FRONTIER RECORDSが仕掛けた数多のプロジェクトに参加し、ソングライターとしての手腕を振るって来たスウェーデン人アーティストのエリック・マーテンセン。その彼のメイン・バンドたるECLIPSEが'08年に発表した2ndアルバム。 そんなわけで聴く前から出来の良さは約束されたようなもんの本作ですが、実際に聴いた後も、その信頼が裏切られることはありませんでした。80年代風味満点の健康的なメロディックHR(日章旗ジャケットの採用は80年代っぽさを演出するためか?)という、デビュー作で披露したサウンドを継承しつつ、メロハー路線に寄せてた前作に比べると、今回はWHITESNAKEやUFOといった彼らのルーツたるブリティッシュHRバンド勢に対する愛情をつまびらかに開陳することで、楽曲に、よりハード・ロッキンなエッジと躍動感が加味されているのが特徴。その辺は『ARE YOU READY TO ROCK?』なる直球極まりないタイトルが堂々表す通りですね。 それでいて勢い任せで大味になってしまうことはなく、涼しげな哀愁に彩られた歌メロにしろ、メタリックに弾きまくって存在感を主張するGソロにしろ、全編に亘ってフックの大盤振る舞いなのですから、やはりエリック・マーテンセン、只者じゃあない。 無駄なく構成されたアルバムに捨て曲は見当たりませんが、中でもアグレッシブな曲調と伸びやかなサビメロの対比が印象的な②と、アコギ爪弾かれるイントロの後、憂いに満ちたメロディが本編随一のハードさを纏って駆け抜ける⑤の2曲は、それぞれアルバムの山となるハイライト・ナンバー。 これ以降のアルバムも聴いてみたくなる魅力溢れる作品です。
ARMORED SAINTの作品と対峙するのは随分と久し振りなのですが、お~全然変わっとらんのぞ、と。そう言えば、以前に『SYMBOL OF SALVATION』を聴いた時も「この人ら、(良い意味で)全然変わらんなぁ」との感想を持ったことを思い出しましたよ。 但し、甲冑風の衣装を身に纏い、“キエフの大門”で華々しく幕が開いた名盤『MARCH OF THE SAINT』のイメージで本作に挑むと、今回の地味というか地に足が着いてるというか・・・な作風には肩透かしを食うことになるではないかと。ここには勇壮なスピード・ナンバーやエピック・ソングといった判り易いタイプの楽曲は見当たらず(実のところ『MARCH~』だって表題曲を除けばそんな感じだったのですが)、また、熱いのか醒めてるのか、やる気があるんだかないんだか分かり辛いジョン・ブッシュ(Vo)のぶっきらぼうな歌い回しも、そうした印象に拍車を掛けます。いや単に声質がオッサン臭いだけで歌の上手い人であることは、硬派な憂いが匂い立つ④や、7分以上に及ぶドラマティック⑦等を聴くまでもなく明らかなんですけどね。 聴き様によってはモダンにもオールドスクールにも耳に響く、ヨーロッパ産の同系統バンドとは一味違う骨太で乾いた哀感渦巻くパワー・サウンドは、威勢良く叩きつけられるOPナンバー①から、メランコリックなバラード⑧を含む後半戦に至るまで、噛めば噛むほど味わいが増す(ありがちな表現ですが)スルメ系の魅力が横溢。じっくりと対峙することをお薦めする1枚に仕上がっています。 購入当初は「星二つかなぁ」ってなもんでしたが、今や三ツ星評価に何ら躊躇はありませんですことよ。
RISING FORCE時代のイングヴェイを彷彿とさせる様式美HMサウンドをバリバリ追求し続ける(た?)スウェーデン出身の5人組、'03年発表の6thアルバム。 彼らの作品は何枚か所持していますが、最も聴き返す頻度が高いのが本作です。壮大にして激しくドラマティックな①②(文字通り“雷鳴のシンフォニー”状態)の流れに始まって、初期の名曲のセルフカバー⑩にて幕が下りる本編は、収録楽曲のクオリティから無駄なく締まった構成まで、STORMWINDのカタログの中でも頭一つ飛び抜けた出来栄え。「スウェーデンの極新カラテ王者」なる異色の経歴を誇るギタリスト、トーマス・ウルフがここでクリエイトする音世界には、「鶴の構え」を取ったダニエルさん(古い)ばりに付け入る隙が全く見当たりませんよ。 そんなコブラ会ですらお手上げの本作を更なる高みへと押し上げるのが、元TALK OF THE TOWN他の実力派シンガー、トーマス・ヴィクストロムその人。広い声域/豊かな声量/抜群の表現力を併せ持つこんな強力無比な歌聴かされたら、そりゃNHKでなくとも「昼はオペラ、夜はメタルの二足の草鞋を履くボーカル・マスター」として音楽番組で特集を組みたくなるってもんですわなと。 その彼氏の堂々たる歌声と、トーマス・ウルフ謹製の荘厳!クラシカル!スピーディ!な楽曲とがガップリ四つに組んだ④は、北欧様式美HMファンを感涙に咽ばせる名曲っぷり。 STORMWINDのアルバムはどれから手をつけて良いか分からないという方は、まずはこちらかどうぞ。入手が容易だし、中古盤も安いっすよー。
メンバー5人中3人が脱退するという、バンドによっては致命傷にもなりかねない大幅な編成替えを経て、'15年に発表された3rdアルバム。それでいて音楽性は拡散することなく、寧ろその切っ先を益々鋭く研ぎ澄ませて健在です。 ジタバタと焦燥感を伴い喧しく炸裂する①、硬質に畳み掛けて来る④、アグレッシブな中にもキャッチーさを宿らせた⑩等、従来の「80年代型スラッシュ・メタル」のフォーマットをブレずに受け継ぎつつ、本作はプロダクションの強度が増したことで、リフ&リズムの切れ味、野郎コーラスの迫力、そしてメロディックに閃くGソロの鮮烈さetc・・・が、一層ダイレクトに伝わって来るようになりました。また「元メタル雑誌のライター」というユニークな出自の新Voが、前任者ほどのクレイジーネスを感じさせない代わりに、よりコントロールされたハイピッチ・シャウトを提供。 結果として、熱に浮かされたような破天荒さは薄れてしまったかもしれませんが、その分、サウンドの方には(若干ながらも)整合性が出て来て、取っ付き易さが増したかなと。中でもリードBに導かれて突っ走るパートの勇ましさが際立つ⑧は、彼らの今後の進むべき方向性を示唆するかのような名曲です。 バンドのLIVE FOR THRASH, DIE FOR THRASHな心意気が全編に漲る充実作。
ちょい前、渋谷に「ガンズ・アンド・ストレンジャー」 (原題は同じく“EL GRINGO”)なるアクション映画を 見に行ったら、この曲がエンドロールで流れてきましね。 これがもう映画のつまらなさを帳消しにするカッコ良さで。 アルバム『THE LORD OF STEEL』においても間違いなく ハイライト・ナンバーの一つですよ。
マイク・スラマー(G)の立ち上げたメロハー・プロジェクト、STEELHOUSE LANEがデビュー作『METALIC BLUE』の高評価を受けて正式バンド化。『METALIC~』ではバックアップ役に留まっていたマイクもメンバーとしてラインナップにその名前を連ね、これが真のデビュー作とも言われる2nd『SLAVES OF THE NEW WORLD』は'99年に発表されました。(つってもこれが最終作?) サウンドの方は、重厚なプロダクションの下、カラッとポップに弾けるメロディック・ロック路線を継承しつつも、「バンドらしさ」を強調するためか、前作よりもグッとハードネスを前面展開。確かにバンドとしてのまとまりの良さはガッツリ伝わって来ますが、反面、メロディのフックはやや弱まったかな?とも。 マイク・スラマーというミュージシャンの「音楽半生ベスト盤」的様相を呈していた前作に比べてしまうと多少の聴き劣りは止むなしか・・・等と舐めて掛かったら、どっこい。キース・スラック(Vo)のソウルフルな歌声が映えるブルージーな④、爽快な躍動感に満ち溢れた⑤⑫、STREETS時代の楽曲のリメイク⑧⑪、そしてマサ伊藤もイチオシのバラード⑥etc・・・と、聴き進める内に収録楽曲の魅力はグングンUP。その決定打とも言うべきポップな名曲⑩にトドメを刺される頃には、本作の評価は「前作に勝るとも劣らぬ力作」というものに落ち着いておりました。
スティーヴ・ウォルシュ(KANSAS)が結成したSTREETSをキャリアの出発点に、その後もメロディック・ロック街道一筋に歩んで来た職人、マイク・スラマーが新たに立ち上げたバンドの'98年発表のデビュー作。 尤も、マイク自身は正式メンバーとして名は連ねておらず、彼が担当しているのは、バンド・メンバーの選抜からアルバムのプロデュース、そして楽曲提供といった、つんくとか秋元康的な裏で全てを牛耳るビッグボスの役回り(違うか)。 ちなみに、その収録楽曲は半分が新曲、もう半分が、これまでマイクがHOUSE OF LORDS、HARDLINE、TOWERCITY、WALL OF SILENCE・・・等々の他アーティストに提供して来た楽曲のリメイクで構成されていて、いずれもアメリカン・メロディアスHRの模範的なシルエットを描き出す秀曲揃い。特にスカッとハジけるOPナンバー①は、雲一つない抜けるような青空の下でオープンカーをかっ飛ばす爽快感に満ち溢れ、アルバムに対する期待感を開巻早々にMAXまで引き上げてくれる名曲です(どこか聴き覚えがある⑩もお薦め)。 全体的に泣きや哀愁成分は薄めなれども、キャッチーに洗練された大陸産ハードポップ・サウンドは、これはこれで十分に胸躍るサムシング有り。巧いVoに巧いGを得て、全編に亘ってマイク・スラマーのメロディ職人としての匠の技が冴える1枚。