ハワイ時代はマーティー・フリードマンと活動していたシンガー兼ギタリストのマイケル・ファーロングのソロアルバム。 この作品は少々ややこしく1984年に『Head On Rock N' Roll』というタイトルでRoadrunner Recordsからリリースされている、そして同タイトルで国内盤もあるのだが、アメリカのAtlanticからは『Use It Or Lose It』でリリースされている、ややこしい商品。ともに同じ内容だと思うのだが、Atlanticヴァージョンしか聴いた事がないので、なんともいえません。 少々軽めの電子音的なリズムセクションに、イマイチのめり込めなかったりするのだが、熱量も高めの唄と、確かな技術に彩られたギターは、ロック好きの少年少女のハートに嫌みなく飛び込む陽性な魅力があり、ポップでメロディアスだがハードに迫る健康優良児サウンドの持つ輝きは、時代を超越する魅力がある。
MICHAEL SCHENKER GROUP名義で久しぶりにリリースされたフルアルバム。正直、参加メンバーの重複もあったりと、似たようなクレジットのプロジェクトが多すぎて困惑するのだが、今回はラフル・シーパースのような新顔を加わり、久しぶりの金看板名義に華を添えている。 新旧入り混じったマイケル節、哀愁を帯びた叙情的なフレーズをダークなカラーでまぶし、今まで以上に強度のある骨太なサウンドを構築している。勿論、マイケルらしい情緒はたっぷりとあるし、彼に求めるものをしっかりと理解し忠実に再現していると感じる。それだけに、ややこしい名義が気になるのだが、いずれにしろマイケルの美学は貫かれており、意表を突くラルフ・シーパースの参加した①を筆頭とするパワフルさの増量と、従来のスタイルと言える儚くも美しいマイケルの芸術性が見事にリンク、その華々しい天賦の才が満開に花開いていると言えよう。 古くて新しいマイケルサウンドの復活。なんちゃら○○周年的な売り方だけではないと思いたいほどの充実感はある。
マイケル・シェンカー25周年と謳い日本で行われたライブ。オープニングからSCORPIONSの『Lonesome Crow』収録の曲で始まり、多くのファンをキョトンとさせてしまう幕開け。しかもスローナンバーだからタチが悪い。まるでSEだっかのように名曲②が始まるやいなや観客は興奮の坩堝、ストーリーライブという性質上、こだわりの演出だったんだろうが、出鼻的に失敗と言えよう。 参加メンバーも『Written in the Sand』なので小粒感は否めない。しかもシンガーはリーフ・スンディンではなく、無名のデヴィッド・ヴァン・ランディングである。この時点で彼のキャリアを、どれだけのファンは知っていたのか?正式な音源もなく(Erotic Liquid Cultureくらい)トニー・マカパインが大失敗した歌モノ路線の『Eyes of the World』のツアー参加やCrimson GloryのMidnightが脱退後のツアーの穴埋め程度の実績である。彼の未知数の実力を前にライブに参戦したファンはホンマもんだろう。 肝心のマイケルも開演前は不安定な顔を覗かせたらしいが、テクニカルなソロを難なくこなし好調ぶりをアピール。どの程度のリハーサルを設けたのかは知らないが、シンプルな曲が多い中でリズム隊は無難なプレイでマイケルを援護していた。 歌い手も、本来はクリアーなハイトーンも使えるのだろうが、ライブならではの粗さがあり、ジェフ・スコット・ソートのようなザラついた声だが太さはない。またリーフのようなブルージーさもなく、ステージアクションやコンディション的にも急場しのぎ感が漂うものだった。それでも歌下手王選手権優勝のゲイリー・バーテンの凄さを比較すれば、ファンも気になる事はないのだろう。
Never Ending Nightmareを聴きながら、誰も得していないライブになったなぁと寂しい気持ちに襲われたのだが、それもこれもマイケルの人格によるところが大きい。常に不安定な行動を取るが余りに周りが付いて行けない。その悪評が彼を苦しめる事になる。日本では神を崇められ突出した人気を誇るが、世界的には、そこまで人気がない。UFOがこれから世界を相手にと躍起になった目前に失踪&脱退の山下清ばりの放浪癖を見せる。M.S.Gもマネージメントとの問題もあり、多くのアーティストとの共演話が持ち上がるも上手くいく事はなかった(カヴァーディルとマイケルの共演の可能性などゴシップは尽きない)。 彼の全盛期と言えば、あのゲイリー・バーテンである。日本と違いエンターテイメントに対する審美眼の確かな欧米諸国では、とても褒められるフロントマンとは言えず、求めた成功を得る事は出来なかった。肝心のグラハムは御開チン事件でマイケル顔負けの逃走劇と不運は尽きない。
2013年にMICHAEL SCHENKER'S TEMPLE OF ROCK名義でリリースされた一枚。Voドゥギーホワイトにスコーピオンズのリズム隊、ハーマンとフランシスにkeyはフィンドレ(LIVEでは大活躍ですの彼です)と言うメンツがマイケルをバックアップ、前任のマイケル・ヴォスの甘美なメロディ路線とは毛色の違う濃厚な楽曲を詰め込んだアルバムを披露してくれました。ある意味、ドゥギー色の強い様式美路線を意識したアプローチも取られマイケルの扇情的なギタープレイも冴え渡り、泣きのフレーズも導入されております。とは言え、マイケルがこういうアプローチを試みるとは思ってもみず、少々不思議な気持ちにさせられます。ドゥギー色を生かした楽曲にMSGとはまた違う濃厚さが今作の評価の分かれ目でしょう。往年の空気とは違うマイケルの艶やかなギターはマンネリ傾向と言われようとも色あせる事はありませんね。やはり上手いし独特のタイム感は彼ならではの味わいですね。