METAL MASSACREシリーズへの楽曲提供が縁で、METAL BLADEからデビューを飾ったLA出身の4人組、VIKINGが'88年に発表した1stアルバムで、LAと聞いて思い浮かべる、青い空、燦々と降り注ぐ太陽、モダンな都会に美男美女・・・なんてお洒落キーワードとはビタ一文無縁の、暗くて湿気ってて貧乏臭い、だが最高にバイオレントで血沸き肉踊るスラッシュ・メタル・サウンドが堪能できる逸品。 アンサンブルがバラける寸前まで前傾姿勢を取り、ハイテンションに畳み掛けるVoと、ガリガリと高速で刻み込まれるGリフ、猪突猛進を繰り返すリズム、それにヒステリックなGソロとが土砂崩れ式に押し寄せる作風は、初期SLAYERやDARK ANGELを彷彿。(彼らをもっとハードコア化した感じか) また直球勝負のバンド名に相応しく、好戦的且つ殺伐とした空気が全編に渡って充満しているのも本作の特徴だが、北欧を中心に盛り上がりを見せる昨今のヴァイキング・メタルに比べると、こっちのヴァイキング描写は物凄く浅い(笑)。闘争本能だだ漏れで暴れ回る野蛮人っぷりだが、それだけに殺気全開で突っ走る楽曲の数々は一種異様な迫力を発散。猛々しくも重厚に攻めて来る⑤や、ほんのりドラマティックなイントロがくっ付けられた⑧、そしてクールなGリフが炸裂する本編屈指の名曲(アルバム表題曲でもある)⑨のカッコ良さには、思わず血管がブチ切れそうになるってもんです。 ラジカセ録音レベルの不明瞭極まりない音質や走り気味の演奏等、ぶっちゃけマニア向け作品なのは否定のしようもないが、「やってやるぜ!」的初期衝動を発露に圧倒されてるうちに、あれよあれよと聴き通せる1枚。個人的には名盤です。 とは言え、もっとカッチリとした仕上がりのスラッシュ・メタルがお好みという方には、次作『MAN OF STRAW』がお薦めだが。
前作『TELL NO TALES』にて確立された「TNT流HRサウンド」を一層磨き上げ、彼らの最高傑作レベルにまで昇華して見せた'89年発表の4thアルバム。 濁りのない水晶細工のようなト二ー・ハーネルのハイトーンVoと、澄んだ音色で美旋律を滑らかに紡ぎ出す一方、時にトリッキーな動きで聴き手の虚を突くロ二ー・ル・テクロのGプレイを2本柱とする収録楽曲の数々は、“TELL NO TALES”のようなヘヴィ・メタリックな疾走ナンバーが姿を消した代わりに、胸高鳴るポップ・フィーリングと壮麗なボーカル・ハーモニー、そして表裏のジャケット・アートワークに切り取られた、ノルウェーの美しい自然や二ーダロス大聖堂の如き荘厳な雰囲気が大増量。聖歌を思わせる神々しさを纏った①から、分厚いハーモニーに心打たれるバラード⑪に至るまで、本編は最初から最後まで捨て曲皆無。(今ひとつ評判の宜しくない⑧も、QUEENに通じる遊び心が感じられて個人的には嫌いじゃない。そもそも⑨へのイントロみたいなものだし) そうした完成度を更なる高みへと押し上げてくれるのが、北欧メタル史において並ぶモノなしとされる至高のサウンド・プロダクション(手掛けたのはビヨルン・ネッショー)。クリアで瑞々しい音作りの援護射撃を受け、鮮やかに駆け抜けていく③④⑤は、ハイレベルな楽曲/演奏/プロダクションの3拍子揃った、いつ何時聴いても心洗われる本編のハイライト足る名曲だ。 ↑上で別の方が仰られている通り、TNT云々以前にHR/HM史に燦然と輝く名盤の一つですね。
サンバイザーを止めたメンバーのルックスといい、ヘヴィ・メタリックなエッジを適度に維持しつつ、ト二ー・ハーネルの美声をサウンドの中心に据え、哀メロのフックを増強して一気に垢抜けた感のある楽曲といい、前作『KNIGHTS OF THE NEW THUNDER』から格段に洗練された'87年発表の3rdアルバム。 全12曲収録ながら、④⑥⑩はインタールード的な役割を果たすインストの小曲であり、トータルのランニング・タイムは30分余りいう、現代の感覚ではEP程度(?)のボリュームしかない本作だが、それでいて物足りなさは皆無・・・と言うか寧ろ満腹感すら覚えてしまうのは、やはり収録楽曲のクオリティの高さゆえか。しかもそれを、一生懸命ゆえ余裕がなく、時に高音部がキンキンと耳障りに響く場面もあった前作から一転、声の透明度/表現力/伸び具合ともに一層の磨きが掛かったト二ー・ハーネルの歌唱と、冷やかな光沢を放つロ二ー・ル・テクロの流麗にしてドラマティック極まりないGプレイが彩るのだから、これで素晴しい作品にならないわけがない。 ハードに切り込んで来る①③⑪、ポップ&キャッチーな②⑦、味わいは異なれど、どちらも「これぞ北欧!」な美しさと叙情性を宿したバラード⑤⑨・・・と、全編哀メロ好きの琴線に触れる名曲の大盤振る舞い。 「4th『INTUITION』と双璧をなす傑作」との評判に偽りなしの1枚。
スコットランドのメロディアスHRバンドSTRANGEWAYSが、FRONTIER RECORDSのバックアップを受けて再編。久々にテリー・ブロック(Vo)をフロントマンの座に復帰させて発表した・・・多分6枚目ぐらい?のアルバム。 彼らの作品をちゃんと聴くのは3rd『WALK IN THE FIRE』以来なんだけど、その第1印象は「随分マッタリとしちゃったなぁ」というもの。初期作とは趣きを異するアダルトでムーディな空気が支配的な作風は、キャリア相応の落ち着きが感じられると言えば聞こえは良いが、実際のところコレってただ地味なだけじゃね?と、違和感を覚えずにはいられなかったのだが、昨年暮の購入以降、折に触れては本作をリピート再生している自分に気付き、最近になって漸く「俺はどうやらこのアルバムの事が好きならしい」と自覚するに至った次第。 1st~3rdアルバムのレベルに達しているわけではないが、昨年発表されたソロ作でも衰え知らずの歌声を披露していたテリー・ブロックと、一音一音に豊かなエモーションを込めて紡ぎ出すイアン・スチュワートのGプレイが各楽曲のクオリティの底上げに大きく貢献しており、①⑦⑨はその両者の最良な部分が抽出された名曲だし、バンドの新たな魅力を提示するエスニックな雰囲気漂う⑧や、横ノリ・ナンバー⑩等も聴き応え十分の仕上がり具合。 そして何より、本編の白眉たるケルト風味のバラード④や、JOURNEYばりの麗しさを誇る⑤⑪の素晴しさよ!これら珠玉の楽曲の数々を聴いていると、「イギリスのJOURNEY」なんて評された往時のSTRANGEWAYSを思い起こさずにはいられませんね。 初期作と同様の作風を期待すると肩透かしを食うことは確実ながら、単体のメロディアスHRアルバムとしての完成度は間違いなくハイレベルな1枚。
80年代の「AID」ブーム華やかなりし頃、メタル版“WE ARE THE WORLD”として、故ロ二ー・J・ディオの音頭取りによって立ち上げられたプロジェクトが'86年に発表した作品。 チャリティー・ソング“STARS”を目玉に、シングルとアルバム(多数のバンドのライブ音源を収録)がそれぞれリリースされたが、自分が本作に興味を持った時には既にLPは廃盤になってしまっていたので、'96年にCDの再発が叶った際には、それこそ小躍りしながら購入に走った事を思い出します。 「アフリカの飢餓救済」を目的とした志の高さや、一堂に会した名立たるミュージシャン連中の共演、そして、その一癖も二癖もある面子を見事まとめ上げたロ二ーの校長先生っぷりも立派だが、何より特筆したいのは、ロ二ー、ヴィヴィアン・キャンベル、ジミー・べインが作詞・作曲を手掛け、叙情的なイントロに始まり重厚且つドラマティックな曲展開を備えた、「まるでDIO」な名曲“STARS”自体の素晴しさ。これがなけりゃ折角の豪華共演も宝の持ち腐れってもんですよ。特に、ジャケットの写真が脳裏に浮かぶサビメロが良い。思わずコブシ振り上げながら一緒にシンガロングしたくなりますね。 尚、参加面子の中で個人的に特に印象に残っているのは、Voならポール・ショーティノ(凄い声量)、Gならどんな時でも自己主張を忘れないイングヴェイ、あとメイデン印のユニゾン・プレイで楽曲の屋台骨を支えるエイドリアン・スミス&デイヴ・マーレイのコンビでしょうか。 近々CDの再々発が噂されていますが、そん時ゃ是非ともリマスター作業とDVDの収録も宜しくお願い致します。
4th『IRON WILL』と5th『HAMMER OF THE NORTH』の余りの素晴しさに痺れ、遡って購入した'03年発表の3rdアルバム。 男らしく野太い声質と広い声域を併せ持ったJBのVo、猛々しく刻まれるGリフに、地鳴りの如きうねりを伴ったリズムから構築される、「BLACK SABBATHミーツ北欧様式美HM」といった趣きのサウンド・スタイルは、このアルバムの時点で既にその方向性を定めつつあるが、と同時に本編には、ゆっくりと沈み込むようなヘヴィネスを湛えた超ドゥーム・メタリックな楽曲も散在。初期作の色合いも確実に息衝いており、まぁ要するに過渡期的内容の作品なのか。 但し、ここに収められた楽曲の数々はメチャ強力。特に、雄々しくも物騒な①に始まり、(なぜか)『恐怖のレストラン』の頃の聖飢魔Ⅱを思い出したりもする②、ヘヴィなインスト曲③に導かれてスタートする、BLACK SABBATHのみならずMANOWAR辺りからの影響も入り混じったエピック・チューン④を経て、シャープなGリフがアップテンポで駆け抜けていく⑤にてクライマックスを迎える、アルバム前半の完成度の高さは間違いなく本編の白眉。(北欧民謡風のメロディが聴かれるインスト小曲⑥から始まる、アルバム後半戦も十分聴かせてくれるけどね) パワフルな歌いっぷりのみならず、センス良くまとめられたJBのGプレイもキラリと輝きを放つ1枚。
THRASH DOMINATIONで来日して以来、音信の途絶えていたFORBIDDENから漸く届けられた再結成第1弾アルバム。 劇的極まりない序曲①に導かれて、ダークでブルータルなOPナンバー②が始まった時は「カッコイイけど、随分殺伐としてんなぁ」と、若干の違和感を覚えずにはいられなかったのだが、刻みの細かいGリフに忙しないリズム、そしてその上で朗々と歌うラス・アンダーソンのハイトーンVoが畳み掛けるように疾走する④辺りまで聴き進めると、以降は1st~2ndアルバムの頃を思い出させる、押さえるべきポイントがキッチリと押さえられた「これぞFORBIDDEN!」な楽曲が頻出。勇壮なメロディにシンガロングを誘われる⑦、美しいアコギが絶妙なアクセントとなっている⑧⑩といった優れたスラッシュ・ナンバーの数々に心動かされないFORBIDDENファンはまずおらんでしょう、と。 流石に「捨て曲なし」とまでは行かないが、地味めな楽曲にはクレイグ・ロチチェロとスティーヴ・スマイスが鮮烈且つテクニカルなツインGで華を添え、また、ブルータルな②、ヘヴィネスの充満する⑤、最近のANNIHILATORを彷彿とさせる⑫といったモダンな要素を備えた楽曲も、単なる手慰みに堕とすことなく、しっかりと聴き応えある内容に仕上げる等、ブランクの長さを全く感じさせない作曲センスには脱帽。 重苦しいサウンド・プロダクションの影響で、作品全体を覆う空気はかなり澱んでいるものの、再結成アルバムとしては文句なしで合格点に値する1枚。
赤尾和重、アン・ボレイン、レザー・レオーネらと共に80年代のHR/HMシーンを彩った、「女ロ二ー四天王」ことドロ・ペッシュ(Vo)を擁するWARLOCKが'87年に発表し、彼らの最終作ともなった4thアルバム。 GとBをU.D.O.に引き抜かれたりと、櫛の歯が抜けるようにメンバー・チェンジが相次ぎ、ドラマー不在の穴を埋めるべく御大コージー・パウエルがノー・クレジットでタイコ叩いてる事でも知られる本作は、ドロ単独のイラストや写真があしらわれたジャケット/ブックレットから「ドロ・ペッシュとそのバックバンド」的な構図が透けて見える通り、後のソロ活動へのターニング・ポイントともなった作品で、現在も彼女のライブでは欠かす事の出来ないアンセム“ALL WE ARE”を収録。 この名曲が示すように、重厚なミドル・テンポの楽曲を中心に固められた本編は、ドメスティックな色合いやマイナー臭が一掃され、アメリカ出身の正統派HMバンドと言っても通用しそうな洗練された薫りが匂い立つが(レコーディング自体、ドロが渡米してNYにて行われている)、どっこい、メロディが能天気になってしまったなんてことはなく、ドラマティックな構築美が光る③、物悲しげなピアノの旋律をフィーチュアした⑤、“METAL TANGO”というタイトルからして最高な⑧、そしてドロ・ペッシュ嬢を語る上で避けて通れない名バラード⑩といった楽曲は、“ALL WE ARE”等の代表曲にも引けを取らないクオリティを備えているんじゃないかと。 元マネージャーとのトラブルが原因で結果的にこれがラスト作とはなったものの、有終の美を飾るに相応しい完成度の高さを誇る1枚。
3代目Key奏者としてジム・ギルモアが加入。これにてマイケル・サドラー(Vo)、ジム(B)とイアン(G)のクリットン兄弟にスティーヴ・二ーガス(Ds)という、いわゆる黄金期のメンバーが揃ったSAGAが'80年に発表した3rdアルバム。 場面によってトリプル・キーボード編成にまで変化する、このバンド独自のスタイルを更に発展させ、時に華やかに、時にドラマティックに楽曲を彩る分厚いKeyサウンドの存在が益々強調された本作は、例えば“MOUSE IN THE MAZE”のようなハードな名曲こそ見当たらないものの、まろやかな味わいを増し、丹念なアレンジを施された収録楽曲はいずれもキャッチーなメロディ、ポップなノリの良さ、そしてドラマティックな曲展開とが無理なく同居。SAGAならではのプログレ・ハード・サウンドは、本作において遂に完成の域へと至ったように思う。 アメリカ・デビュー作ともなった次作『WORLD APART』以降は、ニューウェーブ風味やAOR/産業ロック色が増量され一気にサウンドが垢抜けて行くが、本作辺りまではメロディにヨーロッパ的な暗さや湿り気が横溢。取り分け、勇ましく本編の幕開けを飾る躍動感に満ちた①、優雅な曲調に思わずステップを踏みたくなる③、宇宙的で壮大なイントロがたまらなくドラマティックな⑤、よく歌いよく泣くGに胸を締め付けられる⑧といった名曲の素晴しさは、アメリカとヨーロッパの文化が入り混じるカナダ出身のSAGAというバンドならでは。 前作『IMAGES AT TWILIGHT』と並んで、個人的にはSAGA入門編としてお薦めしたい捨て曲なしの名作。
ポーランドのメタル・ゴッデス、マルタ・ガブリエル(Vo)率いるCRYSTAL VIPERが、日本未発売のライブ盤『DEFENDERS OF THE MAGIC CIRCLE:LIVE IN GERMANY』を間に挟んで'10年に発表した3rdフル・アルバム。 元MANOWAR(現ANGEL OF BABYLON)ライノのナレーションに導かれてスタートする、パワフルなOPナンバー②を耳にした瞬間に理解できる通り、本作もまた、猛々しくドラマティックなパワー・メタルという前2作を通じて確立した「型」を忠実に踏襲。収録楽曲はいずれもCRYSTAL VIPER印がクッキリと刻印されているが、個人的には、もろジャーマン・メロパワ風味の③⑨のような疾走ナンバーよりも、猛々しさの中に一抹の東欧的な物悲しさを宿した、②⑤⑧のようなスピードに頼らない楽曲の方がより好みだったり。 男勝りのストロングな歌いっぷりを披露する一方、楽曲にキャッチーさや潤いも付与するマルタ姐さんのパワフルな歌唱も、相変わらず眩いばかりの存在感を放っており、中でもバラード⑥におけるエモーショナルな歌いっぷりは本編の白眉。また、シンガー/コンポーザーとしての実力のみならず、前作の“AGENT OF STEEL”に続いて今回はACCEPTの名曲“TV WAR”をカヴァーする等、「あぁ、この人本当にメタルが好きなんだな」と実感させてくれる選曲センスも素敵だ。 前2作を気に入られた方、及び正統派HM/パワー・メタル好きに安心してお薦めできる良品質な1枚。