MERCYFUL FATEの記念すべきデビューEP作の4曲にBBCラジオの『Friday Rock Show』から3曲、1997年にリマスター再発してくれたRoadrunner盤には新たにシングルに収録された⑧を追加しリリースされているコンピ作。どれも貴重な音源で彼らの歴史を知る上では外す事の出来ない一品として知られています。プログレッシブな展開は薄目ですが、悪魔的なニュアンスはこの時点である程度確立されており、キング・ダイアモンド氏の奇怪なファルセットヴォイスは不気味な手触りの残しています。低予算&突貫工事なレコーディングの影響もあり、妙に生々しい粗さも逆に他の作風では感じる事の出来ない魅力があり、また魔術的な響きには後の片鱗も感じさせてくれますね。
1. Doomed by the Living Dead 2. A Corpse Without Soul 3. Nuns Have No Fun 4. Devil Eyes 5. Curse of the Pharaohs 6. Evil 7. Satan's Fall 8. Black Masses 9. Black Funeral
ヴォーカルがRoss the Boss等でリードシンガーを務めていたマーク・ロペスに変った、あえて比較するならばデヴィッド・ウェインに近いタイプと言えるが、このシンガーはもっと癖が強い。そのやり過ぎと言える灰汁の強さ、キャラの濃い歌声に苦笑いも出るだろうが、パワフルなバンドサウンドに負ける場面は皆無、重責を全うしてくれました。
速くないメタルは嫌いと言う事で、お知り合いからタダ同然で譲り受けたメタリカの最新作。ブラックアルバム以降、自力でアルバムを買った事のないワタクシですが、今作は名盤ブラックアルバムの流れを順当に引き継いでいるのは明白で、無駄な装飾を省き実にソリッドでオーソドックスなサウンドへと向かっています。自身が築き上げた様式を再構築、オーセンティックなスラッシュナンバー①、普遍的なメタルスピリット溢れる②と掴みはOK、ヘヴィなグルーブが心地よい③、シンプルに聞こえるが拘りの場面展開が初期の頃をダブらせる90年代以降のメタリカな④と流れ良く進み、安易な過去の焼き回しや、○○風で終わらない飽くまでも挑戦的な姿勢は流石の一言。 何故2枚組みなのかはよく分からないが、実は通して聴かないで分けて聴くとダレる事無くスッと聴けるから不思議なものですね。2枚目のラストに収録される『Spit Out The Bone』のカッコよさ足るや、クールなメタリカを存分に味わえますね。最近、パープルのトリビュートやロニーのトリビュートに寄稿したレインボーメドレー、メイデンのカヴァーなど、その影響があったのか、ここまで正統性の強くメタルナンバーをやってくれるとは夢にも思わなんだ。 メタリカがスラッシュメタルバンドだったのは80年代の話、25年以上も前の事である。そろそろ、その呪縛から解き放たれてほしい。それでなければブラックアルバム以降が何だったのかって事になりかねないのでね。 ボン・ジョヴィしかり、エアロスミスしかり、メタリカも、その存在がジャンルだと思いますので、それほど世界的成功を収め誰にも属さないオリジナルティを高めたのですからね。 個人的にはウンコみたいなC級、D級メタルを愛する貧乏耳ゆえに、今のメタリカは高尚過ぎるので熱心に耳を傾ける音楽性にはなりませんが、このタイミングでど真ん中のメタルスピリットを貫いてくるとは思いもしませんでした。そんなに激烈に走らなくともヘヴィだし十分スリリングだし、楽曲、演奏もタイトで無理なく設計されていますよ。
南米はチリの『Austral Holocaust Productions』からリリースされたコンピ作。アナログのEPをCD化したものなのですが、楽曲は既にフルアルバムにも収録されていたりとダブっているのですが、SAMMこと舘真二さん参加のIron’ Steel’ Metal 、Heavy Metal Hunterの2曲が貴重なデモ音源らしく、そこが最大の聴きどころでしょう。メタルシファーのファン以外に食指が進むかと言われると微妙なんですが、日本が海外に誇るレジェンダリーなバンドで国内のみならず精力的な海外でもツアーを行い、マニアの間では世界でも名の知られたバンドなのです。それでなければチリからリリースされる事はないでしょう。アルバムジャケットから発散されるオフザケ感も程々にメタル愛溢れる一枚、哀愁のツインリードにむせび泣き、和製NWOBHMサウンドに触れて欲しいですね
ブルトーザーとニール田中氏が映し出される小松重機のロゴも眩しいジャケが話題を誘う2009年リリースの3rd。今作は複数枚ヴァージョンが存在し、ワタクシが所持するのは勿論、日本語ヴァージョンです。当然、日本語で歌う方がスムーズに行くので唄が弱いと言われる面は格段にカヴァー、ウジ虫だの油虫だの刺激的な歌詞も飛び出しニヤニヤと笑みもこぼれます。そして二本のアックスメンから繰り出される、咽び泣く哀愁のツインリードは健在、NWOBHM由来のリフワークとツインリードはメイデンだしサクソンだ。サクソンの「Heavy Metal Thunder」を現代に呼び覚まし継承するようなスタイルは、もはや本家がやらないだけに、NWOBHMが好きな人にはたまらんものがあるわけです、小気味いリフワークとメイデンばりの哀愁度MAXなツインリードが濃厚に絡み合い、所狭しと印象的なフレーズが駆け巡り、聴き手の涙を絞りとるでしょう。またサビでは拳を振り上げ歌わずにはいられない扇情力がこのバンドの肝。国内よりも欧米諸国で人気を博し、カッコいいバンドもいるが、安易なモノマネが横行するNWOTHM群とは違う年季の入り方が多くのマニアに訴求するでしょう(2ndで共演したドイツのバンドMetal Inquisitorが「Heavy Metal Bulldozer (Teutonic Attack)」と言うヴァージョンをリリースする事にも繋がるのでしょうね)どんなにそれっぽくても、音そのものの拘りが聴き手によって響き方も違うわけです。このテクノロジーに頼らない音質こそ、実は一番の生命線のような気がしますね。月並みな表現ですが、ヘヴィメタルと言えば、この音をイメージする身としては永遠に色あせる事のないノスタルジー、それはスレスレのところで焼き回しに埋没する「昔の名前で出ています」的なバンドとの明確な違いを計りより密度の濃い作風へと研磨していきます。性格上、秀でた部分を愛でて楽しみのが沁みついているワタクシにとって、メタル愛溢れるTHE望郷なギターと、ボトムを支える力強いベースプレイに魅了されっぱなしです、そして小松政夫ヨロシクなヘヴィメタルシャウトに滞空時間の長いブレンバスターを喰らったような衝撃を覚えずにはいられません。ネームバリューやルックス偏らないマニアとって、このクラシカルな響きは、洗練された旬の若手芸人と言うよりは、TVには出ずとも寄席では確実に笑いを取る、実力派芸人のような手練手管な限りを尽くした、濃密な時間を堪能できる一枚と心に響くでしょう。
1. Heavy Metal Hunter (Part 1) 2. Monster of the Earth 3. Fallen Angel 4. Wolf Man (Japanese version) 5. Bloody Countess (Japanese version) 6. Headbanging (Japanese version)
ハワイ時代はマーティー・フリードマンと活動していたシンガー兼ギタリストのマイケル・ファーロングのソロアルバム。 この作品は少々ややこしく1984年に『Head On Rock N' Roll』というタイトルでRoadrunner Recordsからリリースされている、そして同タイトルで国内盤もあるのだが、アメリカのAtlanticからは『Use It Or Lose It』でリリースされている、ややこしい商品。ともに同じ内容だと思うのだが、Atlanticヴァージョンしか聴いた事がないので、なんともいえません。 少々軽めの電子音的なリズムセクションに、イマイチのめり込めなかったりするのだが、熱量も高めの唄と、確かな技術に彩られたギターは、ロック好きの少年少女のハートに嫌みなく飛び込む陽性な魅力があり、ポップでメロディアスだがハードに迫る健康優良児サウンドの持つ輝きは、時代を超越する魅力がある。
MICHAEL SCHENKER GROUP名義で久しぶりにリリースされたフルアルバム。正直、参加メンバーの重複もあったりと、似たようなクレジットのプロジェクトが多すぎて困惑するのだが、今回はラフル・シーパースのような新顔を加わり、久しぶりの金看板名義に華を添えている。 新旧入り混じったマイケル節、哀愁を帯びた叙情的なフレーズをダークなカラーでまぶし、今まで以上に強度のある骨太なサウンドを構築している。勿論、マイケルらしい情緒はたっぷりとあるし、彼に求めるものをしっかりと理解し忠実に再現していると感じる。それだけに、ややこしい名義が気になるのだが、いずれにしろマイケルの美学は貫かれており、意表を突くラルフ・シーパースの参加した①を筆頭とするパワフルさの増量と、従来のスタイルと言える儚くも美しいマイケルの芸術性が見事にリンク、その華々しい天賦の才が満開に花開いていると言えよう。 古くて新しいマイケルサウンドの復活。なんちゃら○○周年的な売り方だけではないと思いたいほどの充実感はある。
マイケル・シェンカー25周年と謳い日本で行われたライブ。オープニングからSCORPIONSの『Lonesome Crow』収録の曲で始まり、多くのファンをキョトンとさせてしまう幕開け。しかもスローナンバーだからタチが悪い。まるでSEだっかのように名曲②が始まるやいなや観客は興奮の坩堝、ストーリーライブという性質上、こだわりの演出だったんだろうが、出鼻的に失敗と言えよう。 参加メンバーも『Written in the Sand』なので小粒感は否めない。しかもシンガーはリーフ・スンディンではなく、無名のデヴィッド・ヴァン・ランディングである。この時点で彼のキャリアを、どれだけのファンは知っていたのか?正式な音源もなく(Erotic Liquid Cultureくらい)トニー・マカパインが大失敗した歌モノ路線の『Eyes of the World』のツアー参加やCrimson GloryのMidnightが脱退後のツアーの穴埋め程度の実績である。彼の未知数の実力を前にライブに参戦したファンはホンマもんだろう。 肝心のマイケルも開演前は不安定な顔を覗かせたらしいが、テクニカルなソロを難なくこなし好調ぶりをアピール。どの程度のリハーサルを設けたのかは知らないが、シンプルな曲が多い中でリズム隊は無難なプレイでマイケルを援護していた。 歌い手も、本来はクリアーなハイトーンも使えるのだろうが、ライブならではの粗さがあり、ジェフ・スコット・ソートのようなザラついた声だが太さはない。またリーフのようなブルージーさもなく、ステージアクションやコンディション的にも急場しのぎ感が漂うものだった。それでも歌下手王選手権優勝のゲイリー・バーテンの凄さを比較すれば、ファンも気になる事はないのだろう。
Never Ending Nightmareを聴きながら、誰も得していないライブになったなぁと寂しい気持ちに襲われたのだが、それもこれもマイケルの人格によるところが大きい。常に不安定な行動を取るが余りに周りが付いて行けない。その悪評が彼を苦しめる事になる。日本では神を崇められ突出した人気を誇るが、世界的には、そこまで人気がない。UFOがこれから世界を相手にと躍起になった目前に失踪&脱退の山下清ばりの放浪癖を見せる。M.S.Gもマネージメントとの問題もあり、多くのアーティストとの共演話が持ち上がるも上手くいく事はなかった(カヴァーディルとマイケルの共演の可能性などゴシップは尽きない)。 彼の全盛期と言えば、あのゲイリー・バーテンである。日本と違いエンターテイメントに対する審美眼の確かな欧米諸国では、とても褒められるフロントマンとは言えず、求めた成功を得る事は出来なかった。肝心のグラハムは御開チン事件でマイケル顔負けの逃走劇と不運は尽きない。