻りつつ)しつつあるね。
なんにしても、90年代初頭デスメタル黎明期の古参デスメタルバンドが息長く活躍し、しかも勢いを取り戻しつつあるのがいいね。
Autopsy、Pestilence、Possessed、Cadaver、Massacre、Benediction、Messiahあたりの90年代を彩った古株デスメタルがツボを突く作品を出している。
だからこそ、このバンドにも当時の衝撃を再び期待してやまない。


OBSIDIAN SEA - Pathos ★★★ (2023-08-23 00:41:45)

ブルガリア産ドゥームロック2022年
Solitude Productionsがリリースする盤をひたすらゲットしていた時代に出会ったバンド。現在はドゥームストーナー専門レーベルに移籍。
初期作品からマメにゲットしていたが、水準以上のクオリティがあるワリにはあまり聴き続けなかったバンドでもある。
Between Two Deserts(2012年)は歌唱に若干クセのあるストーナー寄りドゥーム作品で、楽曲も固有のウネリがあり面白い作品だった。
今にして思えば、どうしてあまり聴かなくなったのか・・・きっとこの独特なヴォーカルが若干合わなかったのかも。
もはやドゥームストーナー路線は星の数ほどのバンドが犇めいている状況なので、敢えてチョイスするバンドというのも限られてくるワケで
短期間楽しんだらお蔵入りになるんですよねぇ。長く聴き続けるバンドはむしろ癖の無いオーソドックス路線で熟練したサウンドだ。
というワケでこの盤、初期の若干耳に障った癖はもはや無くなり、オーソドックス路線から外れることなく円熟したサウンドを聴かせてくれる。
無駄な凄みやコマーシャルなところが無くなったヴォーカルはサイドヴォーカルといい感じでハモって魅力的になった。
派手過ぎず地味過ぎず、過剰にストーナーな感じではなく、仄かなイーヴルさ、静のフレーズでのしっとり感など、適度なギターの歪みがいい。
ワウの使い方や残跫音の作り方など、職人気質を感じるし、印象に残るフレーズが結構多く、楽曲も相当練り込んでいるね。
こういうサウンドのバンドは多いが、アタマひとつ抜きん出た高品質サウンドだ。
この路線の音は他にも幾つか購入しているが・・しばらくこの盤を聴き続けそうだ。耳の肥えたオールドロックファンに超オススメ。


OMEN - Hammer Damage ★★★ (2020-07-03 23:34:28)

米産パワーメタル2016年作
1983年結成から大きく音楽性を変えることなく、長く活動するバンドの渾身の作品だ。
B級愛を感じないと聴けない作品を連発していたバンドだが、再結成作品Eternal Black Dawn(2003年作)発表の時には狂喜したものだ。
当時の自分の書き込みを見るととても懐かしい。あれからもう17年経つのか。その後もOmen作品はゲットしており、この2016年作品も愛聴盤だ。
創始者Kenny Powellの息子が一時ギタリストとして参加したりしてたが、クレジットに名前はない。親子でバンド活動すればいいのにね。
このバンドの音楽性は、ファイティングなウォーメタル路線でありながら、音圧やスピードに偏ることなく、常に古典的手法で聴かせるところが魅力だ。
80年代~90年代あたりでは、同路線バンドに比べてパワー不足、際立った派手さの無い音楽性から、B級愛を持つメタラーご用達バンドだったと思うが
再結成以降もその路線からブレることなく、2016年になっても頑なにその古典的作風を堅持している化石サウンドで、Omenファンとしては嬉しい。
前時代ではB級と片付けられても致し方ないと思うが、現在は、80年代の息吹を伝統的に守る希少価値の高い作品、という付加価値すら感じる。
アメリカのバンドでありながら、NWOBHM的な感触もある。また、流石に37年活動しているだけあって、安定感のある演奏も魅力的である。
無駄にエフェクトを施さないナマ音に近いディストーションギター、B級臭を常に漂わせる作風でありながら作り込まれている楽曲が素晴らしい。
ボクがヴァイキング作品やウォーメタル的なパワーメタルを追いかけるのは、B級メタルにハマった当時、Omenを好んで聴いたことがルーツにあると思っている。


ONI - Ironshore ★★★ (2020-12-30 00:12:42)

カナダ産プログレッシヴ・パワーメタル2016年作
丁寧に加工し尽された感のあるMetalBlade作品はオリジナリティを削いでいると感じることが多く、近年敬遠しがちだが、和メタルネタバンドは
買わないワケにはいかないのでゲット。が、鬼の像が海岸に座するジャケから、和を感じさせるメタルをイメージしてしまうワリに、サウンドに殆ど和要素は無い。
また、鬼というバンド名らしいパワーは感じるが、日本人の「鬼」に対するイメージとは対極にある、どちらかというと近代的でスタイリッシュなサウンドだ。
日本で有名なのかわからないが、海外サイトを見る限り結構微妙な評価なようだ。しかし楽曲の作り込みと相当高い演奏技術はもっと評価されていい、と思う。
安定感が心地よいリズム隊、超絶技巧をひけらかすベース、複雑怪奇なリズムを刻むギター&シンセ、ハイヴォルテージなヴォーカルが目がぐるしく展開する。
そんな音楽性だから結構疲れるかと思いきや、ジャスト感抜群のリズム隊のおかげで結構聴き易い。ただ、複雑な楽曲が耳に馴染むのに相当時間がかかる。
そういうサウンドだが、このバンドの大きな特徴はシンセが一般の鍵盤ではなく、シロフォンシンセを使用しているところだ。ただ、サウンドを聴いただけ
では、その凄まじさはわからない。動画を検索してみて欲しい。メタルでシロフォンシンセを使うバンドは初めて見るが、複数のマレット(打鍵する棒ね)を
駆使して演奏する姿は、視覚的なインパクト大だ。
ドリームシアターのようなギターとシンセの絡み合う感じがツボ、かつ、複雑に展開するスピード寄りパワーメタルがツボ、というリスナーはハマるんじゃないかな。


OPHIS - Withered Shades ★★ (2020-07-08 01:05:29)

ドイツ産デスドゥーム2010年作
迫力のあるデスヴォイス、芯のあるヘヴィなドラム、適度なヘヴィさで音質も素晴らしいギター、ドゥーミーな丁度良いテンポ。
そういうデスドゥーム路線ど真ん中作品であり、クオリティも高い。海外のショップでもドゥーム路線のページではワリとよく見かけるので
きっと評価も高いバンドなのだろう。そういうワケで、この作品以降の作品も一応チェックはしているものの、どうもボクのツボにハマらない。
The Dismal Circle(2017年作)が最新だと思うが、この2010年作品よりも更に凄みを増して鬼気迫る作品に仕上がっている。
きっとこの行き届いた録音状態で、凄みがウリのオーソドックスデスドゥームは、多くのドゥーマーを納得させるインパクトがあるのだろう。
そういう音を求めるリスナーにとってはきっと神盤になるだろう。ただ、ボクにはちょっとしんどい。また、楽曲がちょっと弱い気もする。
スローで淡々としたテンポで聴かせているのに、常に凄みをきかせるから疲れるんだろうね。たぶんそれが判っていても質は高いから
将来新譜が発表されても、新味を期待してまた買うんだろうなぁとは思う。彼らの作品群の中では、この2010年作が一番好きな盤ではある。


ORODRUIN - Ruins of Eternity ★★★ (2020-06-07 18:54:28)

米産ドゥームロック2019年作
ぬるーいオルガンを取り入れた作風がツボにハマった個人的神盤Epicurean Mass(2003年作)からもはや16年。時が経つのは早いな。
この作品がリリースされたのを知った昨年末、どれだけワクワクしたことか。当然、あのぬるーいオルガンに静かなるイーヴルなギターが乗る
独創的なサウンドを期待したのだが・・・なんとオルガンが無くなっていた。購入当初は「えー、なんでなん?」と声を出して嘆いた。
が、しかし、オルガンという甘っちょろい道具に頼らず、真っ向勝負するその音楽性に惚れてしまった。
ドゥームというジャンルにありながら真性なスロードゥームではなく、ロックテイストという個性を出しにくい難しい立ち位置にありながら
過度なサイケデリック路線に走ることなく、ギターの重量に頼ることなく、前衛路線に走ることなく、ドゥームロックど真ん中なのに独創的だからスゴイ。
このバンドのギターリフは短3度のバッキングに大きな特徴があり、そのリフが登場した瞬間、Orodruinの魔性はコレだよ、と思うのである。
岩場の奥に仄かな光が差す建物が描かれたジャケのように、静寂さとイーヴルさが同居する世界観が魅力だ。バンドロゴの美しさもイイ。
「クール」という言葉がとてもシックリくるサウンド。派手さを極限まで排除した、落ち着いた感じのドゥームロックからはもはや貫禄すら感じるね。


ORPHANED LAND - All Is One ★★★ (2020-05-18 20:58:17)

イスラエル産プログレッシヴ・フォークメタル2013年作
コレがリリースされる頃は、既に国民的バンドになりつつあり、また、宗教色の強いコンセプトから、アラブ諸国でコレを聴くことを許すかどうか云々の話題や
ノーベル賞受賞の嘆願書をネットで募ったりといった、もはや社会を動かしうる存在になるほどビッグなバンドになっている。それがスゴイ。
この作品頃から、ナマ音のシンフォニーを取り入れたり、音楽性がより壮大になった反面、デスヴォイスが大幅に減少、プログレ要素が減少し楽曲がシンプルに。
また、このバンド全作と比較しても、ややダークな雰囲気が強く感じられる作風だ。メタル要素もやや弱くなり、単にエスニックサウンドを聴く感覚に近いものになった。
コレを良しとすれば、きっと素晴らしい作品と思える筈。ボクはどちらかというと、音響的なクオリティよりも、この作品のメッセージ性や社会への影響の方がスゴイ
のだろうと思うので、日本でノウノウと暮らすボクには、アラビア語もヘブライ語もわからないので、そのメッセージの凄みを体験することができず、
あまり頻繁には聴いていない。実際のところ、メタラーの耳で聴くと音響的なクオリティとしては前作以前の方が良いと思う。


ORPHANED LAND - The Never Ending Way of ORwarriOR ★★★ (2020-05-18 20:37:18)

イスラエル産プログレッシヴ・フォークメタル2010年作
ココのサイトにこのバンドを追加登録した時は、無名バンドで、初期作が手に入りにくかったというのに、想像を絶する勢いでビッグになったなぁと思う。
ボクは2nd、1st、3rdの順でゲットして、初期2作品を聴いた頃は、異国情緒のあるゴシックメタルくらいにしか思っておらず、1stなんて殆ど聴かなかった。
当然、出世作の3rd「mabool」が一番好きですが、続くこの盤は、プログレッシヴ要素をより前面に出した、Orphaned Landの作品群の中でも
最もアグレッシブな内容だなと思っている。これ以降、デスヴォイスをはじめ、メタル要素が徐々に減っていくので、メタル作品としてはここまでが
聴き応えある内容じゃないかなと思っている。


ORPHANED LAND - Unsung Prophets & Dead Messiahs ★★ (2020-05-18 21:14:58)

イスラエル産シンフォニック・フォークメタル2018年作
とりあえず作品がリリースされれば、お勤めのようにCDをゲットしており、前作あたりから路線がヤバいなと思いつつもワリと聴いた作品。
とはいえ、前作の脱メタル志向は更に進んだ印象で、ギターよりもリュート(サズとブズーキ)がより前面に出ている印象。
ギターはリュートとシンフォニーにかき消されがちで、エスニックな感じが前面に出て、メタルサウンドとしてはもはや楽しめない内容、と感じている。
そもそも、前作でもそうだったが、今作でもギタリストがチェンジしていることは、ワリと音楽性に大きく影響しているんじゃないかと思わせる。
また、前作で若干ダークサイドに移行したイメージがあったが、この作品は逆に毒気が失われて、綺麗なサウンドというイメージだ。
メッセージ性の強いバンドなので、このメッセージの内容が判れば、このダークサイドから脱出した音楽性をより堪能できるんだろうと思う。
が、しかし、洋盤で言語が判らないから、もはやどんなメッセージなのかもわからない。割と何回も聴いてみたが、ボクのツボから外れて
コレジャナイ感を感じさせる内容なので、ちょっと残念な作品。以前のようなアグレッシブなギターが聴きたいと感じているリスナーはボクだけではない筈だ。
それでも多分、新作が出たらまた仕事のように予約購入するんだろうな、と思っている。今作の音楽性はさておき、やっぱり動向が最も気になるバンドだ。


ORPHANED LAND - Unsung Prophets & Dead Messiahs ★★ (2023-10-29 19:07:27)

一応購入当時に「前作あたりから路線がヤバい」とほのめかしつつレビューしてるんだなw
ジャケットにはプロビデンスの目、それをぶん殴るかのような拳が描かれ、銃社会批判を思わせるイラスト。
ノーベル平和賞にどうだろう、みたいな声も上がったという、初期のポンコツバンドから一気に国民的バンドに
成長した感のあるバンドだ。
戦地出身ミュージシャンが民放放送で紹介されたり、今年行ったウクライナピアニストのコンサートなどで思うのは、
ミュージシャンの本意とは裏腹に「ウクライナ可哀そうプロパガンダ」に利用されているなぁ。。。ということ。
イスラエルも戦争が始まったので、一応この盤を引っ張り出して、この盤が何なのかはちょっと調べておこうかなと。
まあ、購入当時ジャケを見た瞬間に、一歩引いてしまうところがあったのは、冒頭に書いたプロビデンスの目が要因にあるが
それをぶん殴る形で描かれた拳は、見ようによっては、ネオコン勢力を叩こうという平和主義風にも見える。
それできっとこの盤が支持されているんじゃないかとは感じるところがある。
ボクはこの拳自体が別の秘密結社ロゴに見えるし、描かれる拳銃の銃口がこちらを向いているワケでして
まあ、結局疑惑を持ったまま、なんだか気持ちが悪い盤だな、という風に思うんだよ。
リリース当初は結構評価が賛否両論だった、と記憶してるんだが、今ではどこも高評価。うーん、記憶違いだろうか。


ORPHANED LAND - Unsung Prophets & Dead Messiahs - All Knowing Eye (2023-10-29 19:32:40)

人間の無知や偽善を批判する内容のメッセージが込められる曲だが
曲のタイトルから、いいようにも悪いようにも解釈できてしまう曲。


ORPHANED LAND - Unsung Prophets & Dead Messiahs - The Cave ★★ (2023-10-29 19:24:31)

プラトンの『国家』第7巻にある洞窟を比喩的に引用していると思われる。
実際に起こっている事象は、洞窟のような閉じた空間では実体を誤認してしまう的な感じ。
それで、後の曲のIn Propagandaあたりに関連してくるんだろう。
今の情勢では、まあ、この曲で描かれるメッセージは妥当なんだろう。
『国家』では哲学者の統治者と、イデア論(神の存在)を提唱しているから、まあ
男性が国の教義を生涯勉強し、女性が労働するイスラエルの超正統派の社会性にビンゴという感想を持つが
敢えて西洋哲学者を持ち出すところは、なんだか違和感を感じるところがあるな。


ORPHANED LAND - Unsung Prophets & Dead Messiahs - The Manifest – Epilogue (2023-10-29 19:45:36)

ユダヤ教の教えからピルケーアボート「先祖たちの言葉」に絡めて
朗読調のメッセージが込められる曲。
ザックリ言えば、与えられた仕事に真剣に取り組み、神に感謝せよ。
ということなんだろう。
グローバルな国民的バンドに成長した彼らのメッセージはこういう内容。
次のアルバムで何のメッセージを込めてくるのか、興味があるね。
ただここまでイデオロギー的にも政治的にも濃い内容だと、純粋にエンタメとして楽しめないな。


OSSUARIUM - Living Tomb ★★★ (2020-05-26 00:53:02)

米国産オールドスクールデスメタル2019年作
水に浸かった石造りの墓所のような廃墟のジャケ、裏ジャケは墓地に立つバンドメンバーのモノクロ写真。
「Living Tomb」というアルバムタイトルなどから、オールドスクールデスど真ん中の予感がしてゲットした作品。
適度にドゥーミーなテンポで、ブラスト等スピードや勢いに頼ることなく、湿気と霧を感じさせる雰囲気が素晴らしい。
ギターは血糊を思わせるザックリ感のあるリフを刻み、アヤシげな気持ち悪いギターソロを奏でる。
特にズトボコなドラムがいかにも80~90年代のB級デスメタルテイストで、とても良い仕事をしている。
ジメジメ、ドロドロ感がやたらツボにハマり、オールドファン納得の味わいが楽しめる、オールドスクール王道デスメタルだ!
この時代にこういう音を追求するバンドに出会えることは滅多になく、運よくジャケ買いでゲットできてホントにラッキーだった。
この作品は処女作でありながら、楽曲クオリティが高く、ハイテクではないが、B級デスマニアが喜びそうな非常に味のある演奏をする。
メンバーの経歴を調べてみたが、ギタリストは他に在籍していたバンド情報など見つからず経歴は不明。
ドラムはTrollという、これまた非常に味わい深いバンドに在籍していたようだ。その盤も素晴らしいので、また近々レビューしたい。


OXXO XOOX - Ÿ ★★ (2020-08-19 22:18:47)

フランス産ドゥーム寄りアヴァンロック2019年作
南米のコンビニOXXOのようなバンド名が笑えるが、このバンドはフランスのアヴァンギャルドメタルユニットだ。
全体的にドゥーム寄りな気がするだけで、結構スピーディーに展開する楽曲も多い。男声デスヴォイスと女声コーラス
次々に展開する先の読めない複雑怪奇な楽曲、不穏なギターチョーキング、禍々しいツーバス、重々しいシンセ
重低音なドゥーミーなギター、アコギパート、インダストリアルなどなど・・
多くの要素を盛り込み、全体的にドラマチックな作品を創り上げている。
アヴァンギャルドなメタルが得意なリスナーはマストな作品かも知れない。ボクもアヴァンロックは好きなんだが・・
いかんせんこんなに目まぐるしいサウンドだと疲れる。ただ、結構硬派なメタルサウンドでここまでアヴァンギャルドな作風は案外珍しいと思う。
コレね、たぶんアゴ氏のツボにハマる筈。


OZZY OSBOURNE - Ordinary Man ★★ (2021-01-06 22:50:13)

UK産ポップロック2020年作
ミスマッチなメンバーから、購入意欲が沸かず、購入を後回しにしてたら発売から1年が経ってしまった。ただ、殆ど期待していなかったワリに
予想を超える完成度で、Ozzyという人は何をやってもスゴイ人だなぁと感じてしまう。新ギタリストのAndrew Wattがナニモノなのかさっぱりわからないが
少なくともDuff McKaganが参加し、ゲストにSlashも名を連ねているのだから、Black Sabbathのような英国情緒やホラー風味は全く無い。
妙にアメリカナイズされたサウンド、LAメタルを思わせる作風も登場し、コレは違うだろ・・と思わないでもない。しかしながら、HR/HMにハマり始めた初心者時代
若く感受性が多感な時代に出会ったビッグネームのコラボは◎。ワリと教科書通りな産業音楽的な曲構成、演奏が放つ華やかさに、80年代のノスタルジーが感じられる。
Ozzyも70歳代、上の書き込みで引退宣言を知ったが、丁度この盤が発表された頃にパーキンソン病闘病中を公表したあたり、引退宣言はとても信憑性がある。
しかし、この年齢で、昔と変わらない力強い声量・歌唱力を維持しているところがスゴイ。Ozzyのロック人生晩年はサバス路線あるいは英国情緒のロックで締めて欲しいが
まあ、そうならなかったのなら仕方がない。HR/HMの一時代を担ったOzzyをリーダーとする、ロック集大成サウンドとして聴けば、結構楽しめる作品だ。


Opus Eclypse - The Forest ★★★ (2020-11-15 12:38:32)

スペイン産フォークメタル2018年作
針葉樹林をバックに鹿と頭蓋骨を供えた祭壇が描かれるジャケ、ストレートなアルバムタイトルから、北欧の森林崇拝愛が濃厚に感じられる。
内容は5曲入りでトータル20分にも満たない作品。2000円超支払ったので内容量に物足りなさを感じないでもないが、森フェチの魅力が詰まっているので妥当な対価か。
メタルとは畑違いのゴシック系トラッドバンドTrobar de Morteはスペインの森林崇拝フェチご用達サウンドだが、そのメンバーによるサイドプロジェクトがコレだ。
メンバーのDaimonielがギター&ベースを全て担当しており、クラシックフォークギターとメタリックなギターを融合した、本家路線とは異なるメタル寄りな音楽性だ。
ブラックやドゥーム的様式とは異なるフォークメタル。結構粗削りな演奏だが、イマイチピリッとしない演奏力を雰囲気で充分ガバーしている。、
歪んだバッキングと冷たく繊細なフォークギターのコントラストが美しい。ギターの音量のアンバランスさが若干露呈しつつもシンセの残響でカバーできている。
ヴォーカルはLady Morteで女声だ。本家ではマルチに楽器を使いこなし、学がある人だなと感じさせるが、ゴシック系のヘヴンリーヴォイスに魅力がある。
メタルではなかなかお目にかかれないタイプのヴォーカルで、その独特な歌唱法が森林で呪術を施しているような妖艶さを感じさせる。
サイドプロジェクトなので本腰で活動し続けるかどうかは不明だが、20分程度とはいわず、バッチリと尺のあるフルレングスアルバムを熱望するところだ。


PAGAN ALTAR - The Room of Shadows ★★★ (2020-06-22 00:24:13)

英国産ヴィンテージロック2017年産
若干ローファイ録音で70年代NWOBHM的空気を醸し出す、渋み満点のサウンドだ。
適度に歪んだ、高音をやや強調したエフェクトを施したギターの、やたら玄人っぽい演奏が魅力的だ。
ヴォーカルは、カントリーサウンドによくある、酒をあおって歌っているかのようなオヤジヴォイスで味わい深い。
80年代初頭から長く活躍するバンドだけあって、貫禄がある。昔は友人が「オジー似のヴォーカル」と言ってよく聴いていたが
まあ、オジーほどの魔力こそ無いが、そう言われれば似てなくもない。このヴォーカルの魅力はその声質そのものにある。
Witchcraftは音楽性が非常に近い。Witchcraftがもう少し年齢を重ねると、Pagan Altarにそっくりになると思う。
というか、Witchcraftが混迷してきていると感じている今、ボクとしてはこういう路線ではPagan Altarを推奨したい。


PAGAN REIGN - Ancient Fortress ★★★ (2020-09-26 02:06:09)

ロシア産ペイガンメタル2006年作
ロシア語表記の盤と、英語表記の盤の2種類があり、我が家にあるのは後者。ホントはロシア語表記の盤が欲しかったが・・・。
ちなみにロシア語のタイトルはТвердьだ。単語数からして違うので、意訳しているのだろうと思う。
とりあえず彼らはボクにとってペイガンメタルゴッド的存在。全作品必聴盤だ。彼らほどアツいペイガンメタルはなかなか聴けない。
Уделы Былой Веры(2004年)はクサめの旋律と激しさに、土着的な民族情緒をスパイスした作風に相当ハマったが、この作品は
前作の路線延長上ではあるが、Pagan Reignの数ある作品中、最も豪胆で突き抜けた激しさがある。もはやヤケクソに近い激しさに圧倒される。
フルートやマンドリン、ロシア民族楽器SopilikaやDomraを前作以上に大々的に取り入れているところが大きな特徴。
突っ走る時は疾風のように爆走し、ブラックメタル的ガナリ声のヴォーカルは絶叫する。民族楽器の演奏がペイガニズムの浪漫を掻き立て
非常にファイティングスピリットの高いサウンドを聴かせてくれる。アドレナリンが分泌され異様な高揚感を体験できる。
前作は激しくも落ち着きのある作風だったが、今作は全く落ち着きがナイ。走り気味の凄まじいグルーヴ感が激アツなのだ。
民族楽器の弦を高音で奏でると、こんなにも張り詰めた緊張感が出るんだな。単に民族情緒を思わせるスパイスにとどまらない演奏効果があるね。


PAGAN REIGN - Art of the Time ★★★ (2020-10-19 20:52:13)

ロシア産ペイガンメタル2019年作
前作から1年足らずで発表された新作でありながら、とても作り込まれたハイクオリティな作品。
もはやこのバンドの右に出るペイガンメタルは、当分の間巡り合えないだろうと覚悟したくらい、とてもボクのツボにストライクなペイガンメタルだ。
前作同様に非メタル的なアカデミックなジャケだが、中身は相当濃いメタルサウンドだ。前作の延長線上にある音楽性ではあるが、前作の落ち着いた作風に加え
再び激しさが増した印象、また、ロシア民族楽器のメタルサウンドへの融合度合いが相当高くなり、ギターと同じくらいの存在感がある。この民族楽器とギターの
コラボレーションに全く違和感が無く、ハイボルテージな緊張を作り出しているところがスゴイ。ギターのトレモロリフと同等の存在感で、アタックの強い高音域の
民族楽器のトレモロリフが登場する。民族情緒にとどまっているバンドが多い中、民族楽器の導入によってサウンド効果を存分に発揮しているバンドとしては
Pagan Reignに敵うバンドは今のところ存在しないと言える。同路線フォークロアメタルの勢いが萎えてきていると感じる昨今、このバンドの存在は貴重だ。
初期からあまり変わり映えのない、ストレートでクサめな旋律を多用する楽曲でありながら、何故か毎回期待以上の作品に仕上がっているところは素晴らしい。
このバンドはクサいメロディを恥ずかしげもなく盛り沢山取り入れ、たっぷりの自信で豪胆に、最大のエネルギーで奏でるから、有無を言わさず納得してしまう。
また、ブラックメタルスタイルと、低音で朗々と歌い上げるスタイルを併せ持つヴォーカルが相当ウマい。絶叫しているのに煩わしさを微塵も感じさせず
欲求不満を瞬間解消してくれるかのような潔さと勢いがある。
ギターの質感がドゥーム的音像やブラックメタル的シャリシャリな音像のペイガンメタルをボクは好む。しかしこのバンドは例外で、非常にエクストリームな
ヘヴィメタル的音像でありながら、何故かボクのツボを突きまくる。尖ったエクストリームなギターをハイボルテージで刻んでしまうと、煩くて仕方ない筈なのに
このバンドの音はそんな音響でありながら、全く煩わしくなく、カッコいいと感じさせるから不思議だ。


PAGAN REIGN - Once Again ★★★ (2020-10-13 21:21:16)

ロシア産ペイガンメタル2018年作
ボクにとってペイガンメタルレジェンドな存在のこのバンドのまさかの12年ぶり作品。気付いてゲットしたのは1年後くらいだったが狂喜した。
民族楽器の弦部分のアップに、木の削り屑という、アカデミックな民族楽器作品のようなジャケの雰囲気。過去作品から雰囲気がガラリと変化。
前作Твердь(2006年)が、凄まじいグルーヴと突き抜けた激しさが特徴的な、常に戦闘態勢にある豪胆且つ攻撃的な作品だったが
この作品は、激しさはそのままに、安定感抜群の、落ち着いた、品格を感じさせる作風になり、非常に完成度の高いサウンドとなっている。
相変わらずクサめな旋律を大胆に使用し、全く違和感なく民族楽器の響きをメタルサウンドに融合させているところが素晴らしい。
その上、起伏に富んだ楽曲のクオリティも非常に高い。もうこのジャンルでは右にでるバンドはいないと思わせる程の鉄板作品だ。
既にペイガンメタルの頂点に君臨したと感じさせる唯一無二の作品、これ以上どう進化するのか、思わせておいて、間髪入れず1年後に新作が出ている。
それがまたこの作品を凌ぐ程のクオリティなんだから、このバンドの懐の深さに唖然としてしまう。ペイガンメタルファンはマストな作品だ。


PALE DIVINE - Consequence of Time ★★★ (2020-08-22 22:21:59)

米産ヴィンテージドゥーム2020年作
昔から70年代ヴィンテージドゥームロックを意識し、結構渋味あるオールドファン向けの古典ロックを追求している感のある彼ら。
ツインギターヴォーカルというスタイルで、一方はメインヴォーカルでたまにハモるという感じなんだが、昔はそのヴォーカル部分が
若干弱いな、と感じていた。また、結構作品をコンスタントにリリースしているが、ヴィンテージ臭ある古典的な作風の魅力に反して
ギターの音自体は、盤ごとに試行錯誤が見えた。Painted Windows Black(2012年作)あたりではヘヴィなギターが若干煩わしさを
感じさせて、勿体ないなあと思っていた。ただ、自身のバンド名をタイトルにした次作Pale Divine(2018年作)でギターが若干改善。
とはいえ、ボクとしてはもう一押し欲しいと思わせる盤だった。曲も演奏も完璧なんだが、無駄に凄みを効かせる不自然さが邪魔に思えた。
楽曲が素晴らしい上、ヴィンテージドゥームらしい渋味を常に宿しているので、どの盤でも安定のクオリティだが、ハマって聴き続けた
作品というのもあまりなかった。トップクラスの味わいを持つ反面、どこかひとつ難点があり、かつ、年配向け化石ロックのイメージが強すぎる。
そういうイメージも手伝って、マイフェイバリットバンドとまではいかなかったバンドだが、この新作を聴いた瞬間に、不満に感じていた
難点が全て払拭された。コレは今まで培ってきた持ち味を最大限に発揮した、音響的な難点を全て克服した、非の打ち所の無い完璧なサウンドだ。
歪みを抑えたことで、ここにきてギターの音が完成された感がある。70年代的ヴィンテージ臭と迫力あるイーヴルな感じが、これ以上ナイ最適な状態だ。
また、ヴォーカルは無駄な凄みが消えて、最大の持ち味であるロングトーンやハモリ、そして独特のビブラートが相当カッコ良くなっている。
今までヴォーカルの弱さに若干の不満を感じていたが、今作も決して音程がうまく取れているとは言えないにしても、泥臭く、渋味を醸し出しており
大きな魅力に転換しているところが素晴らしい。ホントたまーに登場する高音域が、70年代的空間エフェクトにベストマッチして刺激的だ。、
また、単にPentagramやTroubleあたりのヴィンテージドゥーム的な空気があるだけではなく、作り込まれたハイレベルの楽曲とギターテクニックがスゴイ。
インナーのメンバー写真で、ギターのDana OrttがBlood FarmersのTシャツを着ているが、Blood Farmersほどの生臭さは無いにしても音楽性は非常に近い。
ヴィンテージドゥーム路線で、このバンドがボクの中での順位付けが一気に上がった。この路線が好きなリスナーは、初っ端1曲目を一聴しただけで
きっと、その凄みを思い知ると思う。


PARADISE LOST - The Plague Within ★★ (2020-05-05 21:58:31)

UK産ゴシック2015年作
前作で初期作品への原点回帰を垣間見せた感じだが、この作品では更にその志向が強まり、濃さが増している。
どーしても初期作品と比較してしまうので、作品としては及第点評価になってしまうが、少なくともギターのネットリ感は相当クオリティ高い。
どうして歌ってしまうかなぁ・・・と相変わらずコレジャナイ感を胸に秘めつつ聴いている。
また、ギターや歌のハーモニーを意図的に聴かせるような感じもいらないんだよなぁ・・もっと無骨でいいのに。
ただ、徐々に初期の真性さを取り戻しつつあるのは確かだ。


PARADISE LOST - Tragic Idol ★★ (2020-05-05 21:48:45)

UK産ゴシック2012年作
初期作品で衝撃を受けたボクとしては、初期2作品が神盤、3作目は佳作、それ以降は全く受け付けないサウンドで
長年コレジャナイ感を胸に秘めつつも、一応はチェックし続けている。
デスメタル黎明期に多くのバンドがスピードや音数によるアグレッシブ志向になる一方で、ドゥーミーな重さで登場した処女作は異端だった。
まだゴシックメタルというジャンルが確立されておらず、デスメタルの枠組で登場した2作目Gothicは、当時はこれほど頭痛を引き起こす程のデスヴォイスは希少で
かつ、女声を取り入れたサウンドというのも珍しく、ローファイ志向ながら神々しい耽美さが宿る世界観に圧倒され、これ以降、ゴシックメタル作品を漁るきっかけになった。
少なくとも初期作品のショックをタイムリーに体験していると、それ以降の、ヴォーカルがクリーンに歌うような作品はコレジャナイ感が満載で、ほぼ受け付けない。
長らく受け付けない作品が続いたが、この作品でやっと、初期・特に2ndで感じられた濃さが少し蘇った感じがする。ただ、やはり歌っちゃうと濃さは半減してしまう。
Gothicで感じられた、粘り気のあるギターの質感が再び戻ってきた。中期以降のファンは戸惑うかも知れないが、この感じこそがParadise Lostの魅力なのだ。


PARADISE LOST - Tragic Illusion 25 ★★★ (2020-06-07 20:33:57)

英国産ゴシックメタル2013年作
Paradise Lostの25周年企画盤で、新曲やカヴァー、オーケストラMIXヴァージョン、過去作の録り直し作品が収録されている。
初期の無骨な音を好むボクとしては、近年の綺麗なParadise Lostのサウンドはイマイチなんですが、そうは言っても
この盤に収録されている初期2作品の看板曲「Gothic2013」「Our Saviour2013」は、改めて当時の作風が凄かったことを
思い知らされる素晴らしさがある。また、Silent In Heartは、IN REQUIEM (2007年作)の録音より、この盤のように
ディレイを深く咬ませた録音の方が断然カッコいい。たぶんボクがこの盤を気に入っている理由は、エフェクトのかけ方が
Gothic(1991年作)に非常に近いからだろうと思う。


PATH(Путь) - Песни смерти ★★★ (2021-01-13 11:32:59)

ロシア産ブラック2018年作
アルバムタイトルの英訳はたぶんSongs Of Death、日本語訳は「死の歌」だろう。
この作品を知ってから約1年くらい経ったと思うが、価格が下がるのを待ち続けるも、新作EPがリリースされてしまったので、手に入らなくなる前に高額でもゲット。
送料込みで88ユーロ、CD1枚に1万円以上散財したのは久しぶりだ。デジタル作品だと安価なんだけどやっぱり味気ないので、CDで手元に置いておきたい。
ネット情報でいろいろ調べると、世間評は抜群にいいという程ではなさそうだが、結構な高評価。サウンドクオリティもさることながら、ジャケデザインの素晴らしさ
が10年に1枚レベルのハイクオリティだ。針葉樹に雪が降り積もる雪山、1軒の簡素な家、木柵に頭蓋骨が2個、ローブを纏った骸骨がアコーディオンを奏でている。
そんな寒々とした雰囲気漂う地で、アルバムタイトルでもある「死の歌」を骸骨が奏でている光景が、油絵調のタッチで描かれている。
沢山の針葉樹が生えているように見えるバンドロゴといい、描く世界観がどストライクですよ。ちなみにこのバンドロゴのシールがオマケでついてきてちょっと嬉しい。
PCで鑑賞していた頃は、音響的な素晴らしさが伝わってこなかったが、実際にプレイヤーで鑑賞すると、万全な音響で、ブラックメタルでは薄くなりがちな低音部が
音割れもなく図太い重低音で聴ける。サウンドスタイルはギターとヴォイスがオーソドックスなブラックメタルスタイルだが、ややヘヴィメタル寄りな曲構成である。
強力な独創性として挙げられるのは、ジャケデザインにもあるアコーディオンの存在だ。アコーディオン導入部分は多くはないが、このパートが登場した途端に独特な
空気に包まれる。極寒を思わせるシンセ、アタック部分を意図的に強調した生々しいアコギなど、寒冷地の叙情を盛り立てる要素を絶妙に導入しているところも素晴らしく
総合的にクオリティの高い濃いブラックメタルを展開する。ギターは残響音が浅めで標準的な歪みだが、ベースの重低音が際立っているので音の輪郭が判りやすくて良い。
演奏は若干走り気味なタイム感がむしろ豪胆に感じられて、粗削りさがむしろアングラ臭と勢いを感じさせ、独特なグルーヴを生んでいると感じる。
世界観と音がバッチリ一致してて、サウンドクオリティが高い盤だ。全ての楽曲が素晴らしいとまで言い切れないところが玉に瑕ではあるが、そんなのは些細な事。
漂う雰囲気・寒冷地の叙情とイーヴルで豪胆な感触が弱点を全て打ち消している。ちょっとコレはボクにとってお宝作品になりそうである。


PATH(Путь) - Песни смерти - Культ 1: Огни далёких холмов ★★★ (2021-01-13 12:05:55)

ギターピッキングのアタック音を故意に際立たせた感のあるアコギと、音割れ寸前まで際立たせたアコーディオンから始まるナンバー。
その禍々しさを保ちながら、疾走感溢れるブラックメタルに突入する感じが素晴らしい。非常に完成度の高い楽曲だ。
耳に障るキツめの中・高音部が禁忌に触れた感覚を呼び起こす。恐らくこの曲と次の曲は、ナンバリングされている曲名から、組曲として解釈して良さそうだ。
次の曲への伏線というよりは、この楽曲自体の完成度が高いと思う。


PATH(Путь) - Под крылом смерти ★★★ (2021-03-16 01:17:34)

ロシア産ブラックメタル2016年作
恐らく処女作品、このバンドが持つ大きな魅力であるアコーディオン導入は、この盤時点では無い上、インストである。
若干ドラムが前面に出過ぎている感は否めないが、絶妙な歪みを持つギターはこの盤でも体験することができる。
次作以降の素晴らしい盤を世に出す下地は、ギターエフェクトと荒廃的な音響という点で、ある程度この盤から感じられる。
ヴォーカルとアコーディオン入りの次作以降に慣れているため、若干未完成な印象はあるものの、ギタリストの音作りへのコダワリが感じられる好盤だ。


PATH(Путь) - Юдоль скорби ★★★ (2021-02-19 15:57:41)

ロシア産シンフォニックブラック2020年作
5曲入りEP、フルレングスアルバムではないから少々物足りなさはあるが、素晴らしい作品だ。
前作Песни смерти (2018年)は、オーソドックスなシンフォニックブラックスタイルが基本でありながら、アコーディオンが登場した途端に
独自の世界に一変する作風がかなりツボにハマった。楽曲が若干弱いかなと感じつつも、唯一無二の独創性と寒冷地の叙情と危険臭に魅入られた。
今作は荒涼とした草原と馬車、遠くの夕焼け、上空の闇夜にカラスが飛び交うジャケが素晴らしく、荒廃的で死臭が漂う感じがこの音楽性にジャストフィットだ。
前作同様にアコーディオンが大胆に導入されている。絶妙な歪みのギターとアコーディオンのハーモニーが、荒涼とした大地と田舎臭さを醸し出し
更に、ブラックスタイルにとどまらないアコースティックギターが絡むと、非情に濃いカルト臭・死臭が漂ってくる。
前作で若干感じた楽曲の弱さは無く、完成度が高い。不穏な響きを奏でるコードワーク、練られたリフ、語り口調のヴォイスの導入など、随所に工夫が見られる。
単に森林を思わせるブラックは多いが、それにとどまらず、攻撃性が強めでありながら、叙情と死臭が感じられる作風はこのバンド特有の世界観だ。
激しさがあるものの、サタニックブラックで良く感じられる誇張された魔性やわざとらしさ、コマーシャルな感じの凄みが感じられず、自然体なところが良い。
コレは今後のフルレングスアルバムに相当期待してしまう。前作と併せて猛烈にオススメしたい盤だ。


PATH(Путь) - Юдоль скорби - Семигласие смерти ★★★ (2021-02-19 22:46:04)

トレモロリフによるシンフォニックブラックでありながら、濃厚にドゥーミーなリフ、アコーディオンがアヤしく絡む様が素晴らしい。
カラスが飛び交うジャケ絵の世界観そのままに、瘴気に満ちた死臭が漂うサウンドに圧倒される。
8分超えの大作で、アルバム中この曲が特に素晴らしい。負のオーラがありながら叙情性に富み、とてもドラマチックだ。


PATH(Путь) - Юдоль скорби - Холодная весна ★★★ (2021-02-19 22:58:29)

Cold Springと訳されるタイトルの曲。このEPの直前に宅録と思われるヴァージョンが発表されており、その曲の再録だ。
この宅録ヴァージョンのローファイ感はむしろ素晴らしかったが、この再録版も捨てがたい。
女声の語りが入り、ドゥーミーなリフとアコーディオン、嘆きのようなヴォーカルが歌い上げる。


PATH(Путь) - Юдоль скорби - Юдоль скорби ★★★ (2021-02-19 23:08:24)

アルバムラストを飾る楽曲。イントロ部分で荒廃した大地を思わせるも、激情にも似た激しい展開を見せる。
絶妙なギターの歪みが不穏な空気を醸し出し、アコーディオンの調べによって不幸のどん底に突き落とされる。
終盤に登場するドロドロした印象的なギターリフが優秀だ。


PENTAGRAM - Curious Volume ★★★ (2020-04-29 23:00:25)

米産ドゥームロックレジェンドの2015年作。
80年代から(デビュー前に15年くらい下積み期間がある)硬派で頑固なロックをやっており
オリジナルメンバーこそヴォーカルのみだが、ローファイ志向の化石のようなスタイルを堅持し現役で活動している。
ボクはこのバンドの作品は随分長く愛聴しており、自分のドゥームサウンド探求のルーツでもある。
この盤でも、ブレることなくドゥームロックの原点的なヴィンテージサウンドを聴かせてくれる。
そういうバンドだから決して判りやすい個性があるワケではなく、一口でサウンドを説明することが難しいが、
長くPentagramを聴いていると、リフを一聴しただけでPentagramだな、とわかる独特な癖、濃く深い味わいがある。
コレジャナイ感を感じるアルバムをリリースした時期が無いワケではないが
作品リリース毎に、ローファイ志向を頑なに守りつつ、職人気質に中身の渋みが色濃くなっていく。
その濃さはこの盤で最高潮に達しており、何度繰り返し聴いても、飽くことなく堪能できる。
このバンドはこれからも長く活躍してほしいとホント思う。早く次の作品が出ないかな。


PERSISTENCE IN MOURNING - A Tongue of Bone ★★★ (2021-09-15 22:59:52)

英国産フューネラルドゥーム2020年作
Andy Lippoldtという人のドローン寄りインダストリアルドゥームプロジェクト。多くがカセットテープや他バンドとのスプリットなので長く購入を控えていたが
CDでのリリース作品を発見したので即ゲットした。恐らく録音年はもう少し前なんじゃないかなと思う。ちなみにDying in the Darkness(2020年)が最新作
ではないかと思うが、コレはカセットテープでのリリース。底辺の良作ドゥーム作品はカセットテープリリースが多いと感じる今日この頃だ。
人生残念ドゥームは結構多いが、WORSHIPやUNTIL DEATH OVERTAKES MEあたりの、群を抜いて底辺を行く絶望感を漂わせるバンドにはそうそう出会えない。
このバンドはそんなレジェンドに匹敵する底辺サウンドを聴かせてくれる。純然たるドゥームといった感じではなく、結構エクスペリメンタルテイストがある。
叫び・嘆きのようなヴォーカルは、ヴォコーダーを咬ませているような電子処理がされ、鈍重な音像のギターによるドゥームを展開させるが
ナイロン弦の質感があるギターを織り交ぜ、まるでアングラフォーク独特の翳りとも言える残念感をも併せ持つ。録音の残響は万全とは言えないが
冷たい緊張を表現する様々なサウンドスケープ、蠅が飛び交っているかのような醜悪なノイズなどが、サウンドクオリティを随分と底上げしている。
近年のUNTIL DEATH OVERTAKES MEと同様、ビートを排除した楽曲。底辺の残念感を表現するのに軽快なビートは不要だ。
このサウンドからは、焦土と化した全てを喪失したかのような世界、死体すら腐りきったかのような、孤独感と絶望感が感じられる。
上級者向けドゥームだが、限りなく底辺の残念ドゥーム且つインダストリアル風味を盛り込んだ前衛的なドゥームに興味があれば、コレは必聴盤だ。


PERSISTENCE IN MOURNING - God is Not Here ★★★ (2021-09-19 22:57:39)

英国産フューネラルドゥーム2012年作
サブタイトル「The Fifth Year Of My Idiotic War」含め、日本語訳をすると「神はここにいない、私の愚かな戦争の5年目」だろう。
ケースが大きいので購入を控えていたが、先月ついにゲット。DVDやPS4のソフトと一緒に収納せざるを得ないサイズでちょっと困る。
もはやこのタイトルで、聴く前から底辺の残念感が漂い、大方サウンド内容の暗さは予測できるが、中身は人生残念感を堪能するドゥームというよりは
ダンジョンシンセ・ダークウェイヴあたりの音楽性と言った方がいいかも知れない。
10年前の作品で、録音状態は時代相応と感じさせるが、ノイズの工夫やさりげないサウンドスケープにスキルを感じさせるところは固有の魅力だ。
ここまで残念度が高いと、Andy Lippoldtという人物、果たして友達はいるのか、一体どんな人生を歩んできたんだろうと心配してしまう。
それくらい絶望感が溢れている。この作品は近作よりもアンビエント寄りで静寂の表現中心で、激しさは僅かにあるものの物静かな暗さの方が勝っている。
Dying in Darkness(2020年)の方が録音がクリアで、起伏があり判りやすい音楽性。どちらも濃い盤だが、ダンジョンシンセ的サウンドなので
今作の方がより上級者向けな気がするね。Until Death Overtakes Meの空気を好むリスナー向けだ。
若干コモリ気味の録音状態はむしろ味わいとして感じられ、Dying in Darknessとは異なる趣きの作品という捉え方をしている。


PESTILENCE - Exitivm ★★★ (2021-08-22 19:40:53)

オランダ産オールドスクールデス2021年作
前作「Hadeon」(2018年作)で、Pestilenceの復活の兆しを見たので、今作は結構期待していた。彼らの作品でボクが認めるのは初期の神盤2作品
CONSUMING IMPULSE (1989年)、TESTIMONY OF THE ANCIENTS (1991年)である。前作はその当時のサウンドに回帰した上、新たな挑戦を感じる
ギターワークに感銘を受けた。但し、前作はまだ完成形とも思えず、良い頃の作品に匹敵するとまでは言えない、と思っている。
今作品、とりあえず1曲目を聴いた瞬間、前作1曲目に酷似しているリフの感じで、全く前作と同じ音楽性かと猜疑心が沸いてしまう。
ところが、決してそうではなかった。没入感と楽曲の作り込み度合いは、こちらの方が素晴らしい。かなり内容の濃い作品に仕上がっている。
Pestilenceのギターリフの特徴として、敢えてスッキリと帰結しない、2度間隔の移動を駆使して調性のわからないリフを刻む独特のクセがある。
また、前作から前面に出してきたギターソロ部分の摩訶不思議な旋律という、この2つの固有の手法を元に、複雑に曲を構成している。
Patrick Mameliの手癖も含めて、オンリーワンな個性である。調性不明な不安定さを綿密に計算、複雑怪奇に組み立てている頭脳派な楽曲だ。
ドラムの手数が多く、ヴォーカルの攻撃性が増していることもあり、疲労感が半端ナイのはマイナスだが、やっと本領発揮の渾身作が聴けたと感じる。
まあ、神盤2作品を超えるのは厳しいにしても、ボクは相当気に入っている。難点はまあいくつかあるが、当時と比較して最も差を感じるのは
ヴォーカルスタイルだ。当時は、やるせない嘆きのようなデスヴォイスにマゾっ気があって、疫病に感染しちゃった感が素晴らしかったのだが
現在は無駄に攻撃力があってサディスティックなところに違和感を感じる。コレ、当時のマゾヴォイスだったら、相当素晴らしい盤になったのでは?
と思うんだけどねぇ。


PESTILENCE - Hadeon ★★★ (2020-05-31 22:39:41)

オランダ産オールドスクールデスメタル2018年作
オリジナルメンバーはPatrick Mameliのみで、それ以外は全員ルーマニア人になっている。
とはいえ、この人がヴォーカル兼リードギター、作曲の大半を行っているので、他メンバーが入れ替わってもあまり問題ない。
しかし、あまりにメンバーチェンジが多いので、ワリとこの人が中心のワンマンバンドなんだろうと感じる。
おまけに、最近は髪の毛を辮髪にしているようだ。
Consuming Impulse(1989年)、Testimony of the Ancients(1991年)と神盤を連発して当時のデスメタルでは
コレを超える作品はナイと個人的にナンバーワンだったが、次作Spheres(1993年)で大々的にシンセを取り入れ若干空振るも
新たな音楽性に向かってチャレンジする独特な音楽性にかなり期待したものだ。が、解散してしまった。
2009年に奇跡的に復活するが、良い頃の持ち味を掻き消すかのようなモダンヘヴィ的なサウンドに何も良さを見出せず
その後2作品もコレジャナイ感が満載なボクとしては残念な作品となり、もう追いかけるのは終了、と思っていたところ、
忘れた頃に突如この作品をリリースですよ。全く期待せずに当時はゲットしたんですが、コレは!!素晴らしい。
本当のところは、神盤2作品の路線を再現して欲しかったんですが、コレはSpheresで新要素を予感させた、その次の作品という
イメージに近い内容だ。もはやバンド名(ペスト・疫病)のイメージとは全く異なるサイバーデスメタル的な作品だ。
とはいえ、決してインダストリアルに音処理がされているのではなく、3rdの頃のギターの音で、楽曲構成でサイバーを思わせる内容だ。
当時の神盤を超えたとまでは言えない内容だが、Patrick Mameliの新たな挑戦を感じさせる音楽性で、特にギターソロがスゴイ。
決して速弾きがスゴイというのではなく、このサイバー世界観を感じさせる摩訶不思議な旋律のギターソロがスゴイのだ。
最初ジャケ裏に書いてある曲名の字体で、コレはもうダメかな、と半ば諦め気分が濃厚だったが、良い意味で予想を裏切られた。
良かった頃のギターの感触が帰ってきた上、新たなサイバー感覚が加わるという、ワクワク感が蘇る作品だった。
Pestilenceが、オールドスクールデスのボク的順位格付けにおいて、大きく再浮上した会心の作品だ。


POEMA ARCANUS - Arcane XIII ★★★ (2020-05-20 01:32:20)

チリ産アヴァンギャルド・デスドゥーム1999年作
このバンドは5つの作品がある。一応全て聴いているが、気に入ってゲットしているのはこの処女作とTransient Chronicles(2013年作)だ。
3rd、4thも捨てがたい魅力はあるんだけど、このバンドの作品は、色々なジャンルの要素や前衛的なアプローチを取り入れようとするあまり
総じてまとまりに欠けるところが感じられる。そういうこともあり、最も好きな処女作、集大成的な後期作を所持している。
特にこの処女作は、これ以降の作品に比べてきちんとまとまっている感がありクオリティが相当高い。ドゥームマニアには是非ゲットして欲しい異端作品だ。
骸骨の魔女のようなジャケが非常に素晴らしいが、この音楽性を一言で言うならば、「呪術的」な感じだ。まずこのサウンドを聴けるかどうかは
相当癖のあるクリーンでありながらも低いトーンで呪詛のように歌い上げるヴォーカルを受け入れることができるか、にかかっていると思う。
この声を受け入れることができれば、この呪いのようなデスドゥームサウンドに引き込まれること間違いナシだ。
ギターは派手な演奏ではないが、ズルズルとミドルテンポで刻み、多彩なシンセや、魔性を帯びた女声コーラスなどで、独自の世界を創り上げている。
チリ産というレアさ、前衛的な作風、非常に濃い呪われそうなダークファンタジーの世界、コレに反応する人はマストな作品だ!、


POEMA ARCANUS - Transient Chronicles ★★★ (2020-05-24 18:26:47)

チリ産デス・ドゥーム2012年作
処女作の頃よりも演奏技術が洗練され、もちろん録音状態も向上し、全体的なクオリティがアップ。
過去作に比べてアヴァンギャルドな一面が落ち着いたように聴こえるのは、アングラ臭の抜けた音質向上のせいだろう。
決してアヴァンギャルドな面が薄れたワケではなく、リフ構成・リフそのものや、異空間を彩るパルス音など
結構手の込んだ内容となっている。濃厚な呪術的なドロドロ感は処女作に譲るが、この作品でも音痴な低音ヴォーカルが
呪いの言葉を呟くように歌い、どこか気持ち悪い感覚を引き起こす。
ボクは処女作のローファイ仕様の方が好みだが、コレはコレで、ハイクオリティな録音でズッシリ重いサウンドが魅力的だ。
キャッチーさがナイし、変拍子が多いのもあって、耳に馴染むには少々時間がかかるかも知れないが
繰り返し愛聴していると、徐々にその魅力に気付かされる、そんな作品だ。


PORTAL - Swarth ★★★ (2020-05-10 17:35:03)

オーストラリア産アヴァンギャルドブラック2009年作。
ウチにはPortalはこの作品と次作Vexovoidの2枚がある。音像はデスメタルとブラックの中間くらいな音。
猛烈な激しさと音圧が特徴で、派手さがなくクールなスタイルが真性さを醸し出している。
楽曲は複雑な展開を見せ、テンポの緩急がスゴイ。よく演奏が合わせられるなと感心するくらい。
もうとにかく圧倒的な真っ黒サウンドが聴きたい人は、このバンドは避けて通れない。


PORTAL - Vexovoid ★★★ (2020-05-10 17:54:41)

オーストラリア産アヴァンギャルドブラック2013年
ベーシストがチェンジしているみたいだが、音楽性や方向性は変わらず、録音状態が少し向上して、更に迫力を増した。
音像が真っ黒いノイズの塊で、雪崩のように、怒涛のように襲い掛かってくる。
拍子が一定ではなく不規則なので、先が読めない不安感を煽られ、暗黒の渦に放り込まれる。
現在エクストリームサウンドではこのバンドを凌ぐバンドはいないと言えるくらい凄まじい。
ボクには少ししんどい。しかし、最高潮に激しく重くアヴァンギャルドな音楽性を求める人には神盤になるだろう。


PORTRAIT - At One with None ★★ (2022-05-18 07:34:10)

スウェーデン産HM2021年作
最近たまに楽しんでいる作品。MetalBladeからのリリースなので、恐らく肌に合わんだろうなとは思っていたが、案の定合わない。
特にドラムが煩いんだよね。バスドラが刻み過ぎだし、スネアもバシバシ力一杯叩いてて、なんだか平べったい。
だったら聴くなよ、と思うかも知れないが、このラフの感じと、ギターのリフ、質感はなかなかツボにハマるんですよ。
もう少しギターのリフもスリムな音質だったらいいのに、とは思うが、刻み過ぎではあっても、鈍重なリフがカッコいい。
スピーディーなリフも多く登場するが、意外に受け入れることができている。ガムシャラな感じが結構心地よい。
そういうリフにギターソロが乗るところの雰囲気も申し分ない。だからこそ、全体的に賑やか過ぎる点が勿体ない。
そういう今一歩足りないバンドは多いと思うが、このバンドが捨てがたいのは、ヴォーカルスタイルに魅力があるからだ。
まるでKingDiamondのような裏声が登場するんですが、コレが結構シビれる。随分昔にハマったKingDiamond的ノスタルジーが魅力である。
楽曲は結構カッコいいし、走り気味の独特のグルーヴ感もいいね。しかし。なんにしてもMetalBlade録音から離脱しないとボク向けではナイな。


POSSESSED - Revelations of Oblivion ★★★ (2020-04-23 17:08:54)

再結成で蘇るバンドこそ多いが、再結成モノで最も衝撃を受けたのはコレだ!
デスメタルにドップリとハマった中学3年生~高校時代には、既にこのバンドは短命で解散寸前
Death、Obituary、Morbid Angel、Pestilence、Entombedあたりがジワジワと台頭し始める時代に
デスメタルのルーツを追い求めて80年代前半から活躍するバンドを漁り始めた頃に出会ったのがPosessedだ。
クレカも無く通販という技も体得していない若造だった自分は、僅かなバイト代を持って1時間半かけて街中へ出かけ
唯一デスメタルを売っているタワーレコードで探すしか手段を持っていなかったが、そうやってCDを探すことがライフスタイルになった頃
やっとの思いで見つけたのが、Beyond the Gateだった。
アルバムの完成度は微妙ではあったが、ハイテクなギターと微妙にモタるドラムのギャップが個性的なサウンドで
当時台頭し始めたバンド群に比べて、録音状態もやや劣るといった感じだった。
しかし、サタニックな世界観に魅力があり、次の作品は絶対に欲しい!というアツい思いを持っていた、が・・
結局作品は発表されず、Possessedは過去のバンドとして殆ど忘れた存在になってしまった。
デスメタル黎明期に青春を過ごした世代としては、この33年越しの再結成&新作発表は、有り得ない衝撃的な事件だ。
当時のメンバーはヴォーカル以外総替わりしているのが残念、特にあの個性的で過小評価されていたドラマーがいなくなってる。
しかし、当時Possessedを少しでもかじった人は、是非このサウンドを聴いてほしい。
Possessedのハイテクギター&構築的な楽曲、Possessed節とも言える独特なリフなど、当時のテイストを残しつつ
全体のクオリティーを一気に上げて登場してきた。
サタニックさを思わせるギターの小技やモタるドラムは残念ながら一新されているが
自分世代のデスメタラーには、これほど痛快な作品は滅多に出会えない。
なんでもヴォーカルは爆発事故かなにかで半身不随になってて、ライブでは車椅子に座って歌っていた。当然
ベースは新たにベーシストが加入している。
大怪我を乗り越えて、よくぞPossessedの新作を発表してくれた。
コレを聴くと、当時のデスメタルシーンと青春時代が蘇り、妙な懐かしさと共に元気が出てくるんだよ。


POSSESSED STEEL - Aedris ★★★ (2021-02-01 20:11:23)

カナダ産エピックメタル2020年作
最近はいろいろ試聴していると、PCが勝手にオススメ盤を教えてくれる。AIというヤツなのかね。コレが結構ストライクゾーンを突いてるからスゴイ。
昨年末、この作品がオススメとしてPCにメッセージが届いた。きっと森メタル系の試聴を多くしていたから、コレがヒットしたんだろう。
翻訳はしていないが、歌詞を見た感じでは、森の守護者が死の森を抜け、ラスボスのいる領土にてスケルトンキングを打倒する、といったストーリーか。
そんな壮大など真ん中エピックファンタジーをコンセプトとした9曲と、ボーナストラックかつ迷曲である「Nobunaga」が収録される作品だ。
起承転結が判りやすい作り込まれた楽曲、ツインリードで聴かせるギター、多彩なリフを繰り出すドラムなど、曲構成とアレンジが素晴らしい。
コレがエクストリームなパキパキのザックリ感あるエフェクト処理が施されていたら、ファイティングスピリット満点の激アツエピックメタルなんだが
クラシックロックとも言える程に、必要最小限な音加工、歪みに関してはもはやノーエフェクトに近い音像で、これが森メタルな味わいとなっている。
この音響に味わいを感じることができるか、ヘヴィさが足りないと思うかで、評価が分かれそうな作品だ。ボクはこの味わいがツボにハマった。
スピーディーに刻むリフも多くあるが、ギターが歪んでいないせいか、突っ走る感じにまで聴こえず、落ち着いた雰囲気に聴こえるところがイイ。
好みが分かれそうな盤だが、昨年ゲットした盤ではかなり上位にランキングするクオリティだ。森フェチなメタラーは是非ゲットしてみて欲しい。、


POSSESSED STEEL - Aedris - Nobunaga ★★★ (2021-02-01 20:42:01)

タイトルの通り、織田信長をテーマにしたサウンドだ。とりあえず歌詞冒頭をボクなりに訳してみると・・
「悪魔と共謀して、すべての土地を征服する。彼の心は悪に満ち溢れ、彼の意志は日本を再創生する」という感じか。
オーストラリアのTZUN TZU (2012年)が、本能寺の変を思わせるジャケで和を感じさせる作品を残しているが
こちらはストレートに織田信長を題材に、しかも相当悪魔的にデフォルメされた信長がNWOTHM的サウンドで描かれる。
織田信長は戦国武将であり、決して悪魔に心を売ったワケではないと思うんだが、戦国無双のようなゲームや時代劇アニメが
カナダ人に独特の織田信長観を植え付けてるんだろうなと思った。
入魂の作り込まれたカッコいい楽曲で、この人たちのダークヒーロー信長愛が強く感じられるな。


PROFANATICA - Crux Simplex ★★★ (2023-11-04 19:08:19)

米国産ブラック2023年作
危険思想を含む真性ブラックで、相変わらず普通に買うことができる盤。
このテの危険思想をファッションとして掲げて活動するブラックメタルは結構多いが、活動当初から一貫した
思想を基に創作し、全くコマーシャルな妥協が感じられない、本気度の高いバンドは数少ないと感じられる。
活動初期にIncantationから思想的理由で分裂し、伝統的コープスペイントを施し、活動初期からの本気度の高さを
未だ堅持し続ける古参バンドとしては、彼らが筆頭。アングラ帝王の古巣Incantation比較も、もう意味を持たない。
Profanaticaのレビューを書く度に書いている気はしないでもないが、デス・ブラックメタルの音響的クオリティを追求した
Incantationに対して、背徳・危険思想という精神性から見た存在感は、はるかにProfanaticaの方が上なのだ。
そういう核が存在するが故に、単調で無骨な、粗暴な演奏がむしろ、不穏な危険性を孕んだ音に感じられるのです。
音響的な持ち味は、Paul Ledneyの単調なスネアビート、獣のようなヴォーカルの存在感で圧倒されるところだ。
近作は同じような世界観と音楽性で、延長上にある焼き直し感があるにも関わらず、その存在感が圧巻過ぎて脱帽という感じ。
Compelled by Romans、Wipe the Fucking Face of Jesus、Cunts of Jerusalemという曲から、彼らがどの立ち位置に
いる集団なのか窺える。また、悪魔崇拝をテーマとする楽曲が登場しないところは、自身を尊大に崇拝していると
一応の解釈はしている。多くの崇拝系ブラックがルシファーやリリスなどのサタニズムに傾倒しているが、
また、ごく一部ではヤハウェを悪魔的象徴に見立てた冒涜的な作品なんかもあると思うが、他宗教の冒涜に徹し
一体何を崇拝しているのかわからないミステリアスさも、作品の魅力を底上げしている。


PROFANATICA - Crux Simplex - Compelled by Romans ★★★ (2023-11-04 19:17:04)

ギターは、中高音域のメタリックな音像が決してドゥーム向けではないにも関わらず
超スローパートでは、非常にドゥーミーなドロリとした感触を楽しむことができる。


PROFANATICA - Crux Simplex - Cunts of Jerusalem ★★★ (2023-11-04 19:39:45)

聖地エルサレムを侮辱する内容の歌詞は、信者にとっては相当に不快感だろうなぁと思う1曲。
昨今の戦争騒ぎに、宗教戦争と悪魔崇拝が絡む側面があるとボクは思っている。
英米産(コレは米)で、敢えてこの時期にこの曲を爆弾投下するんだから、本人たちが否定したとしても
まあネオナチ疑惑は消えないな。


PROFANATICA - Disgusting Blasphemies Against God ★★★ (2020-05-27 17:03:39)

米産ブラック2010年作
Incantationのオリジナルメンバーが分裂し、ドラマーのPaul Ledneyにより結成されたバンドだが、Incantationが激しいデスメタル路線で
アンダーグラウンドの帝王になっていった反面、Profanaticaは全く異なるアプローチで存在感に幅をきかせている。
元々分裂したキッカケは、演奏様式の違いというよりは、Paul Ledneyの思想を受け入れられなかったことが原因らしい。
そういうワケでProfanaticaのサウンドは、自身を崇拝し、他宗教に冒涜的な世界観が非常に色濃い。また、古くからあるブラックメタルのメイクや
演奏スタイルを伝統的と言えるほど貫いているように見える。特にドラムはブルータル路線に走ることなく、古典のようなスタイルだと感じる。
アンチクリスチャン度が最高潮のジャケデザイン、カルト臭の濃い世界観、古典的スタイルと禍々しいヘヴィさに魅力がある。
Incantationのような演奏力やカッコ良さはナイ。こちらはIncantation以上にタブーに触れるような背徳感と濃厚なカルト臭があり、そこに惹かれるのだ。


PROFANATICA - Rotting Incarnation of God ★★★ (2020-05-27 17:38:45)

米産ブラック2019年作
ボクが持ってるCDジャケには、レーベルの宣伝文句と思われる文章が書かれたシールが貼ってあるが、日本語訳をすると
「最も卑劣なブラックメタルは、ベテランの王から射精され、彼らの最も邪悪な作品であることを証明するだろう」といった感じか。
レコメンドアーティストとして、Beherit、Mystifier、Blasphemy、Havohejが挙げられている。
ちなみにHavohejはProfanaticaの唯一のオリジナルメンバーであるPaul Ledneyで、そちらでも尊大で自身を崇拝する狂気のサウンドが聴ける。
相変わらず伝統的なブラックメタルのメイクを施し、ジャケやアルバムタイトルから判る通り、卑劣で冒涜的なテーマで、濃いブラックをやっている。
Incantationの分家と思って、このバンドに楽曲や演奏の妙を期待するのは間違い。そもそもそういう魅力のバンドではない。
卓越した演奏技術やヘヴィネスやブラストの刺激を求めるブラックメタラーの方がきっと多いと思うが、
濃厚なカルト臭を前面に出した、こういうスタイルのバンドは、現代のブラックメタルリスナーに果たしてウケるんだろうか、とは思う。
ボクとしては、いつまでもあまり表に出ず、アンダーグラウンド臭を漂わせていて欲しいと思うけどね。


PROFANATICA - Rotting Incarnation of God - Broken Jew ★★★ (2023-11-04 19:30:47)

他宗教を否定するブラスフェミックメタルと称しつつも、こういう曲を書いてしまうんだから
当人たちが否定したとしても、ユダヤ人やキリスト教への侮辱や敵意が感じられ
ネオナチ疑惑は消えることはない。ただ、よくある悪魔崇拝ブラックで散見される
特定の悪魔を示す象徴も全く描かれない。


PROFETUS - ...To Open the Passages in Dusk ★★★ (2020-08-19 12:30:55)

フィンランド産フューネラルドゥーム2012年作
4曲全て10分超えの大作主義、超スローの白玉垂れ流し系人生残念ドゥーム決定版だ。恐らく同郷のエピックドゥームレジェンドThergothonの作風を
意識しているんじゃないかと思わせるのは、ベースレスというスタイルに現れていると思う。音楽性がかなり近い上、オルガンが前面に出ている作風
なので、濃厚なカルト臭がするのかと思えば、意外とカルト風味は適度な感じだ。ジャケが森林・湖・夜景という自然崇拝を思わせるからかも知れない。
真性な超スロードゥームなので、少々の淡白さなら平気といった程度ではこの遅さにはついていけない。せっかちな人は絶対手を出してはダメだ。
同郷Thergothonはもちろん、Skepticismあたりがツボの人には最適なサウンドだ。ただ、超ヘヴィなフューネラルドゥームに慣れていると
若干音圧が物足りなく感じるかも知れない。しかしそこは、むしろThergothon的だとボクは解釈している。
ロングトーンのノイズやシンセ、ハーモニクスの響きを巧みに操り、時間をかけて徐々に盛り上げていく手法が素晴らしく、フィンランド産の濃さが
凝縮しているな、と感じる。


PROFETUS - The Sadness of Time Passing ★★★ (2020-08-19 12:53:38)

フィンランド産フューネラルドゥーム2019年作
As All Seasons Die(2014年作・EP・未所持)の発売に気付かずスルーしてしまったので、ボクにとっては約7年ぶりとなるProfetus体験だ。
ストレートにThergothon直系と思わせるサウンドでクオリティの高い作品はなかなか無いので、このバンドの作品は結構期待していた。
前フルレングス作の白玉垂れ流し系人生残念ドゥーム路線の延長上だが、音圧が加わり、唸り声やシンセのバリエーションが若干増えたこともあり
かなーり濃厚なカルト臭が盛り込まれた。ジャケも前作の景色から一転、ローブを纏った人物とローソクが描かれ、ジャケからの印象だけでも
数倍のカルト風味を感じることができる。ジャケを開くと、実写のオルガン、オルガン上にはレトロな燭台、蝋燭に仄かな炎が灯っている。
オルガンとギターのノイズが織りなす真性カルトドゥームで、フィンランド産特有の濃さが最大の魅力だ。とてもベースレスとは思えない
極太のノイズの束がスゴイ。大作主義で超スロードゥームだというのに、一度この音世界に魅了されてしまうと抜け出せなくなる魔力を秘める。
過去作で若干物足りなさのあった音圧が補填されただけでなく、そのザックリ感のあるノイズの音像自体が素晴らしい。
また、時に霊的な女声やヴォイス的シンセが入ることで、呪術的・祭儀的な気味悪さが加わりズブズブと真っ黒い闇の中に惹き込まれていく。
いやー、まいった。ココまで濃いカルト風味に悶絶したのは随分と久しぶりのような気がするね。
上級者向けではあるものの、ThergothonやSkepticismと同様で非常にわかりやすい世界観なので、意外とハマる人はスンナリとハマれるかも知れない。
とりあえず、カルト臭濃厚なフューネラルドゥームを求めるリスナーはマストな作品だ。超オススメ!


PURE WRATH - Sempiternal Wisdom ★★★ (2021-08-16 01:46:51)

インドネシア産ブラックメタル2018年作
メタル辺境国からの作品で最近最もツボだったのがコレだ。ジャワ島西部にある西ジャワ州出身のJanuaryo Hardyという人の独りプロジェクトだ。
土着ブラックの教科書バンドSAORのカヴァーを含む7曲で構成されるアルバム、1曲目「Homeland」というタイトルからも、SAORからの影響を色濃く感じさせる。
のどかな自然に囲まれた村に農民っぽい村人が描かれるジャケからも土着ブラックど真ん中である。CDケースを開けると、知的な面持ちの男性の写真が。
恐らくこの人がJanuaryo Hardyなんだろう。メタル畑にいそうな人物像とはかけ離れたインテリジェンスな風貌がとても印象的だ。
演奏様式はレジェンドSAOR御大に酷似しているが、クサめな旋律はあまり登場しない。また、ドラムの手数やバリエーションもこちらの方が多彩な印象。
そういうアレンジから、SAORを手本としながらも独創性を追求しようとする意欲が感じられる。なかなか刺激的で土着的浪漫溢れる好盤に仕上がっている。
まあ、ラストでSAORのFarewellのカヴァーが聴けるんだが、結局最も脳裏に焼き付く楽曲がコレなんですよねぇ。というワケで、SAOR御大を越えたかというと
もう少し足りないという印象を持ってしまう。ただ、この路線で真面目に取り組むバンド且つ辺境メタルというのは希少である。
SAORの魅力のひとつがクサいメロディを大胆に取り入れている点である。結局、「クサメロの無いSAOR」に聴こえてしまう点がマイナスになっている。
思い切ってクサメロまで取り入れるか、新たな独創性を盛り込むかしないと、なかなかSAOR御大に肩を並べるところまでは到達できないんじゃないかな。
ちょっとダメ出ししたが、このサウンドは結構ボクの心に響いている。次作も相当期待しているバンド、全力で応援したい。
彼のホームぺージでこのアルバムジャケの旗が販売されている。山に村人が描かれる非メタルジャケを旗にするセンスが好きだ。ちょっとコレ欲しいんだよな。


PURE WRATH - Sempiternal Wisdom - Departure ★★★ (2021-08-16 02:06:09)

10分超えの大作。シンセとピアノを取り入れ、この楽曲にはクサめなキャッチーなピアノ旋律が登場する。
とてもドラマチックでアルバムのラストを飾るに相応しい、彼のサウンドの真骨頂と思わせる素晴らしさがある。
が、この曲の後にSAORのカヴァーを収録してしまった。そちらは反則級の土着感の濃いコテコテのコード進行と心に残る旋律である。
そのせいでこの曲が若干霞んでしまう。もったいないな、と感じている。


Paralex - Key to a Thousand Doors ★★★ (2020-05-07 22:20:57)

スゴイ。だーれも書き込んでいないが、このバンドが登録されている!
詳細の情報はもう覚えていないが70年代後半あたりから活躍するNWOBHMバンドで、ボクが高校生当時にNWOBHMにハマった時期
友人の先輩バンドマンのひとりが、Paralexの音源を持っていた。アルバムタイトルすら覚えていない。
ただ、その当時NWOBHM勢で比較的名が知れていたAngel witchやWhite spiritと比較しても全く引けを取らないどころか
かなり高度な演奏技術や、ツインリードで聴かせるかなりカッコいいサウンドに当時は驚いた。
で、「Kye to a Thousand Doors」というアルバムがココに登録されているので、調べてみたら、どうやら2016年に再発されているようで
動画で簡単に視聴することもできる。ボクが当時聴いたのはコレだ。再発されてるのなら買おう。懐かしいな。


QUERCUS - Verferum ★★★ (2022-01-03 01:32:18)

チェコ産フューネラルドゥーム2019年作
メタルガチャがあるとしたらポンコツメタル率の高いチェコ産ですが、コレはホンモノ感のある、今時珍しいワリとストレートなオルガンドゥームだ。
本場フィンランドオルガンドゥームに匹敵するとまでは言わないが、10年選手でもあり、とても質の高いオルガンドゥームを聴かせてくれる。
鈍重なオルガンドゥームかと言えば意外とそうではなく、結構ドラムは手数が多く、スローから徐々に手数を増やすような、ベタな判りやすい展開が
チェコメタルな感じである。ギターの歪みにホンモノ感があるワリに、キャッチーな曲展開を見せる楽曲が固有の魅力となっている。
ベタと書いたが、あくまでそういうアレンジが登場する、というだけで、全てがそうではない。どちらかというと独創性を前面に出すために
リフや楽曲は結構凝っている。ただ、そのリフや旋律に露骨さや仰々しさがあって、ベタな盛り上げ方に感じられる。そこが面白い。
過去作品はジャケセンスがボクにフィットせず静観してきたバンドだが、今作は湿地の風景画のようなジャケとシンプルなフォントを使用したバンドロゴが好印象だ。
最近は真面目にオルガンドゥームをやっているバンドに出会うことが少ないので、ちょっと追いかけたい。


QUORTHON - Purity of Essence ★★★ (2020-05-10 19:56:05)

スウェーデン産正統派メタル1997年作。
Bathoryのクォーソン愛を感じる人向けのファンディスクだ!
お得意のヴァイキング作品は一切収録されておらず、1曲目「ロックンロール」から始まり
純粋なヘヴィメタルやアメリカンなハードロック、バラード、アコースティックな歌モノなど
普段のクォーソンでは考えられないジャンルの楽曲をヘヴィなギターをバックに音痴に歌い上げる驚愕の作品だ。
コレが結構カッコいい曲もある。ただ、コレはBathory好きのあくまでファンディスクなので真剣に聴いてはダメだ。
特にBathoryを知らない人が聴いても何の感動もない。ただ、Bathoryファンであれば、かなりの好盤でマストな作品だ!


RAVEL ★★★ (2020-04-27 02:42:17)

管弦楽・バレエ音楽などの作品や、ムソルグスキーの「展覧会の絵」のオーケストレーションを手掛けるなどで「管弦楽の魔術師」と言われているが
ボク自身はそっち方面は興味がなく、ピアノ作品をコレクションしている。演奏の難易度は非常に高く、ラヴェルのピアノ曲の中では比較的難易度の低い
「亡き女王のためのパヴァーヌ」「古風なメヌエット」を学習した思い出から、この2曲が特に好きな曲だ。
最も有名な曲は、ラヴェルが学生時代に作った初期作の「亡き女王のためのパヴァーヌ」や、煌びやかな作風が素晴らしい「水の戯れ」「鏡」あたりだろう。
ここのサイトにはダークサイドなサウンドを好む人がワリと多いと思うので、是非聴いてもらいたいのは、「夜のガスパール」だ。
「オンディーヌ」「絞首台」「スカルボ」という3曲からなる組曲だが、少なくともこの時代までのあらゆる作曲家のピアノ作品と比較しても
相当高度な演奏技術を必要とするかなり濃密な作品で、譜面を見るだけで気が遠くなりそうな楽曲だ。その分鑑賞するには疲労を伴うが相当聴きごたえがある。
特に、超スローで静かでありながら重厚な「絞首台」はまるで絞首台に登っていくような感覚が美しくも呪術的に描かれており、聞き手を絶望に突き落とす。
そして「スカルボ」はスペインの歌舞「ホタ」を取り入れた、悪魔的な鍵盤の連打が特徴で、凄まじくアグレッシブで前衛的な旋律、音の塊が聞き手を圧倒する。
特にこの演奏家の演奏がイチオシ、という人はあまり思い浮かばないが、そもそも「夜のガスパール」あたりを弾きこなす演奏家自体少ないので
ボクはラヴェル作品はピアニストは気にせずに売っていればとりあえず購入している。


RAVEN THRONE - I Miortvym Snicca Zolak ★★★ (2020-10-26 20:56:29)

ベラルーシ産ペイガンブラック2018年作
霧で霞む針葉樹林のジャケ、ジャケを開くと枝に雪が積もった針葉樹アップ、盤にはカラスの実写。森林崇拝ジャケとしては満点。
10年以上活躍しているバンドなので、楽曲は安定のクオリティだが、若干残響音が浅め。でも最近は慣れてむしろシックリきている。
森林のざわめきを思わせるギターの歪み、トレモロリフ、やや音数控えめなドラム、ブラック特有のガナリ声、適度なメランコリックさ、
仄かなペイガニズム要素、過度な激しさが無い落ち着きなど、ボクはこのオーソドックス路線がとても気に入っており、度々手に取る盤だ。
もう少し奥行きのあるリバーブが欲しいが、足りない残響音は、雨の日にマイカーで聴くと雰囲気を底上げでき、丁度良い音響になる。
同類バンドとの差異化は課題かも知れないが、このテの音が好きなリスナーには納得のクオリティだろうと思う。
この秋に新作が出ており、一聴した感じ、とてもイイ感じな仕上がりである。コレは是非ゲットしたいと思っている。


RAVENTALE - Morphine Dead Gardens ★★★ (2020-08-09 20:08:54)

ウクライナ産独りフューネラルドゥーム2019年作
長くブラックメタル的な演奏で、独創的な音楽を作り続けてきたが、ここにきてフューネラルドゥーム路線に鞍替えした。
Давно ушедших дней (2008年作)がボクの最もツボにハマった作品だったが、その当時のスタイルを
そのままドゥームにした感じがかなり好感触。音数が少なく楽曲の構成自体はものすごーくシンプルで淡々としている。
しかし、音数の少なさがむしろ、ひとつひとつの音を際立てせ、音響的な心地よさに没頭することができる。
起伏の無い単調な延々と続くリフに身を任せ、僅かに展開していく楽曲に心奪われる。
ぼんやりと霞んだ湖と森林といったイマジネーションを掻き立てる白を基調としたジャケデザインが美しいが
フューネラルドゥームでありながら暗黒や不穏といったイメージが沸かず、むしろ耽美であると感じさせる音楽性は
このサウンドの持ち味で、Давно ушедших днейでの独創性に共通するところがある。
上級者向けドゥームで、このバンドの初期作品を味わい深く堪能できるリスナーならどっぷりとハマることができるだろう。


RAVENTALE - Mortal Aspirations ★★★ (2020-05-09 21:22:34)

ウクライナ産独りブラック2009年作。
前作は繰り返しの美学を前面に出しその没入感に喜びを見出す上級者向けな内容だったが、その手法は一部残しつつ、楽曲として再構築したような作品。
そういう作品なので、前作で培われた職人気質な音作りであると同時に、より多くのリスナーにも受け入れられる内容に変貌した。
シンフォニックブラックフリークやゴシックメタルフリークにとっては神盤になるかも知れない。
独りブラックなワリに全パートが洗練された音で構成されており、とても深みのあるサウンドが魅力だ。
闇夜を飛ぶ鳥ジャケは、叙情的でドラマチックなサウンドにピッタリフィットしており、額に飾っておきたいほど美しい。
ブラックメタル的な音ではあるが、ブラックメタル的音圧やガナリ声というのは一部分で、音圧やヘヴィさで圧倒するタイプではない。
タイトルが示すように(死の願望とでも訳されるか)そういう精神世界を、ファンタジックに描いたコンセプトが素晴らしい。
ギターの音作りのみならず、シンセやアコギの使い方が実に絶妙で、コレを独りで全部やってるこの人はスゴイなと思うよ。
恐るべしウクライナ独りブラック。ちょっと他とはレベルの違う芸術性の高い作品だ!


RAVENTALE - Planetarium II ★★★ (2022-08-16 02:42:28)

ウクライナ産独りゴシックメタル2020年作
Planetarium(2017年)の続編を思わせるナンバリングタイトル。前作MORPHINE DEAD GARDENS(2019年)ではフューネラルドゥーム的
アプローチで楽しませてくれたが、ここにきてドゥームともブラックとも言い切れない、一聴してゴシックメタルを思わせる音楽性に。
シンセを多めに使用し、シンフォニックさがアップ。ツーバスやブラストも登場する。理に叶ったコード進行、ドラマチックな曲展開。
そういう音楽性から、とてもライトに楽しめる、過去作の敷居の高さが一気に低くなった、という印象を持った。
初期作品から愛聴しているだけあって、ウクライナ作品では最もお気に入りのバンドで、何故かボクの感性にものすごーくフィットする。
初期の個人的名盤Давно ушедших дней (2008年)や前作に比べて聴き込み度合いこそ低いものの、最近のお気に入りだ。
演奏スタイルがキャッチーになったとはいえ、長くこの人の作品に触れてきた身としては、特有の粉っぽいギターの中毒性があれば
スタイルなんてどうでもいいと思えてくる。あまりこのバンドを知らない人が一聴すると、もしかしたら、この音像のどこに魅力があるのか
さっぱり理解できないかも知れないし、曲の感じから、単なるゴシックじゃん、と思うかも知れない。
荒廃的なサウンドであり、独りメタルというスタイルのせいもあってか、音響的には必ずしも完璧とは受け止められない人もいそうだが
この録音の質感がたまらなくいい。随所にこの人らしいアレンジが加わり、知性を感じるところは、長年のファンでなければわからんかも知れない。
そういう意味で、キャッチーだが、必ずしも初心者向けでは無い気がする。
彼のFacebookは1年以上更新されずにいるのは寂しい限りで、ウクライナ戦争のせいなら残念に思う。
ウクライナ産がなかなか手に入りづらくなってきたが、頑張って活動を続けて欲しいバンドの筆頭だ。


RAVENTALE - Давно ушедших дней ★★★ (2020-05-09 20:52:32)

ウクライナ産独りブラック2008年作
ブラックとはいってもブラストしない、ヴォーカルもたまに入っても音像の中に霞んでいるような声。ギターの音がブラック的だがゴシック的にも聴こえる。
4ビートで淡々とほぼ同じようなパッセージをひたすら繰り返すスタイルで、起伏のある曲展開を望むリスナーは絶対に手を出してはいけないサウンドだ。
その繰り返しへの没入感に鬱々と浸りながら、曲が進むに連れて音質が変化する砂のようなギター&密かに絡むシンセの音にノスタルジックな憂いにも似た感覚を覚える。
聴き手によって感じ方は変わるだろうが、ボクがこの作品から受ける感覚は、曲が進むにつれて季節が移り替わり、やがて冬がくる、というような情景が思い浮かんだり
あるいは、曲が進むにつれて、走馬灯のように記憶が過去に遡る、といった感覚に陥ったりする。そんな曲想が感じられるこのジャンルとしては珍しい作品だ。
淡々と同じようなギターサウンドが延々と繰り返されるスタイルは、聴き手をかなり選ぶ上級者向けの内容で、ダメな人にとっては「何じゃコリャ」かも知れない。
粉っぽいブラックな音が好きな人かつギター&シンセの音像の変化自体を楽しめるドローンorドゥーム派という狭い枠にハマった人にはストライクだろう。
地元ウクライナでの評価はどうも微妙みたいで、次作が高評価なようだ。ボクはこのバンド(独りだが)の作品はコレと次作共に推したい。


REENCARNACION - 888 Metal ★★★ (2020-05-24 17:20:48)

コロンビア産ウルトラメタル1988年作
辺境メタルを漁っていると必ず出くわすのがコレ。メタル文化があるのかと思いつつ、このバンドの作品は2枚ゲットしている。
確かにブラックメタルに聴こえなくもないが、独特な音楽性で、自分たちはウルトラメタルと言っているようだ。
少なくとも、ナマ音に近いギターやドラムのバタバタ感や粗悪な録音状態は、ムーディーに働いているとは言えないが
このバンドが作る曲は、前衛的というよりは、ヘンテコな曲で突拍子もない、破天荒な感じだ。
録音がポンコツなので、ダメ作品と思う人もいるかも知れないが、前衛さが洗練されていないだけでこういう作風は珍しい。
コレがコロンビア情緒なのか、と勘違いしそうだが、単にこのバンドの個性なんだろう。
後期作では、若干脱ブラック的な音で、前衛路線から若干普通になった、と思わせておいて、明らかにメタルから外れたダンサブルな楽曲や
やたらファンキーな楽曲を織り交ぜ、一体どう捉えたらいいのか奇怪な世界観の作品を残しているから、全く引出しの多いバンドだ、と感心する。


REENCARNACION - Más Hombres, Menos Estatuas ★★★ (2020-06-09 02:13:30)

コロンビア産ウルトラメタル2006年作
前作のレビューでも書いたが、自称ウルトラメタルというジャンルだ。前作のローファイな録音はそれはそれでインパクトがあったが
録音状態が向上して、この盤はかなり耳に馴染む音になっている。辺境メタルなのでチープなのかと思いきや、このバンドは
かなり高い演奏力を秘めており、ドラムは手数もバリエーションも多く、ギターはいろんなジャンルのギターを弾きこなす。
デス・ブラック的なサウンドから、パンキッシュな軽快なロック、ダンサブルでファンキーな曲、アコースティックな曲など
盛り沢山過ぎて、全く統一感のない上、聴きなれない言語(たぶんコロンビア語)のヴォーカルだから、とても異質なサウンドに聴こえる。
また、14~26トラックは「Poeticas del vacio」というタイトルで無音を挿入しているところから、アート・前衛路線に傾倒していることが窺える。
トリオ編成だが、ジャケ内のメンバー写真を見ると、4人写っている。が、よく見ると愛敬のある犬が、メンバーと同じ存在感で写っている。
そんなユーモアも持ち合わせた、多彩な引出しを持った、何か新しいモノを創造しようとする志向が魅力的なサウンドだ。
辺境メタルである上、実力があるバンドだけに、統一感が無く世界観が見えてこないところが、非常にもったいないなぁ、と思う。


REINO ERMITANO - Brujas del mar ★★ (2020-06-01 02:46:27)

ペルー産ドゥームメタル2006年作
購入当時はペルー産かつ女性ヴォーカルというのが珍しく結構聴いていたが、あまり歌が上手じゃない佳作だ。
もう少し頑張ったらサイケ・ヴィンテージ・ドゥーム路線で面白い存在になると思う。
次作で面白い作風のアルバムをリリースするが、その後はなかなか好盤と言える作品が出てこない延長上のサウンドだ。
一応注目はしてる。もう一押し頑張ってほしいバンドだ。


REINO ERMITANO - Rituales Interiores ★★★ (2020-06-01 03:01:35)

ペルー産サイケデリック・ドゥーム2008年作
このバンドの大きな特徴は、女声ヴォーカルが若干ヘタで、畑仕事しながらオバサンが歌っているような声なんだよ。
演奏も若干ポンコツなので、佳作以下の作品が多いんだが、コレだけは非常に面白く味わい深い好盤だ。
この盤は若干ダークな雰囲気になり楽曲もなかなか良くできてるので、辺境ドゥームマニアはゲットしよう。
ちなみにConjuros de Poder(2014年作)の草木が茂ったようなアートワークのジャケでいよいよ畑仕事ドゥームというジャンルが
確立するかと思ったが、残念ながら中身はイマイチな作風でゲットするには至らなかった。
個性派なので期待して次作を待っているが、今のところこの盤が一番素晴らしい。コレを超える作品を期待している。


REVELATION OF RAIN - Акрасия ★★★ (2020-08-01 23:00:59)

ロシア産ドゥームメタル2016年作
バンド名はロシア表記でОткровения Дождя、アルバムタイトルは英語でAkrasiaだ。
処女作Мраморные Тона Отчаяния(2007年作)から長く活動しているが、真性ドゥーム路線からほんの少しずつ脱却はするが
大きく音楽性を変えることなく一貫してデスドゥーム路線ど真ん中の硬派なサウンドを追求している。ただ、どの盤も空間系エフェクトが万全とは思えず
今作でも、空間の広がりがもう少しあればいいのに、と思わせる。ただ、最近はその録音状態に耳が慣れてきて全く気にならなくなった。
録音状態がそういう感じで、派手にトリッキーな箇所もなく、オーソドックスなデスヴォイス、適度な音像のギターという音響なので
とても地味に感じるかもしれない。その定番の地味な音響を受け入れることができ、安定感や味わいとして感じられるようになると
このバンドの世界に惹き込まれていく。というのも、このバンドの作品は楽曲が最大の魅力だ。地味なのにカッコいい。
決して前衛的とは言えないオーソドックスな手法であるにも関わらず、特有の個性的な楽曲を聴かせるところが最大の魅力だ。
特にドラムはバリエーション豊かな演奏を聴かせる。淡々としたスローテンポなのに、非常に起伏に富んだリフを叩く。
決して複雑な曲構成というワケではないのに、それぞれの曲に聴かせどころがあり、ドラマチックな展開をするのだ。
この盤は、普段ゴシックメタルがストライクゾーンの人が案外ツボにハマるんじゃないかなと思う。過去作はコンテナ行きになってて
もう聴かなくなっていたが、この盤をゲットして、やっとこのバンドの魅力に気付いた感じ。再び過去作を手の届くところに収納してみた。
こういうバンドはその音楽性にハマるまでに時間がかかる。この作品にハマってから、やっと過去作をもう一度聴こうという気になったよ。


REVELATION OF RAIN - Откровения дождя ★★★ (2020-08-01 23:18:51)

ロシア産ドゥームメタル2009年作
ロシア作品を大量大人買いした時に、オマケ的にゲットした経緯もあり、僅かに聴いただけでコンテナ収納お蔵入りになってしまった盤だ。
ゲットしてもはや10年以上経っているが、最近マイカーで改めて聴き直している。モノクロジャケとオーソドックスな音響が地味過ぎて
一聴しただけではなかなかその魅力を理解することができない。空間系エフェクトの広がりが浅めで各パートの一体感が若干欠ける録音だが
それぞれの楽器が出す音自体は、その路線ど真ん中の安定感を備えた硬派な音響・演奏である。
近作よりも淡々としたドゥーム寄りの音楽性だが、曲の構成力は相当優れていると感じるサウンドで、録音状態に慣れることをクリアすれば
その奥深い音楽性を堪能することができるだろう。ただ、際立って目立つ個性は期待しない方が良い。ボクは今現在相当ハマっている。


REVERSED - Widow Recluse ★★★ (2021-01-27 23:47:35)

カナダ産デスメタル2018年作
コレは2018年にカセットテープでリリースされた作品で、翌年その音源がCD化された。メンバーを調べてもその活動経歴はさっぱりわからず
もしかしたら、新人バンドなのかも知れない。近年のブルデス路線はボクにはしんどいし、デスメタル自体オールドスタイル派なんですが
この作品は決してオールドスタイルではなく、ブルデスとも言えない。カナダ産でありながら、ハードコアルーツのニオイがするスウェディッシュデス的激しさと
フィンランドっぽい濃さが融合されたかのような、破天荒で邪悪度MAXな感じ、更にテープ音源のローファイ感が真性さを上乗せした感じが優秀な濃いデスメタルだ。
女性のカオをした蜘蛛や謎のイキモノが気持ち悪く描かれるジャケ、このデモテープ時代によくあるローセンス感とチープさがたまらなくイイ。
バンド名の由来はわからないが、まるでゲロをリバースしたかのように思ってしまうバンド名と、この気色悪いジャケのインパクトは大きい。
サウンドの方は、全く整然としていない爆裂ズトボコ感・バタバタ感のある手数の多いドラムと、ガムシャラに激しく掻き鳴らされるギターが魅力。
シンバルがビシバシ鳴る感じや、音が割れてそうで割れていないギリギリな感じ、ゴリ押しに突っ走って無茶苦茶に掻き毟るようなギターソロを奏でる感じなど
醜悪さと真性な魔性・背徳感を前面に出し、キレ気味のやり過ぎ感満載のグルーヴが全体を支配するサウンドだ。
ボクは近年の精密機械のように音数を詰め込んだブルデスに魅力を見出せないが、こういう独特なタイム感・グルーヴを持つサウンドにはとても惹きつけられる。
ENTOMBED「LEFT HAND PATH (1990年)」、BATHORY「REQUIEM (1994年)」あたりのスウェディッシュ風味を持つ、当時としては他国デス路線とは一線を画した
破天荒さを備えたデスメタルを聴いた時の感覚が、更に邪悪度を増して現代に蘇った、という感じで、かなりツボに入ってしまった。
決してオールドスタイルではないが、デスメタル黎明期頃にスウェディッシュデス路線にハマった人は是非聴いてみて欲しい。相当ツボにハマる筈だ。


REVERSED - Widow Recluse - Widow Recluse ★★★ (2021-03-16 00:45:26)

アルバムタイトル曲。蜘蛛のバケモノが登場するかのような大胆なリフから始まり、ハイボルテージな走り気味の楽曲に圧倒される。
高速で刻むギターとシンバル多めの禍々しさ満点の演奏、全力で絞り出すようなデスヴォイスに悲鳴にも似た叫び声。
もはや何をやっているのかカオス状態の音空間にアドレナリンが分泌されまくりだ。また、中盤でテンポダウンし響き渡るギターが
やたらイーヴルで鬼気迫る感じだ。まるで蜘蛛の糸に囚われて体が蝕まれていくような疑似体験ができる。
アングラ臭と爆発力、アクの強い危険な香りが大きな魅力だ。デモテープ再録というローファイ感が絶妙な音空間を創り出しているね。
こういう固有の世界観と演奏スタイルを持つデスメタルは全力で応援したい。


RIK EMMETT - Res 9 ★★★ (2020-09-01 01:02:16)

カナダ産ハードロック2016年作
最近ではTriumphでリックが復活という眉唾な噂も耳にしたが、直近のアルバムはたぶんコレだ。豪華なゲストミュージシャンを携えているが
この作品はリックの魅力に焦点を当てた、TriumphやAir Timeとは趣きが異なる、ギターの魅力に特化したようなサウンドだ。
リックのソロ処女作Absolutely(1990年)と全く同じような(リックの手癖か?)ハードナンバーで口火を切り、後はやりたい放題の
カッコいいナンバーが目白押しで、納得のロックサウンドを聴かせてくれる。
リックのソロ作は、どちらかというと生活感や人生にスポットを当てた作品が目立ち、今作は特にこれまでのギター人生の集大成的なテーマが見える。
ハイクオリティで気軽に聴ける盤で超オススメだが、別にソロ作とか特に求めてないから、早くTriumphかAir Timeの作品を作ってほしい。


RIPPIKOULU - Musta Seremonia ★★★ (2021-04-14 23:35:39)

フィンランド産ドゥームメタル1993年作
この作品をタイムリーに体験していれば、かなりショックを受けただろうと思う。残念ながらコレをゲットしたのは2010年にリマスター盤が出て数年後だ。
1993年年頃のフィンランド産ドゥームといえば、まず思い浮かぶのはTHERGOTHONだ。当時はデスメタル全盛、むしろ更にスピード化が加速していた時代に
鈍重で、超スローテンポなメタル、表舞台で活躍するサウンドに比べ逆行するスタイルに某メタル雑誌では低得点を食らい酷評され、ボクのような低得点マニア
は狂喜した。酷評ではあってもレジェンド級のクオリティだった。THERGOTHONはメディアで紹介されたぶん、ドゥームファンには一定の知名度はあったと思う。
しかし、活動時期がほぼ同じ時代であって、同等のレジェンド級クオリティを秘めるRIPPIKOULUは、更に知名度が低く、恐らく当時は地元フィンランドの
一部のドゥームマニアしか知る由が無かったのだろう、と想像する。
2騎の馬上の戦士が描かれるジャケクオリティが相当高いんだが、残念ながらリマスター盤はモノクロジャケである。カラージャケはいくら探してもCDでは
発見できず、購入当時はモノクロリマスターCDでさえ70ドルくらいだった。今は恐らく探せばカラーLPが100ドルくらいで手に入るだろう。
サウンドは、一聴した瞬間、ダウンチューニングが施されたギターの質感に驚愕するだろう。この時代にここまで真性で硬派なギターを奏でるドゥームメタルは
存在していなかった、と思う。また、今でこそ鈍重なドゥームは山ほどいるが、当時はこういう音像で真性なドゥームをやってるバンドは唯一無二の存在だ。
また、このバンドはドゥームメタルスタイルでありながら、ブラストビートを取り入れているところが凄い。普通はドゥームがブラストすると残念感しか無いのに
このバンドはとても理に叶っていると思わせる。
この作品を発表後、中心人物であるギタリストMarko Henrikssonは亡くなり、長く活動を休止していたが、2014年にEPをリリースしている。
ギタリストの存在が大きかったようにも思わせるところがあるが、再び衝撃的な作品を世に出して欲しい。


RIPPIKOULU - Ulvaja ★★ (2021-04-14 22:56:54)

フィンランド産フューネラルドゥーム2014年作
3曲入りEP、量的にやや物足りなさはあるものの、中心人物だったと思われるギタリスト死亡後、21年のブランクを経て作品を世に出したことに興味惹かれる。
ダウンチューニングを施された重低音、絞り出すような低音デスヴォイス、ノイジーなギターには仰々しいシンセが絡む。いかにもフィンランド産の真性さがある。
唯一のフルレングスアルバムMusta Seremonia(1993年)のレジェンド級の凄まじさを継承しているとは言い難いところはある。それだけギタリストの存在が
大きかったんだろうと、まず感じてしまう。リフで構成する感じとブラストが無くなり、前作のデスメタル的楽曲からアンビエント寄りになっている。
真性さはある程度維持しつつ、スタイルが様変わりしているところは、評価が大きく割れるところだろうと思う。ボクとしては前作のスタイルを維持して欲しかった。
現在活動しているのかどうかわからない。EPをリリースしたということは、まだフルレングスアルバムを世に出す見込みはある、と期待しているところだ。
(といってもリリース後7年経過しているが・・)


ROAD WARRIOR - Mach Ⅱ ★★★ (2020-06-02 21:08:54)

オーストラリア産正統派パワーメタル2020年作
コロナウイルスのため、海外からの輸送便が激減、待ちに待ってやっと先日届いて、現在ヘヴィローテ中の作品だが
とりあえず今年上半期ではボク的にはナンバーワンな作品となりそうだ。いやー、カッコいい。
前作のレビューの通り、ミドルテンポ主体で、余計なエフェクトのないナチュラルなギター、速弾き等の過剰に派手な演出のない
純然たる古典ヘヴィメタルサウンドでありながら、優れた楽曲構成と独自の世界観でライト感覚に聴けるロックサウンド決定版だ。
特徴としては、挑発的でファイティングなギターとカリスマ性のあるヴォーカルだ。ジャケの男がレーサーなのかファイターなのか判らないが
戦いに向かう男を賛美するかのような、戦い前の緊張感を表現するかのような雰囲気を、無駄な演出ナシに楽曲とカリスマヴォーカルで表現。
スピードやヘヴィネスで聴かせる感じとは対極にある古典的サウンドなので、80~90年代ロックサウンドを彷彿させながらも、何故か古臭くなく
むしろヒーローを盛り立てるような曲調がユーモラスで先進的なセンスを感じさせる。
いつもボクが書き込んでいるようなコアな根暗サウンドとか前衛的サウンドではありません。また、ギターヒーロー的なトリッキーなサウンドでもない。
こういう味わい深い古典的様式でありながら新しさを感じさせるロックサウンドはボクの大好物で、これからも応援したい。


ROAD WARRIOR - Power ★★★ (2020-06-02 20:28:48)

オーストラリア産正統派パワーメタル2018年産
疾走感の無いミドルテンポ主体の楽曲群、凝ったエフェクトを施さないナチュラルなディストーションギター、シンセ等派手な演出もナシ。
圧倒的なヘヴィさがあるワケでもなく、ものすごーく古典的な純然たるパワーメタル寄りのヘヴィメタルサウンドでありながら
どうしてこんなに魅力的でグイグイ惹き込まれるのか、単にボクの好みにハマっただけなのか判らないが、不思議な魅力を備えたサウンドだ。
ファイティングで挑発的なリフ、クセがあるがカリスマを感じさせるヴォーカル、派手なソロなどは無いのに作り込まれている楽曲が魅力だ。
非常にオーソドックスなHMなのに、結構な愛聴盤で、次作は必ずゲットしようと心に誓ったが、僅か2年のスパンで新作が発表された。
その新作もこの盤の延長上の音楽性だが、素晴らしい作品だ。この盤と合わせてゲットしよう。


ROTTING CHRIST - Non Serviam ★★★ (2020-07-20 19:06:00)

ギリシャ産ブラックメタル1994年作
作品リリースの度に音楽性を変え、正当進化していくバンドではあるけれども、最も好きな盤はコレだ!
流石に25年以上前の作品なので、最近の作り込まれた作品に比べると、ローファイ感は否めないが、
ギターのアタック部分が際立ち、サステイン部分のハーモニーの味わいを損なわない適度な歪みが好感触な上
スネアワイヤーの響きが殆ど聴こえない乾いた感じのスネアドラム、ツーバスが煩くない適度な音圧など
全ての音がクリアに聴こえる録音バランスが心地よく、シンセやティンパニが入っても仰々しくなくていい。
そういう音像であり、トレモロリフやブラストも無いので、かなり古典的なブラックという音楽性だ。
ヘヴィさや勢いで聴かせるのではなく、気持ち悪い旋律やリフを組み合わせた楽曲で勝負しているスタイルが好きだ。


ROTTING CHRIST - The Heretics ★★★ (2020-06-16 01:05:07)

ギリシャ産ブラックメタル2019年作
ジャンルはブラックとしたが、演奏様式は決して純粋なブラックメタルではなく、ブラック+メロデス+インダストリアルといった感じか。
このバンドの作品はKhronos(2000年作)が初体験だったため、丁度音楽性の過渡期あたりの作品だけに当時は一線級のサウンドに感じなかったが
アルバム毎で随分と音楽性を変えており、一般にブラックメタルと言って想像する音楽性でアンダーグラウンド臭がするのは初期4作品。
ちなみに、ここの解説やレヴューを見ると、たぶん初期2作品がカウントされていないんじゃないかな。セルフリリースのカセットが処女作、
続くミニアルバムが2ndアルバムとして存在している。5作目あたりから徐々にアングラ臭が抜けて、メロデス・ゴシック的なテイストに変化していき
より大衆受けする音楽性に発展していく。ボクは普通はそうなるとあまり興味がなくなってしまうんだが、独自の音楽性を堅持しているので
初期作品以降もなかなか捨て置けない魅力を持っていると感じている。
近2作品は未聴だ。最も好きな盤は初期のNon Serviam(1994年作)だが、メロディアスな楽曲を前面に出したA Dead Poem(1997年作)や、
若干ブラックメタル寄りに回帰した快作Theogonia(2007年作)、同郷のダークサイド女声ヴォイスパフォーマーのDiamanda Galasが参加している
Aealo(2010年作)あたりが必聴盤だ。
濃厚なアンチクリスチャン思想を持つバンドだが、Profanaticaのような自己崇拝や悪魔崇拝的な感じはなく、宗教に縛られることに対し批判的な立場だ。
何かを崇拝するような祭儀的・悪魔的な濃さというのとは若干テイストが違い、バンド名やジャケイメージのワリに禁忌・背徳的・卑劣さという感覚は意外にも薄い。
この昨年発表の盤は、重厚なギター、反キリストながら神聖な雰囲気、何かを訴えるかのような語り口調、不穏なメロディではなく、前向きな音楽性が特徴だ。
爆発的なブラストや、トレモロリフを多用するような演奏様式ではなく、旧来の味わいのあるブラック寄りの、仄かにインダストリアルさが加わったサウンドだ。
こういう味わいを武器にする、長く活躍するベテランブラックメタルはボクのツボにすごーくハマる。
ただ、ブラックメタルのレビューを書くと決まり文句になりがちだが、もう一度、初期のアンダーグラウンド臭のする濃いブラックメタルをやってほしいとも思う。


SABAZIUS - The Descent of Man ★★ (2021-05-13 19:49:38)

英国産ドローン・フューネラルドゥーム2013年作
歴代ドゥーム作品中最も素晴らしいと感じているアヴァンドゥームバンドHesper Payneが殆ど知られず世に登場した頃、カップリング作品に名を連ねたバンドがコレ。
そこから興味を持ち辿ってこの2013年作品をゲットしたが、今まで2回しか聴いたことが無い。ちなみに2回目はこのコメントを書きながら正に今聴いている。
しかもこの曲のラストまで聴いたことは無く、途中で断念している。というのも、ドローンノイズが響き渡る楽曲で、尺が11時間16分54秒という苦行なのだ。
当然CDに収録することはできず、当時はメモリースティックで販売されていたが、ボクはタダでダウンロードできるサイトからゲットしている。
既に故障し再起不能になった昔のPCに、もはやバンド名は忘れたが1曲の尺が24時間という苦行バンドの作品があったが、こちらの作品は尺の長さで歴代2位の記録。
ドローンが相当得意でないと厳しい内容だが、その音像は結構素晴らしい。ただ、11時間超のドローントライアスロンを好んで愛聴できる人は、ある意味天才だ。
途中で断念したボクは凡人なんだろう。興味を持った人がいるかどうかわからないが、まず言っておく。時間がもったいないので、健全な余暇活動を楽しもう。
この作品は、浮世離れした何の予定も無く、鬱々とした音空間に延々浸っていたい、今からどうやって自殺しようか、と考えている人向けのサウンドだ。
ゲットした当時、仕事休みの日曜日にこの苦行にチャレンジしたが、競馬中継を消音にして延々とこのサウンドを流していたが、夕方笑点が始まる時刻に断念。
残念ながら日曜日の笑点は欠かせなかった。こんな鬱々とドツボにハマるサウンドよりお笑いを楽しんだ方がきっと人生は有意義である。
音響は素晴らしい。また、この尺の作品を作った、というレアさが光る。ただ、多彩なノイズが劇的に展開するワケでもなく、別に1時間でいいんじゃない、と思う。


SABBATH ASSEMBLY - A Letter of Red ★★★ (2020-07-17 20:01:09)

米産カルトロック2019年作
キリストやエホバ、悪魔もひっくるめて賛美するカルトサウンドで登場したバンドで、処女作はボクのイチオシ女性ヴォーカルの
Jex Thothが在籍していた。Jexはソロ作品に専念するために脱退し、よりドゥーム志向の強い作品を作っていったが、このバンドは
奏法や曲構成にやや前衛的なスパイスを効かせながらも、基本は古典的ロックにワリと忠実な、魔女ロックサウンドの決定版だ。
余計なギターエフェクトを極力排除したナマ音に近い感触は、そういうローファイサウンドを好むリスナーにはとても聴きやすいだろう。
やや深めの残響音のエフェクトと微量のサイケ臭は、魔女ロック特有の妖艶さを際立たせてて素晴らしい。
この雰囲気は、Jex Thothのソロ作品に漂うサイケ臭に非常に似ており、スローで聴きたいならJex、ミドルからアップテンポならコレという感じ。
ヴォーカルのJamie Myersは、雰囲気がJex Thothに似た歌唱をし、とてもキュートで魅力的ながら、魔性を帯びた感じがツボだ。
今作までとても安定した鉄板作品をリリースし続けており、今作も渋いロックサウンドだ。イマイチ知名度が低そうだが、超オススメだ。


SABBATH ASSEMBLY - A Letter of Red - The Serpent Uncoils ★★★ (2020-11-03 22:58:41)

スロードゥームロック路線に走ったJex Thothとは対照的に、こういう疾走する曲があるのがこのバンドの魅力のひとつ。
アルバム全体の速度はミドルテンポ主体なので、このアップテンポの楽曲がとても際立って聴こえる。
刻みながら疾走するイーヴルなバッキングに、深めの残響音の分散アルペジオが絡むリフがとてもカッコいい。


SACRED REICH - Awakening ★★★ (2020-04-23 20:25:23)

Metallicaが推したバンドという雑誌記事からこのバンドに巡り合ったメタラーはきっと多いはず。
自分もそのクチで、タイムリーにゲットした作品はThe American wayで、Ignoranceは後追いで、確か2thと同時購入だった。
スラッシュバンドとして語られることが多いようだが、1stこそスラッシャー向けだけども、以降の作品はスラッシュ色は徐々に薄れていき
どちらかというとその時代のトレンドの音楽性を取り入れようとする姿勢や、脱スラッシュといった志向性があった。
当時はクロスオーバーなスラッシュというのがトレンドとしてあって、多様化していった時代だったが
このバンドもその波に乗りつつ脱スラッシュ的な音を追求していたんだろうということは感じることができる。
しかし、このバンドの良いところは、そういう時代にあって、スラッシーなテイストこそ薄れていくものの、ロックサウンドの原点から外れることなく
どちらかというと頑固に自身のスタイルを維持していたところだ。結局は新しいモノを取り入れようとする志向性は見えつつも頑固さが勝ってしまった。
とはいえ、3rdあたりから、当時一世風靡したPantera的なヘヴィネスが見え隠れしていたのは確かで、ボクにとって一番のお気に入りは2ndであり、3rdは嫌いではないが
初期2作品を特に愛聴した過去がある。
そういうバンドだから、派手さはなく、新しモノはダメな不器用なイメージが少しあり、どちらかというと地味で頑固な音楽性であり、
Metallicaが推した理由というのも、そういうロック原点的な魅力なんじゃないかと憶測するのである。
23年ぶりの新作に期待する音楽性は、やっぱり不器用で地味で頑固な音なんですが、まさにストライクですよ。
スラッシーな曲もあれば、ミドルテンポの曲もあり、昔の路線から決して外れない立ち位置にいる硬派なスタイルが魅力。
若い世代のメタラーにもオススメしたいと思うものの、この音に喜びを感じるのは、やっぱり当時を知る世代なんだろうね。


SACRILEGE(UK) - Turn Back Trilobite ★★★ (2020-07-04 16:41:09)

英国産ドゥーム寄りHM1989年作
この作品はよくドゥームメタルとして紹介されているが、サイケ要素は無くあくまで正統派HMにスローリフを取り入れた感じだ。
とはいえ、ミドルテンポでヘヴィに聴かせる正統派HMとは若干肌色が異なるという、なんども説明し難いこの時代としては異質な音楽性だ。
過去にハードコアやスラッシュをやっていた影響も感じられないでもないが、むしろバラード調の泣きのギターが登場したり
ツインリードで聴かせるリフが登場するなど、より正統派路線にシフトしている上、リフやギターワークで聴かせようという意欲が見え隠れする。
まあ、大きな特徴はLynda Thompsonの女声ヴォーカルなんですが、高い音程を取るのが少し苦手なんでしょう。女性ヴォーカルが際立つワリに
音痴(失礼!)なんですよ。そこをキュートな声質がかろうじてカバーしているという感じ。手の込んだ楽曲とこのヴォーカルのアンバランスさに
B級愛を感じずにはいられない。Lynda Thompsonは真面目にメロディアスに歌う歌唱法は向いていない気がするんだが・・・。
また、この年代では宇宙のみを描いたジャケは結構珍しい。Beherit、Nocturnus、Magusあたりが思い浮かぶが、いずれも同時期のバンドとの
差異化にジャケデザイン効果が大きな要素になっていた思うが、この作品においても同じことが言える。ジャケが宇宙というだけで存在感が大きい。


SADISTIC DRIVE - Anthropophagy ★★★ (2021-03-10 00:03:59)

フィンランド産デスメタル2020年作
CoffincraftのNiklas Heiskanen、BloodscapeのJusa Janhonenという地元フィンランドでの知名度すらアヤシそうなマイナーバンド出身の2人を中心として
結成されたデスメタルバンドのフルレングスアルバムなんですが、相当クオリティの高い、一線級王道デスメタルスタイルが魅力のデスメタルファン必聴盤だ。
一般人から見れば、エグい血みどろローセンスな落書きジャケと悪趣味な緑色のバンドロゴに嫌悪感を抱くだろうが、この底辺のジャケを見るとボクは血が沸き立つ。
一見チープなジャケからデモテープレベルのポンコツサウンドを想像してしまいがちだが、騙されてはいけない。最適な録音でデスメタルの醍醐味が詰め込まれた盤だ。
ハードコアルーツの激しさを持ちつつも、スウェディッシュデスっぽくはなく、むしろMorbid Angel初期作品がTerrorizer寄りにシフトした感じが仄かにある。
ミドルの気持ち悪いリフと突発的なブラストをうまく織り交ぜた楽曲に、食あたりになりそうな気持ち悪い滅茶苦茶なギターソロが絡む。
フィンランド産は濃いサウンドが多いが、確かに濃さは最高潮に達しているものの、北欧的なサウンドというよりは、80~90年代の米国デスメタル風味が漂う。
先に引用したレジェンド級の2バンドの演奏様式に非常に近いが、表現しているのは魔性やテロリズムではなく、ゴアリーなカニバリズムであるところが面白い。
Morbid Angelの魔性を帯びたリフ・エフェクトに似ているが、そこにハードコアテイストの爆発的な緩急と、ハイボルテージに弾きまくるギターが加わった途端
不思議とゴアリーな感触が生まれるからスゴイ。決して初期Carcass的なグシャっとした液状化したサウンドではない。Autopsy的な低音ゴリゴリ感でもないから面白い。
ヴォーカルスタイルも多彩で、唸るようなデスヴォイスに留まらず、絶叫したりゲロリバースに近いゲロヴォイスを披露するなど、カニバリズムにピッタリな感じだ。
悪い細菌を撒き散らし、狂犬病になりそうな感覚を、オールドスタイル且つその時代の一線級バンドスタイルで聴かせる。ちょっと格の違いを感じる作品だ。
ちなみに、ゴアテイストは、前作のカセットテープリリースの作品の方が濃い。この盤でややゴアが薄まったものの飛躍的に完成度が上がっている。
2~3分の楽曲が多く、収録曲は10曲で、トータルの時間は結構短いが、短い尺の中にデスメタルの醍醐味が詰まっている。勢いのみの短絡的で短い曲を詰め込んだ
ハードコア作品あるあるのような、安易さは全く無い。デスメタルフリークは騙されたと思って試聴してみたらいいよ。相当ハイレベルだからね。超オススメ!


SADISTIC DRIVE - Anthropophagy - Internal Putrefaction ★★★ (2021-03-14 20:37:46)

序盤と終盤の軽快なビートを刻む独特なリフ、爆発的なブラストが、TERRORIZERのWORLD DOWNFALL (1989年)を彷彿させる。
中盤はドゥーミーにネットリした演奏を聴かせ、カニバリズムのテイストを織り交ぜているという、美味しい所を凝縮したようなサウンドだ。
ブラストするデスメタルは多いが、こういうタイム感のバンドはきっと、オールドファンの心を掴む筈。カッコいいね。