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MITHRAS - Worlds Beyond the Veil (2017-09-18 16:24:36)

イギリスのアトモスフェリックデスメタルの3nd。

かなりぼやけた音像が特徴で、ブルータルなリフ、手数足数の多い硬質なブラストやフィルを多用しているにも関わらず、全体的にはそこまでブルータルさを感じない。
タイトル通り、世界観の全容を掴ませないことを意図しているのであれば、その音像が狙い通りに機能していると言える。

特筆すべきはギターソロ。
ぼやけた音像と流麗なメロディのコンボにより、そこらのアトモスフェリックブラックを凌駕する陶酔感を醸し出している。

他のバンドを引き合いに出せば、Nocturnusをよりブルータルにした感触。
ユニークなアトモスフェリックデスメタルである。

気に入り度…8/10

おすすめ…Worlds Beyond the Veil


BLAZE OF PERDITION - Towards the Blaze of Perdition ★★ (2017-07-23 22:42:06)

妖しくメロディックなブラック一本勝負の作品であるが、
禍々しさと良い意味のキャッチーさを両立しているという面で、この手の第一人者であるWatainにも全く引けを取らないアルバム。
蛇足的なアレンジの一切や過剰なローファイさを廃し、高レヴェルなリフ、リズムワーク、曲展開といった基本要素で勝負していく様が好印象である。
鳥肌立つ様な必殺のフレーズが足りないという個人的な欠点が有る位で、ブラック好きであれば殆ど誰もが多少なりとも気に入るであろう良盤。

気に入り度…9点
おすすめ… Misterium Kliffoth


ULTHA - Converging Sins ★★ (2017-07-16 23:08:36)

ドイツのブラックメタルの2nd。

荘厳さを仄かに湛えつつ不穏な雰囲気を醸すトレモロを主体とするカスカディアンブラック。
カスカディアンの中でもAsh Borerの1stやLake Of Bloodの2ndに類似した暗黒性強めなスタイルであるが、
タイトで暗黒度の高い音像、僅かに掠れたがなり声、ヘヴィな刻みといった要素が目立ち、それらの先達よりも更にブラック由来の攻撃性や暗黒性を付加した感じである。
一方でアトモスフィア醸成というカスカディアンらしい所も抜かり無く、暗黒性を無駄にしない程度のいいバランスで、霊的存在を讃えるかの様なトレモロでも魅せてくれる。
カスカディアン好きはチェックしてみるとよいかも。

気に入り度…8.5/10

おすすめ…The Night Took Her Right Before My Eyes


ULCERATE - Shrines of Paralysis ★★★ (2017-07-09 17:14:58)

5th。
赤と黒を基調としたジャケットから、勝手に2nd路線への回帰かと思ったが、
実際は難解で混沌を極め、神秘的ですらある雰囲気がより強くめていくという、リリースの度に生じている傾向は変わらず。
その様な要素とブルータリティとの両立の塩梅については、個人的に2nd程好きではないものの、Ulcerateにしかなし得ないリフ捌きの壮絶さについては全く問題無し。
他のアルバムに比してどれ位気に入るかは個人の趣向レヴェルである。

それにしてもこのバンド、アルバムを出す度に総ランタイムが長くなっているが、次は愈々1時間以上の作品を出してきたりするのだろうか…
毎回もの凄いが、そうなればどこまで壮絶なアルバムになるのか楽しみになる。

気に入り度…9.5/10

おすすめ…Shrines Of Paralysis


SCHAMMASCH - Contradiction ★★ (2017-07-01 23:37:33)

若干のアヴァンギャルドさを含むカルトブラックで、古代カルトの儀式をそのまま音に封じ込めたかのような神秘性は中々のもの。
ドゥーミーなパートとどすの利いたマントラの様なヴォーカルを主軸に据えることにより、攻撃性やストレートな邪悪さを敢えて抑えているが、それが神秘性をより引き立てている。
感性と理性を同時に融解させ、教義を叩き込まれる感触。
9曲84分と長めかつ個々のパートの冗長さもなくはないが、カルトブラックとして及第点以上のアルバムである。

気に入り度…9/10

おすすめ…Contradiction


PANTERA - Vulgar Display of Power ★★★ (2017-06-19 22:22:20)

「へヴィメタル」(=重金属)を文字通り具現化したか様なアルバム。
鉛の様なぎらつきを放つ強烈にヘヴィなギターとリズム隊、時にクリーンも交えて叙情性を見せながらも怒りをぶつけまくるヴォーカルが一部の隙も無く攻め立てる。
演者もリスナーも猛烈なテンションの坩堝に落とす至高の作品。

気に入り度…10/10

おすすめ…Mouth For War


NEVERMORE - This Godless Endeavor ★★ (2017-06-17 16:58:19)

ダークで美しい叙情性と正確無比なギターによる圧倒的なへヴィネスが同居するモダンメタルであるのは従来通り。
今作ではへヴィネスの部分がより強まり、嵐の前の不穏さというかそういった風景を思わせるサウンドに。
少し全体の雰囲気が変わったとはいえ、クオリティの面では全く落ちていないので、心配無用。

気に入り度…8.5/10

おすすめ…Born


MERCYFUL FATE - Melissa ★★ (2017-06-11 16:12:29)

King Diamondの唯一無二のファルセットと妖しさ漂うリフが独特のおどろおどろしさを生んでおり、ブラックメタルの起源の一つとなったことも納得。
その一方で、そのリフは妖しさだけでなくキャッチーでもあり、メロディックなギターソロと相まって普遍的なへヴィメタルでもある。
ブラックの起源という資料的価値に留まらないアルバム。

気に入り度…8.5/10

おすすめ…Evil


MASTODON - Leviathan ★★ (2017-06-10 12:21:59)

テクニカルでありながらもキャッチーな、独特のリフによる浮遊感が何とも心地良い作品。
アルバムジャケにて躍動する白鯨よろしく、重圧感を放つ異形の存在を想起させる。
既にこの時点でリフも曲展開もユニークであるが、4th等に比べればまだ普遍的なメタルなので、Mastodonはまずこのアルバムから聴くのがよいのかも。

気に入り度…9/10

おすすめ…Blood And Thunder


KRATER - Urere ★★ (2017-06-04 15:44:41)

Svart Crown辺りのブラッケンドデスにも通ずるブルータリティや無慈悲さ、そしてコールドなトレモロを主体とするブラック。
変な色気を使わず、それら主体となる要素だけでまとめ、かつ総ランタイム45分、1曲最長6分という潔さが好印象。
ほぼ完全なデスメタルに移行する前のBehemothを好む人等には特にお薦め。

気に入り度…8.5/10

おすすめ… Flammen Im Vakuum


DESOLATE SHRINE - The Sanctum of Human Darkness ★★ (2017-05-20 18:52:37)

禍々しく蠢くリフが中々に凄絶で、悪夢とか終末の正解とかをそのまま音に封じ込めたかのようなデスメタル。
ブラストはあまり多くなく、ドゥーム程ではないにせよ、ミドルスローを主体とするが、それ故にどす黒さや圧殺感が増している。
時折挿入される不穏なアルペジオ等、宗教色の強いブラック的な要素も良いアクセントに。

Portal等に比べればどす黒さは薄目ながらも、暗黒デスとしてのクオリティは十分。
Ulcerate等が好きな人あたりは聴いてみるとよいかも。

気に入り度…8.5/10

おすすめ…Plane Of Awake: Dreams Over The Angel-Serpent Tower


BEYOND CREATION - The Aura - Coexistence ★★★ (2017-04-23 16:28:44)

アルバム中最もドラマティックな曲。
2.の4:24~でみせる、幻想世界にトリップさせるかのようなパート等が良いアクセントとなっている。


BEYOND CREATION - The Aura ★★ (2017-04-23 16:27:33)

ケベック産テクデス。…という事で、期待通りクオリティは中々の物。
お馴染みの粒の揃った流麗なギターに加え、随所でえらく細かい金物の刻みや蕩ける様なフレットレスベースが絡む、王道のテクデスである。
Necrophagistの1stを、より長く、若干プログレ寄りにした感じだろうか。
独自色の薄さが気にならず、この手のテクデスが好きな人であれば、間違いなく楽しめる一品ではある。

気に入り度…8.5/10

おすすめ…Coexitence


ASH BORER - The Irrepassable Gate ★★★ (2017-04-22 18:30:51)

陶酔感のあるトレモロを主体にリフレインの時間を多く取ってアトモスフィアを醸成するという、前作の路線を踏襲しつつ、
よりダークでカルティックなムードを強めた作品となった。
DSO系統のブラックに見られる様な暗黒トレモロやスラッジーなパートの比率が増え、個人的にはより好みの作風に。
通れるはずの無い門を潜った先にあるのは、音楽によるトランスを齎す闇の儀式であった。

気に入り度…9.5/10

おすすめ…The Irrepassable Gate


AKHLYS - The Dreaming I ★★★ (2017-04-05 22:07:17)

また一つ、トレモロフェチ必携の名盤が現れた。

靄の掛かった様なトレモロが渦巻くブラック、という点では特に真新しい所はないが、その催眠性・サイケ感が凄まじい。
放たれた瘴気が耳から入って全身を犯す感触とでもいうべきか、
兎に角精神を蕩けさせる具合でいえば、ブラックの中でもトップクラスだと思う。
それこそ、タイプは違えどKralliceの全盛期にも劣らぬ程である。

気に入り度…9.5/10

おすすめ…Breath And Levitation


SKÁPHE - Skáphe² ★★ (2016-12-24 23:44:44)

物凄い瘴気と狂気である…
辺り一面を瘴気で染めあげ、全てを腐敗したグロテスクな存在に変えかの様な、どす黒い音像が印象的なカオティックブラック。
今作からMisþyrmingのD.G.氏が参加したからかかもしれないが、元々ソロでやっていた時の禍々しさが更に際立ち、ブラックとしてのレヴェルが高まったように思う。
成程、良い意味で不快指数満点のブラックメタルである。

気に入り度…85/100

おすすめ…Ⅰ


SKÁPHE - Skáphe (2016-12-24 00:04:13)

不気味且つ僅かに神秘性を湛えたフレーズが渦巻く、カオティックブラック。
この世の理を外れた存在を描く様な音像は、Blut Aus Nord辺りに近い感触であるが、
このバンドはよりrawで、暗黒性が強く、Misþyrmingらアイスランド勢を思わせる側面もあり。
他と一線を画す様な要素はないが、及第点以上の暗黒性に浸かれる秀作である。


DEATHSPELL OMEGA ★★★ (2016-10-01 19:54:22)

11月8日に新譜『The Synarchy Of Molten Bones』がリリースされるそうな。
http://www.noevdia.com/news/
総再生時間約29分ということで、ミニアルバムぽい感じですが。


DISEMBOWELMENT - Transcendence Into the Peripheral ★★★ (2016-09-23 23:36:30)

フューネラルドゥームの先駆け的な作品。
ヘヴィなパートは全てを泥沼に引きこむが如く凶悪さでありながら、それを一旦忘れさせる様な、時にアンビエント調にもなる神秘性が共存している事が特徴。
それらの対比がへヴィパートの圧迫感を強調し、得体の知れない圧迫感を産み出している。
この点、Evoken辺りを想起させ、暗黒性以外も孕んだフューネラルドゥーム好きには堪らない作品だろう。
耳を適度に刺激する、ジリジリとしたギターの音色も美味。

ただ、このアルバムが他と違うのは、ブラストで疾走さえする等、デスメタル要素を強く残しているところ。
それが違和感無く溶け込み、寧ろ混沌性や暗黒性を強めている所は、
四半世紀近く経ってもこのアルバムが歴史的資料に留まらない名盤であり続ける要因では…などと、個人的に思った次第である。

気に入り度…93/100

おすすめ…The Tree Of Life And Death


ANTHRAX - Among the Living ★★★ (2016-08-31 16:05:56)

「キャッチー」の一言に尽きる。
徹頭徹尾、約50分間ヘドバンを誘発し続けるキャッチーで躍動感あふれるリフ&リズムが熱い。
他に何の要素も必要としない、唯只管に潔いスラッシュである。

気に入り度…92/100

おすすめ…Among The Living


WARNING(UK) - Watching From a Distance ★★ (2016-08-27 16:11:24)

一貫して悔恨と苦悩を滲ませるヴォーカルやメランコリックなギターを用い、兎に角メランコリックさを追求したエピックドゥーム。
リフレインが多く、展開も抑揚が乏しい為、アルバム全体約50分を通じてずっと似たような曲調であり、聴いているだけで生気が奪われていく。
ある意味、生半可なフューネラルドゥームよりも聴き通すのが辛い作品である(ドゥームにとっては、それも褒め言葉だが)。
My Dying Bride辺りが好きな方は聴いてみるとよいかも。

気に入り度…85/100

おすすめ…Watching From A Distance


VEKTOR - Outer Isolation ★★ (2016-07-23 23:03:12)

絶妙な刻みを巧みに絡めたリフとスペーシーな感触という、1stの軸をそのままに、よりコンパクト、アグレッシヴ、そしてソリッドになった印象の2nd。
それ故に、前作と比べるとやや曲の多様さや壮大さを欠くため、個人的には前作程好きではない。
しかしながら、テクニカルスラッシュとしての質は何ら問題の無いレヴェルで、前作同様、他では味わえない快感を味わえるアルバムである。

気に入り度…89/100

おすすめ…Tetrastructural Minds


TESTAMENT - The Legacy ★★★ (2016-07-09 23:03:34)

ベイエリアスラッシュの金字塔。
ハイレヴェルなクランチリフと疾走感もさることながら、名手Alex Skolnickによるスラッシュ屈指の流麗さを誇るリード&ギターソロが発表から30年近く経った今も輝き続ける。
超名曲の①の気高ささえ感じるギターソロをはじめ、名フレーズ満載の名盤である。

気に入り度…91/100

おすすめ…Over The Wall


SPIRITUAL - Pulse ★★ (2016-06-25 18:34:26)

元DarkseedのStefan Hertrichによるソロプロジェクト。
自分は、最初EPとしてリリースされたものに2曲加えた、2006年にフルレングスとしてリリースされたものを所持。

一言で言うと、エスニックゴシック。
ゴシックのセオリー通り、女性ヴォーカルを絡めたりするが、トライバルなパーカッションを入れたりしていることで、
メランコリックさではなく、古代世界を思わせる神秘性が先行する印象。
曲によっては、攻撃性を抑えたInsomniumを思わせるようなところもあり、普通のゴシック好きより、メロデス好きのほうにより受け入れられそうな気もする。

気に入り度…81/100

おすすめ…This Battle Is Yours


SOMBRES FORETS - La mort du soleil ★★ (2016-06-04 00:29:16)

同郷のディプレッシヴブラックの盟主Gris的なメランコリック・ブラックとシューゲイザーブラックの中間位の音楽性による、
アンビエント・ライクなディプレッシヴブラック…といったところか。
他のバンドを引き合いに出せば、暗黒性を消したAltar Of Plaguesのような感触。
怠さはほぼ無く、メロディックなトレモロやメランコリックなアコギ等、何れの要素も心を揺さぶってきて、時には神々しさすら感じる。
音像・音響の良さも光り、①の様に敢えて不確かな輪郭のフレーズを用いるなど、畏怖にも似た感情を覚える独特の美麗さが放たれている。
良いフレーズを折角持っているのに、活かしきれていない曲展開だけは気になったものの、ディプレッシヴブラックの中でも優れた作品ではないだろうか。

気に入り度…94/100

おすすめ…Des Épaves


SAVATAGE - Gutter Ballet ★★ (2016-05-29 00:09:01)

独特なフックのあるリフと美しいピアノやギターソロが一体となり、時に荘厳さすら醸すドラマティックへヴィメタル。
若干ヒステリックにも聴こえるヴォーカルも、独特な妖しさを、時には適度な激情を与え、曲にマッチしている。

各要素がハイレヴェルであるが、取分け、メタルらしいアグレッションの中に時折出現する、水晶の如き美しき調べに心を揺さぶられる。
名曲たる②を筆頭に、どの曲にもハイライトにしたい瞬間があって、名作の呼び声に素直に頷けるアルバムである。

気に入り度…90/100

おすすめ…Gutter Ballet


MOONSORROW - Jumalten aika ★★★ (2016-05-21 18:04:28)

勇壮な、或いは哀愁漂うリフの反復を主体とし、そこに華麗なシンセが乗ったり、壮大なクワイアを乗せたりなど、
5曲で約67分という長さを気にさせないドラマティックなヴァイキングメタル。
聴き通すのはある程度大変だが、聴けばそこは正に神話の世界である。

また、ペイガンブラック色が強まった印象を強く受け、Satyriconの2ndを若干想起させるところも。
Moonsorrowのアルバムを聴いたのは、勇壮さを前面に押し出した『Kivenkantaja』以来だが、それとはまた違った世界を見せてくれる。

気に入り度…93/100

おすすめ…Ihmisen Aika (Kumarrus Pimeyteen)


CROWBAR - Sonic Excess in Its Purest Form (2016-05-14 15:05:25)

煙たく、引き摺る様なリフを主体とするオーソドクスなスラッジに、叙情的なギターや疾走を時折絡め、ダイナミズムもある程度具備した、
トラディショナルなドゥームの色が濃いアルバム。
スラッジというジャンルができて20数年経った今となっては特に真新しい事は無いが、良質なスラッジである。
曲の長さも全て5分半未満であるなど、かなり聴き易い作品で、スラッジ入門としては丁度良い作品かと思う。

おすすめ…The Lasting Dose


MONOLITHE - Epsilon Aurigae (2016-05-09 22:36:24)

全体的には、刻みリフがそれなりにあったり、フューネラル程は行かぬテンポを主体とするなど、絶望や虚無感といった要素の余り無いドゥーム…といったところか。
①異世界を漂うような陶酔感、②スラッジ風インスト、③重量感のあるへヴィリフが心地良く、アルバム中最もドラマティックな曲、
と、3曲共味わいが異なっており、オンリーワンと言える圧倒的な長所は無いが、ドゥームの各種スタイルを上手く取り入れたアルバム。
各曲15分ジャストという長さだが、ドゥーム好きであれば余り苦にならないだろう。

おすすめ…Synoecist


GREY HEAVEN FALL - Black Wisdom ★★★ (2016-05-06 23:29:18)

不協和音を用いた、カオティックかつ知的な雰囲気漂うブラック…と、DSOのフォロワー的な部分を持つアルバムだが、宗教臭さは殆どない。
代わりに、ドスの効いた咆哮ヴォーカルや不気味に蠢くマッシヴなリフを用いるなど、有機的かつ頽廃的な雰囲気をも醸し出しており、
個人的にはこの手のブラックの中で特に圧倒された作品である。

また、曲のドラマティックさも素晴らしい。
4曲が9分弱~12分弱と長めだが、前述の要素のみならず、
②におけるドゥーミーなパートから泣きのギターソロに移行する所等、適宜アクセントを付けつつ展開してくれるので、だれる所が殆ど無い。
DSOの発展系ブラックの中でもトップクラスのアルバムではないだろうか。

気に入り度…95/100

おすすめ…Spirit Of Opression


GAMMA RAY - Land of the Free ★★ (2016-05-04 22:25:15)

自分をパワーメタルに導いた作品。
ヴォーカルの上手さはHelloween等、ど定番すら数曲試聴した程度の身にはよく分からないが、
キャッチーで良いリフやメロディが満載の優れたアルバムである事だけは疑い様が無いと思う。
賛否あるヴォーカルも、個人的には、曲にマッチしているため、何の違和感も無かった。

気に入り度…89/100

おすすめ…Rebellion In Dreamland


EVOKEN - Antithesis of Light ★★ (2016-04-29 00:03:21)

絶望感やメランコリックさはフューネラルドゥームにしてはそれほど無いが、代わりに憎悪や怨念が渦巻き、どす黒さが際立っている。
随所で聴ける淡々としたクリーンギターが出口の見えない洞窟を彷徨う不穏な心理を思わせる事を含め、聴いていて軽く恐怖すら感じる程である。
それが1曲目を除いた全曲で10分以上続くものだから、聴き通すのが多少辛いアルバムではあるが、
アルバムを支配する暗黒性に圧倒されるため、大きな欠点とは思っていない。
フューネラルドゥームの礎を築いたこのバンドの貫録を感じる良盤である。

気に入り度…82/100

おすすめ…Antithesis Of Light


DISILLUSION - Back to Times of Splendor ★★ (2016-03-05 22:37:49)

一言で言うと、エスニックな香り漂うテクニカルリフを主体とするプログレッシヴメロディックデス…だろうか。
リフ&メロディ、そして良い意味で胡散臭いクリーンヴォーカルが印象的で、エジプト神話の世界にでもトリップさせられそう。
曲展開が分かり易くはなく、立て続けにリフを浴びせる感があるが、
④の中間部、ブラスト→SE→トライバルという流れなど、時折気の利いたアクセントが用いられるなど、だれる迄はいっていない。
必殺のフレーズに向けて盛り上げていくよりかは、アルバム全体を流れる世界観を味わうタイプか。

個人的には、モチーフを除けば、音楽的に似たようなタイプである有名株Persefoneに比べても、引けを取らないと思った。
プログレメタラーにもっと知られてもよいのではないだろうか。

気に入り度…90/100

おすすめ…...And The Mirror Cracked


CRADLE OF FILTH - Cruelty and the Beast ★★★ (2016-03-04 23:37:03)

複雑ではあるがドラマティックに紡がれるメロディックなリフ&メロディ、荘厳なシンセ&オーケストレーションが素晴らしく、
よくCOFに対して起こる、ブラックメタルかどうかの議論がどうでもよくなるシンフォニック・エクストリームメタル。
また、的なDaniの高音ヴォーカルは、怖いとまでは感じない(同系統のヴォーカルのやばさで言えば、『Wolf's Lair Abyss』期のManiacとかの方が断然上)が、
曲の展開にマッチしていて、妖しさや滲み出る狂気を演出している。

唯一のマイナスポイントは、プロダクションの軽さで、真正ブラックではないのだから、より良い音質が欲しかったところ。
しかし、フレーズの良さや芸術性を味わうにはなんとか大丈夫であり、個人的には許容範囲内ではあった。
音質等に対する先入観は捨てて聴きたい傑作である。

気に入り度…92/100

おすすめ…Thirteen Autumns And A Widow


RIVERSIDE ★★ (2016-02-23 21:28:27)

ギターPiotr Grudziński氏が死去とのこと…
名盤『Out Of Myself』でのエモーショナルな彼のギターは忘れえない名演である。
RIP


ANOPHELI - The Ache of Want ★★ (2016-02-20 14:47:58)

アメリカのポストハードコア/クラストコアの1st。2015年。

悲哀を滲ませたメロディを滲ませつつの疾走を基本とし、儚げなチェロや清浄なメロディが絡むスタイルで、チェロ以外は比較的オーソドクスなポストハードコアといったところ。
疾走パートが一本調子な所に退屈感を多少感じるが、一方では、儚げなチェロや清浄なメロディは、一本調子な攻撃性の中に一石投じる良い役割を果たしている。
このため、激情よりは、どちらかというとダークな雰囲気や燻る葛藤を強く感じさせる音楽性である。

気に入り度…82/100

おすすめ…Awoken


REGARDE LES HOMMES TOMBER - Exile ★★ (2016-01-30 01:29:01)

…何となく示唆的で、赤い色彩が目を惹く、良いジャケットです。
1stとジャケットの構図がほぼ似ているあたり、第二章となるアルバムだったりするのかもしれない。

音楽的には、簡潔に言うと、宗教色を強め、コンパクトになったAltar Of Plaguesか。
ポストハードコア的な攻撃性は血腥さを、ブラックらしいトレモロは魔的な雰囲気を醸し、
神界より天罰を課され、生き地獄となった世界を逃げ惑う地上の民、みたいな聖典の一場面を克明に描いているかのようである。
加えて、DSOの3rdで使われてもおかしくない5.の荒涼たるリフ等、フレンチブラックの病んだ雰囲気も持っている。

アルバムの後半はオーソドクスなスラッジパートがそれなりにあるが、その内非現実感が薄れて重さが先行する所は、個人的にだれるところではあった。
しかしながら、スローなスラッジパートでも、トライバルなドラミング等によりテンションを落とさずに殺伐とした雰囲気を放っている点にこのバンドの力量を感じている。

気に入り度…89/100

おすすめ…A Sheep Among The Wolves


EAGLES ★★ (2016-01-19 21:52:01)

フライ氏が亡くなった。
レミーといい、ボウイといい、最近超大物の訃報が続く…


MY DYING BRIDE - The Angel and the Dark River ★★ (2016-01-11 21:22:04)

ゴシック/デスドゥームの名盤たる前作と比較すると、
グロウルが封印され、クリーンヴォーカルのみとなり、またシンセやヴァイオリンが表に出てきたため、デスドゥーム成分が少な目になった事が特徴。
陰鬱さという方向性は同じでも、絶望感を蒔き散らすのではなく、諦観の色が強く表れており、「感情の喪失」による悲愴さじみたものがより感じられる。
名曲①に至っては、世界に存在する人間全てはおろか、あらゆる物質的存在からも切り離された、究極の孤独が押し寄せるかのようである。

個人的には、中盤以降、メロディと展開が弱く感じたために前作には及ばぬものの、違ったアプローチでも陰鬱さを十分表現しきっているところは流石。
今作もまた、ゴシック・ドゥームの必聴盤である。

気に入り度…90/100

おすすめ…The Cry Of Mankind


THERGOTHON - Stream From the Heavens ★★★ (2015-12-30 23:20:37)

超スローなテンポは勿論、潰れた音色の引き延ばされたギター、歪みきったグロウル、生気の欠片も無いノーマルヴォイスの囁き等、
どの要素も異常なまでにテンションを欠いているのが特徴。
これらの要素が相当な破滅性を放っており、絶望を感じる心すら死に絶えた、破滅の極みの世界を思わせる。

…が、延々とこれらの要素で引っ張っていく訳でもない。儚いシンセやアコギによるアレンジ等、叙情性を醸す要素もあったりする。
では、これが破滅性を壊してしまうかと言うとそうではなく、「フューネラルドゥームとしての」抑揚を多少与えると共に、破滅性をより際立たせている。

フューネラルドゥーム黎明期の作品ではあるが、既にフューネラルドゥームとして完成された作品。
個人的には、1周廻って、寧ろ究極に近い美しさを感じたまであるほどである。

…余談ではあるが、除夜の鐘代わりにこれを聴き、煩悩諸共心を一度砕いてみるのもいいかもしれない…

気に入り度…98/100

おすすめ…The Unknown Kadath In The Cold Waste


METALLICA - Metallica ★★ (2015-12-29 23:07:14)

ヘヴィロックへの路線変更への賛否等は兎も角、ただただ純粋に良質なるメタル/ロックに他ならない。
御託は要らない。シンプルに、身体全てを震わすへヴィネスとグルーヴの齎す快感を味わい、時に現れる叙情的な調べに心洗われればよい。

気に入り度…87/100

おすすめ…Enter Sandman


FUNERAL TEARS - Your Life My Death ★★ (2015-12-25 23:27:14)

一言で言って、王道のフューネラルドゥームそのもので、5曲50分強とフューネラルドゥームにしては短めながらも、十分に気を滅入らせてくれる。
特徴的な所を挙げるとすれば、凍てついたメロディのシンセや仄かに叙情性を湛えつつ生気を少しずつ奪うようなギターが挙げられる。
これらは、ドス黒さや絶望感を前面に押し出すというよりかは、
メランコリックさに徐々に心を病んでいく感触であり、それなりにメロディがある事もあって、フューネラルドゥームにしては、比較的聴き易い部類かと思う。
特筆すべき特徴こそないが、メランコリックなフューネラルドゥームにあるべき要素が一通り揃った良作である。

気に入り度…81/100

おすすめ…For You


EA - Ea Taesse ★★★ (2015-12-23 15:29:44)

アメリカのバンド又はプロジェクトだと言われるフューネラルドゥームの1st。

延々と続くスローテンポ、歪みジリジリとした音色のギター、3曲で54分強という長さ等、基本となるツールは通常のフューネラルドゥームのもの。
しかしながら、通常のフューネラルドゥームと比して、暗黒性が薄めで、代わりに、神秘的な要素が多くを占める。
アートワークにて「EA TAESSE IS BASED ON THE SACRAL TEXTS OF ANCIENT CIVILISATIONS.」とあるが、
これが示唆する通り、失われた古代文明への憧憬や畏怖を強く感じさせている。

曲の中心となっているのは、古代にトリップするような感覚を醸し出すシンセである。
浮遊感のある音色ではあるが、音の空気を決定付けるものであり、聖歌の様な荘厳な響きが心地良い。

シンセの影響力が強いが故に、アンビエント的に聴こえる所もあるが、それを除けば、暗黒性が薄く、フューネラルドゥームにしては聴き易いと思う。
Esoteric辺りが聴ける人等、意外と多くの人が聴けるアルバムではないだろうか。

気に入り度…95/100

おすすめ… Laeleia


セイコーマート (2015-12-15 19:47:18)

茨城県にある現職場の近くにあり、昼飯で時たま使います。
カツ丼がうまい。


AOSOTH - Iii ★★★ (2015-12-07 20:06:09)

禍々しさ極まるリフと呪詛染みたがなりを放ち続けるMkMのヴォーカルを主体とするフレンチブラック。
DSOの3rdのような厚みがありドスの効いた音質であるが、あちらの様に宗教的で冷涼な雰囲気というよりかは蠢く毒沼の様な生々しい邪悪さを演出している印象。

それとの対照をなすカルティックなスロー・ミドルのウェイトも高いが、
そこでも邪悪さの余韻を残しつつ、次なる悪の到来への準備と言わんばかりの陰鬱さを演出しており、邪悪さを減じる事は無い。
加えて、音響までもが更なる恐怖を予感させるように巧みに用いられ、全てがフレンチブラック好きならまず納得できるクオリティと邪悪さを演出している。
激烈なリフ捌きによるストレートな邪悪さだけでなく、連鎖的にやってくる陰鬱さをも味わえる優れたフレンチブラックである。

気に入り度…93/100

おすすめ…Ⅰ


ALTAR OF PLAGUES - White Tomb - Through the Collapse: Gentian Truth ★★ (2015-11-23 17:12:25)

奇怪なトレモロのイントロで始まり、アンビエントから徐々にフェードインして、ミドルテンポの中神々しいトレモロを浴びせ続けるパートへ。
最後は、全てのネガティヴな感情を鎮圧するかの様な静パートで締める。


WINTERSUN - Wintersun ★★ (2015-11-23 01:12:49)

個人的に流麗なメロディを前面に出すスタイルのメロデスやパワーメタル等が余り好きではないのだが、
ここまで圧倒的なテンションと流麗さを追及されると、もう素直に心震わせ、ヘドバンするしかない。
徹頭徹尾、猛吹雪も構わず猛然と進軍する戦士の世界である。
更に勇壮なコーラス等、フォーク/ヴァイキングパートも良いアクセントとなりつつ、どの要素も壮大な世界の構築に貢献している点も良い。

美麗なメロディや勇壮なメロディが激しくぶつかり合う、そんな音楽を求める人は是非。

気に入り度…89/100

おすすめ…Beautiful Death


VULTURIUM MEMORIAE - Nato Per Ragioni Ignote ★★ (2015-11-20 22:53:40)

イタリアのアトモスフェリックドゥームの1st。2014年。

スローで単調なドラムと、ややノイジーで、儚く物悲しいドローン気味のギターによる、揺蕩うようなリフがほぼ全体を占めており、
全体を通してアンビエント/ドローン調に展開していくアトモスフェリックドゥーム。
一応、ベースがリフ的なフレーズを弾いたりしているが、
それでもなお余りにロック的なダイナミズムが無く、時間の概念が消え失せ、あらゆる事象の境界が消え失せた世界の様なものを連想した。
曲毎の違いが殆ど無く、「フォンフォン」とでも擬音付けられそうなサウンドを約43分に亘りほぼずっと聴かされる為、心を空にして聴くと少し癒される感じがしないでも無い。

しかし、一方では、④で清浄なクリーンギターの醸す清浄な雰囲気を絡めるなど、メロディの起伏はある程度用意されている。
その御蔭で、単なるヒーリングだけではなく、アルバム全体を通して飽きずに何とか聴けるようにはなっている。
その点、borisの『Flood』等とも似ている印象であり、また音楽性は違うが、Burzumの『Tomhet』等が聴ける人なら十分楽しめるアルバムだと思う。

気に入り度…81/100

おすすめ…選べない


Ⅵ - De Praestigiis Angelorum ★★ (2015-11-19 20:18:34)

フランスのブラックの1st。
メンバー全員が、AntaeusやAosothといったフレンチブラックの大物に在籍中(していた)というバンド。

昨年面白いトレモロリフを次々と披露したThantifaxathと言うバンドが現れたが、このアルバムは、それを攻撃的にし、衝動性や破滅性を増した印象。
気持ち悪く音程が揺らぐカオティックなトレモロ連打を中心としつつ、キャッチーなリフや疾走感も用いており、陶酔性は比較的薄めである。
世界観の追求と言うよりかは、神にまつわる危うさや矛盾を弾劾するような哲学的・抽象的なフレンチブラックといったところで、
フレンチブラックにおいては、DSOの名曲『Mass Grave Aesthetics』に近いスタイルと言えると思う。

フレンチブラックとしては珍しいものではないものの、一つ一つのリフが充分な背徳性を纏っており、フレンチブラック好きは気に入るだろう。
バンドの遍歴に恥じぬアルバムである。

気に入り度…90/100

おすすめ… Il est trop tard pour rendre gloire. Ainsi la lumière sera changée en ombre de la mort.


Tod Huetet Uebel - Malícia ★★★ (2015-11-15 10:42:16)

ポルトガルのブラックの1st。2015年。

①のイントロ、柔らかいポストロック風のギターから、Altar Of Plaguesの『Mammal』辺りに近い音楽性かと一瞬思ったが、
喉を枯らす様な金切声やドスの効いたがなり等を使いこなすヴォーカルや豪速ブラストが魅力のドラム等、全体的には彼らより暗黒性が更に強いアルバムである。
儚いメロディも僅かに混じる所があるものの、ポストロック的な幻想性よりかは、瘴気により蹂躙され、荒廃しきった世界を思わせており、
全体としては、ポストロック要素はブラックの放つ禍々しさを増強している要素として機能している印象。

その暗黒性だが、パンドラの匣が開いたが如き、圧倒的な禍々しさを湛えているのが素晴らしい。
方向性は違うが、DSOの『Paracletus』の様に、不条理な力が世界の破滅を齎す様を感じる。

ポストロックとブラックの融合は今や珍しくも何ともないが、今まで聴いてきた同種の作品の中ではトップクラスに好きな作品。
この手のブラックに暗黒性を求める人は是非。

気に入り度…94/100

おすすめ…Ⅰ(2曲目)


PAIN OF SALVATION - The Perfect Element, Part I ★★★ (2015-10-31 22:56:26)

音楽的には、難解さや奇抜さに頼らず、緻密なリフやリズム、コーラス等の構築、ここぞで繰り出されるダークな雰囲気を纏った泣きメロによる、
プログレというだけでなく、純粋にロック/メタルとしても非常に優れた作品であるというのが第一印象。
カオティック或いはインプロ然としたフレーズではなく、緻密なフレーズの巧みな切り替えによる場面転換の手法が個人的に好印象で、
曲最初の雰囲気からは想像もつかない場面転換を難なくやってのけている。

これらの要素が、暴力や虐待の連鎖の中にある者達の嘆き、諦観、怒り…という感情を雄弁に語りかける。
更には、親から虐待を受け育った男とその男から性的虐待を受ける女性という、単なる虐待・被虐待の関係を悲劇的に描くに留まらず、
節々に感じる、虐待を受けたが故の喪失感を埋める為に女へ過剰に依存するといった、二人の微妙な関係性が何とも考えさせるところである。

コンセプトアルバムとしては難解な部分も有る作品ではあるが、音楽的には難解さは余り無いので、意外と多くの人に受け入れられるのではないだろうか。
加えて、難解な部分も受け入れられる人には、二度美味しい、そんなアルバムである。

気に入り度…94/100

おすすめ…King Of Loss


GORGUTS - Obscura - Clouded ★★ (2015-10-07 19:45:20)

ダウナーな雰囲気が9分半も続く、アルバム中最も精神に来る曲。
寝不足状態で聴くと、余りのドロドロ感を頭が拒絶し、寝る事確実である(実体験)。


SATYRICON ★★ (2015-10-06 22:58:38)



CORRUPTED - El mundo frio ★★★ (2015-09-29 21:37:05)

1曲71分半のスラッジという、耐性の無い人には苦痛以外の何物でもない音楽。
スペイン語で「冷たき世界」と題されたこのアルバムで披露される、永遠の絶望と冷気に晒され、全ての希望が裏切られ、更なる絶望の糧となる荒廃世界に、
誰もが良くも悪くも悶絶必至であろう。

また、使われている要素は、アンビエントとスラッジ、ポストロック辺りで、これらの要素が数分単位で切り替わるのだが、
これら全てが一縷の希望の余地も無い究極の荒廃世界を示しているのが素晴らしい。
常に「冷たき世界」を意識した、一切の高揚感を与えない余りにも禁欲的な曲展開と合わさり、
如何に美しくとも、如何に聴きやすいフレーズであっても、必ず最終的には絶望と冷気へと繋がってゆく。

人を選ぶ音楽である事は間違いないが、1時間超えの曲も平気であり、Neurosis等を聴いてもなお別の荒廃世界を味わいたい方は聴くとよいだろう。

気に入り度…95/100


DESTRUCTION - Release From Agony ★★★ (2015-09-28 22:24:22)

入り組んだリフワークと恐怖を駆り立てる狂気のリード&ギターソロが実に印象的な、テクニカルスラッシュ。
ただ緻密なだけでなく、孤独が転じて極度の人間不信に陥る寸前の様な②のギターソロ等、「精神を病む」スラッシュでもある。
しかも、各フレーズは複雑かつネガティヴな感情を煽るものながら、曲展開も破綻なく、曲もコンパクト(最長6分46秒)で、リフの連打を味わえる最適なものとなっている。

緻密なリフな連打の齎す快感と同時に、滲み出る不穏さや狂気をも味わえるという、大好物な要素が詰まったアルバム。
個人的な好みではあるが、スラッシュの中でも5指に入ってもおかしくないさえ思う。

気に入り度…91/100

おすすめ…Release From Agony


VEKTOR - Black Future ★★★ (2015-09-24 23:45:41)

このバンド、DestructionやVoivod等、スラッシュの中でも癖のあるバンドとよく比較されるようである。
成程、確かにリフの緻密さと複雑さ、リフ連打の猛烈さはかなりのもので、一聴強引に思えるような所も無くはない。

さて、このアルバムが素晴らしいのは、徒に手数を増やしているのではなく、それら全てがスラッシュ好きのツボを完璧に押さえている所で、
絶妙な刻みを巧みに絡めたリフの連打による快感には堪らないものがある。
更に、それと対照的に配置されたサイバネティックだったり、物悲しかったり、荘厳だったりする旋律も絶妙に用いられていて(トレモロ多めなのも個人的嗜好にマッチしている)、10分を超える長尺曲でも苦にさせないスリリングさもある。
要するに、リフ連打の齎す快感と精神が宇宙を旅しているかのような夢想的空間を味わえる、1枚で二度美味しいアルバム。

個人的には、スラッシュにおいてはSlayerの3rdやMetallicaの2ndに匹敵する位気に入った作品。
テクニカルスラッシュの頂点に位置する…というのは言い過ぎだろうか。

気に入り度…95/100

おすすめ…Accelerating Universe


ALTAR OF PLAGUES - White Tomb ★★★ (2015-08-26 21:37:11)

ポスト/シューゲイザーブラックのお手本のような煙たいプロダクション、
攻撃性は強めながら、邪悪さや寒々しさではなく、神々しいトレモロが放つ退廃的な美を主体とする作品。
例えば、③において初っ端からCastevetの様な荒々しいトレモロで攻め立ててから、精神を圧迫された様な歪んだヴォーカルがえぐいスラッジパートに突入したり、
アンビエント調のパートも少なくなかったりするが、小細工なしの上質のトレモロの雰囲気が素晴らしい。
メロウさを適度に抑え、アトモスフィアと攻撃性を上手くマッチさせているのが気に入った点である。

しかも、それだけでなく、アンビエントパートもトレモロ等のフェードインによってドラマティックに仕上げたり、
テンションが引くパートにおいても、流れを切らずに敢えて荒々しさを残すことで曲全体の神々しさをキープしたりしているなど、
曲展開の面でも飽きさせないアイディアがある。
その御蔭で、4曲50分強という長さも苦にならない。

奇を衒わず、飽くまでトレモロの美やダイナミクス等ブラックのツールのクオリティに拘った、良質のポスト/シューゲイザー系ブラックであり、
WITIR等この手のブラック好きは聴いておくとよいだろう。

気に入り度…93/100

おすすめ…Earth: As A Womb


VEMOD - Venter på stormene ★★ (2015-08-24 19:34:01)

ノルウェーのブラックの1st。

今年Alcest等が所属するレーベルProphecy Productionに加入したという事で、ポストロックやシューゲイザー色の強い作品かと思ったのだが、
オーロラのうねりを思わせる美麗さと北欧らしい冷気を伴ったノイジーなトレモロ、怒りや恨みを滲ませる低めのがなり声等、ブラック要素の強い作品である。
更に、一瞬静謐な星空を見せるような2.の中間部、瞑想により精神的に光に満ちた世界に到達したかのような3.の荘厳なチャーチオルガン等、
アンビエントも大体的に取り入れていて、幻想性を強めている。

リフレインを多用し、情景描写を重視した作品ではあるが、その手のブラックによくある様なぼやけたプロダクションではなく、北欧ブラックらしい耳障りさを残しているのも特徴。
Ulverの3rdにおける超絶なノイジーさが寧ろメロディの烈しさを引き立ている様に、それが寒々しさの演出という点でプラスに作用しており、
アトモスフィアをじっくり味わうよりかは、荒々しく変わるオーロラの夜空に圧倒される感触を受けた。
ノイジーさとアトモスフィアの両立という面で、激情が北欧ブラックの寒々しさに置き換わったDeafheavenとも言えるかもしれない。

普通のアトモスブラックに烈しさが無くて物足りないという人にお薦め。

気に入り度…84/100

おすすめ… Venter På Stormene


MONO - Hymn to the Immortal Wind ★★★ (2015-08-02 00:13:06)

なお、コンセプトは次の通りだと思われる。
 「とある少年と少女は、戦争によって厳しく荒廃した冬を生きる事を余儀なくされていた。しかし、他者に痛めつけられながらも、ある小さなしかし強く生きる木を見て、永く変わらぬものの存在を確信する。二人はその木の周りに小石で目印を付けて自分たちの思い出を託し、再会を願いながら、海へと身を投げた。(2.、3.)
 輪廻転生を経て、二人は新たなる生を受けた。勿論二人に明確な面識はないが、魂の奥底に刻まれた記憶が互いを全くの他人と感じさせず、ある日一瞬だけ視線を交わした時、喜びを感じずにはいられなかった。(4.)
 男は、何度も夢を見る中で、少年と少女が海底で横たわる姿を見る。そこで男は、嘗て少年と少女が再開を誓った地に立つ木の絵を見る。すると男はそこに何かを感じ、彼女との再会を願い、長い旅を決心する。(5.)
  木の夢を見た暫く後、男は長いトンネルで苦しみながらも歩もうとする夢を見る。その夢から覚めると、以前会った女が現れ、『記憶が戻ったら、約束の地へと戻ってきてください』との手紙を渡す。その後再び男は長いトンネルの夢を見て、遂にトンネルを抜ける。すると、そこには小石に囲まれた木があった。その木に触れると、男は前世の少年としての記憶を全て思い出す。(6.)
  それから長い時を経たある冬、ある老女が、以前の記憶と変わらぬ厳しい冬の中、ボートを進める。しかし、彼女は苦難や悲しみを超える存在を知っていた。夢の中、ある約束の通り、とある木と人影を見る。目を覚ました老女は、若かりし頃の、辛くも互いの近いと救いのあった過去を追憶する。(1.)
 長い旅を終え、彼女は過去の辛さと決別する様に、少年と少女の遺灰を川に放つ。そして振り返ると、そこには老人がいた。再会を祝福し、笑い合うと、二人は潰える事のない希望に満ちた旅へと出発する。(7.)」


KRALLICE - Ygg huur (2015-07-31 20:27:26)

今日とある海外サイトにて突然知らされた5thアルバム。

最長6分41秒の6曲という情報を見た時点で今までとは違うだろう…と思っていたら、その通り、アヴァンギャルドさとテクニカルさが際立つアルバムとなっていた。
一聴、アヴァンギャルドさを強めたCastevetみたいな感じで、彼らの売りであるエピックさを敢えて捨てた大胆な方向転換である。
相変わらず独特のメロディセンスのトレモロは用いているが、これまでの壮大な風景を描かせるような圧倒的美麗さは薄く、その点は残念な印象。
②が全体でずっとそんな感じだったので心配したが、③の後半のトレモロの美麗なうねり等を聴いて、トレモロのセンス自体は衰えていない事は伺え、少し安心した。
今後、このアヴァンギャルドさと美麗なトレモロとの融合が進化させられれば、過去の名盤・良盤達に比肩する作品ができるかもしれない…と、期待はできる作品ではある。

おすすめ…Over Spirit


MISÞYRMING - Söngvar Elds Og Óreiðu ★★★ (2015-07-30 22:18:45)

アイスランドのブラックの1st。2015年。

近年、Svartidaudi等優れたカルトブラックを産出し始めたアイスランドだが、今年また新たに素晴らしいバンドが現れた。
陰湿さと背徳感に塗れたトレモロとDSOの『Fas~』にも通ずる理不尽さを醸すようなリフワークを若干シンプルにしたようなものがメインであり、
特筆すべき革新性は余り無いが、カルトブラックとして必要な全てを備えた名盤である。
強いて言えば、⑤辺りで見られる単調に音を刻んでいくミドルテンポのパートがやけに寂寥感を掻き立てたりする所が前述のバンドには無い要素かと思う。

また、フレーズ単体でも素晴らしいが、曲展開やアルバムの流れも良い。
通ずる所が少なからずある『Fas~』は個人的に曲の落差をコントロールしきれていない点が不満だったが、このアルバムはそれよりもコンパクトで、その点はクリアしている。
その飢えで、随所に神秘的なシンセや全てを吸引するようなへヴィなアンビエントを乗せてきて、良いアクセントとなっている。

気に入り度…91/100

おすすめ…Söngur Heiftar


IMMORTAL - Sons of Northern Darkness ★★ (2015-07-24 22:18:29)

2ndで見せたようなブラックらしい寒々しさは大分消え、
代わりにデス的なうねりやスラッシーで猛烈、シャープな刻み、そして硬質なドラムで全てを薙ぎ倒すアグレッションと爽快感を味わえる作風となり、
デス成分強めのメロデスと言ってよいパートも少なくない。
ブラック要素としてトレモロが多少残ってはいるが、刻みリフと結合させたような使い方をしていて、適度な禍々しさを放ちつつも爽快感を全く損ねていない。
また、5thに比べれば曲の長さが多少短くなり、リフのシャープネスを洗練させた事もあり、冗長さが減っているのも好印象。

Keep Of Kalessin等とは違う作風でシャープさを大胆に取り入れた良質なブラック。
メジャーなメタルに接近した後期Immortalの完成形と言っても良いのでは。

気に入り度…90/100

おすすめ…One By One


IMMORTAL - Pure Holocaust ★★★ (2015-07-22 19:55:42)

これを聴く以前、自分は5th『At The Heart Of Winter』しか聴いておらず、
ブラックとメロデスに近い要素を取り入れたリフの質は高いものの、冗長な部分が多い印象を持っていた。
一方で、こちらは1曲最長5分半とコンパクトであり、かつ迸る寒気はその比で無い純然たるブリザードブラックであった。
DissectionやThe Legion等に比べるとストレートな寒さは劣るが、
このアルバムの場合は、恐怖により精神全体を暗黒に叩き音とすような邪悪さを加味しており、全体的な精神の侵食度は何ら遜色は無い。

リフが全体的に素晴らしいのは言うまでも無く、
真性ブラックにマッチした雪崩込む様なドラム、邪悪なメロディとの相乗効果により恐怖を煽る粘度の高いAbbathのヴォーカル等、他の要素も良い。
取分け素晴らしいのが、①等に現れる、リフ以上に極悪かつ極寒のゆったり動くメロディで、悪霊が潜むかの様な濃霧の如き危険な雰囲気を放っている。

気に入り度…93/100

おすすめ…Unsilent Storms In The North Abyss


DEN SAAKALDTE - All Hail Pessimism ★★★ (2015-07-16 19:55:09)

スウェーデンのブラックの1st。
ShiningのNiklas Kvarforthや1349のSeidemannが参加。

ShiningはⅣとⅤを聴き、個人的にプログレ具合が過剰で物足りなく感じたが、こちらは純度の高い紛う事無き鬱ブラック。
純粋なディプレッシヴブラックまでとはいかないが、
精神を黒く染め上げ別人格に変えてしまうようなトレモロや毒ガスを凝縮したかのような刻み等印象的でありながら確実に精神を蝕むフレーズを味わえる。

また、ブラックにしてはノイジーさの少ない音質であるが、芯の通った重厚な音で、それが妙な迫力と陰鬱さを放っており、この手のブラックとして理想的な音質だと思う。
更には、 ③の感情が消え失せていく苦しみの様な物悲しいギターソロ等、普遍的なメタル要素がありながらも、十分な鬱度や濃い瘴気を放っている点も素晴らしい。

インストの①、⑤、⑨はなくても差支えないと思うが、Shiningと共通する所であるNiklasのヴォーカルとプログレ要素が適度に配置されているのも良い。
ドスの効いたがなり声やデス声とノーマルの中間の様な醜いヴォーカル等元々えぐいヴォーカルが優れたリフワークのおかげで更にえぐみを増している。
狂人の心が一瞬狂気を保たまま休息をとるようなピアノや退廃感を煽るブラスも、曲の暗黒性や流れを壊すことなく適度に挿入されている印象。

ShiningのⅣ辺りを聴いてもっとブラック成分が欲しいと思った方は是非。
エクストリームメタルとしての品質をも併せ持った、超高品質な鬱ブラックである。

気に入り度…92/100

おすすめ…La Vinteren Vare Evig


DAWN - Slaughtersun (Crown of the Triarchy) ★★★ (2015-07-14 20:28:25)

スウェーデンのメロディックブラック/デスの2nd。
近年Dan Swanö氏のリマスターで、Century Mediaより再発。

メロディックなスウェディッシュブラックと言えばDissectionであるが、毛色は違えど遜色無い名盤だと思う。
それ程ブラックらしい寒々しさや邪悪さがある訳ではないが、強烈な陽光に照らされた海洋に覆われた世界の開闢の蠢きに直面する様な、荘厳さすら醸すメロディが超一級である。
加えて、単調にトレモロや刻み等一辺倒に終わらず、リフレインの長さと使い分けも的確で、
インストの③を除くと平均10分近くある長尺性も苦にさせず、寧ろメロディを損ねずに陶酔感や退廃を演出している。

この辺の絶妙さといい、急に雪崩込む様なフィルによる切り返しを多用するドラムといい、Weakling辺りに通ずる所があるが、
彼らの様なバンドに影響を与えているのかもしれない。
そういう訳で、長尺なブラックやアトモスフェリックなブラックが好きな人はより気に入りそうなアルバムではあるが、メロディの素晴らしさだけでも味わう価値はあると思うので、純粋なメロブラ好きにも少なからず気に入る所があるであろう。

気に入り度…95/100

おすすめ…The Knell And The World


PARAMNESIA - Paramnesia ★★ (2015-07-03 22:37:25)

フランスのアトモスフェリックブラックの1st。
曲名は1stEPからの通し番号。

フランスのバンドだが、フレンチブラック的な病度やカルトさは控えめで、
自分が見たサイトではAsh BorerやFell Voicesに似ているとも評されていたが、確かにその通りだと思う。
①の5分過ぎの美麗な激流を思わせるメロディックトレモロなどを巧みに交えた本格派カスカディアンブラックで、靄に覆われたかのような音質までも本場に負けず劣らず。
20分強が2曲とこれまたカスカディアンらしいが、フレーズの良さと適度なリフレインの長さでしっかりまとまっており、曲展開の面でも適度な陶酔感を醸す点も好印象である。

一方で、②のアルペジオを交えた不穏なイントロから瘴気的なリフに雪崩込むパート等病んだフレーズも良く、
そういったフレーズとカスカディアンの融合の上手さはPanopticonを彷彿とさせる。
彼らと比べると、怒りを取り除き、寒々しさを増強させた感じである。

弱い所を強いてあげるとすれば、オーソドクスなカスカディアンに対する+αが少ないところだが、この手のブラックが好きであれば十分納得できるクオリティ。
カスカディアン・アトモスブラック好きは聴いておくとよいだろう。

気に入り度…89/100

おすすめ…Ⅳ


LICH KING (2015-07-02 21:40:28)

『Super Retro Thrash』をBandcampで少し聴いたけど、モロRPGのボス戦ですわww
リフ自体は結構良さげなので、このアルバムを普通のスラッシュで聴きたい…
と思ったら、既発曲の8ビットアレンジだったんですね。


ANAAL NATHRAKH - Eschaton ★★ (2015-07-02 19:38:20)

マシンとはいえ、違和感の全く無い豪速のブラストに乗せて叩き込まれるブラックらしい荘厳で禍々しいリフやブルータルな刻みや疾走感を中心とする
グラインド/ブルータルブラック。
全体を迸る異常なテンションや発狂具合、最長5分弱という曲の短さなどからして、ややグラインド寄りである。

先述もしたが、特筆すべきはその異常なまでのテンション。
聴いているとヘドバンのし過ぎで首がもげ、噴出した血液が一瞬で蒸発しそうな程で、史上最もハイテンションでブルータルなバンドの一つと言っても過言ではないと思う。
またそれだけでなく、クリーンヴォイスや印象的な刻みやメロディも適度に交えており、アルバム全体を通して飽きさせない。
最終曲⑨がくどくて無くてもよかったとは思うが、それを除けばブルータルミュージック好き歓喜のフレーズ満載の良盤である。

気に入り度…86/100

おすすめ…When The Lion Devours Both Dragon And Child


YES ★★ (2015-06-29 21:55:55)

『Close To The Edge』しか聴いていないプログレ初心者ですが、このアルバムだけで凄まじいインパクトを感じましたね…
「ベース=縁の下の力持ち」という式が全く当てはまらない多彩なベースプレイはしがないメタラーの耳にも残ります。
RIP


TIAMAT - Wildhoney ★★★ (2015-06-26 19:51:55)

陰鬱なへヴィリフと精神を異世界へ吸引する様な音色の儚いメロディを中心とした、デスドゥームとゴシックの中間の様な音楽性。
一方で、タムを効果的に交えたトライバルなドラミングや薄らとした音色やキャッチーなエレキピアノ等を多彩に使い分けるシンセなど、プログレ的な趣もある。
それがゴシック・ドゥームにありがちな、過度な倦怠感を感じさせず、また耽美一辺倒でもない要因となっており、コンパクト性もあってアルバム全体でも聞き飽きる事は無い。

歌詞に
「In dream's realm can no one die
Sleep safe my little boy」
などとあるが、そんな幻想世界と苦悩と仄かな喪失感を孕んだ現実との狭間に誘うかの様な名盤。
ゴシック好きは勿論、プログレ好きにもお薦めである。

気に入り度…92/100

おすすめ…Whatever That Hurts


THANTIFAXATH - Sacred White Noise ★★ (2015-06-25 19:42:30)

近年では、KralliceやCult Of Fireなど邪悪でノイジーなだけではないトレモロを巧みに用いたバンドが現れてきているが、
このバンドもリフのアイディアの面で全く負けていない。
①の初っ端から聴けるグロテスクに音程が上下するトレモロ、Kralliceの名曲『Dust And Light』のイントロをより寒々しくした様な荘厳な②のイントロ等、
トレモロのアイディアが多彩。
しかも、トレモロのメロディの輪郭自体ははっきりしていながら、要らぬ叙情性を発生させることなく、
あくまで不安や堕落、神秘性等が蠢く、吐き気を催す様な異常世界を保ち続けている点が素晴らしい。

④のイントロ、漂うようなアルペジオのギターを絡めた抽象的な夢の中にいるようなアンビエント調のパート等、
サイケデリックなパートも随所に絡めて飽きさせない工夫もある一方、
ミドルやスローのところに冗長さがあり、折角のトレモロの余韻が退屈に変わる所など、曲展開の面で若干のマイナスポイントはある。
しかし、曲も短めで聴くには十分耐えるし、それを補って余りある優れたリフが満載で、トレモロ好きは聴くべきアルバム。
バンドメンバーに関して名前すら一切不明という、フレンチブラックにも劣らぬ謎っぷりであるが、
上質のトレモロとアヴァンさを持ち、かつ十分なネガティヴィティをも纏った良質なブラックである。

気に入り度…89/100

おすすめ…Where I End And The Hemlock Begins


LYKATHEA AFLAME - Elvenefris ★★ (2015-06-06 16:24:14)

チェコのプログレデスの、Appalling Spawn時代から数えて2nd。

一言で言うと、中近東の神秘的なメロディ漂うプログレデス。
デスメタルらしく、不気味でタイトなリフや甲高いスネアが心地良い豪速ドラム、ディープなガテラルを主軸とするが、
同じくエスニックなNileやBehemoth等と比べると、シンセや展開の大仰さ、長めのランタイム等プログレ度合が高めである事を特徴とする。
アルバムの締めに至っては、11分にわたる楽園を彷彿とさせるシンセインストだったりする。

また、手数やブルータリティこそ柔らかな音色のシンセや神秘的なクリーンギターによって緩和されているとはいえ、デスメタルパートも著名なバンドに比べても遜色は無い。
不要な変拍子とか複雑なフレーズはあまり使わず、リフのうねりやアトモスフィアに重点を置いているのも個人的に好印象。

ドラムを同じくする、これまたエスニックなブラックバンドCult Of Fireの2ndも素晴らしい作品だったが、
こちらもエクストリームメタルとプログレ・エスニックさを上手く融合させたアルバムだと思う。
あまり売っている所は見かけないが(自分はネットでレーベルから直接購入)、エスニックなメタル好きは是非。

気に入り度…85/100

おすすめ…Bringer Of Elvenefris Flame


GORGUTS - Obscura ★★ (2015-06-01 19:38:11)

スピードや手数ではCryptopsy等のバカテク勢に及ばぬものの、理解不能な展開やタイミングで繰り出される病的にうねり乱高下するリフや退廃的なメロディが実に気持ち悪い。
間違った方法で悟りを開いてみようとしたら精神が半壊してしまったかのようなサウンドで、
Meshuggahが精密過ぎるオーバーテクノロジーな機械の如き変態さだとすれば、こちらはより生々しい有機的な気持ち悪さである。
そんな音を60分以上聴かされるものだから、こっちの脳までおかしくなりそうであり、多分理性で全容を把握しようとするのは不可能であろう。
また、アヴァンギャルド/テクニカルデスというと、安易でありきたりなシンセやネオクラギターに頼るバンドも少なくない中、
殆どリフとリズムワーク、不気味なリードだけでテクニカルさに留まらない変態性やグロテスクさを創出している点も個人的に気に入った点である。

変態好きは必聴、それ以外はまあ聴かなくても…というある意味極端なアルバム。
不穏な音のドロドロ感に快感を覚える様な「物好きな方」は、再発盤が残っている内に是非。

気に入り度…85/100

おすすめ…Obscura


SLAYER ★★★ (2015-05-23 00:02:05)

Jeffが亡くなり、Nuclear Blast移籍後初となる新作アルバムの11th『Repentless』が今年9月11日に発売の模様。
Jeffの遺作曲『When The Stillness Comes』が視聴できますが、
齢50程のおっさん達による、しかもメンバー2人が離脱してしまった後とは思えない、相変わらずの「凄み」ですね…
個人的には、South~やSeasons~が若干モダン化した感じかなと思いました。
http://www.nuclearblast.de/en/label/music/band/news/details/3880596.3400479.slayer-announcement.html


COBALT - Eater of Birds ★★★ (2015-05-10 15:26:55)

USAのブラックの2nd。

ブラックらしい背徳感を纏ったメロディックなトレモロだけでなく、
スラッシーな刻みや効果的なタム等を用いるなどして時にトライバルさを演出するドラムも交え、ある種異様に思える高揚感を演出している。
その異様な雰囲気は、全ての生物が闘争本能と狂気に駆られ、一つの弱肉強食の世界に組み込まれたかのようである。
曲展開の方でも、後半で楽器陣がうねり雪崩込む等絶妙で、より一層闘争本能を煽る。

同じ曲名『Ritual Use Of Fire』を冠されたアコギ主体で(ほぼ)インストの③、⑧、⑩は無くても良かったとは思うが、それを除けばアルバム全体の流れも良い。
終盤で無機質な哀愁の漂う8.を挟み、⑨、⑪で再び闘争本能を煽るブラックに戻り、戦歌的なメロディでアルバムを終える様は、
闘争の世界で傷を受け続けてもなお世界の流れと闘争本能に抗えず、終わり無き争いを続けるかのよう。

USAブラックの中でもかなり高く評価されている作品らしく、それも納得のクオリティ。
余程プリミティヴ志向とかでなければ、ブラック好きはもとより、プログレッシヴなエクストリームメタルを好む人全般にお薦めである。
気に入り度…93/100

おすすめ…Eater Of Birds


ANNIHILATOR - Alice in Hell ★★ (2015-04-17 19:32:05)

2ndでも同様に書いたが、1stたるこのアルバムの時点で既にシャープさとテクニカルさの塩梅が絶妙で、ちょっとした刻みの変化やアクセントの付け方等は負けず劣らず。
しかし、全体的な雰囲気や曲展開の面では違いも見られる。
曲展開の複雑さに関しては、凝り過ぎな所もある為か、2ndよりは散漫な気もする。
一方で、狂気を滲ますヴォーカルも相まって独特の不穏さもあり、過剰な曲展開もそこまでマイナスになってはいない。
寧ろ、美しいプレリュードをやっておきながら、本編のイントロでもまだ複雑に展開していく②等、良い意味で頭がいかれたシアトリカルな展開を演出している所も多い。
全体の完成度は次作に譲るが、癖と複雑さのあるフレーズやリズム、曲展開を難無く聴かせる手腕だけでなく、独特の淀んだ空気をも味わえるテクニカルスラッシュ。

気に入り度…81/100

おすすめ…Alison Hell


GORGUTS ★★ (2015-04-11 12:29:47)

>>4
いつ届くか分からないのは確かですね~
まあ、別に急ぎで手に入れなければならんものでもないですし、多少は割り切って気長に待ちます。


9mm Parabellum Bullet - Termination ★★ (2015-04-04 16:07:57)

縦横無尽に弾きまくるリードギターとハイテンションな疾走感、それに反するように懐メロで歌う脱力的ヴォーカルや一瞬の静寂など、
それらの要素を違和感なく纏め上げる力量は1stにして既に現状の最高傑作と言える出来。
個人的には、他の作品に比べて、特定の要素に特化しすぎてないからかと思うが、そういう所は何が正義か分からなくなった退廃の世紀末のようである。

また、アルバム全体の構成も良い。
色々なヴァリエーションの曲を散りばめていて全体を聴くのに飽きさせないし、
大局的には、疾走とキャッチーなメロディを主体とする前半、退廃と叙情を歌う後半と、ゆっくりと崩壊に向かう世界のよう。
そして最後に爆走曲で締め、世界の悲惨な末路を示すという、ストーリー的な感じである。

ポストハードコアをベースに、メタルや歌謡曲など色々と鍋に入れて煮込んだ結果、独自のロックができてしまった、闇鍋みたいなアルバム。
ありきたりなメロデス等々よりずっと面白い作品である。

気に入り度…82/100

おすすめ…Termination


LASTER - De verste verte is hier ★★ (2015-03-18 17:49:06)

オランダのアトモスフェリックブラックの1st。2014年。

靄の掛かったようなややメロディックなトレモロのリフレイン主体というアトモスブラックの王道。
Kralliceのメロディックさを抑え、更に濃霧を掛けた感じと言えるかもしれない。
王道的な作品ではあるが、全体的な音の暈し方といい、リフの押し引きの仕方といい、アトモスブラックとしての音響の使い方がこの手のブラックの中でも優れていると思う。
取分け、①の儚いギターとドラムで疾走する所を始め、旋律と暈しのバランスが絶妙で、敢えてフレーズやリズムの輪郭を抑えたトレモロの使い方が素晴らしい。
「Obscure dance music」とBandcampにて自らを評するが、踊っているのは濃霧で覆われた、漣の海で不気味に踊るジャケットの如き異形の聖霊であろう。
アトモスブラック好きの方は是非。

気に入り度…85/100

おすすめ…Alles Wat Mij Bevalt, Ontvalt Me


JAKOB - Solace ★★ (2015-03-12 16:58:02)

ニュージーランドのポストロックの3rd。

一言で言えば、王道だがハイレヴェルなインスト・ポストロック。
シンセにも似た音色のギターによる揺蕩うような心地良い単音メロディが素晴らしく、催眠効果のある幻想世界を作り出している。
また、一聴幻想を壊しかねない焦燥感や躍動感を煽りながらも、逆にそれが聴き手の幻想に新たな光と彩りをもたらすリズムワークが絡むのも印象的。
弾ませ過ぎな所も一部あるが、別世界への切望に駆られ、暗闇の中の微かな光の方へと走っていくようであり、全体的にはそこが更なる強みとなっているように思う。
IsisやToolがポストロック化した感じでもある。
割と王道的でオリジナリティはあまりないかもしれないが、ポストロック或いは周辺ジャンルが好きな人の多くに受け入れられるであろう良盤である。

気に入り度…84/100

おすすめ…Malachite


CULT OF FIRE - मृत्यु का तापसी अनुध्यान ★★★ (2015-03-11 16:53:22)

チェコのブラックの2nd。

メロディックで比較的オーソドクスなブラックをベースに、ブラックメタルの凍えるようなカルト性とオリエンタルな神秘性という二つの宗教的要素が上手く混ざる。
宗教的な旋律を悪用したブラックという事で、DSOの3rdにも通ずる所があると思う。

リフに関しては、トレモロフェチ歓喜のメロディックなトレモロもブルータルなリフも両方素晴らしく、バランスも良い。
また、所々用いられるシタール(かな?)や荘厳なシンセ等のアレンジも過不足無く、しかも良い意味での胡散臭さを醸していてこれまたグッド。
ヴォーカルは普通のがなり声を主体とするが、バックの旋律の御蔭で何か死と悟りとへ誘う呪文の様にも聴こえる。
個人的にではあるが、神秘的なクリーンギターを主体とする⑧を聴き終えた頃には、
内的な精神世界に新たな境地が生まれそうな感じであった(ヒンドゥー教の事はよく知らないけれども)。

オリエンタルな要素を配したブラックとして、かなり高品質なアルバム。
ドラムのTom Coronerは同じくオリエンタルなプログレデスバンドLykathea Aflameでも演奏しており、東洋の音楽への造詣が深いのかもしれないが、
それをブラックに巧みに落とし込む力量に感服できる作品である。

気に入り度…92/100

おすすめ… संहार रक्त काली(①)


S.V.E.S.T. - Urfaust ★★★ (2015-03-01 00:51:34)

まず音質に関して、ノイジーさは中々、荒目で音量のバランスが多少悪い気もするが、ブラックとして普通に許容範囲である。
曲展開を追うのに若干支障をきたすものの、逆にそれが最大の特徴であるカオティックさを蔓延らせていて、このアルバムにとってある意味で理想的な音質。
そのカオスはかなりのもので、凄まじすぎて最早善悪を超越したような、時に神々しくもある存在にまで昇華しているように思える程。
また荒い音質とカオスの後ろから微かに聴こえるフレーズも素晴らしく、
ブラックらしい荒涼としたリフ、この世全ての概念から乖離したかのような浮いたシンセ的音色のメロディ等、印象的なフレーズが随所に聴ける。

曲者揃いのフレンチブラックの中でもアングラチックでかつ癖の強い作品ではあるが、個人的にはフレンチブラックの金字塔の一つではないかと思える程気に入った。
DSOの『SMRC』や『Kénôse』辺りと同等レヴェルの評価を受けてよいアルバムだと思う。

気に入り度…96/100

おすすめ… Putréfiance Rédemptrice


NEVERMORE - Dead Heart in a Dead World (2015-02-27 22:43:55)

個人的に叙情パートを中心に多少だれる所もあるのは気になったが、
華々しさはないものの、ダークで美しい叙情性と正確無比なギターによる圧倒的なへヴィネスが共にハイレヴェルである。
へヴィネスに関しては、ただ心地良いだけでなく、ガリガリとした擬音が相応しいグル―ヴ、疾走と絡めた薙ぎ倒す様な感じ等、様々な手法で飽きさせない。
スラッシュやプログレ等、様々なジャンルの良い所をミックスした独自のメタルで魅せる良いアルバムである。

おすすめ…Narcosynthesis


LAKE OF BLOOD - Omnipotens Tyrannus ★★ (2015-02-25 20:45:01)

USAのアトモスフェリックブラックの2nd。
現在CDでのリリースは無いが、Bandcampにてname your priceで配信。

カスカディアンにも通ずるようなトレモロだけでなく、随所で荒々しい刻み等も見せたりしているのが印象的。
リフレインの多さに加え、エクストリームメタルとしてのダイナミクスも絡めてアトモスフィアを醸成している感じである。
靄の掛かったような雰囲気醸成もしっかりしていながら、適度に尖ったアトモスブラックとして良い音質もあり、
神々しい中にも荒々しさもあって、霊的な静寂世界の中にも確固として存在する有機的な動きの様でもある。
薄らとした音色のシンセによるアレンジも理想的な具合で、神々しさに肉付けしている。

前作では結構アヴァンギャルドな事もやっていたようだが、今作はそういった所は余り無く、強いて言えば所々にカルトブラックじみた不穏なリフがあったりする位。
曲展開がくどい所も若干あり、7曲79分弱という長めの総ランタイムを聴き通すのがやや辛いのはネックだが、アトモスブラックとして普通に良いアルバムである。
神々しいまでのアトモスフィアとエクストリームメタルとしてのダイナミズムを両立した良盤。

気に入り度…90/100

おすすめ…In Wells Of Shadow


ESOTERIC - Subconscious Dissolution Into the Continuum - Arcane Dissolution ★★ (2015-02-23 21:56:46)

②のエンディングから繋がる、深淵の空虚な闇の如きインスト。


ESOTERIC - Subconscious Dissolution Into the Continuum - The Blood of the Eyes ★★★ (2015-02-23 21:55:30)

深海の様に暗くも神秘を湛えた世界を描くイントロは本作最大のハイライトである。
後半では打って変わって無慈悲にへヴィリフが刻まれ、精神を融解させる。


ESOTERIC - Subconscious Dissolution Into the Continuum - Morphia ★★★ (2015-02-23 21:54:54)

突如として精神を別世界に持っていくようなイントロがまず印象的。
中盤からはへヴィリフの中に時々霊的なメロディが漂う。
後半では重力の歪みを生じさせるが如き重量溢れるギターの刻みで魅せてくれる。


ENVY - 君の靴と未来-all the Footprints You've Ever Left and the Fear Expecting Ahead ★★ (2015-01-26 22:54:48)

激情をベースに、哀愁、儚さ、浮遊感、寂しさ等々が鬩ぎ合い、幾重もの感情が聴き手に感動と昂揚を与える作品。
非バックビートを上手く交えた、起伏と躍動感に富んだリフ&メロディとリズムワークが、複雑な感情を引き起こし、激情と共に高め合っているようにも思える。
静と動の切り替えも巧みであり、全てにおいて優れたポストハードコアで、
中でも、焦燥感に急き立てられて激情を発散させずにいられないような僅かに悲しみを湛えたリフと、寂寥感や清浄さを醸す静パートが非常に気にいった。

成程、確かにConvergeの傑作『Jane Doe』からカオティックさを抜き、洗練した感じとも言える(奇しくも、どちらも2001年作)。
近年はポストロックに接近したメタル・ハードコアも増えてきたが、21世紀の始まりにしてその完成形を示した点でも偉大なアルバムであろう。
激しくも美しいトレモロ等メタラーにも受け入れられる要素も多い作品で、ハードコアだけに留めておくのは余りに勿体無い。

気に入り度…92/100

おすすめ…Left Hand


DEATHSPELL OMEGA - Mass Grave Aesthetics - Mass Grave Aesthetics ★★★ (2015-01-25 20:34:07)

19:43という大作の中で、DSOの十八番、カオティックと退廃が渦巻くリフが存分に味わえる名曲。
瘴気が人間の理性と感情を黒く染め、狂気に駆られた人々によって世界が荒廃していく様を見ているようである。


DEATHSPELL OMEGA - Paracletus ★★★ (2015-01-24 22:24:33)

三部作の最終作。アルバムタイトルはギリシャ語で「聖霊」の意とのこと。

10曲43分という短さは意外であるが、曲間が繋がっていたり歌詞カードの歌詞が歌っている順になっていなかったりと、
アルバム1枚で一つの作品として聴かせる意図が感じられ、そういう意味では確かに大作志向とも言える。
内容に関しては、4thで見せた予測困難なリズム&リフワークを継承しつつ、『Kénôse』の人の理性を犯すような背徳性と混沌とを上手くミックスしたものとなっていて、
歌詞にもあるが、神格を帯びた存在が破滅の存在に変わっていくような不条理がアルバム全体から迸っている。
曲展開の唐突さが僅かに残ってしまったのは残念であるが、
前作で不満の素であった静パートの多さは改善され、『Kénôse』のような神秘性の発露に回帰したのは個人的に嬉しいところである。

やはりと言うべきか、今作も歌詞は難解。大意は、
「信者達は、救済を求めて聖霊を呼ぶ(①)。
しかし、地に堕ち苦しむ聖霊は人々を守護する事ができず、人々は恐怖に怯え続ける(②)。
地に堕ちたと言えど、聖霊の神格は不変で、苦痛を抱き叛逆を決した聖霊が破滅を齎す(③)ので、再び人々は救済を祈り、神格は分裂しようとする(④)。
かくして人々は真実を語らぬ神により錯覚を起こし、信仰を持ち救済を望む者と荒廃の中に生き続ける者とに分かれていく(⑤)。
信者達による再びの救済を求めて呼ばれた(⑥)聖霊は、神格を持ちながら、荒廃を望む者となっていた(⑦)。
その最中で荒廃を強いられた者の心には世界の破綻の火種が燻っていく(⑧)。
遂には荒廃に耐えられぬ者達の叛逆により神の秩序は崩壊する(⑨)。
結局、世界から信仰を持つ者がいなくなり、世界は神にとっての『地獄』となるのであった(⑩)。」
『Kénôse』で言及された神性放棄と深い関連がありそう。

三部作のフィナーレとして相応しいアルバム。
内容も歌詞もマンネリに全く陥る事無く、かつクオリティを保ったまま三部作を完結させた彼らの凄みを余すことなく味わえる作品である。

気に入り度…93/100

おすすめ…Abscission


DEATHSPELL OMEGA - Fas - Ite, Maledicti, in Ignem Aeternum ★★ (2015-01-24 02:28:27)

三部作の二作目で、アルバムタイトルは「神法―呪われ、永劫なる業火へ」という意。

3rdでは濃密であったブラックらしい寒さや荘厳さは大分減り、
異形の神を讃え、蠢く蟲を呼び出すが如きカルティックさやカオティックさが、これに先立つEP『Kénôse』にも勝る程に際立つようになった。
予測不可能なリズムと奇怪なリフ捌き、そして不条理に変わる曲展開等々を以て聴き手を翻弄し、精神を思索と混乱の狭間へと誘う。
硬質かつ激速なドラムも凄まじく、神の偽りへの糾弾或いは神の無慈悲さを象徴するかのようである。
フレーズの切替が唐突過ぎて悪い意味で違和感を覚えたり、静パートが長過ぎる所も少なくなかったり等、三部作の中では粗が目立つとはいえ、
アヴァンギャルドさとブルータリティを両立したブラックを求める人には堪らない作品。

さて、三部作の二作目という事で、相変わらず歌詞も難解であるが、今作の大意としては
「神は現世において人間に苦行を与え(②)、その為に人間は救済を求めて信仰を抱く(③)。
それに抗う者は、周りから孤立した存在として、試練を生きて受けねばならない(⑤)。
故に神に通ずると称する者は、『屍の如く絶対服従を誓え』と人々に説く(①)。
しかし、真の救済とは苦痛を破壊する事により得られるものであるから、それを与える神とは、打破し決別すべきものである(④)。
即ち、神が人間に与える苦痛とは単なる死と恐怖でしかない(⑥)。」
みたいな感じかと思われる。
苦行による信仰の無益さ、であろうか…

気に入り度…85/100

おすすめ… Bread Of Bitterness


CONVERGE - Jane Doe ★★ (2015-01-09 18:22:14)

カオスなリフ捌き、予測困難なリズムワーク、そして殆ど喚いているだけに近いヴォーカルとアルバム全体に亘って混沌や狂気が漂い続ける。
しかし一方で、キャッチーなリフや奇怪で不条理なメロディを交えた複雑な曲展開をも併せ持ち、喜怒哀楽を含む幾つもの感情が渦巻く形容し難い心情に陥るかの様である。
それだけに、アルバムラストにおける、混沌から解放され、何かを悟ったかの様な荘厳めいた単音メロディが光る。
アルバム後半になるにつれ、不穏さを増していく、アルバム全体の構成も見事である。
推測ではあるが、混沌から最後にハイライトとなる必殺フレーズを持ってくる展開等、Between The Buried And Meの『Colors』辺りに影響を与えていそう。

気に入り度…84/100

おすすめ…Jane Doe


BEHEMOTH - Demigod - Sculpting the Throne ov Seth ★★ (2015-01-05 21:55:32)

ブルータリティ渦巻くリフの中に現れる、消え行くようなハーモニクスやオリエンタルなアコギのイントロを始めとするアイディア豊富な良曲。
アルバム全体で、こういった曲がより多ければ更に良かったかも…


ANNIHILATOR - Never, Neverland ★★ (2015-01-05 19:27:08)

疾走こそ少ないが、シャープさとテクニカルさの塩梅が絶妙で、テクニカルさがリフやリズムワークの巧みさに繋がっている。
滅茶苦茶心地良い細かい刻みの効いたリフ、偶に出てくる美麗なクリーン等による展開での揺振り等、
全体的に癖と複雑さのあるフレーズやリズム、曲展開を難無く聴かせる手腕が見事である。
前作1stでもそれを存分に発揮してくれたが、一方では過剰なまでに凝った曲展開もみられた。
しかし本作ではそれが大きく改善され、よりワンランク上のテクニカルスラッシュに仕上がっている。
無機質さと熱さ、時に妖しさをも併せ持つ名手Jeff Watersのギターワークは、スラッシュひいてはメタルにおける理想の一つとも言えるのではないだろうか。

気に入り度…87/100

おすすめ…The Fun Palace


GRIM FUNERAL - Abdication Under Funeral Dirge ★★★ (2015-01-03 23:26:38)

スペインはバルセロナの独りブラック。2013年の2nd。

5曲中4曲が15分以上、葬式ブラック等々の触込みから、聴く前はNorttみたいなのを想像していたが、以外にも比較的「まとも」で高品質なデプレブラックである。
単調かつ執拗なリフによる時間感覚を失わせるようなトリップ感と、
慣れない人には苦痛極まりない長尺具合(①20分②16分③25分④15分)によりリスナーの精神と希望を削りにかかる。
出口無き洞窟を独り彷徨う様な、心身共に救いのない世界にいるというよりは、身体は健在なのに精神が明らかにあるべき状態でない様な感じだろうか。

長尺による催眠じみた感じも良いが、何より素晴らしいのが、儚く、しかし存分にメランコリックなギターである。
特に、所々に入る全てを死に向かわす様な、エコーのかかったような美しさと憂鬱さ極まるギターメロが堪らない。
ドラムレスになるパートを絡めた切り返しが全体的に多く、フレーズを十二分に味わいきれない所もあるが、
生と死の狭間で苦しむ絶望の様であり、これはこれでありかとも思え、ドラムレスのメロディの美しさと陰鬱さを際立たせてもいる。
正に音楽による全人類への生前葬といった趣。

人をそれなりに選ぶアルバムだとは思うが、Burzumの『Hvis ~』やWeakling等が好きな方は大丈夫かと思う。
それでも単調気味かつ曲がかなり長いので、慣れと多少の覚悟は必要かもしれないですが…

気に入り度…96/100

おすすめ…Grim Funeral Elegy Into Twilight Of Humanity


ALI PROJECT - 薔薇架刑 ★★ (2014-12-25 00:52:20)

シンフォブラック等にも劣らぬ華美なシンセと物悲しいストリングス、そして俗世から離れた壮麗な箱庭にトリップしそうな耽美的かつ妖艶なヴォーカルを中心に据えた、
「ゴシックロック」。
元々ローゼンメイデンのop(①②⑩)目当てで買ったので、それらの曲が気に入ったのは勿論だが、4.のように幻想的でどことなく古風な曲など他の曲も気に入った。
アップテンポにより更に際立つ華美さ、物悲しくダークなストリングス等、色々な音楽性を見せてかつそれらを全て纏めきったアーティスティックな所もあり、
ローゼン好きという事を差し引いても、純粋に一枚のアルバムとして良い作品である。
アリプロは他に『私の薔薇を喰みなさい』や『凶夢伝染』位しか聴いてないので適当な事は言えないが、彼女らの良い所が凝縮した良盤ではないだろうか。

気に入り度…88/100

おすすめ…聖少女領域


CASTEVET - Mounds of Ash ★★ (2014-12-18 22:41:27)

USAのブラック/ポストハードコアの1st。現在は残念ながら解散してしまっている。

Profound Loreに所属していた事、KralliceのColin Marstonがレコーディングスタッフで参加した事から推測されるかもしれないが、
メロディックな叙情トレモロを多用したブラック。
かといって、Kralliceの二番煎じだったり、Krallice程叙情性丸出しだったりする訳ではなく、
火の粉や風で舞う塵芥を思わせるノイジーなギターの刻み等を用い、通常のメタルやハードコアの攻撃性と躍動感がトレモロに上手く合わさっていているのが特徴である。
それらが嵐や火山の噴火のような自然のダイナミックな動きを思わせ、しかもトレモロの叙情性を減じさせていないのが素晴らしい。
寧ろ、①のように両者が引き立てあい、高揚感と陶酔感を同時に味わえ、減じるどころか相乗効果を生んでいるようにも思える。

シャープでメタリックな刻みもあるという点からも、PLの中では攻撃性などメタルやハードコアのトラディショナルな要素を重視した作品。
トレモロも多用した作品とはいえ、PL所属の中では異色とも言えるのではないかと。
トレモロフェチよりかは、より一般のエクストリームメタラーの方に受け入れられそうなアルバムである。

気に入り度…83/100

おすすめ…Red Star Sans Chastity


TRIUMPHATOR - Wings of Antichrist ★★ (2014-12-17 20:48:19)

曲の8割位は占めているブラスト、ブルータルリフ、そしてがなり声に呻き声と悪魔の咆哮を魅せる名手Ariochのヴォーカルと、あらゆる要素から邪悪と残虐が迸る。
⑤以外はほぼブラストで疾走していて、曲毎の個性などはあまりないが、
ブラストにユニゾンした単音リフ等が放つ圧倒的な邪悪と残虐に身を委ねればそんなことはどうでもよくなる。
また、他から少し浮いたようなキュルキュルした狂気のギターや、
やはり邪悪極まりないがブラストに比して緩やかに動く(ブラックメタラーにとっては)心地良いメロディなどもあって、
圧倒的な邪悪と残虐さを彩り、かつ通して聴くのに飽きさせないものとなっている。
Funeral MistやMardukがかなり引き合いに出されているが、Mardukは未聴故にFuneral Mistのみの比較で言うと、
彼らよりは邪悪さは低め、ブルータリティと荘厳さでは上である(尚、両者ともこれらの要素においてブラックトップレベルではある)。

最後に、本編でもやばいAriochのヴォーカルだが、オリジナル盤最終曲の無音後の咆哮は更にえげつない事になっている。
全人類の憎悪の叫びを掻き集めたような凄まじい禍々しさで、ブラック史上最凶のヴォーカルの一つである。

気に入り度…86/100

おすすめ…Infernal Divinity


SVART CROWN - Witnessing the Fall ★★ (2014-12-15 23:56:11)

マッシヴな音像やアンサンブル、吠える様なドスの利いたヴォーカル等、ブルータルなデスメタリック成分が強いのが特徴。
効果的なアルペジオ等フレンチブラック特有の不穏さや混沌さを纏いながらも、それらにより放たれる高純度の純粋な闇が混沌すらも塗潰す程に荒れ狂う様である。

硬質で無慈悲なリフと不穏なトレモロの組み合わせ方も巧みで、近年のDSOにも匹敵、或いは超えているとさえ思える暗黒のリフ捌きは見事の一言。
DSOのように神性は無いが、それを補って余りあるどす黒さである。
曲の長さについても、コンパクトかつ各曲に見せ場があって、ブルータル色が強いながらもアルバムを通して飽きず疲れずに聴ける。

フレンチブラック好きには勿論、デス好きにもお勧めできるアルバム。
前者ならDSO、後者ならUlcerate辺りを気に入った人ならこの作品を楽しめると思う。

気に入り度…90/100

おすすめ…Colosseum


DEATHSPELL OMEGA - Kénôse ★★★ (2014-12-14 21:27:12)

混沌を表現しているどころか、混沌をそのまま音にしてスピーカーから新たな混沌を生み出し、一方で人間の理性や感情を御しにかかるような自由自在のリフ捌き、
それが本当に驚異的としか言いようがない凄まじさである。
ブラストを軸にしたブルータリティと複雑怪奇なリズムワークのドラムと絡み合い、
トレモロや神秘的なクリーンギター・アルペジオ等々を緻密に組み合わせた神がかったフレーズワークを魅せてくれる。
①6:46からの金物を絡めた極限までに背徳的なリフワークを始め、筆舌に尽くしがたいものがある。

EPではあるが、3曲36分(Yesの『Close To The Edge』より僅かに短いだけ)という実質的にはフルレングスといってよい大作である。
しかしながら、テンポやトーンの落差の付け方あるいはリフの変動など、36分をコントロールしきるテクニック&アイディアも実に優れていて、全くだれることはない。

歌詞については、前作以上に抽象的かつ難解だが、3rd~5thの付記という事で、それに関連したような言及がなされている(と思われる)。
神の教義と人間の理性の関連(3rd)とか、神がもたらす災いや人間の行動原理に与える影響(5th)等が一例。
…相変わらず、歌詞を全部訳してみたはいいが、全ては理解できていない筈ですけどね。

兎に角、今年買ったアルバムの中で最高の作品で、更には今迄聴いた全てのアルバムの中でも5本の指に入るレヴェル。
メタル史上でも最高傑作に近い作品であり、EPに関して言えばメタル史上最高の作品であろうかと思う。

気に入り度…99/100

おすすめ…Ⅰ