メタルけいしょうさん、お久し振りです。さてその American Woman ですが、コレはランディが B.T.O.を始める前に居た THE GUESS WHO による1970年のヒット曲で、ランディも作曲に加わっています。ゲス・フーは洋楽ロック/ブルースのカテゴリにありますからご覧下さい。実は自分が初めてここへ来た10年前当時、カナダのHRバンドがラッシュとトライアンフ程度しか無かったため、こりゃいかんと思ってB.T.O.とゲス・フーを登録してしまったという次第。
シングルとしてはLost inside Your LoveのB面としてリリースとなったジョーイ作のパワーポップ、若しくはタイトル通りのハードポップテューン。全盛期のバッドフィンガーを求める向きにはイマイチかもですが、ジョーイらしくギターオリエントで個人的には好みです。さてここで"非難"し"懲らしめ"ている対象は誰でしょう。某悪徳マネージャー? おいおいまだ引き摺ってたとか?
アルバム"ガラスの恋人"からもう1つのシングルA面曲"ガラスの恋人"です…あちゃー、"涙の旅路"で見た悪習の再来ですね。でもそんな邦題のいい加減さに反してジョーイ本来のポップなメロディセンスが発揮され、トムの"Lost inside Your Love"と双璧を成す名曲に仕上がっています。全米チャートでは最高69位と"Baby Blue"以来7年ぶりのtop100入り、当人、ファン共々完全復活への希望の光が見えていたことでしょう。対して本国で掠りもしなかったのは致し方なしですかね。
発表当時のアルバムラストを飾る、トム作のBADFINGERらしい美しいバラード。シングルLove Is Gonna Come at LastのB面でもありました。スタジオver.はトムのヴォーカル、ストリングス、NICKY HOPKINSのピアノのみというシンプルな構成です。ひとまず5年振りのリリースを果たした、この先どうなるかわからないが続けるしかない、そんな期待と不安が入り交じった心境を歌っているように思えます。
ジョーイ作にしては珍しくしっとりとした、しかし力強く且つ心温まるバラードです。昔いた若き夢見人とはピートのことでしょうか、そして今は自分たちがそれを受け継いでいると。さりとてあのことを引き摺っているトムではピートを絡めた曲が書けないから、ここはジョーイの出番だったのかも…なんてね、全ては私の想像です。初めての方は何の先入観も無く聴いてくだされば結構です、当時からlong long timeを経て現在唯一生存する"独りバッドフィンガー"のあの時なりの力作を。
1974年2月米国リリース、ピート・ハム存命中最後のシングルとなりました。日本ではアルバム"涙の旅路"収録のシングル"涙の旅路"という何とも適当な扱いに。それでも安定のピートらしいバラードで、まだアップルを離れて寂しいなんて言ってるの?とか穿った見方をしなければ、2分半というコンパクトさもあってすんなり聴けますね。アルバム共々十分にプロモーションされず英国シングル"Love Is Easy"同様全くヒットしていません。その後のことを思いながら"ピートがいなくなって…"と置き換えしみじみ味わう曲です。
お蔵入りから25年以上後に日の目を見た本作ではJOEYの抜けた穴を他のメンバーが見事に埋めています。ドラムスのMIKE GIBBINS作となっているこの曲も、弾き語り風の哀愁味が滲み出るフォーク調の隠れ名曲。マイクはIVEYS時代既にThink About the Good Timesという曲を書いていますが、今回は"お前が目覚めた時に俺がいなくてもまた帰ってくるからな"と、まるで一旦辞めたPETEがすぐに戻ったのを描いたみたいで歌声ともども生々しいですね。あわよくばJOEYもと期待を込めて? ともあれこれほどの才能が集結したバンドだったんだと改めて認識できます。
当時の状況を熟知していたTOM EVANSが諸悪の根源たるマネージャーを皮肉った、いやモロに批判した内容のある意味プロテストソング? BOB DYLAN風の気怠そうな歌い方が却って痛快ですね。最後で"こんな争いを望んでたと思うの?"なんて言ってるけどもう遅い、こんな曲があったらそりゃ訴訟が無かったとしても発売差し止めになりますって。曲調がポップな分そんなイタさが残念な"頭で考えた"曲と言えましょう。
前作Wish You Were Here完成後ジョーイが脱退したまま1974年12月にレコーディングされていたがワーナーからの訴訟によりお蔵入り、約四半世紀後の2000年11月正式にリリースされた真にピート存命中最後のアルバムです。そんな本作のオープニングを飾るピート作のご機嫌なポップロックテューンは、かようなバンドの実態と裏腹に元気一杯なピートのヴォーカルに全盛期そのままのブリティッシュ・パワーポップな音像が光る傑作です。ただこのタイトルからするとピート、本音はひと休みしたかったのでしょうか、そう思うとカラ元気にも聞こえてしまいます。
TOM EVANSと、JOEYに代わって本作のみ参加した元INDIAN SUMMER、ROSSのBOB JACKSONとの共作になるダークなバラードです。確かにギターフレーズを含め全体にメロディアスで、メジャー調になるサビのコーラスはBADFINGERならではと言えますが、やはり"栄光の日々は過ぎ去った"みたいな内容が当時の状況と被ってしまいます。いかにも最早醒め切ったトムが係わった曲という印象ですね。
本作のみ参加のBOB JACKSON単独作品となるブルージーでちょいヘヴィなナンバーです。当然ながらBEATLESの弟分バッドフィンガーがそれまで築いてきた音楽とは似ても似つかず、でも違和感を感じるより先にむしろ却って新鮮な感覚になりました。"抱いていた夢は全て忘れよう""いつになったら振り返ることができるんだ"と歌詞もヘヴィで"When will we ever learn?"なんて私がちょっと前に紹介した"花はどこへ行った"そのもの。色んな意味で名曲としておきます。
時は1990年代前半、CDの登場からまだ10年程で新品/中古問わずCDショップ巡りが盛んだった頃、ふと(B)-BADFINGERの所で目にした鎖帷子みたいな素材のビキニを着てこちらを指差す妖しい女性のジャケット。それまでも見覚えはあったが当時の私はJ-POPの方が楽しく洋楽から離れていまして、BADFINGERにしても"Come And Get It""Day after Day""Know One Knows"、アルバムはピート亡き後トムとジョーイで再始動の"Airwaves"しか認識していなかったため見事にスルー。その後いつの間にか買って手許にある当時の輸入盤を聴きながらのレビューです。1970年11月リリース、BADFINGERに改名してからは2nd、IVEYSから通算すれば3rdとなる本作の売れ行きはと言うと、USチャートで最高28位となるも本国UKではランキング外。折しもBEATLES解散騒動最中のこと、どうやらアップルレーベルに居続けたことが彼らの命運を分けたらしく、当初MAL EVANSプロデュースでレコーディングしながら並行してRINGO STARRのシングルやGEORGE HARRISONのアルバム制作セッションに参加させるハードスケジュールを見かねてGEOFF EMERICKに交代したために発売が半年も遅れたとか。上手くいかないのはアルバム制作だけでなくシングルリリースも同様で本作からのシングルは5.とUK盤におけるそのB面8.のみ。6.は他アーティストにカバーされてヒットし有名になっただけで、彼ら自身によるオリジナルのシングルは出ていません。No Dice…振ったサイコロが台から飛び出してノーカウント、無効になって"駄目"だという意味ですから、まだ悪徳マネージャーに捕まる前のこの時点でもうアップルを離れるべきだった、そんな状況を暗示するタイトルな気がします。最後はどうでもいい話、女性の上半身が写るジャケットは開いた状態で下半身も現れるようになっているため、綴じ目が左になるように収めるとタイトルや女性の頭が右へ横向きに倒れてしまうんですね。という訳で買って見て聴いてください。
本作リリース当時のB面1曲目はピート作のカントリー風で、音像だけ聞くとのんびりしてネアカな佳曲です。R&Bからカントリーまで貪欲に吸収するUKアーティスト全般に見られる引き出しの多さを実感できます。ただ歌詞がですね、"My life may not be long"はズバリ重大な出来事の予言みたいだし、"Say You'll take from me what I will give to you"なんてまるで搾取してくださいと言ってるようなもの。尤も当然ピート自身当時はそんなつもりではなく過ぎたから言えることでしょう、それにしても…。
"No Dice"1992年版CDのボートラ5曲目、トラック#17にしてエンディングテューンは新加入のジョーイを含む4人の共作となるカントリーロックまたはソフトロックです。シンプルなメロディの繰り返しは突き詰める余地がありますが、仄々としたコーラス、ハーモニーはバッドフィンガーならではのもの。聴いているこちらからビートルズの後継はYou'll be the oneだ!とエールを送りたくなる、1970年当時未収録だったのが惜しまれるナンバーです。
"No Dice"1992年版CDのボートラ3曲目であるトラック#15も前曲に続いてジョーイの曲です。IVEYS時代からBADFINGER本来の音楽は基本的にポップスでしたが、ジョーイ加入によってだいぶロック寄りに舵が切られました。そういった功績は大きいものの彼の作品が全て優秀かというと否でして、この曲も焦点が定まらず可もなく不可もなくといったところ。ギターオリエントなのは当然と言うことで辛口評価です。
実は案外好きな人が多そうな隠れ名曲? 私も最近BADFINGERに再注目するようになって知った、甘いメロディが素晴らしいピート作の美しいバラードです。不安げに揺れるピアノのイントロに続く歌メロがストレートながらも胸を打ちます。どうやらピートがドラマーのマイクから聞いた不幸な実話を基に作った曲らしく、特に最後のNobody's gonna help you nowなんて歌詞がもう絶望的ですね。既出の通りBOB DYLANと並び称せられる早世のフォークシンガーTIM HARDINが2年後にカバーしています。Without YouをHARRY NILSSONがカバーした件といい、BADFINGERの曲はシンガー&ソングライターさえもオリジナルそっちのけでカバーしたくなるほど魅力的だということでしょう。
曲単位ではこれがパワーポップの元祖と見做され、ピート・ハムの才能が凝縮されているとのことです。でも"嵐の恋"と言うほど激しいものではなく普通にラヴソングしてますね。ビートルズっぽくもありネアカな作風で好感が持てますし、"灰色の壁"あたりの表現が絶妙です。1970年10月リリースされ全英5位・全米8位をマークした、BADFINGERでは"Come And Get It"、"Day after Day"と並ぶ大ヒット曲。
本作時点での新メンバー・ジョーイを含む4人の合作名義になっている、シャッフル調のロックンロールないしブギ―です。ひたすら明るく楽しい曲調ですが、歌詞はわかりやすいけど英国特有のヒネリが感じられます。そりゃまタイトルからして歌詞には入っていないけど英国の地名ですから。見方によってはBADFINGERの代表曲とまでは言わずとも注目すべき重要な曲かと。私的にはエルヴィスの"Don't Be Cruel"に影響されイーグルスの"Heartache Tonight"に影響を与えた? どうでしょうね。
リリース当時の"No Dice"最後を締めくくるのはやはりピート作の壮大なバラードです。イントロから全体にアコースティクな曲調、これは…"Eight Days A Week"? いや違いますね、あの曲よりは落ち着いた"お互い足りない所を補完し合おう"みたいなラヴソングとなっています。ストリングスが加わり静かでいながらドラマティックに。だが最終的に向かう所はタイトルの通りで何かバンドの行く末を予感させますね。それも今だから言えることなのであって、ここはまず曲自体をそしてピートの才能をじっくり再評価しましょう。