『BOUND TO BREAK』という名盤をモノにしながら坂本英三が脱退。バンドは直ちに後任として「和製グラハム・ボネット」の異名を取る逸材Vo、森川之雄を加入させ、再びクリス・タンガリーディスをプロデューサーに起用してレコーディング作業に突入、'88年にこの4thアルバムを発表した。 まさにメタルを歌うのに打ってつけだった坂本の金属質な歌声を「剛」とするなら、日本人離れしたパワーのみならず、情の深さも感じさせる森川の歌声は「柔」。そうした彼のしなやかな歌唱を得た事で、HM以外の何者でもなかった前3作のガチガチに硬派な鋼鉄路線に比べると、今回はKeyを隠し味に使用しサウンドが一気にスケールアップ。また、時に歌謡曲的臭みを発するメロディがこれまで以上に哀愁を帯びてキャッチーに練り込まれる等、より幅広いリスナー層にアピールし得る魅力を備えるに至った。 本作のハイライト・ナンバーたる“GYPSY WAYS”“LOVE IN VAIN”“CRYIN' HEART”“SHOUT IT OUT”を筆頭に、収録曲全てについて詳細に語れてしまうほど名曲が詰まった本編は『BOUND~』にも匹敵する捨て曲皆無の充実っぷりで、個人的にはANTHEMの全アルバムの中でもトップレベルで愛して止まない1枚。 確か柴田直人も、このアルバムが最もお気に入りだったんじゃなかったっけ?