ロシア産のメタルバンドが2013年にリリースした1st。9曲入り30分というランニングタイムの短さ、英訳するとストレートすぎるBACK TO 80’なスタイルに眉をひそめる方もいるでしょうが、80年代のスコーピオンズにも通ずるような大衆性、メロディアスで叙情的な哀愁味溢れるHM/HRサウンドに今風の生々しい硬質感をまぶしロシアらしい雄々しいさで整えた今作は、正統派マニアなら手を出しても損はしない一枚でしょう。ギターリフを軸に活きのいいギターワークは華やかさを彩り耳馴染み良く飛び込み楽曲の完成度も高い、クラシカルな⑧やバイオリンも活躍する④、女性シンガーが参加した⑤⑦なんかもアクセントとなり剛柔取り揃えた構成は飽きがこないように工夫されている。勿論彼らの持ち味は⑥のようなアルバムタイトルにもなったパワフルなメタルソングなんでしょうが、無駄をそぎ落としたスッキリ感は聴いていて心地よいし清さに好感が持てます。そしてロシアらしい翳りと哀愁がありながらも垢ぬけたポップセンスを散りばめた叙情派HM/HRサウンドは健康的ですらありますね。妙にエロいアルバムジャケットを見ながらロシアンメタルの奥深さに触れました。まだまだあるなロシアには
2013年にMICHAEL SCHENKER'S TEMPLE OF ROCK名義でリリースされた一枚。Voドゥギーホワイトにスコーピオンズのリズム隊、ハーマンとフランシスにkeyはフィンドレ(LIVEでは大活躍ですの彼です)と言うメンツがマイケルをバックアップ、前任のマイケル・ヴォスの甘美なメロディ路線とは毛色の違う濃厚な楽曲を詰め込んだアルバムを披露してくれました。ある意味、ドゥギー色の強い様式美路線を意識したアプローチも取られマイケルの扇情的なギタープレイも冴え渡り、泣きのフレーズも導入されております。とは言え、マイケルがこういうアプローチを試みるとは思ってもみず、少々不思議な気持ちにさせられます。ドゥギー色を生かした楽曲にMSGとはまた違う濃厚さが今作の評価の分かれ目でしょう。往年の空気とは違うマイケルの艶やかなギターはマンネリ傾向と言われようとも色あせる事はありませんね。やはり上手いし独特のタイム感は彼ならではの味わいですね。
国産HM/HRバンド”十二単”のシンガーだった藤原正紀のソロアルバム。紆余曲折を経てリリースされた幻の一品ですね。元々はバンド名義でのリリースでしたが、大人の事情でソロ名義にさせられたらしく、バンド時代よりは明らかに歌主体のライトな方向性となり重さも削られているのですが藤原のパンチの効いた歌声は迫力十分だし十二単の片鱗を随所に感じさせる楽曲もあり、十分ハードなロックサウンドとして楽しめるでしょう。ちなみにギターは後にアンルイスのバックや再結成BOWWOWでもギターを弾いていた八重樫浩、ドラムはJUDY AND MARYの五十嵐公太、キーボードには三国義貴がメンバーとして名を連ねており、違った意味で楽しめる要素もあるかと思います。歌謡路線も藤原が男を魅せているその姿が最大の聴きどころでしょうね。国産メタルバンドが1986年に不遇を味わいソロ名義の憂き目にあうもギリギリのところで捨てきれない精神性も反映されている資料的な価値も高いハードな一枚、歌モノが気にならない方なら楽しんでもらえると思います。