1969年9月26日、Apple Recordsよりリリースされた11thアルバム。
ロンドンのAbbey Road Studios前の横断歩道で撮影されたジャケット写真は、レコードジャケット史上最も有名なものの一つである。エンジニアのGeoff Emerickは「当初アルバム・タイトルを自分が吸っていたタバコの銘柄にちなんで "Everest" にして、ジャケット写真をエヴェレスト山の麓で撮影する予定だった」と語っている。 しかし「ヒマラヤにまでジャケット写真を撮りにいくのはごめんだ。ちょっと外に出てそこで写真を撮り、タイトルを(通りの名前)Abbey Roadにすれば良いじゃないか」とPaul McCartneyが発案し、1969年8月8日に撮影された。
本作はThe Beatlesの解散が意識される状況のなか行われ、事実上頓挫した「Get Back Session」の後に制作されたアルバムである。Paul McCartneyは、「昔のように、かつて自分たちがそうしたように」The Beatlesのアルバムを制作することをプロデューサーのGeorge Martinに提案、Martinは、「彼らが以前行った方法で出来るのであれば」という条件のもとに同意した。前述の頓挫した「Get Back Session」は『Abbey Road』の完成後の1970年1月に入っても断続的に続けられたが、2月28日を以てThe Beatlesは自らの制作を断念し、1970年3月23日から4月2日にかけてフィル・スペクターによる再プロデュースがなされた。再プロデュースに際して一部の追加録音やオーケストラやコーラスのオーヴァー・ダビングがなされたアルバムは『Let It Be』と題されてリリースに至った。アルバム『Let It Be』の多くの部分は1969年1月の「Get Back Session」で録音されている事から、その後にレコーディングされている『Abbey Road』が事実上The Beatlesの最後のアルバムと言われることもある。
本作の特色は覇気のない「Get Back Session」から一変し、一時的にせよThe Beatlesが覇気を取り戻し、傑出したアルバムを制作した点にある。特にB面の大部分を占めるメドレーへの評価は非常に高い。このメドレーについてJohn Lennonは「A面は良いけどB面はちょっとね。あれはジャンク(ガラクタ)を集めただけだと思うよ」と否定的ではあるが、Paul McCartneyとRingo Starrは「B面のメドレーは僕らの最高傑作のひとつ」と発言している。Paul McCartneyは解散後のソロ活動のライヴにおいても「Golden Slumbers」から「The End」にかけてのメドレーをコンサートの終幕にしばしば採り上げている。
アメリカだけで1,200万枚以上、全世界では2,900万枚以上のセールスを記録している。
Recorded:22 February – 20 August 1969, EMI, Olympic and Trident Studios (London)
Producer:George Martin