キャリアの低迷期として、今や殆んど顧みられる機会のないマンタス(G)リーダー時代、元ATOMKRAFTの巨漢フロントマン、トニー・ドーランことデモリションマン(Vo、B)を擁するラインナップのVENOMが'93年にひっそりと発表した8thアルバム。 全世界的に廃盤状態で入手困難な割に、たまに中古盤屋に並んでも別段プレミア価格が付けられるわけでもない(千円ぐらいで買えちゃう)という、不憫なほど扱いの悪い作品だが、内容の方はこれが非常にハイクオリティ。 プログレ・マインド漂うミステリアスでエキゾチックな①、様式美ヘヴィ・メタリックなインスト曲⑩といった異色曲が本編の最初と最後に配置されている事からも察しの付く通り、もはや初期の頃の面影は微塵もなく、荒々しさよりも整合性や構築美が前面に押し出された作風は、スラッシュ・メタルというよりも正統派ヘヴィ/パワー・メタル。 特に、如何にも英国的な翳りを帯びたメロディが疾走する②③、構築美を湛えたツインGをフィーチュアした本編屈指の名曲④、ダイナミックな起伏に富んだ⑤、アグレッシブに挑みかかって来る⑥⑨といった、スラッシーな攻撃性と、ヨーロピアンHMならではのドラマ性が組み合わされた楽曲の数々は聴き応え十分。 ダイハードなファンからは「何もVENOMがこれをやらんでも」という溜息の1つも聞こえて来そうな感じだが、彼らの好きなアルバムと言えば「『CALM BEFORE THE STORM』『PRIME EVIL』『TEMPLE OF ICE』がベスト3」という我が身としては、本作も初期作品以上に愛して止まない次第。 この頃のVENOMは絶対過小評価されてると思うんだがなぁ。
マーク・フリーの傑作『LONG WAY FROM LOVE』に“SOMEDAY YOU'LL COME RUNNING”等の秀曲を提供したことで、HR/HMファンにも一躍その名を知らしめた敏腕ソング・ライター、ロビン・ランダルが、シンガーのダイアナ・デウィントと共に結成したポップ・ロック・デュオの日本デビュー作となった'98年発表の2ndアルバム。 憂いを振り撒くダイアナの麗しい歌声と、ロビンのクリエイトする哀愁のメロディが、Keyの煌びやかな味付けのもとキャッチーに躍動する楽曲は、収録全曲が“SOMEDAY~”と同系統のハードポップ路線。 いくら1曲1曲の完成度が高くても流石にこの音楽性で14曲収録はダレるよとか、打ち込みを多用した角のない音作りがHR/HMリスナーには刺激不足とか、色々気になる点もあるっちゃ有りますが、それを差っ引いて尚、マーク・フリーの『LONG~』に収録されていても違和感のない①②や、実際に同作でカヴァーされていた⑤、そして絶品のバラード③といった強力なフックを有する名曲はぐぐっと胸に迫って来るものあります。 前作『GRAND TORINE』は国内盤が出なかった(よね?)こともあって買い逃してしまったのですが、コレ聴いたら「あ~、やはり買っとくべきだった・・・」と、あとで後悔に苛まれましたよ。
ジェイムズ・リヴェラに代わる新たなフロントマンに、無名の新人ブライアン・アレンを起用して再スタートを切ったVICIOUS RUMORSが、数年ぶりに発表した記念すべき10枚目のスタジオ・アルバム。 いやー、凄い。前作『WARBALL』も、バンドの長い迷走にケリをつけ「VR IS BACK!」を高らかに宣言した力作だったが、本作はそれすらも軽く凌駕する出来栄え。 故カール・アルバートに比肩するポテンシャルを発揮しつつ、そのカールよりも攻撃的な歌唱を轟かせる新Voの加入に伴い、『WARBALL』の弱点だった歌メロのフック不足が解消。また80年代ばりの密度で絡み合うドラマテックなツインGに、マッチョなBとドスの効いたDsからなる強靭なリズム・セクションに支えられ、パワーとメロディが絶妙な融合をみた楽曲の数々は、4th『WELCOME TO THE BALL』以来の充実っぷりを誇っている・・・と言っても間違いではないような? 中でも、初期作を彷彿とさせる光沢を帯びた音色のGリフが鋭角的に刻まれる、重量感たっぷりのOPナンバー①や、勇猛なアグレッションと豊かなメロディがスピーディに併走する②⑦、筋骨隆々なパワー・チューン④、それにジェフ・ソープが「Lead Vo」のクレジットに相応しい歌声を披露してくれる⑥といった楽曲は、理想的なVR節が堪能できる名曲揃い。 ファンなので勿論彼らにはアルバムには期待していたが、その期待の遥か上を行く完成度を提示してくれた1枚。畏れ入りました。
3rdアルバムのOPでガツンとカマされる、雄々しいサビメロと、 ドスの効いたコーラスの対比が最高な超名曲。 3rd収録バージョンも勿論良いが、個人的にイチオシなのは 『PLUG IN AND HANG ON』収録のライブ・バージョン。 ドラマチックな“MARCH OR DIE"のエンディングを ググ~ッと引っ張ってから、本曲のイントロ・リフが ドカンと炸裂する場面は、失禁モノのカッコ良さを誇る。必聴。
現在は敏腕プロデューサーとして名を馳せるトミー・ニュートンを中心に結成されたドイツの5人組が、家庭の事情により脱退したチャーリー・ハーンの後任に、オーディションの末フェルナンド・ガルシア(Vo)を迎え入れて’88年に発表した4thアルバム(邦題は『ネヴァー・サティスファイド』)。ちなみにそのオーディションには、元TYGERS OF PAN TANGのジョナサン・ディヴァリル、THUNDERHEADのテッド・ブレットらが参加していたことはよく知られた話(特にテッドは加入寸前まで行ったらしい) 本作は、エネルギッシュに歌うVoによってもたらされるアリーナ・ロック的スケール感や、合唱を誘う開放的コーラス・ワークに加え、ツインGが奏でる劇的にして湿ったメロディという、アメリカン・ロックと欧州HMの特色を併せ持ったVICTORY流HMサウンドの完成形が提示された名盤です。嘗てはそうした折衷スタイルが「美味しいトコ取り」というよりも「どっちつかず」「中途半端」に感じられ、聴くのを敬遠してしまっていたのですが、愁いを帯びつつキャッチーなVICTORY屈指の名曲⑥を始めとする優れた楽曲の数々を前にすれば、つまらない先入観に囚われていた己を恥じいるばかり。 何しろ、グルーヴィなアルバム表題曲②や、雄大なバラード③といったシングルが、アメリカのラジオ及びMTVで好リアクションを獲得し、アルバム自体も本国チャートで最高19位を記録。最終的には全世界で25万枚以上を売り上げる等、どこに出しても恥ずかしくない立派な成績を残しているのですから、その内容の充実っぷりたるや推して知るべし。 次作『TEMPLE OF GOLD』と併せて、VICTORY入門盤にお薦めする1枚です。
METAL MASSACREシリーズへの楽曲提供が縁で、METAL BLADEからデビューを飾ったLA出身の4人組、VIKINGが'88年に発表した1stアルバムで、LAと聞いて思い浮かべる、青い空、燦々と降り注ぐ太陽、モダンな都会に美男美女・・・なんてお洒落キーワードとはビタ一文無縁の、暗くて湿気ってて貧乏臭い、だが最高にバイオレントで血沸き肉踊るスラッシュ・メタル・サウンドが堪能できる逸品。 アンサンブルがバラける寸前まで前傾姿勢を取り、ハイテンションに畳み掛けるVoと、ガリガリと高速で刻み込まれるGリフ、猪突猛進を繰り返すリズム、それにヒステリックなGソロとが土砂崩れ式に押し寄せる作風は、初期SLAYERやDARK ANGELを彷彿。(彼らをもっとハードコア化した感じか) また直球勝負のバンド名に相応しく、好戦的且つ殺伐とした空気が全編に渡って充満しているのも本作の特徴だが、北欧を中心に盛り上がりを見せる昨今のヴァイキング・メタルに比べると、こっちのヴァイキング描写は物凄く浅い(笑)。闘争本能だだ漏れで暴れ回る野蛮人っぷりだが、それだけに殺気全開で突っ走る楽曲の数々は一種異様な迫力を発散。猛々しくも重厚に攻めて来る⑤や、ほんのりドラマティックなイントロがくっ付けられた⑧、そしてクールなGリフが炸裂する本編屈指の名曲(アルバム表題曲でもある)⑨のカッコ良さには、思わず血管がブチ切れそうになるってもんです。 ラジカセ録音レベルの不明瞭極まりない音質や走り気味の演奏等、ぶっちゃけマニア向け作品なのは否定のしようもないが、「やってやるぜ!」的初期衝動を発露に圧倒されてるうちに、あれよあれよと聴き通せる1枚。個人的には名盤です。 とは言え、もっとカッチリとした仕上がりのスラッシュ・メタルがお好みという方には、次作『MAN OF STRAW』がお薦めだが。
カール・アルバートにも匹敵する実力派シンガー、ジェリー・デレオンを獲得して復活を遂げたVILLAINが、'95年、 そのカールの死去とほぼ同時期に発表した再結成アルバム。(内パケに載せられた、在りし日のカールの姿を捉えた写真が泣かせます) '86年に自主制作されたEP『ONLY TIME WILL TELL』が、1st~2ndの頃のVICIOUS RUMORSを思わせる、劇的なパワー・メタルの 名盤だったのに対し、今回は、4th『WELCOME TO THE BALL』以降のVICIOUS RUMORSを思わせるアメリカン・パワー・メタル路線。 当時、アメリカで猛威を振るっていたモダン・へヴィネス症候群に目もくれない硬派な姿勢は非常に好ましいものの、 復活作と言う事でやや力み過ぎたのか、メロディにフックが不足気味で(これは『WELCOME~』以降のVICIOUS RUMORSにも 当てはまる話なんだが)、また、明るいロックンロール・タイプの楽曲を収録したり、アリス・クーパーのカヴァーを 演ってみたりと、音楽性も拡散の方向へと進んでいるため、一聴してのインパクトはデビューEPに比べると少々弱い。 これぞパワー・メタル!な③、メランコリックな④、ヘヴィ・バラード⑩等、ジェリー・デレオンの卓越した 歌唱能力の活かされた名曲・佳曲もしっかりと収録されている辺りは流石なのだけど・・・。 聴き終えた後の満足感は決して小さくはないのだが、個人的にデビューEPへの思い入れが強すぎるため、 どうしても「このVoで『ONLY TIME WILL TELL』路線の音楽を演ってくれたら・・・と思ってしまうわけで。
ブラジルのVIPERが、'93年に川崎クラブチッタで行った初来日公演の模様を捉えた実況録音盤。 メロディック・パワー・メタルの名盤と評判の『THEATER OF FATE』(’89年)で一躍注目を集めるも、間もなくアンドレ・マトスが脱退。その後発表された3rd『EVOLUTION』(’92年)における大胆な音楽性の刷新がファンの間で賛否両論(つか圧倒的に「否」の意見が優勢だった)を巻き起こす中敢行された来日公演ということで、タイミング的には最悪もいいところ。動員もあまり良くなかったと記憶しておりますが、にも拘らずここに収められたライブが熱狂的な盛り上がりを聴かせてくれるのは、当日会場に集結したのが(批評に左右されない)筋金入りのVIPER MANIACSだったこと。そして、メタルというよりはロックンロール/パンキッシュな疾走感に貫かれたサウンド(QUEENの“WE WILL ROCK YOU”の倍速カヴァーもパンク・バンドが演りそうなアイデアですよね)が、スタジオ盤よりもライブで聴く方が遥かにカッコ良く響いたことがその要因でしょうか。 ハッキリ言ってシンガーの歌唱にしろ、楽器陣の演奏にしろ、初来日の喜びと緊張がない交ぜになって先走っているようなパフォーマンスは相当に危なっかしいのですが、このサウンドには不思議とそうした《気合一発!轟音で押しまくる、若さ溢れるライブ》(帯より)なノリがマッチしていて、文句を付ける気が起きません。⑩におけるバンドと会場が一体となった盛り上がりっぷりなんて何度聴いてもアガるものがありますよ。 「胸が熱くなる」と言うよりは、「気分がほっこりする」タイプのライブ盤なれど、大好きな作品です。VIPER再評価の切っ掛けの一つにどうぞ。
NWOBHM華やかなりし'81年、チューダー(Vo)とマット(G)のシェルトン兄弟がイギリス・オックスフォードにおいて結成。 '85年にOTHER RECORDSから発表された7インチEP『WE STAND TO FIGHT』は世界中のマニアを熱狂させたが、インターネット登場以前、そうした評判はメンバーの耳までは届かず、また'87年制作の3曲入りデモ『FOOL'S GOLD』をEPとしてリリースする話もレーベル倒産で立ち消えになる不運、そして何よりNWOBHM自体が終焉を迎えていた時期の悪さが重なって、バンドはアルバム・デビューを果たすことなく解散してしまった。 NWOBHM熱の再燃に伴って、昨今、欧州方面で注目が集まっているバンドですが、チューダー・シェルドンがミュージシャン業から足を洗ってることもあって再結成は難しい様子。 弟のマットは、THE SHOCK(90年代には日本デビューも果たしている)をリユニオンして活動中。
80年代半ば、《THE BEST UNSIGNED BAND FROM NWOBHM》と噂されたオックスフォード出身の5人組が、'85年に発表した7インチEP『WE STAND TO FIGHT』と、'87年に制作した3曲入りデモテープ『FOOL'S GOLD』という2つの音源を合体収録するアンソロジー盤。 「幻の~」とか「伝説の~」なんて冠言葉がつく作品は、入手困難期間中に消費期限切れを起こしてる場合も少なくないのですが、コレは間違いなくその例外作品の一つ。一応リマスターされているとは言え、音質の悪さはある程度覚悟せねばなりませんが、しかし本作はそれを押しても楽曲が良い! 疾走するリズムの上で、劇的且つシャープに刻まれるGリフと、青い炎が揺らめくような英国声による熱唱、そして思わず泣きながら握り拳突き上げたくなるフレーズを次々に奏でるツイン・リードGが伸びやかに舞う収録曲は、これぞブリティッシュ!これぞメタル!と万歳三唱モノな名曲①③を頂点に、全5曲、いずれもNWOBHMが残した至高の遺産というべき逸品揃い。 MARSHALL LAWのデビュー作にも匹敵するインパクトに「今までこれほどの名曲を知らずにいたのか・・・」と慄然とさせられると共に、つくづく彼らがアルバム・デビュー出来なかった現実を惜しみたくなる1枚。 またぞろ入手困難になる前に、是非のご一聴をお薦め致します。
メジャー・レーベルが満を持して送り込んで来た、女性メンバーのみで構成される本格派HRバンドとして人気と評判を集めたVIXEN、'88年発表の1stアルバム。 ゴリゴリのメタル・ゴッデス路線でも、過剰なお色気路線でも、ましてやTHE GREAT KAT様のような色物路線でもない、洗練された見目麗しいルックス、ミュージシャンとしての確かな実力、それに親しみ易いキャッチーな楽曲と、万人にアピールする華やかな雰囲気を身に纏っているのが流石はメジャー仕様。 尤も、あまりに優等生的というか、お膳立てが整い過ぎている点に逆に引っかかってしまい、当初はイマイチ乗りきれなかったんだよな…と。しかし、ラジオだったかテレビだったかで耳目に触れたスマッシュ・ヒット・ナンバー①(全米シングル・チャート最高26位)に惹かれてアルバムを購入してみれば、パンチの弱さはやはり感じつつも、哀愁漂わす③、80年代トレンディドラマの主題歌みたいな⑧、ハードにロックしているドライヴ感溢れる⑪等、己のつまらん偏見がどーでも良くなるぐらい収録楽曲の出来が良かったという。そんなわけで、その後はすっかりファンになってしまい、メタル好きの同級生と「ロキシー・ペトルーシ(Ds)を《美人メンバー》の枠内に含めるか否か」で熾烈な論戦を戦わせたっけなぁ(アホ)、と懐かしく思い出した次第。 昔は漫然と聴き流してしまいましたが、実はデビュー作以上に収録曲の質が高いと評判の2nd『REV IT UP』も、改めて聴き直してみよう。