その昔、海外通販で注文をして待つこと数週間。ようやく実物が届いたのでワクワクしながら歌詞カードを開いてみたらゴキブリの卵が挟まっていた。…ってな、慌てて殺虫剤を噴霧した思い出が未だに忘れ難い、TYSONDOGが’85年に発表した2ndアルバム。ちなみにそのCDはその後どうしたかというと…実はまだ我が家にあるのです。(つげ義春風に) 最高とまでは行かなくとも、それでも音の輪郭すら不明瞭だった1st『BEWARE OF THE DOG』(’84年)に比べるとプロダクションの質は格段に向上。また前任のアラン・ハンターより安定した歌唱力を誇る新Vo(復活作でも歌っていたクラッチ・カラザース)や、力強くビートを刻むドラマーの加入に伴い、肉厚感を増したサウンドは全体的に逞しくビルドアップされています。 前作がNWOBHMというジャンル内で括れる作品だったとするならば、今回はパワー・メタルと評せるアグレッションを発散。アップテンポの楽曲が大半を占める本編中にあって、特にアルバムOPを土煙蹴立てて突進する①、これまたドラム連打から幕が上がる本編最速ナンバー⑥、雄々しく勇壮な⑨といった疾走ナンバーの数々からは、スラッシュ/スピード・メタルのエッセンスも感じられたり。それでいて、湿り気と憂いを孕んだ歌メロをなぞるVoや、随所でメロディアスに絡み合うツインG等、ブリティッシュHMならではの魅力もしっかり保持して、勢い任せな作りにしない曲作りの手腕も光る。 個人的な好みだとどうしても前作に軍配が上がってしまうのですが(度し難い)、未聴の方にTYSONDOG入門盤としてお薦めするなら間違いなく本作の方ではないかと。