生ストリングスを用いたシンフォニックでシアトリカルなアプローチのサウンドと、HMらしからぬ曲タイトル、しかもそれがアルバムのリーダー・トラックという事で「音楽性の変化に影響あるかも」と考えたのは全くの杞憂で、スタイルの幅を広げてもBATTLE BEASTらしいメロディー・ラインの魅力は不変。 むしろ、分家筋のBEAST IN BLACKではやらないだろうなというサウンドで、今後の両者における重要な個性の違いとなる予感がします。
'19年発表の5thアルバムです。 「ハリウッド映画のエンディングなんてもう沢山!」というタイトルに対する違和感と、YouTubeで先行配信された表題曲の過剰にシンフォニックなアレンジに「全編こんなのだったら嫌だなぁ」と聴く前は若干の不安もあった本作ですが、蓋を開けてみればPOP&キャッチーを推し進めたいつもの路線に、ちょっと新味が加わった実にらしい作風で、すんなりと耳に馴染みました。 前作ではまだ多少は感じられたアントン・カバネン色もほぼ払しょくされましたが、楽曲のクォリティーにはいささかの影響もない様子、更にメロディアス度の増した楽曲を実に伸びやかに歌い上げるノーラ・ロウヒモのヴォーカル・パフォーマンスにも圧倒されます。 「もっとBEASTらしい荒々しさを!」という方も、 "Raise Your Fists" 、 "The Golden Horde" のエピック・チューン二連発で満足間違い無し!
と概ね気に入っている本作ですが、その一方で、ややヴォーカル中心に偏ったマイルドなサウンド・プロダクションに物足りなさを覚えたのも確か、もっとバッキングに音圧があれば良かったのにと思ってしまいました。BEAST IN BLACKの新譜との比較も、楽曲の充実度は互角でも、ギターの華やかさで差がついている印象。 次作では、その辺りの改善も期待したい所です。
余談ですが、Amazonの商品説明欄には「2015年7月には主催イヴェント:Long Live The Loudを開催、いわゆる嬢メタルが旋風を巻き起こしていた当時のトレンドとは真逆の発想で、男気溢れるヘヴィ・メタル・バンドを結集し、見事ソールド・アウト。9月には配信限定となるシングル「Sign Of Heavy Metal」を発表、瞬間的にではあるが、Amazonチャート1位を記録(2位はBABYMETAL)し、そのトレンドキラーぶりを見せつけることとなった」という、ちょっとイイ話が(笑)。
BEST ALBUMの為に書き下ろされた新曲、 序盤は大人びた雰囲気のバラード調でしっとりと聴かせ、そこから徐々に盛り上がってラストはサンバっぽい賑やかなフィナーレを迎えるドラマチックな曲調。 そして明るい未来を見据えたポジティヴな歌詞にも心打たれます。きちんと韻を踏んでいる所もGood! 「伸びてく四つ葉のクローバー」という部分が、もし五人のままだったら果たしてどういう表現になっていただろうと思うと若干ほろ苦さも覚えますが、路上パフォーマンスに始まって、やがてスタジアムを埋め尽くすまでに成長した彼女達の、傍から観れば順風満帆のようでも様々な紆余曲折を経た10年間の軌跡が見事に凝縮された、まさにアニバーサリーな一曲となってます。
'98年に、RANCH LIFEなる怪しいレーベルからリリースされたライヴ盤です。 オフィシャルでないのに何故か大手のCDショップで普通に流通していたり、アートワークが「UNLEASHED IN THE EAST」の別テイクみたいな写真だったり(後に再発された際にはBRITISH STEELのパクリみたいなジャケになっていた 笑)と色々と謎が多いですが、内容は素晴らしい! 「BRITISH STEEL」発表直後のライヴで、音質は時折ロブの声が遠くなったりはあるものの、おおむね良好。「UNLEASHED IN THE EAST」と収録曲の多くが重複していますが、小細工無しのシンプルなサウンドで、より生々しく成分無調整なプレイを聴く事が出来ます。 スタジオ・アルバムではあまり目立たないイアン・ヒルのベースが前に出て来ている感じで特に印象的です。 "You Don't Have to Be Old to Be Wise" のライヴ・テイクは結構レア(今ではBRITISH STEEL完全再現ライヴがあるからそうでもないかもですが) "Steeler" でエンディングを引き延ばす所とかも最高! "Genocide" では彼等にしては珍しくインプロヴァイズされた長いギター・ソロ・タイムが設けられています。