久しぶりのソロアルバム。グラハムのソロにメタル色を求めるのは意味がなく、そもそもリッチーが資金難で困り果て急場凌ぎのシンガーがとんでもない逸材だったみたいな経緯もあり、本人自身がメタルは好きじゃ内的なコメントを残しているので(しかしHM/HRを歌う為の生まれたようなパワフルヴォイスの持ち主である)、今作はお得意のスタンダードナンバーのカヴァー集(こすり過ぎだぞOnly One Woman)。いい意味で力の抜けたグラハムの伸びやかな歌声はやはり上手いし圧が凄い。その迫力とスタンダードなポップソングとのかみ合わせが面白いのですが、ハードなモノやスピード感及びスリルを求める方にはこの上なく退屈なアルバムとなるでしょう。グラハム名義としては順当な仕上がりですね。
『孤独の叫び』という邦題がついた2nd。前作同様カヴァーを中心とした作風でポップやオールディーズ風のナンバーまでと、多様な楽曲を歌っていますが、前作とは打って変わってグラハム節というのか、パワフルな喉を披露。たしかにリッチーとコージーが、シンガー探しに苦戦し、シンガー当てという遊びの中で群然見つけ、とんでもないパンチの効いた奴がいるなぁと思ったという話が嘘ではないと思う、あの声が聴けます、温かみのある中音域から高温に抜けるも、全く衰えないパワフルヴォイスがポップスを歌うという、なんだかチグハグな印象を受けますが、肩の力を抜き得意なトーンで好きな歌を歌うグラハムの楽しげな表情も浮かぶパフォーマンスで占められており、後の片鱗を色濃く感じさせる面が見れます。 余談ですが1981年にリリースした3rdがある程度の成功を収め気を良くした日本のレコード会社から、1981年にシングルレコードがあるらしく(現物を見た事がありません)、その邦題が何故か?『孤独の叫び』英語では『Bad Days Are Gone』なんですが、この曲調が哀愁のあるストレートなハードナンバーで、あの『Night Games』を思わせる仕上がり(コージーのドラムもきまっている)今作に収めるには浮いてしまう曲調で、ややこしい事この上ないのですが、ハード路線のグラハムが好きな方はこの曲も聴いた方がよいですね(Line Upのリミックスエディション、ヴァージョンに収録)
『Dead When It Comes to Love』という1982年にリリースしたEPがチョイとした話題になったニューキャッスル出身のNWOBHMバンドの2016年リリースの全22曲入りのコンピ作。2014年から再結成しており、その影響でこのような古いマテリアルをまとめたアルバムがリリースされたのですが、湿り気を帯びた哀愁のメロディ、NWOBHM由来のシャープなリフワーク、直線的なビートとまさにあの時代のあの音をパッケージされており、この手の復刻モノを精力的に世に送り出していますが、High Roller Recordsの丁寧な仕事ぶりには頭が下がりますね。NWOBHM好きなら押さえておいて損はしないでしょう。ブーム事態は短かったのですがマニアックで良質なバンドを多数輩出していた事を改めて知らされましたね。恐るべしNWOBHM。
曲を登録するのがめんどいので下記にコピペでいきます
1. Prisoner 2. Suicide 3. Kansas City 4. Warrior 5. Flying High 6. Addiction 7. Dead When It Comes To Love 8. Rock'n'Roll Rockstar 9. Stab In The Back 10. Breakout 11. Dragon Slayer 12. Take Your Chance 13. Stab In The Back 14. Kansas City 15. Prisoner 16. Suicide 17. Addiction 18. Dead When It Comes To Love 19. Rock'n'Roll Rockstar 20. The Troops 21. Flying High 22. Warrior
1-4 taken from 1983 EP "For Europe Only" 5-9 taken from Tape Session 10-12 taken from 1984 Single "Breakout" 13-22 taken from 1983 Live Album "Live in a Dive!"
紆余曲折を経て2014年に再々結成を果たした老舗のアメリカンHM/HRバンドが2016年にリリースした3rd。フロイド・ローズは参加してませんが、ジョナサン、リック、エヴァンの3人の名前がある事が重要ですかね。ジョナサンの歌声が随分とビフ・バイフォードになっていて『The Right Way』みたいなタテノリナンバーを聴いていると昔のSAXONに聞こえるくらいの激似ぶりに驚きますが、音楽性も1st、2ndともまた違った豪快なロックサウンドを披露、思想の強い一部のマニアから完全に嫌われているSAXONの『Power & the Glory』『Crusader』あたりのアメリカンマーケットを意識した親しみやすさと、小気味よいノリが気持ちよくなり響いております。押しの強いギターサウンドも随分と古い暖簾を掲げているが、Frontiers Recordsの手によって復帰したのがなんとも感慨深いですね。
Steeler、Lion、Riotのドラマーとして日本でも人気のあった(インギーがプロデュースした3rd Stage Alertでも叩いていました)マーク・エドワーズが1985年にリリースした4曲入りのインストEP。参加メンバーに大御所のティム・ボカードやギターにはXEROやソロ活動で知られる敏腕ギタリストのビリー・リースギャングを迎え制作されており、ドラマー主役のインストものなんてつまらんと思われがちですが、これが4曲っての手伝って実に聴きやすく、また充実したお手前を披露。良く歌うギターを生かしつつもドラマーが主役だと言わんばかりのミックスが耳を惹きます(ミキシングはLOUDNESSでお馴染みのビル・フーリッシュ)。物凄くテクニカルなドラマーと言われるマークではありませんが、邪魔をしない的確なドラミングで魅了、敬愛するコージーのカヴァーも行い、バランス良く楽曲を配列と逆にもうチョイ叩いたらと声を掛けたくなるような使用で、ある意味ギターインストものかいなぁと聞こえるのがバランスの取れている証拠、各自の見せ場を設けるパートも用意したりと、ドラマーじゃなくとも大いに楽しめますね。軽快に走るオープニングのKamikaze、タイトルトラックなんてMSGを彷彿とさせる仕上がりにニヤニヤさせられるし、各自の見せ場を作ったノリのよいSnakebite、そしてコージーのカヴァーを真っ向から取り組みマークのバランス感覚の優れたドラミングを堪能しました。今作単体のCD化はありませんが、LIONの『Power of Love』とのカップリングで製品化されているのでパッケージに拘る方はそちらが手に入りやすいでしょうね。
彼らの代表作と言えば次に出た『THEATER OF FATE』となるのでしょうが、今作はあからさまなハロウィーン流儀のスピード・メタルとは違う、ブラジル産のメロディックなパワーメタルサウンドを披露。まだまだ青臭さの残る荒削りなスタイルではありますが、先人達の足跡を影響下にプリースト、メイデン、NWOBHM群といったスタイルの音楽性を巧みに取り込みまとめ上げた手腕は粗さの中にもギラリと光る瞬間が多く(表題曲などはアングラのCARRY ONの原型とも言える)、大味な面はあれどツインギターの疾走パートなどパワフルな演奏は稚拙な面に目を瞑れるほど痛快だ。レコーディング時のメンバーは10代の若者、そんな彼らがわき見をそらさずに典型的なスタイルを極め披露した姿勢は共感できる要素も強く、オリジナルティを研磨したのは2ndで、その集大成がアングラとなるので、個人的には若気の至りにまみれた、何かを突き破ろうとする今作の方が好きですね。ヘヴィメタルのカッコよさの一つには、究極のダサさにあると思っていますので、イケてないのが逆にイケるのです。