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JOURNEY - Arrival - Higher Place ★★★ (2022-11-22 12:18:55)

爽快ですねぇ
窓を開け海岸線沿いをドライブしたいです
お帰りジャーニーである


JOURNEY - Arrival - Livin' to Do ★★★ (2022-11-22 12:18:14)

ニール渾身のブルースギター
その期待に応える歌声
エモーショナルを際立たせたアーバンかつブルージーな一曲
これもジャーニーである


JOURNEY - Arrival - Loved By You ★★★ (2022-11-22 12:16:10)

狙いすぎだがオリエンタルな雰囲気もありムード満点である
次の曲との繋がりも良く曲順的にも素晴らしい位置である
新シンガーの挨拶代わりには丁度良いだろう


JOURNEY - Arrival ★★★ (2022-11-22 12:15:11)

やはりバンドを去ったというか、予定調和とも取れるスティーブ・ペリーの脱退劇。その後も復活の話がないので、ゴシップネタもまんざらでもないのだろう。
時代的にも、JOURNEYのようなバンドが立ち入る隙も無く、今更感も強い中で日本先行という形で世に出た一枚。ドラムも抜けたのだが、これが唄えるドラマーとして今では知られるディーン・カストロノヴォを迎え、新たなるフロントマンには、スティーヴ・オウジェリーという前任者の穴埋めを行うのに適した逸材をゲット。イメージの強いバンドだけに、後任探しには苦労したろう。余りも違えば文句を言われる、かといってモノマネタレントでは話にならない。
そういう観点で見れば、同系統の素晴らしいシンガーを連れてきたのは大正解だ。スティーブ・ペリーの凄さは、あの語尾に掛けるヴィヴラードにある、中々ああいうテイストでは唄えない、その類い希な表現力を持つペリーと比較されるオウジェリーは、自分の型で勝負していた。モノマネではない完コピとい離れ業、その最大限の努力には賛辞を送りたい。

とは言え、楽曲の方は少々置きにいった感が強いので、ボートラ入の15曲は少々中弛みを覚える。もう少しガツーンとくるのを散りばめれば印象も違うのだが、それは趣味趣向の問題、一曲一曲の出来映えにケチのつけようなど無い、ジャーニーの名に恥じない優れた一枚だ。今となっては無かった事にもなりかけているので、見逃したジャーニーファンは勿論だが、若いメロディアスロック好きにもクラシックサウンドとして推しておきたい。


IRON ANGEL - Emerald Eyes ★★★ (2022-11-21 12:06:48)

スピード狂の間では知らぬモノはいないジャーマンスピードメタルバンドが2020年にリリースしたフルアルバム。復活後2枚目のアルバムですね。この時点では前作を聴いていないので比較は出来ないが、そのキレっぷりに驚きを隠せない。
良い意味で丸くならない初期衝動を煽るスピード感、そして現代的なマッシブさも手に入れたスタイルは腰が据わりまくっており、スピードとパワーの両輪を軸に激走である。昔のように突っ走るだけでは無いスローパートも盛り込みタップリを見せ場を作っている。
ヘヴィメタルという言葉以外では形容しがたい本気のサウンド、伝統的なマナーを遵守する、その姿勢に最大の敬意を払いますね。古さに埋没しないギターチーム、同じ食材ながらも豊富なレシピで対応と、多くのメタルファンを迎え撃つだけの準備は整っています。今の若い人が聴いても十分に奮い立たせる攻撃性とアイデアを揃え、このバンドが画掲げるのは、古い事がアカン事では無い、これのスタイルを信じるモノは救われる。そういうクラシックな音で埋め尽くされていますよ。
堅実さは自分たちの型をもっている証拠、その強みを最大限に生かしています。


David a Saylor - Ship to Nowhere ★★★ (2022-11-20 14:45:00)

コンスタントにソロアルバムをリリースする主役のデヴィッドさん。PUSH UKのメンバーもサポートに回り、ソロ名義ではあるのだが、バンド感も強いのがポイント。彼の熱量はあるがクリアーな歌声、その塩梅が暑苦しさを緩和しており、ロニー・ロメロから灰汁を抜いたようなパフォーマンスは唄モノマニアにとってはありがたい存在だろう。
少々回りくどい楽曲もあるのだが、それでも唄がメインである事に変わりは無く、ワンパターンに陥らない楽曲構成とベタさを味方につけ、冷静と情熱の間だなパフォーマンスで魅了してくる。
これほどのクオリティながらマニア向けの域を出ないのは、Aor Blvd Recordsの流通に問題があると言われている。余りにも少ないプレス枚数が招く悲劇が原因なのか、欲しくても手にすることが出来ないという事象も多く、サブスクも弱い。オマケに本人は他界してしまった。これじゃねぇ、今となっては惜しい人を亡くしましたです。
それだけに、今更再発に手を上げるメジャーレーベルもないだろうが、上手い唄と、熱の籠もったメロディックメタルの持つ情念とロックな熱波、そして大人が聴いても恥ずかしくないスタイリッシュに染め上げたハードサウンド、この絶妙なバランス感覚で勝負をすることで退屈なAOR調の唄モノハードサウンドに陥らないですんでいます。
イントロを聴き、オッと身を乗り出させるナンバーも多く、その一曲の完成度は目を見張るものがあるでしょう。甘いだけじゃないハードさがポイントでしょうね。


PERFECT CRIME - Blonde On Blonde ★★★ (2022-11-17 18:15:57)

Blonde On Blondeから改名、そしてアルバムタイトルが『Blonde On Blonde』ってややこしい事をするなよ。収録曲も被ってんじゃないのか、ツインヴォーカルからベンテ・スマーヴィク一人になったが、音楽性に大きな変化は無く、むしろ、トニー・プラッタがミキシングを担当、プロデューサーにバーニー・マースデン、そういう縁もあるのかキーボードはドン・エイリーときている。こうなって外すわけが無い、日本人好みのメロディアスハードスタイルは、大映ドラマの主題歌になりそうな曲もあったりと、癖が薄まった分、親しみやすさも増量され、サウンドプロダクションの強化も功を奏している。
ただ、一撃必殺というのか、このバンドの名刺代わりとなるような強力なナンバーがあるのかと言われると若干弱さを感じる。そのあたりに不満も出そうだが、個人的には、ハードサウンドで疲弊した耳を休ませるのに丁度良く、ハートの北欧版的なニュアンスで楽しめると思いますので、イマイチ、日本で知られていない分、こんなんありますよと、唄モノロックマニアにそっと教えておきたいですね。

でも日本でも需要のあるスタイルだけに、どうして後年、ゼロコーポレーションあたりから再発盤が出なかったのだろう?契約に当たり法外なギャラでもレーベルから要求されたのだろうか?普通に出ていてもおかしくないクオリティなのになぁ。


BLONDE ON BLONDE - Labyrinth of Love ★★★ (2022-11-17 17:56:20)

ノルウェー産の二人の女性シンガーがメインを張るメロディアスロックバンドの1st。クリス・キャンディのキャリアについては知らないがもう一人の女性シンガー、ベンテ・スマーヴィクは、ノルウェーのポップロックグループの晩年でヴォーカルと担当していたらしい。その後、このバンドの母体となるノルウェーのメタル黎明期に活動していたROADのアルバムにゲスト参加。そういう関係性があるのか、このバンドのバックメンバーはROADからきている。ちなみのそのメンツであるが、後年ヨルン・ランデのソロに参加、息の長いミュージシャンを人生を歩んでいますね。
複雑に入り組んだ人間関係も見えてくるが、ここで展開されるスタイルはハスキーヴォイスと癖の無い歌声を軸に、メロディアスはハードポップサウンドを嫌み無く聴かせてくれる。その分、刺激は少なめだが、逆を言えば裏切らない定番感は強く、北欧風味満点のソフトケイスされた唄モノサウンドが好みの方ならば大いに楽しめるでしょう。
ROADというバンド自体は、後に成功するヨーロッパのようなスタイルでは無く、武骨なロックを押し出しており、このバンドにも、そういう匂いをさせていますね。でも⑤みたいなABBAメタルもやっているので、メインストリーム寄りであることは間違いない。
しかし、パンチの効いたハスキーヴォイスのクリスがいるだけに、もっと硬派でハードスタイルを研磨することも可能だっただけに、そのポテンシャルを生かし切れているとは言えないのも問題点ですけどね。
女性二人によるツインヴォーカルという、面白さは十分個性的だし、所謂、北欧的なイメージとは少しテイストが違うと感じる場面もあるだけの、その多様性を含んだバンドサウンドを楽しめるのは美味しいですよね。
北欧メタルマニアには押さえて欲しい一品だし、唄モノ好きにも趣向を凝らして楽しんで欲しい。


URIAH HEEP (2022-11-16 15:22:00)

既に先行公開されているシングルがイイですね。
前作のオープニングナンバーGrazed By Heavenタイプのストレートな一曲。
でも各自の見せ場があり3分半のコンパクトな楽曲ながら聴き応えタップリです。
今や世界でもサバス、パープル、ツェッペリン、そしてヒープも入れてBIG4だと宣言する媒体もあるくらいですから、来年発売の新作に対する期待値も上がっているでしょう。


Tantrum - Trenton City Murders ★★★ (2022-11-16 15:05:19)

1986年に4曲入のEPをリリースして消えた幻のUS産正統派メタルバンド。今作は2016年にあのCult Metal Classics Recordsからデモ音源やライブ音源など未発表曲も大量に追加されてリリースされた一枚。オリジナルのアナログ盤が高価なレートを維持していただけに、この復刻はマニアにとってはありがたい出来事でしたね。
鐘の音が裏で鳴るオープニングナンバーが示すようにダークでメタリックなサウンドを主体としたガチンコ正統派メタルを展開、一切、媚びへつらう事の無いサウンドは、本来のアメリカンメタルとはこうだったんだよと言いたげなスタンスを見せつけています。
時代はメタルバブルに沸き起こる1986年です、受け皿なきシーンもさることながら弱小レーベルでは太刀打ちなど不可能でしょう。

メロディアスでダークなメタルが好きな方ならば大いに楽しめるでしょう。また、このバンドがレアというだけで高額なレートはつきません、その質の高い音楽性があればこそ、インディース盤というのを割り引かなくても、そのガチンコな精神性には強くメタルスピリットを感じますね。光沢艶めかしいパワフルなメタルサウンドの凄み、本編4曲の強烈さに耳を奪われるのですが、それ以降の12曲も激レア感がエグいので、マニアにとってはありがたい一枚です。とは言え、音質的に厳しい面は多々あります、とくにデモや未発表曲に関しては、板起こしかと思うほど、厳しいモノがありますので、コレクターアイテム的な満足度なんでしょうけどね。
もっとしっかりとした音質で聴きたいと思わせるクオリティ、こういうバンドが世に出られなかったのは残念ですが、運も実力の内なんでしょう。それにしてもCult Metal Classics Recordsはマニアを散在させるレーベルですね。


Stealer - Stealer ★★★ (2022-11-15 13:25:18)

アルバム一枚で消えた幻のアメリカンハードロックバンドの1st。音楽性としてはAOR調の落ち着いたスタイルが基調となっているが、オープニングナンバーは些か狙いに言ったパワーポップ路線であり、正直、個人的にはもうちょい落ち着いてと言いたくなるのだが、
しかしメロディックかつ大衆性を味方につけた2曲目のE.S.Pで評価も一変、哀愁のあるメロディと洗練度、その絶妙なポップセンスを操り、売れてやるぞと言う気概をビンビンに感じます。所謂ブルージーな③はバドカンから灰汁を取り除いたようなすっきり感を持ち込み、④以降もフォリナー風ありラバーボーイ風ありとメインストリーム寄りのスタイルを築いている。
その売れ線になりすぎず、だからといってアーティスティックな感性やハードロックスタイルで押し切る分けではないので、少々刺激は薄めである。その中途半端さがイマイチ跳ねなかったのか?MCAとの契約は今作限り、続報も無い中でバンドはどういう終焉を辿ったのかは分かりませんが、メロディ派のマニアならば、大いに引き寄せる魅力があります。
アメリカ産ですから、大泣きはありません。湿っぽさよりも大陸的なグルーブや、ブルース臭もチョイと隠し味だが、全面には出てきていないので、泥臭いのは苦手というマニアには丁度良いでしょう。
推しはどこですがと言われると困るのだが、アルバム全体で勝負している姿勢は買いである。唄える二人のシンガーがいるのも強いのだろう。またアンサンブル重視の作風の安定感があり、アメリカのバンドはテクが無いとデビュー出来ないよなぁと感心させられる。
それが一番の買いであろう。美しいハーモニーを軸に安定感のある演奏とツボを押さえた楽曲構成は、デビュー作としては御の字だろう。作品を重ねバンドは方向性を確立するのもの、将来性の豊かさを感じさせる一枚ですね。
久しぶりに聴いたがイメージが変った。ラストに登場するJOHNNYも毛色は違うのだが、味わい深い枯センギターと繊細な唄い回しとの相性もバッチリである。


David a Saylor - City of Angels ★★ (2022-11-15 12:57:26)

WILD ROSEのシンガーとして知られるデビッドAセイラー(Aはアントニオだったかな?)そのチョイハスキーな歌声の魅力を遺憾なく発揮、英国情緒溢れるメロディック路線は緊張感があり単なるBGMに成り下がるような事も無く、類型的ではあるが、定番としてブランド力を見方につけ、教科書通りとも言うべき展開で聴き手を魅了します。

とにかく、どこかで聴いたことのある作風である。唄が中心のAOR路線。ハードなモノを好む方には少々物足りないだろう。打ち込みベースだし、ギターも飾り付け程度、とにかく主役は唄である。
ハードなモノばっかりいくと、この手のソフトケイスされた唄モノサウンドに癒やしを求めてしまいます。スタイルこそ英国風味だが、主役である彼のキャリアはもっと複雑である。そういう苦労人ならではの、カメレオン的な適合力がある意味では個性を無くしているとも言えるのだが、キャリアに裏打ちされたパフォーマンスに非難など皆無でしょう。

ベタに敵う物なし。でも少々シャレこき過ぎではある。


FAST FORWARD - Living in fiction ★★★ (2022-11-12 17:14:00)

Storiesのシンガーとして知られるイアン・ロイドが立ち上げたバンドの1st。今作は国内盤の流通が無かったようで、そのせいもあり知名度が低いのだが、参加メンバーの豪華さとクオリティを考えると不思議で仕方が無い。本当に国内リリース無かったのだろうか?と首を傾げるのですが、まずはプロデューサーとホーンなどで参加するのがブルース・フェバーン、ボブ・ロックはミキシングも担当する中、ゲストとしてギターも担当、ボー・ヒルはオープニングナンバーを提供とやはりキーボードやギターでクレジットあり、さらにはジム・ヴァランスも大半の楽曲を手掛け、そのうち4曲はジムとブライアン・アダムスの共作、さらには当時、Torontoで活躍していたギターのブライアン・アレンも楽曲クレジットに名前があり、アメリカ人のイアンとカナダ出身のミュージシャンが共演する形になっており、正直、イニシアチブは誰が握っているのかと?不思議な気持ちになるプロジェクトチーム的な側面のあるバンドとなっています。ちなみにドラムのRodney Higgsがジム・ヴァランスです。なぜ名前を変えたのかな?本名はJames Douglas Vallanceなのにね。

これだけ、豪華メンバーが揃えば売れたんだろうと思うのだが、話題にならなかったと言うことは、そうでもなかったんでしょうね。
洗練された産業ロックサウンドの中でオリエンタル風味もまぶしたサザンっぽい③はゲイリー・オコナーの曲ですね。
ここでは琴みたいな音がアクセントとなり風合いを変えているのですが、Molly Hatchetの方が先にリリースしているので、聞き比べるのもお楽しみでしょう。

癖の無い歌声とそつの無い曲、大きなインパクトは無いかも知れないが、その口当たりの良さは間違いないですね。


MESSIAH PROPHET - Master of the Metal ★★★ (2022-11-10 23:09:05)

古くは70年代の終わり頃から活動していた元祖クリスチャンメタルバンドとして知られる、彼らが1986年にリリースした2枚目のアルバム。レーベルもクリスチャンメタル専門のPure Metal Recordsですから、もはや疑いの無い路線です。
バラードが大ヒットして、ある意味アルバムの中に疾走ナンバー、キャッチーな奴、そしてバラードと3曲ずつ並べる構成でヒットしたSTRYPERの成功例が、クリスチャンメタルってなイメージが日本では。何故か定着していますが、クリスチャンメタルシーンは、実に多様性がありスラッシュからパワーメタルにスピードメタル、グロウルを操るバンドまでいる位、バラエティ豊かなシーンを構成しています。
日本では、宗教色が薄い国民性なので、こういう活動を知ることもありませんが、このバンドは、クリスチャンメタルのど真ん中を突っ走るようなアメリカンでハードなスタイルで牽引、王道バラードも放り込みつつ、湿っぽくならないドライブするアメリカンロックを鳴らしつつも、情緒を持ち込み日本人の感性にも十分に訴える音楽性を完備しています。
コンパクトで勢いのあるナンバーが多いので、ノリノリで楽しめますね。このドラムの音なんて懐かしいですよ。今の人が聴けばかっこ悪いと感じるでしょうね。当時からワタクシは苦手でしたが、そういうのも込みでノスタルジックな響きは、現在のハードシーンにも通ずる音色を持っており、正にクラシックなメタルサウンドとなるわけです。温故知新で楽しむマニア向けかも知れませんが、なんかこう懐かしいと感じるアメリカンバブル夜明け前なハードサウンドを楽しめます。
でももう少しミックスなんとかならんかったかね。こんなに分離の悪いサウンドメイクじゃ演者が可哀想ですよ。


Punish - Tide of the Times ★★★ (2022-11-08 12:18:15)

久保田陽子、石原慎一郎、寺沢功一、西田竜一の4人よるスーパーロックグループが2021年にリリースした第二弾のEP。
久保田のアイデアなのかフックのある歌メロは、いかにも彼女らしいメロディックな歌メロである。パワフルなリズムプレイはバンドサウンドを牽引、シャラのハードなギターも掛け値無しにカッコ良く、この四人からなる独自のグルーブを持ち入りバンドサウンドを構築、強靱なアンサンブルの頂点に君臨するのは久保田の唄なのだが、各自の見せ場も随所に盛り込み、手練手管の寝業師集団が集い、手抜かり無しのダイハードなメタルをやり切っている。
メジャーシーンで腕を磨いているメンツだけに、野暮ったさは皆無。古典ではあるが、現役感からにじみ出る、良い意味での熟成とフレッシュな感覚を共存させ、現代の古典ロックとして成立させているのは流石の一言であろう。
流通も脆弱なために、手に入りづらい作品ではあるのだが、メロディを蔑ろにしないハードサウンドが好みの方ならば大いに楽しめるだろう、生身の人間が生み出すバイブ、その躍動する純粋なハードサウンドが放つ波動に撃ち抜かれましたね。
配信版出しなさいよ。ドサ回りの会場限定みたいな手売り感はチョイと残念です。


BLACK SABBATH - Never Say Die! ★★ (2022-11-06 18:33:51)

デイブ・ウォーカーでバンドは動き出しレコーディングを行うも、結局オジーが戻ってきてリリースされたアルバム。ブートなどでデイブヴァージョンも出回っているので、オジーにとっては完全に唄入れしただけのような作風だと思うのだが、バンドを取り巻く裏事情を考えると批評に窮する作品ではあるのだが、今の感性で聴いて、果たして歴史に残るような大駄作なのだろうかという疑問でしょうね。
確かに、それまでのサバスにしては軽快に走りすぎる、しかし、これからディオ期に移る課程を考えると、この軽快なフットワークも理解できるでしょう。らしくない、覇気が無いというのは作風に影響を及ぼすバンドの内紛劇が要因していると思うのだが、NWOBHM以前のバンドとしては、かなり80年代を見据えた作風として評価出来ますよね。
バラエティ豊かと言うよりはとっちらかった感は強いのだが、こういうのもありますよねである。
真っ黒いコールタールのような邪悪なるバンドサウンドに毒されたい猛者には、この上ないほど退屈だろうが、そういうサバスブランドとは別方向で音楽を楽しんでいる方には、多様性のある一枚として支持できるはずである。
今の若い人ならば尚更だろう。


BLACK SABBATH - Technical Ecstasy ★★★ (2022-11-06 18:14:57)

世間一般的には駄作扱いを受ける一枚。まぁバンドが空中分解というか内紛劇など、きな臭い中での制作ではという裏事情を読み取った方が正解な気もするが、今の感性で今作と向き合えば不平不満は少ないでしょうね。
メタリックな①で幕開け、新しい感性を取り込んだ意欲により掴みはOK。そしてドラマティックな②と流れジェラルド・ウッドルフの全面参加が功を奏している。ビル・ワードが唄う③の新鮮さ、80年代を見越している④、⑤⑧もダークで魔術的なキャラというイメージを強く殻を破ろうとする気概を感じる。異色であるが⑦は大成功だろう。
今作を聴き多くのファンが感じ取った事は、アイオミの頭の中に既に様式美サバス的なアイデアがあったという事である。そういう観点から見ても今作はある意味、サバスのターニングポイントとなる一枚だが、次でコケたので2作まとめてペケにされるという不遇を味わってしまった。


BLACK SABBATH - 13 (2022-11-06 17:57:09)

実は最近まで全く聴いたことのないアルバム。まぁいつでも聴けるというのもあるのだが、もう出がらしが出まくったリユニオン的なバンドに興味も削がれたというのが一番です。そんなテンションも全く上がらない中でオープニングを聴いて、すぐに停止しました。
まるで昔の名前で出ていますじゃないか!です。
ヘヴィメタルの始祖、メタルゴッドファーザーのように持ち上げられた彼らの行き着いた先は、まさか過去のアイデアを流用しただけの作風になるとは思いもしなかった。サバスが産み落としたドゥーム系バンドの作品を聴いているかのようなオリジナルティの欠如。
ある意味、原点回帰を印象づけるためのファンサービスとも言えるだろうが、イイ悪いは別にしてチャレンジグした『Sabotage』や『Technical Ecstasy』よりも独創性のない後退した作風になったというのは厳しいだろう。

総じてアイデアが昔のモノである。3回続けて聴いたが印象を覆すような再発見は無かった。相も変わらぬギーザーのメタルベースは耳に残るも、今の時代だから余計に気になるオジーの加工臭、そして覇気の無いアイオミ。②など雰囲気があるので余計に与えるダメージは大きい。ある意味、一番頑張ったのはブラッド・ウィルクだったりするのだが、まぁ、こういう大御所が実験的なことをやると文句を言われる。らしくないだ。しかしやり過ぎると没個性や流用を叩かれる、結局は最大公約数のファンを慮った作風に落ち着かせたのだが、一応、サバスは解散したらしいので、これがラストアルバムになったのは寂しい限りだろう。

とは言え、作風的にベストオブサバスになっているので、入門編には丁度良いかも知れない。これでピンと来なければ過去に辿る必要も無いだろう。そういう意味では大正解だ。

リッチーがいなくなり、全く唄えないイアン・ギランのいるDPに興味も無く全然聴いていなかったが、新しいギタリストを入れてDPは過去の呪縛から解き放たれ全く新しいアイデアを搭載して独創性を叩き出していた。
比べるのはバカバカしいが、本来サバスにも、その姿が求められたと思う。そういう意味では、初期の作風にノックアウトされた本気のファン及びドゥームマスターからは厳しい意見を呈されるだろう。それが評価を分ける最大のポイントでしょうね。

まぁあえて言うならば、もうサバスの息子達がドゥームリフをやり尽くしたと言える。今さら新しいモノなんてないよ、だから理解は出来るのだが、これはBSで繰り返される2時間ドラマの再放送である。まぁあれって好きなシリーズや当たり外れもあるからね。


KILLERS(FRENCH) - Cités interdites ★★★ (2022-11-04 20:22:04)

暗雲立ちこめるグランジムーブメント、有名バンドが不釣り合いな方向転回を行い相次いで討ち死に、多くのバンドが契約を失い、日本のレーベルのみの契約というのがありました。それがビックインジャパンであり日本のレコード会社の資金力に驚くのです
が(買い叩かれたのかな?)今となっては夢のお話ですね。今の日本にそんな力は無い。

そんな時代に、出会ったのがこの手のバンドになります。日本では批評家の口に合わずに格下扱いという不遇を味わうフランスのメタルシーン、隣国である英国のムーブメントが真っ先に飛び火したのは間違いないでしょうね。そういう影響もあり知名度は低いのですが、フランスでも古参のメタルバンドであり、今なお歩みを止めないレジェンドでもあります、きっとラウドネスくらいの扱いを受けていると思うのですがね。とにかく大御所のフランス産メタルバンドです。

もったいつけるイントロからガツーンときます。5枚目という事もあり音楽性も進化、バンドの顔であるブルーノ・ドルヘガイがギターとヴォーカルを兼任した影響もあるのか、メロディとキャッチーさも増量、スピード・パワー・メロディというヘヴィメタル三種の神器を携え92年というグランジムーブメント真っ只中のメタルシーンに切り込んできました。

④ではBarbaraというフランスの女性シンガーはヒットさせた曲をカヴァー、原曲はピアノをバックに静かに唄っている、所謂イージーリスニング系なので、ここで聴けるヴァージョンはフランス人のビックリでしょうね。
こういう選曲も新体制と音楽性の幅を広げてきた証拠、より広くメジャーな活躍も視野にいれつつ、メタリックなバンドの魅力を保つという離れ業をやってくれました。
このクオリティで今なお、日本では幾度知られていないのは残念ですが、古典的なメタルが好きなマニアにはたまらんでしょうね。
最近の大御所の新譜ってデジタル加工が強いから、どうしても、この時代のテイストというかパワーを内包できていません。 生身の人間力を生かしたサウンドは迫力がある、ミスしたとか音がズレているとは問題では無い。
この熱量をパッケージ出来るかが重要なのです。この軽やかさにフランスの味を感じますね。


Classica - Classica II ★★★ (2022-11-04 19:57:19)

ハンガリーのメロディックメタルバンドによるデビューフルアルバム。オリジナルのリリースは1993年、何故1stなのに『Classica II』というタイトルになったのかは、幻の1stがあり、そちらがレコード会社の倒産などの関係もあり世に出すことが出来ず、今作がデビューとなるも、のちに権利をHammer Recordsが受け取り、2006年のCD化の際に正式にアルバムタイトルが変更となりました。
そういう不遇を味わうハンガリアンメタルバンド、大袈裟な空気のバンド名に対して、聴く前からバッハとかバガニーニとイングヴェイスタイルのネオクラメタルが満載で、俺様風のギタープレイにウンザリしそうと思うマニアも多いでしょう。
インギー崩れはたちが悪いですからね。それに名手がいるならば、必ずや日本でも話題になるだろうと推察できますからね。

ですが前述したような諸事情もあり、ましては日本のレーベルと縁も無いハンガリーでは尚更ですよ。しかし、このバンド、ネオクラ風味もそこそこですが、実はもっと北欧タッチの唄モノロックをやっています。脆弱なサウンドプロダクションが招く輪郭の甘いミックスに難はあれど、そのメロセンスを生かした唄モノナンバーから、ネオクラ風味漂う疾走ナンバーまで幅広く網羅、鍵盤プレイもそこそこ押し込み、クドすぎないクラシカルギターも胃もたれさせずにコントロールされています。
とにかく、主役は唄であるというアンサンブル重視のスタイルは、メロディ派のマニアにも十分アピール出来るでしょう。

甘美で透明感のあるメロディを、マイルドな歌声がなぞるスタイル、煮え切らない面もあるのだが、侮れませんよ。バンド名に負けないクラシカルテイスト、リッチー、マイケル・シェンカー、イングヴェイと言った先人達のプレイをお手本に、日本人好みの叙情派ハードサウンドで迫ってきますよ。


JOE LYNN TURNER - Belly of the Beast ★★★ (2022-11-03 15:05:47)

衝撃的なヴィジュアルを公開してファンを驚かせたジョー。最近名前を聴かなくなりましたが、こうして健在な歌声を披露しています。衰えがないと言えば嘘ですが、ジョー節とも言えるメロウな歌メロを軸にダークでシリアスなメロディックメタルを展開、北欧系アーティストの協力の下、古くさいDP、RAINBOW臭にすがるだけでない、現代的な奥深いサウンドテクノロジーを駆使したタフなスタイルへと挑んでいる。どこかコンセプト色のあるスタイルは、人種問題、コロナ騒動等々の社会に暗い影を落とす現代社会が抱える問題点への警鐘を鳴らすかの如く、暗雲立ちこめるダークサウンドに挑んでいる。
コーラスワークも今までのジョーにはないイメージ、今っぽいリズムアレンジとキーボードの使い方も含め、定番を守りつつも新たなるフィールドへ挑んだという印象と強く与えているのだが、ペーター・テググレンと共闘しながら、元○○の殻を破ったという事でしょう。
広瀬編集長の溺愛のおかげで、日本においてBIG IN JAPANを謳歌、鞄一つで何処にでも唄いに行くフレキシブルさも手伝い、マイナーアーティストとの共演も多いジョー、そういう姿勢はけして無駄では無い。彼の歌声はあらゆる場面で多くの人々の心に残してきた。今作に伴うツアーでも、昔の名前で出ていますな曲もやるのだろうが、そろそろ元○○の看板を下ろして頑張って欲しい。今作でも、それっぽいのやっているんだからさ。


BRAINFEVER - You ★★★ (2022-11-03 14:23:34)

単体で再発盤が出ていないのは残念ですが、1stと2ndの再発盤にそれぞれA面B面に分かれボートラとして収録されたことがある、1988年リリースの4曲入EP。メンバーチェンジや出戻りなどもありますが、今作を最後にバンドは幕を閉じています。
オープニングから彼ららしい突貫スピードナンバーで幕開け、メロディも練り上げた印象が強く、その成果はキーボードを大胆に導入した②④で再確認と、音楽性の拡充を感じさせる出来映え、どこか味付けの濃いアブラギッシュなサウンドで押せ押せの印象が強かっだけに②のインパクトは特にデカかった。
とは言え、それらが分相応という感じはせず、次なるステージを睨んでの進歩としてポジティブに受け止める事が出来ます。なんと言ってもメタルという言葉以外で形容できない剛直さが、パワフルかつ直情的なリズムがガシガシとキマッているので従来の路線を支持するマニアにも受け入れて貰えるでしょう。でも音質は良くないので、攻撃的なリズムも魅力が伝わりきれていないも問題点ですレーベルも

レーベルもSteamhammerへと移り臨戦態勢は整ったと思っていたのですが、今作を最後にバンドは解散。70年代から活動していたと言われてるだけに、10年も立てば一区切りという事なのかも知れませんが、意欲作を残しただけに残念ですね。彼らなりに80年代を意識したと思えますよ。③のようなタイプの曲も上手く仕上げていますからね。残念です。


MITCH MALLOY - Mitch Malloy ★★★ (2022-10-30 18:26:18)

かつてはサミー・ヘイガーの後任としてヴァン・ヘイレンに参加したり、グレイトホワイトのシンガーに座についたりと有名バンドにも抜擢されるような実力派のソロアーティスト。どういう経緯でデビューしたのかは分かりませんが、今作は92年という背景ながらシングル曲をビルボードチャートに送り込むなど、そこそこの成功を収めておりデビューアルバムとしては成功したでしょう。
個人的にはデイブ・ローゼンサールが率いるRED DAWNの前身INFINITYで唄っていたという事実の方が興味を惹かれたのですが、確かにセクシーで艶やかな歌声だが、力強く不健康かイメージを一切与えない明るい歌声は実に頼もしい限りです。ドゥギー・ホワイトから野暮ったさを取り除き、いいとも青年隊くらいのお昼感を出しているという感じです。
自分が用意した楽曲をデスモンド・チャイルドの相棒のような感じで腕を見せたアーサー・ペイソンと共に、一時代を築いたスタイルのアメリカンロックをやり切っている。それだけに、どの曲もヒットポテンシャルを秘めており、どこから火がついてもおかしくないお膳立ては揃っています。欧州的な泣きはチョイと苦手、でも明るすぎるのはチョットと思うような唄モノマニアにはたまらんでしょうね。
フックのある歌メロを嫌みの無い伸びやかでピチピチとした歌声がガッチリと抱きしめながら歌い上げる様に惚れ惚れするでしょう。
ルックスも整っているし売れるわな。ローカルバンドのヒーローで終わらなかったのは整うところが整っていたからなのだが、それに負けない腕があったと言うことも間違いないです。
ギターも担当しますが、バックにはマイケル・トンプソンやヒュー・マクドナルドも参加していたりと、そのあたりのソツの無さが作風にも影響しています。国内盤もリリースされているようですので、唄モノマニアならば手に取って損はしないでしょう。


JAG WIRE - Made in Heaven ★★★ (2022-10-29 13:13:55)

2021年に『Made In Heaven... Not Dead Yet』というタイトルで再発盤が出た幻の一枚。ライブ音源+前身となるSIN時代のシングル2曲を追加、ある意味バンドの代表曲とも言える『On the Run』のオリジナルヴァージョンが聴けるわけです。
そういうレア度もあがり作品としても価値も上昇。オリジナル盤を見たことがないので分からないのだが、こちらで自動登録されているモノと曲順も違いますので下記にて記入いたします。
1-All My Love
2-Heat Of The Night
3-Traitor
4-Love Can't Wait
5-Nothing At All
6-On The Run
7-Made In Heaven
8-Takin' The City
9-Black Cat
10-Calling You
11-On The Run
12-Captured In Time
13-Rockin' All Night
14-Magic Is Done
15-Not Dead Yet

メイドインヘブンなんて脳天気なアルバムタイトルですが、音楽性の方が緊張感が漂いキーボードを巧みに使いつつもハードテイストも損なわないアレンジで魅了。情緒のあるメロディック路線は、日本人の感性にもビンビンに響くでしょうね。
唄も力負けしない確かな実力で楽曲の魅力を押し上げ、叙情派アメリカンハードサウンドとして多くのマニアの耳を捉えますよね。
1985年という時代、まもなく勃発するメタルバブル、この時代にも既に予兆はあったが、あの時代に毒されすぎたメジャーシーンが好きな人には、少々戸惑いも多いでしょう。KEELも軟弱になったし、WASPもLIZZY BORDENもメジャー仕様だよ。RATTだってキレのあるスピードナンバー捨てたからね、そんな浮かれまくるメジャーシーン。そういう過度の大衆化を図らなくとも、このようなメジャー感をハードな魅力を損なわないバンドがいたことを知って欲しいですね。

とくに80年代のメジャーシーンを小馬鹿にする若者にこそ知って欲しい。Too muchな80年代中から後期に掛けてのバブルメタル、その中にも確かなバンドはいたが、みな様式を変えられた。このバンドもメインストリーム寄りである。でもアーティストとしての矜恃も同時に感じられ、売れ線志向とは別のベクトルを放っている。
欧州ほど泣かないメロディアスハードサウンド、その絶妙なバランス感覚を楽しんで貰いたい。硬軟交えたシリアルな作風は、懐かしいだけでは無い新たなる発見にも出会えるはずである。全てにおいて、知名度や批評家のレビューで評価が決まる時代。飯食うのも点数だ、そんな時代だからこそ知って欲しい一枚ですね。


ENVY - Ain't It A Sin ★★★ (2022-10-29 12:27:52)

のちにVIXENに加入する、元Poison Dollysのギタリスト、ジーナ・スタイルが新たに立ち上げたバンドのデビュー作、シンガーは姉妹のロンニ・スタイル。リズム隊は男性という事で姉妹を打ち出したグループになります。ジャケットに映り込むのも、その二人なのでしょう。
ギタリストとして腕は確かなジーナ。まだ女性のメタルミュージシャンに対する風当たりの冷たい時代ではあるが、こうして偏見のなくなった今の時代でいけば評価も大きく変るでしょう。
女性シンガーならではの弾けるキュートさとパンチの効いたロックテイスト、そこにヒットポテンシャルの高いメロディックなアメリカンロックが満載、どれもがシングルカット向けの一曲なのだが、アルバムと通して聴くには少々メリハリに欠ける。独立した曲として気区分には不満は無いのだが、優等生過ぎるハードポップサウンドを中盤まで聴くと、その反動で無性に無茶苦茶ハードなものが欲しくなります。個人的には、そのあたりに成功しなかった要因を感じるのですが、ハードポップ系が好きな人ならば大いに楽しめるでしょう。むしろ何故、国内盤が出なかったのかと不思議に思うかも知れません。

プロデューサーにディー・スナイダー。ディーと言えば、Poison Dollysの楽曲を自分のバンドで採用したくらいジーナと面識がある。どういう繋がりなのか気になるが、今作はATCO Recordsからのリリースだし、けしてマイナーなレーベルからのリリースでは無い。カメラだったロック系では有名なマーク・ワイスが撮っている。ミキシングは幅広い仕事で知られるエディ・デレナ、バッキングコーラスでは、あの歌姫テイラー・デインも顔を出している。
今作リリースが1987年、そういう背景を考えても驚きだ。ある程度、お金は掛けて貰っているのだが、サポートなどを含めてどうだったのだろう?日本にいると、こういう情報をキャッチするのは難しいのだが英語に堪能な人は是非とも歴史探訪気分で、このバンドの成り立ちを紐解いて欲しいです。
まぁ刺激も無く優等生過ぎる面はあるが、それだけに粒は揃っている。ハードポップマニアには無視できない要素が多い。


Excess - The Fatal Touch ★★★ (2022-10-27 12:32:08)

よく分からないコンセプトのジャケが損しているよな。フランス産正統派HM/HRバンドによる1990年リリースの2nd。前作の路線を引き継ぎつつも、叙情的な面をフィーチャー、クラウス・マイネ風の歌声もハマる叙情派路線へと舵を切っています。
とは言っても、角張ったメタル気質は健在、分離の悪いごちゃっとした音質のせいで、この崇高なるメタルスピリット溢れるサウンドの魅力が削がれているので伝わりづらさはあるのだが、格下扱いされるフランスのメタルシーンが、隣国たる英国からの影響を受け活況していたかが分かる音楽性であろう。
彼らなりのメインストリーム寄りと言うことなのだろうが、欧州産ならではの泣かせのフレージングとメロディを蔑ろにしない攻撃性、JP仕込みのメタルナンバーにSCORPIONSの叙情性とヨナス・ハンソン的扇情的なメロディを加味させた音楽性は、逆に唯一無二の個性を感じさせる。ある意味、聴いたことがあるである。でもそこが逆に武器であり、このバンド最大の魅力でもある。
口惜しい音質の悪さ、しかし、それを差し引いても血湧き肉躍るメタルサウンドが聴ける。これが何故、日本で無視されるのだろう、一部の批評家の感性で決まる日本のメタルシーン、彼らのバックアップは必要だ。なんと言ってもセーソクがライナーノーツを担当すると売れるという逸話まである。
でもその影でワリを喰ったバンドは山ほどある。サクソンアメリカンナイズドなど、顕著な例だろう。批評家の意見を参考程度にとどめられないピュアな人たち。そりゃネモフィリアのイベント会場に訪れた7割はオジサンになるよ。

泣きのメロディと攻撃性、そしてキャッチーなメロディが飛び出す普遍的なメタルサウンドをお探しの方ならば、グッと掴まれるでしょうね。最後までテンションを下げること無く駆け抜けていきますよ。


Reddy Kilowatt - Liquid Lady ★★★ (2022-10-27 11:51:34)

レディキロワットというバンド名を検索しても、アメリカのキャラクターばかりが出てくる。そんな無名バンドですが、U.S Metalというシュラプネル主催のコンピ作、第一弾に登場しています。正式な音源も自主制作のシングルしか出していないのに配信盤があることに驚いた。何故、こんなレアモノが単品で?U.S Metal自体は復刻していないのになぁ?
色んな権利がありますから難しいのでしょうが、今作が聴けるのはある意味アメリカンメタル史にとっては重要なのです。ギタリストであるテリー・ギルゴアは若かりし、エドワード・ヴァン・ヘイレンにギターを師事したという逸話がある。そういう知識を入れると、今作で聴けるリフやアームを使った派手目のソロなど、エディの影響を受けているなぁに繋がるが、今作のオリジナルリリースは1979年、逆にエディが影響を受けたという事になる。その事実だけでも価値はあるのだが、真偽のほどは不明。
そんな都市伝説感覚で楽しんで欲しい。
そして有名バンドは生み出さなかったがU.S Metalも聴いて欲しい。
でもテリーのギターは、デイヴィッド・リー・ロスのアルバムにも参加しているので、そっちの方で確認するのが早いんですけどね。


Knightmare II - The Edge of Knight ★★★ (2022-10-26 17:03:51)

アメリカンマイナーメタルマニアならば押さえている猛者も多いでしょうね。なんと言ってもこのバンドを有名にしたのは、ジョー・ケーグルと名乗るギタリストがWarrantで活躍するジョーイ・アレンだからです。本名がジョセフ・アレン・ケーグルなんですね。
そういう裏歴史もありつつも、ここで聴けるサウンドはダークな設えを施したメロディックメタルを披露、アメリカンなドライさとラフなパワーを内包しつつも、芸の細やかさも感じさせ作り込みもほどほどに、頭でっかちにならずにシアトリカルさもあるナイトメア劇場を開幕している。
めでたく2022年にマニア御用達のレーベルSkol Recordsからボートラ入でCD化もされました。80年代の隆盛を極めるアメリカンナイズドバブリーメタルの裏側でヒッソリと活動していた勇者達の残骸をお楽しみください。それはけして無駄死にでは無いです。


Jaded Lady - Rock 'N' Roll Ain't Pretty ★★★ (2022-10-26 16:39:15)

元祖ガールズアメリカンメタルバンドの一つに数えられるLeather Angel、メンバーチェンジを行い見た目も厳ついレザースーツを脱ぎ捨て、当時流行のグラムなスタイルを取り込んでいる。その反面、音楽性の幅は広がりつつもパフォーマンス力も向上、シンガーであるテリー・オリアリーの成長は著しく、妙にアンニュイは唄い回しは影を潜めた。レコーディングにおける演奏力も向上、商品価値も高まっている。
この作品がどのような形でレコーディングされ、どのような形で世に出たのかは分からないが、バンド活動の難しさに直面したのは間違いない。男性社会おける女性ミュージシャンとしての立ち回りの難しさ、同じ事をやっても色眼鏡で見られたろう。またレコード会社も、契約の際には平気で音楽性に口を出し、売れる物へと変換される。RATTもメジャーデビュー後は垢抜けた。

それだけに、ここで聴けるサウンドは正にダイヤの原石である。磨けば光るメロディックかつ硬派なアメリカンメタルサウンドは、どれもが及第点を超えているだろう。一撃必殺の名曲は無いかも知れないが息切れもしない聴き応えのあるEPである。でもマイナーなサウンドに耐性の無い方にはチョイと厳しいでしょうね。

ちなみにこのバンドは、アン・ボイレン首謀のNew Renaissanceレコードからリリースされたガールズメタルバンドを集めたコンピ作『Ladykillers』に今作にも収録されている「On the Run」を提供しています。
このバンド、今の方が確実に評価されるでしょうね。80年代のアメリカのロックシーンにおけるバブリー感はハンパ無かった。硬派なバンドなんで必要ないもんね。みんな姿形を変えられましたよ。このバンドから、そういう苦悩と妥協点を見いだすことが出来ます。


Leather Angel - We Came to Kill ★★ (2022-10-26 16:18:38)

知る人ぞ知る元祖アメリカンメタルバンド、最初はObsessionと名乗るも東海岸の彼らからクレームがあり、Leather Angelと改めて6曲入のEPを1983年にリリースしました。このようなレア盤が配信されているとは驚きです。
しかも手直し無しのチープさが漂っているのも凄かった。アナログ盤をそのまま流しているような錯覚を覚えるのですが、正直、このバンド演奏で納得されるような腕はなく、せーのでレコーディングしたような粗さが凄い。しかし、やろうとしている音楽は女性という偏見を一切挟ませない硬派なスタイルを築いている。パンキッシュでスリージーなハードサウンドは、同時期に活躍していたグラム系バンドよりもトゲトゲしいスタイルで勝負している。歴史的な価値としては高いが作品としては、やはりサブスクリプションで楽しめるからこその、レア盤という域は抜けていないが、NWOBHMからの影響も受けたスタイルである、Girlschoolのアメリカヴァージョンという言葉もハマるでしょうね。
今作リリース後、メンバーチェンジなどを経てバンド名をJaded Ladyと変更して活動を続ける。


MAX HAVOC - Max Havoc ★★ (2022-10-25 13:09:44)

L.Aメタルマニアにとっては、コレクションしたいレア盤と言われているのが今作。嘘か本当か分かりませんが、サバスを抜けたビル・ワードが一瞬バンドの在籍していたという都市伝説もある。その証拠に一曲目のクレジットにビルの名前を発見できると言うから驚きである。
また今作のプロデュースにも一枚噛んでいるらしく、その真偽のほどに興味も尽きないが、検索したり自叙伝的なものを読んで、なんの疑いもなく信じ込み、したり顔で転載するのはNGなので止めておきます。

リリースは1983年、まさにアメリカンメタルの産声は上げシーンが活況し始める時代、それだけにバブリー臭は漂わないが、もや~んとしたヘタレジャケを前に意欲が削がれる。そのマイナスなイメージを立ち上げたまま、ちょい根暗なロックを展開するのだが刺激は少ない、またモトリークルーのような毒気や個性も薄く、これと言った一発大技が見当たらないのがチョイと残念。
インディ盤の割に音質もマシな方で、典型的なロックンロールをベースとした大味はハードスタイルは、アメリカならではの味わいなのだが、情緒を求める島国ニッポンにおいて、なかなかターゲットも絞られそうだが、好き者にはたまらない根暗なアングラ臭にグッとくる猛者もいるでしょうね。

ちなみに作曲クレジットや参加メンバーにカルロス・カヴァーゾやトニー・リチャーズの名前もありますので、このあたりもマニアにとっては無視できない要素かと思います。それにしても何故、ビル・ワードが絡んだのだろうか?


WITCH - The Hex Is On… and Then Some ★★★ (2022-10-24 14:14:48)

ベタなバンド名の為に、世界中に沢山存在するはずである。そういうバンド名も損をしていると感じますが、こちらはカルフォルニアを拠点に活動する硬派なグラム系バンドの音源をまとめたモノ、彼らのキャリアとしては前半に曲順を変え収録されたEP『The Hex Is On』が有名、シングル盤やデモを収録してキャリアを総括しているのだが(EPは別項目があるのであちらで紹介したい)やはり⑪曲目からの変節に触れるべきであろう。
ダークな質感も設えたグラムスタイル、EPのリリースが1985年という背景も読み、そういう音楽性にくみしたのだろうが、スラッシュムーブメントも沸々を火がついていたので、硬派な面を押し出すべきだったというのも作戦もあったろうが、知名度の低さとは合わないほどの力量を感じさせ、ある意味、アメリカンパワーメタル勢にも通ずる力感を有していただけに残念で仕方が無い。
そういうバンドではあったようだが、⑪以降の音楽性は全くの別物だ。

ブルージーさもあるヘヴィなロックスタイルへと変遷、いつの時代の音源なのかと思ったら1996年のモノで、しかもバンド名はGOD BOX、そしてプロデューサーにハワード・リーズを迎えている。
そういう驚きの中で参加メンバーに目を奪われる、まずギターは、あのローワン・ロバートソン、ベースは渋いがフィル・チェン、そしてゲスト参加に⑬でスラッシュ、⑭にはスティーブン・スティーブンス、さらに⑱ではクリス・ホムルズというクレジットを発見、キース・エマーソンがピアノで⑬にクレジットと、どういう経緯で参加したのかは興味深いが、マニアにはチョイと無視できないメンツであろう。
L.Aムーブメントに乗り切れなかったバンド。硬質な歌声をどう生かすのか?主役であるピーター・ワビットさんの男臭い歌声は、硬軟交えた楽曲の中で多彩な表情を見せていただけに、どこかでハマれば成功した可能性はあったと思う。GOD BOX時代にも初期に通ずる魅力は沢山発見できる。

やはりEPだよなぁ。あそこでもっと方向性を絞れたら違う道もあったろうになぁ。デモやシングルと内容は悪くないだけに、遅きに失する印象は否めなかった。こういうマイナーロックバンドの探求もメタル道の楽しみであると思う身にはたまらんものがありますね。


Lisa Baker - Fool of Lies ★★★ (2022-10-24 01:10:08)

リサ・ベイカーなる女性シンガーが率いるバンド名なのか、とにかくBON JOVI方式で彼女の名前がメインに出ているL.Aメタルバンド幻の音源。どうやら1986年に自主制作でシングル盤をリリースしているが、バンドは程なくして活動を停止。その後の行動を知るよしもありませんが、2022年の8月に未発表2曲を追加して配信版を世に出してきた、Amazonでも手に入るが、Spotifyなどサブスクの無料サービスがあるので、そこで楽しんで欲しい。
リサ・ベイカーなる女性シンガーは、ドッケン結成前のジョージ・リンチを活動したり、マーク・ケンドールとグレイホワイトの前身バンドにいたりしたらしいのだが、真偽のほどは不明。だがジョージとミック・ブラウンがいたXCITERの音源には二人のシンガーがいる、一人はParis Is Burningのオリジナルを唄うGreeg Sanford、そして後半の4曲を歌う女性シンガーがLisa Furspankerとクレジットされる女性シンガーがいるのだが、恐らく声が似ているので同一人物かと思います。

他の参加メンバーの事も分かりませんが、激レアのバンドである事は間違いないだろう。そしてL.A界隈もまた、NWOBHM同様、有象無象のバンドがいたことは間違いありません。
このバンドの楽曲はけしてレベルの低いモノではなく、メインストリーム寄りのキャッチーでハードなグラム系サウンドを適切に鳴らしている。4曲入だけに全貌が見えるとは言えないが、フルアルバムが聴いてみたいと思わせるだけの及第点は十分に献上できるクオリティを保持、なんと言っての主役である彼女の歌声が実に堂に入ったもの、ハードなサウンドに負けない存在感を発揮しています。パヤパヤ女子力高めの歌声よりもズッと頼もしく男前である。

それにしても配信の世界は奥が深すぎる、大手ストリーミングサービス以外にも、安価で世に出せるアングラなサービスもある。それだけに、過去の思い出の眠らせるのは惜しいでしょうね。どんな形であれ知って欲しいと思うでしょうね。
そういう意味では、CD選びもカタログだからと聖飢魔Ⅱに揶揄されるようなメディア偏重ではない、好奇心旺盛なマニアにこそ知って欲しいレア盤である。


ZERO NINE - White Lines ★★★ (2022-10-22 13:57:22)

英国のVirgin Recordsからもリリースされた4枚目。こうなると音楽的な方向性も見えてきますよね。繊細なギーボードを生かしたメロディック路線へと変更、リズムプレイに象徴されるように柔和なスタイルへと大きく傾いた、コンパクトな楽曲も増え方向性をギュッと絞った。唄モノ路線になったが、ざらつきのある男臭いハスキー系の歌声は変らず、少々似合わない場面もあったりするのだが、キーボードを前に出しつつもロックな歯応えを感じさせる場面もあり、その硬軟のバランスに気を配っている。一般的な感覚で言えば、この路線の方が北欧的に写るだろうが、やはりメジャーでの成功という認識で捉える方が正解だろう。
バンドの本文となるのはヘヴィメタル、しかしそれでは飯が食えない葛藤、その折衷案が具体的に示された今作は、色んな意味でメジャーシーンに売って出る難しさを感じるのだが、1985年という時代、フィンランドのメタルシーンはどのような活況を示していたのか知らないので興味がある。こういうバンドへの対応や人気、そらにはメタル大国フィンランドの下支えとなり今なの中枢にいるのか等、知りたいもんですね。

今の感覚で聴けば少々キーボードも鬱陶しいし、ギターも線が細い、実に懐かしいミックスだが、今の若い人には逆に新鮮に聞こえるかも知れません。多様性を孕んだ北欧メタルの初期型バンドによる意欲作。軟弱になったでは切り捨てられない魅力がある。
果敢に挑んだメジャーフィールド、外部ソングライターの助力も借り見事に化けたと言いたいですね。根底にあるのがメタルだから魅力なんです。


ZERO NINE - Headline ★★★ (2022-10-22 13:34:44)

前作の反省点もあったのか露骨なDP路線とは決別、よりソリッドでストレートなハードサウンドへと転換。その為に、キーボードの活躍は減退したが、男臭いケパ・サルミリンヌの歌声もフィットしており、哀愁のメロディが映える④など硬軟のバランスを取る楽曲も流れの中で違和感なく溶け込んでいる。
北欧と言えば、EUROPEみたいな解釈をされる為に、どうしてもこの手のガッツ溢れるスタイルは敬遠されるのだが、EUROPEの成功はアメリカンナイズドの賜物であり、本質とはチョイと違うんだという認識の上で初期型の北欧メタルと向き合えるマニアには、この路線はほっとけないでしょうね。
ニヒリズムな⑤ではオルガンも裏で鳴りギターチームと絡んでいる。折り重なるアンサンブルの旨味、3枚目のアルバムで方向性が固まったとは言えないが、そこらに原石となるアイデアが散りばめられており、どの方向に進むのか興味も持たれますね。
⑥では再び哀メロ路線へと舵を切りオープニングとは感触の違いを明確に見せている、この守備範囲の広さと散漫と捉えるかで評価も分かれるだろうが、好みや気分に合わせチョイスすれば良いので個人的に不満はありませんね。
哀愁のメロディの弱い身としては、このバランス感覚に見逃せない。味のある繊細なギターや鍵盤プレイは堪能したいですよ。
それに⑦みたいなDP路線は、このバンドのファンに取っては待ち遠しいと思うのではないでしょうか?結局聴きすすめると最初の印象が薄れるのも印象的でしたね。バンドとして命運を分ける勝負の3枚目、圧勝とは言わないがTKOに持ち込んだでしょう。


ZERO NINE - Blank Verse ★★★ (2022-10-21 17:42:40)

フィンランドのメタルシーンを語る上では外すことの出来ない老舗バンドの2枚目。前作の評判を聞きつけイアン・ギランが快くプロデュースを担当、その効果はオープニングナンバーから見事に炸裂、まるでDPである。リッチー風のギターからオルガンとクラシックをロックへの邂逅、1stよりもDP風味を増量したのは賛否を分けるだろう、パロディと揶揄されない面はあるのだが、イアン・ギランのお仕事と言うことで好意的に受け止めて欲しい。
NWOBHMからの薫陶も受けた北欧マインドに満ち足りた古典スタイルは、垢抜けていない面はあれど、磨けば光るポテンシャルの高さを有しています。なぜ、このグループが今もって日本で取り上げられないのか不思議ですが?やはり批評家の目に止まるかが鍵なのでしょうね。BISCAYAがあんなに大騒ぎされるならば、このバンドだった負けていませんよ。むしろ出オチの向こうに対して、こちらはアルバム単位で勝負できる味があります。
DPのみならず、キーボードのいる編成はヒープからの影響も有しており、英国ロックが下地にあるのは明白でしょうね。そこに甘めのメロディが絡むことで北欧スタイルへと昇華するのだからお国柄は重要ですね。
今作の問題点、それは直近にアルバムをリリースしている為に、このアルバムようの楽曲がどれだけあったかが鍵を握っていた。玉不足を補填できるほどのキャリアはなかっただけに手持ち無沙汰感は大きいのだが、コンパクトな楽曲により乗りきった感が強い。
ギランプロデュースが早すぎたのかも知れませんが歴史に栄誉を刻んだのは間違いありませんね。
DPファミリーとしても注目でしょうが、初期型北欧スタイルに興味のあるマニアにはそそられる内容でしょう。


SATANIC RITES - Which Way the Wind Blows ★★★ (2022-10-20 12:54:08)

NWOBHM期の81年にシングルをリリースするもレコード契約に至らなかったのだが、それから4年後、シンガーの座をデボラ・ウエブスターに交代してリリースした1st。英国式様式美スタイルの①に始まり間髪を入れずにキーボードの戦慄に導かれメロディックな②へと流れてきます。どこか魔術的ないかがわしい空気も漂うが、メロディアスなアレンジも絶妙に絡ませ、地下室NWOBHMからの脱却を図っている。根暗な英国テイスト、そこに叙情味のあるメロディを含ませシットリと濡らせている。少々、画一的な唄い回しがイマイチ、曲の持つ情緒を伝いきれていない面はあるのだが、NWOBHMだよなぁな硬質感のあるリフ、ネチっこさもあるギターワークは、曲によっては叙情的なフレージングを紡ぎ独特の風合いを出している。音質は良くないが良く動きボトムを支えるベース、アタック感を押し上げるドラム、多彩な鍵盤ワークは音楽性に柔和さも持ち込み潤滑油となっている。
もっと上手い唄で聴きたいと思うのだが、この雰囲気だから胡散くさい叙情派NWOBHM臭を漂わせているから難しい。

プレイングマンティスの1stなど、叙情派NWOBHMの名盤のように語られるが、こういう隠れた名品が多いのがNWOBHMの魅力だし魔境の如き底なしの魅力がある。
まぁNWOBHMは1980年から1981年に起きたムーブメントであり事象だとか、NWOBHM四天王など雑誌に感化されまくる人の耳に意味の無いことだが、そういうくだらないバイアスの掛かっていない硬派な叙情派ハードサウンドをお探しのマニアにはたまらんものがあるでしょう。2010年にCult Metal Classics RecordsからCD化された際には幻のシングルをボートラとして収録、その音楽的変遷を楽しんでください。


JIMI JAMISON - Never Too Late ★★★ (2022-10-20 12:31:01)

恐らく彼のキャリアではラストアルバムとなった一枚でもあるメロディックロックの総本山、フロンティアレーベルからリリースされたソロ。北欧系アーティストを従え、完全にジミ・ジェイミソンにファンが求める音楽性を寸分違わぬ展開している。爽快感マックスの叙情派ハードポップソングに清々しさ、ジミの力強いがチョイ切ない系のハスキーヴォイスと完璧なマッチングを魅せていますね。ピアノに導かれ始まるタイトルトラックなど、彼の専売特許だろう。SURVIVOR、JOURNEYと言ったアーティストが好きなメロディ派にはたまらんでしょう。王道路線を堂々と闊歩する横綱感、若き北欧系アーティストの助力を得ながらも、けしてファンの期待を裏切らなかった作風は、まさにフロンティアレーベルの成せる技でしょうね。
曲ありきのジミだったのか、ジミありきの曲だったのか興味も尽きないが、古典に埋没しないフレッシュ感を持ち込めたのは若き才能だったのは間違いない。


BANGALORE CHOIR - On Target - Doin the Dance ★★★ (2022-10-18 13:23:51)

アルド・ノヴァとジョン・ボン・ジョヴィが提供した曲
他で擦られていないか気になるが
腰に来るダンサンブルなヘヴィグルーブ
流れて気にも絶妙だ
あの曲みたいだねが逆に効いている


BANGALORE CHOIR - On Target - If the Good Die Young (We'll Live Forever) ★★★ (2022-10-18 13:20:12)

個性など皆無だと言いたくなるアメリカンロックバラード
そのベタさがたまらん
そしてベタだなぁの域を完全に出なかったのが欠点でもある
デイヴィッド・リースの柔軟な唄い回しも印象的である
とにかくベタなアレンジと演奏とビックなロックバラードである
懐かし過ぎて恥ずかしくなる


BANGALORE CHOIR - On Target - Loaded Gun ★★★ (2022-10-18 13:17:51)

EZ LIVINとBONFIREでも擦っている一曲
こちらが初登場なのだろうか?
曲作りにはリック・フィリップス カート・クオモ ハリー・パレスが参加
売れそうな匂いがプンプンと漂う一曲だろう


BANGALORE CHOIR - On Target - Angel in Black ★★★ (2022-10-18 13:13:38)

オートグラフのスティーブ・プランケットのペンによる一曲
ビックコーラスも噛ましゴージャスな印象も与えるサビメロ
マックス・ノーマンが1992年に80年代の残り香タップリのメタルを作り上げているのが印象的


SACRED CHILD - Sacred Child ★★★ (2022-10-18 13:07:17)

オリジナルのリリースは1987年です。ACCEPTに加入前のデイヴィッド・リースが在籍していた事でも知られるバンド。今作はCD化にともないデイヴィッド・リース時代のデモを収録して復活。音質は良くないのですが、元ネタだしヴァージョン違いがあるのは嬉しい。またマニアにはたまらないボートラでしょう。
オリジナルで唄うのはアストリッド・ヤングなる女性シンガー、ハスキーな歌声はワイルドかつセクシー、アメリカンなハードサウンドとの相性も良く、イキイキとした印象を受ける。
なんと言っても、このバンドが鳴らしている音楽自体が懐かしい。メインストリーム寄りではあるが、もっとワイルドでハード、若さと勢いをパッケージして元気いっぱいロックしている。無害な毒気、その刺激的だが健全なハードサウンドに体が動き出しますね。

個性がないと言えばそれまでだが、懐かしいのである。WASPとかがブイブイ言わせていた時代を思い出す。MTV全盛に乗るにはもっと、露骨なアイデアが必要なのだが、このグループは、その一歩手前のハードスタイルなのが丁度良いのである。


SIRCLE OF SILENCE - Sircle Of Silence ★★★ (2022-10-18 12:51:41)

国内盤もリリースされているグランジムーブメントも取り込んだアメリカンメタルバンドの1st。シンガーは代表作のないディヴィット・リースに始まり、ドラムはジェイ・シェレン、ラリー・ファーカス、クリス・コロバスという苦労人が集合、時流も取り込みつつ、男臭い歌声を前に出したサウンドは、歌メロがしっかりと中央に鎮座しており、ヘヴィでダークなサウンドの中で存在感を発揮している。
今となっては懐かしいサウンドだし、現代メタルとの繋がりを見れば、この時代のスタイルもけして無視されている分けではない事に気がつく。正直、情緒のあるメロディックスタイルが受けやすい日本において、人気を獲得するのは難しいスタイルかも知れないが、この無愛想なヘヴィネススタイルは、ある意味アメリカンパワーメタルの専売特許とも言える、以外にフックのある歌メロを主軸とし、パワー一辺倒で押し切らないアメリカンメタルは貴重であろう。
国内盤が出たのも頷ける仕様である。狭い範囲かも知れないが、ミドルナンバーが中心のシリアスなヘヴィメタルは日本でも需要はあるでしょう。時代も流れ耐性も出来たところで、再考するには丁度良い作風かも知れませんね。


MEGADETH - The Sick, the Dying… and the Dead! (2022-10-15 17:55:15)

最近まで90年代の中頃からメガデスの新作をまともに聴くことがなった。サブスクリプションサービスの恩恵を受け、金が掛からないから彼らの過去のカタログに触れることが出来るのだが、その変遷ぶりには驚きを隠せなかった。もはやメガデスというバンド名が形骸化していた時代もあるのだが、ある時期からスラッシュの世界へと戻ってきたという印象が強い。デイブ・ムステインがいればメガデスなんだという価値観の下、メンバーチェンジを行い新たなるスタイルにチャレンジする様は、好き嫌いとは別の次元で評価されるべきであろう。

なにより人それぞれ趣味嗜好で楽しめばよい、どの時代がベストなど他人が決められるモノではない。個人的には初期の彼らには影響を受けた身としては、あの時代のメガデスが全てとも言えるのだが、今作は前作同様キコを相棒に、似たようなスタイルの作風になっている。古典メタルへの邂逅というのか、より突き詰めたメガデスのルーツたる姿も垣間見えるが、やはり今作は、メガデスメタルの集大成のような側面を感じる。とは言え90年代の中くらいからのアルバムは数えるほどしか聴いていないのだが、今作は前作以上に正統性の強いメタルへ傾倒している姿に驚く。

ジャンル分けなど便宜上なので、どうでも良いことなのだろうが、頭4曲、タイプの異なる作風を聴かせ今作の色合いを決めているのもポイント。メロディアスな①に驚いている、毒気のあるメガデスサウンドは何処へやら、その品行方正なサウンドミックスは全般的に貫かれており、昨今の流行を知らないのですが、今のメジャーアクトはこういうクラシックなサウンドミックスを好んでいるのかと驚きを隠せない。ある意味、外行きのサウンドミックスにダイナミズムを一切感じない。

地味な歌声と地味な曲調、これが9曲入くらいなら良いのだが、14曲となると多い気がする。メガデスの爽やかな側面をここまで強調されると戸惑いは隠せないが、正統性の強いメタルが好きな人には、癖がなくなった分、随分と聴きやすくなったと感じるだろう。
とにかく上品なミックスである。上手く当てはまる言葉が見つからない。
前作よりも違和感がある。叙情派メガデス、今作を表現するならば、そういう言葉がピッタリな気がする。④のようなメインストリーム寄りのハードサウンドが一番ヘヴィな仕上がりになるとは驚きである。

今作最大の聴きどころは多様性であろう、それを統一感のあるミックスで仕上げたという事です。最新作はパワーメタルだよなぁ。でも前作から入った人ならば大歓迎だろう。ニヒルなムステイン節も随所にねじ込まれいるのだが、刺激を感じないのは何故だろう?


NITRO - O.F.R. ★★ (2022-10-14 12:46:45)

コメントした記憶しか無いのだが消えているなぁ?
本来はもっとハードでメタリックだったんだろうなぁと推測出来るオープニングナンバーの軽快さ、メタリックさをスポイルしたソフトケイス使用に少々不満を感じるのだが、ギターソロではハイテクニックを駆使するマイケル・アンジェロの凄技は随所に練り込まれており、その曲芸ギタープレイに息を呑みますね。
少々、馬鹿げていると言いたくなるハイトーンを前に出しすぎたが為にイマイチ、跳ねなかったバンドなのだが、5オクターブを操るなんてアヴェンジャー感を出さない方が良かったのになぁと感じる面もありますが、グラム系シュラプネルサウンドと言えるNITROサウンドは、メジャー感とマイナーなメタリック感を巧みに混ぜ込み、独自の路線を突き詰めようと苦心している。
進みたい方向と売りたいマネージメント、その狭間を垣間見るような音楽性だが、商業誌で酷評されるレビューほど厳しい作品ではない。久しぶりに聴きましたが、ハイトーンに気を取られるが以外なほど、親しみやすいメロを唄っていますね。でもお腹いっぱいになるけどね。


BETRAYEL - Death Shall Overcome ★★★ (2022-10-13 10:51:45)

Metal Massacre Xに『Sick or Sane?』を寄稿するも時代の煽りを受けバンドは解散、結局、デモ音源のみのリリースで消えたアメリカンスラッシャーが過去の楽曲を復活させたコンピ作がこちらになります。
完全にスラッシュ第二世代とも言うべき、スラッシュメタルからの影響を受けたスラッシュメタルです。初期型のメタリカ、エクソダス、スレイヤー、アンスラックス、デスエンジェル、オーバーキルと言ったバンドの顔が見えてくる音楽性、その先人達からの影響を素直に落とし込んだサウンドは、正にオールドスクール一直線、ダークでイーブルなテイストは禍々しい瘴気に犯されており、毒素に浸食されたスラッシュサウンドで聴き手を魅了するでしょうね。
こんなもん聴くくらいならば、俺は有名バンドのスラッシュメタルを聞き直すよと言われたら反論はしませんが、はやり、狭い協議の中でも新しいモノを見つけた、あの時代の匂いがする胡散臭いレアモノに触れたいなどの、マニアックな感性を満たしたい猛者には、ほっとけない魅力が満載です。ある時期から、どこかスラッシュメタルバンドからも健全な所謂ポジティブさが前のめりに出てくるバンドや楽曲も増えてきました、このバンドは、そういう方向性とは逆のスタイルを取っている点が個人的にはツボであり、先の見えないスリルはないのだが、正統性の強いメタルを下地にビルドアップされた初期型スラッシュから薫陶を受けた、サタニカルな要素が大好きです。どこか荒涼としたサウンド、アメリカのバンドではないので濡れていないのだが、アンダーグラウンドの帝王時代のスレイヤーやメタリカを思い出させるマインドを感じさせてくれるのが最大の褒めポイント。
自分が初めてメタルに触れた時代を想起させる、胡散臭い地下メタル感が懐かしいんですよね。メジャーアクトにツバを吐く高潔なるメタルスピリット。オカルトホラーテイストを孕んだステゴロスタイルにグッときますよ。


JIM GILLETTE - Proud To Be Loud ★★★ (2022-10-13 10:21:31)

参加メンバーをみれば察しもつきますが、このバンドはNITROの前身にあたるプロジェクトです。名義が5オクターブのハイトーンを操るジム・ジレットのソロになっている&レーベルの名義も彼のモノと、どういう経緯なのか興味は尽きない。
そういう背景をバックに、ギターのマイケル・アンジェロと豪快かアメリカンロックにネオクラ系のギターが絡むというSTEELER路線というのかシュラプネル路線を全開に披露、少々噛み合わせの悪いギタープレイも飛び出すのだが、マイケルのぶっ飛んだプレイが耳を捉えます。その曲芸飛行のような凄技、人間離れしたマシーンの如きギタープレイに耳も持っていかれますが、NITROよりも正統性の強いメタルに軸足を置いているので、マイケルのギターはこちらの方が俄然生きている。
またバラードタイプの曲で魅せるエモーションも悪くない、なにより正統性の強い楽曲が中心なので違和感がないのが一番だろう。硬軟交えた光沢艶めかしいアメリカンメタルは凄腕ギタリストを手にした事で俄然色艶が光り輝いている。
オリジナル盤がアナログとテープしかなく、自主制作故に全然知られていないのは残念なのだが、2003年にボートラを追加してCD化も行い現在は配信盤もあります、興味のある方は是非とも聴いて欲しい一枚ですね。
古き良きシュラプネル路線のメタルサウンド、こういうギター懐かしいわぁと思うマニアにはグッとくるでしょう。
勿論、ジムさんも強烈なハイトーンをキメていますが線が細いのでね、⑥のオープニングとか懐かしいわ。コップを割る超音波スクリームもお楽しみください。リタ・フォードの旦那になれた事がジムのキャリアハイだなんて悪口は当てはまりませんよ。


NITRO - Gunnin’ for Glory ★★★ (2022-10-12 17:13:40)

変態ギタリスト、マイケル・アンジェロ率いるバンドのコンピ作。シンガーも5オクターブのハイトーンを操るとかでナイトスクープのスタッフも喜びそうなエキセントリックな話題もありましたが、グラム系サウンドの裏でなるマイケルのギターは目の覚めるようなハイテクニックが飛び出しており、聴きようによっては、かなりエキサイティングである。少々馬鹿げた唄い回しになるシンガーも、抑えめでいけば耳障りではなくバラード③なんて、このアレンジで良かったよね。
未発表+マイケル・アンジェロバンドの曲+アレンジ違いという構成は、このバンドのバカバカしい面を押さえた楽曲を中心に収録されているので、悪い噂を聴いてきたマニアには随分と敷居を下げたろうし、グラム系には不釣り合いなほど、バカテクギターが飛び出す場面など、面白いと思わせる見せ場もあり、ある意味、入門編には1stよりも、こっちの方が付き合いやすいのではと思いますよね。

良い意味でマイケル・アンジェロの変態的ハイテクニックが顔をチョイのぞかせるアレンジ、超音波ヴォイスも抑えめ、グラム系にネオクラギタリストが参加したというのはKEELくらいなもんだろうが、このバンドを、その究極のミスマッチを見事にやり遂げた実績がある。こうして余計な情報を排除して聴けば、けしてバカにされるようなバンドではなかった。

悪評を聴かされているマニアには無理に聴けとは言えないが、グランジ直前に隆盛を極めたアメリカンハードの残り香を感じさせてくれる質の高い音楽性は、その筋のマニアにもビンビンに響くと思いますよ。

マイケル・アンジェロのキャリアを少し掘り下げたくなりましたね。


Fast Buck - Night Games - the Complete Recordings - Night Games ★★★ (2022-10-12 16:41:55)

エドウィン・ハミルトンなる人物がグラハム・ボネットに提供した楽曲だとずっと思っていました。
実際にそうなのですが、実はオリジナルはハミルトンがいたバンドがレコーディングをしていたんですね。
お蔵入りしたので日の目を浴びる事無くグラハムのオリジナルのような立ち位置でしたが、こうして実は俺たちの曲なんですと
世間に知れたのは良かったでしょうね。
グラハムヴァージョンよりもロック色が強いのが印象的。このヴァージョンも十分カッコいいですよ。
アルバム1枚で消えた英国のクラシックロックバンド。未発表音源を込みで6枚組で復刻とは驚きです。
この曲は、個人的にハイライト的に立ち位置です。そして本来の持ち味とはチョイと違うんですよね。やはりシングル向きの一曲だったのかな?そういう想像を働かせ楽しんでいます。知らないバンドだけに興味は尽きませんね。
NWOBHMでも厳しいのに70年代のロックまで探求したら永久に娑婆には戻れんよ。


91 SUITE - Back in the Game ★★★ (2022-10-10 14:25:41)

メロディ派の間では有名なスペイン産のメロディックHM/HRバンドの復活作。厳密にはEPに+新曲という構成なので、前半の6曲丸かぶりに苦言もあるでしょうが、80年代の初期から中期にかけてのBON JOVI風味スパニッシュヴァージョンという音楽性は、メロディ派にとって胸キュンポイントも高めな楽曲が目白押し、時代を超越する普遍的なメロディと作風に古いも新しいもなく、常に定番であるブランド力たる音楽性を全開で披露している。奇をてらっていない分、物足りなさを覚えるマニアもいるでしょうが、逆を言えば、その安定感はずば抜けたモノであり、メロディ派を自負するマニアならば、その寸分違わぬ披露するドラマティックな展開に胸が恋い焦がれます。
裏切らない事が一番嬉しいAOR調のメロディックメタル、スペイン産という事で、チョイと暑苦しい音楽性をイメージする人もいるかも知れませんが、このバンドはとにかく洗練されています。お手本に対して忠実なる忠誠心をもって取り組んでいます。
それでありながらも、ベタな期待値を上回ってくる手腕があります。その妙味に唸りますね。
爽快感のあるメロディが優しく頬をなでるように吹き抜ける清々しさ、やはりベタに敵う物なしです。


PALADIN - Ascension ★★ (2022-10-10 14:09:39)

アメリカのバンドとは思えないクサイメロディが疾走するパワーメタルをやっているバンドの1st。日本人が好きそうなジャーマン系の匂いからガルネリウスのファンあたりが喜びそうな叙情的なメロディと根暗なタッチではない光が差し込むメジャーな展開を好むスタイルは、ハロウィーンに始まるパワーメタルの系譜に連なるモノであり、その筋のマニアならば越を上げずにはいられない、ファンタジックでヒロイズム溢れる音楽性に興奮を覚えるでしょう。
とにかくド直球のジャーマン系メロディックパワーメタルをやっています。しかも日本人好みのクサさとキャッチーさがあり、これは絶対に日本のアニメが好みなんだろうと思いますね。
しかし、このバンドが不思議なのは、そういう直球スタイルながら、②からはグロウルなども混ぜ込み、聴き手を混乱させるという新手の手法に出るのが興味深い。そういう意味では限りなく正統派メタルに接近した時代のインフレイムスあたりも思い出すのだが、クリアーなパートを唄いシンガーの場面も方が音楽性にはフィットするでしょう。
バンド名パラデインというのにピンと反応するRPGマニアならば、この音楽性に心も躍りますよ。
とは言え、この手のバンドには造詣の深くないワタクシは、このバンドがどんなに恐ろしいパクりをしていても気づきませんので、そのあたりはご了承ください。
適度な疾走感とパワー、そして親しみやすいメロディをメタルなサウンドで集約したスタイルは日本人の琴線に触れる場面を多いでしょうね。


RAZOR - Decibels ★★ (2022-10-10 13:52:29)

元々が解散前に録音されたデモが叩き台になっていると言われる復活作。純粋な新作とは言わないのだろうが、2000年を目前にオールドスクールな感性を纏った作風を世に出した気概は大いに買いだ。
結局は90年代風もサウンドプロダクションが切れ味を損ない分離の悪い音像を作り出している。そのあたりが好悪を分ける最大のポイントだろう、またヴァーカルの処理の仕方もイマイチである。こういう時代に忖度した作風ながらも根幹にある音楽性に変わりは無く、敬意をこめてカナディアンメタルBIG4と呼びたい彼らの復活劇に拍手を送りたい。
まぁこんなもんではないのだが、こういうサウンドメイクをしたことで、どうにもリフが単調に感じる。このバンドの芸のなさが露見した、それは逆の意味で武器だし個性だったのだが、悪い面が際だっているように感じるのがマイナス。
全然悪くないのだが、どうしても引っかかるとダメだ。贅沢な悩みである、この音は間違いなく時代の寵児と持ち上げられ過ぎた新興勢力をぶっ潰すだけの勢いがあるのにね。
それだけRAZORという看板がマニアにとっては重かったという事でしょう。


TOWER CITY - A Little Bit of Fire ★★ (2022-10-09 21:03:03)

国内盤も遅れてですがリリースされた幻のロックグループによる1st。1989年に録音する90年代を目前にリリースを見送られたという、辛酸を舐めた一枚がドイツのMTMミュージックが発掘した事で世に出る形となりました。
アメリカのバンドですがキラキラとした煌めきのあるAOR風味満点のハードサウンドを展開、正直、シンガーの声質を歌メロが似合っているとは思わないのだが、①②と上手く乗りきったあと、アメリカンなBON JOVI風味が漂う③あたりで本領発揮という事が全体の噛み合わせもよくなり、このバンドの本質はこっちじゃないの?となります。
そこは趣味嗜好の問題ですので、聴き手によって評価は大きく分かれるでしょうが、洗練された極上のメロディは、適度にハードさも含ませ軟弱地盤にならぬよう基礎を強く補強しており、決定打に欠けた作風ではあるのだが、その反面、堅実なスタイルを築いている。

まぁ唄とキーボード押しの楽曲重視な作風は、少々平坦な景色に写り飽きのサイクルが早いのですが、メロディ派のマニアならばハイライトをテンションが上がる場面も多数訪れるでしょうね。
DANGER DANGERにジョー・エリオットが参加したみたいな感じで聞いて頂けると良いかもです。個人的には、もう少しガツーンと来る奴が欲しかったなぁ。優等生過ぎるのよ。


RAZOR - Open Hostility ★★★ (2022-10-08 09:32:08)

混迷を始めたメタルシーン、メジャーに残るために多くのバンドが方向性を転換する中で、このバンドは、どこ吹く風と言わんばかりに前作のスタイルを研磨、どこか殺伐としていた前作から比較すると埃っぽさが加味されシンガーの持ち味との相性も前作以上にアップ。ドラムが打ち込みという欠点はあるのだが、そういう不満を言うのは野暮ですよと言わせるだけのガッツが全編に漲っており、デイブ・カルロの破壊神の如く暴れ倒すギターが耳をつんざきます。
正直、あの時代に流行ったインダストリアル系なんか聴いている人にはドラムマシーンなんてどうでもよいことだろうし、ある意味、このバンドには、そういう環境すらも味方に出来る破天荒さがある。こういうリズムセクションでしたと納得させるだけにキラーな魅力。ボブ・リードの冷酷さの中にある人間臭い歌声も、テクノロジー恩恵を受けまくった連中とは比較にならない強度があり、スラッシュメタルを唄うに適した人材だった。そしてスラッシュメタルの王道を極めたカルロのソングライティング力も同様に評価したい。
この時代に茨の道を選んだバンドには敬意を表すのだが、今作を持ってバンドは解散。
カルロは裏方に回り、S.F.H.を再始動。カルロがプロデュース(カナダなんであのハリー・ヘスも裏方として参加)してアルバムをリリースとなります。

今作を改めて聴き味気ないリズムマシーンだなぁと感じる場面もある事はあるのだが、それよりも破壊的なサウンドをより先鋭したマシーン的な刻みとして受け取る事も可能、マシーンに粘り着くベースは厭らしい粘着音で、のたうち回り聴き手はその毒気にうなされる。
この数年間変ることのなかった音楽性、似て非なるアイデアを用いてバイオレントな音楽性を積み上げたデイブ・カルロ。RAZORという無慈悲なる好戦的な殺戮マシーンを操り裏街道を爆走していた。怖い音出しているねぇ。


RAZOR - Shotgun Justice ★★★ (2022-10-08 09:09:27)

ライブシーンでは有名な地下芸人の如く、マイナーレーベルからのリリースという背景がありイマイチ、認知度を上げきれなかったカナディアンスラッシャー。その環境は商業誌との繋がりもなく、この手の音楽に精通する編集者も少なく黙殺されていたRAZOR。ダイハードなメタルファンの間ではプチ話題になった今作だが、やはり流通を言う壁もそびえ立ち手に入らないとマニア泣かせの一枚としても知られる。

彼らのカタログとしてはサウンドプロダクションも揃い音楽的な整合感は増している。本領発揮とも言うべきザクザクと刻まれるシュレッドギター、複雑なリズムを構築するリズム隊も爆裂感を増量、その破壊力満点のサウンドメイクを支え持ち上げている。ある意味、お馴染みの顔を見せるギターではあるが、シングルギターとは思わせないダイナミックなギターサウンドは、見事にビルドアップされた今作の顔となっていますね。
破壊力満点のリズムを従えデイブ・カルロは破壊神の如く暴力的なエネルギーをコントロールしている。個人的にはシープドッグに思い入れがあるわけではないので、ボブ・リードに不満は一切無い。むしろ、彼のチョイハスキーな渋めの咆哮は逆に個性的に耳に残り、より良い刺激へと変換されている。

メタルバブルが弾け、ガンズシンドロームが勃発、スラッシュメタル勢も音楽性の変換を図りだした時代に直面する90年、この作品は時期が悪すぎた。運も実力のうちとは良く言ったモノだ。このバンドは持っていなかったと言える場面が多すぎる。
古典スラッシュメタルを愛する猛者や、興味のあるマニアには、今作は実に聴きやすいアルバムでしょう。


TANKARD - The Tankard - Minds on the Moon ★★★ (2022-10-06 16:31:40)

1995年にこのようなタイプの曲が聴けるとはね
時代遅れのジャーマンスラッシャーが披露したスラッシュアンセム
多くのマニアを歓喜さけた一曲でもある


HIRAX - Raging Violence ★★★ (2022-10-06 16:18:58)

インパクトのあるジャケットが有名な黒人シンガーを擁するアメリカンスラッシャーの1st。14曲も入っているのだが大半の曲は2分前後の短い曲ばかりなので30分少々で終わるコンパクトな作品。インパクトが強い短めのアフロヘアーシンガーだが、スラッシュ系によくある絶叫系とは違い、彼はしっかりとメロディを追いかけスピーディーかつヴァイオレントなバックの演奏に埋もれることなくハイトーンをコントロールしながらバンドサウンドの顔としての存在感をアピール、ありそうで余りないスタイルをやり切っているのだが、それは音楽性にも通ずる面であり、ハイテンションなクロスオーバースタイルは、勢いで誤魔化せるだけの力業は十分にあるのだが、もう少し落ち着いて演奏して欲しいなぁとい場面もあるのは事実。
そういう疑問を持たせないだけのインパクトも何度か聴いてると気にはなるでしょうね。それでもマイナスに働かないのは、奇妙さを複合的に組み合わせ昇華させたアイデアと未消化な部分のバランス、それを短い曲にすることで乗りきったのでしょうね。
レコーディングなんて、皆でせーので一気に録音したようなもんだもんね。そういう恐ろしい部分も含めて、今作は評価されるでしょう。個人的にも憎めないファニーさを感じるのは、そのあたりかと思います。


SEVEN - 7 ★★★ (2022-10-06 00:52:14)

いつも通りのサブスクで音楽を楽しんでいたら類似するアーティストとして自動再生されたのが、このアルバムからの2曲目。全然知らないバンドの登場に驚きましたが、音楽性の確かさに驚いた。
そのまま、アルバムを再生するのだが、これが実に落ち着いた味わい深いメロディアスロックを展開。誰が参加しているんだろうと軽くググれば、その筋の達人が揃いバンドを支えているようですが、これだけゲストが参加しているとバンドというよりはシンガーである、ミック・ディヴァインのソロバンドみたいな感じもしているのだが、なんと言っても詳しいバイオを全く知らないので、誤った情報ならゴメンなさいである。

全く商業誌を読まないので、このバンドの音源がルビコンから出ていることにも驚きますが、甘いバラード③の登場にメロディ派ならばウットリと微睡むでしょう。堅実なメロディアスロックの④への流れも絶妙、TENをAOR化した音楽性とも言える英国風味満点のAORサウンドに、メロディ派ならばグッと引き寄せられる場面も少なくないでしょう。

とは言え新しい何かがあるわけではない。その時代を超越する普遍的なスタイルが最大の売りなのだが、そこが最大の評価を分けるでしょうね。⑤も良いのよ。絶妙な甘さと大人の味わいを巧みに演出、その振り幅を生かしたメロディが耳を引き寄せます。

職人技が冴える1stアルバムとは思えない完成度の高さ、全てが平均点をクリアーとその質の高さに舌を巻きますね。


RAZOR - Custom Killing (2022-10-06 00:31:45)

数年前まで聴いたのことのなかった過去のアルバム。周りの評判も悪く音質は最低、音楽性も迷走とらしくないとの評判が大勢を決していた。復刻盤を機にワタクシも向きあうことが出来たのですが、確かに世間の批評も頷ける一枚でしたね。この作品、BURRN!でもレビューがなかったらしく、リリースされていたのも知らないというファンが続出するほどだったと言うのも腑に落ちる展開でしょう。
やはりオープニングから11分、しかも無駄だと思えるイントロ部分なども含め、正直出鼻はくじかれた。
ハイテンションにツッコんでくる突貫スラッシュとも距離を置き、より深みのある音楽性へとシフトチェンジ、パワフルな剛直メタルへとの接近を図りつつも、このバンドらしいスピードはあるのだが、今回は安全運転に努めているの言うのが正直な感想だ。

オリジナル盤を聴いていないので比較は出来ないがリマスターして、この改善点ならばオリジナルはどうだったんだろう?と疑問符が付きまくるのだが、風呂屋で演奏しているのかとツッコみたくなるくらいエコーの掛かったミックス、隣町の盆踊りの音が漏れ聞こえてくような脆弱なサウンドプロダクションに腰砕けである。

看板シンガーのシープドックもやはり控えめ、いつもの常軌を逸した歌声は何処やら、そのテンションの低さは演奏にも繋がり見せ場が少ないです。今回、彼らのインタビューを呼んで、裏事情を知った今、これ以上の不満は吐露しませんが、レーベル側の怠慢には腹が立ちますね。

ある意味、正統派パワーメタル寄りのスタイルになったカミソリ集団。そのキレは大鉈を振り回す凶暴極まりない爆裂な攻撃力だっただけに、大人になりましたで済ませる事が出来るかで評価も大きく分かれるだろうが、個人的には、音質のショボさが視聴する意欲を下げるので、やはり厳しいです。レビューも手が止まりますよ。

最後のインストも絶対にいらないよなぁ。である。


RAZOR - Executioner's Song ★★★ (2022-10-04 06:49:15)

記念すべき彼らのメジャーデビュー作。オープニングから自主制作盤が続くのだが、より尖りまくりの③から新生サウンドの幕開けといくのだろう、個人的には頭2曲の掴みで気分は上々、そこから雪崩の如く爆走メタルへと流れるのだが、低予算&厳しいレコーディングスケジュールを想像させる突貫工事サウンドに、もうチョイなんとかならんのかと言いたくなるのですが、メジャー盤と言っても色々ありますからね、バンドとしては少々厳しい思いもあるでしょうが、正直言って、純粋無垢なメタルスピリットは限界点を突破、そのグツグツと沸き立つメタルに対する忠誠心と、生の演奏をパッケージした今作の持つ高潔なる精神性は、テクノロジーの恩恵に頼りまくり、誰が参加したなんて、どうでも良いような今風のメタルバンドなど、イチミリも寄せ付けないオーラが出まくっています。

日頃の雑誌のレビューを中心に音源を漁るキャリアの長いライトリスナーの目には今後も止まることはないでしょうが、今の若い人たちはもっと柔軟に音楽に触れ、知識や情報の入れ方も様々、彼らがインタビューで答えたように、思わぬ形でリバイバルが起きます。
日本で言えば、今、海外のマニアがシティポップにハマりオリジナルのアナログ盤を探す姿がテレ東の番組でも紹介されたりと、サブスクリプションやYouTubeのおかげで、コアなバンドに再度スポットライトが当たっています。

こういうのは既存のメディアでは絶対に不可能だったはず。三流アーティストがサブスク死ねといっていたが、それは、日本人を相手に流行曲を作っていた典型的な一発屋の戯れ言。自肩は強いが売れなかっただけの名品が、必ずや日の光を浴びる日が来るという事を、最新のテクノロジーが若い人中心に掘り起こしたのだから痛快です。

2005、6年くらいからは顕著にリバイバルブームが起きました。ワタクシのような過去にしがみついて音楽を聴くレトロマイスターには、たまらない日々でございます。勿論、Spotifyが教えてくれるメタル系アーティストの95%は知りませんが、それなりの知識があるので、全く困りません。こうして過去と向きあい、今となっては手に入らないような名品に出会えます。
今作など、昨今のメジャーシーンから見れば、バラバラに切り刻まれ屠殺場に捨てられていたようなアルバムだ。一部のマニアが愛で時代錯誤を共有する代物であろう。
それが、ある意味、世界に散らばるコアなメタルファンを再度振り向かせるパワーがあった事に衝撃と共に感動を覚えますね。

信じるモノは救われる。RAZORもそうならば嬉しい限りです。本物が見捨てられるなんておかしな話ですよ。


RAZOR - Armed and Dangerous - Take this Torch ★★★ (2022-10-04 06:13:40)

メタリカぽさがイイですね
ストレートに打ち鳴らされるスピードメタル
デイブ・カルロのソロもクール


RAZOR - Armed and Dangerous - Fast and Loud ★★★ (2022-10-04 06:11:31)

アルバムタイトルそのまんまです
それがいいのです
サビで連呼されるタイトル
気がつけばこちらも拳を振り上げFAST AND LOUD


RAZOR - Armed and Dangerous ★★★ (2022-10-04 06:09:59)

2019年に復刻ものに定評のあるHigh Roller Recordsからデモ音源をプラスして完全体で復活したEP。オリジナルは7曲ですが、半分以上が他のアルバムに収録された関係もあるのか?はたまた自主制作の壁もあったのか、正式な形での復活は嬉しい限りです。

まず冒頭から驚きます、SE的な役割を果たす2分チョイのミドルで幕開け、そしてスピード命でツッコんでくるのかと思ったら、以外とオーソドックスはストロングスタイルのメタルサウンドを展開、初期衝動を煽りまくる小細工無用の暴走ロック、それは次作とは異なるテイストなれど、スラッシュメタルの雛形となるようなスピードサウンドも聴かせるだけに、今作の立ち位置は歴史的な観点からも興味深い内容になっています。MOTORHEADよろしくなハイテンションサウンド、そして同郷のEXCITER等にも通ずるド派手は爆走メタルに心も躍ります。

新しい何かを生み出そうとしているバンドの気概、自主制作盤としては十分に期待値をクリアーする内容でしょう。また、ハイピッチに喚き鈍重な刃物を振り回すアクロバティックメタルが苦手という人には、まずかここから耐性をつけて欲しいくらいです。

誤解を恐れずに言えばメタリカだって演奏は下手な部類に入る。このアルバムを聴いて稚拙な面が無いと言えば嘘になる。しかし、そういう荒削りさを見方につけ、絶妙なコントロールの下、スピーディーかつハードで獰猛なロックサウンドをかき鳴らす姿に焦がれますね。


RAZOR (2022-10-04 05:52:21)

cri0841さんとても貴重な情報ありがとうございます。
インタビュー興味深く拝見しました。日本では扱いが雑でしたから。丁寧なインタビューはとても良かったです。
そしてレビューしていると思っていたRAZORのカタログ。消えているのもあるのですが、チョイとやりたくなりました。


HARKENKREUZ - HORSTWESSEL ★★★ (2022-10-02 13:56:29)

ド派手なヴィジュアルとバイオレントなサウンドでインディーズシーンを暴れ回った国産スラッシャーが1994年にリリースしたデモ音源。今ならば、このハーケンクロイツなるバンド名は物議を醸すでしょうが、尖りまくったバンドサウンドを聴けば、ある意味納得のバンド名でしょうかね。やはりナチスを象徴する鉤十字ば物騒ですよ。ある意味、ワタクシなんてブロッケンマンを思い出したりするんですが、国際舞台では御法度ですかね。

このバンド、活動時期が短く作品を世に出していない。それだけに一部のマニアが知るのみで終わっているのだが、その知名度を遙かに凌ぐクオリティを有しており、コンピ作の参加のあとに、正式な音源を残していたならば国産スラッシュシーンの勢力図に名前を克明に残すことが出来たのになぁと思いますね。

また彼らが北海道のバンドというアドバンテージがあったのも問題だったのかも知れない。シンガーのSADAYAさんは、現在SABER TIGERを経てELIZAに参加、この時代を歌い方は違いますが、確かな歌唱力で貢献しています。

血なまぐさい匂いが漂うバイオレントな作風、陰惨なる殺戮現場の如きインパクトを残す音像と過激さ、個性のある音楽性だったと思うのだが、4曲入だったので全貌が見えたと言えないのもマボロシ感を強めている。

こういう音源が埋もれているのが残念で仕方がないですね。古典スラッシュが好きなマニアならば、必ずや耳を刺激するでしょう。


Shella(日本) - Listen! ★★★ (2022-10-02 13:28:47)

デモ音源をリリース後、今は亡きMandrake Rootレコードからリリースされた8曲入の音源。フルアルバムなのかミニアルバムなのかは分からないが正式な音源はこれだけだったと思う。マニアにとっては愛すべきMandrake Root関連の作品なのだが、知名度が低くマニアからも忘れさられた感が強いのが残念。
A面のオープニングナンバーは、これは正解だったのかというのが個人的にはあり、このあたりがマニアの評価を分けたのではないのかなぁと思いますね。ニューミュージック風のポップロックで幕開け、シンガーの唄い回しも楽曲もアースシェイカーを想起させるモノであり、個人的には肩透かしを食らった気分である、しかし、曲自体は非難されるようなモノではなく、甘口の楽曲を支えるリズム隊の堅実さとパワフルさに耳が奪われる、控えめなツインギターコンビも可能性がありそうだ、マーシー過ぎる唄いからが気になる、やはり今聴いてもB面の一曲目である『Shout Through the Night』のようなハードロッキンで攻めて欲しかった。

とは言え、このバンド腕は間違いなくある。前述したようにドラムもベースも巧者、印象的なオカズとねじ込むドラムと音質は良くないながらもブリブリと言わすベース、この底上げは貢献度も高い。
そしてツインギターも印象的なフレーズでリード、日本人らしいキメの細やかさと大胆さを巧みにブレンドして耳を楽しませてくれた。
やはり、軟弱な時代のシェイカー風味と、パワフルなナンバーも対比というのか、方向性の違い見たいなものが、どうも噛み合わせが悪く、ある意味、昭和歌謡風味が漂う楽曲と線の細いハイトーン系の相性の良さを感じさせなかったのはマイナスですね。

勢いのあるパワフルな楽曲をプレイ出来ないバンドじゃないだけに8曲入ならば方向性を絞って欲しかったなぁと思います。ハードな方面にシフトしたならば、もう少し今日の評価も違ったように感じます。

Mandrake Rootと言えば、多くのマニアから愛されたレーベル。閉鎖された今、権利の関係などもあり復刻は難しいだろうが、貴重なカタログを抱えるレーベル。それだけに、こういう優れた名品が埋もれているのは勿体ないですよ。配信で復活して欲しいなぁ。バンドキャンプとかもあるしさ。関係者の皆様の努力が見たいですね。日本にだった海外のコレクターを唸らせる名品はありますからね。


TEN - Here Be Monsters ★★★ (2022-10-02 13:10:40)

最近全くチェックしていなかったアーティストであるゲイリー・ヒューズ率いるメロディックメタルバンド。こうしてコンスタントにアルバムをリリースできるのだから凄いですよねぇ。
まずオープニングからイイですねぇ。勝手に大袈裟なSEで始まるのかと思ったら普通に開幕。これが往年の空気を感じさせるメロディアスな曲だけに、お久しぶりのワタクシには丁度良かったです。相変わらずのディープヴォイスは甘いメロディを抱擁感を持って歌い上げ、ゲイリー節を前回でやり切っています。
このバンドに興味を失いかけたのは、単に仰々しい曲が増え小手先のテクニックに走ったなぁという思いがあり距離を置いたのですが、今作はそういう感性は一切持ち込んでおらず、初期の路線に通ずる素直なアレンジで勝負を掛ける王道路線へと向かっている。近年のアルバムを聴いていないので比較は出来ないが、日本で話題をさらったゼロ・コーポレーションからリリースされていた時代を想起させる内容となっており、個人的には満足できる仕上がりでした。
しかし、どの時代のTENが好きかで評価も分かれるでしょう、もっと仕掛けが欲しいと思えば、やや物足りないだろうが、オマージュを隠すために無駄な継ぎ足しがあると感じる人にとっては、この路線は大歓迎だろう。
主役は楽曲、派手なソロも装飾過多なキーボードも必要としない、シンプルイズベストを貫いているように感じる。似て非なるものと作り上げるのは難しい、次も同じ路線というのは厳しいだろうが、是非ともこの路線を磨き上げTENが好きサウンドを光り輝かせて欲しい。相変わらずバラードなども絶品ですよ。日本人は割とハイトーン系が好きだから、この突き抜けないディープヴォイスは苦手なのかな?
メロディ派に取っては、また生涯愛すべき一枚が登場したと素直に喜べる一枚でしょうね。
これを聴き空白の期間を埋めようと思うのですが、しばらくは今作で酔いしれます。


TALAS - 1985 ★★★ (2022-09-29 20:35:03)

ビリー・シーンが在籍していた事で知られる伝説のロックグループの最新作。2022年に3枚目のアルバムをリリースしてきたのですが、これが驚いた。アルバムタイトルが示すように1985年という、メタルバブルが巻き起こる直前の、まだ健全さが残るガチンコのアメリカンハードサウンドを披露、外連味のない豪快なサウンドは、あの時代を懐かしむだけではないフレッシュ感を伴い今の若い人にも十分、訴求する力を持っているでしょう。
今作リリース時には他界してる、リードシンガー、フィル・ナロの熱のこもった歌唱スタイルはこの手のサウンドに激ハマり、ドラムのマーク・ミラーはビリーの相棒を見事に勤め上げ堅実だが、派手なリズムを見事に支えている。
適度に華やかで硬質なロックテイストを均衡させた奇跡的なバランス感覚、ドライになりすぎればヴァン・ヘイレンみたいになるところを上手く回避しながら、MR.BIGでもないTALASな音を鳴らしている。

個人的には、ここを一番危惧していました。ビリー・シーンがいるだけに、マネージメントから変なアイデアを盛り込まれ安易な方法を取る楽曲が1曲でもあれば台無しですからね。

主要メンバーであるビリーが抜ける直前のTALASというバンドのポテンシャルの高さと可能性、こんな強力なマテリアルを眠らせていたなんて勿体ないですよね。こういう形で復活してくれたのは本当にありがたいです。
やんちゃで勢いがあるのに、どっしりと構えた横綱感、昔ほど、ビリー・シーンのベースを前面に出しているわけではないのでバランス感覚にも秀でている。でもベース強めなのは、このバンドの持ち味であり。ビリー・シーンという男の存在感が売りでもあるために、このミックスに不満はない。
バンドを牽引するのがベースという面白い音は今も昔も変りませんね。
普遍的アメリカンハードサウンドのど真ん中を闊歩する王道スタイルとベース主導という斬新さの融合、今作も最高の形で実現してくれました。昔のマテリアルを引っ張り出しても懐古主義で終わらないのは、このあたりのセンスなんでしょうね。
そして一番良かったのは現代的なサウンドメイクにしなかったこと、これに尽きる。


The V-Project - Lost Demos ★★ (2022-09-28 17:15:04)

詳しいバイオはサッパリ分かりませんが、オープニングはジェイムズ・クリスチャンが唄います。その後はロビン・マッコリーが登場と質の高いメロディアスロックを披露、ギタリストであるデヴィッド・バッカロを中心に曲作りを行い、中々楽しませてくれます。
その味わい深いギターは、情熱的なフィーリングも伴い、ラテン的なアコースティックギターもあったりと、引き出しの多いメロディックメタルを聴かせてくれます。歌い手のパフォーマンスにも助けられているのですが、ガツーンと来るような派手目な楽曲はないので、その疾走感やノリの良さを重視するマニアには退屈なアルバムとなるでしょう。
その反面、控えめなサウンドは堅実な響きをもたらし安定感を誘発、温かみのあるブルージーなサウンドも手名付け、多様な唄モノロックを展開しています。
今作の性質がイマイチ掴めておらず、アルバムタイトルが示す通りなのかも知れないが、唄モノマニアならばトライする勝ちは大いにあるだろう。知らん歌い手もいるが、そういう出会いも込みで楽しんで貰いたい。


SIGH - Gallows Gallery ★★★ (2022-09-23 17:30:19)

初めて聴いた時の衝撃は今なお計り知れないモノとして心に刻まれています。事前の情報ではブラックメタル、アバンギャルドというキーワードが頭にインプットされていたのですが、完全に裏切られました。いい意味での裏切り、その無意識のうちにカテゴライズしたくなる音楽性という概念をぶっ壊したホンモノの音楽を前に、どのような表現を用いるべきか躊躇します。それほど、高尚であり一筋縄でではいかない知性豊かな音楽にこちらの教養が追いつきません。とにかく脱帽です。
まず、この音の聴いてジャパンをイメージする人は皆無でしょう、コンセプト色の強い作風ですが、英詩を訳せる分けではないのでなんとも言えません、ですが、あえて配置される同じようなメロディライン、それを主軸に仕掛けてくるのだが、とにかく、このアイデアがえげつない。親しみやすいメロディだが、神秘性を司るシンフォニックな音色、そして冷ややかな感触を与えるイーブルタッチなメロディと音像、その氷河の奥底で眠りについたデーモン族が眠る地底の如き、神秘的なスタンスが、眩い光を放ち幾重にも色鮮やかな音色を鮮烈に奏でていきます。
ワタクシのような語弊力のない人間では語ることなど出来ません。このバンドのコメントは避けているのですが、久しぶりに聴き改めて打ちのめされました。
あえてなのか、このチープな音像、脆弱なミックスさえも狙ったのではと思わせる、オカルト神秘主義メタルに飛鳥涼の如く洗脳されそうです。一番近い音楽性では、キング・ダイアモンドあたりを想起するのですが、このバンドの奥深さは、そんな比較論などどうでもよいのです。本来はデスヴォイスで唸りを上げるシンガーも、驚くほどクリーントーンを操り裏切ってきました。
この裏切りの連続に思考も停止、そして催眠から目が覚めたときに知らされる現実、不動明こと勇者アモンと対峙する堕天使ルシファーとなった気分です。
この音楽は、歌詞が分かると凄い気がする。まさか、女のケツを追いかける内容じゃないでしょう。つまらん政治批判でもなさそうだ。それだけに、深いところは追求しませんが、ムーグや管楽器を操り深層心理に訴えかける万物流転なサウンドに洗脳されました。
直訳するなら『絞首台ギャラリー』と読めるアルバムタイトル。このバンドは、どんなメッセージを込め、このドラマを展開したのか興味は尽きませんね。


BON JOVI - Hidden Treasures - Edge of a Broken Heart ★★ (2022-09-21 16:22:03)

映画『Disorderlies』のサントラとして世に出たのが最初だった気がする
飛ぶ鳥を落とす勢いのバンドが提供した割には普通だったと言われるのだが
3rdのアウトテイクという噂もあったのでマニアが勝手に期待しただけであろう
2ndアルバムに収録されていそうな優等生な彼らのイメージにピッタリである
そして哀愁もチョイある


VALIDOR - Dawn of the Avenger ★★ (2022-09-21 15:59:46)

オディ・サンダーラーと名乗るギター兼ヴォーカル務めるプロジェクトの首謀者オディ・トゥトゥニス。それ以外はゲストを募って活動しているようだが、彼がやりたい音楽は、混じりっけ無しのエピックメタル。その濃密な世界観はオープニングから炸裂、勇壮なメロディとマジカルな世界観、ギリシャ産という背景も見事にマッチしており、その純度の高い音楽性に揺らぎはありません。

英語の分からないワタクシにはイマイチのめり込めないマジックワールドなのですが、パワー漲る剛直なハードサウンドを前に体が熱くなります。どこかで聴いたことのあるフレーズも味方につけ、本家達に肉薄する内容は迫力十分、そりゃManilla Roadカヴァーも選ぶよね。

日本ではイマイチ人気の出ないジャンルというか世界的に見ても狭いターゲットとなるエピックメタル。今作も一人プロジェクトの欠点とも言える面はあります。貧弱なサウンドプロダクション、それに拍車を掛ける似たようなリズムプレイ、とそれがエピックメタルなんだと言われたらお終いですが、少々肩が凝るのが難点、そういう意味で初心者には敷居も高いのですが、筋骨隆々な男達がドデカい剣や
ハンマーを振り回し、異形なる魔のものと闘う姿を想起させる音楽性は、このジャンルならでは、一度その世界にハマれば抜け出せなくなる中毒性があるのが最大のポイント。気張らず、摘まみ食いしながら聴いてください。


FERGIE FREDERIKSEN - Happiness Is the Road ★★★ (2022-09-17 19:44:55)

ジム・ピートリック、デニス・ワード、アレックス・リガートウッドの3人が各々プロデュースを担当、沢山のソングライターを迎え、さらにはブラジルのメロディックメタルバンドAURASも参加したりと、とにかく有名無名に関わらず実力者集団を集め制作された渾身のソロアルバム。どういう経緯でリリースされたのか興味も尽きないが、盤石のチームが集い鉄壁のサポートワークで魅了。主役たるファーギー・フレデリクセンの魅力を引き出しています。
ともすれば唄モノロックの欠点とも言える、似たような楽曲が揃いメリハリがなくなるという問題点。特に今作のようないくつかのチームが参加した場合など顕著なのだが、そういう定番的メロディアスロックに滑り込ませたスリル、そのテンションの高いパフォーマンスは、一発当ててやるぞと言うソングライター陣の気合いと、復活を果たしたファーギーへの餞別の意味合いも込めて無駄がない。その甲斐あって一曲の完成度の高さには息を呑みますね。
JOURNEYやTOTOをブラッシュアップしたような楽曲も嫌み無く放り込み、このプロジェクトチームに対する可能性も示唆、どの組み合わせが好みなのかは聴き手の嗜好に分かれるだろうが、ラストソングのカッコ良さに引き寄せられ、気がつけばリピート再生を余儀なくさせる構成に唸りますね。飽きそうで飽きさせない選曲の妙味、昨年までリリースされていた事を知らなかった一枚。
唄モノロックマニアは勿論ですが、メロディックメタルがイケるマニアにも勧めたい一枚ですね。上手い歌に酔いしれたいというマニアもオススメですよ。実力の割に、日本ではイマイチ知名度に低い彼ですが、質の高さは折り紙付きです。


VAULT - No More Escape ★★★ (2022-09-15 18:58:57)

1983年にリリースされた7曲入のアルバム。てっきり1stアルバムなのかと思っていたらEPだったんですね。正式にリリースしたモノが今作のみで消えた為に、知名度が低いのだがオランダのメタルシーンを語る上では、軽んじてはいけない作品ですね。
欧州由来の湿り気のある荒涼としたメロディと厳ついハードサウンドの絡み、その緊張感溢れるプレイは抜き差しならない関係性を構築とライブさながらのテンションと荒さで迫ってきます。
とにかく叙情派ハードサウンドが好きな人にはたまらんものがあるでしょう。上手い下手では語れないテンションと、打ち鳴らされるハードなリズム、ヒリリと凍てつくメロディはクール。人間臭さ溢れるパフォーマンスはバラードタイプの楽曲でも効果的に機能、勢いでは誤魔化せない芸の細やかさを見せつけてくれます。
Burning Eyes - The Anthologyと作品を2015年にリリース。そこに今作+デモ音源などで構成されたものがあります。
叙情派ハードサウンドが好みの方ならば大いに楽しめるでしょうね。オランダにもNWOBHMの風は吹いていたんだという事を確認出来るでしょう。これほどの腕がありながら、今作が隠れた名品のままで終わるのは残念でなりません。


WILDFIRE - Brute Force and Ignorance ★★★ (2022-09-15 18:39:48)

WEAPONのギター、ジェフ・サマーズとドラムのブルース・ビスランド、リードヴォーカルは初代IRON MAIDENのシンガーとして知られるMOREのポール・マリオ・デイというNWOBHMマニアにとっては、中々興味深いラインナップが揃うバンド。
英国情緒溢れる叙情派メタルサウンド、正に1983年という時代性を反映、浮かれポンチにならない硬派な質感と、ダークな英国テイスト、そしてメロディを蔑ろにしないアレンジと英国ハードサウンドが好みの方にはたまらんものがあるでしょう。
NWOBHMというよりはブリティッシュロックマニアにとって外せない一枚でしょうね。歌心のあるポールの歌声もバッチリとハマります。彼の声質ではメイデンは少々ヘヴィ過ぎたでしょうね。
頭3曲からタイプの違い曲を並べ守備範囲の広さをアピール、ベルギーが誇るB級メタルの名門MAUSOLEUMレーベル輩出としては、A級のクオリティでしょう。
荒々しいレコーディング環境が生み出したワイルド叙情派メタル。その突貫工事ぶりが妙な生々しさを生んでいるのがポイントですね。

若い頃に聴いた時はイマイチ、のめり込めませんでしたが、オジサンになると効いてきますね。体に染み入る英国ハードサウンド。バランスの悪い音質や荒削りなパフォーマンス、そういうのを全てひっくるめて、初期型NWOBHMの多様性を確認ください。癖がないので初心者にも勧めやすいです。


SELVAGERIA - Selvageria ★★ (2022-09-12 13:22:10)

南米はブラジル産のドグサレ、スピード/スラッシュメタルバンドの記念すべき1st。その殺伐とした空気とスピーディーな演奏は、どこか危なかっしく、ハラハラとさせられるのだが、そのドキドキ感がいい意味でスリルを生み出し初期型スラッシュやスピードメタルを真っ向勝負でやっている。良く聞き取れない歌声、そしてサビでのハイトーンとワンパターンで芸が無いなぁなんて思うし、聴かせ方がイマイチ粗挽きだったりもするのだが、そういう不満をねじ込めるだけの魅力が、このヴァイオレントな作風に現れている。
直情的に刻まれるリズム、冷徹なるリフワークとリズムプレイはスピーディーに刻まれることで一定の緊張感と生み出し、聴き手の感性に切れ込んでるでしょう。ただ、脇見をしていると、いつ曲が終わり、次の曲が始まったのか見失うというメリハリのなさは最大の欠点でしょうね。それこそが魅力だという猛者もいるのでしょうが、ワタクシは広く浅く聴いているものですからお許しください。ハマれば強い、そういうスタイルです。


ANIMETAL LADY - ANIMETAL LADY MARATHON II ★★ (2022-09-12 13:02:16)

まず前作の反省を生かしたのかランニングタイムを短くしてきた、42.195への拘りを捨てたのは正解だが、タイムボカンからMIEちゃんはやり過ぎだろうです。少々キャラが強くなっているが、ここでも前作の反省を生かしているのだが、個人的にはやり過ぎで付いていけない場面が増えてしまった。なんだか策士策におぼれる感が出ている。
そういう面は気になると全然のめり込めないのだが、この企画はやはり楽しむのが一番でしかない。オマージュの導入部分に興奮するマニアも多いだろうし、ネタ元探しも一つの楽しみだ。
なんとなく避けていたアニメタルレディ、最近までほぼ聴いたことがなかったが、避けていた自分のセンスは正しいと思えたりしたのだが、こういうところからメタルを知り、偏見が薄まるのならば、ドンドンやって欲しい。
個人的にはバックの演奏がテンション低めな気がするのがチョイと気になりますね。


SAXON - Carpe Diem ★★★ (2022-09-12 12:43:24)

かつて日本では一部の批評家の影響もありアメリカンナイズドの権化のような扱いを受けたバンドとして知られています。その影響は絶大なモノであり、縦ノリの曲をヨコノリでやっているなどの、リッチーブラックモアが親指だけでギターを弾いたばりに嘘が流布されるのだからたまりません。その批評家の意見に全乗っかりするピュアな人たちのおかげで日本ではイマイチ人気を獲得できないバンド。
今の若い人には信じられない話でしょうが、マジなのです。ガチなのです。

そんな不人気を日本だけで背負わされたサクソンですが、コンスタントにアルバムをリリース、一度も歩みを止めずに邁進しているます。
その確固たる信念は、現代的なマッシブさも取り込み、近年のアルバムはヘヴィロックに接近、その為にサクソンの淡泊さや武骨な面が強まり、アメリカンナイズドと叩かれた80年代中期よりも深刻な問題を抱えていたのですが、病床に付するビフ、その影響もあったでしょう、また、前作のカヴァーアルバム、そしてサクソンの1stの次は、本来こうだったんじゃないのなソロアルバム、そして息子との共演等々、エポックメイキングな出来事が続き辿り着いたのが今作と言えるでしょうね。

多くのファンにそっぽを向かれた、あの80年代中期を想起させる音楽性に着手した今作。ハッキリ言えば、サクソンがNWOBHMスタイルを取っていたのは80年から81年までにリリースされた3枚のアルバムのみ、1983年のアルバム『Power and the Glory』からは、英国からアメリカへ活動拠点を移すためにワールドワイドな作風へと着手しています、常に時代の流れの中で、音楽性をキメてきたのですが、今作はそういう意味では、少々遅かった原点回帰とも言えます。
個人的につまらないアルバムをリリースした時期の80年代中期、しかしアメリカンナイズドなんて十把一絡げのメディア論に乗ることなど出来ず、単に不器用な彼らには似合わないだけでした。
もしアメリカンナイズドがダメなら総じて同様の意見で切り捨てなければイケません。WHITESNAKEのサーペンスは、完全にアメリカンナイズドです、ムッキムキのヘヴィロックに変貌、情緒もクソもあったモノではない別のバンドになりました、メディアも絶賛、誰もアメリカンナイズドなんていいません。EUROPEも同様ですね、ロマンティシズム溢れる2枚目から、3枚目のアルバムは洗練されたメジャー感は正にアメリカンナイズドの極地ですが売れたので、誰も文句をいいません。むしろ代表的なアルバムです。ワタクシにとってはアメリカンナイズド以外の何者でもありません、アメリカンナイズド=ダメなら、全てがダメです。80年代中期のメジャーアルバム全滅です。JPも『TURBO』だもんね。オジーもジェイクとモダンなのやっていたなぁ。

なぜサクソンだけが叩かれたのか、それは批評家の発言に尽きます。聖飢魔Ⅱの0点と同じですね、信心深い統一教会にも負けないメディア論者の盲信ぶりで失速したサクソンでしたが、今作はそんな裏切り者達へ痛快なほど、80年代中期の総括を意味するような作風を叩きつけてきましたね。

近年のアルバムになかったキャッチーさ、本文を取り戻した快活なメロディとノリ、その堅牢なる精神性を取り戻した今作に嘘偽りはなく、NWOBHM時代の初期を想起させるスタイルにも着手しています。
直情的なリズムと爽快感溢れる歌メロ、そういう小細工無用な作風、そしていい意味でのキャッチネスを取り戻し、その中で威厳溢れるコクのある重厚なナンバーを放り込み、往年の姿を取り戻しました。

多くのファンが待ち望んだ古典ロックへの邂逅、古いアイデアだが鮮度がある、それは過去を模倣するだけではない現役バンドの強み、ある意味、強固な岩盤層に支えられる彼らだかこそ選べるスタイルでもある。

ちなみにメディアでは今作の評価はどうなっているのか知り合いに聴いたら、写真付きで送ってくれた。GOD伊藤のレビューって、全然レビューになっていませんでしたね。あれじゃ、信者も苦しかろうよ。点数85が浮いていましたよ。かつては失敗したみたいな言い訳をしていましたが、昔の事なんて誰も気にしていないし、意見は意見、参考程度が普通の認識、むしろ、あの人がああ言っているから、そうなんだど聞き分ける耳も感性もない方が問題なのに、不思議な言い訳レビューを見て笑いました。
当時の批評なんだから言い訳なんていらないのにね。

そんな迷走するメディア論が象徴するようなバンド。いわれのない悪評が吹くのですが、日本でも一部だけですので、多くのメタルマニアからは尊敬されているのは間違いありません。
今作はそういうマニアにとっては会心の一撃でしょう。カヴァーアルバムは呼び水になったろうねぇ。

こういう作風が2、3枚と続けば良いのだが、それも難しいでしょうね。残された時間は僅か、そういう中で実に清々しい古典メタルをやり遂げました。そしてメディア論に乗ってきた人たちには皮肉なアルバムでしょうね、なんたってアメリカンナイズドと叩かれた作風をど真ん中でやるなんて想像していないでしょう。日本でしか通用しない話ですが、ワタクシは性格が悪いので、ざまぁみやがれと大喜びです。

だってそうでしょう、アメリカで売れようとして失敗しただけだもの。それを再構築したのが今作。手のひら返す奴が多すぎる。


ANIMETAL LADY - アニメタル・レディー・マラソン ★★ (2022-09-11 19:17:27)

予想外の売り上げを記録した企画モノアルバム。ヘヴィメタルが冬の時代に、アニメタルはある意味、渇望するファンの期待に応えた面があったと思う。特に再結成アンセムで重要なパーソンを務めた坂本英三も、アニメタルがなければ、即戦力として期待に応えられたか微妙だったでしょうね。ひょっとしたら森川が断った時点で、再結成は無かったかもなんても思ったりするんで。この企画モノは、個人的には愛すべき作品です。
作品毎に参加メンバーも豪華になり、樋口宗孝が参加するんだから驚きです。そういう人気にあやかるベテランの姿に一抹の寂しさを感じましたが、そういう人気のピークに登場したのがアニメタルレディでしょうね。
実写版ドロンジョやるなら、杉本彩がMIEちゃんしかいないでしょうと、思っていたワタクシにはヴィジュアル的に適任だったMIEちゃん。畑違いとは言え、ロックと真正面からぶつかり渾身のパフォーマンスを披露しています。ロックとポップスでは発声法も違いますからね、年齢的にも初挑戦だったでしょう、そういう苦心の跡も見え隠れする今作、ある意味、企画段階でネタ感も強めでしょうが、彼女のそういう足りない部分を補うように、バックが本家よりもオマージュを盛り込み盛大に楽しませてくれます。
そういう取り組み方もあったのか!と膝を叩いて歓喜するような場面も多く、これはこれで大ありだ。

しかし、今作最大の問題点は、MIEちゃんの歌唱スタイルにある。時には子供のような歌声を披露したり、唄のお姉さんぽかったりと、芝居が強すぎる。噛み合っている時といないときでは差が大きすぎる、そういう限界と可能性を感じる瞬間が同時に訪れるのだが、もう少し曲数を絞り30分くらいのランニングタイムだったら、企画倒れとならずに成立させられたと思う。
MIEちゃんを責めるのは簡単だが、ロックを歌ってこなかった彼女がガチンコのメタルをやらされたという点を割り引いて評価するならば、大健闘の大活躍である。キャラをやり切った彼女の貢献度を評価したいですね。
プロデューサーが遊びすぎた気がしますね。前半のテンションを維持できなかったのは何故だろう?


ANIMETAL LADY - アニメタル・レディー・マラソン - エースをねらえ! ★★★ (2022-09-11 19:01:29)

まさかゲイリー・ムーアを絡めるとわ笑
アタックNo.1への流れも素敵です
宗方 仁だなぁ


STRYPER - Even the Devil Believes ★★★ (2022-09-10 18:54:41)

再結成後はコンスタントにアルバムをリリースするベテランバンド。アルバムの中にバラードを3曲は盛り込み、ヒットチャートに送り出すという手法をいち早く取り込みシーンの中で成功を収めたメタルバブル期、その流れの中で彼らも音楽的な変遷を迫られたのだが、こうして時代が経ち、このバンドの音楽性にもはや揺るぎはない。もっと言えば、古典を好む岩盤層がシーンには存在しており、その忠誠心の高さというのか、経済的にも安定した年齢層を持つバンドは、無理に時代にすり寄る必要がなくなったというのが大きい。

ファットな音像とヘヴィグルーブもそこそこに、メロディをないがしろにしないアレンジ、そのバンドの真骨頂とも言えるメロディを大切にしたスタンスにブレはなく、単なる懐古主義では終わらないフレッシュな感性を持ち込むことで自分たちが築き上げた金看板を守り抜いている。少しでもモダンさがあるのはダメだという頑固一徹なマニアには勧められないが、切れ味鋭いツインギター、衰え知らずの美声、手に取るように分かりやすいクッキリとしたメロディラインを主張するバンドサウンドに揺らぎはありません。
盤石なる現代的ストライパーサウンドの凄み、オジサンが無理している感じが出ていないのが凄い。テクノロジー恩恵に頼り切らないのも素晴らしい。現役感の強いアルバムでしたね。


NAUTILUSS - Octopus Paradise ★★★ (2022-09-10 18:34:10)

反則技のデモテープを紹介。今作は1989年に関東メロディックメタルの総本山Mandrake Rootからリリースされた一本。当時、友人からギターの加瀬竜哉さんは2代目アンサーのギタリストだったと教えて貰った、福田洋也の後任だったの?なんて真偽の分からない情報に一喜一憂する青春時代、参加メンバーで一番有名だったのはベースの下田明典さん、横関のBRONXに参加していましたね。
日本人による日本人好みの哀愁の様式美スタイル、メロディを大切にしつつも定番成り下がらぬよう、創意工夫をこらしつつも脱線しない生真面目さが、マニアのツボを押しまくる。
オープニングから炸裂するネオクラ風味も、誰かの真似事で終わらない個性を発揮しており、キーボード入の5人編成という図式も大正解のドラマティックな展開を用意。正式な音源が出ていれば世間の評価も違ったろうになぁとは思わずにはいられません。

マルチプレイヤーとして、そして裏方として活躍した加瀬さん、帰らぬ人となり、もう何年たったのでしょうか?才能溢れる惜しい人物を無くしたなぁと思いますね。
更に在り来たりからの脱却を目指したDANTEにもいました。何といっても坂本英三、村上宏之、MASAKIと作り上げたソロアルバムはジャパニーズメタルに名を残す名盤中の名盤だと思っている。
全てがインディーズ止まりのために、お仕事の方が有名なのかも知れないが、彼のミュージシャン人生にもスポットを当てて欲しい。
レーベルもなくなった、加瀬もいない、しかし他のメンバーは健在であろう。
デモテープとは言え、このクオリティが埋もれるのは惜しい。加勢のフラッシーなギター、音質は良くないが底上げするリズム隊、なによりキーボードの使い方が上手いのでドラマが広がります。
インストと込みのラストに収録される⑤⑥のトータル10分以上になる構成を飽きさせることなく聴かせる手腕は見事。ダークなテイスト、そのオカルティックな演出は暗黒様式美スタイルとして聴き手を魅了するでしょう。インストナンバーの泣かせは絶品です。
曲だけならばメロデス勢にも通ずる泣かせと禍々しいイーブルさを撒き散らしており、その一筋縄ではいかないアレンジセンスに唸ります。

シンガーの西野幸一郎さん現在はBELLFASTで活躍、キーボードの小林拓生さんはSeventh Sonのアルバムに参加していましたね。ドラムの正田泰さんはGuardian's Nail、Solitude、Seventh Sonと関東メタルシーンを語る上では外せないミュージシャンでしょう。

このメンバーが揃っていたという事実にマニアならば興奮を覚えるでしょうね、しかも作品のクオリティが高いという奇跡もある。このまま埋もれるのは勿体ない。そう思わずにはいられないデモですね。


FAHRENHEIT - Talking 'Bout Love - Turn Me Loose ★★ (2022-09-08 19:18:07)

Loverboyの曲をカヴァー
アルバムの中では一二を争うハードな曲になります
オリジナルに負けてないですね
無くても成立するのだがアクセントにはなっている
それにしてもマイク・レノに声が似ていますね


FAHRENHEIT - Talking 'Bout Love ★★★ (2022-09-08 19:13:22)

初めて聴いた時は驚きましたね。一般的な認知度は低いのにクオリティはメチャクチャ高い、バンド名から推察できるAOR志向のハードサウンド、その予想を裏切らないフック満載のメロディとハードテイストの絶妙な絡み、とにかく一発で魅了されましたね。
アルバム全体を通して無駄がないアレンジと選曲、そして胸を突く哀愁のメロディ、ハードなモノを愛するモノにとっては軽めのミックスというのは命取りに成りかねない位、評価に直結するのですが、そういうマイナスな要素すら味方につけ、ロックテイストとシャレオツ感の合間をスリルタップリに綱渡りで聴き手を魅了していくのです。
オーストリアという事もあるのか、世界的な流通はどうなっていたのか分かりませんが、1989年にリリースされた今作の質はワールドワイドに通用するクオリティを有しており、2007年に再発するまでメロディ派のごく一部にしか届いていないという結果になったのは、メロディ派のマニアにとっては悲劇以外の何者でもないでしょう。

無国籍という言葉がシックリハマる、その質の高い音楽性と世界観。繊細な歌声と高い声に女性的な魅力すら感じるシンガーの唄い回し、ロックに噛みつく様もノリノリで歌い上げるのですが、その嫌みの無い歌声と、物足りなさを補完する邪魔をしないギター、しっかりと機能していますね。


ENGLISH STEEL - Start 'em Young ★★★ (2022-09-08 19:01:50)

ご存じリー・ハートとその仲間達によるロックプロジェクト。似たようなメンツがあつまり、同じ曲を使い回す事でお馴染みの奴です。もうどの曲が何処で転用され、どっちが先かなどと調べるのが面倒なのでバッサリといきます。
このアルバム、日本でリリースされているモノと海外ヴァージョンが違うというポイントがあります、海外ヴァージョンには、当時は無名だったドゥギー・ホワイトが唄っているんですがね、今となってはそっちの方が付加価値が高いという残念な結果になっていますが、国内盤には国内盤の良さがありますので、マニアならば両方チェックでしょう。
英国風味満点のハードポップサウンド、初見の方ならば大いに楽しめるでしょう。少々小綺麗にまとめ上げた音像だけに、エッジ不足ではありますが、総じて及第点を超えた楽曲が揃っていますので、一撃必殺はなくともアルバム単位で楽しめます。
当時は、まだまだ鮮度のあった元メイデンの威光も通用したポール・ディアノ、デニス・ストラットン、リー・ハート、そして紅一点で、この企画では貴重な女性ジャッキー・ボディミードがリードヴォーカルで参戦、個人的にはジャッキーのおかげで、聴いたことある乱発のアルバムでも、フレッシュな空気が漂い大いに楽しめました。
キーボードのジム・ディヴィス、ほとんどの場面でリードギターとして活躍するデイブ・センチャック、SAXONのナイジェル・グロックラー、ニブス・カーターの合間にニール・マーレイとゲイリー・ファーガソンも参戦、スティーブ・クラークの名前もあるし、ポール・サムソンもいる、そういうNWOBHM残党組という言葉が最もシックリくるメンツ、いや、それしか当てはまらない、ドサ回り公演組の中で、一際スター性を放っていたのがジャッキー・ボディーミードでしたね。

快活でキャッチーなポップロックは、甘酸っぱい哀愁がまぶされており、その弾けっぷりが耳を刺激します。前後左右で流用されるアイデアと楽曲、初見で聴ける人が羨ましい一品だが、個人的に残暑厳しい今時期にはメチャクチャ聴きたくなる一枚です。
煮え切らない作風、総じて70点、そういう作風がワタクシが大好きなのです。カラッと晴れない、どこかジンワリと湿るメロディが好きなんですね。でもキャッチーでポップなんですよ。そしてチョイ切ないんですよね。


URGENT - Timing ★★★ (2022-09-06 15:19:35)

こちらはカナダのエージェントになります。アルバム一枚で消えたため、イマイチ認知度は低いのですが、唄モノハードマニアには是非とも聴いて欲しい一枚。カナダらしい妙な売れ線志向になど走らない堅実な作り。キーボードもそこそこに活用しながらサビではコーラスハーモニーも活用、そのメロディを聴かせたいという作風と作り込みも功を奏しており、無理無駄のないツボを押さえたアレンジが光ります。嫌みの無いクリアーな歌声、ベース兼ヴォーカルを担当するダグ・ベイナムのパフォーマンスにも魅了、エモーションを込めつつも暑苦しく聴かせない唄い回しは正解だが、軟弱に感じるマニアもいるでしょうね。ギターも的確なスタイルで邪魔をせずに堅実なるハードサウンドに対応、適度にエッジの効いた艶やかなサウンドメイクに一役も二役も買っています。洗練されているがロックな熱量を放出することも忘れていないバンドサウンド、TOTO、JOURNEY、Foreignerをもっと男臭くしたカッコ良さがある。

今作リリース後、程なくしてバンドは解散。1985年にHanover Fistがリリースするアルバム『Hungry Eyes』に大半のメンバーが参加するという事件が起きますので、そのあたりに解散劇の真相があるのでしょうね。
これほどの作品を作りながら一発で解散したのは本当に惜しい。上手い歌と洗練されているが男臭さのあるロックテイストを残したアレンジは、耳が持っていかれますね。ステージにて光る汗が似合う曲が多いのよね。


JON BUTCHER - Pictures From the Front ★★★ (2022-09-06 14:55:44)

黒人がギターを下げたジャケを見て、勝手にマカパインみたいなギタリストなのかとキメつけたのが今作の出会い。ギターもヴォーカルも曲作りも担当するのは主役であるジョン・ブッチャーさん。見た目で人を判断するのは良くないと思うのですが、今作はその最たる例でしたね。89年という時代背景もそこそこに、適度にハードな唄モノロックを披露。その嫌みの無い作りにブラックフィーリングなど幾度感じることはなく、あのジャケは完全に損しているぞという微妙な感覚を味わう。
チョイブルージーな匂いもするが、洗練されたAOR志向と言える作風、ラジオ向けと言えるのだが、浮ついていないので弾けすぎるメインストリームハードポップなんかよりも好感が持てます。特にオジサンになったワタクシには、このしっとりと迫るチョイ渋ハードサウンドにグッと引き寄せられますね。ある意味、個性のないスタイル、唄もギターも上手いが灰汁がないという、黒人系アーティストに驚かされるのだが、それも全てがワタクシの勝手なイメージ。そういう人種的な発送を切り捨てて耳を傾ければ、何の問題も起きない。

オシャレで普遍的音楽性、その口当たりの良さとキャリアに裏打ちされた作り込み、一発大技のいらないジャンルだからこそ成立させられるのだろうが、ハードなサウンドの合間に疲弊した耳を休めるのにはピッタリであろう。

上手い歌と無駄のないアレンジ。それで良いのです。


SHOUT - It Won't Be Long ★★★ (2022-09-05 13:15:41)

バンドのブレインたるケン・テンプリン、彼はかつてJoshua Perahiaと活動を共にしIntense Defenseのデモを収録、結局ネームバリューもあったのかロブ・ロックに変更したものがリリースされるのだが、ロブにも負けない力強い歌声を今アルバムで堪能できます。

爽快感と勢いに満ちたグラム系クリスチャンメタル。1988年という時代を射貫いた煌びやかなグラマラスロックは嫌みの無い爽やかな弾けっぷりで聴き手を魅了。軽やかさだけではない芯のあるハードテイストも陽気な風を送り込みながら、チョイ切ないメロディで装飾したスタイルに、メロディ派ならば素直に楽しめるでしょうね。
もう少し情緒のある方が日本人好みなのかも知れないが、このポジティブな空気感を纏った陽性メロディアスロックに心も洗われるでしょう。でも80年代テイスト満載のサウンドメイクなので、少々古さは否めませんが若い人には、そこが逆に新鮮に映るかもしれません。

それにしても恥ずかしくなるくらいど真ん中である。少々やり過ぎなくらい優等生である。ルールに則ったバブルメロディックメタル、そのやり切りぶりは天晴れである。こんな爽やかな音楽をライブで聴かされたあと、聖書渡されたらジーザスって言いたくなるよね。


SARACEN - Red Sky ★★★ (2022-09-05 12:47:20)

70年代の中期から活動していた彼らは、NWOBHMの流れの中で1981年にバンド名をLAMMERGIERからSARACENと変更してデビューを果たしました。そのデビュー作の質は高く叙情的な泣きと拘りの展開、キーボードプレイヤーを大胆に活用しつつもNWOBHMらしい攻撃性と英国様式美、さらにプログレテイストも加味させたスタイルは、あの時期では異色のスタイルと写り注目の的となります。NWOBHMマニアからは期待の新人と目される分けですが、NWOBHM四天王なるメディアとレコード会社がマッチポンプで金儲けでもしようとしたのかという、誤った認識がメディア偏重者の間ではあるので、この手のバンドに辿り着かない方もいるでしょうが、メタルの世界にアンテナを張っているマニアならば、その高い音楽性に目をつけた者は当時から沢山いました。

しかしメンバーチェンジや音楽性の変換などもあり、やっぱりなぁと言うNWOBHMあるあるでバンドは解散の憂き目にあうのだが、よもや復活を果たすとは驚きです。

個人的には幻のLAMMERGIER時代のマテリアルや、1stはおろか、2ndからのリメイクがあった事に驚かされます。今作リリース時、既に他界していたベースの‎バリー・イェーツ‎。今作にはそのテイクと彼に捧げたという意味合いが込められているというのもポイントなんだろう。そういう意味での1stリメイク&過去のマテリアルなのかな?と深読みしつつ、この芳醇な英国産クラシックハードサウンドに浸ります。
今では今作と1st&ギターの‎‎ロブ・ベンドロー‎が自主制作でリリースした音源をプラスした2枚組がリリースされていますので、そちらを聴いて頂くと2度美味しい思いが出来るでしょう。オリジナルとリメイクの比較が出来るのも嬉しいですよね。

壮大なスケールを抱く叙情派サウンド、ガツーンと走るのが好きな方にはチョイと物足りなさもあるだろう、若干の間延びを感じるかも知れないが、一曲の完成度の高さ、何より創意工夫を凝らした音楽性は一聴の価値ありです。


X-SINNER - Peace Treaty ★★★ (2022-09-04 20:15:20)

カルフォルニア産のクリスチャンメタルバンドの2枚目。しわがれ声のシンガーの影響もありAC/DC風に聞こえる場面も多いが、こちらはもう少しネチっこい根暗さがあり、ドライでノリノリと言うわけではない。またチョイメロディアスなパートもあったりと、デフレパードとAC/DCが正面衝突、その残骸をL.A風味にまとめ上げたようなごった煮感がある。
そういう意味ではメインストリーム寄りスタイルだが、神をも恐れぬ背徳的なロックフィーリングというのかモトリー・クルー的な悪っぽさもチョイと感じたりと、中々どうして工夫を凝らし個性を研磨しています。このシリアスさや堅実さからはスローターあたりも思い出すのですが、80年代のメジャースタイルが好みの肩ならば大いに楽しめるでしょう。
しかし、前述したようなバンドからの影響が出ていますので、苦手は人はスルーでしょうね。バランス感覚の妙味。スリリングとまではいかないが、クリスチャンロックの可能性を広げる曲作りの上手さに興味もありますね。
プロデューサーとしてディノ&ジョンのエレファント兄弟がクレジットされているのもマニアにはポイント高しでしょう。


DOUG ALDRICH - HighCentered ★★★ (2022-09-04 20:01:09)

日本では人気のあるギタリストのダグ・アルドリッチ。苦労人のイメージが強いのだがホワイトスネイクのギャラが良かったのか、今では安定した生活を手に入れたようだ。おかげで本腰を入れてバンド活動が出来ているようなので関係者でもないのですが、良かったなぁとしシミジミ思いますね。
今作のビックインジャパンの影響を受けて日本国内でリリース。海外でのリリースも数年後にあったようだが、詳細はよく分からない。
ドライヴィングなロックナンバーからジャジーな雰囲気やブルース臭を発散したりと、当時の背景も意識しつつ、ダグの情感溢れるギタープレイを堪能。自らの唄入れもあるが、ジョニー・ジョエリが一曲参加したりと華を添えている。
単なるスケールを追うだけではない華麗なるギタープレイ、そのリズム感の良さから生み出されるグルーブ、そして流麗なギターはテクニックに富んでおり、先人達からの影響もそこそこに独特のタイム感で魅了。個性的か否かは別だが、ベタさも相まってフレーズ作りの上手さも光っていますね。
とは言えダグと言えばこれと、断言できるほどの強烈な個性は微妙だが、ファンであれば満足できるだけの作風になっている。時代的な流れもあり少々窮屈に感じる面はあれど、面白い事をやっていますよ。


ZODIAC - First - Magic Mountainway ★★★ (2022-09-01 20:10:30)

紫の曲としての認知度も高く
またオリジナルでもある一曲
しかし唄うのは宮永だから成立していますね
日本のDPと言われた紫
この曲を聴けば後ろでオルガンの音色が鳴りますよね
トリオだから出せる一体感と飾り気のないパワー
名曲のヴァージョン違いがあるのも嬉しいですね


ZODIAC - First ★★★ (2022-09-01 20:04:02)

こちらは沖縄のゾディアックです。同じようなバンド名が国内外にあるので混同しますが、元紫のドラマーとして知られる沖縄ロック界の顔、宮永英一がリーダーを務めるトリオバンド。結成時は5人編成だったようですが、すったもんだの挙げ句バンドは空中分解。紆余曲折を経て新たに照喜名薫と保良勇次の二人が加わりリスタート。そして晴れて正式な音源を自主制作ではありますが残してくれました。

宮永のいかにも頑丈な躯体から放たれるドラムと、エモーショナルかつパワフルな歌声を駆使したハードサウンドは、再結成紫の曲としても知られているオープニングの『Magic Mountainway』から炸裂、キーボードはいないが、それでも十分なほど、そのインパクトの強さを残し、良く唄い躍動するエモーショナなギターとの味わい深い絡みを魅せ、英米のロックバンドに負けない独自性をアピール。
紫でもサンディエゴでもないゾディアックスタイルを構築しているのが最大のポイント。
肉を喰らい腕っぷしの強さだけで打ち鳴らされるだけじゃないパワーヒッティングドラムの力感と、日本人離れしたグルーブ。そのドラムを渡り合うベースの堅実な脇役っぷりに目を細め賛辞を送りますね。
テルキナ・カオルのギターワークもオーソドックスだが、随所に印象的なプレイを盛り込みトリオバンドの可能性を広げていますね。

古典ロックの旨味を90年の頭にここまで思いっきり出せるバンドなどそうはありません。古さに埋没しない揺るぎなきロックスピリット。ガンズブームなど微塵も感じさせない叙情性とハードサウンドの絡み、パワープレイだけじゃない、バラードで魅せる守備範囲の広さ、ロックの教科書と言われるようなバンド達と比肩しても遜色のない定番の魅力、アメリカに支配されていた歴史があるからこその無国籍具合に少々ニガイ思いもあるのだろうが、こういう骨太なロックが埋もれるのは惜しい。残念すぎる。
George Murasaki and Marinerが奇跡の再発があった今、自主制作盤も復活劇が見たいですね。クラウドファンディングでいいんじゃいですかね。


KILLER DWARFS - Stand Tall ★★★ (2022-09-01 19:08:11)

メンバー全員がドワーフと名乗る事で一部のピュアなロックファンから全員兄弟という誤った認識もされたカナダのロックバンド。メンバーチェンジもあるので、大家族が全員ミュージシャン志望というレアはなく、大衆演劇一家じゃあるまいしとクスッと笑いますが、本当に全員兄弟と思っていた人がいたんですよね。

このバンドの音楽を時系列で聴いた時は驚きましたね。1983年にリリースした1stから3年、時代の流れを読み取り見事に86年仕様に変貌を遂げたバンド。その音楽性はオープニングから炸裂、芯にあるロックテイストもそこそこに、売れそうな空気を纏ったラジオオンエアー対策もバッチリとり、現状を好転するよう仕掛けてきました。
いい意味でのメジャー感、だが隠せないハードテイスト、その絶妙なさじ加減をコントロールと耳馴染みのよい楽曲を並べています。曲間の短さなんかも、聴き手の興味が離れないような工夫もあり、アルバム単位で聴かせてくれる。またメロディ成分の強弱を上手くつける事でアルバムの流れに変化をつけているのもポイント。日本人好みの哀メロナンバーなんかが合間に顔を出してくる事により、試聴感も上がるでしょう。
ある時期から、アメリカでもヴィジュアル全盛というのか、腕よりも華やかさを重視される時代が来ました。下手くそでもステージに立てた時代がある。そういうバブル弾ける時代のバンドとは明らかに一線を画す、下地のしっかりとした実力。その自肩の強さが安定感に繋がり安心して聴いてられます。カナダ産だけに丸ごと陽性ではないのも日本人にウケそうですね。

あまり好意的な評価を貰えなかったバンド。また国内盤のリリースも無かったような記憶があるのでイマイチ知名度を上げられていませんが、甘すぎないメロディアスメジャーサウンドの旨味、その味付けの巧みぶりに唸ります。


GARGOYLE - 禊 ★★ (2022-08-29 01:24:05)

和洋折衷スタイルを研磨するジャパニーズメタルの探求者と言っても大げさではないKIBA率いるバンドのデビューアルバム。その勢いというのかアイデアはオープニングから炸裂、個性の強い歌詞と複雑な曲展開を武器に独自の路線を突き進んでいます。
ソロでは俄然色めき立つSHE-JAの泣きのギター、ヴィジュアル系ブームの勢いもあり、このバンドは歌謡路線に進む戦友達を尻目に和風メタルへと倒錯していった。
勿論、アイデアの踏襲はある。それは誰もがやっていることであり、オマージュを否定しては耳が育たない。研ぎ澄まされた先鋭性、まだまだ未消化な部分もある、唄も次のアルバムほど尖っていない、そういう荒削りさも味方につけ多種多様な音楽性と要約してガーゴイルサウンドへと築き上げている点は大きく評価すべきであろう。
雑誌の批評でも話題になった、③曲目の”ぎ”の連発すらも自分たちのスタイルとして違和感なく取り込んでいるのだから問題は起きない。惜しむらくは、この手のスタイルには合わないミックスに尽きるだろう。そういう意味で制度を上げた次作には叶わないが、ごった煮感の強い今作もインパクトという点では負けていないだろう。


YNGWIE MALMSTEEN - Trial by Fire: Live in Leningrad ★★★ (2022-08-28 14:58:07)

いきなりOPのRISING FORCEをカットするという謎の選曲となったロシアでのライブコンサートを収録した一枚。当時はジミヘンの曲をインギーがやるのかと驚きと話題性を集めました。事故後の後遺症と戦うインギー、そんな不安な要素を微塵も感じさせないギタープレイ、過去との比較など無駄だと思わせた存在感にただただひれ伏します。
ジョーがいた効果も大きいのか、このライブではインギーのライブとしては比較的バランスの取れた演奏になっており、何でもかんでも俺様ではない。逆を言えば、俺様がインギーだろうと思う中毒者には少々物足りなさを誘発するだろうが、少々わざとらしい歓声を抜けば、実に生々しいライブ盤として楽しめますね。
リバーブの掛かった音像も会場にいるような錯覚を覚えるし、何よりジョーの荒さがライブっぽく感じる。
収録時間の関係でカットしたCRYSTAL BALLやRIOT IN THE DUNGEONSや今となっては貴重なFURYなど収録した完全版の発売を期待したくなりますね。
ジョー、インギーの二人にスポットが集まりすぎのライブ、個人的にはもっとヨハンソン兄弟にも美味しい場面を用意して欲しかった。淡々と刻むベースも職人肌で、ジッと支えているのも印象的ですね。
スターばかりではバランスが悪くなる。バンドというのは難しい生き物だよ。


GARGOYLE - 檄 ★★ (2022-08-27 18:58:38)

個人的にはKIBAさんの癖が強いヴィヴラードが苦手でイマイチ、ハマらなかったバンドなのだがギターのSHE-JAの泣きのフレージングも上々に、ジャパネスクなヘヴィサウンドを展開。唯一無二の音楽性に磨きを掛け独自性を強めている。ドカドカと刻まれるスラッシーなサウンドも顔を出したり、キャッチーさを強めたり、パンキッシュに弾けたりと多様性を持ち込みつつも、日本的ワビサビの聴かせたサウンドは、泣かせのメロディに倒錯するギターもあったりと、実に複雑怪奇な魅力を併せ持っている。
どこかジャパニーズパンクみたいなノリもあるのだが、多様な楽曲の中で柔軟な姿勢を見せるリズムプレイの面白味、そういう無限の可能性を、良くも悪くも我が強い唄でまとめ上げたのがガーゴイルなんだろう。
とにかく一筋縄ではいかない音楽性、唄さえ気にならなければ、独創的なジャパニーズメタルの頂点に君臨するようなバンドとして崇めまつり立てるでしょうね。
どの曲にもドラマ仕立ての演出があり、攻撃性と渡り合う泣かせのメロディ、そのさじ加減が変ることで独特の風合いを醸し出している。ありそうでないスタイル。フラットバッカーや人間椅子と同じく日本のメタルをやっているのがポイント。
それにしてもSHE-JAの泣きは色あせませんね。


ALDO NOVA - Subject ★★★ (2022-08-23 13:28:43)

昨日SHOGUNの幻の3rdを聴いていたら真っ先に頭の中に浮かんだのが今作でした。ある意味、現在はソングライターとしての方が名が通っているようにも感じますが、最近もアルバムもリリースしているので現役感は損なわれていないかと思います。
イマイチ、自分の曲もモノにしていないと影口を叩かれる雰囲気重視の歌い手というかマルチプレイヤーなのだが、このアルバムを聴けば、あれ?これどこかで聴いたことがあるぞというデジャブに遭遇する場面も多々あるでしょう。タイムスリッパーな感覚になるのは、彼が自分のアイデアを惜しげも無く、他のアーティストに提供しただけに過ぎません。こちらが本家なんですよと言いたいです。合間にSEを挟んだ事で、あれ?曲が始まんねぇなぁ?と錯覚する場面もチラホラありますが、曲の良さは折り紙付き。
個人的にも仲間内でも、アルド・ノヴァと言えばこっちだろうというファンも多いというのがポイント。やはり日本人好みの哀愁が散りばめられている今作には普遍的魅力が備わっています。
シャレもんの唄モノロックをイケるぞというメロディ派のマニアには勧めたいですねぇ。


SHOGUN - Ⅲ - the Lost Album ★★★ (2022-08-22 16:35:32)

2019年に突如リリースされた幻の3rd。1988年にレコーディングされるもお蔵入りした幻の一品が復活しました。どのような形の音楽性に変遷したのかと興味も尽きませんが、③を聴いた時はズッコケましたね。完全のBON JOVIのRUNAWAYですからね。その初期BON JOVIやSURGIN'、Aldo Nova風味を全開に、英国テイストも織り込み情緒のあるメロディアスサウンドへと昇華、少々キーボードみたいな線の細いギターサウンドに懐かしい空気を感じるのか煩わしいと感じるかで評価も大きく分かれるでしょう。リズムセクションの軽めだしキーボードも重ねすぎである。硬派な味わいは少ないが、デビュー作から通じるキャッチーなメロディは磨きが掛かり、完全に振り切ることで迷いの無いスタイルに変換、いい意味で弾けるポップセンスもアクセントなり、1stと2ndの美味しいところをパッケージしていますね。
80年代スタイルを愛するメロディ派にとっては、外せない一枚でしょう。