前々作の「Now, Diabolical」以降、ブラックメタルの滲み出る邪悪さをロックのダイナミズムを通じて実体化させたようなブラックを演っている彼らですが、ロックのキャッチネスという点では「Now, Diabolical」で一度ピークを迎え、前作の「The Age of Nero」では鬱々とした雰囲気や冷徹な感触など、よりムードの濃さが強まった印象だったんですが、今作もその方向で進化している感じですね。
ブラックメタルの威風とネガティビティを感じさせつつも、分かりやすいメロディをフィーチャーしたリフに、ロック由来のダイナミックさ、力強さを感じさせるドラムが合わさると、まるでどす黒い空をバックに聳える万魔殿を目の前にしたような迫力。よくある箔を押したようなヘヴィさのオーバープロダクションではなく、楽器の音色をしっかり重視した音作りですが、「The Infinity of Time and Space」辺りの楽曲が持つ纏わり付くような…というか、有機的な暗黒性はこの音作りでこそ出しえるもの、という感じがします。
また、今回は自らの代表曲と言っても差し支えないくらいの自信作らしい「The Infinity of Time and Space」を始め、土着的なメロディを前面に出した「Natt」、彼等にしては渋いメロディ使いの「Our World, It Rumbles Tonight」などを始め、今までにも増して楽曲の個性が強い感じ。ただ、ゲストヴォーカルのクリーンを前面に出した「Phoenix」はちょっと…声質が合ってる分、WATAINの「They Rode on」やBEHEMOTHの「Inner Sanctum」よりは大分マシですけど…これだけは正直好みじゃないかも。