80年発表の1stアルバム。 NWOBHM貴重盤コレクションシリ-ズ中、他作品と比べて(TYGERS OF PAN TANGなど)圧倒的に入手困難な一品で、随分探してやっと手に入れました。握り拳(FIST)をデザインしたバンドロゴが印象的。 シーンのリーダー格であるIRON MAIDENのような個性はなく、オーソドックスなHR/HMを演っています。だからと言って侮るなかれ。少なくともわたしは、中堅勢では一番魅力的なバンドだと思ってます。 インスト群はどれも安定しているし、特にギターの泣き具合はなかなかのもの。そして切なげに歌うヴォーカルが大変良い。このギターとヴォーカルの哀愁がたっぷり味わえる「TERMINUS」は、恐らくNWOBHMの中でも3本の指に入るであろう名バラードです。他の収録曲も質的バランスが一様に良く、ムラがありません。 入手困難ですし、プレミア価格で売られているものですが、NWOBHMファンなら多少無理してでも買ったほうが良いです。 こういう歴史の闇に消えてしまった良質なバンドを1人でも多くの人に触れて欲しいです。「TERMINUS」の美しさを知って欲しい...!
英国はタイン・アンド・ウィア州にて結成。当初はAXEと名乗るも、アメリカに同名バンドが存在することを知り、名をFISTと改めた5人組が、デビュー・シングル『NAME, RANK AND SERIAL NUMBER』をスマッシュ・ヒットさせた勢いを駆って、メジャーのMCA RECORDSから’81年に発表した1stフル・アルバム。 どうもFISTについては、NWOBHMの中にあってアグレッシブ方向にもメロディアス方向にも振り切れない、中途半端というか地味な立ち位置のバンド…との偏見を持っていたのですが、いやいやいや。90年代の国内盤CD化を契機に購入したらば、これが熱気を孕んでドライヴするOPナンバー①が始まって早々にノックアウト。つか、そもそもつまんねぇ作品だったら何遍も日本盤がリイシューされるわきゃねえよな、と。気付くのが遅すぎましたね。 リフまたリフ攻勢で突き進む、NWOBHM然とした疾走ナンバー①④⑦と共に「FISTサウンド」の基軸を成す、五臓六腑に沁み渡るメロディの哀愁っぷりも本作の大きな魅力。特にシンプルな曲調に熱い泣きメロがアクセントを加える②、劇的に盛り上がる③、演歌ばりの嗚咽が入った⑧…と、これらを歌い上げるキース・サッチフィールドの塩辛いVoがまた良いんですよ。「味で勝負」系の人で抜群にテクニカルってわけじゃないのですが、持てる力すべてを振り絞るような熱唱はメタル魂を十二分に震わしてくれるという。 今にして思えば、シンガーを元HOLLOW GROUNDのグレン・コーツに代え5人編成でレコーディングされた2nd『BACK WITH A VENGEANCE』も買っときゃ良かったなと。