女性メンバーを擁するスラッシュ・メタル・バンドは珍しくない昨今ですが、メンバー全員が女性となるとちょっと前例が思いつかない、ブラジルはサンパウロ出身のトリオ・スラッシャー。(結成当初はツインG編成の4人組だったらしいが) '12年に制作したPVがYOUTUBEで話題となったことから、オーストリアのNAPALM RECORDSと契約を締結し、同年、1stデモを7インチ・シングル化した『TIME OF DEATH』でデビュー。 更に'14年には、プロデューサーにKORZUSのメンバーを起用してレコーディングが行われた1stフル『VICTIM OF YOURSELF』を発表。 アンドレイ・ボウジコフの手掛けたアートワークが目印の同作は、スピリチュアル・ビーストを通じて日本盤もリリースされている。
日本先行で人気に火が点いたNIGHT RANGERのデビュー作。(邦題は『緊急指令N.R.』) オジー・オズボーンとの活動で一躍その名をシーンに知らしめた「アーミングの鬼」ことブラッド・ギルスと、オクトパス奏法を操るジェフ・ワトソンというタイプの異なる2人の若きギター・ヒーローを擁し、更に敏腕ソングライターとしても鳴らすBのジャック・ブレイズ&歌えるドラマー、ケリー・ケイギーによるHR/HMバンドには珍しいツインVo体制。かてて加えてアラン・フィッツジェラルドのキラキラと眩く煌めくKeyに飾り立てられた収録曲は、これ見よがしのテクニック発表会に陥ることなく、躍動感溢れる疾走ナンバーから美しいバラードまで、ハードなエッジとキャッチーなメロディが絶妙な融合を果たしています。キャラの立ったメンバーに優れた楽曲まで揃い、しかもそれが然るべき時期に然るべきプロモーションを受けたならば、そりゃあ人気が出ないわけがない、と。 特に、シブがき隊の“ZOKKON命”にイントロをパクられたことでも話題を呼んだ(?)アルバムOPナンバー“DON’T TELL ME YOU LOVE ME”(邦題“炎の彼方”)は、ツインGがスリリングに駆け抜けるNIGHT RANGER屈指の名曲の一つ。次作収録の“SISTER CHRISTIAN”ヒット以降は「バラード・バンド」なるレッテル貼りと、売れ線を強要してくるレコード会社からのプレッシャーに苦しめられた彼らなれど、この頃はそうした悩みとは一切無縁に、シングル・カットされた②(最高第50位)、愁いを帯びた⑤、緩急の効いたバンドのテーマ曲⑩といったハードにロックする楽曲をイキイキとプレイ。演る側も聴く側も思わず笑顔になってしまう、ポジティブなエネルギー渦巻く名盤です。
“SISTER CHRISTIAN”(第5位)と“WHEN YOU CLOSE YOUR EYES”(第14位)という2曲のヒット・シングルを生み出すと共に、200万枚以上を売り上げてダブル・プラチナムに輝いた’83年発表の2ndアルバム。 ツインGがフラッシーなバトルを繰り広げる傍ら、ツインVoは美しいハーモニーを奏で、更にKeyがカラフルな彩りを加えるという、個性的なメンバーの技を存分に活かした贅沢な音楽性はデビュー作のスタイルを順当に継承。一方でHR/HM人気がオーバー・グラウンドへと浮上していく時代背景を反映させたかの如く、プロダクションはより耳ざわり良く、サウンドの方はより明るく華やかに洗練の度合いを高めています。 例えば今回“炎の彼方”ばりの疾走感や、“NIGHT RANGER”で聴かれたような曲展開といったへヴィ・メタリックな要素は抑え気味なれど、その分メロディはキャッチーに磨き上げられていて、コンスタントに良い曲が揃っているという点ではデビュー作をも上回る出来栄えではないかと。その好例が大ヒット・パワー・バラード“SISTER~”であり、リリカルなメロディが胸を打つ“WHEN YOU~”であったのかなと。 勿論、スポーツ・ニュースのテーマ曲が似合いそうな爽快な曲調と合唱を誘うコーラスが、毎回ライブにおいてハイライトを創出するOPナンバー“ROCK IN AMERICA”や、Keyを活かした“WHY DOES LOVE HAVE TO CHANGE”といったエネルギッシュなHRナンバーのカッコ良さも、本作の魅力の一翼を担っています。 NIGHT RANGERの代表作と言えば、やはりこの作品ということになるのでしょうか?
復活作『GOLD OF THE FUTURE』の高評価を追風に、今度は間を空けることなく'13年にリリースされた3rdアルバム。 哀感と涼感を宿したOPナンバー①が宣誓する通り、中心メンバー、トニー・ニヴァの伸びやかなハイトーンVoをメインに据えて、楽曲をフレッシュに彩るGとKey、それに涼しげなボーカル・ハーモニーとが如何にも北欧的な透明感を演出するメロディアスHRサウンドは、評判を呼んだ前作の作風を遵守。その一方で、続く爽やかに弾む②に明らかなようにハードポップ色も増量されていて、溌剌と駆け抜ける⑦なんてその象徴と言うべきキャッチーな逸品かと。 前作収録“GOLD OF THE FUTURE”の如きハードな名曲が見当たらないのは残念ですが、その分メロディの煌きには一層の磨きが掛けられています。絶品のフックラインを描き出すサビメロがNIVAの面目躍如たる①⑩をハイライトに、トニー・ニヴァの卓越した歌唱力が元々素晴らしい楽曲のポテンシャルを更に一段上のグレードへと引き上げている③⑤等、アルバム全編がメロディ愛好家の泣き所を突く至高のメロハー・ソングの大盤振る舞い。 「世が世ならヒットチャートを賑わしていても不思議ではないのに・・・」と思わせてくれる充実作。
このバンド名でジャケットにはガレー船のイラスト。髭面のむさ苦しいメンバーが屈強なバイキング・メタルでも演っていそうな感じですが、実際はノルウェーでも北欧でもなく、ニュージャージー出身の5人組。元々はNORTHと名乗っていたそうで、それが気に入らず、とあるライブ出演の際咄嗟にバンド名をNORWAYに変更して現在に至るのだとか。 本作は彼らが'08年に発表した2ndアルバム。前作『NIGHT DREAMS』(’97年)がアマチュア時代に作り溜めたデモ音源を取りまとめた自主制作盤だったことを踏まえると、レコード契約を得てプロダクションが向上、日本初見参作ともなったこのアルバムこそが正式なデビュー作と言えなくもないような? 音楽性は、甘美な哀メロに、Keyが醸し出す北欧ハードポップばりのキラキラ感と、大陸産のバンドらしいキャッチーなポップ・センスを加味したメロディアスHRサウンド。特にOPナンバー①は、声質自体が哀愁を帯びているVoの熱唱、泣きに泣きを重ねて来るG、キャッチーなコーラス・ワークに厚盛りされた美麗なボーカル・ハーモニー等々、このバンドの強みが遺憾なく発揮された名曲で、これを聴いた時点でこちとらアルバムの完成度について確信を持ったぐらいですよ。事実その期待は裏切られることなく、2曲目以降は若干アメリカンな色合いが強めつつ、Gは終始ウェットなメロディを紡ぎ、楽曲も哀愁のハードポップ⑦をハイライトに高いクオリティをキープし続けます。 同郷のメロハー・バンドDEPATUREのシンガーだったデヴィッド・ボールドウィンが歌っているという次作『RISING UP FROM THE ASHES』も聴いてみたくなりますね。
デビュー作『REQUIEM FOR SCREAM』が絶賛された俊英ギタリスト、若井望(G)率いるプロジェクトが'15年に発表したミニ・アルバム。 ミニといっても全7曲でトータル40分に迫る収録時間は、アナログ時代であれば立派にアルバム級のボリューム。更に、ドヴォルザークの“新世界”のメロディをフィーチュアして突っ走るネオクラシカルな①を皮切りに、本編はデビュー作において披露した劇的且つメロディックな正統派HMサウンドをブレなく継承。前作ではバック・コーラスのみの参加に留まっていた女性シンガーの榊原ゆいとFUKIを、今回はガッツリとリードVoとして全面起用したり、アルバム・ハイライトの①を特別ゲストのロブ・ロックに⑦で再び歌ってもらうアイデアも、「こやつめ、やりおるわい」と。 そうした戦略から、収録曲のクオリティ、そして若井自身のエキサイティングなGプレイまで、本作には「次の作品までの繋ぎとして、ちゃちゃっと作ってみました」的なやっつけ仕事感は絶無。リスナーに満足感を与えつつ、同時に「もっと聴きたい」との飢餓感も煽るという、難しい注文にきっちりと答えを出してみせた1枚。
コアなスラッシュ・メタル・バンドから、「速い曲もやるメタル・バンド」へと、音楽性を拡散させ始めた'91年発表の4thアルバム。 勿論、スラッシーな突撃チューンは健在だが、そういった曲よりも、アコースティック・ギターと、 しっかりと「歌う」ジョン・コネリーのVoをフューチュアしたヘヴィ・チューン“TOO YOUNG TO DIE"のような曲の方が強く印象に残る・・・ という事実が、本作の方向性を端的に物語る。(疾走曲にしてもストレートに駆け抜けるのではなく、静と動/緩急が演出されている) そして極めつけが、インスト大作“SAVE THE PLANET"!繊細なアコギ・プレイにキーボード・ソロまで盛り込まれたそのドラマチックな曲展開には 「一体どこの様式美バンドだ?」と唸らされること請け合いの異色の名曲。 ダイ・ハードなスラッシュ・ファンからは失望の溜息の一つも聞こえて来そうな作風ではあるが、 少なくともメタル好きなら一聴の価値ありと、個人的には信じて疑わない次第。
風光明媚な観光地としても有名な、イタリアはシシリー島、パレルモにて'82年に結成。 元々はプログレッシブ・ロックをプレイしていたらしいが、メンバー・チェンジを 繰り返しながら徐々にスラッシュ/スピード・メタル色を強めて行き、'86年~'87年に 制作したデモテープ『CHOIR OF THE DESPERATION』と『THE REALITY SO NEAR』が評判を呼び、 それが切っ掛けとなって'89年にSPV/STEAMHAMMER RECORDSと契約。 同年には、プロデューサーに名手ハリス・ジョンズを起用したデビュー作『LOST IN WONDERLAND』を発表する。 (尚、国内盤のライナー・ノーツには「ツインG編成でレコーディング」と書かれているが、 内ジャケには、シロ(B)、ジーノ(G、Vo)、ジョヴァンニ(Ds)という 3人のメンバーの写真しか載っていない。ヘルプ要員?) バンドは90年代に入り活動を停止しているが、'06年4月にイタリア国内を ツアーしたとの情報あり。再結成したのかな?