Nuclear War Now! Productionsというデス・ブラック系を中心に作品をリリースする傍ら、マニアックな廃盤ものも復刻する事に尽力するレーベルから2010年に世に出た幻の一品。参加メンバーはオーメンのケニー・パウエルがいた「The Dominatress」のラインナップ。録音しているのは1st収録の楽曲。どのような形でこの音源が眠り目覚めたのがは分かりませんが、オリジナルとの聴き比べが一番の楽しみ方でしょう。デモ音源と思えわれミックスの違いなど興味深いのですが、今作の3曲目に収録されている「Dy By The Blade」は1stのオープニングを飾るインスト「Lions Roar」の唄ありヴァージョンでしょう。
サクソン節と呼べる泣きメロをふんだんに含んだ哀愁は円熟味を増しヘヴィだがスケールの大きなメジャー感が更なる高みへと押し上げているのも見逃せません。80年代から90年代に掛けてアメリカ進出を果たすも、音楽性の拡散と変貌により支持を急速に失い、またシーンの没落が彼らをアメリカの地からドイツへと向かわせるのですが、ドイツでは全ての時代で一定の評価と支持を受けており、面白い事に常に安定した規模の成功を収めていたのも見逃せません。すなわち早いだの遅いだの軽いだの重いだのアメリカンだだの、そんな一過性の問題をほじくり返すだけの不毛の議論で叩くのではなく、彼らの本質を常にドイツのメタルシーンは見定めていたのが凄いですねよね(そりゃヴァッケンオープンエアーのラインナップを見れば納得ですよね) 安定した基盤は音楽性の充実ぶりを生みだし何をするべきを見定めて、うつろいでいくシーンの中で自らのスタイルを誇示しつつも時代に合わせ作品を重ねてきた彼ら、ここには90年代の名盤『DOGS OF WAR』の匂いもあるし今風のソリッドな重量感、そして初期の頃の代名詞と言われるバイカーズロックもある、けして保守的にならず先鋭的に攻め続けてきた姿勢を貫いている。ヘヴィメタルの王道を行く彼ら、まさに等身大の魅力が詰まった会心の力作ですね。
多くのファンにそっぽを向かれた、あの80年代中期を想起させる音楽性に着手した今作。ハッキリ言えば、サクソンがNWOBHMスタイルを取っていたのは80年から81年までにリリースされた3枚のアルバムのみ、1983年のアルバム『Power and the Glory』からは、英国からアメリカへ活動拠点を移すためにワールドワイドな作風へと着手しています、常に時代の流れの中で、音楽性をキメてきたのですが、今作はそういう意味では、少々遅かった原点回帰とも言えます。 個人的につまらないアルバムをリリースした時期の80年代中期、しかしアメリカンナイズドなんて十把一絡げのメディア論に乗ることなど出来ず、単に不器用な彼らには似合わないだけでした。 もしアメリカンナイズドがダメなら総じて同様の意見で切り捨てなければイケません。WHITESNAKEのサーペンスは、完全にアメリカンナイズドです、ムッキムキのヘヴィロックに変貌、情緒もクソもあったモノではない別のバンドになりました、メディアも絶賛、誰もアメリカンナイズドなんていいません。EUROPEも同様ですね、ロマンティシズム溢れる2枚目から、3枚目のアルバムは洗練されたメジャー感は正にアメリカンナイズドの極地ですが売れたので、誰も文句をいいません。むしろ代表的なアルバムです。ワタクシにとってはアメリカンナイズド以外の何者でもありません、アメリカンナイズド=ダメなら、全てがダメです。80年代中期のメジャーアルバム全滅です。JPも『TURBO』だもんね。オジーもジェイクとモダンなのやっていたなぁ。