SEの次から、往年のスタイルを想起させる楽曲とサウンドメイクに驚き、昨今のへヴィネス路線を残しつつも、ナチュラルなトーンも生かした高崎ギターは、魅力的なメロディやリフを奏でる事に専念。彼の中で、どこまで湧き出るインド神を押さえ挑んだのかは分かりませんが、今作は数十年ぶりといっても良いほどメロディックなフレーズを構築する事に着手。 勿論、それは安易な初期への邂逅などではなく、On the Prowlリリース時に明らかにギターへのアプローチを変えた高崎。その後、訪れるパンテラ化で一気に変貌しすぎた為に、語られなくなったが、随分と『On the Prowl』で生まれ変わったモノだ。今作は、その『On the Prowl』次にリリースされたようなスタンダードな作風であり、まさに今を生き抜く正統派HM/HRバンドとしての帰還となった事が最大の聴きどころだろう。
所謂、ここには多くのファンが待ち望みガチなIN THE MIRRORパート2もSDIもCRAZY DOCTORもない。ノリノリのパーティロックもない。それらの派手な即効性の高いナンバーも待ち望んだファンにとっては、肩透かしなのかも知れませんが、そんな昔の看板を担ぎ出さなくとも、日本が世界に誇るへヴィメタルのパイオニアとしての自負がサウンドとなり表れ、今のラウドネスとしての存在感をアピールする事に成功。 勿論、時代性を飲み込んだモダン化やインドサウンドへの傾倒、その型にハマらないフリーフォームな発想とサイケな世界観、今まで積み上げてきた、時代性との折り合いをつけての原点回帰志向へと舵を切れた事が、今作における圧倒的な信頼への基盤となっている。
自らが育んだへヴィメタルの象徴ともいえる原点への帰還。しかしそれは安易な着想ではない、浮遊感のあるメロディにインド的フレーズ、それらをスパイスにモダン化も無視することなく、起承転結のハッキリとした構築美に、かつての姿をダブらせ、豊富なアイデアを正統性というスタイルで纏め上げた方向性にまずは安堵します。 そりゃそうよ。急に今まではなかった事で、THUNDER IN THE EASTのパロディみたいなもんやられたらね。
またかよぉと言いたくなるセルフリメイク&ベストアルバム。彼らのベストアルバムめちゃくちゃリリースされているからね。そんなもんまともに付き合ったら破産するわい。それにセルフリメイクでしょ。マイクの時にやったしさ、元曲をぶっ壊した新生LoudnessなRockshocksヴァージョンあるじゃんと、Thunder in the East 30th Anniversaryで気をよくしちゃったのぉ、またやりやがって、その手は喰わんわいと軽く拒否をきめかねていたのですがね。最近、かなりお得な値段で手に入るとの事で購入を決意、結論から行くとヤラれましたね。久しぶりに殺られましたよ。 初期の3枚に拘り現メンバーの手による選曲&リメイクと言う事なのですが、全盛期さながらのスタイルに回帰。音質も以前のモノよりも当然良くなっているので、カビ臭い古さを一掃。Rockshocksで感じた違和感もなく今の時代にアップデートすることに成功と多くのファンが望む形でのリメイクに着手してくれました。 山下と鈴木のド迫力のリズム隊が生み出す屈強なリズムプレイの凄みたるや、確かに聴きなれた樋口ドラムとは違いますが、鈴木のパワーヒッティングドラムもまた、後任を務めるのに相応しい人材である事を今作で明確に物語っているでしょう。山下のベースも音像がクリアになりしっかりと聞こえるようになったしね。 肝心の高崎も妙なインド感を出さずに期待にこたえる渾身のリードプレイを披露。研ぎ澄まされた感性が爆発するが如きキレまくりのリフワークから、元曲のイメージを損なわない緻密なアレンジによるソロワーク、そのアイデア豊富なリードプレイの数々に、世界が認める天賦の才を発揮していると言えるでしょう。本当に目から鱗ですよ。 そして特筆すべきは二井原実先輩の歌でしょう。55歳を過ぎたオッサンとは思えないパワフルな歌声で魅了。良く昔の方が高い声が出ていたと言われますが、それはちょっと違っていて、今の方が高いレンジをフォローしているし、何より声が強くなっています。昔の方が細く繊細だったので、違う感触から声が出ていないと感じるのでしょうが、実際は今の方が高いところを歌っていますのでね。もし、二井原実先輩が衰えを隠しながら歌っていたら、今作の感触はかなり変わっていたでしょう。先輩の熱情が迸るハイトーンヴォイスの艶やかで色気のあるパフォーマンスが最大の聴きどころ、鍛錬を怠らずに努力をした証拠ですね。 毛も薄くなり体系も変わりましたが、熟練されたパフォーマンスに魅了されっぱなしでした。
手放しで大絶賛ですが、それは今までの歴史があったからに過ぎず、今作は古いマテリアルのリメイクに過ぎない。ある意味、昔の名前で出ていますな作品です。それは前向きなリメイクなのか昨今のリバイバルブームに乗っただけかのかは分かりませんが、ここで聴けるサウンドとミックスは、まさに再結成されてから、多くのファンが待ち望んだ方向性だと思います。 個人的には遅すぎた決断であり、何をいまさらと素直になれなかったりしますが、柴田直人と一緒に凄いアルバム作れたんじゃないのとか思ったりするのでね。しかし既にアナウンスされた次のアルバムはヨーロッパでのリリースも決まっていたりと、今作が起点となりようやく進むべき道を決めたのであれば、大いに支持をしたいと思います。 ドイツを中心にツアーを行い、今度は東欧圏など攻めて欲しいね。ロシアでアーリアとツアーなんて見てみたいわ。 そして次は撃剣霊化にSoldier of Fortuneのセルフリメイクも聴いてみたい。
撃魂霊刀というサブタイトルは4枚目の『撃剣霊化』からでアートワークの旭日旗は『THUNDER IN THE EAST』からと、随分と過去の財産にしがみついた印象を持たせる今作、今までも原点回帰をアナウンスするアルバムをリリースしてきましたが、ここまで露骨なのは初めてで、随分な集金作業をしてきたなぁと思ったのが個人的な感想(音楽性はモダンなままなのに過去のノスタルジーを渇望しているファンには気の毒なほど、そそられる手法)。当然、後ろ向き過ぎる活動には興味を持てないので完全スルーを決めていたのですが、未開封の新品を500円以下で手に入れるチャンスがリリースして間もない頃に訪れたので購入、ネガティブなイメージは視聴意欲を刺激しなかったのですが、概ね当時の彼らのスタイルを踏襲。 わりとキャッチーなリフワークや往年のイメージを刺激する楽曲も散りばめ、往年のファンの事を慮った面も感じさせつつ、2000年以降のモダンさも残しヘヴィだか聴きやすいという作風にまとめた一品。構築美溢れた楽曲群を愛する初期のファンにとっては今作もどっちつかずのI WANT YOUな事に変わりはありませんが、そんなBACK TO THE 80’だけは個人的に勘弁してくれと思っているので、彼らの歴史を語る上でメンツを保てた一枚となるでしょう。自らが築いた伝統を壊し再構築した近年の作風に通じる意欲作、一筋縄ではいかないスリルと革新さの比率が評価を分けるのでしょうが、安易な原点回帰ではない攻めの姿勢は大いに評価できますね。 でも、その後、素直にファンの意向を踏まえクラシックシリーズをLIVEや作品で連発するとは夢にも思いませんでした。特に海外では尚更の事だったりします。2017年に行われたクラシックシリーズなんて、二井原実先輩全盛期を凌ぐ歌声で実力を発揮していましたね。そろそろ進むべき方向を決める時でしょう。 アメリカで受けているへヴィなおしゃれメタルサウンドを意識し続けるのか、二井原実先輩のソウルフルな歌声を生かした、かつての自分たちを今の時代にアップテートした正統派サウンドに舵を切るのかをね。