生オケをフィーチュアした“A SHORT PIECE FOR A GUITER AND STRINGS"を 序曲代わりに、アルバムのラストをドラマティックに締め括る名曲。 イングヴェイからの影響が露骨に感じられるが、 起承転結がバッチリと決まった曲展開の素晴しさの前には些細な事。 Gとガップリと四つに組む、名手・小川文明のKeyも良い仕事をしています。
4th『RAINBOW DREAM』発表後、浜田麻里が’85年に行った初の全国ツアーの中から、中野サンプラザと大阪厚生年金会館でのライブの模様を収録する実況録音盤。 セットリストは、1stから3曲、2ndから1曲、3rdから2曲、4thから2曲(うち1曲は映画『ベスト・キッド』主題歌“MOMENT OF THE TRUTH”のカヴァー)という全8曲からなる構成で、初期HM時代を総括するベスト盤としての機能も果たしています。 ブックレットに記載がないので、イントロのアカペラから見事なコーラスを披露する妹さん以外、バック・バンドのメンバー名が不明なのは残念ながら(同タイトルのビデオの方だと分かるのかな)、演奏はすこぶるタイト。そしてやはり、なんといっても本編のヒロインたる浜田麻里嬢の歌声が絶品で、CDでは凄いけど生歌聴いたらガッカリなんてのはよくある話ですが、彼女は完全に別格。現在のベテラン・シンガー然とした貫禄漂う歌唱に対し、この時期はまさに「若さ迸る」といった感じで、制御しきれないエネルギーがシャウトから溢れ出す様は、『TOKYO TAPE』の頃のクラウス・マイネを思い出してしまうほどですよ。特に観客とのコール&レスポンスを組み込んだ“TOKYO MAKIN’ LOVE”、樋口宗孝のペンによるドラマティックなバラード“RUNAWAY FROM YESTERDAY、そして問答無用のスピード・ナンバー“DON’T CHANGE YOUR MIND”といった名曲における絶唱は圧巻の一語に尽きます。 あえて文句をつけるなら収録曲の少なさぐらいのもの(完全版が聴いてみたい)。浜田麻里のメタル・クイーン時代の貴重な記録として一聴の価値ある1枚。
HR/HM時代の区切りとなった'86年発表の6thアルバム。これ以降はレコーディング拠点を海外へと移し、脱HR/HMに拍車が掛かっていくので、個人的には(楽曲単位ではなく)アルバム単位で楽しめる浜田麻里作品はここら辺までかなぁ、と。 ギンギンのHRナンバー“COME AND GO”から壮大なバラード“PROMISE IN THE HYSTORY”まで、バラエティ豊かな楽曲が取り揃えられた本編は、前作においてハイレベルな領域にまで高められた「哀愁に満ちた歌モノHR路線」を継承しつつも、リバープが深めに掛けられた音作りやファッショナブルなKey等、サウンド全体は益々モダンにソフティケイト。 過密なレコーディング・スケジュールが祟って弾不足に陥っていたのか、ボリュームは30分台とコンパクトなのにカヴァー曲が多数収録されていたここ数作に対し、今回は全編がオリジナル曲で固められており、特にBLAZEの増田隆宣(Key)が作曲を手掛けているシャープな疾走ナンバー“TIME AGAIN”と、プログレ・ハード風味も感じられるドラマティックな“EARTH-BORN”というアルバム終盤の2連発は強力な存在感を放っています。
ジャケットを飾る生瀬範義画伯の手による浜田麻里嬢のイラストが妙に怖い、'85年発表の4thアルバム。 ゲイリー・ムーアの“LOVE CAN MAKE A FOOL OF YOU”のリメイク曲“LOVE,LOVE,LOVE”と、SURVIVORの“MOMENT OF THE TRUTH”のカヴァーが収録されているので、舶来志向のHR/HMファン的にも取っ掛かり易い(?)本作。前者でゲイリーを彷彿とさせる濃厚な泣きのGを炸裂させリスナーから涙を搾り取るのは現B'zの松本孝弘で、彼氏はこの曲のみならず本編に全面参加し若さ溢れるGプレイを披露。また映画『ベストキッド』の主題歌としても知られる後者に関しては、恐らく日本でも大ヒットした同作の知名度を当て込んでの選曲なんでしょうね。個人的には好きな曲なので楽しませて頂きましたが。 オリジナル曲に関して言えばHM色は徐々に薄れ始めており、前作に比べると若干小粒な印象も否めないものの、浜田麻里嬢の曲作りの手腕は益々洗練されて来ているし、何より稀代のメロディ・メイカー、MAKE UPの松澤浩明が彼女と共に大半の楽曲を手掛けているのだから、低クオリティの作品が出来上がるわけがありません。特に、松本のGと河野陽吾のKeyが火花を散らすスリリングな疾走ナンバー“LOVE MAGIC”や、ローからハイへと一気に駆け上げる歌声が気持ちいい“FREE WAY"は名曲。 『MISTY LADY』と『BLUE REVOLUSION』という名盤2枚の間に挟まれてイマイチ影の薄い作品ですが、この質の高さは流石です。