大名盤Focusで見せたような摩訶不思議で地球外生命体が蠢くような独特の世界観、そして複雑な楽曲を難なくこなす演奏陣は相変わらず素晴らしい。 前作と比べ歌メロとギターソロのメロディが少し分かり易くなった気がするが、何ら世界観を損ねてはおらず、「Focus」に衝撃を受けた人なら(勿論「Focus」未聴の人も)間違いなく楽しめる。 「How Could I」級のインパクトがある曲はないけれども、アルバム全体を通してクオリティの高い曲が揃っているので殆ど問題なし。
初期の比較的ストレートなオールドスクールデスから後期のテクニカルデスへと移る過渡期のアルバム。 そのためか、テクニカルな面よりもデスメタルらしい攻撃性やグロさが以降の作品と比べると色濃く出ている(勿論この時点で既に十分テクニカルだが)。 Steve DiGiorgioの不気味なベースの音色もそれに拍車をかけている。 一方で、時折挿入される流麗なリードギターや複雑な曲展開は既に違和感なく導入されており、後期路線の基盤も感じた。
EPではあるが、3曲36分(Yesの『Close To The Edge』より僅かに短いだけ)という実質的にはフルレングスといってよい大作である。 しかしながら、テンポやトーンの落差の付け方あるいはリフの変動など、36分をコントロールしきるテクニック&アイディアも実に優れていて、全くだれることはない。
延々と続くスローテンポ、歪みジリジリとした音色のギター、3曲で54分強という長さ等、基本となるツールは通常のフューネラルドゥームのもの。 しかしながら、通常のフューネラルドゥームと比して、暗黒性が薄めで、代わりに、神秘的な要素が多くを占める。 アートワークにて「EA TAESSE IS BASED ON THE SACRAL TEXTS OF ANCIENT CIVILISATIONS.」とあるが、 これが示唆する通り、失われた古代文明への憧憬や畏怖を強く感じさせている。
この作品から彼らは単なるシンフォニックブラックを超えた「sophisticated Black Metal Art」を標榜するようになったわけであるが、 このアルバムはブラック成分が依然強く残り、暴虐と邪悪の中に現れる余りに美しい神聖さに、聴いている間ずっと圧倒されっ放しになる。 しかもただ邪悪や神聖であるだけではなく、人間の苦悩に訴えかけるような歌詞、非常に緻密で複雑なフレーズと曲展開も本当に素晴らしく、芸術と呼ぶに相応しい出来である。 4thに比べると、人智を超えたかのような凄まじいリフ捌きは少ないが、代わりと言っては何だが、ブラックとしての凄まじさが充分過ぎる程あり、全く問題は無い。