'19年にアコースティック・ソロ『WAY OF LIFE』をリリースしたばかりのSABER TIGERの下山武徳が、今度はストレートなHMサウンドを追求した新作ソロ・アルバムを矢継ぎ早にリリース。但し、作曲までがっつり関わっていた『WAY~』に対し、本作では山本恭司(G)、山下正良(B)、横関敦(G)、本間大嗣(Ds)、島紀史(G)、SYU(G)ら、手練れのミュージシャン達をバックに起用し、シンガーとして楽曲を「歌う」ことに専念。例えるならばFRONITERS RECORDS方式(?)のソロ・アルバムに仕上がっています。 そうした作りに文句があるかと言えば、滅相もございません。尋常ならざる熱量迸る下山のパワフルな歌声の素晴らしさは言うに及ばず、収録曲はいずれも流石の完成度の高さ。中でもYUHKIが作曲しSYUがGを弾く「GALNERYUS with 下山武徳」の趣き漂う華麗なる疾走ナンバー①、EARTHSHAKAERの石原慎一郎のペンによるヘヴィでメロディアスな③、横関のGとYUHKIのピアノがドラマティックな曲調に華を添える⑤、タメの効いた盛り上がりっぷりが中村達也(BLINDMAN)らしい⑦、そして山本恭司との競演ゆえか、どことなく下山のディストーション・ボイスが人見元基っぽく聴こえる劇的な泣きの逸品⑨等は、参加メンバーそれぞれの持ち味がバチバチと化学反応を起こした、特に印象深い出来栄えを誇っています。ネオクラシカルな疾走ナンバーもあったりするのですが、そっち系は野太い声質のこの人にはハマらなかったなぁと。十分良い曲なんですけどね。 予算や時間的にかなり制限があったそうなので、本作が売れまくって、今後第2弾、第3弾…と実現していくことを切に期待する次第。
ふらっとCD屋に立ち寄ったら、発売されているのが目に入った筋肉少女帯の最新アルバム。「江戸川乱歩全集」等の仕事で知られる柳瀬茂画伯のイラストをジャケットに使用しているのが、如何にもこのバンドらしいチョイスですね。 攻めまくりのピアノ・プレイが、「5人目の正式メンバー」的存在感を放つ三柴理の援護射撃のもと繰り出される、橘高文彦(G)謹製の様式美HMナンバー3曲・・・テクニカルなGリフが印象的な“ゾロ目”、心霊主義をネタに取ったおもろくも切ない“霊媒少女キャリー”、HM版“みつばち”とでも言うべき“恋の蜜蜂飛行”の素晴らしさは今更ここで主張するには及ばず。 今回はそれ以外にも、コミカルに始まったかと思えば、中盤では“FAST AS A SHARK”ばりのゴツいGリフが刻まれる“オーディエンス・イズ・ゴッド”や、ヤケクソ気味に突進する“みんなの歌”、エンディングを賑々しく締め括る“ニルヴァナ”等、本城聡章(G)もアグレッシブな楽曲を提供。全体的にメタル度が高めなのは、ポップな方向に振れてた前作の反動でしょうかね? ここに更に、中年ロッカーは身につまされるバラード“月に一度の天使(前/後編)”から、大槻ケンヂが特徴的なヘタウマVoで朗々歌い上げるエディット・ピアフの名曲“愛の賛歌”カヴァーまで、バラエティ豊かにしてユニークな楽曲が顔を揃えることで、本編は最後まで集中力を途切れさせません。 HR/HMリスナーにも、かなり取っ付き易く感じられる1枚ではないかと。
《カヴァー・アルバムじゃない。VSアルバムだ。》との帯惹句を目にして「言葉の意味はよう分からんがとにかく凄い自信だ」と呟いた、現GALNERYUSのフロント・パーソン小野正利が、デビュー25周年を記念して洋楽カヴァーを中心にレコーディングを行い(GALNERYUSのメンバーも参加)、'16年に発表した2枚組ソロ・アルバム。 前作『THE VOICE -STAND PROUD-』(’11年)の感想を書いた際に「次は産業ロックに特化したカヴァー・アルバムをお願いしたい」と記したのですが、本作でその願いが概ね叶う形に。DISC-1には主に90年代以降のヒット曲を、DISC-2にはBON JOVI、JOURNEY、VAN HALEN、ケニー・ロギンスといった80年代の音楽シーンを象徴するようなアーティストのヒット曲をメインに配して、それを小野が衰え知らずの美声を生かして伸びやかに歌い上げるという構成。マライア・キャリーやセリーヌ・ディオンの楽曲を、ここまで違和感なくハイトーンVoで歌いこなせる男性シンガーは、他にそうはいませんて。 個人的には、やはり思い入れのある楽曲が並ぶDISC-2の方を聴き直す頻度が高く、特にピアノ・バラード風にアレンジすることで抒情性がいや増したBON JOVIの“LIVIN’ ON A PREYER”は、秀逸なカヴァー…もといVSアレンジになっているのではないかと。あと小野の名を一躍知らしめたデビュー・シングル“YOU’RE THE ONLY”もセルフ・カヴァーしていて、随分と久々に聴き直しましたけどやはり胸打つ名バラードだなぁとつくづく実感させられた次第で。 質・量ともに大満足な一作。次は邦楽の名曲に挑戦か?