デビュー作がいきなり本国で記録破りの大成功を収めるも、その代償として発生した諸々の雑事に嫌気が差したジム・ジッドヘッドが「もっと自分の時間が欲しい」とアイドル的なことを言い残して脱退。後任シンガーとして当時MADISONで歌っていたピート・サンドベリを加えたALIENが、2nd『SIFTIN’GEAR』発表前の’90年に、ストックホルムで行われたフェスティバルでトリを務めた際のライブの模様を収めた実況録音盤。(詳細に関してはもうリーダーのトニー・ボルグもあまりよく覚えていないらしい) '00年にひょっこり本作がリリースされた時は「こんな音源があったんかい!」と、かなり驚かされました。ライブで歌うピートのパフォーマンスが聴けるのはこれぐらいじゃなかろうか?特に会場の盛り上がりが最高潮に達する大ヒット・ナンバー“ONLY THE WOAMN”における彼のエモーショナルな歌声は実に感動動的ですよ。 “DREAMER”みたいなハードナンバーも演って欲しかったなぁとか、選曲に関しては少々注文を付けたくなる部分がありますし、EUROPEの“THE FINAL COUNTDOWN”を思わすシングル曲①(アルバムには未収録)のファンファーレに導かれてスタートする本編は、差し替えやオーバーダブの類を一切行っていない「文字通りのライブ」(ピート談)のため、歌声やパフォーマンスに少々不安定な場面が散見されるものの、そうした要素が逆にライブならではの臨場感を高めてくれているのもまた事実。 何より、本作のようなお宝音源のリリースに踏み切ってくれたバンドには感謝しかないという。できればジムが歌っていた時期のライブも発表してくれると尚嬉しい、なんて。
日本ではゼロ・コーポレーションに所属し、JACKAL、MASQUERADE、TALISMAN等と共に第二次北欧メタル・ブームを盛り上げたバンドの一つであるスウェーデンのSNAKES IN PARADISE。本作は彼らがプロデューサーに(北欧ツアーを一緒にした間柄である)アメリカ人シンガー/ソングライターのブレット・ウォーカーを迎えてレコーディングを行い、自主制作の4曲入りシングルに続いて'94年にリリースした1stアルバム。 美麗なアートワークのテイストが、次作以降とは別バンドかと思ってしまうぐらい異なっているのですが、後にミッキー・ムーディとバーニー・マースデンが立ち上げたCOMPANY OF SNAKESでも歌うこととなるステファン・ベルグレンの実力派シンガーっぷりは既に堂に入ったものですし、音楽性に関しても、この時点で(白蛇系のバンド名に相応しい)「仄かにブルージーな薫りも漂ってくる北欧ハードポップ」という基本スタイルがきっちり定まっています。 ただ本作に関してはOPを溌剌と躍動する①や、アコースティック・ギターの妙技が冴えるバラード③、清涼感に満ちた哀愁が心地良い⑦、ボーナス・トラック扱いなのが勿体ないぐらいのポップ・メタルの逸品である⑬等、後の作品に比べると煌びやかなハードポップ・テイストの方が若干勝っている印象あり。中でも⑥はアメリカのメジャー・バンドのヒット曲と比較しても何ら遜色のない輝きを放つフック満載の名曲ですよ。 彼らのアルバムはいずれも甲乙つけ難い完成度を誇っているのですが、個人的に一番聴き直す頻度が高いのは(所属レーベルへの思い入れ込みで)本作であります。
オクラホマ州出身のシンガー/ソングライター。 80年代からCMソング等を手掛ける傍ら、ジム・ピートリックやスタン・ブッシュらとコラボして腕を磨き、'91年にはジェフ・パリスと共作し、ALIASに提供した楽曲“WAITING FOR LOVE”が全米シングル・チャートで最高第13位、カナダでは最高第4位にランクインするヒット曲となる。 このヒット曲を名刺代わりに、以降はソロ・シンガーとしても活動を開始。複数枚のソロ・アルバムを発表しているが、'13年に自宅にて急死(死因は明らかにされていない)。まだ51歳という若さだった。
映画、ドラマ挿入歌、日本ではトヨタやマツダのCMソングを歌い、ルー・グラムが抜けたFOREIGNERの後任シンガーに名前が挙がったこともあるというメロディアスHR界の信頼と実績の優良ブランド、スタン・ブッシュ(Vo)。本作は彼が’93年に発表したソロ名義では2枚目となるアルバム。国内盤はゼロ・コーポレーションから発売で、同レーベルが彼の作品を扱ったのはこれが最初でした。(次々作『HIGHER THAN ANGELS』(’96年)とジャケット・デザインがそっくりでちょっと混乱しますけども) アメリカのHR/HMシーンがグランジ/オルタナティヴ・ロックのトレンドで塗り潰されようと、今回も自身の得意とするメロディ重視のアメリカン・メロハー・サウンドを真摯に追求。この人のカタログは目を瞑って選んでもハズレを引くことはない(そもそも当たりアルバムしか作っていない)のですが、それはJOURNEYのジョナサン・ケイン、ブライアン・アダムスやKISS等との仕事で知られるジム・ヴァランス、AXEのボビー・バースといった、共同プロデューサー&ソングライターとして名を連ねる錚々たる顔触れを見た時点で、早くも完成度の高さを確信させられてしまう本作においても同様です。 爽やかに聴き手を癒す③、ポジティブなエネルギーに満ちた⑤、高揚感を伴うキャッチーなサビメロが絶品⑨、タイトルからして名曲の風格漂うバラード⑩等々、収録曲はスタンの情感豊かな歌声が映える逸品ばかりな上に、後の作品と比べるとビートを効かせた躍動感溢れる楽曲の比率が高めゆえ、「AOR/産業ロックはちょっと…」という向きにもお薦めできる1枚ではないかと。
'19年にアコースティック・ソロ『WAY OF LIFE』をリリースしたばかりのSABER TIGERの下山武徳が、今度はストレートなHMサウンドを追求した新作ソロ・アルバムを矢継ぎ早にリリース。但し、作曲までがっつり関わっていた『WAY~』に対し、本作では山本恭司(G)、山下正良(B)、横関敦(G)、本間大嗣(Ds)、島紀史(G)、SYU(G)ら、手練れのミュージシャン達をバックに起用し、シンガーとして楽曲を「歌う」ことに専念。例えるならばFRONITERS RECORDS方式(?)のソロ・アルバムに仕上がっています。 そうした作りに文句があるかと言えば、滅相もございません。尋常ならざる熱量迸る下山のパワフルな歌声の素晴らしさは言うに及ばず、収録曲はいずれも流石の完成度の高さ。中でもYUHKIが作曲しSYUがGを弾く「GALNERYUS with 下山武徳」の趣き漂う華麗なる疾走ナンバー①、EARTHSHAKAERの石原慎一郎のペンによるヘヴィでメロディアスな③、横関のGとYUHKIのピアノがドラマティックな曲調に華を添える⑤、タメの効いた盛り上がりっぷりが中村達也(BLINDMAN)らしい⑦、そして山本恭司との競演ゆえか、どことなく下山のディストーション・ボイスが人見元基っぽく聴こえる劇的な泣きの逸品⑨等は、参加メンバーそれぞれの持ち味がバチバチと化学反応を起こした、特に印象深い出来栄えを誇っています。ネオクラシカルな疾走ナンバーもあったりするのですが、そっち系は野太い声質のこの人にはハマらなかったなぁと。十分良い曲なんですけどね。 予算や時間的にかなり制限があったそうなので、本作が売れまくって、今後第2弾、第3弾…と実現していくことを切に期待する次第。
このバンド名でジャケットにはガレー船のイラスト。髭面のむさ苦しいメンバーが屈強なバイキング・メタルでも演っていそうな感じですが、実際はノルウェーでも北欧でもなく、ニュージャージー出身の5人組。元々はNORTHと名乗っていたそうで、それが気に入らず、とあるライブ出演の際咄嗟にバンド名をNORWAYに変更して現在に至るのだとか。 本作は彼らが'08年に発表した2ndアルバム。前作『NIGHT DREAMS』(’97年)がアマチュア時代に作り溜めたデモ音源を取りまとめた自主制作盤だったことを踏まえると、レコード契約を得てプロダクションが向上、日本初見参作ともなったこのアルバムこそが正式なデビュー作と言えなくもないような? 音楽性は、甘美な哀メロに、Keyが醸し出す北欧ハードポップばりのキラキラ感と、大陸産のバンドらしいキャッチーなポップ・センスを加味したメロディアスHRサウンド。特にOPナンバー①は、声質自体が哀愁を帯びているVoの熱唱、泣きに泣きを重ねて来るG、キャッチーなコーラス・ワークに厚盛りされた美麗なボーカル・ハーモニー等々、このバンドの強みが遺憾なく発揮された名曲で、これを聴いた時点でこちとらアルバムの完成度について確信を持ったぐらいですよ。事実その期待は裏切られることなく、2曲目以降は若干アメリカンな色合いが強めつつ、Gは終始ウェットなメロディを紡ぎ、楽曲も哀愁のハードポップ⑦をハイライトに高いクオリティをキープし続けます。 同郷のメロハー・バンドDEPATUREのシンガーだったデヴィッド・ボールドウィンが歌っているという次作『RISING UP FROM THE ASHES』も聴いてみたくなりますね。
今やFRONTIERS RECORDS関連の作品には欠かせない存在となった感のあるマルチ・アーティスト、アレッサンドロ・デル・ヴェッキオの名前を初めて意識する切っ掛けとなったプロジェクト、EDGE OF FOREVERが'04年に発表した1stアルバム。 シンガーは現AXEのボブ・ハリスで、プロデューサー兼ソングライターとして故マルセル・ヤコブが全面バックアップ。ジェフ・スコット・ソートも一部楽曲にゲスト参加していることで注目を集めた作品…というか、当時は確かマルセルのネーム・バリューに釣られて本作を購入したんだっけなぁと。この頃はアレッサンドロは「誰それ?」状態でしたから…。 そうした制作環境が関係しているのかどうか、本作にはアレッサンドロ印のメロハー・チューンの合間に、マルセル在籍時代のイングヴェイや初期TALISMANを彷彿とさせる北欧風様式美HMナンバーも収録。ジェフ・スコット・ソートとボブ・ハリスの熱を帯びた歌合戦と、冷え冷えとした曲調の対比が効果的な③、“I AM A VIKING”を思わす重厚且つ劇的な⑤、そこから間髪入れずに疾走を開始する⑥、Keyがミステリアスな雰囲気を盛り上げる⑨等は、プロデューサーがボビー・バース(AXE)に交代する次作以降とはやや趣きを異する、本作ならではの名曲と言えるのではないかと。勿論ポップ&キャッチー、且つフックも効きまくった②や、メロディの色彩豊かなバラード⑦のような、アレッサンドロのソングライティング・センスが早くも眩い輝きを放つ名曲も忘れ難いのですが。 この内容の充実っぷりで中古盤価格が3桁台ってのは、お買い得にも程があるんじゃあないでしょうか?見かけたら是非。
'17年の南米ツアー中重度の完成症に罹患し、右足切断という悲劇に見舞われたスティーヴ・グリメット(Vo)。現在はそれを乗り越えて復帰を果たし精力的に活動を継続している彼が、自らの名を一躍HR/HMシーンに知らしめる切っ掛けとなったバンド、GRIM REAPERを復活させ、'16年に発表した再結成第1弾アルバム(通算4作目)がこちら。 つっても嘗ての中心メンバー、ニック・ボウコットはミュージシャン稼業から足を洗ってしまい不参加。肝心のスティーヴに関しては、LIONSHEARTの2ndからこっち「ちゃんと曲を書ける人材を登用してくれ」と常々感じていたので、無名のメンバーと組んで果たしてどれほどの作品を作れるものか?と、正直事前の期待値はあまり高くなかったという。 しかしコレが聴いて吃驚。本作で披露されているのは、エッジの切り立ったGリフ&軽快に疾走するリズムといい、その上に乗る憂いを帯びて勇壮、それでいてキャッチー(←重要)なメロディといい、紛うかたなき在りし日のGRIM REAPERそのものなサウンド。ソリッドに突き進むアルバム表題曲②や、思わず拳を突き上げたくなる⑥、雄々しくメロディアスな⑩等、秀逸な楽曲をパワフルに歌い上げるスティーヴのVoも経年劣化を殆ど感じさせない全盛期の張りと伸びをキープ。多少地味な楽曲も彼が歌うことで3割増しで輝いて聴こえる神通力も衰えていません。 “SEE YOU IN HELL”や“ROCK YOU TO HELL”級のキメ曲は見当たらないので、一聴地味に感じられるかもしれませんが、繰り返し聴き込むことで徐々に魅力が浸透して来る燻し銀な1枚。そういう意味では2nd『FEAR NO EVIL』に近い仕上がりと言えるかも。
メイン・リフはACCEPTの“FAST AS A SHARK”っぽいですが、 あの曲のあのリフは世界中のメタル・バンドにインスピレーションを授けた「発明」ですからね。 そこにJUDAS PRIESTの“FREEWHEEL BURNING”までブッ込んでいるのですから、 (オリジナリティはさておき)カッコイイ曲に仕上がらないわけがないという。
中心メンバーのジョン・ティアー(Ds)からバンド名を頂戴してTEERを名乗ったアメリカはフロリダ州出身の5人組が、'00年にNOW AND THEN RECORDSから発表したセルフ・タイトルのデビュー作(…と思ったら、自主制作の1stもあるのね) 本作は'18年に心臓発作で急逝したギタリストで、フロリダHR/HMシーンのちょっとした顔でもあったラルフ・サントーラの全面バックアップを得てレコーディング作業が進められおり、そのせいか、肉厚に刻まれるバッキングの上で、キャッチネスと哀感が程よくブレンドされた流麗なメロディ、分厚く重ねられたボーカル・ハーモニー、テクニカルなGソロとが華麗に舞うメロディアスHRサウンドは、MILLENIUM、EYEWITNESSといったラルフ絡みのバンドに通じる爽やかな味わいに満ち溢れています。 Voの音程が時折怪しいのはご愛嬌ながら、情熱的な歌いっぷりは気持ちが良いですし、何より収録曲の出来栄えがどれも素晴らしい。重厚且つドラマティックに展開する①、ストリングスをフィーチュアした哀愁のバラード②、一転爽やかさ振りまく③…と「アルバムは頭3曲が勝負」の鉄則を踏まえ、タイプの異なる秀逸な楽曲が並べられた序盤戦だけで掴みは上々。以降も仄暗いヴァースから明快なサビメロへと視界が開けていくような曲調が印象的な⑤等、確かなクオリティを有するのメロディック・ロック・チューンがズラリ。MILLENIUMのメンバーでもあるシェーン・フレンチの、ジョージ・リンチに通じるエッジの鋭さと構築美を併せ持ったGプレイも華やかに本編を彩ります。 本作のみで消息不明になってしまったのが残念に思える逸材バンドでしたよ。