また、そうして精神が破壊され、抜け殻となってゆく人物を象徴するかのように美しくも儚いストリングス、後半になると現れる浮遊感のある儚いギターも印象的である。 序盤で精神を崩壊させ、最後には諦観の色を強めていくという、アルバム全体でストーリーになっているかのような展開もドラマティック。 ④の歌詞「Not even the dignity of suicide is given to me」や、 ディスクに印字された「生きる事は苦しむ事、生存とは苦痛の内に意味を見出す事」というNietzscheの言葉、 それらが諦観と鬱な結末を示しているようにも思える。
間違いなくKralliceを代表する名曲。 最初からクライマックスレヴェルの極上リフの嵐でどのパートも凄まじいが、ドラムが消えてトレモロだけが虚しくしかしこの上なく美しく響き、天上へ向かうような旋律へと繋ぐ14:55からが格別。 2ndの神曲『Monolith Of Possession』レヴェルと迄はいかないが、Kralliceの醍醐味を存分に味わえる。
「Subconscious」(無意識)というタイトルの単語、「As times extinguishes us, so we became it」というブックレット裏表紙の文章などから、 死に際して自らの意識が時の流れと集合的無意識の中に消えてゆき、その一部となる、 みたいな状況が描かれているのではと思った(人々の意識は皆繋がっているみたいな話もありますしね)。 ③の14:30からの引き摺る様なフレーズから、人間の認識できる意味を失い、何者であるか曖昧で抽象的な存在を表したような約5分のインスト④への展開が顕著にそれを表しているかと。 以上、心理学を知らぬ者が音と字面による推測だけで書く戯言的蛇足でした。
ブラックとしても、様々なメタルの良い所を凝縮したエクストリームメタルとしても質が高いアルバムで、 ブラックの良さを殆ど消さずにキャッチーさと両立できている作品の好例になっている。 そういう意味では、スタイルは違うがKeep Of Kalessinの『Armada』等と同様、21世紀のブラック像の一つを示した作品と言っても過言ではないと思う。