日本ではゼロ・コーポレーションに所属し、JACKAL、MASQUERADE、TALISMAN等と共に第二次北欧メタル・ブームを盛り上げたバンドの一つであるスウェーデンのSNAKES IN PARADISE。本作は彼らがプロデューサーに(北欧ツアーを一緒にした間柄である)アメリカ人シンガー/ソングライターのブレット・ウォーカーを迎えてレコーディングを行い、自主制作の4曲入りシングルに続いて'94年にリリースした1stアルバム。 美麗なアートワークのテイストが、次作以降とは別バンドかと思ってしまうぐらい異なっているのですが、後にミッキー・ムーディとバーニー・マースデンが立ち上げたCOMPANY OF SNAKESでも歌うこととなるステファン・ベルグレンの実力派シンガーっぷりは既に堂に入ったものですし、音楽性に関しても、この時点で(白蛇系のバンド名に相応しい)「仄かにブルージーな薫りも漂ってくる北欧ハードポップ」という基本スタイルがきっちり定まっています。 ただ本作に関してはOPを溌剌と躍動する①や、アコースティック・ギターの妙技が冴えるバラード③、清涼感に満ちた哀愁が心地良い⑦、ボーナス・トラック扱いなのが勿体ないぐらいのポップ・メタルの逸品である⑬等、後の作品に比べると煌びやかなハードポップ・テイストの方が若干勝っている印象あり。中でも⑥はアメリカのメジャー・バンドのヒット曲と比較しても何ら遜色のない輝きを放つフック満載の名曲ですよ。 彼らのアルバムはいずれも甲乙つけ難い完成度を誇っているのですが、個人的に一番聴き直す頻度が高いのは(所属レーベルへの思い入れ込みで)本作であります。
英国においてNWOBHM期に活動するも、デモテープとシングルのみを残して解散したHRバンド、SABREを母体に誕生。 Keyを含む5人編成によって生み出されるサウンドは、如何にも英国的な湿り気を帯びたメロハー路線で、ポップなノリとナイーブな泣きが絶妙に溶け合わされたメロディ・センスにはキラリと光るものがあったにも関わらず、然したる結果を残せないまま解散へと至ったのは、美しい音楽性とは100万光年以上かけ離れた「仏頂面のヒゲ親父」が描かれた汚いジャケット・アートワークのせい、とする説が未だに根強く支持されている。 バンド解散後、本作において素晴しいGプレイを披露していたアンディ・シモンズはUFOに参加。Bのジェフ・ギレスピーはMAJESTIC ROCK LEBEL JAPANのA&Rとして活動、現在は日本に住んでいるのだとか。 そのMAJESTIC ROCK LEBELからはデビュー作の再発盤と初期音源集『DEMOCRACY』がリリースされているのだが、後者ではLIONHEARTの名シンガーとして知られる、チャド・ブラウンが歌っていた貴重なデモ音源を聴く事もできる。
前作『IN WAR AND PEACES』に引き続き、プロデューサーにヴァルデマー・ゾリヒタを起用してレコーディング、'13年に発表されたニュー・アルバム。 21世紀のSODOMの土台を支え続けたドラマー、ボビーが脱退し、その後任として元DESPAIRのマッカことマーカス・フライヴァルドが加入。この編成替えは確実に本編に影響を与えていますが、だからといって微塵もクオリティ低下を許さないのがSODOMたる所以です。 心持ちメロディをなぞる場面の増えたトム・エンジェルリッパーの激情シャウト、ヨーロッパ的ダークネスとドラマ性を湛えたバーネマンのGプレイ、そして前任者ほどの破壊力は持ち合わせていない代わりに、タイト且つ疾走感溢れる演奏で楽曲の「キャッチーさ」増強に貢献するマッカのDsと、今回の作風は(良い意味で)メロディアスな方向へと振られており、例えるなら、ここ数作のKREATORに通じるスラッシュ・サウンド・・・と言えば、どんな感じの音か伝わるでしょうか? SODOM以外の何者でもない凶暴さで蹂躙する②④⑥のカッコ良さも格別ですが、それにも増して魅力的なのは、猛々しくも劇的なOPナンバー①や、本編最高速度で畳み掛ける⑦、ロシア民謡“カチューシャ”のメロディがイントロにくっ付けられた⑧、一緒に叫びたくなる秀逸なサビメロを持つ⑨といった、攻撃性とメロディが絶妙なバランスで並び立つ楽曲群。 CDの帯には「賛否両論を呼ぶ作風」とありますが、いやいや。初心者にもSODOM入門編としてお薦め出来る、取っ付き易い魅力に溢れた1枚ではないかと思う次第。(なのに帯付き輸入盤のみのリリースってのは勿体無さ過ぎる)
首魁トム・エンジェルリッパー(Vo、B)以外のメンバーが脱退し、約30年ぶりに旧友フランク・ブラックファイア(G)がバンドに復帰。更に新メンバー2名も補充して、SODOM史上初めて4人編成でレコーディングされたスタジオ・アルバム。('20年発表、16作目) プロデューサーのヴァルデマー・ゾリヒタと共に制作されたここ数作では、アグレッションは十分に担保しつつも、エピカルなメロディを増量する方向性を打ち出していましたので、今回のメンバー・チェンジはそのスタイルの一層の拡充を図るためのものと思っていましたが、実際のところはそうした意図でなかったことは、ツインG体制の初お披露目となったEP『OUT OF THE FLONTLINE TRENCH』(’19年)を聴けば明らかな通り。2本のGはメロディの充実よりもむしろサウンドの「圧」「突破力」の強化に用いられており、鬼軍曹たるトムの怒号Voによる指令下、ガリガリと刻み込む殺傷力抜群のリフ、重量感溢れるゴリゴリのリズムとが波状攻撃を仕掛けて来る本作は、MOTORHED由来のロックンロール・ソングも見当たらない、SODOM流スラッシュ・メタルの原点に立ち返ったような殺伐としたアグレッションを放つ仕上がりとなっています。 とはいえ、音作りからパフォーマンスまで貫禄がオーラの如く立ち昇るサウンドに、初期作につきまとったチープさや不安定さは欠片もなく、また近作で培ったエピックなメロディも実は要所で息衝いていたり。特に不穏なイントロから激走へと転じるアルバム表題曲④は、現行SODOMの魅力が凝縮されたようなカッコ良さに痺れずにはいられませんよ。 例え編成が変わろうと、トムが健在であれば今後に不安は何もないと納得するに十分な1枚。
本作の特徴を一言で表現するなら「ドラマチック」が適当だろうか。 何しろ、北欧のメロデス勢にも通じる、荒涼たる叙情性とアグレッションを宿したリフ・ワークが滅茶苦茶クール。 11thアルバムにして、SODOMの楽曲に新たな魅力を付与してみせたトム・エンジェルリッパーというミュージシャンの 底知れぬ才能には、今更ながら感嘆を禁じ得ない。 今回、その高いドラマ性を援護射撃するのがバーネマンのGで、“BLOOD ON YOUR LIPS"のイントロに憂いを帯びたアコギ・プレイ、 “CITY OF GOD"“NO CAPTURES"で炸裂させるメロディックなGソロは、そこいらの正統派メタル・ギタリストが 裸足で逃げ出す劇的さを誇り、各曲のハイライトとなっている。 とは言え、新機軸ばかりに気を配って足元がお留守になってるなんて事は全くなく、そこはSODOM。 ダイナミックな曲展開が魅力の“LAY DOWN THE LOW"、サビの勇壮なGメロに痺れる“NOTHING REGRET"、日本盤ボーナス曲ながら、 本編OPを飾ってもおかしくないクオリティを備えた激烈スラッシュ・チューン“KAMIKAZE TERRRORIZER"等、不変の突進力は健在。 ある意味(「BETTER OFF DEAD」とは違った意味で)SODOM未体験者に最適の一枚かと。
スウェーデンにも同名のバンドがいたような気がするが、こちらは日本の三重県四日市市出身。 前身バンドのLSD時代はどうやらOUTRAGE風のスラッシュ・メタルを演っていたらしいが、改名に伴い、スラッシュ色を残しつつも、ACCEPTやTANKといったバンドを彷彿とさせる男気溢れるパワー・メタル・バンドへと劇的ビフォーアフター。'92年にWASTED RECORDS(№001という品番から察するに多分自主レーベル?)から4曲入りEP『ESCAPE』をリリースしてレコード・デビューを飾る。 優れた内容にも関わらず高評価を得る事は叶わず、バンドは本作のみを残して解散。(ちなみにBURRN!!誌のレビューは69点。Voが弱いとダメ出しをされていたが、この時期のジャパメタ・バンドは総じて同様の批判をされていたような印象がある) Gの萩智洋は後に同郷のメタル・バンドMANUPILATED SLAVESに4代目Gとして加入。4th『OATH IN BLACK TEARS』では本作からタイトル・トラックをカヴァーしていた。
同名のバンドがドイツにもいるようですが、こっちはフランスのブルターニュ半島南東部を流れるロワール川、その河畔に位置する港湾都市ナント出身の4人組。 数本のデモテープ制作とライブ活動で徐々に人気を獲得、’87年に1st『D.F.R.』デビュー。ゲイリー・ライオンズをプロデューサーに迎えて’89年に発表した2nd『SQUEALER’S MARK』はその年のフランス国内におけるHR/HM系アルバムTOP3に入る好セールスを記録したのだとか。 3rd『THIS IS WHAT THE WORLD IS ALL ABOUT』(’91年)を発表した後、’92年にバンドは解散。最期にライブ音源も発売されているが、メンバーはこれについて「レコード会社が勝手にリリースした」とあまり快くは思っていない模様。
短く(SHORT)鋭く(SHARP)衝撃的(SHOCK)。略してSSS・・・という中坊感覚全開なネーミングセンスが素敵な、 イギリスはリヴァプール出身の4人組スラッシュ・メタル・バンドが'07年に発表した1stフル・アルバム。 「リヴァプールの疾走王」とも「MUNICIPAL WASTEへのイギリスからの回答」とも評される彼らが聴かせてくれるのは、シンプルだが 即効性の高いGリフに、切迫感溢れる上擦りシャウトで畳み掛けてくるVo、そして1~2分台とタイトに絞られた曲展開を備えた、 まさに帯表記の「スラッシュ?パンク?ハードコア? NO, NO, THIS IS クロスオーバー!」を地でいくサウンド。 演奏はやや不安定だが、「でも演るんだよ!」的な心意気に溢れた、このガムシャラで前のめりな疾走感はかなり爽快。 全編でハードコア/パンク指数高めの走りっぷりを炸裂させる一方、リズムにはキッチリと緩急が効かせてあるし、 ⑨⑬といったインスト曲では、弾きまくるGがヘヴィ・メタリックな構築美を演出。特にメンバーが 「METALLICAへのトリビュート・ソング」と語る⑰は、アコギに始まりドラマティックに盛り上がりながら、 最後は再びアコギで叙情的に締め括られるという、起承転結を備えた7分以上に及ぶ大作ナンバーで、 直線的な本編の流れにメリハリを生み出す役割も担っている。 MUNICIPAL WASTE、D.R.I.、NUCLEAR ASSAULT辺りが好きな人なら必ずや気に入るであろう、バンド名に恥じぬ1枚。
NWOBHMの親子鷹(義理ですが)ことリューベン・アーチャー(Vo)とローレンス・アーチャー(G)が中心となって結成。STAMPEDEというバンド名は、彼らがそれ以前に在籍していたジミー・ベイン率いるWILD HORSESからヒントを得て名付けられたとのこと。 '82年にPOLYDOR RECORDSからシングル“DAYS OF WINE AND ROSES”を発表してデビュー。翌年にはライブ盤兼1stアルバムの『THE OFFICIAL BOOTLEG』を、'83年にはMAGNUMのKey奏者マーク・スタンウェイのセッション参加を仰いでレコーディングされた2ndフル『HURRICANE TOWN』を相次いでリリースするも、結局その他多くのNWOBHM勢同様、最後までレーベル側のサポートに恵まれずバンドは解散。 父・リューベンは堅気の道を選び、息子・ローレンスはその後フィル・ライノットのGRAND SLAMや復活UFOに参加。'92年にはUFOの一員として来日も果たし、その模様はライブ盤『LIGHTS OUT IN TOKYO』で聴くことが出来る。 そして'09年。STAMPEDEはまさかの復活を果たし、'11年には3rdアルバム『A SUDDEN IMPULSE』を発表。
金は出し渋るくせに、アルバム制作にはあれこれと口出したがるPOLYDORの横車によって、英国の曇天を思わせた1st『THE OFFICIAL BOOTLEG』に比べると、(快晴とまではいかないまでも雲間からお日様が覗く程度には)ライト&ポップな方向へとその作風が変化を遂げた'83年発表の2ndアルバム。 ライブならではの熱気と勢いも加味されていた前作と続けて聴くと、和やかさ大幅増の楽曲の変貌振りに驚かれるかもしれません。(両アルバムに収録されている⑥⑧の違いを聴き比べてみるのも一興かと) 尤も、『THE OFFICIAL~』に先んじデビュー・シングルとしてリリースされたキャッチーな名曲“酒と薔薇の日々”や、Keyを上手に取り入れた12インチEPの作風からも明らかな通り、元来ポップ・センスには長けていたバンドゆえ、個人的にはこのサウンド・スタイルも十分「有り」。リューベン・アーチャーの英国人シンガー然とした滋味を湛えた歌声、泣きや哀愁は薄れたものの相変わらずフラッシーなローレンス・アーチャーのGプレイは今回も好調ですよ。 「捨て曲なし」とまではいきませんが、ゲスト参加のマーク・スタンウェイ(MAGNUM)が持ち前の上品且つ華やかKeyプレイで高揚感を演出する“LOVE LETTERS”や、キラキラと眩い“TURNING IN CIRCLES”、仄かに哀愁を帯びたコーラス・ワークが印象的な“GIRL”等は本作ならではの名曲。
ドラマーとして現MR.BIGのパット・トーピーが参加。更に、後にHOUSE OF LORDSがカヴァーしてスマッシュ・ヒットさせた名バラード“LOVE DON'T LIE”や、アニメ『トランスフォーマー THE MOVIE』のテーマ曲“THE TOUCH”、映画『処刑ライダー』劇中歌として日本でもシングル・カットされた“HEART VS HEART”を収録する等、スタン・ブッシュのカタログの中でも一際多くのトピックを抱え、「代表作」と言ってもあながち的外れではない存在感を放っている、'86年発表の作品。 アメリカン・メロディアスHRという基本的な音楽性を素直に発展させる一方で、よりエネルギッシュなノリの良さが増量されているのは、名義を「STAN BUSH & BARREGE」に変えて、バンドっぽさをアピールしていることと無縁ではありますまい。 それでいて、無理に頑張ってハードにしてる感じというか、付け焼刃感はまるでないのだから、スタン・ブッシュというミュージシャンの曲作りの才には畏れ入りますね。フックが連続するメロディと、インスト・パートの聴かせ所も盛り込んだハードな曲調とが違和感なく同居する③⑤⑦辺りはその真骨頂。勿論、前作のAOR/産業ロック路線を受け継ぐ⑥、バラード②⑩なんかも素晴しい出来栄えです。 チャートを賑わすような成功こそ収められなかったものの、長らく再発が待ち望まれていた作品だけあって、捨て曲なしの完成度の高さは実に立派。欲を言えば国内盤の再発が叶えば尚良かったのですが・・・。