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COMATOSE VIGIL - Fuimus, non sumus... ★★★ (2020-05-15 02:22:33)

ロシア産フューネラルドゥーム2011年作
我が家にあるフューネラルドゥーム作品の中でも特にお気に入りの神盤。
ジャケが残念だが、中身はとんでもない傑作、但し、3曲入りで全て20分越えの苦行という上級者向けなので注意が必要だ。
大作主義の、重厚なギターと空間系シンセによる白玉垂れ流し系ドゥーム、というだけで敷居が高く感じるかもしれないが
超スローでそのハーモニーを聴かせながら、時に抉るようなギターリフ、時に突き刺すようなハーモニクスが響き渡り
垂れ流し系フューネラルドゥームでは珍しく、非常に楽曲のクオリティが高い。
このバンドは、バンド名をComatose Vigil A.K.と改名して2020年に新作を出しており、そちらもハイクオリティだが
楽曲のクオリティと迫力では、この盤の方が上だと感じている。フューネラルドゥーマー必聴の傑作だ!


COMATOSE VIGIL A.K. - Evangelium Nihil ★★★ (2020-05-17 20:02:44)

ロシア産フューネラルドゥーム2018年作
前作「Fuimus, non sumus...」(2011年作)は渾身の作品で、当時ボク的にはナンバーワンのフューネラルドゥームだった。
バンド名がComatose Vigilから、Comadose Vigil.A.K.に変わり、更なる進化を遂げるか・・とかなり期待した作品。
方向性や凄みは前作同様で、安心のクオリティの高さ。ただ、前作よりも手の込んだ作品を作ろうとするあまり、
本来フューネラルドゥームが持つ淡々とした雰囲気が若干失われ、前作よりも起伏の富んだ作風になっている。
また、突き刺さるようなギターのハーモニクスは若干控えめになったのが残念。クオリティは高いが、ボクは前作の方が好み。
次作での進化にかなり期待はしている。


COMATOSE VIGIL A.K. - Evangelium Nihil - Comatose Vigil ★★★ (2021-06-22 01:55:50)

前作Fuimus, Non Sumus..(2011年)のクオリティが高すぎて、なかなか新作に馴染めなかった感じだが、やっと魅力に気付き始めた。
バンド名を曲名としたこの楽曲はかなり気合の入った真性フューネラルドゥームだ。前作の音響に比べ、ギターノイズの密度が高くなり
シンセのハーモニーもより作り込まれている。聴いた当初は作り込み過ぎな印象を持ったが、今はそうは思っていない。
激遅垂れ流し系フューネラルドゥームバンドでは、コマーシャルな凄みを排除した真性さがあり、トップクラスのクオリティにある。


COMATOSE VIGIL A.K. - Evangelium Nihil - Deus Sterilis ★★★ (2021-06-22 02:12:50)

これでもかという程にテンポダウンした鈍重さを持ち、初っ端の狂気に満ちたギターハーモニクスを伴うリフが唸りを挙げた瞬間、秒殺される。
真っ黒でズブズブドロドロのギターの迫力が半端ナイ。この盤に収録される楽曲の中で最も濃いフューネラル感が漂う。
シンセとギターを垂れ流し、デスヴォイスが唸っているこのバンドお得意のスタイルだ。終始淡々とした楽曲であるにも関わらず
その重厚に積み上げられたコードが織りなす不協和は異様な緊張感を放ち、徐々に泥沼の暗黒地獄に飲み込まれていくのだ。


CONVOCATION - Ashes Coalesce ★★★ (2022-05-25 19:31:14)

フィンランド産ドゥームメタル2020年作
ヘヴィで気合の入った獣のようなヴォーカルから過度な疲労感を伴うので、滅多に聴かないが、圧倒的クオリティの高さを誇る。
いやぁ、最近はあまりに濃い内容だとダウンしてしまうので避けてましたが、夏バテに追い打ちをかけるような即死級サウンドで
臨死体験をしたくなる日もあります。やはりそういう時は真性度が高く北欧の冷たさを含むフィンランド産に限ります。
しっかりとドゥームしている曲もあれば、トレモロリフでプリミティヴなブラックフリークが喜びそうなサウンドをベースに
ドゥームしている曲なんかもあって、且つ、圧し潰すような重量がある。ホンモノ感溢れるカオティックさに圧倒されるサウンドです。
ディミニッシュコードで危機感を煽り、重厚なヴォーカルエフェクトで襲い掛かる様は、本来であればクタクタになり過ぎて
敬遠したくなるんですが、まあ、クオリティの高さから有無を言わさず納得せざるを得ない。
バンド名や曲名から、宗教的悲愴感が濃厚に漂い、後ろ向きな負の感情が支配している。歌詞カードがナイのでわからないが
ものすごーく背徳的で危険なヒリヒリした張り詰めた空気、緊張感がある。密教的なカルト臭は、好きな人にとっては病みつきになるかも。


CORONER - No More Color Tour '90 (Live in East Berlin) ★★★ (2021-06-15 02:26:32)

スイス産テクニカルスラッシュ1990年作(VHS)
ボクはライブ映像にあまり興味を持たないんですが、コレは別格。当時の衝撃は忘れられない。
確かメタル誌にレビューも載っていたが、B誌ではない。確かMETAL GEARという雑誌だ。楽曲・演奏・アレンジの3つのカテゴリーだったと思うが
A~Eの5段階で評価するレビューだったと記憶している。3つともC評価だったような・・覚えがある。記憶違いかも知れないが。
この映像には華やかな感じは確かに無く、テクニカルな演奏に執心するあまり、動きもあまりない。そこがC評価という原因なのかも知れないが
少なくともボクを含めCORONERファンは、この再現度の非常に高い圧倒的な演奏で度肝を抜かれたんじゃないかと思う。トリオ編成という最小限ユニット
でありながら、アルバムの楽曲を忠実に再現できているところが凄まじい。ベースヴォーカルのRon Royceは現在は結構ふくよかな体形になっているが
この頃はシュッと痩せてて、時の流れを感じる。No More Colorはホントに凄まじい作品だった。それをライブ映像で見れるというお宝ビデオである。
Punishment For Decadence(1988年)の看板曲やPurple Hazeのカヴァーもアツい。
もはやウチにはVHSを再生できる機材が無く、このビデオテープも役目を終えてひっそりと棚の奥に収納され、青春時代の思い出の品と化している。
You Tubeで見れるので、興味があれば観てみるといいよ。余談だが、再結成して新作発表をほのめかしているのに、未だ音沙汰がナイな。


CORONER - The Unknown - Unreleased Tracks 1985-95 (2021-06-15 01:55:19)

スイス産テクニカルスラッシュメタル1996年作
ジャンル分けは一応テクニカルスラッシュとしたが、このバンドの後期作はスラッシュ色はかなり薄れている。
あまりこの盤は出回ってないのか、手に入れるのに結構苦労した。CORONERのワリと熱狂的ファンでありながら、2000年位までこの盤の存在すら知らなかった。
2枚組の一方には未発表曲がいくつか収録され、一方は1995年9月に地元スイスで開催されたであろうライブ音源が収録されている。ライブで演奏される曲は
Grin(1993年)からのチョイスなので、この盤が好きならまずまず楽しめる。しかし、演奏とは別の機材から発せられるハウリングノイズがイタイ。
海賊版レベルの粗雑な録音が耳に障る。ライブを楽しみたいならAutopsy: The Years 1985 - 2014 in Pictures(DVD)の方が断然楽しめるし
No More Color Tour '90 Live In East Berlin(VHSビデオテープを所持しているが、HDリマスターされた動画がどうやらYouTubeで鑑賞できる)の方が激アツだ。
未発表音源の方は、DAFというパンクバンドのカヴァーが収録されていたり、デジタル処理を施された脱メタル色の強い音源にイマイチ感が半端ナイ。
苦労して手に入れたワリに、内容はかなり微妙である。あくまでファンディスクとして持っておく、という程度のシロモノだ。


CRYPT OF SILENCE - Beyond Shades ★★★ (2020-06-09 22:49:27)

ウクライナ産ドゥームメタル2014年作
ゆったりと聴かせるオーソドックスなドゥームメタル。現時点で2作品リリースしており、次作は録音状態が向上してより深みが増しているが
ボクはこちらの処女作の方が好みだ。手の込んだアレンジで音の厚みの増した次作もカッコよくて素晴らしいが、個人的嗜好としては
ギターエフェクトが薄目で重すぎず、淡々としたこちらの雰囲気の方がツボに入る。
若干スタジオ臭がするのが玉に瑕だが許容範囲、浅めではあるが空間エフェクトも適度で心地よい。
灰色と黒のモノトーンジャケだが、4羽の鳥が描かれ、ジャケ裏にも空を飛ぶ鳥、盤には枝にとまっている鳥が描かれている。
ボクは鳥ジャケフェチなので、非常にポイント高い。次作よりこちらが好きというのも、鳥ジャケのせいだろうと思うので
音響的クオリティを求める人は次作から入ればいいと思う。ボクは断然こっちだけどね。


CRYPTA - Echoes of the Soul ★★★ (2021-09-27 02:54:46)

オランダ産デスメタル2021年作
個人的に一目置いている女性ギタリストSonia Anubisが在籍しているレディスデスメタルバンドの作品。一応オランダ産としたが他メンバーはブラジル出身。
ヴォーカル兼ベースのFernanda LiraとドラマーのLuana Damettoは、元々故郷ブラジルでNervosaというスラッシュバンドをやっていた(未所持)ようで
かなーり若い十代頃からメタルにどっぷりハマっていたのだろうと想像するところだ。そういうこともあり、濁声ヴォーカルはかなりウマいと感じる。
そういう下地があるので演奏は安心して聴ける高いレベルにはあるが、決して職人芸的なハイテクニックではない。エフェクトも音圧も標準レベルで、
ブルータル度の高い最近の一線級デスメタルと比較すると激しさという点では物足りないと感じるリスナーもいるかも知れない。
ギターソロはワリと基本的なスケールに忠実な組み立て方で、ストレートな旋律が多く、不条理な予想外のコード進行が無く気持ち悪さは控えめだ。
リズム隊がタテ乗りの演奏をしても突進する感じが無く、重心が後ろ側にあるかのような独特なノリは、このバンドの大きな特徴と言える。
余談かも知れないが、Fernanda LiraはCannibal Corpseに愛を感じているらしく、そのプリントTシャツを着てるショットは何度か見たことがある。
また、Sonia AnubisはサイドプロジェクトのCOBRA SPELLで80年代黄金期を再現したサウンドを聴かせ、80年代メタルシーンを溺愛している人である。
推定20歳代のレディスバンドだが、キュートなメンバーたちの演奏は、決して古臭くはないが、かなり各々の好みに寄ったオールドスタイルだ。
若さ故に円熟の余地を残す楽曲と演奏に、古学校死愛が融合した結果、ノスタルジックなのに初々しさを併せ持つ魅力的なサウンドに化学変化を起こしている。
そこが最大の魅力で、モーレツにハマっている。悪魔的だがB級っぽさが濃厚なジャケセンスも、いかにも80年代古学校死的で最高だ。
Sonia AnubisはCryptaのオフィシャルサイトでギターレッスンの生徒を募集しているようだが、残念ながらボクは日本在住だ。近所なら絶対習いに行くだろうな。


CRYPTA - Echoes of the Soul - Bloodstained Heritage ★★★ (2023-12-11 16:16:05)

ハンマリング・プリングとタッピングを駆使した教科書通りのライトハンド奏法で疾走するギターソロに
それを追い立てるかのようなドラムのリフのコラボレーションが美しい。
こういう作り込まない基本的なパッセージを堂々と楽しそうに演奏するのがSonia Anubisの魅力だ。


CRYPTA - Echoes of the Soul - From the Ashes ★★★ (2021-10-04 19:03:12)

音数多めのタテ乗りドラムは、決して突っ込み気味に走ることなく、微妙なタメを持たせながら独特なリズムを刻み、決して一本調子にならない。
ベースヴォーカルのガナリ声ヴォーカルが耳に心地よく、とても刺激的だ。また、デスメタルでありながら結構キャッチーなコード進行を見せる。
そういった演奏が、他のありがちな過激なデスメタルとは一線を画すところで、丁度良い刺激がボクのツボをつきまくる。
ギターソロは2人のギタリスト各々が分担しつつ華麗に演奏するが、このバンドスタイルの特徴は、あまりデスメタル的ではないキャッチーな旋律で
盛り上げるところだ。平成生まれなんでしょうが、基本的なスケーリングで昭和のロックの旋律を思わせるこの感じと、デスメタルのギャップがいいんだよ。


CRYPTA - Shades of Sorrow ★★★ (2023-12-16 05:34:47)

ブラジル産デスメタル2023年作
ギタリストのSonia Anubisが脱退してしまって、全員ブラジル人女性一色となった。ソニアファンとしては残念。
Cobra Spellの活動に専念するのか、地元オランダでギター講師に専念するのかわからないが、ギタリストがチェンジして
随分と雰囲気に変化がある。教科書通りのスケールで奏でられる青臭さが減り、内省的な翳りが前面に出たという印象。
音響的にも高音域の音質に変化があり、厚みが増し、エンタメ的な華やかさが減少し、真性なダークさが微増している。
80年代風味が失われて、オールドファン好みのサウンドから、新たな境地を志向する作品に変化しているね。
前作Echoes of the Soul(2021年)の初々しく80年代テイストが盛り込まれた奇跡的デスメタル名盤とは別物ではあるものの
新ギタリストのクールな演奏を受け入れられればとても楽しめる作品。
ヴォーカル兼ベースのFernanda LiraとドラマーのLuana Damettoによる重心が決して前ではない特有のタイム感のリズムは健在。
コレが他デスメタルには無い特有の個性として完成しつつある。Sonia Anubis脱退の喪失感は大きいが、充分ポテンシャルを維持してる。
全員女性で若干内省的な翳りが全面に出た、このテイストを受け入れられるかどうか、長く愛聴できるか否かはココがポイントになりそうだ。


CULT OF LUNA - Eternal Kingdom ★★ (2020-08-24 22:50:09)

スウェーデン産ポストメタル2008年作
20年選手でワリと有名だと思うんだけど、意外にも登録が無かったので、追加登録してみた。
ウチにはこの作品と処女作Cult Of Luna(2001年)、VERTIKAL (2013年)がある。このバンド結成前はハードコアに傾倒していたようなので
カオティックな雰囲気が割と色濃い。そういった下地があり、初期のドゥーム志向が見え隠れした作風から興味を持ったものの・・・
ボクにとってはどちらかというと苦手なサウンドの部類に含まれる。所持している3枚の中ではこの盤が一番好みではあるけど、何故かハマれない。
類似するバンドとしてよく引き合いに出されているのを見かけるのはNeurosis、Isisだ。結構的を得ているが、ボクはIsisは好みだが、Neurosisは苦手だ。
たぶん、ボク自身、年齢を重ねてハードコア的なカオスが受け付けなくなりつつあるのが原因かなと思う。しかし、どこか捨て置けない魅力を放つのも事実。
Isisは既に解散しているが、このサイトにはNeurosisファンはまあまあいるみたいなので、そのサウンドが好みなリスナーはドストライクだろう。
個人的にはNeurosisよりもこっちの方が好みではある。


CóNDOR - El Valle Del Cóndor ★★ (2021-02-28 21:31:34)

コロンビア産ヴァイキングメタル2018年作
辺境メタルを漁っているとコロンビア産は少ない分、目立つ。このバンドの作品も何度か見かけたが、あまりに粗悪な録音のため今までゲットしなかったが
恐らく通算4枚目だし、そろそろイイ感じになっただろうと思いゲットしたが、相変わらずデモ音源レベルの粗雑な録音状態に驚く。
音量を3メモリくらい大きくしないといけないくらい、全体的な音量が小さい上、ヴォーカルが目立ちすぎ、ギターが聴こえにくくバランスが悪い。
ローファイ感がアングラ臭を漂わせて味わいになっている類の録音ではない。意図的にそういているワケでもなく、単に録音技術が悪いんだろう。
少なくとも、デモテープ音源レベルの音響に一喜一憂できるマニアでなければ、絶対ゲットしてはいけない盤であることは間違いない。
そんな粗悪なポンコツ録音だが、描いている世界観と演奏スタイルはカッコいい。バンド名は野鳥の「コンドル」だろう。少なくとも鳥フェチなボクは
このバンド名で注目せざるを得ない。ラストの曲は直訳すれば「コンドルの谷」だろう。アンデス山脈の切り立った山岳に生息するコンドルをイメージ
させるこの世界観がツボにハマる。
ジャンルは一応雰囲気からヴァイキングメタルとしたが、ペイガンメタルに近い感触がある。大胆なリフ、鈍重なドラム、粘り気あるギターが織りなす
山岳を思わせるサウンド、癖のあるヴォーカル等々、味わい深いサウンドだ。
ポンコツ録音さえ良くなれば、かなり面白い存在になると思うんだけどねぇ。


DANTESCO - De La Mano De La Muerte ★★★ (2021-09-20 00:01:56)

プエルトリコ産ヘヴィメタル2005年作
ボクとしては15年選手のベテランのイメージがあり馴染み深いんですが、このバンドを追加する時に検索に引っかからなかったということは無名なんだろう。
初期作品はどうもあまり評価されていないようだが、まあ、その理由はわからないでもない。オペラ調のヴォーカルスタイルに癖があってクドいのだ。
おまけに大胆に音程を外すくらい、音痴なんだよね。後期は改善されて決して下手ではなくなるんですが、コレを味わいとして受け入れられれば、結構ハマる。
結構ガチンコパワーメタルな感じなんですが、コレは処女作だけあって録音は万全とは言えない。しかし、この作品はそこが大きな固有の魅力となっている。
ギターが若干シケシケでペラいながらも、演奏はパワフル。コレが絶妙な味わいで、ギターソロをガムシャラに弾きまくる豪胆な感じは最高にカッコいい。
まあ、なんといってもジャケが素晴らしい。田舎道をスキップしている少女の背後にカマを持った死神が変質者のように忍び寄るジャケが美しすぎる。
今年の初めにこのバンドの新作がリリースされたんですが、初期の無骨な荒々しさは薄れ、ボクの好みからちょっとずつズレてきているのが残念。
総合的な完成度ではWe Don't Fear Your God(2013年)をオススメするが、B級愛を注ぎたくなる個性的な盤としては、初期2作品をオススメしたい。


DANTESCO - Pagano ★★★ (2021-09-20 00:40:13)

プエルトリコ産ヘヴィメタル2008年作
オペラ調の音痴ヴォーカルの音程外し率が低下しつつも、朗々と歌い上げて音程のズレを誤魔化してる感が否めない感じは固有の魅力であると同時にクドい。
そこにB級愛を感じつつ鑑賞しよう。前作の死神通り魔ジャケから一変、清々しい青空の下で天使を踏みつけるミノタウロスのジャケとなったことで
メタルオペラ的な音楽性と古代エジプト的世界観がピッタリとフィットした。ジャケクオリティは処女作のインパクトには敵わないが、こっちの方がシックリくる。
愛聴した頻度は圧倒的にこの盤が多いので、彼らの作品中最もお気に入りだ。このくらいのややシケ気味のギターの音像でパワフルに演奏するスタイルが渋い。
豪胆な歌唱が暑苦しいが、ギターソロやアコギの旋律にも南米的なアルゼンチンタンゴ的な熱めの哀愁が漂うのは、いかにもプエルトリコ産という感じがする。
このバンドは楽曲の完成度が高く、しっかり作り込まれてとても聴き応えがある。アクの強さが前面に出ているのでどうも過小評価されがちだ。
CIRITH UNGOLを堪能できるリスナーは、このサウンドが猛烈にツボにハマるんじゃないかと思う。


DARK FOREST - Oak, Ash & Thorn ★★★ (2020-06-02 01:52:06)

英国産正統派メタル2020年作
世界観がボクのツボどストライクなので数年前からチェックはしていたものの、佳作といった感じで買うまでには至らなかったバンドだが
今年リリースされたこの作品は、これまでのどこか物足りない感じを一蹴して、一気に開花したかのような会心の作品だ!
バンド名とジャケとアルバムタイトルが示すとおり、この作品は「森メタル」で、ペイガニズムの浪漫とNWOBHMの息吹を帯びた作品だ。
メタリックになり過ぎないナマ音に近いギターのリフが、森・自然を感じさせる。ほんの少し(ホントに少し)フォーキーなテイストを織り交ぜ
ペイガンメタルによくあるややクサめなメロディーで、軽快なテンポでファイティングに、派手になり過ぎないツインギターやギターソロを駆使し
もちろんコーラスもいい感じにハモらせて、NWOBHMの古典と思わせる作風で聴かせるところがホント素晴らしい。
ガチでマッチョなヴァイキングメタルではなく、やや華奢な森の住人のファイターなところがイイのだ。
このサウンドを聴くと、皮のヨロイを纏い、田舎の山林に潜み、子分の犬を連れて、何かと戦いたい!という衝動に駆られるのだ。
NWOBHMフリークは必聴盤、ダークサイド派でマニア向け作品を多く書き込んでるボクにしては、ワリと万人にオススメできる元気が出る作品だ!


DARK FOREST - Ridge & Furrow ★★★ (2023-10-13 21:36:59)

英国産正統派メタル2022年
種苗法改悪や種子バンク廃止を、農業従事者以外の国民にはほぼ知られないままシレっと国主導で推し進められた日本とは違い
ハンガリーやスロバキアやポーランドは国内農業を守ろうとEU連合の圧力と戦っているな・・・という風に一応解釈している。
オランダやニュージーランドの農業は脱二酸化炭素うんぬんの屁理屈で随分と追い込まれてしまったが・・・
今週末はポーランドで選挙があると思うので、ボク的には結構注目している・・・
まあボクは農業従事者でも酪農家でもないので、全く論点がズレてるということもあるかもですが、まあボク的解釈です。
農業ネタを一応書きましたが、他国のここらへんの話の詳細はYoutube動画でもあまり出てこず、現地記事を翻訳しないと
なかなか精度の高い情報は入ってこない。
・・・とまあ、メタルレビューじゃないじゃん!と言われそうだが、割と目前に食糧危機が迫ってきたのかなあと感じつつ
大量の備蓄品を既に購入しているにもかかわらず、新たな玄米を追加購入しとこうか・・と先日Amazonで玄米を検索していたが
結局購入したのがこのCDだったというw
というのも、農業問題を思う時に思い浮かぶバンドというのが幾つかありまして、真っ先に思い浮かぶサウンドがこのバンドなんですよ。
前作同様、音響的にはNWOBHMを彷彿させ、メロスピと言ってもいいほどピロピロとギターを鳴らし、佳作揃いの楽曲。
本来であればピロピロ系はボクの毛嫌いするジャンルではあるんですが、このバンドの音は全く持って問題なく受け入れることができる。
バンド名に「Dark」というワードがありながら、そのコンセプトはダークサイドではなく、とても前向きな彼ら。
むしろ、恵みの太陽との対比で、暗い森、というバンド名かな、という印象をボクは持っている。
彼らのサウンドからは、大自然の活力、農作物の実りといった生命力が感じられるところが唯一無二の個性であり、また
彼らの公開するYouTube動画からは、バンドメンバーが仲良しで、各々の持てる力を発揮しつつ1つの作品を創造している感が
伝わってくるところがボクのツボにハマるんですよ。
変に凝ったコードワークは使用せず、ストレートで分かりやすいメジャーコード主体のコードワークがむしろ魅力的で
ライトに楽しめて、何も食べていないのに、なんとなく栄養補給できてしまった感を体現できる、元気が湧いてくるサウンドです。
ダークサイド派のボクが言うのもなんですが、液体が流れるかのようなバンドロゴや禍々しいジャケが蔓延するメタル界では珍しく、
負の要素を感じないコミカルさと大自然のファンタジーを感じられるジャケは100点満点です。
5曲入りのEPで若干物足りなさはあり、早くフルレングスアルバムを出して欲しいなと思っているね。


DARK FOREST - Ridge & Furrow - Ridge & Furrow ★★★ (2023-10-13 22:01:30)

Ridge & Furrowとは、どうやら田畑の畝と溝の模様を意味するようだ。
そういう風景を心に思い描きながら楽しむのがいい鑑賞方法だろうね。
アルバムタイトル曲だけあって、ドラマチックで聴きごたえがあり、壮大な自然を感じることができる。


DARK FOREST - Ridge & Furrow - Skylark ★★★ (2023-10-13 21:50:25)

アルバム1曲目を飾るに相応しいキャッチーなキラーチューン。
空をヒバリが舞う姿を想像しつつ、その躍動感を楽しむ曲だ。カッコいいね。


DARK FOREST - Ridge & Furrow - The Golden Acre ★★★ (2023-10-13 21:55:25)

この曲のタイトルから察するに、豊穣を祝う内容の曲なんだろう。
ギターとヴォーカルが織りなすハーモニーが、そういうお祝い的な雰囲気を醸し出しててグッドだ。
美味しいお米が食べたくなるね。


DARK FOREST - Ridge & Furrow - Under the Greenwood Tree ★★★ (2023-10-13 22:12:19)

このアルバムの最後の曲。
ややクサめのリフの旋律や、サビの盛り上げ方から、最も彼ら「らしさ」を感じることができる曲だ。
定番のコード進行をするいわゆる佳作の曲が多い分、心に残る際立った1曲、というのはなかなかないんですが
何故だろう、通して聴くとこの最後の曲の盛り上がりがとても劇的に聴こえ、EPの尺が短いながらも大河ドラマ1本見たかのような
充実感を味わうことができるんだよ。


DARK SUNS - Everchild ★★★ (2020-06-04 21:47:35)

ドイツ産プログレッシヴロック2016年作
まるで鳥のようなモノが描かれるジャケに興味を持ち、当時とりあえずジャケ買いした作品。
オルガンやシンセ以外にも、アルトサックスやトランペットなどのメンバーがいるゴージャスなバンドで
ギターの占める比率はやや低めだが、プログレをかじったメタルリスナーのツボにハマるサウンドだろうと思う。
CD2枚組の長編ファンタジー絵巻で、コレを聴くと1本映画を鑑賞したかのような充実感が得られる。
時折流れるピアノの旋律、ギターのコードワークから、作曲能力が相当高いと感じる。
また、終始アトモスフェアな空気が漂っているが、空間系のエフェクトが単調ではなく質が高い。
Kansas、King Crimson、Pink Floydあたりの70年代プログレッシヴロックの息吹をほんのり感じさせるので
そのあたりの音楽性や演奏スタイルが現代に蘇ったようなサウンドをイメージしてもらえばいいと思う。
ストーリー性のある壮大な作品だ。特に終盤の大曲は聴き応えがある。


DAVID BOWIE - Labyrinth: from the Original Soundtrack of the Jim Henson Film - As the World Falls down ★★★ (2020-04-28 20:22:57)

自分が何歳の頃かはっきり覚えていないが、映画「ラビリンス」を録画してよく観てた頃に聴いた曲で
ヒロインがゴブリン王に扮したデヴィッドボウイを探し回るワンシーンで流れる甘くエロい曲だ。
当時ファミコン版「ラビリンス」を買い、(何故そこまでラビリンスにハマったのかよくわからないがw)
映画中のサウンドがファミコンサウンドに変化して使われていることに驚いたが、
この曲はゲームクリア時のエンディングテーマに使われており、割と完コピされてて驚愕した。
非常に思い出深い曲だ。


DAVID BOWIE - ★ ★★★ (2020-04-28 20:58:25)

この人は映画「ラビリンス」「戦場のメリークリスマス」「ツインピークス」などビッグタイトルの映画のほか
「バスキア」でポップアートアーティストであるアンディウォーホル役を演じたことなどから、芸術性溢れ多才なイメージがある。
敬虔で熱心なファンではないが、子供の頃からチョイチョイ映画で親しみ(特にラビリンスの魔王ジャレス)
音楽としては、グラムロック時代よりも、割と硬派なティンマシーンの頃のサウンドをよく耳にした。
この人のサウンドは、時代ごとにスタイルやジャンルが違うイメージで、一口にこういうサウンドと言いづらいところがあるが
ワリといつの時代も甘くエロい声が魅惑的で、そんな歌声と最先端を思わせるファッショナブルなところが魅力だった。
このBlack Starは、発売当時Amazonで探し物をしてる最中に、アルバムが発売されているのを知ってゲットしてみた。
過去作の多くがエンターテイナーなカリスマ性を帯びていたのだが、そういうサウンドとはうって変わって、派手さがなく落ち着いた雰囲気の楽曲が多い。
変わらずダンディで魅惑的な歌声だが、冷たい質感で、カッコいいというよりは繊細で美しいと感じさせる作品に仕上がっている。


DEMILICH - Nespithe ★★★ (2020-05-15 23:49:46)

フィンランド産オールドスクール・テクニカルデスメタル1993年作
発売から5年後くらいだと思うが、購入当時に少しハマって、友人に貸したまま戻ってこなかったCDだが、もはやオリジナル盤は入手困難。
結局ボクは20th Adversary of Emptinessという全音源収録盤を所持している。
このバンドのフルレングスアルバムはコレのみで、デスメタル全盛期のリリースでありながら殆どメディアに露出することなく全くの無名。
ところが、当時の有名デスメタルバンドと比較しても引けを取らないどころか、かなりの個性派で偉才を放つサウンドだ。
大きな特徴は、その時代のデスヴォイスの中でも極端に低音な下水道ヴォイス、ブラストもアリでMorbid Angelを更にヴァンギャルドにしたような楽曲構成だ。
そして、やたら長い曲名が多いのも特徴。変拍子を多用し、意表を突く気持ち悪くもカッコいいギターソロなど、粗削りな演奏だが非常に多くの魅力を秘めている。
初期Meshuggah、Watchtower、Anacrusisあたりの複雑な構成のデスメタルがツボ、かつ初期Morbid Angelや初期Incantationあたりの魔性がツボなら相当ハマる。
フィンランドのカルトサウンド恐るべし。デスメタルマニアは必聴盤だ!


DERKETA - In Death We Meet ★★★ (2020-05-11 23:14:37)

米産デスメタル2012年作
1988年に女性デスメタルバンドで結成されて以降、フルレングスアルバムはGoddess of Death(2003年)くらいだが
この作品は、メンバーの脱退などからオリジナルメンバーが定まらないまま、NunSlaughterのメンバーがヘルプをしたり、
数か所でレコーディングした音源を組み合わせたりして、紆余曲折しながらの作品だったようだ。
それでいて、気持ち悪さ、霧かかった空気の緊張、死や血などデスメタルのあるべき曲想を、見事に表現した類い稀な傑作だったから凄い。
この盤はかなりの回数聴いた超愛聴盤だったが、ついにメンバーが固定し、オリジナルメンバーとしての作品を世に送り出したのが今回の作品だ。
天気の悪い闇夜に鐘の音が響き渡る景色が思い浮かぶ初っ端のイントロ部分に、血に塗れたドゥーミーなギターリフが入った瞬間、ボクは死体となり
そのデスメタルど真ん中の死の世界にイザナわれ、ひたすらスローにズルズルと死体を引き摺られていく錯覚に陥るのだ。
こういうデスメタルを聴きたかったというオールドファン長年の夢を叶えてくれた悶絶作品、墓場までご一緒したい神盤だ!
現在活動しているオールドスクールデスメタルバンドではボク的にはナンバーワンで、しかも女性だよ。今後の活躍をかなり期待している!


DERKETA - In Death We Meet - Goddess of Death ★★★ (2020-10-24 00:48:19)

オールドスクールデス愛がヒシヒシと伝わってくる、アルバム最初を飾る作品。
10分の大作でありながら殆ど曲展開することなく延々とザックリ感あるリフをズルズルと引き摺り続ける。
スピードや曲展開に頼らないB級デスメタル路線は、デスメタル黎明期においても殆ど表舞台で活躍することなくマニア向けだったが
そういう演奏形態のデスメタルを円熟させ、現代に蘇らせた彼女たちのサウンドはとても貴重だ。
最近はベーシストは初期DEATHフォロアーバンドのGRUESOMEで活躍しており、尚更古学校死愛をすごーく感じるところだが
そろそろDERKETAの新作を作ってほしいと思う今日この頃だ。


DISEMBOWELMENT - Transcendence Into the Peripheral ★★★ (2020-05-21 21:58:51)

オーストラリア産デスドゥーム1993年作
コレは確かアゴ氏のオススメでゲットしたんだったかな。
フューネラルドゥームの元祖はThergothon(フィンランド)、Paradise Lost(英国)、Disembowelment(オーストラリア)
それぞれの国でスローなデスメタル路線で登場して発展したのかなと思っている。
Paradise Lostは2nd以降はゴシック路線で発展してゴシックメタルのムーヴメントを、Thergothonの作風は北欧のカルトドゥームバンドに引き継がれ
Disembowelmentはオーストラリアで数年後にフューネラルドゥームのブームに火が点くキッカケになったんだろう、と思う。
(ボクはメタル誌を読まないしコレを購入当時に何か所かのサイトを翻訳して調べた程度の知識なので、信憑性があるかどうかわからないが)
バンド名は訳すと「腹切」「腹裂き刑」だろう。1曲目「The Tree of Life and Death」あたりの歌詞から、日本の切腹のイメージとは全く異なり
西洋の割腹して腸を巻き付ける刑、といったイメージが妥当なんだろう。そう思って聴くと、確かにそんな残酷な絵が脳裏に浮かんでくるような音だ。
5曲目「A Burial at Omans」は、(たぶん)写実主義画家のギュスターヴ・クールベ作「オルナンの埋葬」をテーマにした曲なんだろうと思う。
大袈裟な表現や浪漫主義を排除した、無表情な写実である埋葬風景を描写しているクールベの作風を、メタルサウンドで表現しているのだろう。
そういう重苦しい、現在のフューネラルドゥーム的世界観でありながら、現在のフューネラルドゥーム様式とは明らかに異なるアプローチで
同時に、当時の既存のメタルサウンド様式に則っているとは言い難く、今聴いても唯一無二の作風だから、インパクトは絶大だ。
基本的にスローなデスメタル&アンビエントではあっても、ブラストビートが予期せぬタイミングで無機質に登場する手法など、定速でビートを刻む感じではない。
伴奏とは独立した形で、情緒的に狂おしくデスヴォイスが挿入されたり、メロディとは言い難い不協和なアコギが淡々と鳴り響いたり、といった
前衛的なサウンドで、かなり異端作品だ。かなりの上級者向けで、疲れるのでボクもあまり頻繁には聴かないが、ドゥームマニアとしては必ず所持すべき古典だ。


DISENTOMB - The Decaying Light ★★ (2020-05-26 01:35:49)

オーストラリア産デスメタル2019年作
大御所The Obsessedの名盤「Lunar Womb」のジャケのように、巨大な魔物がアタマから人を食べているジャケで
バンド名の中に「tomb」という綴りが入っている、という理由により、即ジャケ買いした作品。
中身はThe Obsessedの音楽性とは程遠い、ブラストとツーバスドコドコ満載のデスメタルでした。
ドラムは相当なハイテクの持ち主で、畳みかけるようなドラミングと多彩なリフは一聴の価値アリ。
ツーバスとブラストが多くを占めるサウンドなので、ワリと似た感じの楽曲になりがちなのは否めないところだが
若干オールドテイストの残り香があるので、ボクでも楽しく聴ける。
派手な演出のないクールさが魅力で、演奏の安定感は抜群なので、音楽性がハマる人は結構いると思う。


DOOM:VS - Earthless ★★★ (2020-05-01 02:14:05)

スウェーデン産ゴシックドゥーム2014年作。
Draconianのヨハンエリクソンが全ての楽器を担当しているドゥームプロジェクトだ。
そういう作品なので、本家Draconianのギターの質感に近く、ヴォーカルは女声ではなく男声。
当然ドゥーム作品なので、Doraconianよりも随分とテンポダウンしている。
唸るようなデスボがメインだが、ギターサウンドの曲間で呟くような声が入ったり、歌い上げるところもある。
ジャケのような荒廃した孤独で冷たい質感が特徴で、凄みを感じさせる重厚感ではなく、適度な音圧で淡々と旋律を奏でる感じだ。
重厚で真性なフューネラルドゥームを望むリスナーにはあまり向かないが、ゴシックあたりがストライクゾーンな人が
フューネラルドゥームの入口として体験するには、もってこいの作品だ。


DOOMED - 6 Anti-Odes to Life ★★★ (2021-01-07 00:37:06)

ドイツ産ドゥームメタル2018年作
このバンドの作品は、どの盤も高い完成度で聴き応えがある。半面、そのスタイルはワリとどの盤も同路線を貫いている。
緑を基調としたジャケデザインは、初期から今作まで貫かれており、スタイリッシュさ、カッコよさがある。
このバンドのサウンドは、適度な歪みのギター、重低音のベース、芯のある適度な圧のドラムが、最適な音響で聴ける。音作りの巧みさが光る。
非常にヘヴィであっても、音が音像に紛れてしまうことが無く、旋律がくっきりと聴きとれる。適度な残響音も万全だ。
そういう完璧な音響はあくまで前提であって、アヴァンギャルドな曲構成が最大の魅力だろうと思う。しかし、このアヴァンギャルド加減が説明しづらい。
決して、既存のドゥームメタルスタイルに新しい演奏様式を盛り込んでいるというワケではない。曲の構成・アレンジが独創的なのだ。
ドゥームメタルスタイルではあるものの、ブラック的トレモロリフ、ツーバス、鈍重過ぎない多彩なリズム、単調ではないコード進行など
作曲に学があるのかと思わせる高い楽曲クオリティがある。万全な音響と書いたが、元来ドゥームが持つ音響の微妙な変化云々の魅力以上に、楽曲アレンジが
素晴らしい。また、旋律が音像に紛れることがないので、その旋律が印象に残りやすい。アヴァンギャルドであっても、このサウンドはドゥーム上級者向けではなく
ダークサイドの音楽がOKなメタラーであれば、誰にでも受け入れられそうな旋律のキャッチーさがある。濃いサウンドなのに、その間口は結構広いだろうと思う。
万全な音響と楽曲で、陰鬱になり過ぎない力強さで、イーヴルな世界を描いている。ずっとこの路線なので新要素を期待しないでもないが、このカッコよさを
これからも追求していって欲しいと思う。


DOOMED - Our Ruin Silhouettes ★★★ (2020-05-18 01:28:57)

ドイツ産ドゥームメタル2014年作
ドイツ東部チェコの国境近くのバンド。初期から近年の作品までジャケアートのデザインが統一されてて、とてもオシャレな印象を持っているバンドだ。
ドゥーミーだが、ツーバスもあり、起伏に富んだ、とても理に叶った展開をするカッコいい楽曲群と、エッジの効いたヘヴィかつイーヴルなギターが魅力だ。
ボクは基本、ドゥームにツーバスは許せない。が、このバンドはカッコいいから許せる。淡々と聴かせるタイプとは対極にあるロックテイストのドゥームだが
ヴィンテージ臭のするドゥームロックとは肌色が違うし、デスメタル的でもなく、真性なスロードゥームではなく・・・オーソドックスに感じられる音ながら
他にコレといった例えが思い浮かばない独自性がある。そう感じるのは、細部に至るまで音が作り込まれててやや前衛的な側面があるからだろう。
ボクはこの作品以外に、In My Own Abyssをゲットしているが、将来的には全てコンプリートしたいと思っている。
もうゲットする前にカッコいいことが判ってるから、知らないバンドへの好奇心が勝って後回しにしちゃってる感じだが、近作(2018年作)などのクオリティも折り紙付き。
アヴァンギャルドかつスタイリッシュな感じと、多彩な楽曲群、玄人受けしそうなギターの音、聴きどころ満載な決してライトではないのに万人受けしそうなドゥーム作品だ!


DRAWERS - All Is One ★★★ (2020-05-28 11:41:21)

フランス産サイケデリック・ドゥームロック2011年作
ストーナー要素を含むかなーり重量のあるギターで聴かせる、結構カッコいいロックサウンドだ。
ドゥームと言っても、ドラムは結構手数が多く、ギターのリフは掻き毟り引き摺るようなスラッジに近いヘヴィさがある。
初期Electric Wizardを想起させるヘヴィさと、石化しそうな感覚があり、そっち方面が得意な人は相当ツボにハマるはず。


DREAM THEATER - Distance Over Time ★★★ (2020-05-17 20:52:01)

米産テクニカルHR2019年作
ドリームシアターは神盤Images and Wordsがあれば後は別に・・という感じだったが、一応ギタリストの友人がいるので
全部聴いていることは聴いている。ドラマーのチェンジで音楽性が変わったとか、いろいろと酷評も聞くようになったが
少なくとも前作の短編集のような作品はボクは退屈で、もうこのバンドも微妙になってきたなあと思ったのが正直なところ。
しかし、この作品は楽曲が素晴らしいし、湿り気たっぷりのヴォーカルが帰ってきたというような感覚、素直にカッコいいと思う。
ギターとシンセの曲芸的演奏も、楽曲の曲想を殺す程のモノでもないし、ドラムも結構いい感じだと思うけどね。
ボクはギタリストではないので、速弾きギターサウンドはあまり買わないが、そのテのギタリストではジョンペトルーシは好きなギタリスト。
バックでジョンペトルーシが演奏してるピンボールゲームなんてのもあったなー。当時は相当ハマった。
ちょっと脱線したが、今作をイマイチ評価しない声も結構あるみたいだけど、ボクはオススメしたい。


DRYOM - 2 ★★★ (2020-06-27 01:21:33)

ロシア産フューネラルドゥーム2015年作
バンド名はロシア盤の表記は(たぶんベラルーシ語)Дрёмだ。3作品リリースしており、タイトルは処女作が「1」で
作品発表順にアラビア数字がそのまんまタイトルになっている。わかりやすくてイイ。
ワリと聴き応えのあるフューネラルドゥームだが、描く世界はジャケから察するに、少なくとも現代がテーマ。
翻訳すると1曲目は「死の街」3曲目が「ブリザード」だ。なんとなく世界観が見えてくる。
暗いジャケイメージと、派手さの無い音楽性から、かなーり地味なバンドというイメージを持っているが、クオリティは相当高い。
淡々としたゆるーいテンポ、粉っぽい歪みのギター、一本調子なコモり気味のデスヴォイスがうまく融合している。
ギターの質感からか、埃っぽさを感じるところと、ギター以外のシンセや効果音に独創性を感じる。
一聴しただけではしっくりこない若干前衛的なアプローチが、徐々にツボに入ってくるとその魅力から抜け出せない。
よくある「魔性」「死」を直感的に感じさせるタイプとは一線を画す作風で、相当上級者向けのフューネラルドゥームだ。
ちなみに、次作「3」は全く現代を感じない世界観に変貌しており、前衛色を若干強める。ボクはこの「2」が好みだ。


DUNGEON CRYPT ★★★ (2024-03-07 23:40:16)

ダサいフレーズと風呂場ヴォイスの超ポンコツイカレ宅録メタルだというのに何故か聴いてしまうこの人のサウンド。
昨年末にミニ新作Fossilized(2023年)が出たと思ったら、フルレングスアルバムらしきものが年始に立て続けにリリース。
Creatures From the Dawn ob the Earth(2024年)というタイトルで、両方ともジャケに化石が描かれている。
初期作から化石やらマンモスやら、石器時代のような世界観を徹底しており、Bandcampの新作紹介ページには
recorded millions of years ago...(何百年も前に録音された・・・)などと書かれているな(笑)
今回は50チェココルナでゲット。普通はBandcampなら多くのサポーターが登録されているのに、コレに限ってはほぼ無人w
全く相手にされていない孤独な宅録オタクなんじゃないかと想像するところだ。
チューニングがおかしいのか、意図的にハズしているのか、ベースラインとギターの音が全く合っていない独特の響きや
調性とギターソロが全く合っていない故意なのか下手なのかわからない独自のハーモニーは健在だが
前作Blow by Blunt Flintの破壊力が凄すぎて、今作はインパクトという点では以前ほどではない、というより
この音楽性に耳が慣れただけ、ということだろう。
大きく進化した点は、従来はどの曲も全く同じテンポだったところが、曲ごとにテンポを変える、という技を覚えたらしい。
1曲目はまさかのスピードナンバーである。
今作も安定の風呂場ヴォイスで悶絶の笑いを提供してくれる。

新たな盤を登録できなくなって久しい。治ったら書こうと思ってたが、コレはもう元通りになりそうにないね。


DUNGEON CRYPT - Blow by Blunt Flint ★★★ (2023-06-16 01:37:51)

チェコ産ヘヴィメタル2023年作
昨日リリースの出来たてホヤホヤ。相変わらず同じようなミドルテンポ独りポンコツ宅録メタルを聴かせてくれる。
前作Paleozoic Times(2020年)はデジタル作品に2ドル払いました。今回は20チェココルナ(約140円)でゲット。
今までの作風と全くと言っていいほど変わっておらず、3年間一体何をしていたんだよ・・と言いたくなるが
コレがまた何故か中毒性の高い、微笑ましいポンコツメタルなのだ。
せめて曲ごとのテンポくらい変化をつければいいのにいつも同じテンポの曲なので笑える。
この人の癖として、ギターとタムを刻みながら下降する、ミドルテンポメタルあるあるのリフを多用するんですが
コレが妙にツボにハマるんですよ。ホント面白い。で、風呂場音響の低クオリティな唸り声に、中毒性がある。
YouTube再生回数もすごーく少ないから、殆ど見向きもされていないんだろう。
タダでダウンロードできるのに、リリースの度に謎の日本人が投げ銭のように買っている(笑)から
きっとボクは、毎回お金出して買ってくれる謎の日本人として認識されてるだろうな。


DUNGEON CRYPT - Blow by Blunt Flint - Blow by Blunt Flint ★★★ (2023-06-16 01:56:31)

アルバムタイトル曲。
過去様々なC級以下ポンコツメタルを聴いてきた。まあ、このバンドに期待するのは「笑い」なんですが
サウンドクオリティは置いておいて、お笑い部分は期待以上のクオリティをいつも提供してくれる。
この曲はアルバム1曲目ですが、初っ端から笑いのツボを突きまくる。
ギターの音質は決して悪くないのに、何故か笑いが込み上げてくるダサいリフ、いつもと変わらない同じテンポ
チャイナシンバルのカシャーンっていう音やカンカンカーンと鳴り響く金属音を多用するところ
ワザとキーを外したような微妙でダサいギターソロ・・・安定のいつもと変わらない唸り声・・
再生してすぐに秒殺されました。このセンス、ホント好き。


DUNGEON CRYPT - Blow by Blunt Flint - Mammoth Hunters ★★★ (2023-08-15 03:14:18)

世の中には素晴らしい名盤が沢山あるというのに、またこのポンコツサウンドを再生してしまった!
単にギターのパワーコードに乗せたヴォーカルラインが、どうしてこんなに笑いを誘い、中毒性があるのか。
そもそもこの人は何故マンモスと戦おうとしているんだ?
一体どんな世界観を思い描いているんだろう。


DUNGEON CRYPT - Blow by Blunt Flint - Tragedy in Teriatry ★★★ (2023-06-16 02:07:09)

なんでこんなギターソロにしたのか。
この音のハズしかたは確信犯だろ・・・ホント楽しい。
クセになる。


DUNGEON CRYPT - Paleozoic Times ★★★ (2021-09-01 01:06:15)

チェコ産ヘヴィメタル2020年作
地球上で最も先進的で挑戦的な音楽が生まれている国はチェコ共和国だと常々感じている。が、メタルに関しては超のつく辺境国というイメージがある。
アヴァンロックやジャズではハイクオリティなバンドが多い国なので、メタルもスゴいバンドがある筈だと思いつつ結構普段から気になる国なんですが
多くが驚くほどのポンコツ作品だ。ゴアグラインド路線は結構気になる作品はあるものの、結局チェコ産でゲットするのは非メタルの別路線作品ばかりである。
このバンドはそんなチェコ産ポンコツメタルのひとつではあっても、何故か愛情を注ぎたくなるボクのツボを突くB級以下のポンコツ宅録独りメタルだ!
試聴段階では笑いを誘うそのポンコツっぷりに愕然としたんですが、ラストまで聴いてしまった上、2ドル払ってデジタル作品をゲットしてしまった。
まず、ジャケのセンスが笑える。夏休みの水彩画の宿題のようなクオリティのジャケだ。針葉樹でもない何の木かわからない木々に囲まれた三差路の中央に
ヘタクソなトンボが大々的に描かれる。バンド名からイメージすると、3Dダンジョンゲームでトンボの雑魚キャラが現れた的なジャケ。ウケる。
サウンドはローテクでチープなエフェクトのミドルテンポ以下のメタルだ。ヴォーカルはまるでカラオケのエコーがかかったような風呂場ヴォーカルなんだが
全く凄みの無い唸るようなデスヴォだ。そんなヴォイスでありながら、ほんの少しメロディに乗せようとする歌い方が愛らしい。とりあえずこのバンドに愛着
を感じる点はこの憎めない魅力を秘めるヴォーカルである。このヘタクソなダサい演奏に風呂場ヴォイスが乗るサウンドに、何故か中毒性がある。
この作品の最大の山場は、ラストのMorticianのカヴァーである。Morticianは米産ゾンビゴアグラインドだが、ゾンビ化する前の初期作品から
Dead And Buriedという曲をチョイスしている。この曲はPV化される代表曲だが、人々に捕らえられた男性が火あぶりに遭う内容である。
曲の導入部分で、焼かれる男の悲愴感溢れる悲鳴が聴けるなかなかイタイ作品なんだが、それを真面目にコピッて宅録で再現しているところが笑える。
いやー、悶絶してしまいました。そのラストの曲を聴いて気付いたんだが、この人の歌唱はMorticianをかなり意識している。よほど好きなんだろう。
この作品はポンコツサウンドに一喜一憂できるマニアにしか理解できないサウンドなので、クオリティを求めるリスナーはお金を出してゲットしてしまうと
ものすごーく情けない気持ちになると思うので気を付けよう。ボクはこの作品だけでなく、前作にも2ドル散財しているが、何故こんなポンコツ作品に散財
してしまったんだろうと、後悔こそナイが、そんな自分の感性にゲンナリしてしまう。
ふと仕事中にこのサウンドが脳裏に浮かび、帰宅してつい再生してしまう。たぶん次作が出ればまた2ドル払ってゲットするだろう。


DUNGEON CRYPT - Paleozoic Times - Primitive Ammonite ★★★ (2021-09-01 01:29:05)

アルバム中、最も不可解で笑える作品だ。曲名を日本語訳にすると「原始的なアンモニート」だろうか。
ミドルテンポ以下のドゥーミーなバッキングに、笑いを誘う唸り声ヴォーカルが乗る楽曲なんですが
1分過ぎたあたりから、プールの中でブクブクと息を吹き出しているような謎のサウンドスケープが結構な尺で挿入される。
川の底に住む原始アンモニートの生態を表現しているのだろうか?
ポンコツサウンドで描かれる謎の世界観がシュール過ぎて、愛情を注ぎたくなるのだ。


DUNGEON CRYPT - Twilight of the Stone Age ★★★ (2021-09-16 22:23:58)

チェコ産ヘヴィメタル2020年作
コレを売ろうというセンスがスゴイと感じる超ポンコツ宅録メタルだが、また再生ボタンを押してしまった!
もはや長年メタル作品を愛聴していると、普通に完成度の高い作品は、ありきたりで喜びを感じられなくなるのか、ボクの感性が退化しているのか。
最近は3日に1回くらいはDUNGEON CRYPTを聴いている。確かに、ミドルテンポで刻むメタルはストライクゾーンだが、流石にコレはポンコツ過ぎる。
そう思っているものの、何度も繰り返し聴いてしまう謎の中毒性を秘めている。録音や演奏技術はポンコツであっても、惹きつける何かがある。
凄みも無ければ劇的に展開するような楽曲でもない。相変わらず風呂場で唸っているかのようなデスヴォイスだ。ダサいフレーズも結構多い。
きっとそういうダサさが凝縮した感じと風呂場ヴォイスのコラボレーションが絶妙にツボを突くのだろう。ホント面白い作品だ。
将来完成度が上がって普通のサウンドになるか、凄いサウンドに化けるのか、とても楽しみなバンドだ。


EA - Au Ellai ★★★ (2020-05-04 01:50:52)

????産フューネラルドゥーム2010年作
シンセを多用した神秘ドゥーム路線を更に突き進め、全体的な整合性を再調整されたような作品で、非常に聴きやすい。
しかし、前作の、真性さに近づきつつあったギターの重厚感がやや抑えられて、再びシンセの比重が増したようにも感じる。
今までジャケが残念だったが、今作は燃えるような赤を背景に黒で描かれた鳥が飛んでいるジャケが素晴らしく、アルバム自体の存在感が増している。
このアルバムの音楽性は素晴らしいと思うが、処女作から大きくは音楽性が変わらず、アルバムリリース毎に新しい何かに期待するのだが
その点ではインパクトが薄れつつある、という印象を持っている。


EA - Ea ★★ (2020-05-04 02:06:57)

????産フューネラルドゥーム2012年作
相変わらず匿名で神秘ドゥーム路線は変わらず。今作は1曲48分、という作品で、インパクトは大きい。
元々空間系シンセをはじめ、残響音の聴かせ方がうまいから、安心のクオリティではある。
しかし、ツーバスをドコドコ入れるという禁断の手法に手を出してしまったことと、一部鳴きのギターサウンドを入れてしまったことは
フューネラルドゥーマーとしては残念。ドラマチックな曲展開が一部加わったとは思うが、ややコレジャナイ感がある。
それでも神秘的な世界観を貫いているスタイルのドゥーム作品としては、なかなかこのバンドを凌ぐサウンドには出会えないのも事実。


EA - Ea II ★★★ (2020-05-04 01:30:55)

????産フューネラルドゥーム2009年作。
処女作の神秘性を引き継ぎつつ、全体的な音圧がやや厚めになり、シンセ寄りだった作風から一変してギターの存在感が増した。
前作ではギターの低音部の存在感があまりなかったが、そこが改善されて重厚で迫力のあるサウンドに仕上がっている。
シンセサウンドも低音部が厚く、パイプオルガン・ピアノなどアタックの強い芯のある音が増した印象、前作同様に空間系シンセもしっかりと作っている。
相変わらずメンバーは匿名で、曲名の無い20分越えの楽曲が2曲と、神秘性を前面に出す仕掛けが効いている。
前作のライトに聴ける感覚が薄れ、フューネラルドゥームフリーク向けの濃い作品にシフトしている。


EA - Ea Taesse ★★★ (2020-05-04 01:11:18)

????産フューネラルドゥーム2006年作。
メンバーは匿名で活動しており、果たしてどこの国のバンドなのかもよくわからない。
EaのCDは4枚所持しているが、メンバーに関するライナーなど一切無く、未だに不明なまま。
ロシアのプロダクション(soritude production)からのリリースで、音の感触はいかにもロシア的に聴こえるんだけど、果たしてどこの人がやってるのか。
スタイルはゴシック寄りのやや薄目の音圧のギターとシンセによるフューネラルドゥーム。
音圧で悩殺されるタイプではなく、空間系シンセのアンビエントサウンドをバックにギターを奏でるといった感じ。
メンバーの匿名性を含め、神秘性を前面に出したコンセプトが素晴らしい作品だ。


EARTHSHINE - My Bones Shall Rest Upon the Mountain ★★★ (2021-05-04 22:45:47)

オーストラリア産ドゥーム2021年作
一応ドゥームとしたが、ツーバスもあるし一口でドゥームと言い難いところもある。ペイガンメタルのようでヴァイキング的でもある。
基本鈍重なリフで進行し、ゴリゴリに歪んだギターを豪胆に掻き鳴らす。今は無きBathoryを彷彿させ、若干ポストブラック寄りにシフトさせたような
音楽性に大きな魅力がある。しかし、コモリ気味の録音状態は、評価を真っ二つに分けそうだ。この粗雑な録音が味わいになっているとは言い難く
コレを楽しむには少々慣れが必要だ。ボクはあまり気にならなくなった。そのハードルを越えれば、このサウンド特有の浪漫主義的な雰囲気にハマる。
なんといってもジャケが美しい。鷹が飛ぶ夕焼けをバックに、獣の頭骨が描かれる荒野、石碑の前で白馬に跨る槍を持った騎士が佇む。
戦いに疲れ、故郷に帰ってきた的な雰囲気と、大地を感じさせる壮大さ、嘆きのような歌い回し、重厚で禍々しい金属音など、ジャケの世界観と音が見事に一致。
インナーには実写の山岳と湖、かなりポイント高いジャケにワクワクするんですが、ひとつだけおかしな点が。何故か鳥居の写真が・・??
西洋を思わせる完成度の高いジャケでありながら、この鳥居で一体どこの国をテーマにしたサウンドなのか、さっぱりわからなくなった。
CDを取り出すと、アーティストと飼い犬らしき写真が。・・・せっかくの世界観が若干台無しなところは、まあご愛敬ということで。
粗雑な録音で豪快な感じは、学生時代にBathoryのHammerheartを初体験した時の感覚に非常に近く、この路線がツボの人に超オススメ盤である。
次作はアングラ臭を漂わせたまま録音状態を向上させて欲しい。一聴してポンコツ感に騙されないように。とても雰囲気のある素晴らしい作品だ。


ECTOPLASMA - Inferna Kabbalah ★★★ (2023-08-24 22:58:12)

ギリシャ産オールドスクールデスメタル2022年作
最近は真性なダークサウンドよりも、古学校死サウンドを好んでゲットしている。特にB級路線。
そういうワケでデスメタル黎明期から活躍する老舗バンドも結構手にするんですが、むしろ影響を受けた次世代バンドの方が
より古学校死度が高いということを近年はヒシヒシと感じる。老舗バンドは一度完成しちゃうと演奏技術は上がっても味わいが欠落しがちだ。
というワケで、今月は未知の古学校死サウンドを発掘、いろいろ視聴して厳選して最もツボにハマったのがコレだ!
昨日空輸で届いたんだけど、もう、ずっとCDかけっぱなしです(笑)。
もうね、完璧。ボクがこのジャンルに求めるモノが全てこの1枚に凝縮されていると言っても過言ではナイ。ストライクゾーンど真ん中です。
このバンドのルーツをいろいろ調べてみたが、一時期は4人編成だったようだが、基本はデュオのようだ。
ブラッディなデスメタルを世に広めるために活動しているらしい。本人たちが言うように、このバンドの音の魅力はそのブラッディな感触だ。
特筆すべきは、ギターソロのような飾りが無いことだ。近年のデスメタルはやたらメロディアスな茶目っ気を加える甘えバンドが多いが
このバンドは気持ち悪いリフとたまにブラストありのズトボコドラムを主とする古典デスメタルスタイルで真っ向勝負している潔さが素晴らしい。
そしてデスヴォイスの空気量が完璧で、抜群にウマい。このテのブラッディデスは結構星の数ほどのバンドがあるがその多くは
音圧で凄みを出そうとしたり、安直にピッチを下げて下水道ヴォイスにしたり、奇声を発したり等々、ゴアリー要素を過剰に演出しがちだ。
このバンドはそういう過剰演出が全く無く、オーソドックスな古典デスの範疇から外れることのない適度な熱量で聴かせるところがいい。
だから疲れないし延々聴き続けることができる。シンプルな古典サウンドなのに全く飽きることなく楽しめる。
低音部のこもった音質もグッドだ。コレがB級デスの味わいに一役買っている。古参の老舗バンドの殆どが失ってしまった魅力である。
ホントに古典的なデスメタルなので、特に際立ってスゴイ楽曲があるワケではないのに、何故か魅力たっぷり、中毒性が高い。
そして、なんといってもこのジャケが素晴らしい。80~90年代B級デスメタルを彷彿させる謎シチュエーションの骸骨ジャケが美しい。
その上、このバンドロゴも、いかにもB級デスっていう感じで、デザインセンスも完璧だ。
2016年頃から活動しているらしく、過去作品も全て買うか、と思ったが、過去作品はこの盤ほど完成されていないのでやめました。
ボクの中の古学校死サウンドランキングの上位に一気に駆け上がったダークホースです。このジャンルが好きなら必聴盤だ。


ECTOPLASMA - Inferna Kabbalah - God is Dead, Satan Lives (Rosemary's Baby) ★★★ (2023-10-14 01:17:26)

神は死に、サタンが生まれる。カッコ、ローズマリーの赤ちゃんwという曲。
まあボクくらいの年配者でダークサイド派なら、アイラレヴィンのローズマリーの赤ちゃんはホラーストーリーでは定番だろう。
今更、堂々と、ホラー界では散々使い古されたであろう題材の曲を1曲目に持ってくる潔さとセンスは、むしろ
オールドスクールデスファンのツボを刺激するんじゃなかろうか。
何故だろう、今年は上質デスメタルを結構手に入れたというのに、この夏にコレをゲットして以降、デスメタルはこの盤ばかり聴いてるな。
B級ズトボコ古学校死ファンは絶対手にすべき盤であることは間違いない。


EDUARD BAGHDASARIAN ★★★ (2022-01-16 18:01:01)

アルメニアの作曲家。アルメニアのクラシック作曲家はハチャトゥリアンぐらいしか有名どころはいないと思うが、最近ヘヴィローテなのがこの人だ。
バグダサリアンはアルメニア国内ではかなり有名なようで、24のプレリュードというピアノ曲がある。第6番、24番は探せば動画が見つかる。コレが美しい。
この2曲がよく弾かれてるんだろう。この曲集の中でも特に心に残る楽曲だ。
絶版になっているピアノ譜をRaffi Besalyanという演奏家が誤植を校訂して、昨秋ピアノ譜を発売したので、即買いしました。
第6番はスピーディで流れるような楽曲なのにゆったりと聴かせる、ラフマニノフばりの重厚さをも併せ持つ鉄板曲だ。第24番はテンポを落としてしっかり聴かせる感じで
これまたハーモニーが美しい。とりあえず簡単そうな第24番から覚えようかと思ってたが、ゴージャスな第6番の方がかっこいい。でも難しい。
まあ、ここにピアノファンがどれだけ見に来てるかわからないが、小品でありながら歯ごたえのある曲を探してるなら、売り切れる前にこのスコアはゲットした方がいい。
ちなみに、CDは相当手に入りにくい、と思う。「EDUARD BAGDASARIAN:Piano and Violin Music」という盤が2014年にリリースされているモノをゲットしているが
アルメニア作品のオムニバス的な盤にもしかしたら収録されているかも知れないね。


ENCOFFINATION - O' Hell, Shine in Thy Whited Sepulchres ★★★ (2020-05-10 22:34:09)

米産ドゥーム2011年作、随分前にローランDeath氏に勧められてゲット。
Justin Stubbsという人のプロジェクトらしいが、ミキシングやジャケ・ライナーのデザインまでやってるようだ。
ジャケ・黒地にゴールドで描かれたライナーのデザインがまず素晴らしい。
重く引き摺るような、ややこもり気味の閉塞的なギターが真性で背徳的で、まるで邪教で苦行を課せられているかのよう。
そんな禁忌に触れたような世界観が大きな魅力だ。
この人はIsoratorという延々と暗ーい音空間のダークアンビエント作品も作っているようで、特に「音作り」にコダワリがあるんだろう。
Father Befouledというバンドにも名を連ねているが、そこでの音作りに大きく貢献していることがこの盤の音から伝わってくる。


ENNOVEN - Redemption ★★★ (2020-07-08 20:52:10)

ポーランド産ブラックメタル2014年作
霧に霞む針葉樹林ジャケが印象的な、東欧の教科書通りの森林崇拝独りブラックだ。
Spirits、Etherenal Winter、Of the ice、Rebornの4曲を収録、曲タイトルがいかにもな感じでステキだ。
リリースから6年経っているのにYouTubeの再生回数が2800回程度で相当無名なバンドなんだろうがハイクオリティだ。
霧を思わせる高めの湿度で、ややポストブラック的な尖ったギターパートがメインだがアコースティックギターも織り交ぜ、
最高の雰囲気の演奏に、森全体に響き渡るような濃厚なエフェクトがかかったカオティックなヴォーカルが絡むスタイルが美しい。
ブラストが無いのは好みが分かれるところだが、ボクはこの控えめさが気に入っている。トレモロリフを多用する感じの曲もあるが
アトモスフェアな空間に割と単音の旋律が響き渡る作風なので、控えめなドラムの方がムーディで良い。
こういうスタイルの作品は結構数多くあると思うし、抜きんでた個性があるとも言えないが、オーソドックスでもイイものはイイ。
小雨で薄く霧が出ている日に林道をマイカーでドライブしながら車中で聴くと、バッチリとハマりそうなサウンドだ。


EORONT - Gods Have No Home ★★★ (2021-01-22 00:50:38)

ロシア産ブラックメタル2020年作
処女作Neverending Journey(2013年作・未所持)は当時購入を悩んで何度か試聴した程度の知識しかないが、真面目でストレートなシンフォニックブラックだ。
通算4作目にあたる今作を発見し、処女作からどれだけ変化したか試聴してみたところ、想像以上のクオリティの高さから、ゲットしてみた。
また、購入検討中に、前作Another Realm(2017年作・未所持)とも比較してみたが、前作の自然崇拝的テーマと雰囲気が、更に円熟したような完成度を感じるところだ。
適度なザラザラ感のあるギター、トレモロリフで疾走するパートとミドルテンポを織り交ぜたオーソドックスなシンフォニックブラックだが、妙に惹きつけられるモノがある。
このバンドはFoltath Eternumという人物を中心としたバンドで、ギター・ヴォーカル・シンセ・プログラミングを担当している。しかし、今作クオリティの底上げを
している大きな要因は、ボクが一目置くバンドAlleyのギタリストEgor Moskvichevがアコースティックギターとサウンドアレンジで参加しているところじゃないかと思う。
また、このサウンドのコンセプトとして、ウクライナ出身の詩人Maximilian Voloshinの詩を歌詞に採用しているようだ。まあ、その詩を翻訳する気にはならないが
ロシアの史実をテーマにしたヒューマニズムに寄った詩人ということと、土着的・神話的な楽曲タイトルから、その世界観を想像しながら聴くのが良い鑑賞方法だ。
このサウンドは自然崇拝ブラック寄りではあっても、霧や森林を感じさせるサウンドとまではいかず、そういう雰囲気を仄かに漂わせたオーソドックスな音響で
霧の雰囲気を残響音で誇張させる感じは無く、低音部分もしっかり聴こえるところはむしろ好感触。純粋に刺激的なブラックメタル様式の演奏と音作りが魅力だ。
更に、Egor Moskvichevのアコギの存在感が程よいスパイスとなっている上、彼の持ち味である非メタル的なシットリした雰囲気が見事に融合されている。
ちなみにFoltath Eternumのサイドプロジェクトと思われるFrozenwoodsというバンド作品の方が自然崇拝度は高い。が、こちらはまた一口で語り尽くせない音楽性で
一般的な自然崇拝ブラックとはまた一線を画す作風だ。たぶん、無名なんでしょうが、ここのところ、彼の作品、関連あるアーティストの作品に注目しているところだ。


ERKKI MELARTIN ★★★ (2020-07-19 22:20:54)

フィンランドの作曲家。オーケストラやバレエ、室内楽など多くの作品を残し、音楽以外にも才能を発揮した人だが
とりあえずボクはこの人のピアノ曲以外には全く興味がナイ。この人が創造する音楽はフィンランド産らしく
温度が非常に冷たく、叙情溢れる作品が多く、かなり好きな作曲家だ。
同郷のシベリウスが10歳年上で、漂う雰囲気はとても近いものがある。雪と針葉樹が思い浮かぶ作品が多い。
また、若くして心臓病を患っており虚弱だったこともあり、そういう逸話から繊細なイメージがある。
恐らく「悲しみの園第4番雨」が最も有名だろうと思う。ボクもこの曲が最も好み。美しくとても感情に訴えかけるモノがある。
世間で弾かれている曲の殆どが、この「雨」のようだが、この曲集の第3番「乞食の子の子守歌」も個人的にかなり好きな曲だ。
でも、濃厚な悲しみを帯びた、暗ーい曲なので、弾いていたらすごく悲しい気分になる。こんな子守歌だと寝付けない。
ピアノ曲は300曲くらい残しているらしいが、日本で見かける作品は僅か。あとは輸入楽譜や輸入盤を漁るしかない。
手当たり次第に輸入楽譜をゲットしてみたが、あまり弾いてみたいと思える楽譜も多くなく、「悲しみの園」に匹敵する作品には
出会っていないが、Romance Op.59は美しく親しみやすいのでお気に入りだ。
音源は「悲しみの園」は安定感と力強さがある館野泉氏の作品がいい。総合的には、Maria Lettbergというピアニストが
メラルティン作品を収録したCDを発売しており、ボク的にはこちらが好みで愛聴盤になっている。


EVOKE THY LORDS - Boys! Raise Giant Mushrooms in Your Cellar! ★★★ (2020-05-18 02:17:44)

ロシア産サイケデリック・ドゥーム2015年作
ドイツのDoomedのジャケに激似してたのをキッカケにゲットした作品だが、中身はドゥームだけれども肌色は随分違っていた。
大きな特徴としては、フルートを大々的に導入しているところだが、このサウンドがストライクな人は恐らくストーナーがツボな人だろう。
ヘヴィなワリに真性さはなく、軽快なロックでもないので、ストーナー要素を含むサイケデリックなギターとフルートの絡みをゆったり楽しむ
といった感じの聴き方がいいと思う。とはいえ、ロシア産なので、独特な翳りはある。ちなみに女性ヴォーカルも登場する。
フルート導入だけで随分と他バンドとの差別化ができてて、一風変わった雰囲気のサイケデリックドゥームをライトに楽しみたい人にいいかも知れない。


EYELESS IN GAZA - Act I: The Protagonist ★★ (2020-11-14 00:54:36)

アルメニア産フューネラルドゥーム2020年作
Eyeless In Gazaといえば40年選手の英国ポストパンクバンドが思い浮かぶ。少なからず影響があるのかと思ったが真逆の音楽性であり
恐らくEyeless In Gazaの小説からバンド名を引用しているのだろう。この小説を読む気にはならないが、戦争・友人の自殺・神秘主義がテーマにあり
主人公の生涯を4つの期間に分けて語られるストーリーのようだ。「Act Ⅰ」というアルバムタイトルからも、この章立てた小説の序章という感じなのかも。
1曲目のタイトルを直訳すれば「主人公」だ。ラスト曲のタイトルは恐らくヨーロッパの詩を意味するのだろう。次作は「Act Ⅱ」を作ろうと思ってるのかも知れない。
モノクロ顔写真ジャケは、この小説の主人公なのだろう。大作主義の楽曲や、続編を予感させる雰囲気からも、大長編な壮大なコンセプトが感じられる。
そういう世界観を思い描きながら聴くとバッチリとフィットする音楽性である。神秘主義を象徴するようなアトモスフェアなシンセが支配する音空間に
クラシックギターの質感に近いアコギ、歪んだギター、ブラック寄りヴォーカルが絡み合うサウンドだ。楽曲はなかなか作り込まれておりグッドだ。
各々の楽器の音素材・エフェクトは良いが、録音時点でクリアな音質が損なわれているところが正直残念なところだ。アトモスフェアな響きを楽しむ作品だけに
ここで失敗しているところが若干頂けない。音質の劣化を感じさせる録音は大きな課題だ。また、同系メランコリックドゥーム群と比較して思うのは
鬱々とした雰囲気ではあるものの、その旋律から感じられる感情は「不憫」「憐み」といった、悲しすぎる感覚だ。まあ、人生残念サウンドなんだからいいんだけど
どうも悲愴感が濃すぎて、コレを何度も繰り返し愛聴しよう、というところには行き着かなかった。小説のコンセプトに沿ったサウンドという点ではアリなんだろうが。
ダメ出ししたが、大作主義の楽曲自体は相当な聴き応えがある上、3曲目あたりはかなりアヴァンギャルドな曲構成である。やろうとしていることが壮大で挑戦的だ。
次作で録音状態の問題を解消して欲しい。辺境バンドによる一大コンセプト作品なので、次作以降もチェックしようと思っているし、是非とも応援したい。


FALL OF EMPYREAN - A Life Spent Dying ★★ (2020-11-08 03:16:32)

米国産ドゥームメタル2010年作
十数年前に前作A Darkness Remembered(2004年)のレビューをしているみたいだが、その内容は概ね間違ってはいないが
少なくともMournful Congregationには似てもにつかない。当時はドゥーム経験値がまだまだで、なんでもMournful~に聴こえたのだろう。
前作はコンポジションに光るモノを感じさせるも、A級にはなりきれない楽曲構成と若干奥行きに欠ける録音状態で、佳作といった感じだったが
ギターの音自体はかなりツボを突く音質で、結構次作の登場を期待したものだ。結局音沙汰が無かったのでそのまんま忘れ去られたバンドだったが
先日この作品が400円くらいで叩き売りしていたのを発見し、ゲットしてみた。ここ2、3日くらいマイカーではコレを聴いている。
とりあえず、前作よりも録音状態は若干向上しているが、やはり奥行きに欠ける。ギターの音は前作同様にいい歪み方をしておりツボだ。
とても尖っており、突き刺さるような硬質な歪みのワリに、コードを重ねた時に適度なザラザラ感を感じる素晴らしいギターの音像が聴きどころだ。
作風も前作の延長上で、大きく進化したとは言えないサウンドではある。が、結構好きな音で興味深く聴くことができる及第点の作品だ。
ドゥームとは言っても、ドラムは結構叩くし、どちらかというと構築的な起伏に富んだ音楽をやっている。ヴォーカルはオーソドックスなデスヴォ。
この盤以降は作品が無いようなので、活動しているのかどうかわからないが、録音状態が向上し、優秀なギターの音が最適な音響で聴けるとしたら
とてもカッコいいサウンドに進化すると思う。


FATHER BEFOULED - Revulsion of Seraphic Grace ★★★ (2020-05-10 22:57:38)

米産デスメタル2012年作。
低く唸る下水道ヴォイスは王道で、クールで派手さがなく、とても心地よい重低音ヴォイスだ。
ドゥーミーなパートのドラムの質感や、ネットリ感あるギターの音、更にそこから爆発的にテンポアップする感じや・・・
ギターソロの音の運びなどが、大御所Autopsyの質感にとても近く、オールドスクールデスメタラーのツボをやたらつきまくる。
これ以降にも作品をリリースしているのをさっき知ったが、一聴した感じ、このAutopsy的質感はこのアルバムが最も色濃い。


FEDERICO MOMPOU ★★★ (2020-10-09 13:29:47)

スペイン出身の作曲家、ピアノ作品が多く、また、30年間パリで過ごしたことから、印象派のドビュッシーや、エリックサティに通じるような
明確な旋律よりも、長めのサステインとハーモニーによる独特な響きが美しい、スローテンポなピアノ曲が多い。
ゆっくりの曲が多く、モンポウの作品をピアノで弾くことに今まではあまり醍醐味を感じず、避けてきた感があるが
先日ふとモンポウの代表曲が収録される4枚組CDをゲットし、昔買い漁った輸入楽譜を眺めている。モンポウにハマったのは大学卒業頃だが
ここ最近、またモンポウの作品に向き合っている。記譜形式が小節で区切られていないような作品も多くあり、なかなか馴染みにくいものの
低めの難易度ながら高い音響効果を秘めている作品群に大きな魅力がある。
ボク世代は必ずといっていいほど聴いている太田胃散のCM、バックに流れているのはショパンの前奏曲第7番だが、この曲を引用した
「ショパンの主題による変奏曲」がワリと有名かもしれない。「内なる印象」 「ひそやかな音楽」あたりもワリと有名で、内省的で響き重視の曲が素晴らしい。
ちなみに、若い頃はNaxosからリリースされている盤を愛聴していた。先日手に入れた盤はMompou: Complete Piano Worksという4枚組で、
ボリュームある内容のワリにアマゾンで2000円代でゲットすることができた。エリックサティのようなモダンさがツボな人には、是非オススメしたい。


FIFTH ANGEL - Fifth Angel ★★★ (2020-05-11 11:19:13)

米国産様式美HM1986年産。
長らくTime to Tellが処女作だと勘違いしており、随分前に後追いで再発盤をゲットした作品。
2ndはボクがダークサイドサウンドに染まる直前に猛烈にハマった盤で、未だにコンテナ収納行きにならずマイルームに常備している。
そういうワケで愛着度は断然2ndなんですが、ゆったりと安定感で聴かせる2ndに比べ、密度の高い迫力あるホンモノ感はこちらが上だ。
米国産でありながら、北欧情緒を思わせるサウンドではボクの中では相当上位に入る。この作品で聴かせるギターは同路線ではナンバーワンの称号をあげてもいいくらい。
中音域にイマイチ透明感が足りないと感じるヴォーカルの声質で若干好みが分かれるかもしれないが、しっかりハイトーンも熱唱している。
全体を支配するしっとりとした湿り気と深みのある哀愁漂う感じは、非常に味わい深く懐かしさを感じる。


FORSAKEN - After the Fall ★★★ (2020-04-27 23:36:06)

マルタ島ヘヴィメタルど真ん中バンドの2009年作。
たぶん出身国からして、無名バンドなんじゃないかと思うが相当クオリティは高い。
この作品の前作、前々作を聴いた回数が多すぎて、どうしても過去作への思い入れが強いが
初めてForsakenを聴くなら、もうここからでいいだろう。
スローからミドルテンポのツインギターが唸るど真ん中ヘヴィメタルだ。
キャンドルマスばりに歌い上げるヴォーカルといい、パワー溢れる作品だ。
ギターの質感が若干前作までと異なり、エフェクターの構成をドゥーム寄りに変化させているんじゃないかと思わせる。
ドゥームバンドのイメージを持っていないので、音の質感はボクは前作までが好き(このバンドに限り)なんだが、
これはこれでアリで、過去作への思いからネガティヴなことを書きながらも10年後も聴いているような気がする。


FORSAKEN - Anima Mundi ★★★ (2020-04-27 23:24:57)

マルタ島出身のヘヴィメタルバンド2004年作。
90年代から長く活躍しており、最近は2017年作のアルバムも出ている。
自分にとって最も好きな作品は、このAnima Mundiと次作のDominationだ。
After the faii(2009年作)はギターの質感が若干ドゥーム化しており、それはそれで素晴らしい。
しかし、硬派にヘヴィーメタルをやっているこの2作品が特に素晴らしい。
ツーバスでドコドコやったりスピードに頼ったりせず、ひたすらスローからミドルテンポで
ヘヴィーメタルど真ん中をやっているスタイルは、まさに化石とも言えるが、今となっては
ここまで頑固なメタルはむしろ存在価値が大きいと思う。
もうこの作品が発表されて15年くらい経つが、この路線でこのバンドを超える作品には出会えず
未だによくマイカーで愛聴している。


FRANZ LISZT ★★★ (2020-04-26 19:31:08)

ここの解説や発言の通り、高い鍵盤技巧が話題になりがちな作曲家で、ピアノを嗜む人が上級にグレードを上げる時期に必ずと言っていいほど憧れ、Lisztの楽曲を目標にする。
「超絶技巧練習曲集」などと訳された名称のせいか、高度な鍵盤技巧が代名詞みたいになっているが、決してそう捉えるべきではない。
超越しているのは肉体と精神と心であるとLisztは明言している。技巧については肉体的要素であり、Lisztの作品を単に技巧がスゴイということで片づけるのは勿体ない。
鍵盤技巧に偏ることなく、技巧に裏付けられた、より内面性の強い、心を打つ作品が数多い。実際、この曲集の第3番「風景」は、技巧的な面だけ見ると譜面通り弾くことはそんなに難しくはない。しかし、内面性を加味した心を打つ演奏となると、一筋縄にはいかない。
ウチには東芝EMIがまだ楽譜を売っていた頃(1980年代)のボロボロの楽譜がピアノの傍に常備してあるが、未だなかなか思い通りに弾きこなすことは難しい。
最近は年齢を重ねて集中力も衰え始めたのか演奏精度が下がってきた。が、Liszt作品は生涯の友として嗜んでいきたいと思っている。
↑の人が書いている代表曲が超有名曲だが、名曲は数多い。Liszt作品後期になればなるほど宗教色が強くなり鍵盤技巧は控えめになっていく。これはこれで鑑賞するにはいい。
個人的にはやっぱり超絶な演奏が全盛の頃「超絶技巧練習曲集」「ハンガリー狂詩曲」の作品や、旅愁が感じられる「巡礼の年スイス」「巡礼の年イタリア」が好きだ。
シューベルトやシューマンの曲を編曲した作品中「冬の旅」「魔王」「献呈」や、ペトラルカのソネット第104番、3つ演奏会用練習曲第3番ためいき、メフィストワルツ
挙げればキリがないほど素晴らしい楽曲群だ。
演奏家は、旅愁を感じさせる楽曲の場合は、技巧が派手に聴こえないボレットがお好みだ。鍵盤技巧のダイナミズムを堪能するなら、チョイとマニアックだが
ケマル・ゲキチの演奏が最もツボだった。


FREEWAYS - True Bearings ★★★ (2021-02-07 02:52:46)

カナダ産NWOTHM2020年作
今年に入ってゲットした作品ですが、2020年作品中ベストアルバム候補に推奨したい素晴らしい作品だ。昨年ゲットしたPOSSESSED STEELの作品に感銘を受け
リリース元のカナダのTemple Of Mystery Records作品を漁っていた時に発見した作品。雪景色にキャンピングカーのような車輛が描かれるジャケに
購入当初はあまり興味をそそられず数日放置していたが、味わい深いロックサウンドにモーレツにハマってしまった。今ではそのジャケが何故か美しく見える。
同レーベルから作品をリリースしているPAGAN ALTERや、ヴォーカルの声質からWITCHCRAFT処女作(2004年)の音楽性が非常に近いが、もう少しヘヴィさがあり、
JUDAS PRIEST「Sad Wings of Destiny」(1976年)や、BLUE OYSTER CULT「Secret Treaties」(1974年)あたりのハードさ・空気感を併せ持つサウンドだ。
Witchcraft処女作的な湿り気と翳りをベースにしたサウンドと、70年代クラシックロックで特にヘヴィさが際立ったJUDAS PRIESTやBOCのようなハードさが
見事に融合されている。恐らく全く無名なバンドと思うが、このサウンドは耳の肥えた年配ハードロッカーに是非聴いてもらいたいと感じさせる作品だ。
頑固なオヤジロッカーは、この例えに「全然違うじゃん!」と言うかも知れない。70年代を知り尽くしているオヤジロッカーなら、JudasやBOC以外の適切な例えが
きっとできるだろうが、70年代は後追いのボクにとっては、この例えが精一杯。ただ、同時期のヘヴィさを際立たせたサウンドが蘇った感触というのは確かだ。
浅めの歪みで奏でられるギターのリフと、コードをジャーンとストロークした時の重厚な歪みのバランス感覚が素晴らしく、職人の域に達している。
印象に残りやすいキャッチーな旋律と、作り込まれた楽曲、シットリ感あるヴォーカル、味わい深いコーラスワーク、もう完璧っす。
ただ、フルレングスアルバムにしては、30分チョイの収録時間は短い。そこは物足りない。
レーベルのショップにこのジャケのTシャツが売ってるんだが、かなり欲しい。それくらいこの作品を気に入ってしまった。


FROZENWOODS - Cold of Early Spring ★★★ (2021-03-18 00:37:41)

ロシア産アトモスフェアブラック2020年作
作品自体は2019年にカセットでリリースされ、CD化されたのが2020年のようだ。
前作から7年・・とはいっても、相当無名なバンドで、処女作である前作Echoes Of The Winterforest(2012年)のクオリティも決して高くはない。
少なくとも、当時は、ロシア産で極寒の自然を思わせるバンド名とアルバムタイトルが印象に残り、作品の雰囲気が好きだったが、ゲットには至らなかった。
しかし、今作のクオリティは非常に高いと感じる。聴けば聴くほど独創性の虜になってしまう。
EORONT、GLOOSHが最近ボクのお気に入りブラックだが、その2バンドのギタリストFoltath Eternumによるサイドプロジェクトと思われる。
ここに挙げたバンドはそれぞれに異なった趣きを持つ作品で甲乙つけ難いが、最も多く愛聴しているのは、このFROZENWOODSだ。
乾いた感じのスクリームとまでいかない高音域のガナリ声ヴォーカル、若干低音域が薄めの音作りといい、軽めの録音に、聴き始めた頃はライトに楽しんでいたが
不思議と中毒性がありハマってしまった。バンド名から高い湿度を思い浮かび、深いリバーブ処理を施していそうなものだが、湿度はあまり高くなく
一般的な自然崇拝ブラックよりもややエフェクト処理による残響音は浅めだ。しかし、砂塵のような粉っぽいギターバッキングが幾重にも重なり、空間の拡がりを創っている。
その音の束が癖になり、低音が薄めであることがむしろ心地よい。周期性のあるフランジャーっぽいノイズや適度な湿り気を帯びたアコギなどの工夫が加わり
あまり霧の濃くない自然を感じさせる音空間に仕上がっている。アルバムタイトルから想起される、冬から春にかけての気候の質感が見事に表現されている。
前半の楽曲では、一本調子な直線的なブラストとトレモロリフが占める淡白な楽曲だが、印象に残りやすいコード進行も手伝って、没入感強めで惹きつけられる。
終盤のテンポを落とした楽曲では、オクターブの音程を多用し、ジャストではないその微妙な音程のズレがレイヤー的効果を生む。ストーナーと言うと語弊があるが、
それに近い効果を持つ音響が癖になる。カスカスのギターノイズは、石が風化し気化していくような、退廃的なイメージを思い起こさせる。
バンド名から想像する凍てついた森というよりは、もう少し季節が春寄りで、まるで花粉や胞子が飛び交うようなザラついた粒子多めのノイズである。
そんな独創的な音世界がとても魅力的だ。ヘヴィでアグレッシブなブラックフリークにはきっと向かない。ギターノイズのコダワリを堪能できるリスナー向けだ。
Foltath Eternumというギタリスト、恐るべし。彼のバンドはいずれもセンスがイイ。特にこの盤は相当ツボにハマってしまった。


FUNERAL TEARS - The Only Way Out (2020-08-14 20:30:19)

ロシア産フューネラルドゥーム2018年作
このバンドももう10年選手になるが、オーソドックスなメランコリックドゥーム路線ながら、他のバンドの差異化という点では
無個性派なところがあり、今までゲットせず静観してきた。今作は従来の路線の延長上ながらも若干雰囲気が変化したので
発売当時にゲットしたが、まだまだ克服しないといけない課題が山積しているなぁという印象を持ってしまった。
元々録音状態にあまり難点は無かったバンドだが、今作は中音域から高音域を際立たせ、強めの歪みを加えることで
若干エモーショナルさを狙ったのか、それが裏目に出ているような気がする。高音域が歪み過ぎて若干耳に障る。
また、それぞれの音のリバーブが万全でなく、一体感に欠ける。また、味わいを持たせるために加えているノイズなどが
鳴りっぱなしで、折角良い響きを持たせているのに、長めのサステインが無駄な不協和を作り出していると感じる箇所が多い。
音響的にボクはイマイチと感じるんだが、意外と世間の評価が良かったりするのが謎。
Cradle of Firth的なスクリームヴォイスが評価されているのかなぁ。唯一推せる個性ではあるが・・。
ただ、これまでの無個性なオーソドックスさから、脱却しようとするような志向性は感じられた。次作に期待。


FUNERIS - Elegies & Blood ★★★ (2020-08-30 00:25:18)

アルゼンチン産フューネラルドゥーム2020年作
2014年に処女作を世に出してから、1年満たないスパンで似たような作風のアルバムを乱発しているバンドだが、毎回一定のクオリティはある。
Nocturnes For Grim Orchestra(2016年作・未所持)ではストレートに音楽性を象徴するパイプオルガンジャケがとても印象的で、
中身もオルガンとギターノイズ、唸るようなヴォイスが魅力的な教科書通りのフューネラルドゥームなので、辺境ドゥームのワリに真面目な
印象を持っていた。毎回ワリと標準的なジャケで中身も買う前から判っているので、あまり購入意欲が沸かないバンドだったが
今作のジャケが、突然気持ち悪いヘンなジャケに変貌しているので、ゲットしてみた。
食虫植物的な気持ち悪い花に砂時計が置いてあり、血の付いた鳥の羽が生えている。その背景は、蛾の羽のような質感の画風が悪趣味だ。
一体どんなシチュエーションなのかさっぱりわからないジャケだが、裏面はエジプト建築っぽいデザインで、尚更意味不明なところは辺境メタル独特の
魅力がありとても面白い。アルバムタイトルを直訳すると「哀歌と血」というところか。とりあえずキモいジャケと悪趣味なアルバムタイトルから受ける印象で
どんなに気持ち悪い辺境フューネラルドゥームを聴かせてくれるのか、ワクワクする。まあ、この作品は9作目で、一応過去作はリリース毎に一聴
しているので、大体想像はつくんだが・・・オルガンとギターとデスヴォイスの超スロー白玉垂れ流し&たまにピアノor弦楽器的シンセの旋律が絡むという
教科書通りのフューネラルドゥームサウンドが楽しめる。但し、リリース毎に音響のクオリティはアップしているので、迫力があり高いクオリティにある。
このサウンドの特徴は、このテのオルガンドゥームの本場フィンランド産に比べて、作り込まれていない感じが、磨かれていない原石的な感じで
逆に魅力的だ。曲構成がヘンに作り込まれていない分、表現がストレートで直感的にスッと入ってくるところがイイ。
また、従来の作品に比べて、ジャケの印象通り、気持ち悪さがかなりアップし、ギターの歪み具合から、ブラッディな感触が色濃くなっている。
このバンドはAlejandro Sabranskyという人がヴォーカル、ギター、ベース、プログラミング、ミキシングまで全て独りでやっている。
とりあえず、割と真面目にオルガンフューネラルな世界を描いている人だなという印象が、今作でとても悪趣味な人だという印象に変わってしまった。
もちろん、従来の作品よりも、真性さがアップして聴き応えのあるサウンドになっている。
しかしこのジャケセンスは・・とりあえずまた1年満たないうちに新作出すんだろう、次作のジャケがどうなるのか、とても楽しみだ。


FUOCO FATUO - Obsidian Katabasis ★★★ (2022-03-19 05:14:49)

イタリア産フューネラルドゥーム2021年作
珍しくイタリア発のバンド。というのも、イタリアといえばメロディックでクラシカルでスピーディなバンドが多いイメージ。
ボクの趣味と真逆の音楽性を持つバンド群なので、積極的にはイタリア産を漁るということはしない。
コレは昨年発見してゲットした作品。気難しそうな世界観、いかにも底辺の地獄絵図のような暗いジャケとバンドロゴ。
予備知識も無くジャケと曲名でゲットしたんですが、音楽性も結構底辺のフューネラル感を伴うズルズルドゥームでした。
10年選手でこの作品はどうやら3作目。なかなか聴き応えのあるギターノイズ、垂れ流しでありながらドラムはある程度の手数があり
単にノイズだけで聴かせるのではなく、アコギの物悲しい悲愴感なども楽しめる。レジェンド級とまではいかないが、聴き応え充分。
類似するバンドというのもあまり思いつかないが、近いところでは、フィンランド真性ドゥームTYRANNYをややライトにした感じか。
ライトリスナーを寄せ付けないTYRANNYの濃すぎる音楽がキツい人には、ほんのちょっと薄めた感じのこちらがいいかも。
それでも濃いドゥームではあるし、万人にはオススメすることができないワリと上級者向けではある。


FVNERAL FVKK - Carnal Confessions ★★★ (2020-09-23 02:14:59)

ドイツ産ドゥームメタル2019年作
ここ数日マイカーではこのサウンド一色だ。あまり期待せずにおまけ的にゲットしたワリに猛烈にハマってしまった。
楽曲に劇的な変化や展開を求めるリスナーお断りの、せっかちな人も絶対お断りの、終始ミドルテンポで淡々としているドゥームメタルだ。
黒とベージュのツートンカラーで描かれた、宗教的イラストに仄かに魔性を加えているインナーとジャケ裏のイラストのセンスは素晴らしい。
基本ロングトーンの適度な音圧のイーヴルなギター、Solitude Aeturnusぽいクリーンヴォイスのヴォーカルとコーラスの絶妙なハーモニーが
このサウンドの大きな魅力だ。最適な残響音がこのハーモニーを引き立てる。じっくりと聴かせてゆっくりと展開していく様がクール。
聴き始めた当初は、単に展開下手スキルを発動しているのか、と退屈に感じたが、コレが繰り返し聴いていると、控えめな曲展開こそが
このサウンドの大きな魅力だと気付かされ、この淡々とした僅かに魔性を帯びた静かなるメタルに、魅せられ虜になっているのだ。
ギターやヴォーカルの魅力を邪魔しない手数少な目のドラムがとても良い仕事をしている。必要最小限ながらツボをつくドラミングだ。
この盤は真性なスロードゥームではないメタル寄りの音楽性でありながら、あまり起伏に富んだ作品ではないので、一聴しただけでは
退屈に感じ、その魅力には辿り着かないかも知れない。繰り返し愛聴してみよう。すると、落ち着いた雰囲気と魔性が病みつきになる筈だ。


Folklore Negro - Al Amparo Del Silencio ★★★ (2023-11-09 00:24:47)

メキシコ産ゴシックメタル2022年作
夏頃にメキシコでメタルCDをワゴンセールレベルの激安叩き売りしてるショップを発見して
地雷臭を感じつつも、近2年くらいのリリースのメキシコメタルをまとめ買いしたんですが、まあ、殆どが地雷(汗)。
そもそもメキシコ発のメタルで当たりを引いたことはほぼ無い。ゴア路線Disgorgeくらいで、まあ聴けた作品は僅かだ。
ドゥーム路線のバンドも僅かにいるが、まあ、一枚落ちると言わざるを得ない。
というワケで、まとめ買いから数か月経つも、その低クオリティな予感から、未だ全てのCDを開封していない・・・(笑)
メキシコ産メタル作品全般に言えるのは、一昔前の楽曲とアレンジ。哀愁を込めるバンドがやたら多いというのも特徴で
一口で言えば、「昭和ムード歌謡メタル」という感じのバンドが乱立している、というのがボクの印象だ。
そんな凡作が多い中、この作品だけが一押しのハイクオリティだった。有名バンドなのかな、と思ってAIに尋ねてみたが
AIも知らん、という感じで、全く的外れな別バンドの説明を始めた(汗)。ライナーやジャケデザインもお金かかって
なさそうで、まあ、無名バンドなんだろう。
バンド名から、ラテン民族音楽が融合されたフォークメタルをイメージしてたんですが、フォルクローレ要素皆無のゴリゴリの
ドゥーム寄りゴシックメタルであることに、まず面食らう。この音楽性で、何故このバンド名?というところでまず変な汗が出る。
コード進行やベースラインは、凡作メキシコメタルあるあるの昭和ムード歌謡要素が、特にベースラインで随所に現れはするものの
楽曲クオリティは相当高い。ワザとらしい進行と旋律はあれど、それが全く気にならなくなるほど楽曲アレンジ力に優れている。
また、上質ゴシックメタルど真ん中の鉄分多めのギターの音像にかなり中毒性がある。
音響と楽曲のクオリティが高いが故に、本来マイナス要素であるムード歌謡的展開がむしろ隠し味に聴こえてくるから不思議だ。
Bandcampで試聴できるから、興味ある人は聴いてみたらいいよ。ゴシックファンには超オススメだ。


Forest of Grey - Crypsis ★★★ (2020-07-20 18:45:13)

米国産ブラックメタル2018年作
ボクは森林崇拝サウンドに弱い。特に最近はブラックを蒐集する時には若干ペイガニズムを含むブラックをゲットしがちだ。
とりあえずバンド名に「Forest」という単語が含まれているブラックであれば、ゲットしないワケにはいかない。
よくある悪魔顔のガイコツに葉っぱと根っこが生えているイラストが、白黒のモノトーンで描かれているジャケにワクワクしたが
中身は森林崇拝的サウンドとは若干趣きが異なっていたのは残念。しかし、結構内容の濃いサウンドをやっている。
全2曲で30分と、内容は結構少なめ。アコギ部分が占める割合を考えると、ブラックメタルサウンドは20分くらいか。
不穏なアコギパートから始まり、音像が真っ黒な結構ゴリゴリのブラックメタルに突入、ガッツリと聴き応えがあるが、
このサウンドの大きな特徴は、教科書通りのコード進行と、ディミニッシュコードからの半音進行を多用していることで
非常にわかりやすいすごーく悲しい旋律が全体を占めているところだ。仰々しくはないが、クサめなコード進行である。
たぶん、ここが好みの別れどころだ。そういうサウンドなので、物凄く真っ黒な音像だが、真性さはあまり感じられない。
あまり無機質なブラックではなく、きちんと旋律を奏でるわかりやすい楽曲が好みなブラックメタラー(そんな人いるのか?)
であれば、この盤はオススメできる。


GAME OVER - Burst Into the Quiet ★★★ (2020-05-09 02:10:50)

イタリア産スラッシュ2014年作。
バンド名がダサくてイイ。ジャケで横たわるレディは一体何のゲームに巻き込まれたのか?
とりあえず若手バンドなのに全く新時代要素を含まない化石のような直球スラッシュを聴かせる。
疾走感溢れ、非常に抜けの良いドラミング、明るく元気でエネルギッシュで、とても聴きやすく、なかなかカッコいい。
コーラスやブレイクの入れ方、メロディアスな聴かせるフレーズではなく、とにかく盛り上げようとするギターソロなどなど
スラッシュ全盛期の息吹がふんだんに詰め込まれたサウンドに圧倒される。しかもA級になりきれていないB級テイストがいい。
これ以降の作品は直球スラッシュからチョイ外れた感があり、ボクはこの盤が一番好きだ。


GAME OVER - Hellframes ★★★ (2023-11-02 20:25:54)

イタリア産スラッシュ寄りHM2023年作
Burst Into the Quiet(2014年)の直球スラッシュは結構ツボにハマり、続く作品には結構期待したものだが
結局前2作品は佳作といった感じで、ツボにハマらず。スラッシュフリーク世代がスラッシュ愛で創作してる感はあるので
推したい気持ちはあるものの、その思いとは裏腹に、応援に留まり、結局作品をゲットもせず静観、という感じだった。
このジャンルが今の若い世代に新たなムーブメントを起こすほど人気を博すことは、メタル自体衰退してる今、まあ、あり得ない。
彼らより上の世代向けの、スラッシュ全盛期時代を経験した、ボクら世代が最大のターゲットになるんだろうが、
その世代で敢えてスラッシュメタルの盤に手を出そうという者も決して多くはないし、単にノスタルジックなサウンドだと、
耳の肥えた高齢者は納得しない上、若さと勢いの爆発力を前面に出したサウンドというのも、ボクのような高齢者には向かず、
少なからず音楽にインテリジェンスを求めてしまう。
現にスラッシュというジャンルで頑張っているアーティストを、普段どれだけチェックし続けてるだろうと考えてみても、圧倒的に
刺激の強いデスメタルバンドの方が多いワケでして、なかなか、「今日はスラッシュの隠れた名盤を探そう!」という気持ちにはならんのですよ。
スラッシュでチェックし続けるバンドの多くは全盛期時代に名を売った古参バンドが殆どで、全盛期を過ぎた次世代に登場した
若手バンド(そのバンドも年を重ねて10~20年選手になってきたが)は、スウェーデン産WarfectとこのGameOverくらいになったな。
ただ、このバンドも直球勝負の一本調子スラッシュからは脱却し、どちらかというとスラッシュ色の強い正統派ヘヴィメタルという
感じに変貌してきている。コテコテのスラッシュファンであれば、最大の売りだった突進力が薄れてしまった、と嘆くかも知れないが
ボクは、前2作品の佳作で模索し続けた音楽が、徐々に完成しつつある、と受け止めている。
ココのレビューで突進型スラッシュの良作として個人的に推しているBurst Into the Quiet(2014年)の作風からは、やや様変わりはしているが
純粋に生真面目なヘヴィメタルとして完成度が高く、B級感が全く無くなった。発売日にゲットして約2週間くらいになると思うが
当初はすぐ飽きるかな・・と思っていたが、そんなことはなく、1日1回朝のGameOverがちょっと習慣づいてきた。
スラッシュの爆発力、アコースティックな哀愁、前衛路線に走らないドラマチックさといった80~90年代ノスタルジー要素をバランス良く
配合した正統派パワーメタル・ヘヴィメタル、といった音楽性が、かなーりツボを刺激し、普段聴いているデスメタルの「死」「悪魔」的な
負の要素が全く感じられない健全なサウンドが、朝イチの目覚ましサウンドにバッチリとハマる。
いかにもB級に見える、あまり褒める要素を感じないジャケで、日本人だとなかなかコレをゲットしようと思わないんじゃなかろうかと感じるが
そういうパッケージに隠れた名作、というシチュエーションは、ボク的には面白いな、と思うのだ。年配メタラーは是非一聴してみて欲しいな。


GARGANJUA - Toward Rhe Sun ★★★ (2020-07-19 23:22:27)

英国産ドゥーム寄りプログレッシヴメタル2020年作
スローではあっても超スローではなく、雰囲気と曲構成に魅力を感じさせる楽曲群。あまり真性な濃さは無いが
ブラックメタル的ヴォイス・デスヴォイス・クリーンヴォイス、コーラスを取り入れた演奏様式から、モダンなポストドゥームといった印象。
湿り気たっぷりのアコギ、トレモロリフ、疾走パートも登場し、単にドゥームという枠にとらわれない音楽性がとても独創的だ。
この音からは、内省的な、シューゲイザーとは異なる孤独感が感じられる。ヘヴィさや激しさが薄めだが、音像は黒いイメージ。
一応プログレッシヴとしたが、様々な演奏様式を取り入れた作風は、なかなか耳に馴染むのに時間がかかる。
繰り返し愛聴することで、ジワジワとこの音世界にハマっていく。偏った濃さではなく、クールな作風と言える。
派手さが全くない、どちらかというと地味な作風でありながら、細やかなアレンジ、スパイスがツボにハマる。


GLOOSH - Timewheel ★★★ (2020-12-29 12:43:30)

ロシア産独りブラック2020年作
まずジャケが優秀だ。植物と同化している老人や鳥、鬱蒼とした森と山岳をイメージさせる上、細やかな線を活かした独創的な画風が良い。
ジャケを開いた中身も、盤上にも同様のイラストが描かれ、CDをプレイヤーに入れる前段階でどんな森ブラックなのかワクワクする。
アトモスフェアブラックと言える作風だが、残響音は他の森林崇拝ブラックに比べて若干浅めだ。そのためギターの歪みがワリと鮮明で
広大な空間にポツンと佇むような感覚というよりも、より間近な場所に植物の蔦が纏わりついているかのような感覚になるのが特徴だ。
ブラック様式のヴォイス、ブラスト、トレモロリフ、ザラザラ感と攻撃性のバランスが優秀なギターによる、比較的オーソドックスなブラックだが
適度な音圧でありながら密度の高い音数が刺激的で、結構なお気に入り作品になっている。強烈な独創性までは期待できないものの
森林崇拝ブラックに求めるクオリティのハードルは全てクリアしている感のある、素晴らしい作品。今年上半期にEPがリリースされて
秋頃に先にこの盤がウチに届いたが、試聴した限り、この盤よりも粗削りなEPもなかなかのクオリティ。コロナのせいでなかなか届かないが・・。


GOATSNAKE - Black Age Blues ★★ (2020-05-07 14:28:58)

米産ドゥームロック2015年作。
既に解散終了したバンドだと思っていたが、15年ぶりにアルバムをリリース。
メンバーのポテンシャルが高いので、作品のクオリティは高く従来のGoatsnakeがツボの人には必聴盤だ。
ただ、ボクはGoatsnakeの作品はライトかつロック要素が強くて、濃厚にハマるまでには至らないのが正直なところ。
今作も同じで、熟練の納得の作品なんだけど、お手軽に聴けるカッコいいドゥームロックサウンドという感じだ。
ゴスペルのような女性コーラスが入ったりして、ジャケのような荒野の教会のイメージにはしっくりハマる。
ゴスペル以外にもハーモニカが入るなど、米国情緒が色濃いので、寒さを求めるボクには若干フィットしないのだろう。
チョイとダメ出ししてしまったが、この盤から感じられる本気度は高く、今後も追いかけたいと思う。


GOREAPHOBIA - Mortal Repulsion ★★★ (2021-07-17 02:45:53)

米国産デスメタル2011年作
ゴアリーな要素を含ませ、手数多めの華麗なドラミングとザクザク感あるギターリフ、気持ち悪いギターソロがツボを突く古学校死スタイルど真ん中サウンドだ。
しかし、Cannibal Corpseあたりの同路線と比較すると殺傷能力はそんなに高くなく、しかもダサさが同居しており、B級愛を以って愛聴すれば、その魅力の虜になるだろう。
ゴア路線はいかに激しく聴かせるかというところがポイントだと思うが、このバンドの面白いところは、激しさではない固有の味わいで血塗れ感を表現しているところだ。
1990年代以前から活動していた上、最近はギタリストのAlex BouksはINCANTATIONやIMMOLATIONのような大御所に在籍した実績を持つワリに全くの無名。
というか、そんな大御所バンドに在籍するだけの実力や独創性を持つが、この人の世界観があまりにB級路線過ぎて、ミーハーなデスメタルファンにはダメだったんだろう。
フルレングスアルバムも僅かで、ボクはこの盤のみゲットしている。90年代頃のEPやCDR作品は、決してポンコツではないが、醜悪な作品で、結構な値がついている。
まあ、この盤をゲットしたキッカケとなった、ダサいPVランキングの最上位に位置するショッキングな時代錯誤PVは、この人の世界観とダサさが凝縮されている。
B級愛を持つデスメタラーは、このPVは是非体験して欲しい。その上でこの盤を聴くと、この人固有のユーモア、この盤の独創性をより理解できるだろう。


GORGUTS - Colored Sands ★★★ (2020-05-05 00:08:22)

カナダ産テクニカルデスメタル2013年作
GorgutsはオールドテイストとB級臭さがほんのりと感じられる初期2作品が好み。
3作目で、メンバーが一新したことで全くの別バンドと言っていいほどの変貌を遂げ、テクニカルさを前面に出すバンドになる。
それ以降もそのスタイルを貫いており、自分的には疲れるのでやや敬遠してきた感があり、ずっと購入を見送っていた。
まあ、オールドテイストに逆行することは恐らくないだろうし、それを望んでるファンなんて僅かだろう。
この作品は、テクニカル路線を突き詰めた現在の形ではあるが、ブラックスタイルにも似たギターのザラザラ感が非常に心地よい。
3作目以降のアヴァンギャルドさは個性でありつつ疲れる要素だったが、今作はさりげなくイヤミがない感じで結構ツボにハマる。


GORGUTS - Obscura (2020-11-08 02:40:46)

カナダ産テクニカルデス1998年作
リーダー以外のメンバーを一新して、アヴァンギャルドな志向性を濃くした問題作。少なくとも前作までのオールドテイストは薄れて
テクニカルに攻める音楽性に変化した。当時は、新しモノを好みコレを良しとするリスナーには受け入れられたとは思うが、ボクのツボではない。
そういうこともありレビューもしていなかったが、まあ、初期作品を好むボクとしては、ガッカリした作品ではあった。
Shostakovichの影響を公言していることはココの書き込みで知ったが、無調性音楽を志向しているとしたら、結構影響されているなと感じるところはある。
ただ、やりたい事はわかるにしても、とりあえず難解なテクニックに演奏技術がついていってないな、と思わせるところが結構あり心地よくない。
クラシックに影響を受けたテクニカルデス第一人者のMekong Deltaと比較するとカワイソウだが、こちらはアタックのタイミングにジャスト感があって心地よい。
しかしながら、この盤以降の作品はボクのツボに入る上、Obscuraの音楽性と初期の古学校テイストが融合して洗練されたと感じるところがあるので
決してこの盤の志向性は間違っていなかったとは思う。コレクションとして持っておくのはアリだが、ボクはこの盤は十数年コンテナ奥に眠ったままだ。


GORGUTS - The Erosion of Sanity ★★★ (2020-08-07 21:57:59)

カナダ産オールドスクールデス1993年作
3作目で全く別バンドのように化けたのは、メンバーを一新したことによるんだろうと思う。ボクは当然この作品までの初期2作品が好みだ。
疾走感豊かな、現代のブルータルデス寄りの路線ながら、気持ち悪いメロディやドゥーミーなキザミのようなオールドファン好みの
リフを織り交ぜた作風がいい。また、当時のデスメタル勢は群雄割拠の戦国時代で、鉄板バンドが数多くひしめき合っていたことや、
バンドロゴ・バンド名・ジャケからくるイメージで、どうしてもB級のイメージが拭いきれないところがあった。
ヴォーカルスタイルも、当時の鉄板バンドに比べると、ちょっとダサく聴こえる。ボクはそういうテイストがとても好きだった。
聴いた回数は佳作の処女作の方が圧倒的に多いが、作品自体は2作目の方がかなりレベルが高い。処女作にあったポンコツ感が全く無くなり
疾走感がありながらも、どこか粘り気のあるギターの味わいが素晴らしい上、タイトになったドラムなど、音響的な凄みが随分増した。
奇抜な曲構成に光るモノがあるにも関わらず、一本調子になりがちなパートが多い楽曲が特徴。そういうところも含めて
ボクはB級愛を持って愛聴していたかな。


GOTHIC SLAM - Just a Face in the Crowd - Who Died and Made You God ★★★ (2020-08-08 01:11:25)

B級スラッシュメタルの名曲。80年代後半スラッシュメタル全盛期に登場したGothic Slamのこの曲は、当時数少なかったHR/HMテレビ番組で、
毎週のようにPVが放映されて、忘れられなくなるほど刷り込まれた感のある曲だ。当時は目下売り出し中という感じだったんだろうか。
シャツとジーパンを着たお世辞にもカッコいいとは言えない全体的にイモ臭さ満点のファッションセンス、チョビ髭ヴォーカルによる癖のある絶叫スタイル、
Who Died and Made You God!!と全員で叫ぶコーラス、その総じてダサい光景を更に際立たせるカメラワークなど、B級愛をやたら刺激するPVだった。
ギターテクは結構高く、演奏力はあると思うんだが、そのローセンスさに全て掻き消されている。
しかし、毎週のように映像で刷り込まれたせいか、当時のスラッシュメタルでは相当印象に残っている曲だ。


GRIEVING AGE - Merely the Fleshless We and the Awed Obsequy ★★★ (2020-05-22 02:42:23)

サウジアラビア産デスドゥーム2013年作
サウジアラビアは中東でもあまり自由な表現が許されない、国内の情報があまり報道されない閉鎖的なイメージをボクは持っているが
知る限りメタルサウンドをやっているバンドは2つある。(もうひとつはAl-Namroodというブラックメタル、未所持)
メタル発展途上なのかと思いきや、このバンドのサウンドはそこらへんのドゥームバンドを凌ぐほどのインパクトを誇る。
5曲入りだが、CD2枚組で90分を超えるという苦行、慟哭のようなデスヴォイスとイーヴルなギターが支配するデス・ドゥーム地獄だ!
英語の歌詞っぽいので、どんな歌詞なのかと翻訳してみるも、どうも単純に英語ではないのか、うまく翻訳できず、某サイト情報を
翻訳したところ、「ネガティヴで神経衰弱なところがあり、普通の人にはお勧めしません」という最高の誉め言葉が。そういう歌詞なんだろう。
また、一生懸命翻訳して判ったが、どうやらEsotericのメンバーが制作に携わっているようだ。ナルホド、本格的なサウンドな筈である。
老人の顔を多数の手が掻き毟ろうとしているようなジャケではよく世界観が判らなかったが、ジャケのインナーを開いてみると
幽霊船のようなイラスト、水に沈んでいるような死体っぽいイラスト、などが紺色を基調としたモノクロで描かれている。
適度な音圧のデスメタル寄りのギターの音だが、倍音を多く響かせ、コードを弾いた時の緊張・不穏さが半端ナイ。それがまた延々繰り返される。
このサウンドはドープスモーカー向けサウンドとは趣きは異なるが、楽しみ方はSleepのJerusalemに非常に近いモノを感じる。
延々と繰り返される苦行に、ひたすら没頭し陶酔する、上級者向けの長編デスドゥームサウンドだ!


GRIM RAVINE - It's a Long Way Down, to Where You Are ★★★ (2020-07-12 20:58:10)

英国産スラッジ・ドゥーム2020年作
訳すとバンド名は「厳しい渓谷」、アルバムタイトルは「あなたのいる場所までの長い道のり」という感じかな。
バンド名の通り、不毛な土地、過去の崩壊、塵と化す大地といったテーマの曲が鈍重なスラッジ・ドゥームで描かれる。
やや楽曲が弱いかなぁ・・と思いつつも繰り返し聴いていると、結構ハマってしまった。このサウンドは曲展開の妙を
期待するのではなく、沈むような遅さ、掻き毟るような閉塞的な質感を持つ歪んだギターで構成される冷たい音世界に
ひたすら没頭することで、人が立ち入ることができない渓谷をイメージしながらその世界に浸るのが良い楽しみ方だ。
引き摺るような重量感あるギターが最大の魅力ではあるが、砂利が飛び散るかのようなノイズ、吐き出すようなヴォーカル
ハウリングを効果的に使用したり、低周波を際立たせるベースのエフェクトが登場したりなど、聴きどころ満載だ。
万人向けではない上級者向けドゥームかも知れないが、鈍重なノイズサウンドが得意な人は是非体験して欲しい。


GRIMIRG - From the Barren Womb of Night ★★★ (2020-10-31 19:45:35)

フィンランド産フューネラルドゥーム2020年作
この作品がこのバンド初体験。今年は良作フューネラルドゥームが結構多いが、そんな中でも特にイチオシしたい作品だ。
余計なオカズは一切無し、淡々とスローに4ビートを刻む飾りっ気の無いドラムと、ロングトーンを垂れ流すのが基本のギターによる
真性度の高い真っ黒カルトドゥームだ。スピードによる緩急のような茶目っ気や、無駄に凄みを効かせるコマーシャルな一面も皆無。
また、厚めの音像でヘヴィに圧死させるタイプでもなく、重量感はそんなに無い。劇的に展開する楽曲でもなく、地味な展開を見せる楽曲。
そんな楽曲群が4曲、ボーナストラック3曲で構成される作品。そんな苦行のような音楽性でありながら、惹き込まれると抜け出せない。
森で黒装束を着た人物が松明を持っているジャケだが、暗闇の中で粛々とアヤシゲな儀式を行っているかのようなサウンドが魅力だ。
このサウンドの最も素晴らしいところは、ギターの適度な歪みと絶妙な空間系エフェクトに職人気質を感じるところだ。相当レベルが高い。
そんな音作りの妙に中毒性があるが故に、余計な音数の無い、サステイン部分をしっかりと聴かせるスローな楽曲が、むしろ素晴らしいのだ。
過去作品を調べると、MMXV-I(2015年作)あたりでは、よりアンビエント色が強く、シンセと女声を絶妙に導入した、この作品とはまた趣きの
異なる素晴らしい作品だった。そういう作品を経ているだけあって、ギターエフェクトや空間系エフェクトには相当コダワリがあるのだろう。
重量感や激しさで聴かせるタイプではなく、むしろ静かで、カルト色が強く、呪術的なアヤシゲな雰囲気を絶妙な歪み・音響で楽しむ作品だ。
就寝前に明かりを消してじっくりと聴くと、とてもムードがあってイイ。手に入らなくなる前に過去作もちょっとずつ蒐集したい。


GRUESOME - Savage Land ★★★ (2020-10-19 19:59:14)

米国産オールドスクールデスメタル2015年作
初期DEATHが好きすぎて、そのまんまの演奏様式を貫くバンドの処女作。次作の方が本家のサウンドに酷似しているが、コレも当然似ている。
処女作の方がデスメタル度は高く、カニバリズムが大きなテーマになっており、ブラッディな感触が濃厚だ。ゴアリーなデスメタルを展開している。
やたら古学校デスのツボを突くサウンドなのでメンバーを調べてみたら、EXHUMED、MALEVOLENT CREATION、POSSESSED、DERKETAのメンバーが結成している!
ナルホド、どうりでクオリティの高い玄人向けデスメタルなワケである。
蛮族が捕らえた人間の内臓を食い散らかすPVは、とても食欲を減退させるが、サウンド自体のクオリティは古学校デスフリークを納得させるモノがある。
聴き応えはこちらの処女作の方が上かも知れないが、DEATHフォロアーとしての独創性は次作の方が上。ボクはどちらも捨てがたいが、次作に軍配。


GRUESOME - Twisted Prayers ★★★ (2020-10-19 19:51:06)

米国産オールドスクールデスメタル2018年作
一聴してChuck Schuldinerだ!と思わせるこの感じ。初期DEATHのLeprosy(1988年作)やSpiritual Healing(1990年作)のスタイルを
そのまま現代に蘇らせたかのようなサウンドに拍手を贈りたくなる。確かめたワケではないが、この人たちは恐らく心の底からDeathが大好きなんだろう。
Chuck Schuldinerのモノマネとも言えるヴォーカルスタイル、ズトボコなドラム、ギターのリフの刻み方・抉るようなギターソロ、曲の展開の仕方などなど
その全てが初期Deathそのもの。もう、このバンド独自の新要素など無い。概ね100%Deathの音世界を蘇らせたこと自体がこのバンドの独創性だ。
逆さ十字を組み込んだバンドロゴと、ジャケの雰囲気からも、DEATHを随分と意識していると感じさせる。デスメタル黎明期の空気が濃厚に漂っている。
このサウンドのターゲット層は当然40歳代より上なんだろうが、デスメタル黎明期をタイムリーに体験したデスメタラーのハートをガッツリと掴む筈だ。
初期DEATHにハマった人は是非聴いてみて欲しい。笑えるほど本家ソックリなサウンド体験ができる。こういうデスメタル愛が濃厚なバンドは全力で応援したいね。


Georges Migot ★★ (2020-09-26 03:05:35)

ボクはメタル作品以上に、クラシックピアノソロ作品収集にワリと生き甲斐を感じている。
我が家にあるピアノ作品で、最も、無名で珍しい作品は何?と言われると、たぶんミゴーの作品じゃないかと思う。
フランスの作曲家で、声楽や交響曲、様々なユニットの室内楽など多くの作品を残し、そちらの方では無名とは言えないかも知れない。
しかし、僅かにピアノソロ作品を創作しており、あまり知られていないんじゃないかと思う。
Le Zodiac(邦題では、12の練習曲集「獣帯(黄道十二宮)」)という作品だ。
この聖闘士星矢を想起させるタイトルの12曲からなる組曲は、そのイメージから神秘的でカッコいい曲なのだろうと思ってしまうが
なんとも取り留めのない明確な旋律があまり登場しない、ぬるーい、アンビエント調のピアノ曲で、一聴した感じではあまり心に残らない。
なかなか曲想が掴み切れない楽曲群な上、左右の手の交差が頻繁にあったり変わったコードなどで、難易度はそう高くないが弾きにくい。
繰り返し愛聴していくと、その独特な響きが神秘的な星座をなんとなーく思わせる、ちょっとマニアックな内容だ。
なんとか楽譜をゲットしようと探しに探して、海外のショップでやっと見つけたが、当時(大学生)の価格は確か17,000円超で、どこの出版社かもわからない
古文書のようなボロボロの楽譜が我が家に届いた。1冊の楽譜に出費した金額としては、過去最高額だったように思う。今はもっと安価で簡単に見つかるだろう。
CDはStephane Lemelinというピアニストが弾いている盤がオススメだ。というより、この盤以外に見つからない。
さっき試しに探してみたが、LPで77,000円という破格の値段で売っていた。いやいや、そんなに金額を出すほどの内容ではないよ。


HALLOWED BUTCHERY - Deathsongs From The Hymnal Of The Church Of The Final Pilgrimage ★★★ (2021-10-09 23:59:05)

米国産フューネラルドゥーム2020年作
最近は米国産ドゥームは静観しがちな上、真っ赤なブラッディなジャケが好みに全くフィットしないんですが、サウンドのクオリティが高いのでゲット。
Ryan Scott Fairfieldという人の独りプロジェクト。カセットテープリリースだが、今年CDに再録されて発売されたモノを購入している。
底辺の上質フューネラルドゥームは、カセットテープリリースに注目すべし、という格言がボクの中にできつつある。しかし、カセットを楽しむ機材が無いので
こうしてCD化されたものを片っ端からチェックするようにしている。とはいえ、ポンコツドゥームも多いので試聴せずにゲットするのはハイリスクだ。
このバンドは最近のカセットテープリリースの作品中、かなり衝撃を受けたバンドだ。アルバムタイトルが示す通り、限りなく底辺を行く人生残念サウンドだが
ホンモノ感、真性さが半端ナイ。カセットリリースだとローファイ感を味わいとしている作品が多いが、この作品はそうではない。音自体はハイクオリティだ。
歪んだ鈍重なギターとアコースティックギターが織りなす、ドゥームとアングラフォークをミックスしたような楽曲に、エクスペリメンタルテイストを盛り込み
重厚な圧がありながらも、静寂とのコントラストを楽しむ感じだ。ギターサステインの減衰部分の倍音にシンセを絡ませるなど、残響をとても大切にしている。
粘り気の強いノイズや空間を劈くハーモニクスは計算され尽くされている。結構単調な楽曲だが、曲展開云々ではなく、響き渡る音響を楽しむサウンドだ。
「DEATH SONGS」というだけあって、デスヴォイスとクリーンヴォイスによる「歌モノ」という側面もある。死をテーマにした歌を歌っている感じに真性さがある。
楽曲によっては、デジロックの感触があるほど、エクスペリメンタル度は高い。そのワリに楽曲は沈み込む程に重い。そこが面白い。
そういう音楽性なので、サウンドスケープを盛り込んだPERSISTENCE IN MOURNINGあたりのサウンドがツボの人は、必ずやストライクゾーンにハマるだろう。
ボクは毎日は聴けない。この真性さはちょっとしんどいので、ちょっと根暗な気分になりたい時に、たまーに聴いて嗜む、という程度でいい。


HAVOHEJ - Kembatinan Premaster ★★★ (2020-06-08 01:17:52)

米産ブラック2009年作
ジャケを開くと逆さ十字を持ったキューピットがカワイらしく描かれ、CD盤面にもそれが描かれている。
この人の思想が歯止めを知らず、狂人と化したと実感させられるのはこの盤からだろうと感じる。
前作はまだ、バンドスタイルを維持してビートを刻んでいたが、この作品は、もはやノイズ、アンビエント的な作品になっており
不浄で卑劣な音空間の根源とも言えるノイズが終始響き渡り、濃厚なカルト臭が漂い、耐え難い狂った音世界が拡がっている。
少なくともこの人はドラマーなので、時折カッコいいドラムのリフが登場したりもするが、この人のドラムの魅力はカッコ良さではない。
何の工夫もない、単調な4ビートや8ビートを延々と繰り返すリフにこそ、気持ち悪さが宿っており、惹きつけられる。
大した演奏力があるワケでもなく、楽曲構成力があるワケでもないのに、異様な存在感がある。
他のブラックでは堪能することができない、カルト風味のみで惹きつける不思議な魔力こそがHavohejの魅力なのだ。


HAVOHEJ - Table of Uncreation ★★★ (2020-06-07 22:34:15)

米国産ブラック2019年作
最近最もよく聴くブラックはProfanaticaのRotting Incarnation Of God(2019年作)だが、そのドラマーPaul LedneyがHavohejだ。
ブラックというと悪魔崇拝のイメージが付き物だが、この人は自分自身を崇拝して、濃厚なアンチクリスチャン思想を持っている。
そもそもHavohejはエホバの綴りを反対から読んだモノだ。というワケで、ソロ名義のこの盤も一般のブラックメタルフリークを寄せ付けない
激しさとは無縁な、祭儀的で、尊大で、狂った内容だ。本気なのかファッションでやってるのかわからないが、全くこの人はもう狂人だよ。
ちなみにソロ名義の盤はDethrone The Son Of God(1993年作)も持っているが、この人のスタイルを知らずに聴いた当時は全く理解できず
ただのポンコツメタルだな、と思って殆ど聴いていない。しかし、Profanaticaのカルト臭の魅力がジワジワと判ってくると聴こえ方が変わってくる。
Havohej名義の作品においても、ジワジワとそのカルト臭の魅力に憑りつかれていく感じだ。まあ、今更初期作品を聴き直そうとまでは思わないが。
とりあえずProfanaticaの昨年作と同じ年にリリースされたこの盤は、セットで持っておきたい濃厚なブラックだ。
しかし、演奏力や激しさといった音響的な完成度を求めるブラックメタラーは、手を出すと「なんじゃコリャ?」という感じに思うかも知れないね。


HEAVY LORD - Balls to All ★★★ (2022-01-03 00:59:09)

オランダ産サイケデリックドゥーム2011年作
イーヴルでヴィンテージ臭漂うラフでありながら職人気質な感じのドゥームだが、そういうスタイルでクオリティの高いバンドは結構数多いので
ジャケが気に入らないとまずゲットしない。このバンドはとりあえずジャケで買う気にならないバンドで、我が家にはTHE HOLY GRAIL (2004年)だけあったんですが
ロシアのショップで買い物をしたときにオマケでこの盤がプレゼントされたので、年末はコレを結構聴いた。ジャケはアレでも中身はホンモノ感があることは
もはや聴く前から判っている鉄板バンドなので、なかなかプレイヤーにCDを入れようと思わないものの、一度プレイヤーに入れてしまうと聴き続けてしまう。
ギターの歪み具合と粘り気、僅かにスタジオ臭のする物静かなパートと、激しさと適度な浮遊感を漂わせるカオスパートの対比が素晴らしい。
たぶんショップ一押しのバンドなんだろう。レジェンド級のクオリティである。ただ、最近のボクはあまりヴィンテージドゥームを追いかけていない。
最初に書いたが、こういう職人気質ヴィンテージドゥームは数多いんだよね。ただ、このバンドは頭ひとつ抜きんでているのは確かだ。


HEAVY LORD - The Holy Grail ★★★ (2020-06-09 22:09:28)

オランダ産サイケデリックドゥーム2004年作
ウチには2009年にリマスターされたロシア盤があり、オリジナル盤には収録されていないボーナストラックが追加されている。
とてもシンプルかつイーヴルなサイケデリックドゥームで、純粋にギターの歪みを楽しむ類のサウンドだ。
様々な表情を見せるギターの歪み、ピッキング音や細やかな倍音まで意のままに操り、心地よく昇天させるドープスモーカー向け。
知る限り4枚のフルレングスアルバムをリリースされており、どの盤もギターの質感が素晴らしい。2nd以降はスラッジ色がより強くなるが
ボクは無駄のないシンプルなこの作品が最もツボでこの作品のみ所持している。


HELL - Human Remains ★★★ (2020-05-07 21:55:22)

UK産NWOBHM寄り正統派HM2011年作。
無名と思ってたが、結構な書き込みがあって驚いた。地元ではかなり評価されているようだが日本ではあまり知られていない・・と思っていた。
NWOBHMの息吹を残しつつ、バンド名が示すとおり、魔性を帯びたサウンドを聴かせる、Angel Witchに近いコンセプトを持つバンドだが
楽曲構成はかなり手が込んでてレベルが高い。次作で70年代から引き継がれるNWOBHM的息吹がほぼ消失してしまうので、そういう色を求めるならこっち。
ヴォーカルの自殺やレーベル倒産などリリースまでにいろいろ紆余曲折があったのは、ここの書き込みで知ったが、音楽性を語る上で重要なのは
70年代にNWOBHMバンドとして活動していた、ほぼ無名バンドParalexのメンバーが加わっていることで、そのテクニカルな音楽性がほんのりと感じられることだ。
そういうルーツがあるので演奏技術と楽曲構成のレベルの高さは太鼓判だ。もう入手困難かも知れないがコレを機にParalexに触れてみるのもいいかもね。


HELLHAMMER - DEMON ENTRAILS ★★★ (2020-09-06 23:09:42)

スイス産ブラックメタル2008年作
このバンドは1982年から84年まで活動していたCeltic Frost前身バンドだ。Celtic Frostにハマった頃にTriumph of Deathの凄まじさを知り
当時はカセットかスイス盤LPしか見つけることができず、CDをゲットすることができなかったので、友人に録音してもらい鑑賞していた。
ウチには2008年にリリースされた、この全音源収録版のCDのみある。
後のCeltic Frostにも継承される濃厚な魔性とアンダーグランド臭は、ここで培われ、且つ、Hellhammer時代の方が濃く、ぶっ飛んでいる。
Tom Gabriel Warriorの魅力は、そのアクの強い歌唱だとボクは思っている。特にこの音源中、Triumph of Deathが最も濃い。
楽曲や演奏技術は相当なポンコツであるにも関わらず、怨念にも似た魔性の表現、ヴォイスパフォーマンスの凄みのみで聴き手をどん底に突き落とす。
Celtic Frost時代はここまで変態的な歌唱ではなかったにしても、他のブラックでは真似できない独創的なヴォイスがHellhammer時代から継承された。
また、16年のブランクの後、突如リリースされたMonotheist(2006年作)は、Celtic Frostの集大成的作品ではあったが、特にこのHellhammer時代の
濃厚な魔性が蘇ったと感じたものだ。
まあ、Hellhammerは毒気が強すぎる上、相当な疲労感を伴う作品ではある。今更コレを聴こうと思うこともあまりない。
だが、ダークサイドミュージックフリークはバイブルとして携帯しておかなければならないほどの歴史的名盤で、当時の音楽シーンへの影響力は計り知れない。
同郷のCoronerの吐き捨て型スタイルにも影響を与えているだろうし、日本のGallhammerのようなレディスバンドフォロワーが出現するなど、
物凄い影響力を持ったバンドだったと思う。80年代初めにこの破天荒なスタイルで登場したこと自体、先進的な事件だったんだろうね。
最近のTom Gabriel WarriorはTriptykonで作品を作り続けてるんだろうと思うが、ズブズブで真っ黒な世界を描いてて素晴らしい反面、最大の魅力
であるヴォイスパフォーマンス的な歌唱が影を潜めているところはボクとしては残念だ。Hellhammer時代の魔性を帯びた歌が再び蘇らないかな。


HESPER PAYNE - Beneath the Alum Shale ★★★ (2021-09-20 01:35:00)

英国産デスドゥーム2016年作
UNCLEAN RITUALS (2010年)のCDをギリシャのショップで発見したので、愛聴頻度は圧倒的にUNCLEAN RITUALSが多いんですが、このバンドの最高傑作は
このアルバムだ。デジタル作品で所有しているが、いくら探してもCDは見つからない。CD化されていないのかも知れないが、売ってたら誰か教えて欲しい!
今まで数多くのドゥーム作品をまるで仕事のように聴き倒してきたが、コレは歴代デスドゥーム作品中ナンバーワンアルバムと言っても過言ではナイ。
既存のドゥーム作品には無いぶっ壊れた作風、全く予想のつかない展開、音像全体が巨大な渦のように雪崩れ込んでくるこの感じ、ホント狂ってる作品だ。
ダウンチューニングの重低音を重厚に積み重ね、ギターコードの調性から明らかにズレるシンセを大胆に響かせる作風がこのバンド最大の個性だ。
鈍重で病的な音の渦が支配する30分超の楽曲だが、決して単調にならず、曲中盤から壮絶な迫力と猛毒を以って劇的に展開していく。
この曲を知って5年経つが、様々なアヴァンドゥームを漁ってみても、この作品ほど突き抜けた壊れ方と迫力を備えるバンドには出会っていない。
この人たちは、ドゥームとかメタルとかの枠では収まりきらない創造性豊かな感性を持っている天才だと思う。


HESPER PAYNE - Red Maggies Lantern ★★★ (2021-09-07 23:17:19)

英国産デスドゥーム2021年作
昨年に続いて1曲のみデジタル作品をリリース、フルレングスアルバムは作らないのかと不満が募りつつもゲット。
いつもの、森の異形イメージとは打って変わって、海辺に立つ貝を持つ魔女っぽい女性のジャケ。今作品はRoberta Wilkinsonという方がゲスト参加。
曲中で登場するクリーンな女声を担っているのだろう。紹介文に「Roberta Wilkinson appears courtesy of Geologise Theatre」という文章がある。
語学が微妙なボクですが、この人は地質学者か考古学者なのだろうか。この人のルーツを辿ると地質に関する博物館ぽいページに辿り着く。
醜悪なサウンドイメージとは全く異なる清楚な雰囲気の、全くミュージシャンに見えない風貌から、同姓同名かと疑いつつも、紹介文面からはこの人っぽい。
確かに従来の作品は森の異形、土壌汚染といったテーマが感じられる。果たしてそのコンセプトと地質博物館が関係があるのかないのかわからないが
このバンドの理解の手がかりになるかも知れない。今作品が海ということは、今回は海洋汚染がテーマなのか?抽象的な歌詞からはハッキリわからない。
まあ、そんなイメージを持ちながら、この濃厚な毒気を含む鈍重なドゥームを楽しんでいる。このバンドが描く狂気・毒気は更に輪をかけて劇薬と化している。
女声、オルガン、調性が不安定なSEが大々的に導入されたことで、従来の作品に比べて、妖艶な魔女的雰囲気が濃くなっている。森的な要素が消えたが
海際ジャケと魔女イメージが新たな世界観を想像させる。喉に詰まった異物を吐き出すような狂気のヴォーカルと重厚なギターが織りなす不安定なハーモニーは
相変わらず気持ち悪い。前作以上に、底辺の病的デスドゥームを聴かせてくれる。不快感の塊のようなアヴァンギャルっている不協和を駆使した楽曲といい
地響きのようなダウンチューイングを施したギターといい、一聴しただけでHESPER PAYNEだと判るオンリーワンな個性に圧倒される。


HESPER PAYNE - The Cruel Teeth of Winter ★★★ (2021-03-02 23:08:07)

英国産デスドゥーム2020年作
アヴァンギャルドなデスドゥーム路線ではボク的にナンバーワンバンドの昨年末にリリースされたデジタル作品。
タイトルを直訳すると「冬の残酷な歯」だろうか。過去作から植物が変異したモンスター的なテーマが感じられる異質な世界観があるが
この作品においても同様、魔物と化した森の木々が描かれる気持ち悪いモノクロジャケのイメージ通りの気持ち悪ーい音楽が楽しめる。
植物が纏わりつくようなウネリが特徴的なギター、軽快なビート感のようなコマーシャルなモノは皆無の鈍重なドラム、呟くようなヴォイス
鬱蒼とした森に漂う霊的な空気感を醸し出すシンセ、常に不協和なコードで構成される全く爽快感の無い毒々しいカビがわきそうな楽曲。
相変わらず健康を害しそうな日陰の音楽を全力でやっている。デスドゥーム路線ではオンリーワンな個性派で非常にクオリティが高い。
こういうサウンドは雨天でジメジメした日に楽しむと、より不健康で良い。ナマモノが瞬間腐りそうな腐臭・悪い病気に侵されそうな瘴気を
感じながら、まるで自分自身が森の異形に侵食されていく様をイメージしながら鑑賞するのが良い楽しみ方だ。
しかしまたデジタル作品というのがイタイ。フルレングスアルバムを作ってCD化して欲しい。


HESPER PAYNE - Unclean Rituals ★★★ (2020-05-12 02:27:36)

UK産デスドゥーム2010年作
この作品は2016年にリマスターされ、デジタル作品のみで販売されているようだ。ジャケが素晴らしいのにCD化されてないのか。
少なくともこの10年で、このインパクトを凌ぐ異端ドゥーム作品には出会っていない。それほどの衝撃作だ。
森の中で異形のオバケのような母親と子供たちが描かれるキモいジャケそのまんまの世界観が音に表現されているからスゴイ。
ヘヴィで重厚な不協和音で進行するドゥームスタイルだが、濃厚な毒気を放ち、草木が枯れそうなほどの瘴気が宿っている。
ズブズブしたダウンチューニング、触手を思わせる気持ち悪いギターソロ、時に怒号のような、時に腐敗臭のする不協和でハモるヴォーカルスタイル
何もかもが前衛的な作風でありながらもデス・ドゥームの枠を超えることなく、聞き手を土壌汚染した森の中へとイザナう。
これほどの作品なんだから、CD化LP化して欲しいと思うんだけどねぇ。ネット検索したらMP3ファイルをDLできるサイトがきっとすぐ見つかるよ。