TALISMANが'93年に川崎クラブチッタで行った初来日公演の模様を収めたライブ・アルバム。 作品を重ねる毎に(メロディアスでありつつも)リズミック且つグルーヴィなHRサウンドへと進化していった彼らですが、デビュー当初はキラキラなKeyをフィーチュアし、美旋律と透明感を前面に押し立てた北欧メタル然とした音楽性が持ち味でした。特に、2nd『GENESIS』リリース後に行われたライブの模様が捉えられている本作は、これ以降の路線変更を鑑みるに「初期TALISMANの総決算的内容」と言えるかもしれません。 太く熱い歌声を披露するジェフ・スコット・ソート(Vo)に、テクニカルなフレーズを難なくこなす現OPETHのフレドリック・オーケソン(G)、そして躍動感溢れるリズム・ワークでボトムを支える故マルセロ・ヤコブ(B)&ジェイミー・ボーガー(Ds)という巧者揃いのラインナップゆえ、骨太なパフォーマンスには北欧のバンドにありがちな不安定感や線の細さは皆無。 コール&レスポンスからコーラスまで大いに盛り上がる観客の歓声と、スタジオ・アルバム以上にハードで熱気溢れる演奏に乗せて、“COMIN' HOME”“I'LL BE WAITING”“BREAK YOUR CHAINS”といった名曲の数々が、次から次へと繰り出されるわけですから(確か当日はイングヴェイの“I AM A VIKING”もチラッと演奏されたと記憶しています)、本作の完成度の高さは約束されたようなもの。 ZEROコーポレーション謹製の「LIVE IN JAPAN」物の中では上位にランクインするクオリティを備えた1枚ではないかと思われます。
'93年発表の3rd。丁度、北欧メタルが再び盛り上がりを見せていた日本でも国内盤がリリースされ、ファンから高い評価を得た作品。 この時期の北欧バンド群は「1作目は良かったのに次作で流行に擦り寄ってコケる」というパターンが非常に多かったのだが、TAROTの作品は 安定して高いクオリティを保持。中でも本作は特に楽曲が粒揃いで、全14曲捨て曲なし。バンドの最高傑作に推す声も多い。(俺の中で) 基本はトニー・マーティン在籍時のBLACK SABBATHを彷彿とさせる(実際、カヴァー曲⑬“CHILDREN OF THE GRAVE"を収録)、 ダークさと潤いの同居するドラマチックな様式美メタル・サウンドながら、どこかヒンヤリとした空気を伝える楽曲は 北欧のバンドならではの味。これは、氷塊のように硬質なリフと、透明感と哀感を演出するKey、 それに「憂いを帯びたロニー・J・ディオ」風のマルコ・ヒエタラのVoに依るところ大。 まぁ兎に角、アルバムのOPチューン①“DO YOU WANNA LIVE FOREVER"や、本編ラストを劇的に締めるバラード⑭“GUARADIAN ANGEL" といった楽曲を聴いてみて欲しい。北欧メタル・ファンのみならず、メロディ重視派の方ならグッと掴まれること請け合いよ?
中心メンバーのジョン・ティアー(Ds)からバンド名を頂戴してTEERを名乗ったアメリカはフロリダ州出身の5人組が、'00年にNOW AND THEN RECORDSから発表したセルフ・タイトルのデビュー作(…と思ったら、自主制作の1stもあるのね) 本作は'18年に心臓発作で急逝したギタリストで、フロリダHR/HMシーンのちょっとした顔でもあったラルフ・サントーラの全面バックアップを得てレコーディング作業が進められおり、そのせいか、肉厚に刻まれるバッキングの上で、キャッチネスと哀感が程よくブレンドされた流麗なメロディ、分厚く重ねられたボーカル・ハーモニー、テクニカルなGソロとが華麗に舞うメロディアスHRサウンドは、MILLENIUM、EYEWITNESSといったラルフ絡みのバンドに通じる爽やかな味わいに満ち溢れています。 Voの音程が時折怪しいのはご愛嬌ながら、情熱的な歌いっぷりは気持ちが良いですし、何より収録曲の出来栄えがどれも素晴らしい。重厚且つドラマティックに展開する①、ストリングスをフィーチュアした哀愁のバラード②、一転爽やかさ振りまく③…と「アルバムは頭3曲が勝負」の鉄則を踏まえ、タイプの異なる秀逸な楽曲が並べられた序盤戦だけで掴みは上々。以降も仄暗いヴァースから明快なサビメロへと視界が開けていくような曲調が印象的な⑤等、確かなクオリティを有するのメロディック・ロック・チューンがズラリ。MILLENIUMのメンバーでもあるシェーン・フレンチの、ジョージ・リンチに通じるエッジの鋭さと構築美を併せ持ったGプレイも華やかに本編を彩ります。 本作のみで消息不明になってしまったのが残念に思える逸材バンドでしたよ。
ギタリストを三宅庸介から鈴木広美にチェンジして'88年に発表された2ndアルバム。(正式ドラマーとして元MARINOの板倉淳も加入している) その新Gの腕前が如何なく発揮されたインスト序曲“ME 262”、それに続く軽快且つ劇的な疾走ナンバー“DO YOU GO AS YOU ARE?”を聴いただけで本編のクオリティの高さは確信出来るが、個人的には、赤尾和重(Vo)の歌唱力が大幅UPしている点が何よりの評価ポイント。 男と聴き紛うばかりの迫力を誇っていた反面(昔彼女の名前を「かずしげ」と間違って読んで、男だと思い込んでいた事は内緒だ)、ドスを効かせようと力み過ぎて音程と表現力に堅さも感じられたデビュー作に比べ、今回は、力強さや歌謡曲ばりのコブシの効き具合はそのままに、歌い回しがよりナチュラルな伸びやかさを獲得しており、収録楽曲のクオリティの底上げに大きく貢献。 “湖底のヴィジョン”クラスのインパクトを放つ名曲は見当たらないまでも、同時に捨て曲も見当たらない本編は流石TERRA ROSAといったところで、鋭角的なGリフが疾走する“Mr. FREELANCE”、美しいインスト曲“セント・エルモの灯”から繋がっていく11分越えの大作ナンバー“EVELYN”辺りは、赤尾はもとよりバンドの成長の跡が如実に刻まれた逸品じゃないかな、と。
'03年に、VoとGによりカナダのヴァンクーバーにて結成。当初はSKULLHAMMERを名乗り、'11年に1st『DESTORYERS OF THE FAITH』を発表。メンバー・チェンジが繰り返されたことから、’12年にTERRIFEIERと改名する。(バンド名は「恐怖心を抱かせる物(人)」の意味するとか) 同年、『DESTORYERS~』をTERRIFEIER名義で再リリース、’13年には3曲入りEP『METAL OF DEATH』の発表、更に地元中心のライブ活動といった精力的な動きが実を結び、より強力な内容に仕上がった2nd『WEAPONS OF DESTRUCTION』でもって日本デビューを飾った。
カナダはバンクーバー出身の5人組が、'17年にTEST YOUR METAL RECORDSから発表した2ndフル・アルバムにして日本デビュー作。 お馴染みアンドレイ・ボウジコフ画伯が手掛けたジャケット・アートワークと、『WEAPONS OF THRASH DESTRUCTION』(直訳すると『スラッシュ破壊兵器』)なるストレート極まりないアルバム・タイトルが物語る通り、本作には終始ヤスリ声で叫び倒すハイテンション&ハイピッチVo、2本のGが刻んで刻んで刻みまくるクランチ・リフ、突進に次ぐ突進を繰り返すリズムとが暴風の如く吹き荒れる、80年代風味満点のスラッシュ・メタルが直球ど真ん中で放り込まれています。尤も、嘗てこの手の音を出していたスラッシャー勢に顕著だった「無理を通せば道理が引っ込む」スタイルとは異なり、メンバー全員が精緻な演奏スキルを有して、息つく暇なく性急に駆けずり回るサウンドをきっちりと破綻なく支えている辺りは、非常に現代のバンドらしいという。 テクニカルに錯綜するツインGが曲展開を牽引する③、キレッキレな演奏が激烈な疾走感を倍加させる⑦や、物悲しいインストの小曲⑧を挟み、本編のトリを務める⑨へと雪崩れ込んでいくドラマティックな構成等は、大陸産スラッシャーばりの爽快な突進力&リズミックなノリの良さと、ツインGが奏でる欧州のバンド然としたダークなメロディ・センスとを同居させた「流石はカナダ産」と膝を打つ欧米折衷スラッシュ・サウンドであり、本作の大きな聴き所となっています。 そりゃ国内盤も発売されるよね!と力強く納得する力作。
ドラマーをポール・ボスタフからジーン・ホグランにチェンジして'12年に発表された最新スタジオ作。 てっきりジーンの攻撃的なドラミングを活かした押せ押せの作風に仕上がっているものとばかり思っていたのですが、実際のところ、本作の主役は野太くもメロディアスに「歌う」チャック・ビリーのVo。 例えばブラスト・ビートが導入されている②のような楽曲にしても、聴き終えてドラム以上に印象に残るのは、一層の拡充が図られている彼の歌メロといった按配です。 前作までに培ってきた、スラッシュ・メタルならではの鋭角的疾走感と、エクストリーム・メタル然とした図太いヘヴィネスを十二分に保ちつつも、TESTAMENTなりの「聴かせる姿勢」が追求されているサウンドは、現代版『PRACTICE WHAT YOU PREACH』(もしくは『SOULS OF BLACK』)と言った趣きで、ラストに『PRACTICE~』タイトル・ナンバーのリメイクが収められている事もその象徴のような? 個人的に3rdアルバムは余り好きではないので、そういう意味では不完全燃焼感を覚えなくもないのですが、ジーンの爆発的なドラミングを推進剤に、チャックの武骨且つ勇壮なVo、アレックス・スコルニックの流麗なGソロ、そしてエリック・ピーターソンとの劇的なツインGハーモニーが怒涛の如く突進する④や、ドラマティックなヘヴィ・バラード⑥等、彼らにしか作り出し得ぬ名曲も抜かりなく収録している辺りは流石。 何より本作は、こうした作風だからこそビルボード・チャートにおいて(別の方が仰られているような)好成績が残せたのではないかと思う次第。
TESTAMENTが、'87年に第2回DYNAMO OPEN AIRに参戦した時の模様を収めたライブEP。長らくCD化されずにほかされていましたが、'09年に漸くリマスター再発が実現。その際には当日演奏されたけどEPには未収録だった5曲(内1曲はアレックス・スコルニックのGソロ)も追加された全10曲の完全版仕様でのリイシューと相成りました。 デビュー間もない時期のライブゆえ、選曲に物足りなさを覚える向きもあるやもしれませんが、逆にスラッシュ・メタル・バンドとしてのTESTAMENTのエッセンスが凝縮された名盤『THE LEGACY』収録曲、それも現在ではライブのクライマックスで演奏されるような名曲の数々が、のっけから出し惜しみなく連打される様が猛烈にカッコイイんですよ。チャック・ビリーのVoやMCにしろ楽器隊にしろ、現在の重厚な佇まいとは異なる、若さに任せた前のめり具合も非常に新鮮です。そして全体が荒々しくササクレ立っているからこそ、“APOCALYPTIC CITY”や“OVER THE WALL”といった名曲において噴出するアレックスの美麗なGソロが一層際立ち、ハッと胸を突かれるというね。 轟然とした音質すら迫力を倍加させるプラス要素に変えて、会場を埋め尽くすデニム&レザー軍団の野太い声援をバックに炸裂する収録曲は、スタジオ盤を大きく上回る攻撃性を獲得。中でも初期の代表曲“REIGN OF TERROR”は、今では様々なバージョンを聴くことが出来ますけど、最高なのは間違いなく本作収録バージョンだよなぁと。 純然たるスラッシュ・メタル時代のTESTAMENTの魅力が詰まった1枚。キングから国内盤もリリースされていますのでお薦めですよ…って、もう廃盤?マジでか。
チャック・ビリー(Vo)、エリック・ピーターソン(G)、グレッグ・クリスチャン(B)、そして、久々にバンドへと復帰を果たしたアレックス・スコルニック(G)に、元SLAYER~EXODUSの豪腕ドラマー、ポール・ボスタフという布陣で制作、前作『THE GATHERING』('99年)以来、実に9年振りに発表された9thアルバム。 初期の名曲群をリメイクした『THE FIRST STRIKES OF DEADLY』のリリースや、昨今のスラッシュ・メタル・ブームのリバイバルを鑑みるに、新作は恐らく、1st~4thの作風を踏まえた内容になるだろうと(勝手に)予想していたのだが・・・実際に聴いてみると、初期作のようなスラッシーな疾走感はそれほどでもなく、重厚なGリフに、立ち塞がる物すべてを轢き潰すかの如きリズムが地響き立てて前進するという、ここ数作のブルータル・メタル路線もしっかりと踏まえた、ヘヴィネス重視のサウンドに仕上がっている。 但し、アレックスの戦線復帰と、彼の流麗且つ劇的なGワークの効果で、インスト・パートのドラマ性は飛躍的に回復しているし、また、タイトに畳み掛ける硬質なポール・ボスタフのDsを活かした、爆発的な疾走パートを要所に配した構成は非常にダイナミック。ヘヴィネス重視の作風と言っても、単調な印象は殆ど感じられない。 特に、激烈な疾走感と、チャックのアグレッシブだが「歌える」Vo、起承転結の決まった曲展開、そしてアレックスによる緩急自在のGソロが一丸となって突貫する④は、「様式美スラッシュ」とまで言われた、1stや2ndアルバムの頃の面影が蘇る、本編のハイライト・チューン的存在。 楽曲的には、前半の充実度に比べると後半がやや弱く、最後にあと1曲、問答無用で飛ばしまくる高速スラッシュ・ナンバーがあれば、全体的にもう少し引き締まったように思うのだが・・・まぁともあれ、TESTAMENTファンなら間違いなく満足するであろう力作には間違いない。
BAD COMPANYを解散させたポール・ロジャースと、LED ZEPPELINを解散させたジミー・ペイジのご両人が、多発性硬化症を患うロニー・レーン(元FACES)のために開催されたベネフィット・コンサートを切っ掛けに意気投合。その後立ち上げたTHE FIRMが’86年に発表した2ndアルバムにしてラスト作となったのがこちら。 ペイジが弾き、ロジャースが歌う…こいつぁ凄いことになりそうな予感!とパンパンに膨らんだファンの期待を他所に、デビュー作で提示されたのはZEP色の薄い、シンプルで飾り気のないブルーズ・ロック。バブルに浮かれる80年代真っ盛りのロック・シーンにおいては、「地味」「期待外れ」と芳しい評価を得られなかったと聞き及びますが、後追いリスナーな上に、そもそもZEPには殆ど思い入れがないボンクラゆえ(BAD COMPANYは大好きなのですが)「ポール・ロジャースの上手い歌が聴ければいいか」ぐらいの過度な期待をせずに購入したことが奏功したのか、本作も十分楽しむことが出来ましたよ。 特にメロウに揺らめくヒット・チューン③や、後半から踊り出すピアノがバドカンの名曲“RUN WITH THE PACK”を思い起こさせる④といった、ブリティッシュ・ロックならではの哀愁と、ロジャース先生絶品の歌唱が堪能できる楽曲はバッチグー。また草原を吹き抜ける一陣のそよ風の如き⑩におけるペイジ御大のGプレイも実に味わい深く美味。 音質やアレンジ面を含め、同時代のヒット作に比べると圧倒的に華のない作風ではありますが、お陰で今聴き直しても時代性を意識せずに楽しむことができるという、ある意味タイムレスな魅力を持った(?)1枚ではないかと。