King Diamondの唯一無二のファルセットと妖しさ漂うリフが独特のおどろおどろしさを生んでおり、ブラックメタルの起源の一つとなったことも納得。 その一方で、そのリフは妖しさだけでなくキャッチーでもあり、メロディックなギターソロと相まって普遍的なへヴィメタルでもある。 ブラックの起源という資料的価値に留まらないアルバム。
延々と続くスローテンポ、歪みジリジリとした音色のギター、3曲で54分強という長さ等、基本となるツールは通常のフューネラルドゥームのもの。 しかしながら、通常のフューネラルドゥームと比して、暗黒性が薄めで、代わりに、神秘的な要素が多くを占める。 アートワークにて「EA TAESSE IS BASED ON THE SACRAL TEXTS OF ANCIENT CIVILISATIONS.」とあるが、 これが示唆する通り、失われた古代文明への憧憬や畏怖を強く感じさせている。
これを聴く以前、自分は5th『At The Heart Of Winter』しか聴いておらず、 ブラックとメロデスに近い要素を取り入れたリフの質は高いものの、冗長な部分が多い印象を持っていた。 一方で、こちらは1曲最長5分半とコンパクトであり、かつ迸る寒気はその比で無い純然たるブリザードブラックであった。 DissectionやThe Legion等に比べるとストレートな寒さは劣るが、 このアルバムの場合は、恐怖により精神全体を暗黒に叩き音とすような邪悪さを加味しており、全体的な精神の侵食度は何ら遜色は無い。
近年では、KralliceやCult Of Fireなど邪悪でノイジーなだけではないトレモロを巧みに用いたバンドが現れてきているが、 このバンドもリフのアイディアの面で全く負けていない。 ①の初っ端から聴けるグロテスクに音程が上下するトレモロ、Kralliceの名曲『Dust And Light』のイントロをより寒々しくした様な荘厳な②のイントロ等、 トレモロのアイディアが多彩。 しかも、トレモロのメロディの輪郭自体ははっきりしていながら、要らぬ叙情性を発生させることなく、 あくまで不安や堕落、神秘性等が蠢く、吐き気を催す様な異常世界を保ち続けている点が素晴らしい。
ドラムを同じくする、これまたエスニックなブラックバンドCult Of Fireの2ndも素晴らしい作品だったが、 こちらもエクストリームメタルとプログレ・エスニックさを上手く融合させたアルバムだと思う。 あまり売っている所は見かけないが(自分はネットでレーベルから直接購入)、エスニックなメタル好きは是非。
同じ曲名『Ritual Use Of Fire』を冠されたアコギ主体で(ほぼ)インストの③、⑧、⑩は無くても良かったとは思うが、それを除けばアルバム全体の流れも良い。 終盤で無機質な哀愁の漂う8.を挟み、⑨、⑪で再び闘争本能を煽るブラックに戻り、戦歌的なメロディでアルバムを終える様は、 闘争の世界で傷を受け続けてもなお世界の流れと闘争本能に抗えず、終わり無き争いを続けるかのよう。
カオスなリフ捌き、予測困難なリズムワーク、そして殆ど喚いているだけに近いヴォーカルとアルバム全体に亘って混沌や狂気が漂い続ける。 しかし一方で、キャッチーなリフや奇怪で不条理なメロディを交えた複雑な曲展開をも併せ持ち、喜怒哀楽を含む幾つもの感情が渦巻く形容し難い心情に陥るかの様である。 それだけに、アルバムラストにおける、混沌から解放され、何かを悟ったかの様な荘厳めいた単音メロディが光る。 アルバム後半になるにつれ、不穏さを増していく、アルバム全体の構成も見事である。 推測ではあるが、混沌から最後にハイライトとなる必殺フレーズを持ってくる展開等、Between The Buried And Meの『Colors』辺りに影響を与えていそう。
EPではあるが、3曲36分(Yesの『Close To The Edge』より僅かに短いだけ)という実質的にはフルレングスといってよい大作である。 しかしながら、テンポやトーンの落差の付け方あるいはリフの変動など、36分をコントロールしきるテクニック&アイディアも実に優れていて、全くだれることはない。