なんとなくバンド名から推察出来るオレゴン州出身クリスチャンHM/HRバンドが1986年にリリースした1st。のっけからJP風味満載の楽曲で幕が開け、そのまま最後まで突き進むヤリきり感が清く『Point of Entry』あたりのアルバムに収録されていても気がつかない程のクオリティを保持、まさに本家に肉薄する勢いだ。手触りのよいキャッネスさや単純明快な疾走感はないが、メタルってのはこういう曲を指すんじゃないのと言えるミドルナンバーの数々に大いなる期待感を抱かされますね。生粋のJPマニアを自負する猛者なら手にとって本家との比較をするのも楽しみでしょうね。単なるフォロワーで片付けるのは惜しいと思いますよ。
シンガーのジョシュ・クレイマーのパフォーマンスがロブを彷彿とさせる事でマニア筋の間で話題になったバンドの2nd。本家が『TURBO』から『RAM IT DOWN』だっただけに、こちらは初期の匂いは発散しつつも時代性にアジャストした作りになっており、ある意味、こちらの方がらしいんじゃないのかと思える程の完成度を披露。モノマネではなく、この声ならやっちゃう方が無難だろう、イヤイヤむしろ無理に避ける方が不自然だよ、言えるほどのロブ・ハルフォードな歌声を存分に生かした厳つ目の楽曲は、全てにおいて前作を凌ぐ出来栄え、また力んで歌うだけでない⑤のような肩の力を抜いたナンバーにおける憑依ぶりには目を見張りますね。JPのモノマネだとマニアから激しく言われたら、ギャフンとしか言い返せませんが、でもこのレベルでやられると文句も出ませんね。似ているけど、やっぱり違うんだよなぁ、でもソックリなんだよなぁ、と微妙な空気を味わい、彼らのオリジナルティな部分と本家に肉薄するダイナミズムを楽しみたいですね。
NWOBHMが生んだ幻のバンドSALEMが2013年に突如リリースした1st。その前の2010年に「In the Beginning...」というデモ音源のCD化作品は知っていたのですが、再結成を果たしそのご2枚のEPを世に送り出したあと、満を持してのフルアルバムだったんですね。いかにも暗く英国らしい暗く湿り気を帯びたメロディと威厳に満ち溢れた美しいハーモニー、そこにタイトなリズムが乗り、王道を行くリフワークで構築されたサウンドが生み出す叙情的かつ泣きを誘発するサウンドメイクは素晴らしい出来栄えを誇りNWOBHMとはなんたるかを凝縮した一枚。もう少し攻撃的な面が欲しいNWOBHMマニアもいるでしょうが、ドゥギー・ホワイトにも通ずるエモーショナルな歌声と叙情的なメロディが映える芯の太いNWOBHMサウンドの相性は抜群だし聴いていて実に心地が良い。NWOBHMマニアのみならず王道を行くバンド群と遜色のない伝統を継承するスケールの大きなサウンド、是非とも多くの人に触れて欲しい一枚ですね。
かの有名なKERRANG!誌においても高い評価を受けた国産プログレスラッシャーが1993年にリリースした1st。唄の弱さは否めませんが、日本人ならではのキメの細かいフレージングと拘りのプレイ、アタッキーなリフワークは勿論、技巧的なバッキングプレイが耳を惹くギター、「Church of Misery」の三上氏が弾き出すベースのグルーブと手数の多いドラミングのシャープなキレはテクニカルな要素を格段にアピールしていのも彼らの音楽性を支えるキーポイント。過度の派手さや激烈な要素を前面に出さなくとも、十分に感じさせる激しく揺さぶる感情の機微、そこが重要だし濃密に描かれている。また壮大なイメージを抱かせつつもパワー満載のプログレッシブな要素も強い音楽性を1stの時点で見事に確立していますね。1994年に惜しまれつつ解散したのですが、今なをカルト的な人気を誇るバンドと語り継がれる所以たる魅力を体感出来ますね。
日本よりも海外のカルトマニアに支持されている可能性の高い国産メタルバンドのコンピ作。チャーチオブミザリーの三上氏が在籍していたバンドとしての認知度も高く、マニアック度に拍車を掛けているのだが、この作品内容が濃いのである。とくに『Back to the Front』というタイトルで世に出たデモであり、のちにドイツのレーベルが『SALEM』というタイトルでリリースした冒頭の3曲など現在では入手不可能なレア物アイテムだけに興奮必死です。 ダークでミステリアス、そして古臭いNOWBHM直系の暴走感、なんたって単なるフォロワーバンドではない個性、名も無き村の奥深く、納屋で集まり繰り広げられる土着的な信仰とも言える、不気味でサタニカルなマイナーダークサイドサウンドは雰囲気タップリ、ドイツのカルトレーベルが、デモを聴いてリリースしたいと思った気持ちに激しく共感できます。時折クラウス・マイネを彷彿とさせるシンガーの声質と歌メロの良さ、自己主張を怠らない動き回るベースと、阿吽の呼吸から繰り出されるドラムが聴き手を幻惑、どこか妖しげなサウンドメイクに一役も二役も買っています。 メロディアスなギターは邪悪で荘厳なるSALEMサウンドをダイナミック描き上げ、そのメロディラインは美しくもあり攻撃的でもある、そういう最強説の高い笠松氏が唄う時代も良いが、前任者である山田さんが唄う1988年にリリースされたデモ2からも3曲収録されており、マニア度もアップ、個人的には全曲聴いてみたいのだが、彼等がハウリングブルからリリースされたのはこういう攻撃的な面をフォローしていたからでもあるのだろうが、今作を聴き彼等がスラッシュとしての枠組みで語るのは適切ではなかったとも言える、そんなジャンル不問のダイハードなHM/HRサウンドであることは間違いない。こちらが本来のヴァージョンなんだと恨み節も聴こえてきそうなデモ音源集、貴重なテイクの多さに興味が持って行かれがちですが、ある意味、ハウリングブルヴァージョンよりもらしいと言うのか、カッコイイと思える瞬間が多々あり、コチラの作品の価値は相当なポテンシャルを秘めていると思いますよ。 このバンドの音楽性を何と紹介すればよいのだろうか?エピックメタルに通ずるような濃度もあった、パワフルでスラッシーな曲もある、しかし正統性の強い叙情派ギタリストをそんな枠組みに放り込めるだろうか?場面展開の多いスリルと疾走感、でも冒頭の3曲が本質的には一番な気がしていますね。
メンバーを大幅に入れ変え1988年にリリースした5曲入のEP『And There It Is』、それに6曲プラスしてリリースされたのが今作。専任キーボード、トビー・サドラーが参加と音楽性の変化を予感させますが、シンガーもミック・ホワイトに変りメロディックかつキャッチーな路線へと変貌、メインストリームと言いたいがそこまで器用にやり切れていないのがポール・サムソンの矜恃だろうか? 芯にあるブリティッシュハードサウンド、そこに装飾した華やかさが1988年という時代背景を飲み込むのだが、パンチの効いた⑤みたいな楽曲で聴ける折衷案に苦悩と苦心の跡が窺えます。完全に陽性ロックに舵を切れなかったバンドサウンド、これはこれでありだろう。SAMSON名義に恥じないラジオフレンドリーな一枚だが、もっとアメリカンナイズドしないと売れないだろう。そういう不器用さが最大のポイントだ。