SATAN人脈はNWOBHMというジャンル内に複雑に根を張っており、1st『COAT IN THE ACT』にバックVoとして参加、また後年PARIAHにもフロントマンとして在籍することとなるアラン・ハンターがVoとGを兼任していた、ニューカッスル出身のこのTYSONDOGも、そうしたSATAN人脈に連なるバンドの一つとして知られています。 本作は彼らが’84年にNEAT RECORDSから発表した1stアルバム。風呂場で録音したん?ってな如何にもNEATな安普請プロダクションといい、終始歌唱が上擦り気味なヘタウマVoといい、陽光を浴びて華やかにハジけるLAメタルとはまるっと正反対な、陽の届かぬ地下室で醸成されたようなシケシケなメロディ等々、一般的な尺度だとマイナスにしかならないでしょうが、NWOBHMという沼にハマったマニア諸氏は「よっ、たっぷり!」「英国屋!」と大向こうから掛け声をかけずにはいられないサウンドが詰まりまくった1枚。 さりとて、好き者の胸をときめかせるだけの珍品かと言えば、BLACK SABBATHの“HEAVEN AND HELL”にインスパイアされていそうな③、ツイン・リードGが切れ味鋭く切りむ③、小気味良く疾走する④、アコギに始まり本編ラストを劇的に盛り上げて〆る⑨等、攻撃的なGリフとブリティッシュ然とした憂いを纏った楽曲はいずれも魅力十分。中でもシャープなリフと荒々しいリズムがドカドカ駆け抜けるOPナンバー①は、SATANやBLITZKREIGを彷彿。後続のスラッシュ・メタル勢にだって少なからぬインスピレーションを授けたんじゃないかと思えるカッコ良さを誇っていますよ。 SATAN関連のバンドは当たりが多いですが、本作も間違いなくそうした内の1枚です。