イタリアのフェラーラを拠点に、'08年に結成された新人スラッシュ・メタル・バンド。 '09年に4曲入りデモと、デビューEP『HEAVY DANCE』を制作。更に'12年に1stフル『FOR HUMANITY』を発表すると、アルバムをフォローするためイタリア中をツアー(小規模ながら国外も周った様子)。 そして'14年には、新たにSCARLET RECORDSと契約を交わしたバンドの2ndフル・アルバム『BURST INTO THE QUIET』のリリースが決まっている。
数年前、引越しに伴う金欠とCDの収納スペース不足から、メロデス系の作品の大半を手放してしまったのだが、 SADISTの『ABOVE THE LIGHT』とかEBONY TEARSの『眠れぬ夜の物語』とか、大のお気に入りだったために 売っ払う事が出来ず手元に残した作品も幾つかあって、GATES OF ISHTARが'98年にリリースした、 ファンの間では彼らの最高傑作と評価の高いこの3rdアルバムも、そうした作品の1つだった。 DRUM GODこと、名手オスカー・カールソンの切れ味鋭いドラミングに牽引される形で、強力なフックを備えたGリフと 悲哀に満ちたメロディが、デス/スラッシュ・メタリックなアグレッションを撒き散らしながら激走する楽曲の数々は、 全9曲、荘厳且つドラマティックなインスト曲⑨を除くほぼ全編が、タイトなスピード・ナンバーで固められ、 上で別の方々が仰られている通り、確かにその作風はAT THE GATESの名盤『SLAUGHTER OF THE HOUSE』を彷彿とさせる仕上がり。 とにかく光っているのがオスカーの求心力溢れるドラミングで、ただ手数が多いだけでなく、頭よりも体に強烈に訴えかけてくる (デス・メタルよりもスラッシュ・メタル寄りな)キャッチーなリズムの組み立ての上手さが堪らなく気持ち良い。 中でも本編前半のハイテンションな飛ばし具合、殊に鬼のようなバスドラの刻みっぷりが痛快極まりない④は、本作を代表する名曲でしょう。 安っぽいGの音色とか、バランスの悪い音作りがイマイチなれど、メロデス・ファンのみならず、 スラッシュ・メタル・ファンにも自信を持ってお薦めできる力作。
30名以上に及ぶジャーマン・メタル・シーンのミュージシャン達が、「ヘヴィ・メタルは暴力的と決めつけ、 スポイルしていく傾向にあるTVメディアに対して抗議する」目的で集結した、ジャーマン・メタル版USA FOR AMERICA・・・ というかHEAR'N AIDなプロジェクト、GERMAN ROCK PROJECT。 本作は'91年に発表されたシングルで、トム・ハーゲンとグドラン・ラオスが作詞/作曲を手掛けたバラード “LET LOVE CONQUER THE WORLD"のバージョン違い3曲を収録。このうち「METALバージョン」では、 14人のシンガーと共に、総勢18人のギタリスト達がリレー方式でGソロの熱演を繰り広げている。 かの名曲“STARS"と比べてしまうと、参加人数の割りにギタリストのキャラ立ちがイマイチとか(まぁ無理もない)、 大らかさが売りの和み系バラードゆえ、Gソロが10分以上も続くといい加減ダレるとか、色々と気になる点はあるものの、 一種、お祭り騒ぎのようなこの手の企画に、細かい突っ込みは野暮というものでしょう。豪華ミュージシャン達の共演を、 素直に楽しむのが吉かと。1つでも気になるバンドが参加しているのなら、とりあえずご一聴をお薦めさせて頂きます。 ちなみに、本作の売り上げの10%は「熱帯雨林保護基金」に寄付されたのだとか。
名バラード“I’LL SEE YOU IN MY DREAMS”をスマッシュ・ヒットさせ、2枚のアルバムを残して解散したメロディアスHRバンドGIANT。90年代以降は復活と休眠を繰り返していた彼らがFRONTIERS RECORDSの仕切りで3度目の帰還を果たして'22年にリリースした、通算では5枚目となるアルバムがこちら。 オリメンのデヴィッド・ハフ(G)とマイク・ブリグナーディ(B)は健在ながら、売れっ子プロデューサーとして多忙な日々を送るダン・ハフは今回も不参加で、その穴を埋めるのはFRONTIERS RECORDSの必殺仕事人アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ。シンガーはテリー・ブロックに代わって同レーベル一押しの逸材ケント・ヒッリ(PERFECT PLAN)が担当しています。正直なところ、顔触れ的にもサウンド的にも「GIANTの新作」っつーよりは「良くプロデュースされたFRONTIERS RECORDS発のプロジェクト・アルバムを聴いている」ってな感覚に陥ることもしばしばな本作ですが、かと言って、じゃあそれはマイナス要素なのか?と問われれば、さに非ず。抜群のソングライティング・センスとエモーショナルな歌声に下支えされた本編は、高いヒット・ポテンシャルを感じさせるバラード⑥など、フックの効きまくった捨て曲の見当たらない充実度を誇っていて、中でも本編ラストに置かれた⑪は一際インパクトを放つ名曲。果たしてこれがGIANTらしい楽曲なのかどうかはよう分かりませんが、ともかく自分の中で’22年のベスト・チューン候補に燦然と輝くメロディのヨロシク哀愁ぶりにゃ悶絶せざるを得ませんでしたよ。 次回作はもう少し早いスパンでのリリースを、とお願いしたくなる充実作。
ダン・ハフ(Vo、G)と言えば、歌もギターもエモーショナル、曲作りに冴えを発揮し、現在はロック/カントリー分野で引く手数多のプロデューサーとして名を馳せる傑物。その彼が弟のデヴィッド・ハフ(B)、アラン・パスカ(Key)ら、名うてのセッション・ミュージシャン達と結成したGIANTが、1st『LAST OF THE RUNAWAY』のスマッシュ・ヒット後EPIC RECORDSへと移籍して、'92年に発表した2ndアルバムがこちら。 折からのグランジ・ブームに巻き込まれ、セールス的には不本意な結果に終わってしまったと聞く本作ですが、高度な演奏技術と卓越したアレンジ・センスをキャッチーで分かり易い楽曲作りのためにに惜しみなく注ぎ込んだ、ほんのりブルージーな香り漂うメロディック・ロック・サウンドは、傑作だった前作にだって引けを取らない充実っぷり。 90年代という時節柄、メロディの透明感やKeyの活躍の場といったAOR/産業ロック色はやや減退。一緒に歌いたくなるアリーナ・ロック然としたOPナンバー①、7分以上に及ぶ重厚且つドラマティックな②、あるいはホットなGプレイをフィーチュアした疾走ナンバー⑥等に代表される通り、今回はよりダイナミックにロックしているとの印象が強い作風です。ただそうした楽曲においても必ず耳を捉えるメロディやコーラス・ワークが仕込まれていて、大味感の蔓延を巧みに逃れているのがニクイ。PVも作られたキャッチネスと仄かな哀愁の同居が秀逸な名曲④、泣きまくる⑤と大らかな⑩という2種のバラードで本領が発揮される、ダンの歌とギターにも涙を誘われずにはいられませんて。 発表のタイミングがもう少し早ければ、ヒット・チャート上位にランクインしたって不思議ではなかった力作。
イアン・ギランに対しては、長らく「リッチーを煩わせる厄介者」という(相当に偏った)悪印象を抱えていたのですが、そのような彼に対する過小評価はGILLAN時代のアルバムを体験することによって、遥か彼方へと吹っ飛ばされることになりました。 全英チャート№1の座に輝いた本作(3rd)は、GILLANとNWOBHMを語る上で欠かすことのできない重要作(ジャケットからは想像し難いですけどね/笑)。前2作に比べると破天荒さが幾分薄まりを見せてはいるものの、ワイルドに唸りを上げるバーニー・トーメのG、フラッシーなKeyワークでサウンドを華麗に彩るコリン・タウンズ、スピーディ且つラウドに疾走するジョン・マッコイ&ミック・アンダーウッドのリズム隊・・・と、プレイもアピアランスも個性的な一癖も二癖もある連中を、バンドとして堂々まとめ上げるギランのカリスマ性は、一層研ぎ澄まされて絶好調。 楽器陣が火花を散らしてスリリングに疾走する“BITE THE BULLET”で余裕の喉を響かせたかと思えば、憂いを帯びたドラマティックな“IF I SING SOFTLY”は伸びやかに歌い上げ、更に“NO LAUGHING IN HEAVEN”では字余り気味の歌詞をハイテンションに速射する早口Voを披露・・・といった具合に、その歌声は第二の黄金時代を迎えてもうオーラ全開ですよ。 デビュー以降、ホップ→ステップ→ジャンプの要領で遂に英国HR/HMシーンの頂点に立ったGILLANでしたが、これを最後にトメさんが脱退。後任ギタリストとして現IRON MAIDENのヤニック・ガーズが加入し、バンドは新たな局面を迎えることになります。
全英チャート・トップ10に食い込むヒットとなった『Mr. UNIVERSE』の好評を受けて、'80年に矢継ぎ早に発表された2ndアルバム。 バーニー・トーメ(G)やジョン・マッコイ(B)らも積極的に曲作りに関与するようになった結果、「バンドらしさ」が強化。要所に配された疾走ナンバーや、先行シングル“SLEEPING ON THE JOB”といったイキの良い楽曲が、70年代HRスタイルに別れを告げ、騒々しくハジける本編の「80年代型HMテイスト」を盛り上げます。 ヨーロッパ的な暗さや重さよりも、イアン・ギランのカラッと陽性な歌声を活かした、ワイルドで豪快なノリの良さを前面に押し出す一方、重厚且つドラマティックな“ON THE ROCKS”、B主導でヘヴィに沈み込んでいくような“NERVOUS”もあったりと、この「何でもあり」な感覚がGILLANの魅力でしょうか。アドリブ全開のギランのVoと、コリン・タウンズによるジャジーなピアノをフィーチュアしたブルーズ“IF YOU BELIEVE ME”も最高にクール。 タイトル通り「栄光への道」をひた走るバンド内部で上昇気流となって渦を巻くエネルギーが見事に封じ込められた、全英チャート最高3位をマークする大ヒットを飛ばしたというのも納得の力作です。
表向きの理由は「ギランの喉に出来たポリープの治療のため」、実際は「DEEP PURPLE再結成に向けての布石」からGILLANのラスト作となってしまった'82年発表の5thアルバム。 ヤニック・ガーズ(G)が曲作りに本格参戦したこともあって、てっきりヘヴィ・メタリックな作風で攻めて来るものと思ったら、意外や、キャッチーに弾む“LONG GONE”や、哀愁漂う伸びやかなメロハー・チューン“LIVING A LIE”といったこれまでになくポップな楽曲を収録。基本的に本作は、前のめりな豪快さよりも整合性を重視していた前作『DOUBLE TROUBLE』のスタイルをそのまま受け継いでいました。 尤も、「とにかく時間がないのでちゃっちゃと作りました」的な粗さも目立った(トーメのペンによる楽曲も収録されていた)『DOUBLE~』に比べると、しっかりと煮詰められている印象で、何よりOPを飾る疾走ナンバー“WHAT'S THE MATTER”、“蒼き海原”なる邦題もカッコイイ重厚な“BLUESY BLUE SEA”を手始めに、本編に「勢い」が戻ってきている点もポイント。 英国HR然としたドラマティックな曲展開の上に、浮遊感を湛えたギランのVoが乗っかることで摩訶不思議な味わいを生んでいる“DEMON DRIVER”は、このアルバムならではの名曲と言えるのではないでしょうか。 まだまだ多様な可能性を感じさせてくれるアルバムだけに、これが最終作とは残念至極。
GILLANが'79年に発表した本1stフル・アルバムは、アートワークこそAORシンガーのソロ作品のようでHR/HM的な凄みはゼロですが、内容の方はと言えば、これがイアン・ギランのDEEP PURPLE脱退後の試行錯誤を断ち切り、開き直ったかの如くアグレッシブなサウンドがギュウ詰めで最高にエキサイティング。 NWOBHMの隆盛と歩調を併せるかのように突っ込み気味に疾走する“SECRET OF THE DANCE”や“ROLLER”“MESSAGE IN A BOTTOLE”といったスピード・ナンバーの数々は、「ヘヴィ・メタル」と表現しても全く差し支えのないハッちゃけぶりが魅力。 またKey奏者コリン・タウンズの存在が、ギランの強烈なシャウト、バーニー・トーメの豪快なGプレイとタメを張る程に目立ちまくっているのも個人的には嬉しいところです(作曲面でも大きく貢献)。“SHE TEARS ME DOWN”や“MR. UNIVERSE”は、彼の渋さと華麗さの同居した流麗なKeyワーク貢献度大の名曲。そしてラストを締める号泣モノのバラード“FIGHTING MAN”では、その三者の個性がエモーショナルに絡み合うという・・・。 イアン・ギランのVoが真価を発揮するのは次作以降に譲りますが、GILLAN史上最も攻めの姿勢が打ち出された本作は、HR/HMファン向け入門盤としてお薦め1枚です。
‘81年6月、バーニー・トーメ(G)脱退5日前に、GILLANがドイツのアーヘンで行ったライブの模様を収めた実況録音盤。中古屋で見かけて「へー、こんなん商品化されてたんだ」と思わず興味に駆られて購入してしまいました。 ライン録りなのか、オーディエンスの歓声が殆ど入っておらず、また本来ショウのOPを飾っていスピード・ナンバー“UNCHAIN YOUR BRAIN”が録音上の不備で未収録という痛恨のミステイクが惜しい作りながら、代表作『FUTURE SHOCK』(’81年)を発表し、脂の乗り切っていた時期のGILLANのライブゆえ、楽曲も演奏も火が出るぐらいにホットでスリリング。「パンク世代のジミ・ヘン」トーメのGは脱退直前とは思えぬテンションの高さですし、何より圧巻なのが、プレイにしろアピアランスにしろ一癖も二癖もある個性派揃いの面子をがっちり従えて、1曲目からキレキレの歌声をブッ込んでくるイアン・ギランその人ですよ。彼のVoにリアル・タイムで触れた最初の作品が(よりにもよって)『紫の聖戦』だったこともあり、正直ギランの実力を侮り倒していた我が身なので、こうして後追いで過去の音源に触れる度に、彼に対する再評価ゲージがグングン高まっていくのを感じる次第(加齢と折り合いをつけた現在のギランのVoも嫌いじゃないですが)。特にDEEP PURPLEとはまた異なった破天荒さが炸裂する“SMOKE ON THE WATER”を皮切りに、ヒット曲“NEW ORLEANS”、お馴染みの“LUCILLE”と続く終盤3曲の怒涛の畳み掛けには、GILLANのライブ・バンドとしての魅力が凝縮されています。 この編成でのライブが見てみたかったなぁと、叶わぬ夢を抱かずにはいられない1枚。
テイチクから国内盤CDが再発された際「まぁNWOBHMを代表するバンドだし、勉強しておくかな」ぐらいの資料的価値重視で購入した作品でしたが、実際に聴いてみて、HMのエッジとパンキッシュなノリの良さを併せ持った(バンド曰く「ニューウェーブと呼ぶには重く、HMと呼ぶにはあまりにパンク」)なサウンドの問答無用のカッコ良さにノックアウトされてしまいましたよ。 案外キュートな(?)歌声とハスっぱなコーラス、豪快にかき鳴らされるGリフにタイトで埃っぽいリズムとがワイルドに押し出してくる、MOTORHEAD直系ロックンロール・サウンドで媚や虚飾を排除したスケ番チックな骨の太さを提示する一方、必要以上に男勝りたらんとする力みや気負いを感じさせない自然体なバランス感覚も上々で、何よりGUNの名曲“RACE WITH THE DEVIL”の見事な料理っぷりからも分かるように、メロディがいかにも英国的な陰りを湛えている点もナイス。クールなリフ・ワークのみならずブルージーなソロ・パートにも冴えをみせるケリー・ジョンソン('04年に脊柱癌で逝去)のGプレイは本作の聴き所の1つですよ。 「サイレン音が取り入れられた楽曲にハズレなし」の自説を補強してくれる硬派なOPナンバー“DEMOLITION BOYS”から、キャッチーな名曲“EMERGENCY”を含む本編後半に至るまで、頭を振らずにはいられない好戦的なエネルギーに満ち溢れた1枚。
ドラッグで身を持ち崩して過去の人になりつつあったグレン・ヒューズ、起死回生の一撃となった力作『FROM NOW ON・・・』リリースに伴う日本公演(前座はスウェーデンのFORTUNEでしたっけね)の模様を捉えたライブ・アルバム。 「THE VOICE OF ROCK」コールに導かれ、いきなりド級の名曲“BURN”によって幕が開き「掴みはOK!」となるショウは、当時の最新作『FROM~』からのナンバーを中心に据えつつ、DEEP PURPLE、TRAPEZE、HUGHES/THRALLの名曲も要所に配置される等、その豪勢なセットリストはまさしく「ヒストリー・オブ・グレン・ヒューズ」といった趣き。その上でクスリ断ちに成功し、心身ともに絶好調なグレンが熱の篭ったパフォーマンスを繰り広げてくれるのだから、これで盛り上がらない訳がない。 バックを固める北欧ミュージシャン勢も、テクニカル&ヘヴィ・メタリックな演奏で彼を的確にサポート。のみならず、彼の地独特の透明感をもってグレンの「黒っぽさ」や「ファンキーなノリ」を中和する役割も果たしており、特に、メロウな叙情HRナンバー“FROM NOW ON・・・”と、TRAPEZE時代の名バラード“COAST TO COAST”におけるパフォーマンスは、両者の持ち味の最良の部分が見事に引き出されていて圧巻の一言。ソウルフルに炸裂するグレンのハイトーン・シャウトには魂が震えるってもんですよ。 それまで知識としてしか知らなかったグレン・ヒューズというシンガーの凄味を、実感を伴って理解させてくれる1枚。ゼロ・コーポレーションが残した数々の遺産の中でも一際眩い輝きを放つ「LIVE IN JAPAN」物の傑作だと思います。(あからさまに手が加えられている歓声の処理は評価が割れるところかもしれませんが、個人的にはこれは「有り」)
グレン・ヒューズが’06年に、オーストラリアはシドニーのライブハウスで行ったアコースティック・ギグの模様を収録した実況録音盤。こんなんが発売されているとは露知らず、最初目にした時は簡素なジャケットの印象も手伝って海賊版かと思ってしまいましたよ。 聴き始める前は「アコースティックで70分のライブはキツイんじゃないかなぁ」と不安に思っていたのですが、これが完全なる杞憂。リラックスしたグレンのMCや観客の暖かい歓声がアットホームな雰囲気を伝えてくれるライブは、いきなり名曲“COAST TO COAST”で開幕。新旧のソロ・アルバムからDEEP PURPLE、TRAPEZEに至るまで、グレンのキャリアをざっくり振り返る構成のセットリストは、名曲群の大盤振る舞いな上、抑えたトーンから一気に駆け上がるハイトーンの伸びといい、エモーショナルな表現力といい、齢50(収録当時)を超えて尚衰えることを知らない彼の神掛かった歌声が、ライブにダイナミックな起伏を作り出してくれていて、「弛緩」「中弛み」といった負の要素の発生を許しません。 殊に、“サテンの夜”の邦題で知られるMOODY BLUESの泣きのバラード“NIGHTS IN WHITE SATIN”、マーク・ボニーラのソロ『AMERICAN MATADOR』(’93年)にゲスト参加した際にも歌っていたPRCOL HARUMの代表曲“青い影”、そして観客の唱和を誘う第3期DEEP PURPLEが生んだ名曲“MISTREATED”におけるグレンの熱唱は、まさに「ソウルフル」という言葉の意味を体現するかの如き素晴らしさを誇っていますよ。 シンガー/グレン・ヒューズの実力を十二分に堪能できる1枚。HR/HMサイドにフォーカスした『BURNING JAPAN LIVE』(’95年)と併せて聴くと一層趣き深いのではないかと。