お蔵入りの2nd『CAUGHT IN A WARZONE』(’15年)を世に出して復活の狼煙を上げた英国のMILLENNIUMが、'17年に発表した再結成第一弾アルバム。つまり3rdか? 中心人物のマーク・ダフィ(Vo)は、TORANAGAの復活作も水準以上の内容に仕上げてくれた実績があるため(あっちの作曲者は別人だけど)、聴く前からある程度信頼はしていましたが、「今時の若い奴らには負けへんでぇ!」とばかりにのっけからアグレッシブなGリフが繰り出される1曲目のイントロだけで、こちとら思わず顔が綻んでしまったという。 アグレッシブといっても、無理して流行に手を染めてみました…なんてことは勿論なく。長らくMILLENNIUMの唯一作だった1stでは、どちらかと言えばPRAYING MANTISの系譜に連なるメロディアスなHMサウンドが持ち味だった彼らが、本作ではエピック・メタルのエッセンスを楽曲に注入し、より勇猛且つ重厚な――言うなればTORANAGAとMILLENNIUMの合わせ技一本!――なサウンドを提示。どんより薄曇りなメロディを拾っていくマークの歌唱はデビュー当時から変わらぬヘタウマっぷりを保ち続けており(褒め言葉)、収録各曲から漂ってくるNWOBHMの匂いを的確に増幅してくれています。そんな彼の錆声Voと、印象的なフックを構築するツインGを十全に活かしたアップテンポ①⑩、アコギに始まりエピカルな盛り上がりを呈する④、好戦的にしてキャッチーな⑥、本編最速ナンバー⑪等は、現役バンドとしての気迫と英国産HMの伝統が巧みに溶け合わされた、復活MILLENNIUMならではの名曲に仕上がっているのではないかと。 ここまでやってくれるとは…、と期待を上回る出来栄えに脱帽させられる1枚。
Voの梅村総一郎(故人)がEXTASY RECORDSの副社長だったりYOSHIKIの個人マネージャーだったりと、Xに関わりの深い弟分バンドとして知られた4人組が、'91年に発表した6曲入りデビューEP。 メンバーのケバケバしいビジュアルと、草野球チームか北関東の暴走族かというバンド名に引いてしまい、当時はまるで興味をそそられずにいたのですが、クラスメイトのメタル好きが「カッコイイから一度聴いてみなって」と薦めてくれたのを切っ掛けに本作を購入。したらば確かに、咆哮型Vo、鋭利なGリフ、ドカスカ土煙蹴立てて突っ走るリズムとが一丸となって迫り来るパワー・サウンドが、こっちのツマラナイ偏見をブッ飛ばす迫力を誇っていて、聴かず嫌いはいかんなぁと襟を正されてしまった次第。 インディーズ制作ゆえ音質はペラペラ、メロディに無頓着に吠え立てるVoの歌唱スタイルも好悪が分かれるところかと思われます。しかしVENOMのクロノスやTANKのアルジー・ワード、日本だったらSACRIFICE(現SOLITUDE)の杉内哲のパフォーマンスに歌心を感じ取れる御仁なら問題なく許容できるレベルですし、何より豪快な突貫精神の中から木目細やかなメロディ・センスが顔を覗かせる①③や、ACCEPTの“FAST AS A SHARK”を思わせるスピード・メタル・ソング④といった楽曲を、パワー/スラッシュ・メタル愛好家がスルーしてしまうのは大いなる損失ですよ! …とか言いつつ、このバンドの次作以降に手を出さぬまま現在へと至ってしまった我が身を省みながら、本感想文を締め括らせて頂きます。
なかなか国内盤が発売されず、「まさか今回はスルーされてしまうのか?」と危機感を募らせていたら、’17年発表の4曲入りEP『IN FOR THE KILL』とドッキングした豪勢な2枚組仕様でのリリースが実現しホッと一安心。ベルギーの切り込み部隊EVIL INVADERSが’18年に発表した2ndフル・アルバム。 鼓膜をつんざく高音スクリームVo、カミソリGリフ、性急なリズムが一丸となって畳み込む、カナダの元祖スラッシュ・メタル・バンド、EXCITERの名曲“VIOLENCE & FORCE”のカヴァー⑩が「オリジナル曲か」っつーぐらい違和感なくハマりまくるスピード・メタル路線を迷いなく突撃する一方で、従来の疾走疾走また疾走という力業スタイルに比べると、今回は重厚なインスト小曲③から繋がるヘヴィな④、ラストを締め括るドラマティックなエピック・ナンバー⑨といった楽曲を要所に配置することで、これまで以上に作品全体に緩急とダイナミクスを演出。聴き手の鼻面を掴んでブン回すが如きアップダウンの効いた本編構成や、厚みを増した音作り等からは、バンドが次の段階へ進むために課題を設け、それを一つ一つクリアしていったような着実な成長の跡が刻まれています。 かといって、エピカルであることを意識し過ぎて切れ味を失い、鈍重になったりしていない点もナイスで、いきなりトップギアから爆走を開始する①②、高速回転するGリフがクールな⑤、本編最速の⑧といった、タイトに締まった激走ナンバーの数々からは、バンドの変わらぬスピード/スラッシュ・メタル魂の迸りを感じることができましたよ。 全10曲で収録時間は40分弱。何度でもリピートしたくなる実にスカッと痛快な1枚です。
看板メンバーだったジョン・サイクスとジョナサン・デヴァリルのWジョンは既にバンドを去って久しく、現在は唯一残ったオリジナル・メンバーのロブ・ウィアー(G)が司令塔役を担っているTIGERS OF PAN TANG、'16年発表の新作アルバム。 「虎だ!虎になるのだ!」ってな気迫に満ちたジャケット・イラストのカッコ良さに釣られて購入してみれば、これがアートワーク負けしない、聴き応え満点の充実作で思わず笑みがこぼれます。面子は地味でも、名盤『GANGLAND』(’81年)に収録されてたって違和感のないGリフ主導で畳み込む疾走ナンバーの名曲④を始め、本作はファンが期待する「らしさ」をしっかりと保持。のみならず、美しい泣きのバラード③や、哀愁に満ちたメロハー・ソング⑧等ではエモーショナルな表現力とメロディ・センスを、アグレッションと憂いに満ちたメロディが同居するOPナンバー①、TOPT流“移民の歌”チックな⑨、ツインGが映えるライブ映えしそうな⑪といった楽曲においては、ベテラン・バンドらしい曲作りの巧みさもアピールしたりと、なかなかどうして隙の無い仕上がりっぷり。 80年代からズルズルと離散集合が繰り返されて来たせいか、「復活」とか「満を持して」感よりも「あ、まだやってたんだ」感の方が強かったりするTYGERS OF PAN TANGですが、無駄な気取りや気張りがない本作には、そうやって長く続けて来たからこそ到達し得た自然体の魅力が溢れています。(まさに継続は力なり) あとついでに、最後の最後に「かまし」が待っていますので、聴く際は椅子から飛び上がらないようにご注意を。