関東を代表する様式美系HM/HRバンドのヘレンが2005年に突如復活、国内外に向けてリリースされたのが今作(今のところアナログ盤のみのリリース)。Keyの高梨はいませんが、往年のメンバーが復活、シンガーには初代Voであり、ブリザードの前身バンドエンジェルキッスやロンサムクロウで歌っていた市村タカアキを迎え、まさに往年のヘレン節が完全復活。新曲とリメイクの2曲だけに全貌は見えてきませんが、新曲の『The Fortune』を聴く限りは相当の手応えを感じますね。キーボードがいない分、清水のギターが躍進、音質は薄っぺらいが芯の太い演奏はベテランバンドならではの安定感と迫力を感じさせ、2曲では物足りないという渇望感を煽ります。そして翌年の2006年にレコード盤の板起こしではありますが、幻のEP『Talon of King』がCD化される事になるのですが、今作はその足掛かりにもなったと思うので意義のある一枚だったと思っていますよ。
わが国が世界に誇れる地獄のメタル番犬、HELLHOUNDの2nd。デビュー作から世界中にいる流行り廃りに左右されないダイハードなメタルファンから熱烈な支持を受けていた彼ら、今作を引っ提げ海外のフェスにも参戦、ドイツで行われたKeep It True XI Festivalの熱演はライブアルバムとしてパッケージされている。 へヴィメタルのなんたるかを濃厚に抽出したサウンドは、一歩間違えればパロディだ。皆が名前を伏せているから余計に、その要素も強まる、大手メディアも相手にしてくれない。しかし、ここで聴けるサウンドは嘘偽りが一切ないガチンコのメタルであり、徹頭徹尾先人達が作り上げた様式に則り、自分達のスタイルとして提示してくれている。 へヴィメタルという言葉に恋い焦がれ、人生を生み外した猛者なら(アホみたいに作品を買ったりライブに行かなければ家が一軒立つってヤツです)必ずや胸に響くでしょうね。 ノスタルジーでは終わらない言い訳無用のガチンコサウンド、豪快に踏みならされるドラムの激しさ、重厚なラインを刻むベース、切り立ったメタルリフのカッコよさ、そしてハイトーンスクリームする歪んだ歌声、初期衝動を擽りまくるへヴィメタルサウンドに胸が熱くなりますね。 若い人にこそ、普遍的メタルの魅力を体感して欲しい。海外のアーティストではなく日本にもいるのだから。
女性版ロニー・ジェイムス・ディオなどと呼ばれ正統派マニアから支持された女性シンガー、アン・ボイレン率いるバンドのデビューEP。オリジナルは4曲入りだが、イギリスのMusic for Nationsと契約の際には2曲追加して6曲入りとなり世に出ている。わたし自身が知っているのも6曲入りで、所持しているのはRoadrunnerから出た奴。ちなみに1986年に再発されたNew Renaissanceヴァージョンは曲目が違うので注意が必要です。 下記収録曲 Side A 1.Break the Spell 2.Don't Take No 3.Backstabber Side B 4.Lookin' for a Good Time 5.Driving Hard 6.Up from the Depths
JPのEXCITERのカヴァーも収録した1988年リリースの4曲入EP。単体でのCD化はないのですが、Up from the Depthsというコンピ作に、まるまる収録されています。CD化もされていますが現在では入手困難、簡単に試聴できるサブスクでお楽しみください。 パワフルなアン・ボイレン嬢の歌声を前に出しつつも色的にはダークなメタル路線は健在。師匠であるロニー・ジェイムズ・ディオ直系のパワフルな歌声を生かした正統派メタルを展開している。興味深いJPのカバーも難なくこなし、アルバムの中でアクセントになっている。ある意味、カヴァーがハイライト的な魅力を発散しているのだが、勢いのある①ダークネスなミドルナンバー②EXCITERに引っ張られるように走る④とバラエティに富んだ楽曲を用意。4曲では物足りないと思わせる渇望感を与えてくれます。 メディアでの評価がイマイチだったために、跳ねなかったアン・ボイレン率いる正統派メタルバンドの意欲作。1988年のリリースですが、メジャーシーンに毒されることなく、自分たちが信じる事をやり切っている姿は実に頼もしい。 JPの曲もさることながら④みたいな曲でも力負けしない歌声、ホラーテイストの強い②で魅せた妖鳥シレーヌの如き妖艶かつ誇り高き魔界の住人の如き堂々としたパフォーマンスに魅了されますね。 バックの演奏も申し分ない。芸がないではなく実直なのである。リードギターも巧者だ。
Screams in the Nightのメンバーを戻し1999年にリリースされたEP。相変わらずアン嬢のパワフルな歌声は健在、音楽性もチェットのトリッキーかつテクニカルなギターを主軸としたパワフルサウンドを披露。4曲では物足りないと思わせるクオリティを誇示してくれました(Screams in the Nightからのデモ2曲と、こぼれた2曲なんですけどね)。 とは言いつつも2000年を目前としているのかと言いたくなる低音質な仕上がりには苦言を呈したくなりますた、チェットの癖の強いフレージングのアイデアが面白く、このバンドの可能性を感じずにはいられません。 今となっては、この音源、本当はいつのモノなんだと気になるのですが、詳しいバイオはサッパリなので割愛します(なんか昔の音源をCD化しただけな気がする)。
1998年に突如リリースされたコンピ作。①はBITCHとのカップリングシングルに収録された曲。②~⑤はHellion収録のやつで、複数のレーベルから収録曲違いでリリースされたものから抜粋。ヴァージョン違いなどあるのかもしれないが比較したことがないので不明。個人的に、興味を注がれたのが⑥~⑨収録の楽曲。未聴だった1988年リリースの4曲入りEP『Postcards from the Asylum』が丸々収録されたことに尽きる。JPのカヴァーもやっているので、女ロニーと呼ばれたアン・ボイレンがハルフォードを歌うというのはマニアならずともグッときますよね。 ウェンディ・ディオの助力も得ていた時期のリリースだけにミキシングでアンジェロ・アルクリが参加、レーベルとしては随分と力の入ったEPだった。そりゃ自分のレーベルだもん気合いはいるわな。 こうして時系列に収録されることでアン嬢の成長も見て取れ、暗黒様式美サウンドの変遷も分かり、寄せ集めのコンピ作ではあるが、参加メンバーも含めバンドの本質に触れることが出来る。ある意味、裏ベスト的な意味合いもあったりと、谷間のエースが大活躍みたいなノリではあるのだが、裏街道を走るUSパワーメタルの真髄に触れることが出来るでしょう。 男性優位な社会で、女性がロックをやるのは大変です。曲云々の前に容姿を問われてしまう。下手すりゃ、それが評価の要因になるのだから恐ろしい。
ビッチ・ベッツとスピリット仕様でリリースされたシングル盤の①が収録されているのが、まずは目玉ですよね。向こうでのタイトルはNightmaresでしたが、今作ではNightmares in Daylightと改名して収録されています。EPに収録された②、③は1986年にNew Renaissanceから再発されたヴァージョンに収録されたヤツだし、④⑤はオリジナル盤に入ってはおらず海外仕様でリリースされた時に収録されたものだ。ややこしいのだが、アメリカ人にとっては重要なピースを埋めてくれた一枚なのかも知れないが、日本では逆に4曲入のオリジナル盤の方が激レアなので、そちらを聴きたいという願いの方が強いだろう。 そして今作最大の目玉は後半に収録された幻のEP『POSTCARDS FROM THE ASYLUM』が収録されていることに尽きる。ロニー・ジェイムズ・ディオから師事を受けただけの事はある性別を超えたパワフルヴォイス。昨今流行のパヤパヤ系でもなければ、発声法でどうにでもなるグロウルでもない、生身の身体を駆使するガチンコの歌声に身震いさせられます。
Metal Churchのカート・ヴァンダフーフにプロデュースをお願いし作られた待望のフルアルバム。シンガーも歌えるマイク・ハウの交代とお膳立ては揃いました。 Metal Churchと親和性の高い音楽性だっただけにバンドの推進力には成ったのだが、今作を制作時にシンガーの引き抜きを行いカートがマイクを連れていくと言う背信行為を行ったゴシップニュース満載の話題性の方が今日では印象が強いのですが、パワフルかつアグレッシブなアングラUSメタルの代表的な音が詰まっており、その筋のマニアなら必ず満足出来るクオリティを保持、期待を裏切らない展開と丹念に作り上げたサウンドは表情も豊かになった(US産なので歌謡曲並のキャッチーなメロディや分かりやすさはありません) しかし、アルバムリリース時にはマイクはバンドを抜けており、実態もなく、そのせいで程なく解散に追い込まれる。これほどの質の高いアルバムがあるのに、世に出れなかったのは残念なのだが、このバンドの文春砲は、この程度で終わる事無く、ギターのブライアン・コーバンと日系人ベーシストのデニス・オハラはMetal Churchを抜けたデヴィット・ウェインと今度はReverend結成へと動くと言う最大のオチが待っているのに興奮を覚えます。 そんな情報過多のせいでイマイチ、音が入ってこなくなるのが個人的には難点なのですが、パワーで押し切るのではない切れ味の鋭さも、このバンドの魅力。基本的なメタルのマナーとUSアングラメタルの魅力を内包した一枚は、質の高さや完成度も含めトップ級の出来栄えだ。
参加メンバーはコチラです 1. Rock Of You Like A Hurricane (Bobby Kimball) 2. Passion Rules The Game (John Parr) 3. Loving You Sunday Morning (Michael Voss) 4. Is There Anybody There? (Alex Ligertwood) 5. You Give Me All I Need (Don Dokken) 6. Make It Real (Doogie White) 7. Dynamite (Johnny Gioeli) 8. Arizona (Thomas Perry) 9. Love Is Blind (Paul Shortino) 10. Don't Make No Promises (Jack Russell) 11. Falling In Love (Gary Barden) 12. Another Piece Of Meat (Tony Martin) 13. Animal Magnetism (Michael Nagy) 14. Let It Shine (Al Crespo)
今年の頭に今作発売30周年を記念してCD2枚とDVDをカップリングした3枚組でMetal Blade Recordsからリリースされた一品。オリジナルを聴いておらず、少々不安はありましたが、内容と価格が良かった(3000円以下)DISC1は今作丸丸+新曲2+今作のデモを収録の22曲入り。DISC2は1stフル収録+ラジオ音源+前身のParadox時代のデモ+2013年再結成時のデモ(1stのシンガー復帰)+2015年時のLIVEのお得感満載の内容にDVDでは更に4時間分の映像があり、最近のHeadbangers Open Air出演時の模様から1986年から1990年までの映像ありと、とりあえずパワーメタル系サウンドが好きな方は買ったらエエんじゃないの?と言いたくなるお得な一品として復活してました。というかバンド時代が再結成していたなんて万感交到るものがありましたね。
渡米後のSCORPIONS的なメジャー感もあるし、ある意味、同じドイツ人でアメリカでも成功したドン・ドッケンにも通ずるメロセンスもあるかと思います。そこに気骨のあるジャーマンメタルが乗っかるのだが、時代性を巧みに取り込んだ、正統性の強いHM/HRサウンドは、BONFIREまでの洗練度はないが、ドイツ人によるバブリーではないL.Aメタル風とも言える大衆性と硬質感を取り込んでいて、何とも言えない不思議な魅力がある。それは欧州的な湿り気のあるメロディに尽きるのだが、これぞ俺たちと言える個性に欠けている面がマイナスなんでしょう。それは⑨のモロパクリに起因しているような…だって誰が聴いてもモトリーのToo Young to Fall in Loveだもんね。 いい意味でのラフさと力いっぱい演奏する姿は気持ちがいい。ドイツ人らしい生真面目さが息づいているのも面白い。簡単に○○風と言えない魅力が最大の聴きどころでしょう。そしてモトリーファンは⑨を聴いてくださいよ。
アンセム福田洋也の6曲入りの1stソロ・アルバム。収録されている5曲がインストもので1曲は一曲目のギターマイナス・ワンのコンテスト用だったような気がします。スリリングかつハードなナンバーから、ピアノをフューチャーしたバラードとバラエティに富んだ楽曲が収録されています。久々に本領を発揮した洋也のギター・プレイを堪能できる好盤へと仕上がっています。リズム隊にアイオンのベースDEENとドラム愁がインストもので三曲参加しています。今アルバムのハイライトは間違いなくANTHEM時代の未発表曲を坂本英三をはじめB,MASAKI、Ds北岡新紀、Key,河野陽吾、を従えプレイした唄ものです。マテリアルとしては初期の名盤[BOUND TO BRAKE]のものでアンセムらしいパワーメタルな一曲ですです。この一曲が聴きたくて僕は買いました、硬質でソリッドな質感が心地よいスピードナンバーと英三の熱い歌声に感慨深いモノがこみ上げてきましたね。
IRON CURTAINのギタリスト、ダニの別バンドの1st。いまどき珍しい実直な80年代型HM/HRを聴かせるスペインはムルシア出身の5人組。情熱がほとばしるメロディとドライブ感に富んだリズム、キャッチーな歌メロを歌い上げる前任者よりも逞しいハスキーヴォイス、楽曲の方向性があまりにもド真ん中過ぎるので、ボヤけてしまうが攻めの姿勢を崩さないツインギターによるエキサイティングかつスリリングなプレイは活きの良さも手伝い実に魅力的だ。メタルな硬質感を損なわず、ワイルドでキャッチーな楽曲は哀愁度も高めだがパンチの効いた歯切れの良さにはドライな感覚もあり、それがスペイン産ならではの味なんでしょう。マイナーなシケシケメタルとはチョイと違う垢抜けた要素も高く、実にバランス感覚に優れた1枚ですね。無難過ぎるが故にノスタルジーをくすぐるだけで終わる要素も強いので聞き手の評価も割れそうですね。欧州や南米のメタルシーンがどのような盛り上がりを見せているかは国内の情報を頼りにしてもサッパリ分かりませんが『No Remorse Records』からリリースした今作が予想外のヒットをしたという背景を考えると実に興味深いですね。
IRON CURTAINのギタリスト、ダニのサイドプロジェクトだったバンドが2012年にリリースしたEP。向こうのバンドでも活きのいいギターを奏でておりましたが、ご多分にもれずコチラでも熱いエナジーが迸る、ホッカホカのピュアメタルを披露、もうチョイ捻っていいんじゃないの?と心配になるようなヴィンテージ臭漂うスタイルがなんとも微笑ましく、5曲全てスピードナンバーってのもバンドの方向性を明確にしめしており、スカッとしたい趣の方には繰り返し聴きたくなる手頃感があるでしょう。バキバキとアタッキーなベースにパワフルドラム、メロディックかつ攻撃的なギター、線は細いがヒステリックなハイトーンがカッコいいシンガーと、往年のスタイルを愛する方たちのスタルジーをおもっきりくすぐっていくのでしょう。ある意味、バンドの音楽性はラストに収録された、アクセル・ルディ・ペルが在籍していた事でも知られるドイツのバンド「STEELER」のカヴァー曲に集約されていると思います。彼らはNWOTHMと呼ばれる若手とは違い、モロにあの時代の音楽を踏襲し、寄せに行かずに本気でこういう形になったと思わせるところが最大の魅力でしょう。挨拶代わりの5曲入りとしては申し分ないボリューム感でしたね。
イタリアンメタルを語る上では外す事の出来ないレジャンダリーなバンドが1984年にリリースした1st。何かが始まる予感を煽るSE風のイントロから一転、メロディックかつシャープに疾走する『We'll Play Again』に悶絶。RIOTの『Thundersteel』風の曲調にマニアならハートを掴まれるでょう。その流れを損なわないキレのある②と続き、勢いのあるメロディックなスピードナンバーを連発、NWOBHMの影響をモロに受けつつ、欧州由来の湿り気のあるダークなメロディと力強さを損なわない扇情的なフレージングの旨みは、Scorpions辺りをイメージさせるもの、そのイメージに拍車を掛けるのがシンガーのマッシモ・ロディニの節回。その伸びやかな歌唱スタイルはクラウス・マイネにそっくりなので、質の高い類似性と親近感を覚えますね。 ドメスティックなマイナーメタル故に、改善点も多々あるが、1984年という時代性を考えると、クオリティは高くもっと認知されても良いと思うのだが、全く知られていないのが残念ですね。