北海道は北見市出身、リーダーの柴田直人は進学と共に札幌市の高校へ入学。学生時代は影響を受けたブリティッシュ系のハードサウンドを中心に、ウィッシュボーンアッシュやプログレ系のバンドのコピーなど、特定のバンドに籍を置くのではない一匹狼的なスタンスで活動。音楽で生計を立てる為に上京、日大芸術学部に進学する。
学生時代にトリオバンド『BLACK HOLE』を結成。東京三多摩地区を中心に活動、音楽性はプログレハード路線だった。
ロックバンドのコンテストA-ROCKにて全国2位(優勝はスターダストレビュー)、続いてミュージック・ステディ誌のコンテストで決勝大会まで進むも、テクノポップ全盛の時代にプログレハード路線のブラックホールは業界関係者の目には止まらずデビューにきっかけを掴む事が出来なかった。2度の落選を受け柴田を除くバンドメンバーは自信を失くしバンドは解散、リーダー不在の活動だったらしく円満なものだったらしい。
ちなみにブラックホールのシンガー兼ギターだったRIOは1981年に東京X-RAYを結成、ベースには後にSTILL ALIVEでメジャーデビューする横山 壮五(ALIVEというバンドで森川之雄と一緒に活動していた)。ギターには志村Punky広司らが在籍。志村が脱退後には、イケメンギタリストの松川RUN敏也が参加。その松川はBLIZARD結成へと流れる。ちなみに松川は1985年にRUN名義でソロアルバムをリリース。そのうち Without You はBlack Holeのカヴァー、Get the Free 、Ball and Chain 、Crisisの3曲は東京 X-Ray時代のカヴァーでRIO氏が関わっています。余談ですがこのアルバムで謎の覆面ヴォーカルMr. Crazy Tigerとして参加するのは現B'zの稲葉浩志です。
BLACK HOLE
Vo.G RIO B.柴田直人 Ds.荻野光雄
第二期
Vo.G RIO B.柴田直人 Ds.寺本コージ(第四期東京X-RAYに加入)
BLACK HOLE解散後、同郷の友人、当時は十二単のギタリストだった小柳彰史が、まだ高校生だった大内MAD貴雅を柴田と引き合わせることでバンド結成へと至る。当時の柴田の心境は、遊び程度の感覚で本気ではなかったといわれる。
その為に結成当時のANTHEMはリーダーがギターの小柳だった。その小柳が雑誌の募集で見つけたのが初代ヴォーカルの前田TONY敏仁。最初のライブで6曲披露、すでにオリジナルの楽曲を2曲用意、そのうちの一つは『Rock 'n' Roll Stars』の原型だった。
へヴィメタルのムーブメントも後押しとなり関東では確固たる地位を固めたANTHEM。その活動が認められジョージ吾妻率いる5Xの前座に抜擢。約2ヵ月間のリハーサルを経てライブに挑むも、全く観客にウケなかった。
西高東低ともいうべきなのか、西から上京してきた44マグナムやEARTHSHAKERのようなバンドと違い、明らかに準備不足というか、バンドとしての決意が足りなかったと強く認識することになる。当然ライブにも呼ばれない状況が続く、このあたりから、バンドとしての在り方を確認、イニシアチブを小柳から柴田へと移行、音楽性も時流に合わせたパワーメタル色を強める事になる。
音楽性の相違は深まった小柳は脱退と共に、ANTHEM名義の使用で残りの3人と揉めたがバンドは存続することで落ち着いた。その後、小柳はサブリナのギタリストへと流れる。
第1期ANTHEM
Vo.前田敏仁 G.小柳彰史 B.柴田直人 Ds.大内貴雅
シルヴァー・ブレイズ、アンサーのギタリストとして活躍していた、そのルックスと派手なタッピングプレイから和製エディと呼ばれた福田洋也。アンサー時代に柴田直人に一緒にやろうと声を掛けた程、蜜月の関係もあった二人。当時の福田にとってANTHEMの音楽性はへヴィすぎるという気持ちはあったが、将来を見据えて合流。第二期アンセムがスタートする。
第2期ANTHEM
Vo.前田敏仁 G.福田洋也 B.柴田直人 Ds.大内貴雅
メンバーも揃い、以前にも増して精力的な活動を開始したアンセム、その甲斐あって念願のメジャーデビューの権利を獲得。歓喜の中、多忙と過度のプレッシャーに心身をすり減らした前田は脱退を決意。一説には前田のパフォーマンスに不満があったとも言われているし、柴田の鬼っぷりに前田がついて行けずに失踪に近い状態での脱退だったとも言われている。真偽は不明。この件の話はあやふやなものが多い。
前田脱退を受け、急遽後任シンガー募集のオーディションを行う。3カ月もの期間で100人を超えたといわれる中で、その座を射止めたのは大学生だった坂本英三。柴田が求める人材はハイトーン系のシャウティングスタイルではない、声にパワーのある、既存の概念をぶち壊すような人材だった。まだまだ甘いが坂本には、その可能性があり後任として採用。加入後わずか3カ月で1stアルバムのレコーディングへと向かう事となる。
このオーディションにはアンセム都市伝説として語り継がれるエピソードがあります。それは沼津のグラハム・ボネットと呼ばれた逸材。森川之雄がこの時期にオーディションを受けている。その歌唱力に関係者は彼で決まりと思っていたが、デビューが決まっていた彼らにとっては、森川の容姿に問題があった。髪型がパンチパーマだったと言われているが、あそこまでチリチリではなく、所謂パーマスタイルのリーゼントヘヤーのヤンキースタイルだったが為に、落とされたと言われている。かつてはこの説を柴田直人は否定していたが、今は概ね認めているとされている。
第3期ANTHEM
Vo.坂本英三 G.福田洋也 B.柴田直人 Ds.大内貴雅
アマチュア時代から世話になっていたジョージ吾妻の協力もあり、パワーメタル戒厳令と銘打った1st『ANTHEM』を1985年にリリース。この時期国内のHM/HRシーン全体がポップで軟弱なものへと傾向、その中で打ち出したANTHEM流のパワーメタルサウンド革新的であり、先駆者としてシーンを驀進。その音楽に対する高潔な姿勢は軟弱になり下がったシーンへ喝を入れ、不満を抱いていた多くのファンには痛快極まりない姿に映り、共感する多くのフォロワーを生み出すこととなった。
なお、このアルバムは日本以外でもアメリカ、イギリス、オランダなど6カ国でリリースされる。
ライブではお馴染みの新曲が2曲と、1stから3曲を英詩ヴァージョンでリメイクしたミニアルバムを間髪入れずにリリース。過密スケジュールをこなすツアーの合間に曲作りを行いながら、1986年の4月に2nd『TIGHTROPE』をリリース。エンジニアにケン・ケーシーを迎えるも満足は音は得られず、その作業は修羅場そのものだと語り継がれる。その怒気を孕んだ姿勢と意思疎通の難しさにケンは意気消沈、バンドも改めて周りのサポートの重要性とミュージシャンとしての在り方を考え直し事に、その後の活動へと大きな転換期になったともいえる事件だった。
メンバーの不満とはよそに、『TIGHTROPE』は国内外で高い評価を受ける事に、特にアメリカのFMラジオ局にて週間チャートにランクイン、楽曲の完成度は勿論だが、成長したメンバーシップが身を結んだ形に、特筆するべきは1stで酷評を受けた坂本の、地獄のツアーで鍛えられたパフォーマンスは、口うるさいファンを抑え込む程の力強さを身につける事に成功。ある意味、ANTHEMというバンドの歴史は今作から始まったと言えるでしょう。それほど強烈な出来栄えを誇っていました。
実子の出産など、公私に多忙を極めた柴田直人の、穴を埋めるように福田がソングライティング力を披露することにもなり、その影響がバラエティ豊かな作風へと押し上げているのも見逃せない1枚です。
自らを売り込むべく超絶ハードツアーを敢行する事でも有名だったアンセム、その全身全霊を掛けて挑むLIVEバンドとしての凄みは後年になっての続くのですが、1986年日本大学理工学部の学園祭にて、アマチュアな学生主催の管理不足が引き金となり、会場が酸欠状態に陥り40人以上が倒れ、半数が病院に担ぎ込まれるという事件に見舞われた程です。
精力的なツアーが功を奏したのか認知度も高まり、レコードの売り上げにも手応えを掴んだバンドは、いよいよ念願の海外での活動を視野に入れる事に、当時THIN LIZZYやANVILのプロデュース業に携わった。クリス・タンガリーディスを迎え初期の名盤と誉れ高い評価を受ける『BOUND TO BREAK』をリリース。国内ツアーを行ったと、念願のアメリカでのLIVEを敢行。オープニングにポール・ギルバートのRACER Xなどを迎え名門COUNTRY CLUBで行われる。LOUDNESSが海外に戦略を果たし、次なるバンドはこいつ等だと現地のメディアやミュージシャンも注目の中でのLIVEだったと言われる。
その後、渋谷公会堂など大きな会場を埋める程の人気を誇るも、今回のツアーを収録した初のLIVEアルバム『THE SHOW CARRIES ON!』をリリースする前に、坂本英三が脱退するという事件が勃発。デビューしてから快進撃を続けていたバンドだけに、驚きのニュースとして広くメタルシーンに届けられました。
後年完全版と言われるLIVE映像がリリースされましたが、貴重なシーンとしてあげられるのが、落雷よって電源が飛び、福田洋也のソロが一番いいところで聞こえなくなるというアクシデントに見舞われるシーンでしたが、他にも某雑誌の現副編集長:大野奈鷹美さんが回す、貴重なリハーサルやオフショットも収録されているので、興味のある方は是非とも見て欲しいですね。当時の熱気をそのままに、夢多き若者のガムシャラな姿に胸が焦がれます。
そして、その作品には伊藤正則、柴田直人、坂本英三の三人による、当時を振り返る回顧録インタビューも収録。そこで坂本英三の脱退劇の真相が語られています。
当時のアナウンスは、坂本英三が今作のツアーにおける活動で燃え尽きたと言われていましたが、実はレコーディング前に脱退を決め、今回のレコーディングとツアーが坂本英三のミュージシャン人生を掛けた最後がパフォーマンスと決めていたとの趣旨の発言が飛び出したりと驚きの裏話に、悲喜こもごも軽妙洒脱なトーク劇に身を乗り出さずにはいられないでしょう。
アンセム脱退後は、眼鏡屋の店員などを経て、タクシードライバーの傍ら、ミュージシャン家業に着手。彼の名がメジャーシーンで再び囁かれるようになったのは、坂本のサービス精神からくる、ノリの良さと本気度から、このプロジェクトを遂行するのには、彼しかないと言わしめるアニメタルまで待たされる事となった。
第4期ANTHEM
Vo.森川之雄 G.福田洋也 B.柴田直人 Ds.大内貴雅
1988年の初頭、かねてから噂のあった実力派シンガー、森川之雄の正式加入がアナウンスされる。オーディションには落ちたが常に柴田の頭の中に強烈にインプットされていた存在であり、大規模なオーディションの裏側で森川で行こうという既成事実が存在していたと後年語られる事となった。当の森川も最初のオーディションに落ちた後も精力的なバンド活動を行い、自分が良いと思うものはジャンル不問で取り込み、歌い手としての幅を広げていたと言われており、タフでワイルドだがメロディを追って歌えるというスタイルを研磨し続けていた。
森川加入と同時に、バンドは活動の基盤となるマネージメントの強化を図る、デビューからサポートしてくれたマリオネット・ミュージックを離れ、自ら立ち上げたMUSIC OFFICE ARMSに移籍、いよいよ本格的な海外戦略を念頭に活動がスタートする事となった。
森川加入から一年、今までのタイトなスケジュールのレコーディングや創作活動とは違い、森川加入第一弾アルバム『GYPSY WAYS』は柴田直人も熟考したアイデアを持ち込みレコーディングに挑む事に、前作同様プロデューサーにクリスを迎え、盤石の態勢でレコーディングが行われる。
森川にとっては初のレコーディングとなるが、その柴田直人の厳しいサジェスチョンに、心も折れ、夜な夜なホテルの一室にて悔しさのあまり、枕を濡らす日々だったと言われる。また柴田にとっては森川と歌詞の共作があり、酒を飲みながら愛だの恋だの甘酸っぱいトークに心を弾ませたとのエピソードトークもありました。
最新作『GYPSY WAYS』は、充実のソングライティングが功を奏し、それまでのパワーメタル路線をより深く掘り下げたスタイルへと進化。ブリティッシュスタイルのロックへの憧憬とリスペクト精神を今まで以上に高め、ブラックサバスにも負けないへヴィなミドルナンバーから福田洋也のメロディセンスを遺憾なく発揮した名曲『GYPSY WAYS』のソロなどは、その最たる例であろう。
1. keath ★★ (2002-08-24 11:24:00)
元々ジャパメタは好きなんですが、その中でもANTHEMは別格ですね。
日本語の歌詞に、独特の音楽をいつまでもやり続けてるところが最高です!
大抵のバンドって、どこかで音楽性チェンジしちゃうので・・・・。
ヴォーカルの英三さんと森川さんは、自分的には甲乙つけ難いです。
どちらにも味があると思うので・・・曲は森川さん時代の方が好みですね。
もちろん、英三さん時代が嫌いってわけじゃないですよ?
8月21日にもシングル出したようですし、自分も早く購入しようと思ってます。
秋にはアルバムも出るとか。SEVEN HILLSに負けない作品を作って欲しいと思います。
3. JENESIS ★★ (2003-01-19 23:35:00)
この時期に彼らのあんなヘヴィな音を、しかも日本人で出していたことは、本当に評価に値する。海外を意識した音楽が基本で、海外でもLOUDNESSについで有名なバンドである。
バンド・テーマ曲である「WILD ANTHEM」は私のお気に入りである。
7. こうじ ★★ (2003-08-10 19:57:00)
Xはここでも人気ありますが、VOLCANO、聖飢魔II、筋肉少女帯あたりは
まだまだ聴かず嫌いしてる人が多いと思います。
ANTHEM程「男気」が感じられるバンドってなかなかいないですよね。
MANOWARレベルいってるでしょ(それ言ったら柴田さん怒りそうだけど)
15. 銘菓ひよこ ★★ (2004-07-22 01:39:00)
でも、なんかちょっと違うんだよなぁ、期待してるモノと。
やっぱ心のどこかで、BOUND TO BREAK2を期待してるのかなぁ。
だったら、お前はずっとBOUND TO BREAK聴いてろや、って言われそうですが・・・
20. 中曽根栄作 ★★ (2004-11-11 16:16:00)
22. タコスケ ★★ (2005-03-06 15:51:00)
今年はアンセム漬けになりそうですね。
24. yuho ★★ (2005-04-12 17:00:00)
30. ロージー ★★ (2005-09-01 13:34:00)
私も「Heavy rocks」好きです。
31. Kamiko ★★ (2005-09-01 21:36:00)
ホント、いつの間にコレが登録されてるのか?
ボクは灰野敬二と一緒にやってる盤をよく聴くかな。
あとブルーのジャケのぬるーいヤツ。
32. fk ★★ (2005-09-02 00:46:00)
迫ってくる風景を眺めながら聞いてると事故ります。
高速バスの最前列で、夕方の山道を走りながらこれを聞いていましたが、
ものすごく気持ちよかったです。
34. anthem ★★ (2005-09-05 20:01:00)
36. 松戸帆船 ★★ (2005-10-29 10:37:00)
読みごたえのあるインタビュー、詳細なディスコグラフィーとアンセムの20年を凝縮したような感じです。
付録DVDも85分あり付録と呼ぶのが恥ずかしいぐらいの充実ぶり。
特に92年のラストライブ・03年の夏の陣の映像は熱い!
それを見ていて燃え上がる俺がいました。
アンセムが好きなら買って損はしない一冊です。